日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
103 巻, 7 号
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総説
  • 堀江 義則, 日比 紀文, 石井 裕正
    2006 年 103 巻 7 号 p. 789-796
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/05
    ジャーナル フリー
    C型肝炎におけるコア蛋白,非アルコール性脂肪肝炎における脂肪酸代謝の亢進,アルコール性肝障害に併発するエンドトキシン血症やサイトカインの増加は酸化ストレスを増強する.こうした肝細胞で生じる酸化ストレスが,慢性肝疾患の進展に深く関与している.また,肝の線維化や発癌への関与も示唆されている.C型肝炎やアルコール性肝障害などの慢性肝疾患において,肝臓内に鉄の沈着を多く認める.近年,鉄調節ホルモンhepcidinが同定され,慢性肝疾患では肝臓由来のhepcidinの発現低下により,鉄の吸収が亢進する機序が推測されている.肝臓内に沈着した鉄が,慢性肝疾患における酸化ストレスを増強し,疾患の進展に関与していると推察される.今後は,瀉血や抗酸化剤の投与などの抗酸化作用を介した肝疾患治療が重要となると考えられ,新たな治療用薬物の開発も期待される.
今月のテーマ;炎症性腸疾患と発癌
  • 松井 敏幸, 矢野 豊, 平井 郁仁
    2006 年 103 巻 7 号 p. 797-804
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(UC)と同様にCrohn病(CD)患者にも大腸あるいは小腸癌が生じる.癌発生の相対危険率は,罹患期間が長くなれば高まる.最近の多数例の検討では,大腸直腸癌の相対危険率は正常人の2∼3倍,小腸癌の相対危険率は約30倍と見積もられた.UCに併発する大腸癌とCDに併発する腸癌は幾つかの点で異なる.第一は,小腸,大腸,肛門管,瘻孔部とCDでは癌発生部位が多彩な点である.第二は,腫瘤を形成しないため発見が極めて困難な形態例が多く,さらに観察が困難な小腸や肛門管に癌が発生しやすい.しかも,CD病変により高度な腸管変形部位に癌は発生するからである.以上から,長期経過したCD患者に対し癌サーベイランスを要するが,適切な方法により早期診断の方法を探索すべき時が近づいている.
  • 松本 譽之, 樋田 信幸
    2006 年 103 巻 7 号 p. 805-811
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎(UC)の長期経過例では慢性炎症を母地とした大腸癌(colitis-associated colorectal cancer:以下CAC)合併の危険性が高まる.CACは通常の大腸癌とは肉眼形態や組織型などの特徴が異なり,前癌病変と考えられるdysplasiaを高率に合併する.CACやdysplasiaを早期に発見するためには,定期的なsurveillance colonoscopyが不可欠と考えられており,最近ではより確実で効率的な方法の確立が重要な課題となっている.Dysplasiaが発見された場合の取り扱いについては,異型度や形状などから総合的に判断する必要がある.
原著
  • 中村 裕也, 太田 正穂, 出江 洋介, 船田 信顕
    2006 年 103 巻 7 号 p. 812-818
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/05
    ジャーナル フリー
    進行食道癌による食道狭窄,瘻孔形成症例に対し,食道ステント(以下ステント)留置は施行されるが,直接死因に関わる合併症も少なくない.非切除進行食道癌でステント留置が施行され,病理解剖された6症例を,ステントの合併症への関与について検討した.臨床所見でステントによる合併症が疑われたのは2例だったが,病理解剖所見ではステント留置部に出血を呈する症例を3例,縦隔炎が判明した症例を1例,ステントが食道外膜に達し食道穿孔が切迫する症例を1例認め,臨床所見以上に重篤な合併症が生じている可能性が示唆された.ステント留置はQOL向上に寄与する所は大きいが,致命的な合併症も生じ,適応は慎重に決定するべきである.
  • 中西 正芳, 野口 明則, 竹下 宏樹, 山本 有祐, 伊藤 忠雄, 谷 直樹, 菅沼 泰, 山口 正秀, 岡野 晋治, 山根 哲郎
    2006 年 103 巻 7 号 p. 819-826
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/05
    ジャーナル フリー
    GISTはSTI571の有効性が報告されて以来,その治療法が大きく変貌し,注目されている疾患である.われわれは2000年以降19例のGISTの治療を行った.19回の切除(局所切除14例,胃全摘2例,幽門側胃切除2例,肝切除1例)を施行,切除不能例や再発例5例に対してSTI571を投与した.STI571の治療効果はPR 2例,SD 1例,PD 1例,評価不能1例で奏効率は50%,病勢は80%の症例でコントロール可能であった.副作用として眼瞼,下腿の浮腫を全例に認めるなど副作用発生率は高いが,重度の副作用を認めず,安全性は高いと考えた.STI571と手術を適切に選択して治療を行うことが重要である.
症例報告
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