日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
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一般演題
  • 入院前にパンフレットによる情報提供を試みて
    長谷 美幸, 中間 希, 伊藤 加代子
    セッションID: 1N06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
    近年、手術看護において術前訪問が不安軽減に有効であるという認識が広まり、手術看護の一つとして、多くの病院で定着しつつある。当院においても、平成15年度より腰椎麻酔患者への術前訪問を導入した結果、術前訪問でコミュニケーションをとる事により、患者の不安が軽減されることが明らかとなった。しかし一方で、在院日数の短縮が図られ、腰椎麻酔下手術の入院はそのほとんどが、前日または当日入院であり、慌しい状況での術前訪問になっていた。そのような状況で、患者がオリエンテーション内容を充分理解できているか、麻酔や手術に関して情報を得たいという気持ちに応えられているのだろうかという疑問が残った。そこで今回、手術を受ける患者に手術室入室後の流れ、麻酔についてなど記載したパンフレットを入院する前に配布することで、患者が知りたい情報を提供でき、効果的な術前訪問が行えるのではないかと考えた。
    <方法>
    【調査期間】:平成16年8月23日から平成17年4月12日
    【調査対象】:腰椎麻酔下の手術目的で入院し、当研究の主旨を理解し同意を得た患者25名。
    【調査方法】:外来で腰椎麻酔による手術が決定した時に、外来看護師よりパンフレットを配布。患者入院後、術前訪問に行きAPAISを含むアンケートを実施。そして平成15年度のパンフレット非配布群のAPAISデータと比較した。
    <結果>
     データを比較したところ、平成15年度の術前訪問のみを行なった群は、オリエンテーション前の情報スコアは平均5.4点であったが、平成16年度の入院前にパンフレットを配布した群は4.8点に下がった。また、オリエンテーション後は平成15年度では4.9点であり、平成16年度は4.4点となった。APAISの情報スコアは5点以上で患者は多くの情報を知りたがっていると解釈される。平成15年度の術前訪問のみの群では、術前訪問の前後で、患者は多くの情報を知りたがっていると解釈されたが、平成16年度のパンフレット配布群では術前訪問前より5点を下回り、さらに術前訪問後にはそのスコアがより下がった。 パンフレットを配布するだけではなく、術前訪問時に補足説明や担当看護師とのコミュニケーションを図る事で不安の軽減につながり、その結果患者の情報要求ニーズにも応えられたと思われる。
    <まとめ>
    1、手術前に情報を求めている患者にパンフレットが役立つ事が分かった。
    2、パンフレットと術前訪問を組み合わせる事で、手術・麻酔に関する理解をより深めることができ、不安軽減に役立つ。
    3、手術看護は手術を決定した時点から始めることが望ましい。
  • ━取り組みの現状と今後の課題━
    寺田 勝枝, 石浜 みち子
    セッションID: 1N07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    【はじめに】
    手術室に勤務する看護師が術後の患者の状態に関心を持ち、術後訪問の必要性を理解する事ができる、患者の意見を通して術中看護を振り返り改善点を見出す事ができる事を目的とし昨年より術後訪問を開始した。現状の取り組みと今後の課題を見出す事ができたので報告する。
    【研究方法、期間】
    1・期間:平成16年10月から平成17年3月
    2・方法:術後訪問用紙、手順書作成後に術後3日後一般病棟となった全身麻酔患者(SSIサーベイランス対象者)を対象とした。
     アンケート調査実施(無記名、記述式)
     対象:術後訪問実施した看護師23名
    【経過及び結果】
     平成16年10月より術後訪問を開始した。当初は、術後訪問対象患者氏名を書き出したのみで訪問は担当者に任せた為訪問時期を過ぎても未訪問のまま退院していくケースがみられた。第二段階として訪問対象患者の担当看護師に事前に訪問用紙に患者情報を記載してもらい術後3日以後をすぎたら訪問してもらうようにした。その結果氏名だけの時とは違い患者情報が書き込まれているので情報収集記載する時間が短縮された。全身麻酔患者を対象に術後訪問を行なったが大半が手術室にはいってからの記憶があいまい、覚えていないであった。その為用紙についての改善が必要と考え看護師の意識調査を実施した。(表1参照)
    [表1]
    【考察】
    10月から開始した術後訪問の問題点を明確にし改善点を見出した。当初訪問用紙は患者の意見を聞く事を重要視し作成したが患者は手術室での状況を覚えていないことがわかった。また看護師の調査結果からも訪問用紙の改善が必要であると多数の回答があった。
    改善案として出された質問項目内容検討、神経麻痺、褥創の項目の追加し用紙を作成した。現在試用中である。又術後訪問を経験していないスタッフに訪問実施後再度アンケート調査をする必要がある。田中ら1)は「術後訪問を実施する事は、技術が優先されがちな手術室において患者の存在を意識づける機会となっている」とのべている。この事からも術中意識のある腰椎麻酔患者等とし比較してみる事は術中看護の評価がより具体的になると推察できる。
    【終わりに】
    今後対象として腰椎麻酔患者、面接法を取り入れた事前学習を導入していきたい。
    引用文献
    1) 富山広子:術後訪問による術中記録の評価,オペナーシング95年秋季増刊,54-63,1995.
    2) 田中桂 :術後訪問における手術室看護の評価,オペナーシング  99年春季増刊,116_-_118,1999.
    参考文献
    1) オペナーシング編集部:全国施設アンケート術前術後訪問の現状と課題,オペナーシング99年春季増刊,1999.
  • 須田 まゆ美, 林 喜美子, 北澤 佐智子, 永井 秀子
    セッションID: 1N08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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     〈はじめに〉大腸疾患の早期発見および治療において,大腸内視鏡検査(CF)は重要な補助的診断方法の1つである.長野松代総合病院では年間約1500件のCFが施行されている.基本的に70歳以上の患者は,検査前処置の関係で入院して検査を行なうことにしている.そのため看護部ではCFが円滑に行なわれるように,検査手順については説明用紙を使用して行なってきた
    本報告では,入院でのCFを受けられた患者に,検査全般の感想,意見についての調査から検査に対する不安・不満・疑問点を検討し,問題になった点に対しての対策も含めて報告する.〈対象および方法〉CF目的で入院した患者10名(男性4名、女性6名)を対象とした.平均年齢は71.5±6.1(SD)歳であり,CFが行なわれた後に15の質問項目について面接調査を行った.調査結果は創造的問題解決の技法であるKJ法を用いて患者の心理状態を分析した.
    〈結果〉得られた感想・意見の内訳は,不安・不満・疑問については計34件で全体の約60%であった.34件は内容別に6つの種類に分類された.その内訳は,検査食への不満・疑問,検査前処置に対する不安,下剤による身体的苦痛,排便時の同室者への気遣い,検査後の不安,そして検査で悪性疾患と診断される事への不安や今後の生活,仕事に対する不安であった.CFそのものに対する不安・不満は見られなかった.
    〈考察〉調査の結果,約60%が不安・不満・疑問であった事は我々にとって意外な結果であった.検査食・下剤についてはかなりの苦痛が伴うものである事を改めて認識させられた.当然患者に対して検査あるいは入院についての説明は重要であり,以前より説明用紙を使って検査説明が行なわれてきた.しかし,どうして必要かなど理解できるまでの十分な説明がされていなかった事が今回の調査で明らかになった.今後は検査説明用紙の検討と検査説明の見直しを考慮していく必要があると考える.CFが施行される患者の半数以上は検診および,ドックで無症状ではあるが異常および便潜血陽性を指摘された患者である.検査結果で悪性疾患と診断された場合の治療や,その後の家庭生活,仕事に対する不安は我々の予想以上であった.今後は,担当医師との連携を蜜にし,できるだけ速やかな治療方針の決定が行なえるよう努力するとともに,患者・家族に対しての精神的援助を図ることが重要と考える.
    〈結語〉CFをうけた患者に対して検査全般について感想,意見を調査した.検査食,下剤などの前処置の身体的苦痛や検査後の精神的不安が多く示された.検査結果説明用紙の見直しとともに,理解できるまで十分な説明を行い精神的援助も重要であると考える.
  • 創傷被覆材ディオアクティブETを使用して
    清水 園美, 国枝 通子, 仙石 順子
    セッションID: 1N09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    集中治療での呼吸管理は、経口気管内挿管で実施される事が多く、口唇の糜爛や潰瘍に至り出血を認めるような損傷をきたすことがある。我々は創傷被覆材を使用し口唇損傷の改善と予防に取り組み、効果を得たのでここに報告する。
    <対象と方法>2001年1月から2004年10月に当院ICUにて経口気管内挿管を行なった96名。経口気管内挿管後24時間以内に口唇の損傷を認めない状況でディオアクティブETを使用した49名を実験群、口唇の発赤発生を認めてからディオアクティブETを使用した47名を対象群として1.口唇損傷の発生日数。2.口唇損傷最重症時の損傷度。3.抜管時の損傷度。4.口唇損傷の治癒日数。5.総蛋白、アルブミン、アルブミン/グロブリン比。6.血中ヘモグロビン。7.顔面の浮腫・昇圧剤使用の有無について検討した。
    <結果>治癒日数は、対象群に比べ実験群が有意な低下を示した。抜管時では実験群で潰瘍発生数が明らかに少数であった。実験群は、悪化0%、未発生40.8%と対象群の悪化8.5%、未発生29.8%に比し良好な結果を得ることができた。TP6.0以下での損傷症例数は実験群、対象群ともに変わらないが、対象群に比べ実験群では、悪化する症例がなく若干の改善傾向を示す症例も認められた。
    <考察>抜管時の比較において実験群は軽症のものが多い傾向にあった。実験群では悪化を認めにくく、未発生も多い傾向にあったため、損傷の発生を予防する可能性が伺えた。低栄養状態の症例の口唇損傷発生数に差は認められなかった。
    <結論>経口気管内挿管中の創傷被覆材使用は口唇損傷の発生予防、悪化予防、治癒日数短縮に有効である。
  • -化学療法施行中のカテキン群・対照群の比較検討-
    楢林 麻恵
    セッションID: 1N10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    I.はじめに
     癌化学療法の副作用の一つとして、口内炎が挙げられる。口内炎を予防することは、患者の苦痛を和らげ、QOLの向上を図ることとなる。
    抗癌剤による口内炎の発生機序は、薬剤の直接作用により口腔粘膜にフリーラジカルが発生し組織破壊、炎症が起こり発生するものと、白血球減少に伴う感染によるものがある。カテキンは、フリーラジカルを防止する抗酸化作用、除菌作用の効果が報告されている。そのためカテキンアイスボール(以下カテキンボールとする)は、口腔内のフリーラジカルの除去、除菌の効果が期待できる。以上のことから、カテキンボールは口内炎予防に効果があると考え、カテキン群、対照群の比較検討した結果をここに報告する。
    II.研究目的
     カテキンボールが口内炎予防に効果があるか明らかにする。
    III.研究方法
    1.研究期間
      平成16年4月1日から11月30日
    2.研究対象
    入院中の化学療法施行患者38名
    カテキンボール使用者をカテキン群、未使用者を対照群とした。
    3.研究方法
    準実験的調査研究
    4.データーの収集方法
    1)使用したカテキンボール:テアフラン30A 0.1%溶液を使用。(エピガロカテキンガレート14%含有)
    2)カテキンボール使用時期は抗癌剤使用当日から抗癌剤終了後1週間。
    3)実施時間は、抗癌剤使用当日は使用時間に合わせて1日3回施行。翌日からは10時、14時、19時の3回施行。
    4)市販の製氷機にてカテキンボールを作製。
    5.データー分析方法
    カテキン群、対照群の口内炎発現率を、マン・ホイットニー検定にて検証した。
    6.論理的配慮
    研究の意図を説明し、プライバシーを守ることを伝え承諾を得た。
    IV.結果
     カテキン群20名中、途中中断者7名。対照群18名。
    カテキンボール使用での口内炎発現率は、マン・ホイットニー検定を行ない、P<0.01にて有意差があった。
    V.考察
     今回使用したテアフラン30Aはカテキンの中で最も抗酸化作用・除菌作用にすぐれたエピガロカテキンガレートが含まれている。カテキンのそれらの作用を期待し、テアフラン30Aを使用した結果、カテキン群、対照群の口内炎発現率に有意差があった。これは、当病棟で使用したカテキンボールが、口内炎予防策として有効であったと言える。
    さらに、カテキンボールを選択した事で、口腔内に留まる時間が延長できるとともに、全体に行き渡らせることができた。そのことがカテキンの作用をより持続できたのではないかと考えられ、口内炎発現を押さえることに有効であったと考える。
    VI.結論
     カテキンボールは口内炎予防に有効である。
     参考文献
    1)平野小百合、他:カテキン吸入療法によるMRSA除菌効果の検討、日病薬誌,38(4)、2002
  • 松尾 和子, 鈴木 和世, 市來 由香里, 岡本 美佐代
    セッションID: 1N11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当病棟では、大腿骨頸部骨折や変形性股関節症の方を対象に人工骨頭置換術や人工股関節全置換術が行なわれている。人工物を挿入するため、術後の合併症として脱臼の危険性がある。そのため術後2週間は脱臼予防のために股枕が使用される。股枕除去後も脱臼を起こさないために下肢を内旋するような体位を避ける必要があり、患者様は患側を上にして寝返りを打つことができない。そこで術後2週間経過した患者様に脱臼予防が確実にでき、なおかつ患者様が安楽に寝返りを打てるような枕を考案しようと研究に取り組んだ。前回の研究では市販の抱き枕を使用したが、市販のものでは、安楽が重視されており、脱臼予防という視点からみると弱いものであった。そのため去年の結果をもとに脱臼予防という視点から抱き枕を作成し検討した。
    【研究方法】
    (1)実施期間 H16・6・1からH16・12・31
    (2)対象者  A棟2階病棟 看護師18名(作成枕の試用及びアンケートの回答)
           H16・6・1以降に人工骨頭置換術後の患者5名中の1名
           H16・6・1以降に人工股関節全置換術後の患者6名中の3名
    (3)方法  1、昨年の結果をもとに抱き枕を1つ作成、看護師が使用しアンケート調査を実施
          2、看護師のアンケートをもとに検討後、当院で人工骨頭置換術、人工股関節全置換術を受けた患者4名に作成した抱き枕を適応し、その後アンケート調査した
    作成した抱き枕の形状
     大きさ(長さ1m、太さは左から32.5cm、28cm、32.5cm) 
      中身の素材はパウダービーズ、布は裏地ナイロン素材、カバーは綿ジャージ 
     【結果・考察】
     看護師アンケートより、確実に脱臼予防ができると思うの回答が10名、 そう思わないが8名。安定性があると思うの回答が16名、思わないが2名。安楽だと思うが12名、思わない4名、無回答2名であった。医師にX-Pによる検証を1名行なってもらった結果、球心位が獲得され、外転の保持ができれば脱臼はしない。拘縮の有無、他関節の障害の影響も考慮すると意見をいただいた。現在の股枕は脱臼予防の点では良いが、安楽の視点では弱いものであった。今回作成した枕は安楽、安全の視点から寝返りも打ちやすく安定性もあり脱臼予防にも適している。大きさについては、150cm代の身長の方を対象に作成したため、それ以下の方には評価は低い。素材肌触りについてはいずれの患者からも良い評価が得られた。
    【まとめ】
     脱臼予防と安楽の視点から抱き枕を作成し、効果的な抱き枕を患者に提供できた今回は標準サイズの枕を作成したので、今後は素材や大きさなど個別性をふまえた抱き枕を検討し、患者様の脱臼予防と安楽を考え、検証していく
  • 鹿島  里美, 永井  知恵子, 根本  梨加, 澤原  清子, 須賀  良子
    セッションID: 1N12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>人工骨頭、人工股関節置換術後の合併症の一つとして脱臼がある。看護師は、基本的な脱臼予防事項について説明していたが、口頭で説明するには、患者の理解が得られないこともあり限界があると感じた。そこで、パンフレットを作り説明することで、患者の脱臼予防についての理解を深めるのに役立てたいと思った。今回、パンフレット使用後の説明状況について看護師、患者へ調査を行なったので報告する。
    <研究方法>研究期間:平成16年7月-平成17年4月
    方法:人工骨頭・人工股関節置換術後の脱臼予防に関するパンフレットを作成し対象患者にパンフレットを使用し説明
    当病棟看護師17名へパンフレット作成後にアンケート調査を実施
    患者へは聞き取り調査を実施
