神経内分泌腫瘍(NEN)は,現在のWHO分類では高分化型NETと低分化型NECに分類され,さらに増殖能,ソマトスタチン受容体発現の有無などを考慮して治療方針が立てられる.外科切除は治癒切除可能なすべてのNET,また一部のNECに対する第一選択の治療であるが,そのエビデンスレベルは高くなく,遠隔転移切除に関しては適応縮小の傾向が見られる.薬物療法は2010年代から切除不能/再発NENに対する治療の中心的役割を担ってきたが,PRRTの普及にともない,その位置づけが低下する可能性がある.遠隔転移陽性NET,またすべてのNEC症例は集学的治療の対象であり,PRRTを含めた治療戦略の再構築が求められている.
神経内分泌腫瘍(NEN)は希少腫瘍であるとともに,全身臓器に発生して多彩な臨床症状を呈する.わが国における疫学は2005年および2010年に受療した膵消化管NENに対して2回の全国疫学調査が施行された.年間受療者,年間有病数,年間新規発症数などが報告され,欧米との比較も判明してきた.さらに日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS)から,2016年の全国がん登録データを利用した人口動態ベースでの疫学調査の結果が報告されている.これらの疫学の情報はNEN領域の診断の進歩,および治療の集約化に有用であり,日本に適合した診断と治療を行うための膵消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドラインの発刊にも貢献した.
神経内分泌腫瘍は稀少で多様性に富み,近年薬物療法の進歩が著しい.消化管膵神経内分泌腫瘍に対しては,ソマトスタチンアナログ,分子標的治療薬,細胞障害性抗癌剤などが用いられ,治療選択MAPに基づいた治療選択が提案されている.さらに,ペプチド受容体放射性核種療法や新規薬剤の導入により,治療の幅は拡大しつつある.一方神経内分泌癌では,プラチナベースの化学療法を軸に,新たな免疫療法やバイオマーカーに基づく治療も期待されている.本稿では,現時点の標準的治療と今後の展望について解説する.
神経内分泌腫瘍(NEN)に対する治療選択肢の1つであるペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)は,2021年より本邦でも使用可能となり,臨床応用が広がっている.従来は2次治療以降の選択肢とされていたが,近年のNETTER-2試験により,G2~G3の進行消化管膵NENにおける初回治療としての有効性が示された.本稿では,NENの概要とともに,PRRTの基礎・エビデンス・日本での導入状況に加え,NETTER-2試験を中心に1次治療としてのPRRTの可能性を考察する.
局所にとどまる神経内分泌腫瘍(NET)に対する手術適応は,大きさに加えてKi67や脈管侵襲などの因子を勘案して決定する.局所にとどまる神経内分泌癌(NEC)に対しては積極的に切除を考慮できる.肝転移に関しては,根治的な切除を行うほど予後改善効果が大きく,さらに根治的切除が可能な症例でもKi67や個数を考慮することで,外科切除による効果の大きい対象を選定できる.肝移植は本邦では自費診療の域を出ないが,世界的にはミラノクライテリア内であれば切除より良好な成績の報告が散見されている.いずれの治療に対しても,腫瘍因子以外に,年齢を含めた患者因子などを考慮して治療適応を決定する必要がある.
47歳男性.大腸型クローン病の診断後12年,肛門部痛精査目的の大腸内視鏡検査で直腸に不整隆起を認め,高分化型腺癌の診断で当科紹介.病理組織検査の再検は肛門管に発生したhigh grade dysplasia(HGD)の診断で,横行結腸から遠位の結腸切除・直腸切断術を施行.切除標本の最終診断もHGDであった.本邦のクローン病合併HGD症例はまれで,内視鏡検査の重要性と早期発見への可能性が示唆された.
症例は黒色便を主訴とする80歳代男性,混合型膵管内乳頭粘液性腫瘍を認め,超音波内視鏡検査で同病変内に突出する4mm径の脾動脈瘤を認めた.1年間に2度の消化管出血症状を認め,脾動脈瘤破裂によるhemosuccus pancreaticus(HP)と診断し,腹腔鏡下膵尾部切除+脾摘出術を施行.病理診断で囊胞性腫瘍内に破綻した動脈瘤と血腫を認めた.膵囊胞性腫瘍が契機となったHPはまれであり報告する.