癌腫生物學的診斷法ニ就イテ文獻ニ從ヒ歴史的ニ之ヲ略述シ, 現在追試サレツツアルモノ及ビ今後臨牀的ニ實用價値アルヲ思ハシムル新反應ヲ紹介シ, ソレラノ内レーマンファチウス氏癌反應ヲ改良セル中川-高杉氏改良法ニ就イテ詳述シ, 之ヲ追試シ, 併セテ癌腫及ビ各種疾患患者ニ於ケル血清蛋白・「アルブミン」・「グロブリン」・蛋白係數ヲ測定シ, 本反應トノ關係ヲ究明セリ.次ニ岡田教授創製ノ癌「エキス」注射ニ依ル各種癌患者ノ血清蛋白及ビ蛋白係數ノ消長ヲ調査シ, 且K.I.K.反應ヲ追試シ, 中川-高杉氏反應ト比較檢討セリ.以上ノ實驗的研究ノ結果次ノ成績ヲ得タリ.
中川-高杉氏反應ニ就イテハ, 癌177例ニ於テ92.09%ノ陽性率, 對照各種疾患81例ニ於テ90.12%ノ陰性率, 計258例ニテ91.47%ノ適中率ヲ得タリ.尚陰性對照トセル健康者34名ヲ加入スレバ292例ニ於テ92.47%ノ適中率ヲ得タリ.
次ニ血清蛋白ニ就イテハ, 健康者ニ於テ總蛋白6.92-9.03%ニシテ, 平均7.779%ヲ示シ, 「アルブミン」4.89-7.13g/dlニシテ, 平均5.90g/dl, 「グロブリン」1.39-2.75g/dl, 平均1.899g/dl, 蛋白係數1.86-4.56ニシテ, 平均3.12ヲ示セリ.
同健者ノ數値ヲ標準トシ, 胃及ビ十二指腸潰瘍ハ總蛋白量・「アルブミン」僅カニ減少シ, 「グロブリン」増加ヲ見, 蛋白係數稍ゝ低下セリ. 慢性胃腸疾患ニ於テハ總蛋白量ハ大差ナキモ, 「アルブミン」減少, 「グロブリン」増加シ, 蛋白係數ハ一層ノ低下ヲ見ル.肝臟疾患ハ總蛋白量概シテ減少スレドモ病状ト併行シ, 病症進行ト共ニ減少ヲ來シ, 蛋白係數モ之ニ準ズ.膽嚢疾患ニテハ總蛋白ハ正常域内ニテ寧ロ上域ニ近ク, 「グロブリン」増加ニ依リ蛋白係數ハ下降セリ.
結核性疾患モ亦總蛋白量及ビ蛋白係數減少ヲ示ス.バセドウ氏病ニ於テハ總蛋白量不定ナルモ, 蛋白係數ハ著シク下降セルヲ見ル.
癌ニ於テハ消化管ニ發生セル舌癌・食道癌・胃癌・結腸癌及ビ直腸癌ニテハ總蛋白量及ビ「アルプミン」減少シ, 「グロプリン」増加シ, 爲ニ蛋白係數下降セリ, 然ルニ肝臓癌・上顎癌・喉頭癌・子宮癌・乳癌等ハ総蛋白量増加ヲ示シ, 特ニ上顎癌及ビ肝臓癌ニ著シ.轉移性多發癌ニ於テハ總蛋白量ハ略々健康者ノソレニ等シキモ, 蛋白係數ハ極メテ低下セルヲ見ル.故ニ以上ノ實驗成績ニ依リ生軆ニ關係アルハ總蛋白量ヨリモ寧口蛋白係數ノ増減重大ナルヲ知リ, 癌「エキス」注射ニ依ル蛋白質ノ消長ハ蛋白係數ノ増減ニ依リ之ヲ5型ニ分類シ, 併セテソノ豫後ト比較セリ.
血清蛋白係數上昇群及ビ谷形上昇群21例ハ比較的豫後良好ニシテ, 臨牀的治癒テ思ハシムルモノ及ビ經過延長セルモノ多ク, 蛋白係數山形下降群・不變化群ノ2型ハ以上2型ニ準ズルモ一般的豫後稍々不良ニシテ, 下降群ニ至リテハ絶對的豫後不良ナルヲ知ル.而シテ癌「エキス」注射セザリシ對照例ハ本下降群ト一致セリ.
K.L.K.反應ニ就イテハ胃癌21例.肝臓癌1例中, 胃癌1例疑陽性ニシテ, 他ハ總ベテ陽性ヲ示シタリ.依ツテ適中率95.5%ヲ得.非癌疾患12例中陰性6例50, 0%, 疑陰性4例33.3%, 疑陽性2例16.7%、ヲ得タリ.以上成績ニ依リ胃癌ニ於テハ本反應ハ極メテ好成績ヲ示スモ, 對照胃疾患ニ陽性ヲ示スモノアルハ慢性ニシテ, 幽門腺破壞サレタルモノニ現ル・ニアラザルカヲ思ハシム.
中川-高杉氏反應トK.I.K.反應トハ胃癌ニ於テハK.I.K.反應優リ, 對照ニ於テハ中川-高杉氏反應優ル.
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