    <結果>アンケートの回収率は100%であった。パンフレット作成前、患者より脱臼予防肢位について質問されたことがあったスタッフは11名であり、時期は術後が11名であった。内容は、具体的な脱臼予防肢位や外転マットの必要性と期間についてが最も多く、また、日常生活上の注意点などがあり、説明は言葉やジェスチャーで行なっていた。パンフレット作成後、使用したスタッフは13名であり、使用したことで説明しやすくなったと答えている。13名全員は使用後メリットがあったと答えており、理由は具体的な脱臼予防肢位が理解してもらえた、であった。また、説明するのに時間がかかるというデメリットもあった。患者からは、絵があって見やすい、字が小さい部分がある、実際脱臼しやすい肢位をとらない為にはどういう動作をすべきか知りたい、などの意見があった。
    <考察>看護師は、基本的な脱臼予防事項について説明しており、その他必要だと思った際、また患者より質問を受けた際にも口頭で補足説明を行なっていた。しかし、口頭での説明は後に残らず、忘れた時に思い出すことが難しいため、十分に理解することができないと考えられる。看護師は、言葉やジェスチャーを使って説明をしていたが、パンフレットを使用することで内容のズレや抜けが無く統一された説明が行なえると考えられる。術後に質問されることが多かったのは、外転マットの使用や安静など状況の変化が具体化され、不安を持つことが多くなったためと考えられる。そのため、術前よりパンフレットを使用し、術後のリスクや以後の日常生活状況も予め理解してもらう必要がある。また、字を大きくしたりカラーにしたりと、患者が見やすくなるよう工夫する、避けるべき動作だけでなく、どういう動作に変えて脱臼肢位を予防するかなど、わかりやすくなるよう改善が必要だと思った。
    <おわりに>今回の調査で、パンフレットを作成し使用したことは、忘れることなく説明でき、患者も何度も確認ができるため、脱臼肢位についての理解を深めるのに役立つことがわかった。
  • 院内感染を防ぐために
    藤木 智恵, 久保 郁恵, 小島 幸恵, 安斎 佐枝子, 堀越 礼子
    セッションID: 1N13
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに
     MRSAをはじめとする院内感染は様々な伝播方法で起こり多くの病院で問題視されている。当院では、平成14年に院内感染対策委員が発足。平成15年、院内感染対策委員により病棟環境汚染耐性菌検査を実施、10か所中3か所から多く検出された。そこで平成16年から携帯手指消毒容器を持つようになったが、MRSA保菌者数が減少していない。当病棟は、消化器・呼吸器内科混合病棟で、高齢の患者が多数占めている。その中でも抗癌剤、ステロイド剤、長期抗生剤使用中患者などが多いため院内感染のリスクの高い病棟である。今回、接触感染予防についてCDCガイドライン「医療機関における手指衛生のためのガイドライン」を徹底し、処置後の手指、隠れMRSAに的を絞り細菌検査を実施した結果、継続教育の重要性を再認識したので報告する。

    2.研究方法
    1)期間:平成16年9月から10月
    2)対象:C3F看護師
    3) 方法:CDCガイドライン「医療機関における手指衛生のためのガイドライン」のパンフレットを作成し、朝の申し送りの際、説明指導し手洗いを徹底した。9月27日、10月4日にハンドぺったんチェック寒天培地を使用し、処置後・検温後、各4名ずつ無作為に抜き打ちで手指の細菌検査を実施。加温器(アトム清拭車)、製氷機の水より10月12日細菌検査実施。

    3.結果
    看護師MRSA保菌状況
             MRSAコロニー数
    9/27
        処置後A    0 
        処置後B    4 
        検温後C    0 
        検温後D    0 
    10/4
        処置後E    0
        処置後F    0
        処置後G    0
        処置後H    0
    <隠れMRSA検査>
    10/12
        加温器    (-)
        製氷機    (-)

    4.考察
    MRSAは人の皮膚、鼻前庭、咽頭、腸管などの常在菌であると同時に様々な酵素や毒素を産生し人に感染症を引き起こす強毒素としての性質を備えている。特に小児や高齢者、慢性消耗性疾患のような感染症が重篤になりやすいため、MRSAは従来から化学療法の大きな目標とされてきた。MRSA保菌者の多くは単に保有するのみで、通常臨床症状を現さない。しかし、状況次第では常に感染源となる可能性を秘めている。院内感染の場合、医療従事者が、保菌患者との接触後の手洗いが不十分なために菌に汚染された手指を介して接触感染を起こすケースが最も多いといわれている。当病棟は、高齢の患者が大多数を占めその中でも、治療により易感染状態におかれMRSA発症しやすい患者が多数入院している。全介助を要し多忙なケアの中で一接触一手洗いを実行するのは困難であると言われているが、やはり手指消毒を一接触ごとに実施することは重要であるといえる。ケアの中でより確実に手指消毒ができるよう今回、CDCガイドラインを用い実施した結果、8名中1名の手指よりMRSAが検出された。その1名に結果を報告し、手指消毒状況を確認したところ処置間の一接触一消毒ができていなかった。「自分だけが出るとは思わなかった」と言っている。また、隠れMRSAは、検出されなかった。そのことは日頃の定期清掃が十分なされたと考えられる。1名から検出されたことは、医療従事者によって菌の伝播が起きると示唆される。しかし、今回の結果は、平成15年の病棟環境汚染耐性菌検査より良い結果を出せたことは十分評価できると考える。このことから知識の充足ため継続教育の必要性を強く感じた。

    5.おわりに
     感染予防は、医療従事者の手指を介して起こる交差感染から患者を守ること。また、患者が保有している病原体から保護することと言われている。これらのことから、今後個々の手指消毒へのコンプライアンス向上にむけこれからも研究を深めていきたい。
  • 松岡 美紀, 土井 紘子
    セッションID: 1N14
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【研究目的】 院内感染の多くは細菌が医療従事者の手指を媒介して起こっているといわれており、手洗いはその院内感染予防に重要な役割を果たしている。
    院内の中でもICUには感染に対してハイリスクな患者が多い。ICUで感染症を発症させると新たな病原体の定着の機会が増え、患者本人だけでなくほかの患者への伝播の機会も増えることになる。日常的に患者と接することが多いのは看護師である。看護師による細菌の媒介を予防するには、看護ケア後の手指付着菌を除去する必然性を明確にしなければならないと考えた。そこで本研究は、各種ケアと手指付着菌の関係について示し、看護ケア後の有効な手洗いの時期を明らかにすることを目的に取り組んだ。
    【研究方法】 平成16年9月から12月に当院ICUに勤務する看護師19名を対象とした。事前に研究目的・データ管理に関して口頭と文書で説明し、同意を得た。被験者にはICUで頻繁に行われている、気管内吸引(n=10)、検温(n=10)、清拭(全身清拭n=9、陰部洗浄n=9)を実施してもらった。各ケアは当院で実施している方法に準じて行ない、方法・手順を統一し被験者間で差異がでないように配慮した。ケアの実施前に30秒間衛生的手洗いを実施し、ついで速乾性消毒剤を用いて手指消毒を行なう。ケアの前後に寒天培地に両手掌部を押し付け、37℃で24時間細菌培養した。後にそれぞれのコロニー数をカウントし、これを手指汚染の程度の指標とした。手洗い前後および左右の差にはpaired-t検定を、ケアごとの比較には分散分析を用いた。
    【結果】 各ケア開始前のコロニー数の平均値は、2個未満であった。各ケア後の平均コロニー数は、両手掌で気管内吸引6個、検温95個、清拭387個であった。検温と清拭では、ケア前と比べてケア後の方が有意にコロニー数の増加がみられた(p<0.05)。気管内吸引においては前後の有意な差はみられなかった。各ケア後のコロニー数を比較すると、気管内吸引よりも、検温と清拭のほうが有意にコロニー数は増加していた(p<0.05)。また清拭を全身清拭と陰部洗浄で分けてコロニー数を比較すると有意な差はみられなかった。
    【考察】 ICUで頻繁に行なわれる3つのケアについて手指汚染の程度を比較した。3つのケア前後で比較すると、検温および清拭後のコロニー数は有意に増加していたが、気管内吸引では前後のコロニー数に有意な差はみられなかった。気管内吸引ではビニール手袋を装着して施行するのに対し、検温と清拭では直接素手で行なったことが影響していると考えられる。また気管内吸引は吸引チューブや挿管チューブ、患者の顔面周囲に接触範囲が限定されているが、検温と清拭では患者の全身とベッドサイドの物品に多く接触し、気管内吸引よりも接触範囲が広いためと考えられる。
     次に3つのケア後のコロニー数を比較すると、気管内吸引後に比べ検温、清拭後のコロニー数が有意に増加した。なかでも清拭後が最も増加した。これは素手で蒸しタオルを使用したことにより、直接患者の身体に触れ、汗などの体液が手指に付着した可能性が考えられる。
    気管内吸引と陰部洗浄で装着するビニール手袋は同じ規格の手袋を使用しているが、気管内吸引後より清拭後に有意なコロニー数の増加がみられた。これは陰部洗浄時に微温湯と蒸しタオルを使用したことによって手指とビニール手袋内に熱が生じ細菌が繁殖しやすい環境になったのではないかと推測される。ビニール手袋は、リーク率が高いといわれており、陰部洗浄中にリークが起こりそこから手指が汚染された可能性があるため、同じビニール手袋を使用してもコロニー数に差が現れたのではないかと考えられる。
    【結論】今回、ICUで頻度の高い3つのケアと手指付着菌の関連性について検討した。感染に対してハイリスクな患者が多いICUでは、看護師は数ある看護ケアの中で検温後と清拭後には確実な手洗いをしなければならないことが示唆された。感染予防や手指衛生の教育が進む一方で、基本的な手洗いができていない現状もある。そのため今後は手荒れのケアや、刺激性の少ない手指消毒薬の選択、手洗い方法の検討を課題としたい。
  • 意識調査と手技の統一を図って
    水野 ひとみ, 小川 美由紀 , 今枝 純子, 永柄 文子, 山田 みどり, 大野 祐子
    セッションID: 1N15
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
    2000年にセラチア菌による末梢静脈カテーテル感染が発生し、セラチア感染の原因の一つとして酒精綿の汚染も否定できないと報告された。今回、酒精綿の取り扱いについて調査することで酒精綿使用時の認識を改め、手技統一を図ることで、より酒精綿消毒の効果を高められたので報告する。
    <研究方法>
    (1)酒精綿(コットンパック200枚入り)の取り扱い、取り出し回数、消毒方法の手技チェック及びアンケート→手技チェック時消毒部位を寒天培地で採取、24h、48h後の菌数の増加を観察
    (2)統一した手技の説明
    (3)統一後、再度手技チェック及びアンケート、菌数の増加を観察
    <結果>
    酒精綿の取り出し回数は約40-80回と複数の手が出し入れされている事が分かった。調査中、48時間以上経過しているものも多数あり、そのまま使用していた。又、蓋が完全に閉まっていないこともあった。手技の統一前にスタッフにアンケートを取った結果、手洗いをせずに実施すると答えた人が65%とスタッフの大半が処置後患者に触れた手で酒精綿に触れている事が分かる。統一後は、点滴、採血など酒精綿を扱う前に手洗いをする人が31%から69%まで増えた。又、抜き打ち調査からも半数の人が手洗いが出来ていなかったが統一後は大多数の人が手洗いが出来ていた。アンケートの意見で手技の統一を図って認識できたと思う人が73%あり再認識に結びついた。統一前は寒天培地による培養結果で5人の患者より36%コロニーが検出された。統一後は3人の患者からコロニーが検出されたが21%と減少している。
    <考察>
    持続点滴刺入が必要な場合アルコール消毒は即効性があり容易に蒸発し細菌を残さず皮膚の刺激が少ない点から注射部位の消毒には最適の消毒と言える。しかし、看護師の取り扱いにより消毒効果が低下する。今回の結果よりこれはスタッフに自分たちの手が汚染されているといった認識の低さが伺える。今回手技を統一する事で、注射部位の細菌数が確実に減り、スタッフも手洗いの重要性について意識づけできたと思われる。
    <終わりに>
    末梢静脈カテーテルは汎用される医療処置である。それゆえに今後、手洗いをはじめとし酒精綿を正しく取り扱うようにして感染予防に努めていきたい。又、48時間以内に使い切れるように100枚入りのコットンパックへ変更している。
    <引用・参考文献>
    (1)大垣市民病院 院内感染対策小委員会:院内感染予防対策マニュアル 日総研出版 H,6年
  • 住田 知隆, 塚原 裕志, 速水 亘, 岡本 利秋, 田村 茂幸
    セッションID: 2C01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当院では近い将来の電子カルテと人手、時間、コストの効率化をはかるため、平成16年6月より放射線技術科で発生する画像をデジタルデータとして保管管理するシステム(PACS)を導入した。それに伴い放射線情報システム(RIS)と病院情報システム(HIS)とPACSのシステム構築を実現したので報告する。
    【システム概要】
     当院では、病院情報システム(HIS)からのオーダーは放射線部門においては放射線情報管理システム(RIS)によって管理され、各モダリティヘ撮影に必要な情報が送信され、撮影後その実施情報をRISへ返すシステムとなっている。この規格としてDICOMで規定されているMWM(Modality Work list Management)及びMPPS(Modality Performed Procedure Step)を採用しHISとRISの連携を容易にすることが可能となった。標準規格の採用は、モダリティの更新時においても接続に関する導入コストを抑え、各モダリティメーカーの中で適切な機種を選定する際に選定基準を明確に示すことができることから有益であると考えられる。モダリティのDICOM規格の対応状況は、モダリティの対応としてマルチCT1台、MRI1台、DR4台、CR7台、血管撮影装置1台、の計14台であり、他にRIS端末9台である。この中でCRについてはタイムリーなフィルム処理(画像転送)を実現するため、原則的に画像発生場所で処理することとし、各撮影室に処理装置を配置した。また特殊撮影である乳房撮影にも配置されている。これにより即座にフィルム処理(画像転送)が行なえ、利便性の向上が得られている。PACSの各サーバは 3台(DVD-Rチェンジャー計15TB)、画像観察用サーバ(画像保存サーバと対)3台、画像マネジメントシステム1台、Reportサーバ1台で構成され、オンラインで5年以上の運用が可能となっている。
     レポートシステムはレポート用サーバ、レポート入力端末、レポート及び画像参照端末からなる。レポート用サーバは1TBのRAIDを持ち、レポートデータベースとWEB参照用の画像を持っている。
    【放射線部門における情報連携】
    HIS、RIS、PACS、Reporting、モダリティの情報連携により放射線関係のレポーティングにおいては必要な情報が過不足なく取得できる仕組みを構築した。これらはDICOM/MWM、MPPSを利用することにより実現したもので、マルチベンダー環境においてもスムーズな情報連携が可能となっている。
    【放射線部門内の情報連携】
    HIS・RIS
      検査予約、画像検査オーダー、検査ステータス情報
    RIS・Modality
      患者情報、検査情報(検査指示)、検査状況、実施状況
    Modality・PACS
      検査状況、画像状況、表示状態
    RIS・PACS・Reporting
      患者情報、検査状況、読影依頼情報
    RIS・Reporting・HIS
      検査結果、会計情報、読影実施情報、読影結果
    【考察】
     高度に連携されたシステムの構築により、放射線オーダーから撮影、実施報告、画像転送、読影レポーティングまでの一連のワークフローをスムーズに処理することが可能となり、放射線部門における効率の向上が得られる。また、RISが直接モダリティと情報交換することにより、これまで人が介在することにより発生していた撮影時のモダリティへのID入力の誤りなど、人為的操作ミスを防ぐとともに、入力作業の軽減で、より患者に集中して検査することができるようになり、患者サービスの観点から見ても大きな成果があったものと考えられる。
  • 酒井 義法, 藤原 秀臣, 江畑 恵子, 藤澤 忠光
    セッションID: 2C02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    当院では院内情報システムの端末をオーダーリング専用とはせず、機能の追加、柔軟な運用によりコンピューター資源の有効活用を試みている。
    1)院内連絡網としての活用:Windowsにログインした人の個人設定をファイルサーバーから配布するWindows active directoryの採用により各端末で個人ファイルの読み込み、保存が可能である。プライバシーが守られるため、個人宛のメールも送信も可能となった。また院内向けのホームページを充実させ、診療上必要な各種のインフォメーションを集約。電子カルテ画面を操作中でもwebからリンク集を呼び出し、各種のPDFのマニュアルを閲覧し必要なら印刷できる。
    2)地域連携の強化:すべての紹介情報を情報システムに登録、紹介に対する返信もすべて情報システムを介して行なうことにした。これにより連携室では紹介、返信情報を把握することが可能となった。紹介患者に対する返信が遅れた場合は連携室から担当医に催促することも可能になり、返信は迅速になった。地域別、施設別の紹介、逆紹介情報も容易に集計ができ地域との連携の状況が把握しやすくなった。
    3)サマリー作成機能:サマリーの提出率をアップするため電子カルテ標準のサマリーとは別に、短時間で要領よく完成することができるサマリーをシステム上でwebアプリケーションを用いて独自に開発した。サマリーは、1.システムから自動的に取得される、入院期間、患者IDなどの患者の基本情報や紹介情報、病名などの部分、2.クリニカルインディケーターを含む手術治療、特殊治療情報などWeb上のマスターからプルダウンで選択入力する部分、3.400字以内の手書き入力部分で構成される。サマリーの提出率は大幅にアップした。
