日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
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一般演題
  • 中神 信明, 西村 信哉, 河辺  洋一郎, 中神 未季
    セッションID: 2F05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当健康管理センターは渥美半島における中核病院併設として、人間ドック・政府管掌生活習慣病予防健診・各種がん検診等を実施している。平成12年10月には、病院の新築移転に伴い、規模・設備の拡充を図った。年々増件する人間ドック等の受診者に対して、総合健診システムの導入、保健師採用等による事後指導の充実・強化を行なってきた。その活動経過と今後の課題について報告する。
    【目的】
    人間ドック等健診受入および事後指導の拡充を図るため、午前、午後の指導体制を確立する。
    【方法】
    1 午前:行政受託人間ドック受診者以外の指導体制
    1)指導内容
    医師・保健師等による個別指導を実施。
    2)実施日・時間・人員
    実施日は年間を通した個別指導を可能とするため、健診日の午前中とした。
    健診医師の業務および外来受診勧奨可能な時間帯を考慮し、健診者診察終了後の午前9時30分を開始時間とし、指導時間を1名20分、1日4名から5名実施とした。
    3)予約方法
    予約票および予約者名簿を作成し、当日の健診終了後、受付窓口にて受診者と指導日の日程調整を行なった。
    2 午後:行政受託人間ドック受診者の指導体制
    1)指導内容
    「結果説明会」として、受診者が以下の両方に参加。
    ・検査技師による検査結果の見方・読み方、各検査の必要性等の集団説明
    ・医師・保健師・管理栄養士等による検査結果に応じた個別指導
    2)実施日・時間・人員
    実施日は行政および関係部署と協議し、健診日の午後に週2回から3回実施とした。
    集団説明および個別指導の時間配分を考慮して、開始時間を午後1時からとし、1時間に10名を1枠として、3枠設定した。
    3)予約方法
    結果説明会(集団説明および個別指導)のご案内、予約者名簿を作成し、当日の健診終了後、受付窓口にて受診者と「結果説明会」の日程調整を行なった。
    【結果】
    人間ドック等受診者に対する事後指導の実施件数は、平成14年度受診者数2,414名に対し1,490件、平成16年度受診者数2,936名に対し1,806件であり、実施件数での対比+316件増であった。
    また、受診者数に対する指導実施件数割合は、平成14年度61.7%、平成16年度61.5%であった。
    【考察】
    今回の取り組みにより、経年的に増件する人間ドック等を受入、受診後の事後指導体制を整備することができた。と同時に、関係職種間の連携の重要性も痛感した。また、午前の事後指導実施により、要精検者の外来受診が可能となり、疾病の早期発見・治療への対応が迅速に行なうことができた。しかし、要精検者が健診受診後の事後指導を経て、外来受診するまでの包括的なシステムとしては確立されていないという問題点も解かった。今後の課題として精密検査に対する包括的体制の構築が必要であると考える。
    これからも、地域に根ざした健康づくりの拠点として、住民の健康維持・増進を支援していきたい。
         
  • 桐原 優子, 林 雅人, 荻原 忠, 佐々木 司郎, 石成 誠子, 照井 一幸
    セッションID: 2F06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    [緒言]近年、わが国におけるアルコール消費量は微増ないし横ばい傾向を示しており、明らかに減少を示している欧米先進諸国に反していまだ減少がみられていない。アルコールは生活習慣病の重要な発生要因になることは多くの報告がある。そこで、今回アンケート調査およびエタノール体質判定テストを実施し飲酒習慣について検討したので報告する。
