自己免疫性肝炎(AIH)の原因および発症機構は依然不明である.したがって,特異的な診断方法や治療法はないが,典型例の診断は容易である.わが国のAIHの多くは副腎皮質ホルモンが奏功し,比較的予後が良い.しかし,肝硬変に進展すると予後不良で,特に劇症肝炎はきわめて予後が悪い.AIHによる慢性肝疾患および急性発症のAIHはともに,早期の診断が重要である.非典型例には急性発症例,Overlap症候群,軽症例,小児例,Lupus Hepatitis,de novo AIHなどがある.これらの診断は肝生検所見などを含めて総合的に行う.
症例は43歳女性.1981年(23歳時)ホジキン病を発生し,化学療法と末梢血幹細胞移植後,完全寛解を得た.2002年血便が出現.大腸内視鏡にて直腸,S状結腸に不整な潰瘍性病変を認め,生検にて悪性リンパ腫(diffuse large B cell)だった.化学療法,局所放射線療法で病変の著明な縮小を得た.ホジキン病治癒後,大腸原発の非ホジキン悪性リンパ腫の発生はまれであり,文献的考察を加え報告する.