    4)インシデント・アクシデントレポート作成:従来用紙を用いて集計されていたインシデント・アクシデントレポートを情報システム上で收集するソフトを独自に作成した。各部署のパソコン上から所定のレポートに入力したデータは病院管理者にダイレクトに送信される。データは一元的に管理され、素早く解析・評価が可能でアクシデントに迅速に対応できる。システム導入後インシデント・アクシデント報告は増加している。
    院内情報システムの構築には多額の費用がかかり大量のコンピューター資源が投入される。セキュリティの面から情報システム専用とされる場合が多い。当院では院内情報システムを院内LANとして位置付け、新たな機能を追加し、また新しい運用を考案することでコンピューター資源を最大限に活用し、本当に役に立つ院内情報システムの構築を目指している。
  • 画像一元化・検査項目の自動入力による省力化
    功刀 千恵美, 山本 詩子, 小林 俊也, 飯沼 全司, 加藤 淳也, 依田 芳起, 小林 一久
    セッションID: 2C03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】人間ドック受診者数は平成16年度18,163名(男性8,966名、女性9,197名)で、1日最大88名の受診者の効率的な誘導が課題となった。効率的な人間ドックシステムの構築と、受診者により理解しやすい説明のシステムを目指し、新システムの導入に取り組んだ。
    【方法】平成17年4月より、健診システムはMOMテクノロジー社製LAMPEX、画像システムは日立社製WeVIEWを中心にネットワークを構築した。
    【結果】(1)受診時にカード(リライトカード)を発行し、受診者の受診状況の把握、医師の判定、会計終了まで各部署がコンピュータ上で確認できるようになった。このシステムを構築するため、各受診者がどの検査でどれだけの時間を要するか、また検査前の待ち時間の把握をし、さらに、検査の順序(内視鏡検査や胃X線検査の前に必ず腹部超音波検査を実施するなど)をコンピュータ上に入力し、誘導支援システムの構築を目指した。このカード導入により受診者の流れが解析でき、さらに受診効率を高めることができた。
    (2)各検査項目(身長、体重、体脂肪率、血圧、眼圧、聴力検査)の自動入力を導入することにより、結果入力のミスを排除できた。
    (3)画像システムの一元化に伴い、胃内視鏡検査、腹部、甲状腺、乳腺の超音波検査、眼底検査、心電図検査、胸部レントゲン検査、マンモグラフィー検査、CT、MRI、MRA検査などの画像を一元化され、モニター上で説明できるようになったことにより、以前関わっていたフイルムの整理が不要となった。結果票もモニター表示することにより、完全にペーパレス化され、その整理、収納も不要となった。異常が認められた検査項目の過去10回のデータのグラフ作成や所見のあった画像、精密検査が必要な画像を、結果票に任意選別して添付できる部位を4か所設け、個別にわかりやすい結果票を作成できるように構築された。
    その他、カード導入により受診項目がチェックされ、自動会計システムを構築できた。
    【結語】人間ドックに受診者誘導システムを導入したことで効率よく、快適で、わかりやすい結果説明や結果票を提供できるようになった。リライトカードの導入で、検査の進行状況の把握や受診者の誘導支援が実現し、画像一元化によりフイルムの検索、整理、処理がなくなり、検査結果のペーパレス化がなされ、結果処理の省力化も実現できた。
  • 野村 賢一, 岩瀬 定利, 齊竹 達郎, 山本 卯
    セッションID: 2C04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉近年高度化する医療とともに診療報酬包括化という環境変化は、DPCの導入という形で具体的に進んできており、こうした動きは近い将来厚生連病院への適用もあり得るものと考えておく必要がある。一方、病院経営に深く関わる購買業務は物品を安い価格で購入することが第一の目的ではあるが、メーカ等の売り込み、医師の好みや看護師の要望、感染管理や安全管理からの側面により、必要以上の物品が要求され、購買担当者は様々な問題を抱えていると想像する。こうした状況下、全国厚生連病院を対象に医療材料管理の実態と購買に関するアンケート調査を行ないその評価を試みた。
    〈方法〉アンケート調査は全国厚生連病院の内、100床以上の97施設を対象に郵送により実施した。(調査期間:平成16年12月15日から平成17年1月21日)。
    〈結果〉A.納品業者の選択基準に関して
    納品業者の事業概要、納入実績、納税証明書などにより業者の公正な選択を、している34%、していない64%。
    B.購入管理部門の現状に関して
    1.医療材料に関する知識、見識については、できる4%、どうにかできる51%、あまりできない45%。2.購買の中央化に関しては、できている26%、ほぼできている63%、できていない11%。3.類似銘柄品の統一又は物品の標準化に関しては、図っている60%、ある程度図っている40%。4.次年度の購入予算計画作成に関しては、している41%、していない21%、ある程度している38%。5.破損・期限切れによる除去資産の確認に関しては、確認している57%、していない11%、ある程度している32%。6.医師異動後の不動在庫処理に関しては、多い21%、少ない41%、どうにか使用38%。
    C.購入委員会での検討内容について
    1.製品の必要性の明確化に関しては、している74%、していない4%、ほとんどしていない22%。2.効率性の時間的検討に関しては、している59%、していない11%、ほとんどしていない30%。3.収益性、生産性の試算に関しては、している91%、していない2%、ほとんどしていない7%。4.採用後の使用満足感に関しては、している76%、していない4%、ほとんどしていない20%。5.廉価品の提供に関しては、している91%、していない2%、ほとんどしていない7%。6.製品の安全性に関しては、している96%、ほとんどしていない4%。7.廃棄物としての処理費用に関しては、している46%、していない11%、ほとんどしていない43%。8.審議内容の公開に関しては、している96%、していない2%、ほとんどしていない2%。
    D.共同購入に関して
    1.共同購入のスケールメリットによる高い値引率に関しては、思う61%、思わない11%、分からない28%。2.共同購入による業務の省力化に関しては、思う59%、思わない13%、分からない28%。
    〈まとめ〉購入委員会を設けている病院は多角面から製品選定を図っていることが伺われた。一方、事務局としては医療材料に関する知識・見識について十分とはいえる状況ではなかった。それ故に委員会参加者の合議が大切となる。その場合、資料として検討内容を視覚的に捉えられるチャート図を活用することが今後必要ではないかと示唆された。当院の場合、病院事務局と文化連事務局との間で購買情報に関するコラボレーションを行うことで購買情報の視覚化を図るとともに、購買委員会での効率の良い運営を可能とした。
  • 塩沢 勉, 千原 信之
    セッションID: 2C05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    病院における医療機器の保有台数・使用頻度は、医療機器の進歩とともに年々向上している。しかし、医療機器の管理は各部門がそれぞれ行なっている事が多く、増え続け高度化する機器に追いついていない状況である。当院では臨床工学科による機器の中央管理が開始され10年が経過した。今回、院内の医療機器の管理システムを更新した事を機会に病院内の医療器械の管理方法について検討したので報告する。現在当院で使用している機器約2000台を対象に、装置の基本属性の一覧ファイルを作成した。機器は分類コードを付け、大分類で臨床工学科中央管理機器と、各部署管理とに分けた。更に中央管理機器は、貸し出し履歴ファイルを作成し、メンテナンスファイルとともに機器カルテに収納した。カルテには機器の取扱い説明書とメンテナンス予定書、メンテナンス記録簿を合わせてファイルした。これらペーパーのファイルとともに、専用の管理システムの開発を行なった。機器監視システムは、臨床工学科で行なう医療機器管理とともに、業務課で行なっている医療機器の新規導入と総務課で行なっている医療機器の固定資産管理についてもリンクするよう設計され、従来別々に行なっていた、医療機器の購入・固定資産管理・運用管理・廃棄を一元化した。購入後の医療機器に対し適切なメンテナンスを定期的に行なっていくことは、医療機器の安全運用には欠かせないことで、医療安全と経済性を両立させる手段と考える。医療機器の管理を行なっていくうえで、臨床工学科の設置と専門の医療機器管理システムの運用は、医療機器の効率の良い運用と安全管理に有用な手段であると考えられる。
  • 山根 明, 斎藤 正志, 上野 信一, 小俣 利幸, 塩澤 勉, 小林 誠治, 荻谷 和哉, 木内 健行
    セッションID: 2C06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【要旨】 医療経営を取り巻く環境は、厳しさを増している。医療費抑制政策の一層の進行と、DPC対象病院が拡大される中で、従来の「出来高払い」から「包括払い」が一層進みつつある。そうした中で、厚生連病院の「医療の質の向上」と「経済的メリットの実現」・「情報交換と技術の交流」を目的として、医療材料全国共同購入委員会のもと専門部会として平成14年3月に設立され、現在に至るまでの3か年における取組みと到達点について報告する。
    【対象及び方法】 対象とした委員会の会員厚生連及び病院の実態は、平成17年3月末現在16厚生連1農協84病院だが、透析施設を有する病院は57病院、透析ベット数1,450床、慢性維持透析患者総数4,000名である。協同組合としての厚生連組織の特徴を生かし、人工透析関連医療材料の共同購入を開始するに当たって、人工透析専門部会を設立した。専門部会の構成は、各厚生連より臨床工学技士等透析に従事する職員1名の代表を選出していただき部員とした。また、必要により部員以外に各施設より協力員が参加できることとした。役員は部会長を1名、副部会長4名とし、日本文化厚生農業協同組合連合会(以下文化連)を事務局とした。専門部会の開催は、概ね年間2回とし、人工透析に関連した実践事例報告や各種勉強会・施設見学の開催、人工透析関連同種材料の全国的な使用実態分析と比較検討・採用品目の統一、人工透析施設及び臨床工学技士関連実態調査等を実施してきた。共同購入対象材料は、ダイアライザー、血液回路からスタートし、透析用留置針、透析キット、透析関連薬剤等に拡大し、透析部門トータルでの収益改善を目指した。価格交渉形態は、独占禁止法の再販売価格維持行為に該当しない形態で、メーカー本社と事務局が直接に交渉する仕組みとした。
    【結果】1.3か年間での経済メリットとして、加重平均で、ダイアライザーで30%、血液回路で30%、透析用留置針の主力製品で40%引き下がり、トータルで31%の経費削減を実現した。
    2.同種品の比較検討による採用品目統一化が図られ、経済効果を実現した。
    3.透析液用薬剤の「パウダー」化が進み、経費削減に貢献した。
    4.透析1回あたりの血液回路の鉗子使用本数の削減が進み、経費の削減と合わせて鉗子の洗浄、消毒の合理化が進んだ。
    【まとめ】1.専門部会設立を一つの契機として、各県連単位での臨床工学技士の責任者会議の 開催や事務局参加による協議の場の設定が進み、定期的に情報の共有が行なわれた。
    2.人工透析専門部会の設立による全国的な共同購買組織の設立と組織の強化が図られた。
    3.協同組合組織として共同活動の連携が図られ、全国的な方針に基づく製品の銘柄切り替えの実践が行なわれた。
    4.厚生連グループとして共同研究の検討が始まり、透析医療分野の医療の質的発展が期待される。
    5.より一層の情報共有化と技術の交流を進め「専門知識の協同の力」で、人工透析専門部会を質量ともに発展させ、医療経営への貢献が期待される。
  • 塩田 明雄, 藤澤 忠光, 後藤 秀比古, 小松 昭善, 吹野 陽一, 寺田 恵子, 高柳  直巳, 鹿島 信一, 佐々木 和子, 松井 則 ...
    セッションID: 2C07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】当院では、診療報酬請求をより適正に行なうため各種対策を行なってきた。具体的には、請求漏れと保険査定減対策、当月分未請求レセ・月遅れ請求レセ管理対策である。
    【方法】(1).診療報酬請求漏れ対策は平成15年から医事入院係各自がそれぞれ各請求担当分野の請求漏れをあらためて検証した。
    (2).平成16年からは医事外来係まで拡大し、請求診療科ごとに同じように請求漏れを検証した。
    (3).(1)(2)の方法、結果はいずれも各自・各グループからパワーポイント資料を使った発表会を行い医事職員全員に周知した。
    (4).保険査定減対策は、査定事前対策として医師による請求時のレセプトチェック、対策委員会での再請求審査、委員会作成の医師用簡易レセプトチェックリスト周知などである。これら委員会の情報は院内情報システムで閲覧できる。
    また、医事知識を得る上でも病棟カンファレンスにも参加した。
    (5).当月保留レセ・月遅れ請求レセ管理対策も新たに開始した。
    【結果】請求漏れ対策では入院関係がH15年、H16年の検証テーマ数はそれぞれ13題、外来の検証テーマ数は16年12題である、テーマは豊富である。
     保険査定減対策はH15年、H16年年間平均比較で保険査定率平均(1か月)で0.43%から0.30%に、保険査定金額では同様に5,543千円/月から3,953千円/月に減少した。
     当月未請求レセ・月遅れ請求レセ管理対策では月毎に多少の凸凹はあるものの件数、点数共に減少傾向である。
    【考察】請求漏れ対策については、テーマが豊富であるということは漏れがないとはいえない。しかし職員がその請求漏れを掌握しつつあることは確かである。保険査定減対策は大幅に減少している。顕著な成果がでてきた。返戻レセまたは月遅れレセの早期提出も以前より停滞が減少した。管理が行き届いた成果と考える。
    【まとめ】診療報酬請求の適正化対策は、どの対策も結果は良好であった。今後も引き続き適正請求を積極的に展開したい。
  • 村野 いづみ, 小見渕 幸子, 高嶋 美千子, 梶山 幸美, 佐藤 美智子, 大津 百世, 飯塚 規子
    セッションID: 2C08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    [はじめに]看護職は職務内容の特殊性や労働条件などから一般的にストレスが強い職業と言われている。当病棟においてもストレスを感じながら業務に携わっている看護師が多く見受けられる。また様々な役割を持ちながら業務を行っており、その立場の違いによって受けるストレスは様々であると考える。さらにストレスが大きいことで、心のゆとりや仕事に対する満足感が減少するのではないかと考える。そこで当病棟における看護師のストレッサーと職務満足度の要因を経験年数別に明らかにしたいと考えた。
    [研究方法]
    期間:2004年8月16日から8月30日
    対象:当病棟看護スタッフ17名(師長は除く)
    回答率100%
    1-3年目4名(以下A 群)
    4-6年目8名(以下B群)
    7年目以上5名(以下C群)の3群に分ける。
    方法:1.三木の提唱する看護師のストレッサー尺度を用いた質問紙を配布。
       2.1と同様にstampsらの作成した病院勤務看護師を対象にした職務満足質問紙を配布。
    3.1、2を集計、3群に分け分析する。
    倫理的配慮:質問紙はそれぞれ無記名とし、研究趣旨について文書にて説明し同意を得た。また結果については業務に影響がないことを文書にて説明した。
    [結果・考察]
    看護師のストレッサー尺度で、3群とも点数の高かった項目は業務に関する項目であること、また職務満足度では3群とも看護業務の項目について最も点数が低いことから、業務についてのストレスが強いことが満足度を下げている原因と考える。またストレッサー尺度からA群、B群は人命に関わる仕事内容の項目が最も点数が高く、これは経験年数が少なく緊張する場面が多いことがストレスにつながっていると考える。C群では技術革新の項目で最も点数が高く、これは教育的役割が期待される立場にあり、そのため新しい知識や技術を獲得しなければならないという状況が、ストレスを強めている要因のひとつであると考える。これらのことは業務に関するストレスでも役割により内容が違うと言える。
     患者家族との関係・医師との関係においてストレッサー尺度では3群とも最も点数が低く、同じ項目で職務満足度尺度では3群とも点数が高い結果が得られたことから職場の人間関係は良好であると考えられる。医療チームとして人間関係が良好であることは適切な医療・看護を提供する上で大切な要素であると考える。以上のことからストレスと職務満足度には関連性があることが示唆される。また三木が述べるように今後は看護師のメンタルヘルスケアを充実していくことが必要であると考える。
    [まとめ]1.3群とも業務に関してストレスが高く満足度が低かった。年代別の役割の違いからストレスの違いに差があった。2.人間関係に関するストレスは低く満足度は高かった。これらに関して年代別に差は無かった。
    [終わりに] 今回は少人数であった為十分な結果が得られなかった。今後は対象を増やし追跡調査を行なっていきたい。
    [引用・参考文献]
    1) 尾崎フサ子:看護婦の仕事への満足に関する研究!)米国のICU,CCUで働いている看護婦と一般内科、外科病棟で働いている看護婦の比較、看護研究、Vol.20 No,3,p54-64,1987
    2) 三木明子他:看護師の年代別職業性ストレスの特徴、第33回日本看護学会論文集(看護総合)、p68-70.2002.
    3)堀洋道他:心理測定尺度集III、サイエンス社p320-327.
