胃運動機能ノ觀察ニ護謨球法ヲ最初ニ探用セルハMoratニシテ, 以來Boldyreff, Cannon a.Washburn, Carlson, Danieloolu等ノ研究アリ.本邦ニ於テ胃曲線描綴法ヲ診斷學ニ最初ニ應用セルハ小野轡教授門下ノ鐘ケ江氏ニシテ, 以後小野轡教授並ビニソノ門下ヲ初メ多數ノ追試發表アルモ, 多クハソノ診斷的價値ノ検討ニシテ胃腸疾患ノ經過ト共ニ胃曲線ノ變化ヲ檢索セノハ極メテ僅少ナリ.又岡田欷授ハ先ニ胃及ビ十二指腸潰瘍ノ新治療劑トシテ, 豚ノ臠及ビ十二指腸粘膜ヨリ「スチムリン」M及ビDヲ創製セラレ, 從來多種多樣ニシテ確實ナル潰瘍療法ナキ醫療界ニ一新治療法ヲ提供セテレタリ.
余ハ胃及ビ十二指腸瘍・胃癌及ビ胃下垂症ノ胃曲線ヲ檢シテ, ソノ診斷的價値ヲ探求シ, 更ニ上記疾患ニ於ケル胃曲線ニ及ボス「スチムリン」M及ビDノ値接作用ヲ檢スルト共ニ, 胃潰瘍ニハ「スチムリン」Mヲ, 十二指腸潰瘍ニハ「スチムリン」Dヲ注射シテ諸症状ノ輕快・消失ニ依リ生ズル胃曲線ノ變化ヲ追求檢索セリ, 尚胃癌及ビ胃下垂症ニ就イテモ該劑注射ニ依リ如何ナル變化アルヤチ探求セリ.
即チ胃及ビ十二指腸潰瘍・臠癌・胃下垂症ニ對スル「スチムリン」M及ビD注射ニ依ル直接作用ニ於テハ胃曲線ニ何等ノ變化ヲ認メズ.
胃及ビ十二指腸潰瘍ニ於ケル澱瘍曲線ノ出現率ハ80.2%ニシテ, 胃曲線型ト潰瘍部位及ビ胃液酸度トノ間ニハ一定ノ關係ナシ.而シテ斯カル潰瘍曲線ハ「スチムリン」M及ビD注射平均17.3囘及ビ13.5囘ニテ症状消失ニ先ンジテ既ニ約半數ニ正常魏トナリ, 全治又ハ輕快時 (平均注射45.4囘及ビ41.8囘) ニハ胃潰瘍ニ於テハ65.5%, 十二指腸潰瘍デハ81.8%ガ疋常曲線型テ呈セリ。第3型ヲ呈セル猛例ハ全例共ニ疋常型ニ復セズ.
自覺及ビ他覺症状ハ大多數例ニ於テ「スチムリン」M及ビD注射30囘以下ニテ消失シ, 臨牀上ノ治癒率ハ腎潰瘍79.3%, 十二指腸潰瘍90.9%ニシテ胃曲線型ヨリ見タル治癒率ニ比シ約10%優レリ.
胃癌ニ於ケル癌型曲線ノ出現率ハ85%ニシテ, コノ數値ハレ線檢査・潛血反應・腫瘍觸知率ト相匹敵ス.早期癌ノ頻度ハ66.7%ナリ。
胃癌發生部位及ビ胃液酸度ト胃曲線型トノ間ニハ一定ノ關係ナキモノノ如シ.
胃癌ニ「スチムリン」Mヲ注射セル場合, 胃曲線型ニ變化アリシバ23.6%ニシテ, ソノ變化ハ何レモ腫瘍増大・體力消耗・「ビタミン」B缺乏ヲ示スモノノ如ク, 治癒的傾向ハ之ヲ認メ得ズ,
胃下垂症ニ於ケル胃曲線ハ「アトニー」型・正常型・癌型・潰瘍型ニシテ, 多種多樣ナルモ「アトニー」型最モ多ク, ソノ過半數ヲ占ム, 且下垂高度ナルモノ程「アトニー」型ヲ示スコト多シ.「スヲムリン」Mヲ注射セルニ胃曲線魏不變ノモノ最モ多キモ16.6%ハ新ニ正常胃曲線型復シタリ。
自覚及ビ他覚症状モ一部消失ヲ認メ, 特ニ胃痛及ビ胃部壓痛ニ對シテハ, ソノ效果相當期待シ得ルモノト信ズ.
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