日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
119 巻, 9 号
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今月のテーマ(総論):ウイルス肝炎診療の現状と課題
  • 竹原 徹郎
    2022 年 119 巻 9 号 p. 787-792
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル フリー

    この30年間のウイルス肝炎に対する診療の進歩には目覚ましいものがある.C型肝炎に関しては,1989年のウイルスの発見を淵源として,抗ウイルス治療による疾患の克服が進み,その到達点として非代償性肝硬変に対してDAA治療が可能になった.AMEDの支援を受けた研究により,リアルワールドにおける安全性と効果が確認されたが,肝疾患の可塑性という視点からは限界があることも浮き彫りになった.ウイルス排除後の肝疾患の病態を解明すべく,さらなる研究が加速している.一方,B型肝炎に関して,核酸アナログ治療により肝不全への移行は激減したが,肝癌の発生が低下していない.感染からの離脱を目指した創薬研究が急加速している.

今月のテーマ(総説):ウイルス肝炎診療の現状と課題
  • 黒崎 雅之
    2022 年 119 巻 9 号 p. 793-801
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル フリー

    直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の登場により,C型肝炎症例のほとんどでウイルス排除が可能となった.これにともない,治療対象の概念も大きく変化し,ウイルス排除により予後が改善できない状態を除き,すべてのC型肝炎ウイルス感染者に対して治療を行うことが推奨されている.通常の慢性肝炎や代償性肝硬変における治療薬の選択はシンプルになったが,特殊な病態においては治療ガイドラインに従い最適な治療法を選択する必要がある.ウイルス排除により,慢性進行性の病態はある程度まで可逆的であるが,ウイルス排除後も病態が改善しない,あるいは進行する場合もあるため,個々の症例においてウイルス排除後の病態を適切に把握することが必要である.

  • 田中 靖人
    2022 年 119 巻 9 号 p. 802-811
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル フリー

    B型肝炎ウイルス(HBV)持続感染者に対する抗ウイルス治療の短期目標は,ALT持続正常化(30U/L以下),HBe抗原陰性かつHBe抗体陽性,HBV DNA増殖抑制の3項目であり,長期目標はHBs抗原消失,すなわちfunctional cureである.HBs抗原の陰性化は,肝硬変への進展および肝発癌を抑制することが示されている.新規薬剤の開発は,ウイルス自体を標的としたdirect-acting antiviral agents(DAAs)と免疫を含む宿主因子を標的としたhost-targeting antiviral agents(HTAs)の2つのストラテジーがあり,肝細胞内cccDNAの排除を目指している.

  • 持田 智
    2022 年 119 巻 9 号 p. 812-820
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル フリー

    B型肝炎ウイルスが肝細胞に感染すると,核内には2本鎖閉鎖環状DNAが生涯にわたって残存する.このためHBs抗原陽性のキャリアのみならず,HBs抗原陰性,HBc抗体ないしHBs抗体が陽性の既往感染例であっても,免疫抑制・化学療法を実施すると,血清HBV-DNA量が高値になり,肝炎を発症する場合がある.肝炎の発症は,日本肝臓学会のガイドラインに準拠したスクリーニングとモニタリングによって予防可能である.しかし,厚生労働省研究班の全国調査では,免疫抑制・化学療法が誘因のB型急性肝不全が根絶できていない.ガイドライン遵守の啓発活動と,医療経済も考慮した新たな対策の構築が必要である.

  • 江口 有一郎
    2022 年 119 巻 9 号 p. 821-829
    発行日: 2022/09/10
    公開日: 2022/09/12
    ジャーナル フリー

    B型慢性肝疾患およびC型慢性肝疾患といったウイルス肝炎は,効果的な経口薬の登場により適切に標準的な治療を行うことによって肝硬変や肝がんへの進行を抑えることが可能となった.その達成にはすべての国民が一度は肝炎ウイルス検査を「受検」し,感染が疑われれば,精密検査を「受診」し,必要であれば抗ウイルス治療を「受療」することが必要である.またわが国では,肝炎対策基本法を柱として国を挙げてのウイルス肝炎対策が行われている.いまだ感染しつつも感染が判明してない,また判明しつつも適切なマネジメントを受けていない感染者を減らすために,専門医をはじめとする医療者や関係者の理解と協力が必要である.

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症例報告
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