  • 職務満足度調査の全体と助産師の比較より
    川瀬 裕子, 本間 葉子, 中本 禎子, 川島 陽子, 若井 和子, 野原 恭子, 横谷 清子, 山川 京子
    セッションID: 2C09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    I.はじめに
    平成16年度の看護白書では、職員の満足度の低い病院は患者の満足度も低い。すなわち患者の満足度を向上するには看護職の満足度を向上させていく必要があると述べている。我々は平成15年度の看護職のやりがいを含めた職務満足度調査を行なった。その結果からやりがいの差の大きい看護職全体と助産師を比較検討した。その分析より当院の看護職のやりがいを高める要素として「専門職としての自律」と「看護管理者の承認」が重要であると示唆されたのでここに報告する。
    II.研究方法 
    (1)調査対象:当院に勤務する保健師、助産師、看護師、准看護師564名 (2)調査期間:2003年7月24日から8月1日 (3)調査方法:留め置き質問紙法 (4)調査内容:Stampsらが作成した「看護師の職務満足度尺度」7構成要素を基に6構成要素31項目(A労働条件・B専門職としての自律・C職業的地位・D看護管理・E看護業務・F看護職相互間の影響)と「やりがいを持って仕事をしているか」を含めた32項目で調査した。
    III.結果と考察
    「やりがいをもっている」が看護職全体では59.1%で、1年次が最も多く67.3%である。職種別では助産師78.6%と最も多く、次いで保健師、准看護師、看護師の順であった。尺度の順位で全体は「看護職相互間の影響」72.3%、「職業的地位」62.1%、「看護業務」54.2%の順となり、助産師は「看護職相互間の影響」90%「職業的地位」83.5%「専門職としての自立」80%の順であった。助産師の「技術と知識を深める学習会に参加している」「職場で責任を与えられ充実している」は看護職全体よりも30%も多い。これらから、助産師は専門職としての役割意識と責任感、学ぶ意欲が看護職全体より高いと推測される。これは助産師が看護職の中では助産業務が自立し、明確な自主裁量を持ち、実践している為であろう。この結果を看護職全体に当てはめて考えると其々の職種毎の専門範囲と自主裁量を明確にし、自立を高めることがやりがいを高めることになる。つぎに当院の看護職は必要なアセスメントをして患者から良く評価されているが、現在行っている看護の満足度は低く、やりがいに繋がっていないと思われる。当院の看護職は患者から認められていることは自覚している。患者以外の誰の承認がやりがいに繋がるのか、尾崎らの調査を引用すると、看護職が職場でやる気を無くす時は、成果・能力・努力の承認、評価、期待と信頼が不適と上司の承認行動が不適の割合が多かった。患者からの評価を看護管理者が共に認めること、つまり承認行為を示すことが職務満足度を上げ、やりがいに繋がることが示唆されたので報告する。
  • 岩堀 恭宏, 今喜多 静子
    セッションID: 2C10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    I.はじめに,BR> 「鋼製製品(鑷子、鉗子、剪刀等)の染みや錆が目立つ」という指摘に対し、鋼製製品の使用後の取り扱い方法に関して調査を行った。結果、各部署で行なわれている一次処理方法に統一性がないことが明らかになった。そこで、一次処理方法を統一する事で業務の簡略化が図れ、消毒薬の使用量の減少にも繋がったので報告する。
    II.研究方法
    1.対象:看護師101名(手術室看護師を除く)
    2.期間:平成16年10月から平成17年3月
    3.調査方法:一次処理方法統一前後のアンケート調査
    III.結果
     アンケート結果から(1)洗浄方法(2)洗浄後の処理方法(3)洗浄後の浸漬消毒について部署や個人で相違がみられた。具体的に(1)に関しては水洗いが27%、ポピヨドンスクラブ使用が57%、ピューラックス使用が3%、マスキン液使用が1%、食器用洗剤使用が12%であった。(2)(3)に関しては、洗浄後に浸漬消毒を行なっているという回答が78%で使用薬品はピューラックスとマスキン液に分かれ、人数の割合はほぼ半々であった。しかし同じ消毒薬でも希釈濃度は個人や同部署内でも相違があり、浸漬時間も30分から4時間の間でばらつきがみられた。そこで洗剤や消毒薬を用いない温水洗いのみの一次処理方法を導入した。方法は、使用後の鋼製製品を温水(約50℃)中で振り洗い、湯切りし「鋼製製品回収ボックス」に保管後中材担当者が回収・洗浄・消毒を行なうシステムを取り入れた。
     この方法を導入した結果、「一次消毒がなくなり業務時間が短縮出来た」「流し台付近に器械や消毒薬が散乱せず整理できた」「消毒薬の使用量が減少した」等の意見が聞かれた。
    IV.考察
     処理方法統一前は、ステンレス性の鋼製製品の皮膜(酸化皮膜)にダメージを与える消毒薬(塩素を含むピューラックスやイソジン等)が使用されていた。また一般の食器用洗剤も有機化合物を多く含むため、皮膜を傷つける原因になる。これらの洗浄・消毒方法が染みや錆が目立つ原因ではないかと考える。統一後の処理方法でも水道水中の塩素の影響が懸念されるが、塩素は40℃から50℃で気化するというデータから温水での洗浄方法を取り入れた。さらに処理方法統一後のアンケートから消毒薬消費量の増減に関し、統一前後3か月について調査した。結果、ピューラックスについての有意差は無かったがマスキン液で46%、ポピヨドンスクラブで20%のコスト面での減少が見られた。一次処理方法を統一した事で、消毒に費やしていた業務時間を短縮する事が出来た。また、消毒薬の使用量が減少したことで消毒薬に掛かっていた費用の削減にも繋がったと考える。
    V.まとめ
     今回の研究を通して鋼製製品使用後の一次処理方法の統一化を図ることが出来た。また改善したことによって業務の簡略化、さらには消毒薬のコスト面でも削減を図ることが出来た。今回の研究を基に、今後は効率的で正しい洗浄・消毒方法についてさらに学習を深め、積極的に鋼製製品の保守管理に努めていきたいと考える。
  • 上田 恒治, 後藤 昌
    セッションID: 2C11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    【はじめに】医療機器の安定供給と過剰在庫の減少は,病院経営に貢献する1つの要因であり,病棟での在庫管理業務の軽減は,看護業務の充実をはかる上で有効である。
    当院では平成15年2月の新病棟開設に向けて,平成11年9月に海南病院SPD委員会が発足し,物流管理システム(SPD)の1部分として,カート交換方式による医療機器払い出しシステムを検討してきた。その経過について報告する。
    【払い出し方法】月曜,木曜の午前中に搬送・交換を行ない,カート内の在庫を確認しハンディタイプのバーコードリーダーで在庫数を入力する。バーコードリーダーからPCにデータを送信することにより出庫処理が行われる。午後から部署毎に印刷された集計表を元に,倉庫から払い出しカートに補充する。翌日,前日にセットしたスタッフとは別のスタッフが再確認を行なうことで,入れ間違いの防止をはかる。
    【導入部署】始めは改築工事の都合上,新棟のみだったが,薬剤科の改築が終了した時点で1病棟を除く全ての病棟に導入した。各部署からの評価もよく平成16年10月に救急外来,同年12月に内視鏡センターもカート交換方式を導入した。平成17年5月には,手術室と放射線科に導入予定。
    【結果・考察】導入時には,病棟スタッフがカート交換方式を理解していない,定数の設定ミス等の問題点もあったが,SPDの会議等による周知徹底や定数の見直しを随時行なうことで解決した。
    カート交換方式の採用により,看護師の在庫管理業務を軽減することができ看護業務の充実をはかる事ができた。また従来の受払簿による週1回の払い出しから,週2回交換することにより,医療機器の定数減少を図り,限られた病棟詰所スペースを有効に利用することができた。さらに,請求漏れがなくなり安定供給が可能となり,過剰在庫の減少につながると思われる。
    一方,各部署のスペースが減少する分,中央に大きなスペースが必要となる。カートの大きさが限られているため入れられる量に制限がある。回転率の悪い高価な医療機器には不向きであると言った問題点も分かってきた。
    また,カート交換方式の採用に伴い,クラヤ三星堂の管理システム(Medks-Zigsaw)を導入し医療機器の管理,発注,払い出しをバーコードによって行なうことが可能となり,月末の棚卸し作業が軽減した。
  • -スリッパ洗浄機を無くして-
    柳沢 正, 砥石 佳子, 中島 文香, 三島 済, 中島 浩美
    セッションID: 2C12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    はじめに
    今回当院手術室において17年間使用しているスリッパ洗浄機が故障を繰り返し、買い換えるか買い換えないか、という問題を機会にスリッパ管理の見直しをした。CDCガイドラインにおいては手術室の床が手術部位感染(SSI)の原因とはならないとされていることから、スリッパ洗浄を中止し、院内一足制を導入することにした。導入にあたり医師、スタッフの感染に対する意識の改革とスリッパ洗浄にかかるコストの削減ができたので報告する。
    結果、考察
    2004年4月に調査した結果、手術室に出入りした人数は約1900人、洗浄スリッパ数2694足であった。1か月の洗浄回数は83回。スリッパの履き替えに関しては規則が無く、1人で1日に何回も履き替えていたことがわかった。出入り口には脱ぎっぱなしのスリッパが散乱し、通行の妨げになっていた。また助手業務にスリッパ洗浄に費やす時間が多い事がわかり業務の見直しを行なった。
    手術室スタッフ、医師にスリッパ履き替えについてアンケート調査を行なった結果は1足制導入に関して感染、物品の汚染が考えられるという回答が多くあまりいい返事が聞かれなかった。手術室の床は手術部位感染の原因にはならないこと、床はもともと汚く床に座る、床置き物品、清掃など間違った認識の改革から始めることにした。
    院内感染対策委員会のアドバイスを受け、CDCガイドラインに基づいた手術部位感染防止について、手術室スタッフに学習会を行ない、床置き物品の整備、清掃手順を明文化し統一化を図った。医師に関しては部長医長会議で反発の意見が多い中、手術部部長より今なぜ履物交換規則の廃止なのかについて説明し説得した。また院内メールを利用して、職員に1足制導入についての情報提供することで、入室に関しての統一化ができた。またさまざまな意見や要望をいただき、参考にすることができた。
    院内1足制導入に伴い、個人別下駄箱を設けることにより履物を自己管理とし、導入後1か月で3割が院内1足制、7割が手術室1足制に移行することができた。この事で出入り口周辺のスリッパの散乱が無くなりスムーズな通行ができるようになった。
    スリッパ洗浄が無くなり、洗浄機の買い替えが無くなった事、スリッパ代、修理代、スリッパ洗浄にかかっていた、水道代、電気代、洗剤代、人件費のコスト削減につながった。院内一足制導入に伴い自己を守る、感染防止などでシューズカバーの使用が増えたことに関しては、感染に対する意識が高まったと考えられる。そして床に座ること、床置きの物品が無くなり、清掃手順も遵守されていることは、床に対して不潔であるという認識が強くなったと考えられる。
  • 田口 治義, 湯川 修, 黒木 一彦, 木下 康之
    セッションID: 2D01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    【目的】慢性硬膜下血腫は、頭部外傷後数週間から数か月経過した後、徐々に硬膜下に血腫が増大する疾患であり、脳神経外科領域では他疾患と比し最も手術件数の多い疾患の一つである。発症原因には直接外傷との関連が証明できないものもあり、いまだその成因が明確にされていない。また治療においては、局麻下に穿頭洗浄術が施行され、一回の手術で約80%前後の治癒率と報告されるものが多い。術後再発については、硬膜下腔の開大の有無、血腫の生化学的要因、血腫皮膜の性状、術後ドレナージ留置の有無など多くの要因が検討されてきた。今回我々は、手術後血腫が再増大し、再度手術を要した再発例を検討し、手術前後のCT画像の所見や、年齢等の要因による再発予見の可能性を考察した。
    【対象】2001年1月1日から2005年3月31日まで、廣島総合病院 脳神経外科で穿頭洗浄術を施行した、慢性硬膜下血腫症例は128例(男性:94例、女性:34例)である。平均年齢は74.3歳(30_から_96歳)であった。128例中両側の慢性硬膜下血腫と診断したのは27例、この内、同時に両側の手術を施行したのは16例、先ず一側を手術し、後日反対側を手術した例が4例あった。これら計148回の手術を初回手術とした。この内、再手術を要した再発例は、24例、16.2%(両側の再手術を要したもの2例、3度目の手術を要したもの1例を含む)であった。
    【方法】初回手術での治癒症例124例と再手術症例24例の、1) 年齢、2) 血腫量、3) 画像上の血腫の性状(均一、不均一)、4)術後の残存空気の量を比較検討した。血腫量および術後残存空気の量は、〔 容積=CT上での血腫(空気)厚の最大値×50(ml) 〕の簡易計算にて測定した。各結果は、t検定にて有意差の有無を検討した。
    【結果】各検討項目についての結果を下表に示す。
    両例を比較した各項目に、有意差 (p<0.05)を認めなかったが、再発症例には残存空気量が多い傾向があった。
    【結論】今回検討した各項目において、再発を予見できる有意差を持った結果は得られなかった。術前の血腫量に差がなく、術後の残存空気量がやや再発例に多かった傾向が認められ、元来の脳の萎縮等、硬膜下腔の開大が再発要因の一つと示唆された。
  • 折本 有貴, 国本 圭市, 山本 昌幸
    セッションID: 2D02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>海綿状血管腫は異常に拡張した洞様血管が限局的に密に集合し、そのため各血管の間に正常脳組織がみられない先天性血管奇形である。その多くは脳実質内に発生する。髄外のものはまれであり、殆どは中頭蓋窩に発生するとされている。今回我々は後頭蓋窩に発生した髄外海綿状血管腫の一例を経験したので文献的考察を含め報告する。
    <症例>患者:54歳、男性 主訴:後頭部痛、ふらつき感、嘔気
    既往歴・家族歴:特記事項なし。
    現病歴:数年前から後頭部痛・ふらつき感を自覚していた。
    平成16年6月中旬頃から次第に憎悪し、嘔気も出現するようになった。
    6月26日、近医受診し頭部CTにて右の小脳腫瘍を指摘された。
    6月28日、当科に紹介受診した。
    神経学的所見: 神経学的検査では異常を認めない。
    画像所見:頭部CTでは、右小脳に約4cmの占拠性病変を認めた。腫瘍は軽度高吸収域に描出され、周辺の浮腫は軽く、石灰化は見られなかった。MRIで腫瘍は大後頭孔近傍の硬膜から小脳内に発育しており、T1強調像で低信号域、T2強調像では高信号域、ガドリニウム造影像では全体に強く造影された。脳血管撮影では右後頭動脈から分枝する栄養動脈がナイダス様に描出されたが、腫瘍濃染像は軽度であった。右椎骨動脈、脳底動脈、後下小脳動脈の腫瘍による圧排所見を認めた。以上の所見より右後頭蓋窩の髄膜腫あるいは髄外海綿状血管腫が疑われた。
    手術所見、病理組織診断:右後頭下開頭を施行した。下方は大後頭孔まで骨切除を加えた。腫瘍は淡赤色で比較的柔らかかった。まず腫瘍の硬膜付着部を凝固し、切除した。易出血性であったが、バイポーラ焼灼にてコントロールは可能であった。腫瘍とその周辺の脳との癒着は軽く周囲から剥離し一塊に摘出した。硬膜付着部の凝固を追加して、手術を終了した。
    組織学的には大小さまざまに拡張した血管腔が密に集合しており、その間に神経組織が存在せず、海綿状血管腫と診断した。
    術後経過:術後経過は良好で、17日目に神経脱落症状なく独歩退院した。次第に自覚症状も消失し、術後4か月後に職場復帰をはたした。
    <考察>:髄外海綿状血管腫は硬膜の脈管系から発生し、脳実質から区別されているものをいう。発生頻度は5%以下とまれで、そのほとんどは海綿静脈洞を発生起源とする中頭蓋窩から発生し、後頭蓋窩からの発生は極めてまれとされている。
    髄膜腫との鑑別診断には、MRIの所見が最も重要である。髄外海綿状血管腫では、T1強調画像で等信号、T2強調画像では髄液と同程度の高信号を示す。髄膜腫では、T1強調画像で低・等信号、T2強調画像では等・軽度高信号を示すとされている。ただ鑑別が困難な場合も多い。今回の症例ではMRIの所見からは髄外海綿状血管腫が疑われたが、発生頻度や部位などから髄膜腫の可能性も除外できなかった。
    髄外海綿状血管腫の理想的な治療は外科的な全摘出である。中頭蓋窩のものでは放射線療法も考慮されるが、一方その他の硬膜より発生するものは容易に摘出できるため放射線療法の適応はない。易出血性であるので手術時には止血操作に特に留意する必要がある。
    <結語>:後頭蓋窩髄外海綿状血管腫の一例を報告した。
  • 典型的TGAを呈し、MRI拡散強調像で左海馬足にhigh intensity lesionを認めた65歳男性例
    新谷 周三, 白石 淳, 新見 祐介, 椎貝 達夫
    セッションID: 2D03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに:一過性全健忘(transient global amnesia: TGA)の特徴は、1:50歳から60歳代に多い。2:精神的ストレスなどの発症誘因を有することが多い。3:短期記憶の障害を主徴とし、突然に発症する。4:意識は清明で、自己の認識は保たれ、日常動作も正常で、計算や買い物、車の運転もできる。5:当惑した様子で、「ここはどこか?」「自分は何故ここにいるのか?」「今日は何月何日か?」と、時間や場所に関する質問をくり返す。6:数日から数十年にわたる逆行性健忘を呈するが、これは発作の回復と共に急速に短縮する。7:健忘以外の神経症状(構音障害・視野障害・痙攣など)は認めない。8:発作は、ふつう24時間以内で、多くは4時間から8時間で回復する。9:発作中の記憶は、永久に失われる。10:再発は少ない。11:原因として、一過性脳虚血発作 (TIA)、てんかん、偏頭痛発作などが考えられるが未確定である。(平田 温:一過性全健忘。CLINICAL NEUROSCIENCE 5:204:1987より一部改変)。
    症例:65歳男性。高血圧や糖尿病の既往はない。2005年1月29日、夕方まで変わったことは無かったが、午後7時頃、町内の会合に出席し、2時間後に車を運転して帰宅後より、言動がおかしいことに家族が気付く。会合に出席したことや、会議の内容、誰に会ったかも全く思い出せない。さらに、1年前に妻が死亡しているが、それも思い出せない。「俺、今日何してた?」「お母さん死んじゃったの?」とくり返し、やや興奮気味であった。当院救急外来では、血圧135/83,脈拍63/分・整、体温36.8度で、意識は清明で、神経学的にも異常なし。長谷川式テスト(改訂版)で、当日の日付・曜日・年は不明で、20点(30点満点)と低下。翌日の脳MRIでは、拡散強調像 (DWI) で左側脳室下角に接する海馬足 (Pes hippocampi) に新しい梗塞を認めた。
    考察:TGAの原因として、stroke説・epilepsy説・migraine説の3つがある。stroke (TIA)説を支持しないもの (Lauria G :Acta Neurol Scand 1998, Gass A: Stroke 1999, Huber R: J Neurol 2002)や、epilepsy説を支持するもの(Schmidtke K: Eur Neurol 1998)の報告があるが, SedlaczekらのMRI拡散強調像による報告(Neurology 2004)で、ほぼstroke (TIA)説に決定したと思われる。さらに今日、stroke説でも脳静脈還流不全によるtemporal congestion説が注目をあびている(Lewis SL:Lancet 1998, Akkawi NM: Lancet 2001, Winbeck K: JNNP 2005, Schreiber SJ: JNNP 2005)。
