ベーチェット病(BD)は皮膚粘膜に再発性の炎症をきたす指定難病であり,中でも腸管型BDは重症病型と定義されている.近年,本邦では腸管型BDの割合が経時的に増加している.他の炎症性腸疾患と同様に,環境因子や腸内細菌叢の変化が関与している可能性がある.筆者らの亜型解析により,腸管型BDはHLA-B51陰性例が多く,不全型の割合が高く,国際ベーチェット病研究会の分類基準を満たしにくく,診断が困難であること,入院頻度が高いことなどから,他の亜型とは異なる特徴を有する独立した病態である可能性を提起した.本稿では,リウマチ内科の視点から全身性疾患としてのBDの中で,腸管型BDの特徴について論じる.
ベーチェット病(Behçet's disease;BD)の特殊型である腸管型BDは,血便や腹痛などを主訴とし,BDの診断基準において完全型または不全型の条件を満たし,かつ回盲部を中心に円形または類円形の深掘れ潰瘍を有し,さらに他疾患を鑑別できると定義される.一方,回盲部に限局する慢性打ち抜き潰瘍を有するもBDの完全型や不全型の条件を満たさないものを単純性潰瘍とする本邦独自の疾患概念があるが,画像や病理所見のみで腸管型BDと区別することは困難である.骨髄異形成症候群のトリソミー8を有する症例に腸管型BD類似の腸管病変合併例の報告が増えており,今後腸管型BDとの異同も含めた病態解明が望まれる.
腸管型ベーチェット病(Behçet's disease;BD)は,回盲部に大型の打ち抜き潰瘍を生ずる特殊型BDの1つとして定義される.その病理組織像は好中球浸潤を主体としたいわゆる“非特異的”な炎症像であり,腸管型BD単独の検討では特徴を捉えることが難しい.クローン病の組織像との対比から腸管BDの組織学的な炎症の拡がりはごく限局的であることが示唆されており,典型病変においては除外診断的ではあるものの組織生検でもある程度の鑑別が可能となっている.しかしながら,骨髄異形成症候群に生じる消化管病変やA20ハプロ不全症の消化管病変との組織学的鑑別はいまだ困難であり,臨床と病理の一層の連携が必要である.
腸管型ベーチェット病(腸管型BD)は希少疾患のため,治療エビデンスが乏しい.主な既存治療には5-ASA製剤,栄養療法,ステロイド,免疫調節薬などがあるが,エキスパート・コンセンサスに基づき選択される.5-ASA製剤は寛解導入・維持の第一選択薬として提案される.ステロイドは中等症以上の寛解導入に使われるが依存・抵抗例も多く,抗TNF-α抗体製剤との使い分けに関しては前向き研究の結果が待たれる.コルヒチンの腸管病変への有効性は明らかでないが,他のBD徴候に対して投与することがあり,コルヒチンの有害事象の鑑別に留意が必要である.これら既存治療は,選択肢が限られる中で患者の状態に応じた使用判断が求められる.
腸管型ベーチェット病は,獲得免疫と自然免疫の異常が関与する自己炎症性かつ自己免疫性疾患であり,TNF-αなどの炎症性サイトカインが病態に深く関与する.難治例に対する抗TNF-α抗体(インフリキシマブ,アダリムマブ)は短期・長期ともに高い有効性が報告されている.当科の成績においても,両薬剤ともに短期の内視鏡的寛解率,長期維持効果が認められ,その効果は小腸・大腸の病変部位によらず有効性が高い.近年ではホスホジエステラーゼ4を標的とする新規治療,骨髄異形成症候群合併例への分子標的治療も注目されており,今後は病態に応じた個別化医療と多施設共同研究によるエビデンスの確立が求められる.
内視鏡関連筋骨格系障害(E-MSDs)の現状を明らかにするため,消化器内科医を対象にアンケート調査を行い,44施設・114名より得た回答を解析した.68.4%の医師がE-MSDsを経験し,うち42.3%が日常業務に支障をきたしていると回答していた.年齢および内視鏡経験年数が症状の有無と有意に関連し,左手の症状の有無と関連する因子として下部消化管内視鏡検査件数が検出された.また,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を1カ月に10件以上施行している医師群は症状スコア,頸肩症状の発生率が有意に高値であった.本邦においてもE-MSDsの実態の把握や対策は急務と考える.
症例は70歳代の男性で,多量下血のため救急搬送された.上部消化管内視鏡検査にて十二指腸主乳頭部対側の粘膜下腫瘍様病変からの出血を認め,止血困難であった.生検結果は壊死組織や炎症所見のみであった.超音波内視鏡検査では粘膜下層に35mm大の低エコー病変を認め,超音波内視鏡下組織採取の病理結果で低~未分化な腫瘍が疑われた.膵頭十二指腸切除術を施行して十二指腸類上皮血管肉腫と診断した.術後5カ月に肝転移を認めた.
症例は79歳女性.腹痛,吐下血を主訴に救急搬送となった.血液検査でHb:10.0g/dlと貧血を認め,腹部単純CT検査で完全内臓逆位と十二指腸下行脚から水平部の囊胞状構造に高吸収域を認め,十二指腸憩室出血の診断で緊急上部内視鏡検査を施行した.十二指腸下行部の血餅を除去すると露出血管を認め,クリップ法で止血した.完全内臓逆位で内視鏡操作が困難な中でも,操作に工夫をすることで内視鏡的止血は可能と考えられる.
症例は88歳,女性,下血を主訴に当院を救急受診した.経肛門的小腸内視鏡検査にて,下部回腸に細長い“worm-like”ポリープを認めた.同病変に対して単孔式腹腔鏡補助下回腸部分切除術を施行した.病理検査でenteric muco-submucosal elongated polypと診断した.小腸原発は非常にまれであり,腹腔鏡手術を施行しえた1例を経験したので報告する.