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澤武 紀雄
2003 年 100 巻 6 号 p.
645-652
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
フリー
胃や大腸癌に対してbiochemical modulationの概念に基づき,5-FUにMTX, LV, CDDPなどを併用する方法により,5-FU単剤の場合(奏効率10~15%)に比して倍以上の奏効率が得られるようになったが, 治療成績は不十分である. しかし, この数年の間にCPT-11, TS-1, taxane, I-OHPなどの新規抗癌剤の導入により, 奏効率は著しく向上している. 胃癌ではCPT-11とCDDPとの併用により50~60%TS-1は単剤で45%, TS-1とCDDPとの併用により76%と非常に高い奏効率が認められている. 大腸癌では5-FU/LVとCPT-11併用により40%前後, I-OHP併用により50%, TS-1は単剤でも36%の奏効率が得られている. さらに, 分子標的薬剤の臨床試験も進められており, 進行・再発性の消化器癌への応用に期待が寄せられている.
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薬物性肝障害
滝川 一, 高森 頼雪
2003 年 100 巻 6 号 p.
653-658
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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薬物性肝障害の診断は薬物投与と肝障害の時間的関連, 除外診断, その薬物が肝障害をおこしやすいかという点に基づいて行われているのが現状と考えられる. 近年, 特異体質による代謝能の変化に基づくと考えられる薬物性肝障害の存在が問題視されている. わが国では1978年に提起された診断基準が存在するのみであるが, 薬物リンパ球刺激試験の偽陰性例や上記のような代謝性の薬物性肝障害が診断できないという問題を抱えている. 今回, 国際コンセンサス会議による診断基準をわが国の現状に合うように改訂した診断基準を提起した. 症例による検証で有用と考えられたが, 今後, 症例のさらなる積み重ねによる検証が必要である.
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薬物性肝障害
松崎 靖司, 西川 清広
2003 年 100 巻 6 号 p.
659-666
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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薬物性肝障害の基本治療としては, 起因薬物の同定を速やかに行い, 早期にその薬物の投与を中止することが第一選択である. 次に, 安静臥床での経過観察, 食事療法, そして薬物療法である. 薬物療法としては, グリチルリチン製剤, ウルソデオキシコール酸(UDCA),コレスチミドなどが基本である. さらに遷延型には,副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)が使用される. 劇症化する場合は, 劇症肝炎の治療に準ずる. 広く使用されるUDCAの効果は, 利胆作用のほかに肝細胞保護作用, 免疫調節作用などとされる. 次にフルタミドによる薬物性肝障害に対するUDCAの予防効果を明らかにした. ラットモデル実験を臨床的に検証し, EBMに基づくUDCA治療法を確認した. 今後の薬物性肝障害の予防を考える上でも重要な課題と考える.
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山崎 智朗, 根引 浩子, 青松 和揆, 追矢 秀人, 青木 哲哉, 大川 清孝, 谷村 愼哉, 東野 正幸, 井上 健
2003 年 100 巻 6 号 p.
667-672
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は47歳, 男性. 平成6年に胃粘膜下腫瘍を指摘されていたが放置していた. 平成11年9月3日に, 吐血したため当院に緊急入院した. 上部消化管内視鏡検査にて胃粘膜下腫瘍を認め, 同部位よりの出血と診断し, 内視鏡的止血術を行った. 超音波内視鏡にてこの胃粘膜下腫瘍は迷入膵であると診断し, 腹腔鏡下胃部分切除術を施行した. 出血した迷入膵を術前に診断した症例はまれであり, 報告する.
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堀 智英, 岡田 喜克, 町支 秀樹, 宗行 毅, 永井 盛太, 岸和田 昌之
2003 年 100 巻 6 号 p.
673-679
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は87歳女性. 突然の嘔吐, 心窩部痛および腹部膨満感を来し入院. 上部消化管造影および内視鏡検査で径5cm大の胃寄薩部腫瘍の十二指腸球部脱出嵌頓と診断され, 内視鏡的整復不能のため, 腫瘍摘出術を施行した. 腫瘍は病理組織学的所見で紡錘型細胞の束状増生を認め, 核分裂像は2個/10視野. 免疫組織学的にc-kit,CD34S-100蛋白陽性. 電顕で神経内分泌穎粒を認め, 良性GANTと診断. 術後3年2カ月目の現在, 再発を認めない.
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淡川 照仁, 廣橋 佐栄, 長谷川 公子, 築田 浩幸, 伊林 由美子, 平根 敏光, 小林 壮光, 戸次 英一, 今井 浩三
2003 年 100 巻 6 号 p.
680-684
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は48歳男性. C型慢性肝炎に対して平成13年3月1日よりインターフェロン-βの投与を開始した. 投与2日目より下痢が頻回となり, 5日目に下血を認めたため大腸内視鏡検査を施行したところ, 全大腸にびらん性病変を認め潰瘍性大腸炎に類似した所見が認められた. インターフェロン治療を中止し, 5-ASA投与を行い症状の改善をみた. インターフェロン治療を契機として急性期潰瘍性大腸炎に類似した腸炎が発症したものと考えられた.
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稲山 久美, 福田 保, 中野 綾子, 阿部 美保, 堀内 宣昭, 宮崎 修一, 山崎 柳一, 三宅 講太朗, 岸田 基, 三浦 連人, 伊 ...
2003 年 100 巻 6 号 p.