    結論:TGA のMRI拡散強調像(DWI)による報告は、その責任病巣についてhippocampus やcorpus callosum (Ay H: 1998, Greer DM: 2001, 稲村: 2002, Matsui M: 2002, Saito K: 2003, Felix MM: 2005)があるが、本症例もTGA のstroke 説を支持するものである。
  • 小黒 真紀子, 林 八重子, 江口 浩子, 細川 美和子, 広井 盛子, 片桐 ひろ子, 富所 隆, 吉川 明
    セッションID: 2D04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉
    当ステーションは、総合病院併設型のステーションである。母体病院は531床で、急性期医療主体の病院である。癌患者も多く、その為開設当初より在宅でのターミナルケアに最も力を入れてきた。今回私達はより良いケアの提供の為に、在宅での看取りの現状を調査したのでここに報告する。
    〈対象及び方法〉
    平成16年度に訪問看護を行った254例のうち、癌患者様45例(男性28例、女性17例)に対し平均年齢・訪問回数を、そのうち亡くなられた35例に対し在宅期間・在宅で行われた医療行為などを調査した。
    〈結果〉
    年間利用者数は254例でそのうち45例が癌の患者様で全体の17.7%を占めていた。年齢は43歳-89歳で平均74.6歳だった。疾患の内訳は胃癌9例・肺癌7例・膵癌5例・肝胆道癌5例・大腸癌4例その他食道癌・膀胱癌・腎癌・卵巣癌と多岐にわたっていた。在宅期間は一番短い人で2日、一番長い人で284日。平均51.7日だった。訪問回数は一週間に1.9回で他疾患の患者様の1.2回に比し多かった。 45例中亡くなられた人は35例で、そのうち在宅死をされた人は16例(開業医8例、病院医師8例)、最期に入院して病院で亡くなられた人は19例(開業医1例、病院医師18例)だった。再入院した理由は、在宅で緩和できない全身苦痛が52.6%と最も多く、次いで家族の介護疲れや呼吸苦などであった。在宅で行なわれた医療行為は在宅酸素5例、胃瘻の管理2例、PTCDチューブの管理3例、フォーレの管理3例、ストーマの管理3例、腎瘻の管理1例、尿管皮膚瘻の管理1例、吸引2例、ポート・IVHの管理8例であった。疼痛緩和のためにモルヒネを使用していた人は18例、モルヒネを使用していない人は19例だった。
    〈考察〉
    終末期を在宅で過ごしたいと思っている患者様、ご家族はたくさんいる。しかし、将来の病状悪化に対する不安や、病院で行なわれている各種の医療行為が在宅への不安を増大させる。在宅での高度な医療行為に関しては賛否両論あるが、私たちは、可能な限り入院時のケアを提供するよう心がけている。
    患者様の入院中と在宅での表情の違いに驚きを覚えることがある。生活の場である在宅ではストレスが無く、訪問看護による24時間連絡体制のもといつでも相談出来るという安心感が得られることが、苦痛緩和につながり、それは、モルヒネの必要のない人が過半数であった事からも伺える。
    最期を自宅で迎えられた人は45.7%で過半数の人が病院で最期を看取られていた。これは在宅期間でも病院の医師が担当医であり、頻回に往診にいけない事が理由として考えられるが、一方、いつでもすぐに入院できることは、在宅でのケアに大きな安心を与えることになっていると思われ、これは病院併設型のステーションの利点と思われた。
    〈終わりに〉当ステーションでは在宅死にこだわらず、いつでも入院できる体制で、本人にとって、良い選択が出来るよう提案していき、一緒に悩み迷いながら寄り添っていきたいと思う。そして「その人がその人らしく生きるために」最期の一瞬まで本人の心と身体が少しでも安らかであるように支えて生きたいと考える。併せて、遺族に訪問看護に関する思いをアンケートにより調査し、報告する。
  • デスケースカンフアレンスを試みて
    八尾谷 美香, 橋口 里美, 佐藤 三和子
    セッションID: 2D05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    I.はじめに
    内科外来(以下、当科とする)では終末期患者様を受け持ち看護展開している。しかし、最期の看取りの場は病棟か在宅であり外来の看護師が臨終の場に直接立ち会うことは出来ない。受け持った終末期患者様と家族との関わりから多くの学びを受けた。その学びを今後の当院での緩和ケアの向上に繋げる為デスケースカンフアレンス(以下、DCとする)を行なった。DCは緩和ケア病棟で日常的に行なわれているが一般外来においても緩和ケア病棟と同様に目的を達成出来るのか疑問に感じた。そこで、今回の研究を通し当科でのDCの現状を把握し意義と課題が明らかになったのでここに報告する。
    II.研究方法
    (研究方法) 調査研究(研究対象) 研究期間中に当科でのDCに参加した10名(当科看護師4名・処置室看護師3名・退院調整室(保健師)2名・医師1名)(研究期間) 平成15年5月-平成17年4月(データ収集方法) 半構成的質問用紙を用いてアンケート調査(データ分析方法) KJ法を用いカテゴリー化(倫理的配慮)・本研究の主旨・自由意志・プライバシーの厳守を説明し同意を得る・質問用紙は無記名
    III.結果
    質問1『DCについて知っている』と解答した人は9人。質問2『DCに参加してよかった』と解答した人は10人。質問2の理由として7のカテゴリーに分類。1.病状・看護を振り返られる 2.情報・問題点・経験を共有できる 3.看護の向上に繋がる 4.病気・治療・緩和ケアについて学べる 5.メンバー間の連携が強化される 6.患者・病状・看護・メンバーの考えが理解できる 7.今後の看護の課題が明確化できる。質問3『当科でのDCを継続すべき』と解答した人は10人。質問3の理由として7のカテゴリーに分類。 1.看護を振り返る 2.情報交換 3.看護の向上 4.学習 5.他部門との連携強化 6. 自己成長 7.他部門の外来看護への理解。質問4『当科におけるDCへの要望』についての質問では4のカテゴリーに分類。 1.現状維持 2.関連部署(病棟看護師・訪問看護師・薬剤師・MSW)の参加 3.DCの内容検討 4.学習会の開催 5.院内外への発表。
    IV.考察
    高宮は、DCの目的として「亡くなった患者さんの事例をもとに、行なったケアや看護方針を振り返り、問題点などを話し合う」と述べている。質問2の理由として病状・看護を振り返られる、情報・問題点・経験を共有できるとの項目が上げられており当科でも緩和ケア病棟同様にDCの目的を達成出来ていると考える。さらに、一人の経験・考え・学びをみんなで共有することで緩和ケアの質の向上に繋がっていると考える。また、スタッフの知識・能力にも差があり、DCを通しての学びやメンバーが協力しあうことで看護の質の向上にも繋がる。DCでの学びを得、自己成長することで緩和ケアのみならず日々の看護の姿勢によい影響を与えていると考える。今後は終末期患者様がその人らしく人生の最期を迎えられるように関連部署の参加により様々な視点での意見交換を行ない、さらに連携を深められるようなDCの開催が必要と考える。V.結論
    ・DCは当科においても緩和ケア病棟と同様の目的を達成でき、緩和ケアの向上に繋がる・DCは緩和ケアの向上のみならず日々の看護の充実にもよい影響を与える・関連部署の参加により多角的に意見交換していけるDCの開催が必要
    VI.引用文献
    高宮有介:一般病棟における緩和ケアのすすめ方.Expert Nurse15(2).52!)57.1999
  • 壮年期ターミナル患者の一事例を通して
    和泉 裕子, 須藤 由利子
    セッションID: 2D06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    I.はじめに
    札幌厚生病院は、病床数494床の急性期医療を担う一般病院である。平均在院日数は17.5日(16年度)であり、治療が必要な状態で在宅療養に移行するケースが増えている。看護相談室は、病院に療養病床や関連施設を併設していない為、地域の医療福祉等の連携窓口としての役割がある。また、ターミナル期の医療依存度が高いケースについては訪問看護を実施している。ターミナル期の患者家族が安心して療養生活を継続する為には、1.本人・家族が在宅生活を希望する 2.症状がコントロールされている 3.生活を支えるための社会資源導入が可能である 4.専門的医療サービスの提供が可能であることが必要である。
     今回、夫と二人暮しの壮年期(30代)で、胆管細胞癌ターミナル期にある女性が在宅療養を希望した。入院中に家族間の意志や在宅支援体制を十分に調整できないまま訪問看護を開始した。この事例を通し在宅支援における看護相談室の役割を再考したので報告する。
    II.看護の実際
    1.本人・家族の希望;本人は病名を告知されており、在宅療養を希望していた。夫は医療者・妻の家族に自分の思いを伝えられない事が多かったが「家で二人で過したい」と希望した。姉は介護をしたかったが幼い子供も居り、妹の夫に頼むしかなかった。また家族間で予後に対する認識が一致していなかった。病状を冷静に判断し、調整出来る人がいなかった。
    2.疼痛コントロール;本人の精神的な不安が関与しており、コントロールが図れないまま退院した。在宅においても夫が不在の時は特に苦痛の訴えが強かった。ホスピスケア認定看護師と訪問診療医と連携し調整するが、コントロールは難しかった。
    3.生活支援;日中の生活をヘルパー・姉の協力・訪問看護で支え、夜間は夫が介護した。しかし、病状の悪化に伴い日常生活における介護量が増え、夫が休職し介護する事になった。
    4.在宅療養における医療提供の限界;どの時期まで在宅での生活を継続するか、方向性を家族と最期まで共有できなかった。病状の認識に、医療従事者と家族間でズレがあったが調整することは難しかった。1か月後、誤嚥により心肺停止で救急車搬送され病院で最期を迎えた。
    III.考察
    在宅を支えるには、1)病院医療が多くの職種によって支えられているように、在宅ケアでも多職種によるネットワーク、チームケアが必要だと言われている。今回の事例は、退院に向けた準備期間も短く、患者家族とのコミュニケーションや信頼関係を十分に築けないまま訪問看護を実施した。そのため、本人や夫の思いを引き出した連携や調整を実施することが出来なかった。入院期間が短くなる中で時期を逃すことなく、ターミナル期の在宅療養を支えていく為には、入院中の早い時期から本人・家族と関わり、意向を明らかにしておくことが必要である。また、目標を共有し本人・家族を中心としたチーム作りをして支援体制を整えることが重要である。そのために看護相談室は、ケアチームをまとめ・牽引していく役割を担う必要がある。
    1)二ノ坂保喜:「在宅ホスピス医の立場から」訪問看護と介護2003 Vol.8 No.6
  • -死生観のまとめとスピリチュアルケアの学びより-
    羽毛田 博美, 桜井 成美, 小野 由貴子, 鈴木 彰
    セッションID: 2D07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    [緒言]1989年の看護教育におけるカリキュラム改正では、ターミナルケアのように生命倫理の問題を踏まえた判断能力や問題解決能力が求められている。ターミナルケアの看護に求められる事は、身体的ケアはもちろん精神的サポートや、スピリチュアルケアである。当校では2年次に13時間の講義と、3年次90時間の終末期看護の実習を行なっている。ここ5年間の成果と課題を検討したので報告する。
    [方法]1)時期1999年ー2003年
    2)対象 第一科の学生
    3)方法 1.死の意識アンケート調査(433名)
    2.終末期看護実習での死生観についての意見のまとめ(114件)
    3.終末期看護をテーマとしたケーススタディ
    [結果]1.死の意識調査では、「自分にとって死とは」の問いは、生命の終わり41.9%、永遠の眠り・憩い33.8%、「死後に関する現在の自分の考え」は、永遠の眠り31.0%、神秘・不可解22.0%であった。「死について考えることの度合いは」時々(1月に1回)が47.8%殆どない(何年かに1回)29.9%であった。
    2.実習最終日で死生観について出された意見では、「死」を自分の事ではなく、祖父母や患者の事として考えていた。自己の死生観については「死を自分の事として捉える事ができる」8.8%、「死から生きることの意味を考えられる」は1.8%であった。「終末期の患者と接し、健康であることのすばらしさに気づいた。一日一日大切に過ごしたい」という意見は、実習で真剣に患者と向き合い、死の過程を学んだ体験から出たと思われる。
    3.終末期患者と1対1で関わる学生は、スピリチュアルペインに触れることができたり、ライフレビューより平安な死への援助を学ぶ事ができる。
    事例1;大腸癌からの転移進行により対症療法を行なっていた62歳女性。患者から「もう十分生きた。先生お願い、もう逢いたい人にも逢ったし、何も後悔することはない。もう、雲の上に行かせて下さい。」と学生を待ってセデーションが行なわれた。
    事例2;進行胃癌で疼痛コントロールを行っている50歳独身男性。年老いた両親を残し先立たなければいけない事や、「俺は、携帯電話で配線の仕事をしていた。遣り甲斐あったよ。」など過去の実績を話す様子が見られた。[考察]調査結果から、死に対しては終わりと言った意識が強く、日々考えたくないものとして捉えている。しかし、病名が告知され、死と向き合う患者家族の精神的サポートは今後益々求められてくる。患者の心残りを聴けた事例、「最後にあなたに看取ってもらいたい」とセデーションを待たれた事例。これらの事例はスピリチュアル的側面の関わりであり、死や死別が単に苦しむことではなく、その苦しみから学ぶものが多い事を教えている。終末期看護実習は、スピリチュアルケアを学ぶ重要な場であるとともに、学生自身の死生観に大きく影響を与えていると言える。
  • アンケート結果からの見えてきたもの
    平田 小百合, 近藤 純子, 都築 美智子
    セッションID: 2D08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉緩和ケア病棟における家族へのケアは、遺族ケアという形で始まるのではなく、患者が入院している間や緩和への最初の相談の時点から始まっていると言われている。今回入院期間中の家族ケアに焦点をあて遺族の思いを考察し、入院期間中の看護師の関わりを振り返ることで今後の家族ケアを見直す機会とする。
    〈方法〉1.対象及び方法:平成14年5月から平成16年3月の期間に退院した119名の遺族に対してアンケートを実施、回収した80名のアンケート内容を考察した。2.倫理的配慮:調査目的、プライバシーの保護について文章にて説明し同意を得た。
    〈結果〉アンケート結果
    1. 入院期間中患者にしてあげたかったこと・あげられなかったこと「外出、外泊をさせてあげたかった」「一緒にいてあげたかった」「話を聴いてあげたかった」「苦しさや痛みを和らげてあげたかった」
    2. スタッフに気遣って貰いたかったこと
    「息を引き取る瞬間に医療者にいて欲しかった」「宗教的な面からの手助け、面会者の配慮をして欲しかった」
    3. 患者の身近で過ごし感じたこと
    「日に日に状態が悪くなっていく様子を見ていることが辛かった」「これからどうなるのか・どんなことが起こるのか恐かったし苦しかった」「辛そうだが何をしてあげれば良いのか分からなかった」
    4. スタッフに不安な気持ちを話せたか
    「漠然とする不安や言葉にすることが出来なかった」「期間が短かったので親しい関係に至らなかった」「相談したり話し合える場面がなかった」
    5.現在の心境
    「一人になるとまだいろいろなことを思い出す」「現実と向き合い家族3人それぞれのリズムをつかみつつある」「アルバイトに出るようになりいい気分転換になっている」「寂しいが明日に向かって頑張る。人と話したり出かけることをもっと積極的にしたい」
    6. 病棟スタッフとの関わりで感じたこと
    「患者に対する気配りがあったので家族は安心感があった」「家族の不安な気持ちを取り除いてくださり患者家族との貴重な時間を作ってくれうれしく思った」
    〈考察〉家族は患者の死によって喪失の悲しみを体験し、その悲しみを癒す悲嘆のプロセスを歩み始める。アルフォンス・デーケン氏は「この辛い12段階を誰かが代わって行なうことは出来ない、自分の中で時間をかけて消化するより仕方がない」と力説している。今回のアンケート結果では死後1年以上であっても受容の段階に至っていない遺族もいれば、1年未満であっても需要の段階に至っている遺族もいた。また、死別後の経過期間及び入院期間の長さで比較してみたが大差はなく、出来る限りのことはやってあげられたとの達成感を持つ家族は悲嘆プロセスの受容の段階にある人が多かった。医療者は患者だけでなく家族にも焦点を当てた情報を共有し、その時々に対応できる体制を整えておく必要がある。また、医療者はその都度患者の状況や今後予測される状態について日常的なコミュニケーションを通して説明する必要がある。そして、家族は出来る症状緩和の方法をなど指導していく事で家族の“何もしてあげられなかった。どう接してよいか分からなかった”という思いは軽減するのではないかと考える。入院期間中は患者との関わりが思い出となり遺族の悲嘆を支えることにもなる。
  • 佐々木 良子, 小林 康子, 小松 良子, 佐藤 浩子, 佐藤 美加子, 佐藤 幸子, 佐々木 ゆり子, 佐藤 敦子
    セッションID: 2D09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【研究目的】
    死後の処置に対する看護師の意識調査から問題点を抽出し、逝去時の対応のあり方を知る。
    【研究方法】
    期間:2004年4月から8月対象:10階ゆり病棟看護師で調査に協力の得られた人26名方法:質問紙調査留め置き法
    1) 逝去時の処置に対する看護師の意識調査
    2) 逝去時の対応マニュアルの見直し、作成
    3) 逝去された患者様8名に関わった看護師16名に聞き取り調査
    【結果】
    死後の処置を経験した看護師は26名中、25名であった。家族と一緒に処置を行なった人は17名でお互いに満足感や充実感が得られたと答えている。しかし、声かけをした看護師は10名と少なく、タイミングや家族の事情により迷いがあり、逝去時の対応に疑問やばらつきがあった。そこで、病棟独自のマニュアルを作成し、学習会を実施した結果、状況に応じた声かけが出来るようになり、今まで以上に家族の心情を思いアドバイスしながら家族参加での処置が行なえた。
    【考察】
    逝去時の対応のあり方に迷いや疑問を感じている看護師が多かった。病棟独自のマニュアルを作成、学習会後は家族背景や状況を考慮したうえで、統一した関わりが出来るようになった。今後は、言葉かけやタッチングなど少しでも家族に参加できるように配慮し、死後の処置をグリーフワークの一環として受け止め、家族の心情を理解しながら個々の関わりを大切にしていきたい。
    【結論】
    1. 逝去時、家族参加の声かけのタイミングに悩んでいた看護師が多かった。2. 意識調査を基に、病棟独自にマニュアルを作成した。3. マニュアルを活用することで、家族の意向に沿った逝去時の対応ができた。
  • 余平 昭子, 槙本 景子, 秋広 直子
    セッションID: 2D10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉一般急性期病棟で終末期を迎える患者の家族は、こと地域の基幹病院においては、様々なニードを抱えながらそれを表出されず、医療者が気づかないでいる現状があると推測した。そこで終末期の患者の家族のニードと、その表出を阻む因子を知り、今後の関わりに役立てたいと考えた。
    〈目的〉この研究は、遺族を対象とした半構成的面接法により、地域の基幹病院の一般急性期病棟で終末期を迎える患者の家族のニードと、その表出を阻む因子の探索を目的とする。
    〈方法〉平成14年-16年に地域の基幹病院(340床)の一般急性期病棟(58床)で終末期を迎えた患者の遺族を対象に調査協力依頼を説明後、書面にて同意を得た。面接は半構成的に行い、「家族が入院中困ったこと、してほしかったことは何か」と「そのことを医療者に伝えられなかったのはなぜか」について訊ねた。
