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―わが国の肝移植レシピエント選択基準との比較―
市田 隆文, 岩月 舜三郎, 各務 伸一
2001 年 98 巻 1 号 p.
1-7
発行日: 2001/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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脳死肝移植適応評価委員会での脳死肝移植の選択基準に関しては,欧米のそれと異なり対象疾患に優先順位を与えた.このことより肝移植医療に必要な公平差を欠くとの指摘を受けてきた.健全なる肝移植医療を立ち上げるための善意の操作であったが,UNOSの基準と合わせてもはや実状に合わなくなってきていることも事実である.アルコール性肝硬変より圧倒的に多い肝炎ウイルスによる肝疾患を念頭に置き,UNOSの選択基準を本誌で簡潔に紹介し,わが国における脳死肝移植の選択基準の改訂の必要性を記した.
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田中 紘一
2001 年 98 巻 1 号 p.
8-14
発行日: 2001/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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わが国における肝移植は,生体ドナーからの肝移植が主体で脳死肝移植は法施行後3年を経過したが未だ厳しい状況である.生体肝移植は導入後およそ10年が経過し移植施設が35,移植数が1200以上となり,着実に一般医療として定着の方向にある.現在の最大の課題は成人生体肝移植であるが,ドナー選択の医学的・社会的困難さ,サイズマッチングに伴う問題・ウイルス性肝疾患や肝癌への適応拡大に関する課題等多くの克服すべき点がある.今後,わが国での肝移植希望者はさらに増えてくることは間違いない.より質の高い移植医療と効率の良い医療経済の確立が重要である.
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神澤 輝実, 屠 聿揚, 江川 直人, 榊 信廣, 石渡 淳一, 鶴田 耕二, 岡本 篤武, 高橋 俊雄, 小池 盛雄
2001 年 98 巻 1 号 p.
15-24
発行日: 2001/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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特異的な膵管像を呈する膵管狭細型慢性膵炎13例の臨床病理学的特徴を検討した.比較的高齢の男性に多く,画像上膵管の狭細像,膵腫大,胆管の狭窄像を全例で認めた.高γグロブリン血症を9例で認め,自己抗体陽性所見とあわせて,自己免疫の強い関与が5例で推察された.外科的治療8例,ステロイド治療3例を含め,膵炎の予後は良好であった.病理組織学的には,リンパ球と形質細胞の著しい浸潤をともなう線維化を,膵小葉間間質,膵管周囲,膵周囲組織,胆道系,唾液腺など広範囲に,さらに膵内外の閉塞性静脈炎を認めた.これらの組織像は,後腹膜線維症などをともなうmultifocal fibrosclerosisに類似していた.膵管狭細型慢性膵炎の多くは自己免疫性膵炎と重なり合うが,multifocal fibrosclerosisの膵病変をみている例も存在すると考えられた.
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小村 泰雄, 上村 直実, 岡本 志朗, 山本 惣一郎, 松村 伸利, 山口 修司, 佐々木 なおみ, 谷山 清己
2001 年 98 巻 1 号 p.
25-30
発行日: 2001/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は62歳,男性,近医にて多発性の肝腫瘤を指摘され当科へ紹介受診.上部消化管内視鏡検査で下部食道に周堤をともなう不整形の潰瘍性病変を認め,病理組織学的に食道原発の小細胞型未分化癌と診断された.著明な肝および大動脈周囲のリンパ節転移も認めたが塩酸イリノテカンとシスプラチンによる全身化学療法により原発巣および転移巣の著明な改善と随伴するsyndrome of inappropriate secretion of ADHの改善も認めた.
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西山 正章, 荻原 健, 大越 恵一郎, 田中 晃, 坂本 吉隆, 小西 治郎, 林 逸郎
2001 年 98 巻 1 号 p.
31-36
発行日: 2001/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は72歳,男性.1990年より肝腫瘤を指摘されていた.下痢が持続し,肝腫瘤が増加増大したため1998年2月当科入院.肝腫瘍生検と小腸X線検査にて肝転移をともなう回腸力ルチノイドが疑われ,回腸部分切除術を施行しatypical carcinoidと診断された,術後酢酸オクトレオチド投与と肝動注化学療法を行い,転移巣の縮小と尿中5-HIAAの著明低下が認められ,術後2年5カ月後もカルチノイド症候群は消失し生存中である.
