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小俣 政男, 大塚 基之, 川上 高幸, 星田 有人
2003 年 100 巻 2 号 p.
135-143
発行日: 2003/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
全ヒト遺伝子配列の解明により,細胞内で産生される蛋白の数と種類が明らかにされつつある.かつては10万といわれた蛋白も3万数千と見積もられ,細胞内ネットワーク形成の登場人物も次々と明らかにされている.すなわち,細胞を1個の町に例えるとその住民は3万数千人,その人々はいわば無数の接触の営みを繰り返し行っている.その総和が細胞の表現型として現れてくる.たとえば,癌細胞はいわばその町の住民のおこした暴動とも捉えられる.一個一個の住民の動きでこの暴動の実態を明らかにする事は明白である.この網羅性による細胞内動態把握は如何に行ったら良いか,その方法につき以下に概説する.
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梁 幾勇, 清木 元治
2003 年 100 巻 2 号 p.
144-151
発行日: 2003/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は,コラーゲンを主とする我々の細胞外基質の生理学的な維持・再構築に必要であり,癌の浸潤にも重要な役割を演ずる.特に,癌細胞表面に生じる限定的コラーゲン分解,および細胞運動賦活化機構は,癌の浸潤そのものを生み出すと考えられ,その中心的役割を演ずるプロテアーゼとして,膜型メタロプロテアーゼ(MT1-MMP)が注目されている.この酵素の持つ役割を深く理解し,この酵素の関わる癌浸潤過程に必須の分子イベントを効率よく抑制することは,21世紀における対癌治療の中で,癌浸潤制御のための有効な手段になると考えられる.
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伊東 文生, 足立 靖, 今井 浩三
2003 年 100 巻 2 号 p.
152-160
発行日: 2003/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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Matrix metalloproteinase(MMP)は癌の進展に深く関与する蛋白分解酵素として注目され,研究されている.消化器癌においてもMMPは大きな役割を担っていることが知られており,胃癌,大腸癌を中心に解説する.中でも我々はマトリライシン(MMP-7)とMMP-2に注目しており,焦点を当てた.さらに,診断への応用,治療への発展について記した.
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関川 昭, 露岡 清隆, 瀬田 剛史, 坂口 康浩, 來須 知恵, 太田 安英, 沖本 芳春, 吉村 高士
2003 年 100 巻 2 号 p.
161-165
発行日: 2003/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は77歳の男性.持続する下血で入院した.上下部消化管内視鏡,腹部血管造影,腹部CT,小腸造影では出血源を同定し得なかった.出血シンチグラフィーの結果より,小腸からの出血を疑い,開腹術を行った.視診,触診では出血部位を確認できなかったため,術中内視鏡検査を施行した.上部空腸に発赤を有する5mm大の隆起を認め,空腸切除を行った.病理組織検査の結果は動静脈奇形であった.術後に下血は認めていない.術前検査で診断しえなかった小腸出血に対して,病変同定,切除範囲決定のために術中内視鏡検査が有効であった,空腸動静脈奇形の1例を経験したので報告する.
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太平 周作, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 坂本 英至, 伊神 剛, 森 俊治, 深見 保之
2003 年 100 巻 2 号 p.
166-169
発行日: 2003/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
症例は52歳女性.タール便,貧血を主訴に受診.小腸造影で回腸に約15mmの腫瘤陰影を認めた.この腫瘤からの出血と診断し,回腸部分切除術を施行した.病理組織学的にはcavernous hemangiomaであった.我が国では小腸血管腫は自験例を含めて102例の報告がある.組織学的にはcavernous hemangiomaが最多であった.診断には小腸造影が有効であった.
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磯貝 圭輝, 守内 玲寧, 多羅澤 功, 矢花 崇, 加藤 智大, 中原 生哉, 村上 理絵子, 瀬ノ田 明範, 伴 紀宏
2003 年 100 巻 2 号 p.
170-176
発行日: 2003/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は56歳,男性.上部消化管造影検査および内視鏡検査にて十二指腸第II部に長径10cmの隆起性病変を認め,生検にてGISTとの診断を得た.十二指腸原発の悪性のGISTを疑い膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査では紡錘形細胞の増殖を認め,また核分裂像も400倍で1視野に2~3個と多数認められ,免疫染色にてCD-34,KITが陽性,actin,S-100蛋白が陰性であり,GIST(uncommitted type,malignant)と診断した.術後2年後に腹部CTにて肝S4に腫瘤を認め,GISTの肝転移の診断にて肝区域切除術を施行した.その後2年外来で経過観察中であるが健在であり,再発を認めていない.十二指腸第II部が原発であり,手術施行2年後肝転移巣に対して肝切除を追加した狭義のGISTの1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
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高田 弘一, 堀田 彰一, 目黒 高志, 井上 善之, 合田 峰千, 中村 英明, 丸谷 真守美, 藤田 朋紀, 新井 尚子, 宮坂 祐司, ...
2003 年 100 巻 2 号 p.