    〈結果〉 10家族に調査協力を依頼したところ、同意が得られたのは4家族であった。面接内容の逐語録から、ニードとして抽出されたデータは合計47個であり、そのうち15個が『患者の安楽を保証してほしい』、9個が『感情を表出したい』というカテゴリーに分類された。家族がニードを表出できない因子は「患者は人質という観念」「不利益を被る恐れ」「地域性による気兼ね」といった家族側の因子と、「機会が見つけられない」「意見を聴きいれる医療者の姿勢が感じられない」といった医療者側の因子に分類された。
    〈考察〉1.家族のニード;最も多く聴かれた言葉が『患者の安楽を保証してほしい』であることから、医療者は「大切な家族の一員である患者を、誠意を尽くして看てほしい」という家族の思いを知り、慎重に患者にかかわる必要がある。
     また『感情を表出したい』の言葉も多く聴かれ、医療者に意見や不満を伝えられずにいる家族の現状が明らかになった。よって医療者には、家族がニードを表出できるようなかかわりが求められる。2.家族のニードの表出を阻む因子; 「意見を聴きいれる医療者の姿勢が感じられない」「機会が見つけられない」という医療者側の因子を改善することで、家族側の因子を削減できると考える。ここで医療者の「コミュニケーションの機会づくり」と「聴きいれる態度」の必要性が示唆された。
    <結論>1. 面接調査で聴かれた主な家族のニードは『患者の安楽を保証してほしい』と『感情を表出したい』であった。
    2. 地域性の強い一般急性期病棟において,終末期を過ごす患者の家族がニードを表出できない因子は「患者は人質という観念」「不利益を被る恐れ」「地域性による気兼ね」といった家族側の因子と、「機会が見つけられない」「意見を聴きいれる医療者の姿勢が感じられない」といった医療者側の因子に分類された。
    3. ニードの表出を促す家族ケアのために医療者の「コミュニケーションの機会づくり」と「聴きいれる態度」の必要性が示唆された。
  • -癌のリハビリテーションにもとづくtotal pain relief approach-
    島上 英里, 田中 一彦, 青木 佑介, 米田 愛, 太田 喜久夫
    セッションID: 2D11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】平成16年12月、当院は地域がん拠点病院の指定を三重県から受けた。それに先立ち当院では平成16年4月より緩和ケアチームが設立され、リハスタッフとしてはPT1名、OT1名が参加している。癌患者は病状の進行による体力消耗、手術・化学療法などの治療による安静臥床に基づく廃用症候群など多岐に渡る要因のためADLの低下を余儀なくされるが、作業療法では種々の治療・訓練法を選択し、病状の進行を予測しながらTotal pain の緩和にむけたADL向上アプローチを実施してきた。その内容は、Dietzによる癌のリハビリテーションステージに基づくものである。今回は、作業療法の緩和ケアへの関わりをtotal pain relief approachとして症例を通して報告する。
    【緩和ケアチームの活動内容】主治医等からの依頼にもとづいて緩和ケア回診(評価、対策など)が実施され、緩和ケアチームとしての助言や指導が実施される。緩和ケアチームの構成メンバーは、麻酔科医2名、外科医1名、内科医1名、リハ医1名、精神科医1名、看護師10名、OT1名、PT1名、薬剤師3名、MSW1名、臨床心理士1名、管理栄養士1名の合計24名からなる。
    【末期癌患者に対するリハアプローチ】リハセンターで対応した末期癌患者数の推移は、2002年度17名、2003年度20名に対し、2004年度は29名と増加した。緩和ケアチームの発足とともに末期癌患者へのリハアプローチが院内で認知された結果と推測している。また3年間のリハ実施末期癌患者(N=66)の転帰は、死亡27名(40.9%)、自宅退院25名(37.9%)、地域病院転院10名(15.2%)、ホスピス4名(6.1%)であった。全例OTアプローチが実施された。このうち、緩和ケアチームとして対応した例は2004年度で9ケースである。以下にtotal pain relief approach としての事例を紹介する。
    【症例】71歳、男性。疾患名:左腎臓癌、左尿管癌、脊椎転移
    機能障害:不全対麻痺(Th10)Frankel Type C膀胱直腸障害、腰痛、両下肢浮腫。ADL障害:ベッド上臥床状態で、食事、整容はギャッジアップ座位で自立。排泄(導尿・オムツ)、更衣、入浴は全介助を要した。心理的問題:病名告知されておらず、リハにたいしては腰痛や対麻痺の改善にて歩行再獲得を期待していた。
    【方針決定】身体的疼痛に対しては、通常時はデュロテップパッチ7.5mg(オピオイド)を使用し、突発痛に対してはレスキューでコントロール可能であった。Total pain reliefに対する緩和ケアチームでの方針は以下のとおりである。
    #1 座位時間の延長を行ない病棟内生活を車 椅子レベルで広げる。
    #2 環境調整、リフター利用方法などの介助方 法の指導を進め、外泊を検討する。
    #3 QOLの確保:趣味のパソコン操作の確立。
    #4 リハ併設型ホスピスへの転院調整。
    【考察】今回のケースは身体機能の悪化によりパソコン作業が困難となっていったが、車椅子座位からベッド上座位でのパソコン作業を安定した姿勢でできるpositioningなどの工夫に加え、作業療法士がパソコン操作学習での生徒としての立場を取ることにより、「パソコンの指導者の継続」という精神的支援につながりtotal pain reliefにつながった。
      当院に緩和ケアチームが設立されたことにより、各職種による役割分担が明確になった。また緩和ケアにたずさわるスタッフの痛みに対する知識や、QOLに対する取り組みの重要性が理解され、院内での緩和ケアとtotal pain reliefとしてのリハアプローチに対する認識が向上した。
  • 鷺 真琴, 永井 幹子
    セッションID: 2D12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     悪性腫瘍の臭気コントロールにおいて、現在までにいくつかの科学的・物理的方法で消臭効果が得られていることが分かっている。しかし頭頚部・膀胱の癌は再発・再燃を繰り返し、皮膚表面に露出するケースが少なくない。今回2つの事例で一時的に消臭効果はみられても、自壊しはじめた腫瘍と強くなる臭いに対して、薬剤やケアを試みた事例を紹介する。
    【目的】腫瘍臭における臭気コントロール
    【患者紹介】
    <事例1>
    患者 膀胱腫瘍
       膀胱腫瘍浸潤に伴う膣・直腸瘻
    経過 腹部から腰部にかけての疼痛があったため、MSコンチン内服にて疼痛コントロールを行っていた。陰部(大陰唇)腫瘍から膿様滲出液と出血があった。膿様滲出液は便や帯下と混入することにより悪臭を伴った。
    <事例2>
    患者 左上顎腫瘍
    経過 平成12年より左上顎癌を発症し、左上顎洞開洞術・動注・放射線療法施行し、外来にてフォローしていた。しかし平成16年腫瘍への感染あり、左眼下部より膿汁流出、涙丘部より腫瘍が突出・増大し悪臭を伴った。
    看護問題
    事例1 腫瘍と排液の混入に伴う悪臭
    事例2 腫瘍増大・腐敗に伴う悪臭
    【看護の実際】
    病室に消臭剤設置
    腫瘍部にゲンタシン軟膏塗布
    事例1:対処療法
        出血時硝酸銀焼灼
        陰部洗浄・オムツ交換
    事例2:薬剤使用による対応とケア
    (1)ダラシンTゲル
    (2)フラジール軟膏+マクロゴール
    【実際と効果】
     事例1では硝酸銀焼灼による止血によって血液の酸化臭が一時的に消失した。しかし、膿様滲出液や便・帯下が常時排泄されていたため、悪臭が消えることはなかった。
     事例2においては(1)剤ではゲル状であったため、腫瘍部には不適切であった。(2)剤では臭気コントロールが行なえ一時退院が出来たが、再入院時には腫瘍の腐敗が進み消臭効果が減退していた。
    【考察】
     腫瘍の増大に伴う腫瘍臭に対し対処的に関わったが、結果として長期的な効果が得られなかった。臭気についての分析が不十分であり、また患者自身も臭気に対して無頓着であったこと、腫瘍により臭覚が麻痺していたことで、快・不快が不明であった。今回は家族と看護師の臭覚で消臭効果を判断したが、臭気の程度については尺度を用いて評価すべきだった。
    【おわりに】
     患者の最期を不快な感情を持たずに迎えるようにするには、臭気の分析と管理、適切な看護介入について見当が必要である。
  • -当院での経験より-
    三島 信彦, 脇坂 達郎, 小田切 拓也, 保井 光仁
    セッションID: 2E01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 新医師臨床研修制度では初期臨床研修2年間が義務化された。この制度では、頻度の高い疾患、初期診療、救急診療の経験が求められ、研修医教育での総合内科の役割が注目されている。総合内科に臓器別内科診療の弱点をカバーさせ、救急医療、特に一次、二次救急に対応させたいというニーズが病院側にある。総合内科は各医療機関でその機能がさまざまであるが、当院では家庭医診療ではなく、病院内科医として、臓器別内科と相補って外来・入院診療を行なうとともに、救急内科診療を一部担当するように位置付けられている。
    <目的と方法> 当院総合内科の研修医教育機能について検証するため、昨年度総合内科立ち上げ1年間の活動実績から、研修医教育活動についてまとめた。
    <結果> 当院の総合内科は部長(指導医)1名、卒後4年次、3年次各1名の医員(中間指導医)、合計3名で2004年度立ち上がった。研修医は1年次内科研修24週間のうち、6週間の総合内科ローテーションが必須で、昨年度14名の研修医が各期間2名ずつ配属された。研修医と医員とで2チームを作り、それぞれのチームを部長が監督することで、研修医・中間指導医・指導医という屋根瓦式診療指導体制を確立した。オーダー出し、コール順もこの体制をとり、見学型研修(指導医の診療後追い)ではなく参加型研修とした。一方、休日はスタッフのみが交代で全患者回診・オンコール当番制をとり、研修医の休日を解放し、受け持ち患者の回診は自主性に任せた。
     この体制で、以下の特徴を持った研修をさせた。つまり、1)技能習得重点ではなく、考え方の習得主体である研修であること、2)数多くこなす診療ではなく、数少なくても精密度の高い診療であること、3)既往症(過去に発症し過去に治癒した疾病)と既存症(過去に発症し現在も治癒していない疾病)を峻別し、患者のすべての疾病(既存症と現症)を把握し、患者の全疾病を構造的に理解する研修であること、すなわち臓器別に偏らない全内科研修であること、である。
     研修医主導型勉強会には、経験救急症例発表会(Morning Report)、受持ち症例から選んだテーマを研修医間で共有する研修医小講義(Super-Thursday)がある。内科ではさらに外部講師による教育回診(研修医症例の精緻な呈示に基づいた症例検討会)が週3回あり、これらに総合内科が深く関与している。
     当院では見学実習学生が多くなりつつある。学生を研修医のもとに配属し、クリニカル・クラークシップの形で実習させる。実習中に学生を評価し、集積した学生評価表を次年度の研修医募集時の資料としている。
     研修医は毎朝7時に担当患者を回診し、7時30分からMorning Reportに出席し、8時からの病棟朝カンファレンスで当日の行動予定を確認する。週3回14時から教育回診に参加する。夕方は病院CPC、総合内科新入院患者カンファレンス、Super-Thursdayなどに参加し、21時までには一日の研修を終了する。
    <考察> 屋根瓦式診療指導体制をとることができれば、総合内科は研修医教育に適切な研修の場を提供できるが、総合内科での担当患者は1年次研修医には難易度が高いという課題も指摘された。
  • 長 純一
    セッションID: 2E02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
     佐久総合病院地域診療所科は、1994年地域医療部創設時に、地域ケア科・研修医教育科・国際保健医療科とともに地域医療部につくられた。その当時の設立の紹介文では、「佐久病院本院の専門的医療は非常に大事である。しかし、第一線の地域診療所の仕事も極めて大事であり、佐久病院の原点に照らしても、診療所の重要性は増している。(中略)外に行き専門的医療を勉強してくることだけでなく、地域診療所へ出て行くことが佐久病院の医師として大事な研修であり、使命ではないか」となっている。地域診療所科創設以前より、へき地中核病院でもある佐久病院より近隣の5カ村(浅科村ー合併で4月より佐久市・川上村・北相木村・南相木村・南牧村)の国保診療所には医師が派遣されていたが、近年は、診療所医師の常勤・常駐化がすすんできた。5つの診療所を取り巻く地域性や環境もそれぞれ相当に異なるため、地域診療所科として簡単にまとめることは容易ではないが、大きく分けると、佐久病院に近く比較的地方都市的な要素の強い浅科診療所と、南佐久南部の中山間地域・純農村地域の他の4診療所となる。4診療所は地理的に佐久病院の小海分院との結びつきが強くなる。基本的に各診療所長は週1回佐久病院に勤務するため、特徴のある病診連携がとられていると考えられる。これらの診療所の紹介を行なうとともに病診連携の観点で、診療所医師の活動を報告する。
     診療所医師の派遣は古くより行なわれてきていた一方、地域診療所科としてのまとまった活動は最近までほとんどなかったが、今春よりはじまった新臨床研修制度下での地域医療・保健研修のあり方の議論やプログラム作成に関与することとなった。地域医療・保健研修においては、今までも特に南佐久南部の中山間地域に存在する4つの国保診療所と小海分院とにおいて、全国に先駆けて20年以上前より研修医教育が行なわれてきていたが、今後更なる充実を図る予定である。
     また今春より、今までは各診療所ごとに受け入れていた、佐久病院へ実習に来る医学生を週1日診療所で受け入れる活動を、地域診療所科を通して診療所研修希望者を割り振るという形にした。また診療所実習の志望動機を事前に文章で提出してもらい、学生の希望にできるだけあうと思われる診療所に割り振ることとした。各診療所と直接連絡を取り合い受け入れられた学生数人を除いて、このような形で診療所で受け入れた学生は、今春だけで24人にのぼった。佐久病院の実習終了後の感想文を確認すると、ほぼすべての実習生が、診療所実習について肯定的な経験をしたと感想に述べており、診療所で受け入れることは実習学生にとって意義があることと考えられた。
     各診療所とも、佐久病院付属ではなく国保診療所であり医師側の意向だけ受け入れをすすめていくことが困難であることや、かなり多忙な診療所が多いことなどから、受け入れ側において、今後検討していく課題も浮かび上がってきたが、地域診療所、中でも農村僻地で働く医師が不足する現在において、診療所の特性を感じてもらうという点だけでなく、将来の仲間を作るという観点からも地域診療所科としては積極的に受け入れを進めていきたいと考えている。
  • 要望を取り入れた研修後の認識変化
    池田 しづ子, 田尻 勝, 長崎 寿夫, 山田 きよ美, 廣江 雅洋, 町田 千晴
    セッションID: 2E03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     喀痰コントロールは薬物療法と肺理学療法を併用して行なわれる。当院の喀痰コントロールはケア分野で薬剤を使用したネブライザーが主に行なわれている。しかしその機具器材や薬剤の取り扱い次第では環境由来の細菌汚染が危惧される。また、吸入方法が不適切な場合は薬剤効果を期待できない。そこで2003年度から、虚脱した肺胞へのエアー入り改善と呼気流速を得るための効果的技術として体位排痰法やスクイージングを中心に院内研修講座をもうけた。2004年度は受講者の要望にこたえるカリキュラムで実践研修を企画したいと看護師全員にアンケート調査を行った。その結果を反映させて研修会を行った。研修後受講者の認識度に変化がみられたので報告する。
    【研究方法】
    ■期間:1、講座への要望調査:2004年11月8日から20日
         2、講座:2004年12月3日から24日/4回
    ■対象:1、当院看護師420名:要望質問紙調査(回収率51%、有効回答率98%)
         2、受講者44名:教育前・後の認識度スケール調査(回収率前82%、後68%、回答率前・後共に100%)
    ■講座内容:1)リラクゼーション2)呼吸訓練3)胸郭稼動域運動4)呼吸筋トレーニング5)排痰法6)運動療法7)ADL指導■評価:講座内容の各項目毎にスケール調査法で問い、実測値を認識度の得点として算出。教育前と教育後の平均値の差をt検定する。
    【結果】
     呼吸リハビリテーション講座への要望調査では体位排痰法、呼吸訓練等が代表的意見であった。回答者の声から臨床の実態と具体的援助とケアの質向上の3点から具体的に意見を示す。【臨床の実態】・離床すすまない・長期に呼吸器使している・呼吸器疾患患者が多い【具体的援助】・手術前後の排痰ケア充実・自己喀出への援助・リラクゼーションの実践・気道クリーニングの実践・高齢者の呼吸筋アップ【ケアの質向上】・ケアの実践、評価できる・興味あり再学修したい・体位排痰法を熟練したい。以上、臨床現場のケア頻度や患者層からも要望内容は反映している。またカリキュラムにそった講座内容に対する各項目の個人得点や教育前後の呼吸ケアに対する知識、技術の認識度は全ての項目で拡大した。また教育前と教育後との得点に差があるかt検定したところ1%水準で教育後に有意な差がみられた(t(46)=5,P<.01)。
    【考察】
    ■受講者の要望に焦点を当てたカリキュラムは全ての項目において個人得点が拡大した。教育後個人のレベル差はあるが、知識が深まり技術は確かなものになったと認識した結果と考える。
    ■受講者の要望に応えるカリキュラムは評価できたと考える。
    【まとめ】
    ■受講者は喀痰コントロールの知識が深まった。
    ■受講者は体位排痰法等の技術が確かなものとなった。
    ■受講者の要望に答えるカリキュラムは認識度も向上した。
    【今後の課題】
    ■呼吸ケアの技術を患者の日常生活ケアに活かす。
    ■呼吸ケアの質を向上させる。
    ■呼吸ケアの知識と技術を修得する医療従事者を増やす。
  • -学生に関する集合研修後のスタッフの認識変化-
    加納 千華, 日下部 亜希子
    セッションID: 2E04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    看護学生にとって実習は対象者とかかわる事で看護実践能力が身につき、看護観が形成されて職業意識に目覚め、学習の動機づけになる場である。
    当院でも実習病院として学生を受け入れているが、平成16年度より実習受け入れ校が増え、看護学生10-13人に対して指導者は1-2人で指導にあたっている。学生一人ひとりに限られた実習時間を有効にできるよう人的環境の強化の必要性を感じた。そこで学生の心境・希望を把握した上でスタッフの協力体制の現状について集合研修を行なった。その後のスタッフの意識変化について報告する。
    結果・考察 今回、病棟スタッフ3.4年目を対象としたのは、プリセプター経験者が多いことである。臨床では新人スタッフに看護に必要な知識や技術を教え、共に成長するという過程は実習指導者と学生との関係と共通するからである。新人看護師を学生と置き換えるとイメージがつきやすいということ、また、教えることの難しさや、やりがい感につながり院内臨地実習指導養成受講へのきっかけとなり期待される次代の指導者になるのではないかと考えた。
    一般的には臨床でスタッフの多くは学生に対する全責任を指導者や教員が負えばいいという“他人任せ”の傾向があるが、事前のアンケート結果から看護学生は教員や指導者だけで成り立つのではなく病院スタッフ全体が関わっていかなくてはいけないと考えているものが8割と高かった。しかし、学生とのあいさつや受け持ち患者さまに対する情報交換などにおけるコミュニケーションがはかれていないスタッフが7割を占めていることがわかる。また学生が困っていると思われる場面でも声をかける事ができないものが6割を占めている。学生指導は教員や指導者だけで成り立つのではなくスタッフも関与していかなくてはいけないと感じながらも挨拶ができないなどのコミュニケーションの障害が生じている。学生のアンケートからも「挨拶をしてもらえない」「無視をされる」「忙しそうで声がかけることができない」という結果であった。スタッフの学生指導に対する思いと行動に矛盾が生じていることが明らかである。
