日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
118 巻, 12 号
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今月のテーマ(総論):慢性膵炎診療の現況と展望
  • 菊田 和宏, 正宗 淳
    2021 年 118 巻 12 号 p. 1089-1097
    発行日: 2021/12/10
    公開日: 2021/12/10
    ジャーナル フリー

    2019年に10年ぶりに慢性膵炎臨床診断基準が改訂された.今回の改訂では,慢性膵炎の定義にmechanistic definitionの考え方が取り入れられ,早期慢性膵炎の診断項目が危険因子の観点から見直された.膵炎関連遺伝子異常と急性膵炎の既往が診断項目に組み入れられ,診断特異度の向上が期待される.臨床徴候に背部痛が追加され,飲酒歴については純エタノール換算60g/日に基準が緩和された.画像診断基準では確診と早期慢性膵炎の診断項目にMRCP所見が追加され,早期慢性膵炎のEUS所見が整理された.改訂された診断基準が,慢性膵炎診療のさらなる質の向上と患者の予後改善につながることが期待される.

今月のテーマ(総説):慢性膵炎診療の現況と展望
  • 二神 生爾, 阿川 周平, 山脇 博士
    2021 年 118 巻 12 号 p. 1098-1106
    発行日: 2021/12/10
    公開日: 2021/12/10
    ジャーナル フリー

    早期慢性膵炎は臨床症状,膵機能検査,超音波内視鏡検査所見を基に総合的に診断する.難治性心窩部痛患者に対し,trypsinを含む複数の膵酵素を測定し膵酵素異常を認めた場合に,積極的に超音波内視鏡検査を施行することが早期慢性膵炎の拾い上げに有効である.難治性心窩部痛患者に対しては,安易にPPIによる治療継続を行わず,非アルコール性早期慢性膵炎に対しては慢性膵炎に準じた治療により超音波内視鏡像の改善が期待できる.アルコール性の早期慢性膵炎患者もしくは非アルコール性早期慢性膵炎患者においても,dilated side branchesなどの超音波内視鏡所見をともなう患者に対しては慎重な経過観察が必要である.

  • 齋藤 友隆, 中井 陽介, 藤城 光弘
    2021 年 118 巻 12 号 p. 1107-1116
    発行日: 2021/12/10
    公開日: 2021/12/10
    ジャーナル フリー

    慢性膵炎の進展予防には,急性増悪の頻度を抑えることが有効と考えられており,急性増悪の原因となる膵石・膵管狭窄の再発を減らす工夫が必要である.内視鏡による早期治療介入,遺残膵石を減らすために開発された膵石治療専用バスケット,膵管狭窄に対する内視鏡的ステント治療での試み,これらの工夫により急性増悪の抑制が期待される.一方,慢性膵炎にともなう膵外分泌機能不全に対して膵酵素補充療法が有用だが,直接的な進展抑制のエビデンスはほとんどない.しかし膵酵素補充療法による消化不良の改善によって,サルコペニア・予後の改善が得られることが期待されている.慢性膵炎の進展予防をめぐる現状・課題,ならびに展望について述べた.

  • 竹山 宜典
    2021 年 118 巻 12 号 p. 1117-1121
    発行日: 2021/12/10
    公開日: 2021/12/10
    ジャーナル フリー

    慢性膵炎治療における外科治療は,内科的治療に抵抗性の難治性疼痛に適応がある.主膵管に狭窄があり膵管内に膵石が貯留しているような症例では,まず内視鏡治療と結石破砕を組み合わせる内科的治療が第一選択であるが,奏功しなかった場合には躊躇せず外科治療を考慮する.奏功しない内視鏡治療を長期に継続すると,手術の除痛効果にも悪影響が生じる可能性があり,1年程度または内視鏡治療5回までを目安に外科治療に移行する.外科治療は,症状出現後3年以内で麻薬使用前に施行すると,術後疼痛緩解率が良好で,膵機能保持や再手術の回避にもつながることが明らかとなっており,内視鏡医と外科医の緊密な連携が重要である.

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