177-184
発行日: 2003/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は69歳,男性.平成8年より肝細胞癌に対してTAE,肝切除およびPEITを施行し,原発巣のコントロールは良好であった.しかし,平成11年孤立性縦隔転移を来したため,放射線治療を施行した.その結果,縦隔転移は縮小したが,平成12年腎転移が出現し,その後副腎,肺転移を来し死亡した.病理解剖の結果,原発巣である肝臓に腫瘍の残存は認められなかった.本症例においては肝内の腫瘍がコントロールされていたにもかかわらず,縦隔転移により不幸な転機をとった稀な症例と考えられた.
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大野 栄三郎, 中川 浩, 高野 健市, 宮田 章弘, 飯塚 直彦, 平井 孝典, 原 和生, 中村 正直, 後藤 順, 大島 英子
2003 年 100 巻 2 号 p.
185-189
発行日: 2003/02/05
公開日: 2008/02/26
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症例は49歳,男性.右季肋部痛を主訴に近医受診.CTにて胆石胆嚢炎と診断されるも自己判断にて無治療にて経過.2ヶ月後,再び右季肋部痛,黄疸,発熱を認め,腹部CTにて肝右葉被膜下に嚢胞性病変を認めた.USガイド下に嚢胞ドレナージ術を施行し,胆汁性排液を認め,spontaneous bilomaと診断した.胆石胆嚢炎による胆嚢内圧亢進により胆嚢がminor perforationをおこし,肝被膜下へ緩徐に胆汁が漏出したことによりbilomaが形成されたと考えられる.
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新倉 則和, 長谷部 修, 横沢 秀一, 今井 康晴, 古田 精市, 保坂 典子
2003 年 100 巻 2 号 p.
190-194
発行日: 2003/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は70歳,女性.黄疸にて発症.血液検査では肝胆道系酵素の上昇を認め,腹部超音波検査にて肝内胆管の拡張と中部胆管に20×15mm大の腫瘤を認めた.腹部CT検査では中部胆管に辺縁優位に造影される腫瘤を認めた.ERCPでは中部胆管に狭窄を認め,胆管細胞診,胆管生検で胆管小細胞癌と診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では比較的境界明瞭な結節充実性の腫瘍を認め,組織所見は胆管原発小細胞癌であった.
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松尾 則行, 宮池 次郎, 浅木 彰則, 村田 洋介, 鳥巣 真幹, 平岡 淳, 栗山 宗彰, 田丸 正明, 大本 昌樹, 仁科 恭一郎, ...
2003 年 100 巻 2 号 p.
195-200
発行日: 2003/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は49歳,男性,多飲者.2001年1月初旬より左側腹部痛が出現し,腹部CT上,脾臓内部~周囲に高濃度の液貯留がみられ入院となった.US,MRIも施行し脾臓破裂が疑われ,脾・膵尾部切除術を施行した.膵液が膵管周囲・脾臓内部に波及し,自己消化のため脾臓の一部が壊死していた.慢性膵炎に脾臓破裂を併発する症例は,極めて稀である.
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横沢 聡, 阿部 礼司, 菊池 公美子, 木村 義人
2003 年 100 巻 2 号 p.
201-206
発行日: 2003/02/05
公開日: 2008/02/26
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症例は61歳男性.健診で指摘された初発病変は膵体尾部の腫瘤で膵癌を否定できず膵体尾部切除が施行され,病理診断で腫瘤形成性膵炎であった.2年9ヶ月後再度健診で指摘された病変は膵頭部腫瘤でステロイド投与にて著明に縮小した.γグロブリン,IgGが高値で自己免疫機序の関与が考えられたが,異所再発した腫瘤形成例の報告は少なく,自己免疫性膵炎の発症,進展を考える上で貴重な症例と考えられた.
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前野 一真, 小池 祥一郎, 中村 俊幸, 岩浅 武彦, 中澤 功
2003 年 100 巻 2 号 p.
207-211
発行日: 2003/02/05
公開日: 2008/02/26
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腫瘤を形成し発症した大網原発膿瘍の1例を報告する.症例は36歳の男性.主訴は発熱,上腹部痛.上腹部に超手拳大の腫瘤を触知し,腹部US,CTで大網内に約9cm大の腫瘤を認めた.開腹すると大網内に周囲の腸管と癒着した膿瘍を認め,癒着した腸管を部分切除してこれを一塊として摘出した.病理組織検査で内部に異物を認めず,大網膿瘍と診断された.本疾患を疑う場合は速やかに外科的切除を行い,病変を可及的に一塊として切除することを心掛けるべきである.
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豊見山 良作, 金城 福則, 外間 昭, 岸本 一人, 大城 淳一, 斎藤 厚
2003 年 100 巻 2 号 p.
212-214
発行日: 2003/02/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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2003 年 100 巻 2 号 p.
217
発行日: 2003年
公開日: 2008/04/21
ジャーナル
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『日消誌』掲載論文「今月のテーマ:胃炎・胃潰瘍・胃癌」(2002; 99: 1301-1311)において誤りがありました. 訂正してお詫び申し上げます.
(誤)(訂正前) 1305頁左6行目 TypeIV secreetion, 1305頁左9行目 TypeIV secration
(正)(訂正後) いずれもTypeIV secretion
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