日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
112 巻, 5 号
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総説
  • 持田 智
    2015 年 112 巻 5 号 p. 813-821
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2015/05/05
    ジャーナル フリー
    急性肝不全は「正常肝に肝障害が生じ,その機能が短期間に著しく低下して,肝不全症候を呈する」疾患群である.その成因として肝炎ウイルス感染が多いわが国では劇症肝炎が代表疾患であり,薬物性中毒症例が主体である欧米のfulminant hepatic failureとは疾患概念が異なる.しかし,米国では2005年に疾患名がacute liver failureに統一され,わが国でも整合性を考慮して,2011年に厚生労働省研究班が急性肝不全の診断基準を発表した.わが国における急性肝不全の実態は,同研究班が全国調査を実施しており,肝炎症例が主体であるが,ウイルス性症例が減少傾向にあり,成因不明例が増加していることが明らかになった.その予後は不良であり,人工肝補助療法で覚醒は得られても,肝再生不全によって肝機能の改善が得られず,肝移植以外では救命できない症例が多い.
今月のテーマ:急性肝不全の現状と課題
  • 滝川 康裕, 片岡 晃二郎
    2015 年 112 巻 5 号 p. 822-828
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2015/05/05
    ジャーナル フリー
    急性肝障害は,昏睡を発現(劇症化)すると予後が極めて不良となるため,発症早期からその予防を念頭に入れて治療するべきである.しかし,昏睡型急性肝不全は頻度が少ないため,その正確な予知は困難であり,段階を踏んで確度を高める試みがなされている.現在,急性肝障害例を対象に,プロトロンビン時間により予知対象症例を選択し,昏睡発現の事前確率を高めたうえで予知式を適用し,得られた予測劇症化確率に従って専門施設への搬送を判断するシステムが提唱されている.B型肝炎や自己免疫性肝炎など,すでに有効な治療法が開発されている成因を中心に,このシステムによる昏睡発現率改善の可能性が示されている.
  • 安井 伸, 藤原 慶一, 横須賀 收
    2015 年 112 巻 5 号 p. 829-839
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2015/05/05
    ジャーナル フリー
    急性肝不全は予後不良の疾患群であり有効性の明らかな治療法は肝移植のみである.しかし本邦ではドナー不足の問題があり,内科的治療が治療の主体となっている.内科的治療として免疫抑制療法(ステロイド),抗凝固療法,抗ウイルス療法(核酸アナログ),人工肝補助療法などによる集学的治療が行われている.急性肝不全の予後は成因と病型に規定されるため,内科的治療はそれらに応じた指針が作成されるべきであるが,疾患の稀少性・致死性のためランダム化比較試験を行いにくく,議論の余地のある項目も多く存在する.今後は多施設共同試験などによってエビデンスを構築し,一方で再生医療などの基礎的研究を進めていく必要がある.
  • 中山 伸朗, 持田 智
    2015 年 112 巻 5 号 p. 840-847
    発行日: 2015/05/05
    公開日: 2015/05/05
    ジャーナル フリー
    厚生労働省研究班は日本急性肝不全研究会の発表した劇症肝炎の肝移植適応ガイドライン(1996年)を改訂し,多変量解析に基づくスコアリング・システムを発表した.さらにデータマイニング手法である決定木法,radial basis function(RBF)法およびback propagation(BP)法を用いて,正診率の高い4種類の予後予測モデルと,これらを統合して予後予測値を算出するハイブリッド型統合モデルを確立した.現在はスタンド/アローン・システムで運用しているが,今後はパスワードを配布された専門医がインターネット上で自由にアクセスできるブラウザー/サーバー・システムに移行する予定である.
症例報告
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