日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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100 巻, 11 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • ―第89回総会会長講演から―
    藤原 研司
    2003 年 100 巻 11 号 p. 1273-1284
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    肝不全の治療目標は,急性では広範肝壊死と肝再生不全,慢性では肝線維化が焦点となる.急性肝不全に対してはさまざまな方法が工夫されてきたが,治療効果はそれぞれに限界があり,それも一律ではない.病態が成因により異なるためであり,これを症例毎に分析して有効な治療法を選択することが基本となる.新たな治療戦略として,広範肝壊死の要因となるマクロファージの活性化とオステオポンチンの動態への対応策が挙げられる.肝再生不全は肝細胞増殖因子との係りだけでなく,肝類洞血流回復の面からの検討も必要である.肝線維化対策には炎症抑制が肝要である.増生コラーゲン防止に向けた治療法の確立は困難ではあるが,その標的は立ち上がりつつある.
  • ヘリコバクター・ピロリ除菌療法の新たな展開
    高橋 信一
    2003 年 100 巻 11 号 p. 1285-1294
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    H. pyloriはほとんどの上部消化管疾患と関連していると考えられている.日本ヘリコバクター学会による最新の除菌適応疾患としては,1) H. pylori除菌治療が勧められる疾患:胃潰瘍,十二指腸潰瘍,胃MALTリンパ腫,2) H. pylori除菌治療が望ましい疾患:早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術後胃,萎縮性胃炎,胃過形成性ポリープ,3) H. pylori除菌治療の意義が検討されている疾患:Nonulcer dyspepsia(NUD),Gastro-Esophageal Reflux Disease(GERD)を挙げている,今後はとくに実地臨床上診療頻度の高いNUD,GERDの除菌適応の検討が急務である.
  • ヘリコバクター・ピロリ除菌療法の新たな展開
    佐藤 竜吾, 藤岡 利生, 村上 和成, 兒玉 雅明
    2003 年 100 巻 11 号 p. 1295-1301
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    近年の膨大な研究により,Helicobacter pylori感染が上部消化管疾患のみならず,血液疾患,心・血管系疾患,皮膚疾患など消化器以外の疾患と関連している可能性が示唆されている.さらに,胃外に発生したMALTリンパ腫の除菌奏功例も報告されている.特発性血小板減少性紫斑病に関しては,わが国ではH. pylori陽性患者の約半数に除菌治療が期待できる状況にあり,近い将来,除菌適応疾患に加わる可能性が高い.本稿で紹介した疾患の中には,エビデンスが不十分なものも少なくなく,また疾患によりH. pylori感染の関与の程度も様々と思われる.今後,各専門家が協力して慎重に検証していく必要がある.
  • 黒木 実智雄, 遠藤 到, 遠藤 克哉, 森 菜緒子, 井上 淳, 宇野 健司, 濱田 晋, 野口 謙治, 小島 敏明, 神谷 尚則, 鹿志 ...
    2003 年 100 巻 11 号 p. 1302-1306
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.主訴は便潜血陽性.盲腸の2型大腸癌と右側横行結腸の4型大腸癌の重複癌であった.注腸X線検査上横行結腸の所見は軽度の壁不整から短期間で広範な狭窄所見へと変化した.病理組織学的所見では印環細胞~低分化腺癌が強い線維化をともない漿膜外に浸潤し,広範な癌性リンパ管症を呈していた,4型大腸癌における比較的早期の段階からの急速な進行が示唆された貴重な症例であると考えられた.
  • 山本 龍一, 永尾 重昭, 橋口 一利, 東山 正明, 田島 一美, 井上 拓也, 奥平 圭輔, 宮崎 純一, 松崎 宏治, 川口 淳, 伊 ...
    2003 年 100 巻 11 号 p. 1307-1311
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,女性.主訴は嘔吐,体重減少.平成11年10月頃より原因不明の嘔吐を繰り返し増悪したため,平成14年2月当院当科紹介受診となった.上部消化管造影,腹部造影CT,MR angiography検査の特徴的所見より腸回転異常による中腸軸捻転症と診断し,手術となった.各種画像診断特にMR angiographyは,非侵襲的な検査として本症の診断に有用であった.
  • 歳弘 真貴子, 滝川 康裕, 福田 雄次, 佐藤 慎一郎, 遠藤 龍人, 鈴木 一幸
    2003 年 100 巻 11 号 p. 1312-1316
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は52歳男性.全身倦怠感を主訴として近医受診.著明な肝機能障害のため当科入院.発症の2週間前に孫が伝染性紅斑症に罹患.通常の肝炎ウイルスマーカーはすべて陰性.ParvovirusB19に対するIgM抗体とIgG抗体はともに高値陽性.T. Bil.は23.5mg/dl,Prothrombin timeは54.5%であった.ステロイドパルス療法によりALT,PTは速やかに改善した.成人においてParvovirusB19により,高度黄疸,血液凝固異常を来した報告はこれまでほとんどなく,貴重な症例と考えられる.
  • 池田 和人, 川口 義夫
    2003 年 100 巻 11 号 p. 1317-1321
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性.全身倦怠感と右季肋部痛を主訴に来院した.肝胆道系酵素の上昇を認めたが,血液検査でウイルス性肝炎は否定的であった.血清梅毒反応,肛門周囲びらんなどの身体所見および梅毒感染の機会も確認できたため梅毒性肝障害と診断し,駆梅療法により肝機能は速やかに改善した.本例には胃潰瘍も合併しており,第2期梅毒にともなう胃梅毒を疑ったがTreponemaは確認できなかった.梅毒症例の減少とともに梅毒性肝障害の頻度も低下しているが,肝機能障害時には梅毒による可能性も念頭におき,詳細な問診および身体所見をとる必要があると思われ報告した.
  • 影山 富士人, 竹平 安則, 山田 正美, 室久 剛, 平沢 弘毅, 片岡 英樹, 岩岡 泰志, 岩泉 守哉, 川田 一仁, 濱屋 寧, 中 ...
    2003 年 100 巻 11 号 p. 1322-1327
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性.平成10年9月より自己免疫性肝炎と診断されステロイドの投与がなされていたが,平成14年6月の腹部超音波検査にて肝S8に径20mmの腫瘍性病変を認め,精査加療目的にて入院した.各種画像検査にて腫瘍は拡張した胆管腔内に存在し,肝内胆管癌を否定しえず,肝2区域切除術を行った.腫瘍は胆管内腔に乳頭状に発育し,粘液産生を認め,さらに末梢側胆管の胆管上皮の一部に乳頭状の変化を認めた.このため肝内胆管乳頭腫症(intrahepatic biliary papillomatosis)と診断した.胆管乳頭腫症はまれな疾患であり,免疫染色結果などを含めて評価し報告した.
  • 角田 圭雄, 金政 和之, 立花 俊治, 前川 勝英, 中野 知幸
    2003 年 100 巻 11 号 p. 1328-1332
    発行日: 2003/11/05
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.主訴は上腹部痛,尿管癌に対するBCG膀胱内注入療法中に血清膵酵素およびIgGが高値を示し,画像上膵はびまん性に腫大.絶飲食,抗生物質および蛋白分解酵素阻害薬の投与にて症状は軽快したが血清膵酵素上昇が遷延.ERCPで体尾部主膵管の狭細化を,膵生検で著しい炎症細胞浸潤と線維化を認め,自己免疫性膵炎と診断した.ステロイド投与により血清膵酵素は正常化し,ERCPでは膵管像の改善を認めた.
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