    理由として(1)多忙な業務で学生に余裕がない(2)指導者・教員との目に見えない境界線がひかれてどこまで関わってよいのかがわからない(3)指導に自信がない(4)学生に関心がない(5)学生の態度が悪いということであった。このようなコミュニケーション障害が続くと学生は実習の目的を果たすことができない。実践力のある看護職を育てるために看護教育学会でも「教育と臨床の有機連携」の必要性が唱えられている。このことから(2)(3)(4)に対し指導者養成研修を受講していないスタッフに対して学生の心境や対人的特性の説明を行う集合研修を行なった。研修内容は短時間でいかに興味を引き、自分の行動の振り返りができるよう身近な体験を動画を入れビデオを作成した。その結果「学生に少し関心を持つ事ができた」「自分を振り返るきっかけとなり反省した」と答えたスタッフが2割から8割へとアップした。動画については「自分たちってあんな風なの?怖い!」など行動を見直すことができる動機づけとなったと考える。今回のこの研修をきっかけに臨床指導者とスタッフが連携を取り学生がのびのびと実習できる環境を整えることができることを期待する。
    おわりに臨床実習における対人関係は学生にとって計り知れない緊張を感じている。この過度な緊張が自己の能力を表出することの妨げとなってはいけない。学生を取り巻く環境や人間関係が良好に保たれ、良き後継者を育成していくためにも臨地実習指導者の役割は大きいと感じた。
  • 「新人の夜勤導入が遅れている原因」から見えてきた課題への取り組み
    片桐 泰子, 松本 早苗, 大山 祐利佳, 松永 有希子, 橋本 明日香, 中王子 美保, 桑田 清美
    セッションID: 2E05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    I はじめに
     新人教育にプリセプター制度が有効的な方法であるとされ、新人教育プログラムとして数年前よりプリセプター制度を導入して進めてきたが、新人の夜勤導入が年々遅れていく傾向にあり、プリセプターが「自分の指導方法に問題があるのではないか・・・」と自信をなくす事があった。そのため「新人の夜勤導入が遅れている原因」から対策を検討、新人教育を見直し、プリセプターの支援体制を強化したことで、夜勤を目標通りの時期に導入出来たのでここに報告する。
    II 研究方法
     研究期間:平成15年1月から平成16年3月
    研究方法:1.「なぜ新人の夜勤導入が遅れてきているのか?」という原因をKJ法にて究明する。
    2.特性要因図を作成し分析する。
    3.対策を検討し、新人教育を見直す。
    III 結果および対策
     KJ法にて原因を究明した結果、大ラベルで「スタッフ」・「新人」・「環境」・「プリセプター制度」の4つの要因が関連していて、中ラベルで8つの原因が考えられた。
    (1)新人教育に対するスタッフの認識不足(プリセプターの負担が大きい)
    (2)新人教育に携わるスタッフの指導能力不足(指導に対して教育する側の姿勢)
    (3)現代の若者気質の理解不足
    (4)新人自身の問題
    (5)学校教育システム(看護技術、看護実践の経験不足)
    (6)勤務体制(2人夜勤)
    (7)指導ツールの整理不足
    (8)新人到達目標が不明瞭
    これら1つずつの対策を検討し、改善方法を考え新人教育を見直し実施した結果、年間目標どおりの時期に夜勤が導入できた。
    IV 考察
     プリセプター制度を導入し新人教育を進めてきていたが、スタッフにプリセプター制度についてアンケート調査した結果、プリセプターの役割については「新人を支援するお姉さん的役割」と「新人教育における指導者的役割」という捉え方をしていたが、「プリセプターとしての役割・機能が発揮できるように管理者やメンバーがサポートするシステム」という点においては曖昧で、各自解釈が違っていた。
    そのため、プリセプターシップの定義を明確にし「新人教育体制」「新人指導目標・指導方針・指導計画書」を明文化しプリセプター制度はOJTであり『新人はみんなで育てていく』という点を強く、スタッフに提示・協力を依頼した。
    「新人の夜勤導入が遅れていた原因」は
    *プリセプターシップにおける各自の役割、機能が曖昧。
    *プリセプターシップにおけるサポート体制が弱い。
    *職場の協力が欠けて、プリセプターの負担が大きい。
    *新人を理解しようとする教育する側の姿勢であったといえる。
    「現代の若者気質の理解」「指導の際の留意点」について学習し、定期的に評価することで、新人の能力に応じた仕事(課題)を考え、目標値(時間配分)を提示し、できていない部分を意識的にフォローするという体制が生まれた。
    指導するということは、『期待する成果が出せるよう新人を変化させること』で、新人教育において大きな役割、影響を与えるのは環境であり、指導する私たちであるということをスタッフが認識し、新人指導に取り組むことができ、病棟全体で新人を育てていこうという環境、協力体制ができ、新人教育の基盤ができた。
  • 佐々木 喜一郎, 浅沼 信治, 臼田 誠, 廣澤 三和子, 土屋 薫, 前島 文夫, 夏川 周介, 松島 松翠
    セッションID: 2E06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    [はじめに] 佐久病院看護専門学校では、看護学生の実習の一つとして、「農場実習」を組み込んでいる。昭和54年に始まったこの実習も今年で25年を迎えた。今回は、その活動を報告する。
    [実習の目的] 実習の目的の一つは、農作業体験によって、その患者さんの背景を知ることである。佐久病院看護専門学校の学生は、卒業すると長野県内にある11の厚生連病院に就職する。厚生連病院のほとんどが農村に存在し、農業に関わる患者さんも少なくない。もう一つは、感性豊かな時期に、「食の大切さ」を感じとり、医療に関わる看護師が「地産地消」の推進役になってほしいという願いである。いま日本は輸入農産物が氾濫し、食品添加物・ポストハーベスト農薬によって汚染され、そのうえ農作物の旬が失われ、健康をつくる上でも大きな障害になっていると考えるからである。
    [実習の受け入れ] 佐久病院看護専門学校では260人の学生が学んでいる。農場実習は4-12月の間に行なわれ、5-6人ずつグループになり、学校から約1.5km離れた農村保健研修センター隣の実験農場(1.5ha)で行なっている。受け入れ担当は実験農場長(佐々木)である。
    [実験農場について] 実験農場は臼田有機農業研究協議会で主に管理をしている。行政、農協、佐久病院の三者で毎年80万円ずつ拠出し、臼田という土地にあった農作物の研究や、「家庭の生ごみは大地の資源」と位置づけている臼田堆肥製造センターからの生ごみ堆肥の普及、農薬や化学肥料の環境・人体影響調査などを行なっている。もちろん、実験農場は25年間、無農薬、無化学肥料栽培である。
    [実習の内容] 農場実習の看護学生は、赤いつなぎを着て、8時30分、自転車で農場に集合。有機農業をなぜ行なうかなど、実習についての簡単なオリエンテーションを30分ほど行う。その後約1時間農作業を行い、お茶を飲みながら、「臼田有機農業研究協議会」「輸入食品とバーコード」「農薬・化学肥料による人体影響」「農業機械災害」などについて説明する。昼食後も農作業。時期にもよるが農場で収穫された農作物をいただくおいしい実習でもある。
    [実習の成果] 看護学校に在学するたった1日の実習でもあり、その成果を評価することは難しいが、学生から提出される実習レポートには感動的なものが多い。毎年発行される「実践的有機農業に関する調査研究」に掲載されているが、なかには「農家にお嫁にいきたい」という学生もいる。今年の看護学校の卒業式では卒業生を代表した答辞のなかで「BSEや鳥インフルエンザなどで食の安全が叫ばれている昨今、本校の特徴である農場実習で食と健康の結びつきを学べたことは印象的であり、貴重な体験であった」といううれしい言葉もあった。最近は、東京の大学生(武蔵大学経済学部、國學院大學など)の農場実習も受け入れている。
  • 水谷 弘二, 矢口 豊久, 辻 英晶, 前川 恭子, 富田 泰宏, 内田 純子, 村田 昌史, 大口 慎悟, 高木 健治, 伊藤 有沙
    セッションID: 2E07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】当院では1999年10月より医療の質の向上, 在院日数の短縮, ケアの標準化, 医療資源の効率化等の必要性からクリニカルパスを導入している. 現在40余のパスが稼動している. 稼動開始後の効果について一部のパスを抜粋し, 検討したので報告する.
    【対象と方法】対象は次の4種類のパスについて検討した. 1. 成人片側鼠径ヘルニア, 2. 腹腔鏡下胆嚢摘出術, 3. 白内障3日コース, 4. 大腸ポリペクトミー2日コースである. これらの疾患について, クリニカルパス導入前後の在院日数・入院費用(保険点数ベース)の変化を検討した. 各群とも乱数表を用いて無作為に15例を抽出し,そのうち検証が可能であった各群10から15例の症例について検討した. 群間の平均値の差の検定はMann-WhitneyのU検定を用いた.
    【結果】成人片側鼠径ヘルニア…導入前平均在院日数 7.9日, 導入後平均在院日数 4.8日, (p=0.0019). 導入前平均保険点数 22929, 導入後平均保険点数 17670, (p=0.0025). ともに有意な差を認めた. (導入前n=10, 導入後n=11).
    腹腔鏡下胆嚢摘出術…導入前平均在院日数 16.2日, 導入後平均在院日数 8.9日, (p=0.0003). 導入前平均保険点数 70836, 導入後平均保険点数 56489, (p=0.0084). ともに有意な差を認めた. (導入前n=10, 導入後n=12).
    白内障3日コース…導入前平均保険点数 26353, 導入後平均保険点数 21666, (p<0.0001). ともに有意な差を認めた. (導入前n=15, 導入後n=14).
    大腸ポリペクトミー2日コース…導入前平均保険点数 11912, 導入後平均保険点数 10471, (p<0.0001). ともに有意な差を認めた. (導入前n=14, 導入後n=14).
    【考察】クリニカルパスとは, 特定の疾患や手術・検査ごとに治療のルーチンワークをチャート様式にまとめ, 医師, 看護師, コ・メディカル, 患者が治療経過の情報を共有し, 必要なケアを適時に患者に提供するためのツールである. 医療の質と効率を高めるための重要な管理技法である. その歴史は, 1950年代に産業界のプロジェクト管理法に由来するCritical paths(臨界経路, 限界工程)製造工業の専門用語として生まれ, その目的は「作業工程の効率, 標準化」であった. この概念を1985年にKaren Zander により医療界に導入したことから始まった. 包括医療(DRG/PPS)が1983年に米国で導入されたことが発端となっている. 我が国では包括医療はまだ完全には実施されていないが, 厚生労働省によって決められる保険点数の設定は年々厳しさを増しており, 各医療機関にとって医療の効率化が是々非々である. このような環境の中でクリニカルパスは全国に普及しつつあるが, その効果を数値で示した報告は少ない. 今回我々は, 任意抽出した少数例の, レトロスペクティブな検討ではあるが, クリニカルパス導入は, 診療の効率化を実現し, 在院日数の減少と1人あたりの医療費の抑制に貢献していることを示した.
    【まとめ】クリニカルパス導入により上記4疾患では, 在院日数は有意に縮小し, 1人あたりの医療費は有意に抑制されることが証明された.
  • 江連 とし子, 塚本 千恵子, 大塚 美樹, 玄 東吉
    セッションID: 2E08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    クリニカルパス(以下CPと略す)は入院治療や検査等の標準計画表であり、標準CPからの逸脱例、バリアンスの発生は免れない。そのバリアンス要因を収集して要因を分析して、ケア改善に繋げていくことがCPを運用する過程で重要になってくる。当院では2004年3月から、バリアンスマネジャーを4名選出し、院内でのバリアンスデータの統計化を実施している。しかし、そのバリアンスデータの解析の結果、バリアンスコード表に分類されない「その他」や「不明」が34%を占めているという問題点が先行研究(2005年2月)で明確となった。そこでCP委員会で討議した結果、(1)バリアンスコード表の分類法の表現内容が理解しにくい(2)その他の内容を記述した方がデータと統計化する上で詳細に理解できる。以上の2項目を念頭に今年、3月にCP委員会でバリアンスコード表を改定し、その改定後のコード表での統計化を開始した。そのバリアンスコード表の内容を検証する。
    【研究方法】
    1)2004年3月から05年3月の期間に全科で運用されたCPのバリアンスデータの統計とバリアンスデータの内訳と分析。
    2)バリアンスコード表の内容を検討し、コード表の改定を検証する。
    【結果】
    バリアンスの発生要因を3グループ(A群1-20%、B群21-40%、C群41-100%)の群別にバリアンスデータを分析した結果、バリアンスコードの内訳は全群とも有意に(α=0.025)にA_-_1(患者の身体状況)のバリアンスの発生が多く見られた。
    また、全群にバリアンスコード表の「その他」やコード表に属さない「不明」が34%と高値を示した。そこで、「その他」「不明」のコード表に分類されないバリアンスの内容を記述することにした。また、A_-_2(患者の希望)の項目内容に(1)医療行為(2)退院日(3)リハビリの進行(4)セカンドピニオンの希望が追加された。A_-_3(患者の理解力)に(1)不穏・痴呆等(2)高齢者の知識不足が追加された。C_-_3(医療側のミス)では指示、予約忘れ、退院処方の遅れ、コメディカル間の連携ミスが追加された。
    【考察】
    当院のCP委員会の課題にもなっていたバリアンスデータの管理はバリアンスマネジャー選出により統計化され、バリアンスの傾向が明確となった。しかし、そのデータ分析から新たな問題点として、バリアンスコード表の内容を検証する必要性が生じた。現段階ではバリアンスコード表改定後の統計化は途中ではあるが、今後は、改定後のコード表を基にさらに、バリアンス要因が分析され、そのデータがケア改善に繋がっていくと考えられる。
    また、A_-_2(患者希望)の追加項目が拡充されたことにより患者の治療への参画とニーズが充実すると思われる。その他の項目ではC_-_3(医療側のミス)を詳細にしたことは院内における医療事故のリスクマネジメントにも貢献できると考える。さらに、バリアンスコード表を数値でコード化し、オーダリングにタイアップさせて、CPのバリアンスデータをDPC導入に向けての足がかりにしていきたい。
    【まとめ】
    (1) 当院におけるバリアンスデータの傾向と問題点が明確となった。
    (2) バリアンスコード表の見直しと改定に繋がった。
  • 石原 あゆ美, 伊藤 明美, 今井 麻美, 木下 梨絵, 下津 千恵, 山口 加奈
    セッションID: 2E09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに
    整形外科における人工関節術には、各部位や術式等によりクリニカルパス(以後パスとする)が異なっている。当院整形外科病棟においても、下肢の人工関節術は部位・術式により6種類のパスが存在していた。しかし、これらのパスは医師指示により、荷重の段階やその開始時期を変更し、使用することが多かった。それにより部位・術式を問わず、ある一定の期間で荷重が開始され、離床が似ていることに気づき、パスを統一できないかと考えた。そこで、医師・理学療法士・看護師で検討し、離床を統一した1つのパスを作成した。導入後半年が経過し、統一したパスのバリアンスについて検討したのでここに報告する。
    I.研究目的
    統一したパス使用によるバリアンスを検討する。BRII.研究方法
    1.研究対象:2004年8月から2005年1月の間に下肢の人工関節術を受けた患者28名
    2.研究期間:2004年8月から2005年1月
    3.研究方法:入院カルテより、離床状況・手術後から退院までの日数について調査し、バリアンスを検討する。
    4.倫理的な配慮:患者の氏名は公表しない。
    III.結果
    患者の平均年齢:THA71.3歳・FHA71.3歳・TKA/UKA70.1歳
    荷重開始までの平均日数:THA7.0日・FHA6.9日・TKA/UKA7.0日
    全荷重開始までの平均日数:THA18.6日・FHA14.6日・TKA/UKA19.8日
    術後から退院めでの日数:THA34.3日・FHA30.3日・TKA/UKA39.3日
    IV.考察
    今回パスを使用した患者の年齢は平均73.3歳( 58_から_88歳)と高齢であった。また認知障害の有無や術後合併症(貧血・血腫等)の発生などで、パス通り荷重が進まないと考えていた。しかし、ほとんど全ての患者はパス通り術後7日目からの荷重が可能であった。また、全荷重歩行開始は術後21日目からと設定しており、パス通り開始できた患者は71.4%であった。これらのことから、荷重についてはこのパスで進めることは可能であったと考える。
    退院は術後28日目と設定しているが、患者の96.5%がパス通りいかず、平均34.3日で退院となった。その理由に退院後の生活に対する不安があり、シルバーカー歩行・杖歩行が可能でもまだリハビリしていきたいという希望が多かった。また患者は高齢者が多く、退院に向け自宅や施設との調整が必要であり、パス通りの退院は困難なのが現状である。よって、早期より患者に合った退院の目標を設定し、患者・家族に退院指導を充分に行なうことで、生活不安の軽減につながり、入院期間の短縮は可能と考える。
    阿部は、「バリアンスに、ある程度柔軟性をもって対応できるようにしていくことが、パスをできる限り有効に使用するための方法でもある」と述べている。よって、今回の結果を参考に、使用前に予測されるバリアンスについて検討し、患者の個別性も重視できるようなパスを見直していく必要があると考えられる。
    おわりに
    整形外科において、下肢の人工関節術は部位・術式別にパスを使用することが一般的であった。しかし、今回統一したパスを使用し、ある程度の統一は可能であることが分かった。今後の課題は多いと思われるが、パスのさらなる改善に努めていきたい。
    引用・参考文献
    阿部俊子他;クリニカルパスQ&A、照林社、2000
  • 江戸 雅孝, 三原 国昭, 藤原 斉
    セッションID: 2E10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    (緒言)当科での入院患者は半数以上が予定手術患者であり、H14年より手術患者を対象にクリニカルパスを作成、使用し診療を行なっている。今回当科におけるクリニカルパスの現状と問題点について検討を行った。
    (対象と方法)クリニカルパスの目的としては、インフォームドコンセントの充実、業務の効率化、在院日数の短縮が主体であるが、チーム医療の推進、医療の質の管理、職員の意識改革なども重要な目的である。当科で使用しているクリニカルパスの対象疾患は主に、鼻・副鼻腔手術、アデノイド切除、扁桃摘出術、喉頭良性疾患手術であり、これらの疾患が全手術症例の6割以上を占めている。今回当科で用いている患者用クリニカルパスと、医療従事者用パスを供覧するとともに、過去3年間のクリニカルパスを用いた症例について、1)対象手術症例数の変化、2)入院手術症例の在院日数の検討、3)バリアンスの発生状況について検討するとともに、現状での問題点と今後の改善点などについても検討した。

    (結果)
    1)対象手術症例数の変化:クリニカルパスを導入したH13年は全手術症例のうちクリニカルパスの使用率は約40%、翌H14年は35%であったが、H15年は65%であった。この期間の疾患の例数、内容には大きな変化はなかった。