685-690
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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症例1は77歳, 女性. 回盲部に腫瘤を認め, 虫垂粘液嚢腫の診断で回盲部切除術を施行した. 症例2は46歳, 男性. 急性虫垂炎の診断で手術を施行, 虫垂腫瘤と腹腔内に多量の粘液を認め, 回盲部切除術と粘液除去術を施行した. 両症例で血清および粘液中のCEAは高値を示し, 組織は虫垂粘液嚢胞腺癌であった.
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荒木 利卓, 上原 正義, 多田 修治, 上野 直嗣, 須古 博信, 神尾 多喜浩
2003 年 100 巻 6 号 p.
691-696
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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症例は64歳, 男性. DeBakeyII型の急性大動脈解離に対し, 当院心臓血管センターにて人工血管置換術を施行, 術後38度の弛張熱が持続し, 血性下痢と索状物の排泄を認めたため, 当院消化器病センターへ紹介となった. 排泄された約70cmの索状物は, 組織学的に壊死に陥った大腸腸管(coloncast)であった. 大腸内視鏡検査, 注腸X線検査にてS状結腸から下行結腸にかけての壊死型の虚血性腸炎と診断し, 手術を施行した, 左半結腸におよぶ壊死性変化を認め, 左半結腸切除術, 人工肛門造設術が施行された. 術後経過は良好で軽快退院となった. 壊死腸管の排泄を認めた虚血性腸炎は極めてまれであるが, 急性大動脈解離術後の重篤な合併症として重要と考えられた.
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佐伯 哲, 松本 幸二郎, 柳 謙二, 西村 大介, 濱田 久之, 大畑 一幸, 阿比留 正剛, 重野 賢也, 中川 祐一, 石川 博基, ...
2003 年 100 巻 6 号 p.
697-701
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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症例は57歳, 女性. 食道胃静脈瘤の精査加療目的で当科入院. 腹部画像診断において門脈本幹の狭窄と肝門部でのcavernomatous transformationおよび肝右葉を中心にび慢性の肝内動門脈短絡が認められた. 肝生検組織では線維化および炎症所見はほとんど認められなかった. 本例の門脈圧亢進症および肝外門脈狭窄症の成立に肝内動門脈短絡が関与した可能性が示唆された.
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福森 一太, 釈迦堂 敏, 巻幡 徹二, 武元 良祐, 福泉 公仁隆, 宮原 稔彦, 安森 弘太郎, 村中 光, 渡辺 次郎, 才津 秀樹, ...
2003 年 100 巻 6 号 p.
702-706
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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77歳, 男性. 非B非C型肝硬変と慢性腎不全に対して保存的加療を受けていた. 肝細胞癌(HCC)治療目的で入院となり, 初回ラジオ波焼灼療法(RFA)直後に血清力リウム値が9.1mEq/
llに上昇し, グルコースインスリン療法, ケイキサレート注腸を要した. 2回目のRFAでは術前の輸液,利尿剤投与にもかかわらず治療後血清力リウム値は7.1mEq/
lまで上昇した. 慢性腎不全患者のHCCに対するRFAは, 高力リウム血症に十分留意する必要があると考えられた.
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城所 秀子, 金沢 秀典, 名知 志子, 楢原 義之, 長田 祐二, 間宮 康貴, 木村 祐, 滝 保彦, 厚川 正則, 中塚 雄久, 黒田 ...
2003 年 100 巻 6 号 p.
707-712
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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症例は56歳女性, child-Pughスコア12点のc型肝硬変. 内科的治療にもかかわらず連日1~2Lの胸水排液を必要とした難治性肝性胸水を経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TlPS)により治療した. TIPS後に肺水腫,短絡路狭窄を合併したものの, 術後2カ月で肝性胸水は完全消失した. 患者は術後18カ月間胸水の再発はなく, Child-Pughスコアは6点まで改善している. 難治性肝性胸水に対する各種治療法を含め文献的考察を加え報告した.
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明石 哲郎, 河辺 顕, 坂本 竜一, 宜保 淳也, 井上 直子, 小島 瑞穂, 久野 晃聖, 有田 好之, 伊藤 鉄英, 名和田 新
2003 年 100 巻 6 号 p.
713-718
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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膵仮性嚢胞は, 急性膵炎や慢性膵炎の合併症として, しばしば経験する. しかし, 縦隔内膵仮性嚢胞はまれで, 我々の検索しえた範囲では, 本邦報告例は21例である. また, その治療は, 大多数が嚢胞摘出術や嚢胞ドレナージ術などの外科的治療を受けている. 今回, 我々は抗酵素療法に抵抗性を示す縦隔内膵仮性嚢胞合併膵炎に対しソマトスタチン誘導体投与が奏効し, 保存的に嚢胞の消失を認めた症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
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河井 誠, 貝瀬 満, 三輪 純, 鈴木 伸明, 岩田 滉一郎, 太田 裕彦
2003 年 100 巻 6 号 p.
719-721
発行日: 2003年
公開日: 2008/02/26
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症例は25歳男性, 腹満, 下痢, 腹痛を主訴に入院した. 腹部CTでは著明な腹水, 小腸壁の肥厚, 両側の水腎症を認めた. 諸検査によって腹部悪性腫瘍, 門脈圧亢進症, 結核などは否定的であった. 関節症状などの膠原病を示唆する徴候はなかったが, 抗核抗体1280倍などからSLEの亜型と考え, 副腎皮質ホルモンを投与したところ消化器症状は消失した. 原因不明の消化器症状を診た際は, ループス膀胱炎を考慮する必要がある.
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