膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;IPMN)は最も頻度の高い膵囊胞性疾患である.最新の診療ガイドラインではhigh risk stigmataとworrisome featuresの改訂,非切除例や術後の経過観察指針の改訂,病理学的事項の整理など,エビデンスに基づいた精査,手術および経過観察の指針が提示された.特に非切除例のサーベイランスでは検査間隔や画像評価法も改訂され,症例に応じて経過観察を中止するオプションも追加された.ガイドラインに基づくIPMN診療が,膵癌の早期診断に貢献することが期待される.
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)国際診療ガイドライン2024年版においては,各領域においてシステマティックレビューが実施され,診断治療におけるエビデンスに基づいた方針が示された.従来のガイドラインにおいてEUS診断は術者の技量に依存する点もありオプション的な役割であったが,EUSによる壁在結節診断感度は90%以上であり,造影CTやMRCPと同等以上であると報告され,Kyotoガイドラインにおいては画像診断法の1つとして採用された.手術治療を検討する画像および臨床的因子はhigh risk stigmataおよびworrisome featuresに層別化されて示され,IPMN由来癌(high-grade dysplasia/invasive carcinoma)を診断する指針となる.
分枝型IPMN(intraductal papillary mucinous neoplasm)は膵癌の危険因子として注目されてきており,経過観察の対象となることも多く,長期経過観察のエビデンスも増えている.新たに改訂された,エビデンスに基づくIPMN国際診療ガイドラインのポイントを中心に解説する.また,これまでのIPMNの経過観察はIPMN由来癌のリスクを中心に設定されていたが,本邦ではIPMN併存癌もIPMN由来癌と同様に合併することが報告されており,IPMN併存癌の診断の課題と,海外で議論されることが多い経過観察終了の妥当性についても触れる.
膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;IPMN)の外科手術の目的は,浸潤癌と浸潤癌に進展する可能性の高い高度異型成を切除し,患者の予後の改善を図ることである.今回国際診療ガイドラインの改訂に際して,システマティックレビューが行われ,エビデンスに基づいて手術適応(high-risk stigmata/worrisome features)の決定および術後サーベイランスの推奨が行われた.この稿ではIPMNの手術適応,手術,術後サーベイランスについて国際診療ガイドラインおよびシステマティックレビューの内容を中心に解説する.
IPMN国際診療ガイドラインの改訂版であるKyoto guidelinesでは,臨床的および病理学的テーマに基づき構成された5つのグループがクリニカルクエスチョンの設定とそれに対するシステマティックレビューを行い,evidence-basedのガイドラインが作成された.本稿では病理学的事項であるIPMNの組織タイプ,intraductal oncocytic papillary neoplasm,high-grade dysplasiaとcarcinoma in situ,pT評価,IPMN由来癌と併存癌の鑑別,分子異常,術中迅速病理診断,囊胞液穿刺細胞診について解説した.
症例は48歳男性.X-24年にクローン病(Crohn's Disease;CD)と診断され,5回の手術歴があった.X-13年に腹部正中創に腸管皮膚瘻が生じ,チオプリン製剤内服で分泌が減少,同治療を継続した.X年に瘻孔部腹壁に腫瘤を認め,生検で扁平上皮癌と診断した.化学放射線療法後に瘻孔の原因腸管と腹壁を切除し,病理学的完全奏効を得た.CDの腸管皮膚瘻に生じた扁平上皮癌はまれであるが,長期に炎症が続く病変部は発癌への留意が必要である.
症例は78歳,男性.膵頭部に境界不明瞭な腫瘤を認め,経乳頭的胆管生検にて膵神経内分泌癌と診断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査では,肝外胆管原発神経内分泌癌と診断された.肝外胆管原発神経内分泌癌はまれで,予後不良な疾患である.外科的切除ならびに化学療法を組み合わせた集学的治療が求められる.