    2)入院手術症例の在院日数の検討:鼻副鼻腔疾患とアデノイド・慢性扁桃炎症例の手術症例の在院日数についてクリニカルパス導入前と導入後で比較した。導入前のH11年から13年の鼻副鼻腔疾患の入院日数は平均10.4-11.9日であったが、H14年と15年は9.3日、H16年は7.7日であった。アデノイド・慢性扁桃炎症例では導入前の入院日数は平均8.8-10.5日であったが、導入後は約8日であった。
    3)バリアンスの発生状況:バリアンスの発生状況は対象症例82例中30例で、正のバリアンス(入院日数の短縮)が11例(13%)。負のバリアンスが19例(23%)であった。負のバリアンスの主な内容は、中止した例が1例、対象としたパスは終了したが、一時的に省かれた、あるいは適応しなかった例が18例で患者、家族の都合による理由が13例、病院(システム)の都合による理由が5例であった。

    (考察)当科では手術症例の半数以上を鼻副鼻腔疾患、咽頭疾患が占めており、これらの疾患の手術に対するクリニカルパスはすでに確立されつつあるが、今後は他の手術症例や手術以外の疾患(顔面神経麻痺や突発性難聴、癌の化学療法)のクリニカルパスを作成、検討する予定である。また単一の診療科としてクリニカルパスに取り組むのではなく、他の部門との連携、協力をはかり、チーム医療としてのクリニカルパスが浸透することが理想である。またバリアンスを収集、分析し、より有効に活用できるようパスの改善、作成を今後も続けていくことが重要と考えられる。
  • 牧野 真奈美, 樋口 晶子, 向洞 英子, 山本 裕子, 川上 孝子, 平畑 和子, 岩田 英嗣, 豊島 馨
    セッションID: 2E11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    I.はじめに
     当院における白内障手術の入院期間は片眼5日間としていた。医療の進歩と共に日帰り手術を行なっている施設もあることから、在院日数を片眼3日間に短縮した白内障クリニカルパス(以下パスと略す)を導入した。入院期間の短縮に伴い、眼内炎予防の為に点眼指導が重要である。高齢者が対象であることから、確実な点眼が継続できるように入院時より家族参画を働きかけ点眼指導の強化を図ったことで、3日間のパスは効果的に活用できたので報告する。
    II.研究方法
    1.スタッフ間で点眼手技の統一・3日間入院の患者用手術治療計画表とパスの作成。
    2.患者からの意見聴取
     1)調査期間及び対象:対象者は回答可能な白内障手術患者各30名を無作為に抽出。
      H16年2月-4月までの5日間入院の患者に対し、電話での聞き取り調査。H16年5月-10月までの3日間入院の患者に対し、退院時の聞き取り調査。
     2)方法:対象者に調査趣旨・倫理的配慮について説明、同意を得た方に調査表に基づき口頭で回答を得た。
     3)アンケート内容:入院から手術までの時間配分・点眼指導内容の理解・手術治療計画表の内容について。
    III.結果及び考察
     パスの導入にあたり、術後の眼内炎予防を重視し、スタッフ間で点眼指導技術の再確認と指導方法の統一をした。また、対象が高齢者である事(3日入院平均75.9歳最高89歳)遠隔地で通院の不便さを考慮し入院期間を3日間とした。手術治療計画表は手術決定時に外来で説明。入院時、再度手術治療計画表に基づき術後の安静・点眼・洗面などの重要項目にポイントを置き受持ち看護師が説明した。機能障害や認識面に問題があるようなリスクが高いと評価した患者には入院当日から家族参画の協力を得た。点眼指導について薬剤師は集団指導を行なっている。看護師は、個々の患者の点眼手技を確認しながら理解度・個別性を考慮し指導を行なった。その結果、眼内炎などのバリアンスは発生しなかった。患者調査では、手術治療計画表について90%以上理解できたという回答を得た。この事からスタッフの点眼指導技術の統一や個別性のある点眼指導の重要性を再認識した。
    IV.まとめ
    3日間のパスは、高齢者であっても家族参画が得られることで効果的である。
  • 浅井 千津, 前田 まゆみ, 長谷 佳奈美
    セッションID: 2E12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    I.はじめに
    平成15年より入院中の患者に対してパンフレット・写真を用いた術前訪問を実施しており、患者の不安軽減に有効であった。 今回、私たちは手術室で行なう外来手術患者に対して、手術室看護師の看護介入が必要と考え術前訪問を行なった。その結果、不安軽減を得ることが出来たので報告する。
    II.目的
    術前訪問により不安の軽減ができる。III.研究方法
    1. 期間 平成17年1月_から_4月
    2. 対象 期間内に外科、整形外科の外来手術を受けた患者27名。
    3. 方法
    1)外来受診にて手術日が決定した時、外来看護師より連絡を受け、手術室看護師が外来に行き、患者用クリニカルパス用紙(以後パス用紙とする)と写真を用いて説明を行なう。
    2)手術当日、手術室入り口で術前訪問を行なった看護師が出迎える。
    3)手術終了後、以下の三項目について聞き取りを行なう。
    ・パス用紙・写真を用いた説明。
    ・外来での手術室看護師との面談。
    ・術前訪問後の不安の変化。
    IV.結果・考察
    1 パス用紙・写真を用いた説明
    パス用紙は、「説明を受けて安心した」と27名が答えていた。そのうち16名は「家で何度も読み返し手術室に来てからの流れがわかった」と話された。写真については24名が「見たことによりイメージできた」と答え、あとの3名は当院で手術経験があったため今回は不要と答えている。数間らは「手術の不安に対処するためには、適切な情報が必要になる。なぜなら情報は人に思考を促し知識は問題解決に役立つからである」と述べている。パス用紙・写真を使用した情報提供が、手術中の自分自身に起こることをイメージでき、不安軽減につながったと考えられる。
    2 外来での手術室看護師との面談
    「一度会った看護師がいて安心した」が25名、「会わないよりは良い」が2名となっており、顔を合わせることで安心感につながったと考える。
    3 術前訪問後の不安の変化
    「術前訪問を受けて、不安や緊張が訪問前より軽減された」が25名、2名は「不安だった」と答えている。その不安の内容としては、術後の出血や痛みについてであった。術後予測される事についての説明が必要であった。患者は手術が決定したときから、不安を抱いており、外来手術患者は手術当日まで、医療者と関わることは殆どないのが現状である。正しい情報が得られなければ、不安や恐怖は増強していく可能性もある。パス用紙には、手術前・入室時・手術中・手術終了後の項目に沿って更衣、器械の装着等が記載してあり、自宅で何度も読み返すことで不安・恐怖の軽減に有効であったと考える。また、手術室という初めての環境の中で、最も患者の身近な存在となる看護師と事前に顔を会わせる事は大きい安心感につながる。外来術前訪問は入院患者に行われる術前訪問同様、不安軽減に有効であった。
    V. おわりに
    近年、日帰り手術が注目される中、当院でも外来手術件数が増加傾向にあり、今後更なる改善を加え、より個別的看護が提供出来るよう日々努力して行きたい。   
  • 紹介状導入前後の精検受診率の比較とアンケート調査の結果から
    伊藤 江里, 権田 ちなみ, 渡辺 由夏, 五味 操, 荻原 園子, 中川 佐和子
    セッションID: 2F01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    《目的》
    当院人間ドックの受診者数は、年間約2300_から_2400人であり、その内60_から_70%が「要精密検査=D」・「要治療=E」の判定を受けている。この方々の受診後の経過について、毎年追跡調査を実施し県厚生連本所へ報告している。これまでの調査は、人間ドック受診1年後(報告期限)に行なっており、調査報告のための追跡となってしまい、本来の目的である「D・E判定者への継続的な経過観察と受診勧奨」が果たされていなかった。
    そこで、追跡を確実に行い、受診率を向上させる事を目的とし、紹介状の導入と受診未確認者へのアンケート調査を実施した。
    《対象・方法》
    1) 精検受診率の比較検討
    調査期間:H14年4月_から_H16年12月まで
    A群)紹介状導入以前のH14年度要精検(以下D・E判定とする)1430件
    B群)紹介状導入後のH15年度D・E判定1543件。内、315件(20.4%)に紹介状を渡した。
    A)・B)両群間の精検受診率を比較した。 尚、当院受診者は全て「受診者」とした。
    2) アンケート調査 
    調査期間:H16年10月26日_から_12月1日
    対象:H15年度精検受診未確認者490名
    内容:(1)紹介状の有無、(2)精検受診の有無、(3)未受診の理由、(4)紹介状による受診のし易さ
     尚、アンケートがきっかけになり受診した者は「未受診」とした。対象者には掲示にて研究することを告知した。
     《結果》
    1)A群:H14年度D・E判定1430件中、精検受診870件(受診率60.8%)と、B群:H15年度D・E判定1535件中、精検受診1037件(受診率67.6%)を比較すると、B群の精検受診率が有意に高かった。
    2)アンケート配布490名、回収224名(回収率45.7%)。(1)紹介状の有無については、「あり」52名、「なし」130名、無回答42名であった。 (2)精検受診の有無については、「紹介状あり」52名中、受診40名(76.9%)、未受診12名(23.1%)。「紹介状なし」130名中、受診56名(43.1%)、未受診74名(56.9%)で、紹介状ありの精検受診率が有意に高かった。 (3)未受診の理由としては、「自覚症状がなかった」30%、「その他(知らなかった、毎年ドックでみている、等)」21%、「忙しかった」20%、「忘れていた」14%、「これから受診予定」13%、「紹介状を無くした」2%であった。 (4) 紹介状があった方が受診し易いかについては、「はい」66.3%、「いいえ」10%、「どちらでもない」23.8%で、「受診し易い」が有意に高かった。
    《考察・結論》
    H14年度とH15年度の精検受診率は、紹介状を導入したH15年度の方が有意に高く、アンケート調査からも、「紹介状あり」の精検受診率が有意に高かったことから、紹介状の導入が有効であったと言える。また、アンケート回答者の6割以上が「紹介状があった方が受診しやすい」と答えていることから、今後は、人間ドック当日に、精検受診予約を取れなかった者全てに紹介状を渡すことが、更なる受診率向上に繋がると考える。一方、自覚症状が無い場合に未受診が多い、という点にいかにアプローチしていくかが今後の課題である。
  • 要再検査者の電話予約を始めて
    岩渕 規男, 大津 喬, 高城 浩, 長山 豊久, 藤澤 忠光
    セッションID: 2F02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    (はじめに)
     平成13年4月健診事務を担当するときに、当時は癌に関わる便潜血、胃透視撮影、胸部レントゲン撮影、乳癌検診、子宮癌検診の要再検者に医療機関受診を促すだけであったので、健康管理センターからの要再検者のスムーズな本院での外来移行方法を考えた。
    (経過)
     当時の本院外来は再来患者の予約診療は行っていたが、新患は除外されていた。本院内視鏡室で直接カメラの予約を手始めに行うことにした。まず、平成13年6月6日に内視鏡室長・看護師・健康管理センターとで話し合いを持ち、平成13年7月から月曜・水曜・金曜に各4名、土曜8名の枠を確保した。再検者からの電話予約は健康管理センターではなく本院内視鏡室で取ることとなった。その方法は、成績表送付時に電話で胃カメラの予約が取れる旨の案内を同封→内視鏡室で電話予約受付→当日中央受付で新患登録後検査である。
       その後、平成15年1月1日から本院のオーダリングの導入が決まり健康管理センターもオーダリング用端末2台が設置されることとなった。オーダリングシステムに予約のオープン枠がありそれを利用して健康管理センターでの予約受付を平成15年度の健診者から実施することとなった。
    再検査の外来予約は全健診者を対象とし診療科の振り分けは医師がする。また、電話予約の受付時間は平日の午後2時30分から4時30分とし、現在治療中の健診者には通知しない。
    予約の流れは
    1.結果表に医師が振り分けた科の診療予約が電話で取れることの案内を同封
    2.再検査予約のお知らせをみた受診者が健康管理センターに電話をして希望日を聞きオープン枠に予約を取る。
    3.予約前日の午後に中央受付と受診科外来に予約名簿を渡す。
    4.当日本人が中央受付で受け付け
    5.外来受診
    (結果)
      平成15年度の予約受付数は、内科753名、内視鏡517名、外科91名、泌尿器科19名、産婦人科33名の1,413名、平成16年度の予約受付数は、内科994名、内視鏡463名、外科98名、泌尿器科21名、産婦人科84名の1,660名であった。当センターの平成16年度の健診数15,171名の内訳は、農協組合員健診3,236名(21.3%)農協職員健診1,454名(9.6%)職員健診(前後期)1,784名(11.8%)人間ドック3,428名(22.6%)一般健診5,269名(34.7%)である。単純に受診者数を健診数で割ると10.9%、職員には電話予約の通知を出していないので職員健診数を抜くと12.4%の予約を行った。
    (結語)
      電話予約を始めるまでは、協同病院で健診するメリットがないなどの不満の声が聞かれたが、予約後は外来にかかりやすくなった。時間の目安がたつようになった。直接専門医にかかれるようになった(以前は予診科を受診してからの振り分けであった)などの声が聞かれるようになった。
     このように健診業務に少しの付加をつけただけで当院への受診者増、健診者への疾病の早期発見・治療に少しではあるが寄与出来たと思う。今後も、地域の中核病院である当院の一端を担う健康管理センターとしてただ健診を行なうだけでなく、何か健診者の役に立つことを考えていきたいと思う。
  • 江並 朋子, 福迫 由紀子, 草野 健, 窪薗 修
    セッションID: 2F03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    〈はじめに〉
     当センターでは,施設内外で多種の健康診断を行なっている。大きく分けて施設内では,人間ドック,施設職場健診,生活習慣病予防健診,施設外では巡回型として巡回健診(老人保健法に基づく),巡回職場健診(主にJAおよびJA関連企業を対象とした)がある。これらの健診の精密検査受診率は,コースにより大きく異なっている。中でも巡回職場健診はもっとも低い精密検査受診率を示している。巡回職場健診については,精密検査受診率の向上対策として,結果報告会から2か月後および5か月後に受診不明者に対し「追跡調査票」を発送する等様々な対策を講じてきた。しかし,H15年度でも42.4%と低い精密検査受診率に止まっている。
     今回精密検査受診率向上のために追跡調査票の効果について検討を行なったので報告する。
    〈対象及び方法〉
     H13年度からH15年度巡回職場健診(精密コース)を対象とした。この3年間の総受診者数は14,819名,うち要精密検査者は5,569名(37.6%)であった。これらの要精密検査者の受診動向および特性について分析した。
    〈結果〉
    1.全体の精密検査受診率は,H13年度41.3%,H14年度42.9%,H15年度42.4%と低い割合で推移し,総体としてはほぼ不変であった。
    2.特に精密検査受診率の低い項目は,尿酸34.2%,糖代謝35.2%,聴力検査36.5%,脂質37.7%であった。
    3.比較的高い精密検査受診率を示した項目は,腹部超音波検査67.3%,胸部X線検査63.2%,便検査59.3%であった。
    4.「追跡調査票」の効果は,追跡対象者に対し1回目7.6%,2回目7.2%であった。
    5.項目毎の効果を見てみると,1回目では,腹部超音波検査が14.3%と最高値であり,尿酸が5.3%と最低値を示した。2回目でも,最高値は腹部超音波検査の11.1%で,膵臓系が4.9%と最も低かった。
    6.性別では,ほぼ全ての項目で男性の精密検査受診率が低く,「追跡調査票」の効果も小さかった。特に血圧,脂質,糖代謝など生活習慣改善の効果の期待できる項目で顕著に低かった。
     女性では,3か月以内に精密検査受診をする者の割合が高かった。
    7.男性では加齢とともに精密検査受診率も「追跡調査票」の効果も大きくなる傾向にあったが,女性では年齢による大きな差は認めなかった。
    〈まとめ〉
     予想されたとおり,男性の若年ほど精密検査未受診者が多い傾向にあり,この層は「追跡調査票」の効果も小さかった。
     健診受診自体が,職場の命令でのものであり,健康への関心は薄いと考えられる。しかし,JA職員の健康行動は組合員への影響が小さくないことから,若いうちから健康管理に自覚を持ってもらう必要がある。
     今後は,若いJA職員への健康教育も重要不可欠と思われる。
  • アンケート調査による実態と肥満予防の援助の方向性
    岡 未幸, 鈴木 千鶴, 佐々木 幸子, 新野 峰久
    セッションID: 2F04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    〔序論〕現在、多くの生活習慣病に大きく関わる“肥満”の予防が重要視されている。当院の人間ドック受診者では平成14・15年度で、20代から30代男性の肥満(BMI25以上)の割合が増加していた。そこで肥満の割合が増加している20代頃の習慣の変化が、肥満の増加に関係しているのではないかと考え、食習慣の実態調査を行なったのでその結果を報告する。
    〔対象と方法〕平成16年10月28日から11月22日に当院の人間ドックを受診した30歳から59歳の男性に、年齢、職業、家族、今と20歳頃の体格、今の体重になった年齢、肥満に関連した食習慣10項目をいつから、なぜしているかなどアンケート調査を行なった。
    〔結果〕現在の体格は肥満40%、正常54%、やせ2%であった。20歳頃は、肥満8%、正常83%、やせ6%であった。BMIが20歳頃に正常であっても全体の34%が肥満になっていた。今の体重になった年齢の平均を肥満と肥満以外で比較すると、肥満の群が高かった。同様に20歳頃と比べて体重が20%以上増加した群とそれ以外で比較すると、体重増加した群が高かった。55歳から59歳では体重増加した群が低かった。食生活10項目の件数では「10分以内に食べ終わる」「毎日お酒を飲む」「満腹まで食べる」が多かった。これは、年代別、職業別、体格別でも同様であった。習慣を始める時期は、「早食い」「満腹まで食べる」は「学生の頃から」が多くそれ以外は「仕事を始めてから」が多かった。また、「早食い」の理由は「家族の影響」「通勤・通学時間」が多かった。年代別では、30歳から34歳がほかの年代と違い、「朝食をとらない」「食事時間がバラバラ」が多く「早食い」や、「飲み物をよく飲む」習慣の件数が少なかった。また、お酒や飲み物は、嗜好品が好きだという理由よりも、ストレス解消としての理由が多く、35歳以降で「飲酒」、40歳以降で「飲み物を飲む」習慣の件数が増えていた。
    〔考察〕20歳頃はほとんどが正常な体型であるため、肥満になる人は徐々に体重が増えていると思われる。食習慣のほとんどの項目が「学生の頃から」「仕事を始めてから」の20代前半という早い時期に習慣化されてしまうことからも、若い頃の体重を維持できるよう、太らないように自己管理できるような関わりが、男性の肥満予防には重要であると考える。件数の多い習慣であった「早食い」「飲酒」「満腹まで食べる」「飲み物をよく飲む」は、周囲やストレスなど外的な影響により習慣化していることがわかった。今後、個人への動機付けのほかに、家族や職場単位での、個人を囲む環境への関わりが重要になると思われる。
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