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石田 善敬, 大村 健二, 金平 永二, 川上 和之, 大田 浩司, 角谷 慎一, 滝沢 昌也, 雄谷 純子, 渡邊 剛, 野々村 昭孝
2001 年 98 巻 1 号 p.
37-41
発行日: 2001/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は71歳男性.43年前より慢性膿胸の既往あり.胃角部と十二指腸下行部に2型腫瘍を認めた.胃および十二指腸部分切除術を行い,血管肉腫と診断した.術後第42病日に腸重積となり,その先進部にも血管肉腫を認めた.本例は原発巣の確認ができなかった.しかし,長期におよぶ慢性膿胸の存在,複数の血管肉腫が消化管に同時に認められたことから,多発性消化管転移をともなう胸壁血管肉腫が強く疑われた.
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橋本 健一, 高橋 宏樹, 渡辺 文時, 蓮村 哲, 相澤 良夫, 戸田 剛太郎, 山田 哲久, 最上 拓児
2001 年 98 巻 1 号 p.
42-47
発行日: 2001/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は62歳,女性.意識障害を主訴に当科に入院した.血液検査上,肝機能は保たれているにもかかわらず,アンモニア,ICGR15,Fischer比が異常値を示した.組織学的に肝硬変には至っておらず,画像上,発達した胃腎シャントを認めた.更に,血中Mnの高値と,頭部MRI上両側レンズ核高信号域を認めた.非肝硬変性反復性シャント型肝性脳症と診断し,胃腎シャントをB-RTOにて閉鎖し,臨床症状,検査値の著明な改善を認めた.
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片桐 義文, 鬼束 惇義, 宮内 忠雅, 味元 宏道, 広瀬 光男, 島崎 信, 伊藤 陽一郎, 中村 俊之
2001 年 98 巻 1 号 p.
48-52
発行日: 2001/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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症例は64歳の男性.上行結腸ポリープの切除目的に下部消化管内視鏡検査をうけたが,Chilaiditi症候群のため内視鏡が肝彎曲部を通過せず外科的処置目的に入院した.注腸造影検査で肝彎曲部では結腸の走行がループ状であった.CTで肝の内側区域が描出されず,肝表面が陥凹し,同部に結腸を認めた.腹部血管造影検査で肝動脈,門脈の分岐異常は認めなかった.肝内側区域の形成不全により肝表面が陥凹し同部に結腸が入り,Chilaiditi症候を示したものと考えられた.肝生検組織では肝硬変の所見は認めなかった.肝内側区域に限局した形成不全はきわめてまれな症例と考えられたので報告する.
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村田 賢, 立石 秀郎, 西山 浩彦, 伊藤 基敏, 厨子 慎一郎, 今井 康陽, 西川 正博, 黒川 正典, 大澤 政彦, 吉田 重幸, ...
2001 年 98 巻 1 号 p.
53-57
発行日: 2001/01/05
公開日: 2008/02/26
ジャーナル
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granulocyte-colony stimuiating factor(G-CSF)産生胆嚢扁平上皮癌の1例を経験した.症例は62歳,男性.手術直前の血清G-CSF値,白血球数はそれぞれ50.8pg/m
l,46940/μ
lと高値を示したが術後に低下した.免疫組織学的にG-CSFは癌細胞の細胞質に発現した.胆嚢癌ではまれな組織型である扁平上皮癌がG-CSFを産生していたことは非常に興味深い点である.
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花畑 憲洋, 田辺 素子, 坂本 十一, 須藤 俊之, 棟方 昭博, 須藤 晃司
2001 年 98 巻 1 号 p.
58-63
発行日: 2001/01/05
公開日: 2008/02/26
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症例は43歳,女性.原発性胆汁性肝硬変,シェーグレン症候群の診断で経過観察中,主膵管の著明な拡張と左腎下方に腫瘤がみられ入院となった.入院時,膵頭部の膵管径は約30mmであったが,約1カ月後,膵管径は6mmと著明な変化がみられ,分枝膵管の不整な拡張も認めた.後腹膜腫瘍の手術の際施行した膵生検組織像は慢性膵炎の像であった.膵管径の変化の原因は不明なものの,経過より何らかの自己免疫的な機序が考えられた.
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