日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
114 巻, 7 号
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総説
  • 杉原 健一
    2017 年 114 巻 7 号 p. 1195-1200
    発行日: 2017/07/05
    公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー

    Stage IV大腸癌は大腸癌の約17%を占め,そのうち肝転移が55.8%,肺転移が12.2%,腹膜播種が22.9%で,骨転移や遠隔リンパ節転移を含めたその他は9.1%である.大腸癌では遠隔転移があっても切除により治癒が期待できることから,原発巣と遠隔転移がともに切除できれば切除が勧められる.しかし,遠隔臓器切除後の再発率が60~70%であることから,遠隔転移巣切除の適切な時期や,大腸癌の化学療法の進歩により登場した周術期化学療法の是非が,解決すべき問題点である.また,症状のないStage IV大腸癌に対し原発巣を切除せず化学療法のみで治療する方針の妥当性を明らかにする必要がある.

今月のテーマ::Stage IV 大腸癌治療の最前線
  • 石川 敏昭, 安野 正道, 植竹 宏之
    2017 年 114 巻 7 号 p. 1201-1208
    発行日: 2017/07/05
    公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー

    切除不能な遠隔転移を有するStage IV大腸癌の治療において原発巣の切除およびそのタイミングについてはさまざまな考え方がある.特に無症状な原発巣の切除の意義は定まっていない.原発巣切除が予後延長に寄与する可能性が示唆されているが,明確なエビデンスはない.進歩した化学療法により原発巣制御が可能であり切除は不要とする報告もある.原発巣切除の適応は原発巣および遠隔転移巣の状態や全身状態,予想される予後と症状,手術リスクを検討して判断する.現在,無症状な原発巣を有する切除不能Stage IVに対する姑息的な原発巣切除の意義を検証するランダム化比較試験が進行中である.

  • 室野 浩司, 石原 聡一郎, 渡邉 聡明
    2017 年 114 巻 7 号 p. 1209-1216
    発行日: 2017/07/05
    公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー

    Stage IV大腸癌の転移巣に対する治療としては手術療法,全身化学療法,動注化学療法,熱凝固療法,放射線療法などが挙げられるが,大腸癌治療ガイドラインでは「切除可能な場合には転移巣の切除を考慮する」とされている.一方で,切除不能な場合は化学療法など他の治療法が選択される.近年全身化学療法の進歩により,切除不能と判断された症例においても化学療法が奏功し根治切除が可能となる症例が増加しており,今後は化学療法と手術療法を組み合わせた集学的治療が重要となる.本稿では大腸癌の転移巣として頻度の高い肝・肺・腹膜播種を中心に,転移巣に対する治療戦略における最近の知見および今後の課題について解説する.

  • 室 圭
    2017 年 114 巻 7 号 p. 1217-1223
    発行日: 2017/07/05
    公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー

    切除不能進行再発大腸癌では全身化学療法が標準治療である.近年その進歩は著しい.それは,次々と新規抗癌剤や分子標的治療薬が承認・臨床導入されたことの影響が大である.各種薬剤の適切な治療実践,RAS遺伝子診断による抗EGFR抗体薬を用いた治療の個別化,後方ラインにおけるマルチキナーゼ阻害薬のregorafenibや,新規ヌクレオシド系抗癌剤であるTAS-102の承認などにより,大腸癌の治療成績は近年飛躍的に向上し,生存期間中央値は30カ月に達している.近年のトピックとして,MSI-high大腸癌における抗PD-1抗体薬の有効性が報告され,今後の展開が期待される.

座談会
原著
  • 勝島 慎二, 小畑 達郎, 米田 俊貴, 濵田 聖子, 筑後 孝紀, 中野 重治, 下釜 翼, 熊谷 健, 太田 義之, 遠藤 文司, 江坂 ...
    2017 年 114 巻 7 号 p. 1247-1254
    発行日: 2017/07/05
    公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー

    C型肝炎ウイルスgenotype/serotype乖離例でのDAAs薬剤選択における,genotype 1b特異的な薬剤耐性変異(RAV)解析の有用性を検討した.DAAs導入を検討した559例にcore-genotypingとserotypeを判定し,乖離例ではNS5A領域のRAV解析を追加した.乖離例は8例で1例がgenotype 1b/serotype 2でRAV解析判定可能,genotype 2/serotype 1は7例,うち4例でRAV解析判定可能であった.乖離例でRAV解析判定可能であれば,NS5A領域がgenotype 1bと相同性の高いHCVが存在することを念頭に,治療を選択すべきである.

  • 岡野 淳一, 松木 由佳子, 永原 蘭, 山根 昌史, 岡本 敏明, 三好 謙一, 的野 智光, 大山 賢治, 法正 恵子, 磯本 一
    2017 年 114 巻 7 号 p. 1255-1263
    発行日: 2017/07/05
    公開日: 2017/07/05
    ジャーナル フリー

    初発肝細胞癌(HCC)患者651例を調査した.HBV 20.0%,HCV 36.3%,非アルコール性非B非C型(NBNC)24.4%,アルコール性NBNC 19.0%で,全HCCの平均腫瘍径は約4.0cm,診断契機の検査法は腹部超音波やdynamic CTが多かったが,単純CTや通常の造影CTも18.6%存在した.サーベイランス遵守率は,HBVが35.4%,HCVが49.2%と低く,その逸脱原因はHBV・HCV陽性の非認識や未受診,医師のサーベイランス非遵守であった.HBV・HCV陽性者の掘りおこし,受診率の向上,医師への啓発活動に加え,NBNC HCC危険因子同定が喫緊の課題である.

症例報告
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