日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
113 巻, 8 号
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総説
  • 竹山 宜典
    2016 年 113 巻 8 号 p. 1345-1350
    発行日: 2016/08/05
    公開日: 2016/08/05
    ジャーナル フリー

    急性膵炎は,膵内で病的に活性化された膵酵素による膵の無菌的炎症であり,数日の絶食で軽快する軽症から致死率が10%に達する重症急性膵炎まで,多彩な病態を呈する.重症では膵の炎症が全身に波及し,血管内皮細胞障害から遠隔臓器不全や汎血管内凝固症候群をきたす.膵の局所病変は,膵または膵周囲に壊死がある壊死性膵炎と,壊死のない間質性浮腫性膵炎に分けられ,一般的には発症後4週以降では,前者は被包化壊死,後者は仮性囊胞と分類される病態を呈する.さらに重症例では,bacterial translocationによりこれらの局所病変に感染を生じ,適切な治療がなされなければ敗血症を合併する.

今月のテーマ:急性膵炎をめぐる諸問題
  • 大村谷 昌樹
    2016 年 113 巻 8 号 p. 1351-1357
    発行日: 2016/08/05
    公開日: 2016/08/05
    ジャーナル フリー

    トリプシノーゲンの異所性(膵内)活性化(トリプシン生成)に引き続いて生じる連鎖的な諸プロテアーゼの活性化によって,膵の構成細胞が自己消化されるに至るという機構が,膵炎の主要な発症機構と考えられている.腺房細胞内でどのようなメカニズムでトリプシノーゲンの異所性活性化が引きおこされるのか次第に明らかとなり,近年は細胞外からの刺激がどのようにトリプシノーゲンを活性化するのかと範囲を広げて,研究が進められている.さらに,トリプシノーゲンの活性化が必ずしも急性膵炎の発症に必須ではないとする知見も報告され,今後の急性膵炎発症メカニズム研究のさらなる展開が期待される.

  • 五十嵐 久人, 河邉 顕, 伊藤 鉄英
    2016 年 113 巻 8 号 p. 1358-1364
    発行日: 2016/08/05
    公開日: 2016/08/05
    ジャーナル フリー

    急性膵炎の年間受療者数は近年増加傾向にある.死亡率は重症例で10.1%と良性疾患でありながら重篤な疾患であり,予後の改善が求められている.急性膵炎の予後は多くの場合,発症後48時間以内の病態によって決定され,初期診療の善し悪しが患者の生命予後を決定するといっても過言ではない.本稿では,これまで本邦において行われてきた膵炎診療と,2015年発刊されたガイドラインで新たに記載された事項を含め,急性膵炎の初期診療について概説する.また現在本邦における課題についても述べる.今後,エビデンスが蓄積され,急性膵炎診療のさらなる向上が望まれる.

  • 峯 徹哉, 竹山 宜典, 下瀬川 徹
    2016 年 113 巻 8 号 p. 1365-1370
    発行日: 2016/08/05
    公開日: 2016/08/05
    ジャーナル フリー

    日本膵臓学会と厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業難治性膵疾患に関する調査研究班から支援をいただき,2015年,ERCP後膵炎に対するガイドラインを作成した.ERCP後膵炎の診断基準は日本消化器内視鏡学会で作成されたが,国内でも十分に活用されているとはいいがたかった.外国でも作成されたが改訂されていない.われわれのガイドラインはEBMに基づいたものであり,世界を見回してもEBMに基づくERCP後膵炎のガイドラインはみあたらない.われわれは将来的にERCP後膵炎の診断基準を見直し,より速やかに治療を行い救命できるようにすると同時に,重症のERCP後膵炎を生じさせない方法を検討する必要がある.

  • 伊佐山 浩通, 山本 夏代, 小池 和彦
    2016 年 113 巻 8 号 p. 1371-1379
    発行日: 2016/08/05
    公開日: 2016/08/05
    ジャーナル フリー

    急性膵炎後の合併症で内視鏡治療の対象となるのは,囊胞形成と主膵管の狭窄・破綻である.囊胞は,非壊死性膵炎から膵周囲液体貯留(APFC)を経て形成される仮性囊胞(pseudocyst)と,壊死性膵炎から壊死物質が被包化されていく過程でacute necrotic collectionからwalled-off necrosis(WON)に分類される.治療の適応は感染を主体とする有症状例であり,内視鏡的治療としては,超音波内視鏡ガイド下ドレナージと直接スコープをWON腔内へ挿入するnecrosectomy,膵管ドレナージが施行される.病態に応じた治療と適切な手技が必要であり,早期に治療戦略の確立が望まれる.

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