    [対象および方法]対象は平成15・16年度平鹿総合病院で健康診断を受診した男性1,693名とし、飲酒習慣アンケート調査(酒の種類別飲酒量・飲酒の状況・二日酔いはあるか・自分はアルコールが強いと思うか)及びエタノール体質判定テストを実施し、健診データ(AST・GGT)との関連をみた。有意差検定にはカイ二乗検定を用いた。
    [結果]1)飲酒状況をみると毎日飲む58.3%・時々飲む27.8%と86.1%の人が酒を飲むと答えていた。年代別にみると40代の90.3%が毎日飲む・時々飲むと答えており、40代をピークに年代が進むにつれて酒を飲む人は減っていた。2)1日あたりの飲酒量をみると毎日飲酒している人は各年代とも日本酒換算で2合未満が最も多かったが、30代から60代については2合以上飲酒している人が4割以上を占めた。時々飲酒は毎日飲酒に比べ、各年代とも飲む量が少なく、1合未満が8割前後を占めていた。3)飲酒状況別異常者頻度をみると、AST・GGTとも毎日飲酒者の異常者頻度が高いという結果であった。4)酒の種類をみると毎日飲酒者は年代とともに日本酒飲酒が多く、ビール飲酒が少なく、焼酎についてはどの年代においても2割くらい飲んでいた。時々飲酒者は20代から50代までの年代で約70%がビールと答えていた。5)飲酒の状況は毎日飲酒者では晩酌すると答えた人が各年代において8割以上で年代とともに増えていた。時々飲酒者では若い年代において晩酌するより友人や知人ともコミュニケーション・つきあいの割合が多く、年代が進むにつれて晩酌の割合が多くなっていた。6)二日酔いはあるかについては毎日飲酒・時々飲酒ともないの人が多く、年代とともにない人の割合が増えていた。7)酒が強いと思うかについては毎日飲酒・時々飲酒とも年代とともに強いと思う人が増えていて、毎日飲酒者の60代以上では半数が自分は酒が強いと思っていた。8)エタノール体質判定テストの結果ではアルコールに反応のでない、飲みすぎ注意の危ないタイプが48.8%、アルコールにすぐに反応するぜんぜん飲めないタイプが12.9%であった。飲酒状況別にパッチテストの結果をみると酒を飲まない人は、危ないタイプが19.4%でほんとは飲めない・ぜんぜん飲めないというアルコールに反応するタイプが80.6%を占めていた。2合以上飲酒者でもアルコールがぜんぜん飲めないタイプが5.4%いた。
    [考察・まとめ]毎日飲酒者は半数以上を占めていた。毎日飲酒者の飲酒状況は晩酌が多く、飲酒量も多くなり、肝機能異常者も多いという結果であった。特に働き盛りの年代の多量飲酒が目立つことは問題となる。体質的にアルコールが合わないのに多量飲酒している危険な人もおり、今後は個々の飲酒状況に応じた適量飲酒の指導が必要であると思われる。
  • 菊地 優子, 伊藤 伊保子, 小野寺 洋一, 工藤 晃, 佐藤 愛子, 小玉 雅志
    セッションID: 2F07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    I.はじめに
     今回喫煙習慣についてアンケート調査を行なった。アンケート結果、健診データー、喫煙習慣の関係分析から今後私達がどの様なかたちで禁煙教育にかかわっていけるのか考えたので報告する。
    II.調査方法
    H16年G町基本健診受診男性905名にアンケート調査をおこなった。その後BMI、生化学、血糖、白血球を喫煙状況、喫煙指数で一元配置分散分析を行なった。
    III.結果及び考察
    今回の調査結果から、「吸っている」37.9%、「以前はすっていたがやめた」33.7%、「吸わない」28.4%であった。たばこをやめたい又は本数を減らしたい理由は、全体で「たばこは健康に悪いと思うから」73.9%と最も多かった。たばこの害について具体的にどの様な疾患と結びつくか理解を深めるには至っていない現実がある。H15年秋田県でのたばこが疾病に与える影響のアンケートでは、罹りやすくなると答えた人の割合は、肺がん72.9%、喘息48.2%、心臓病32.5%、脳卒中25.2%、妊婦への影響61.1%であった。肺がんや、妊婦への影響が高率であることは発生頻度も関係するが活発な啓蒙活動の成果であると考える。喫煙の有害性に関する正しい情報を理解し自らの意思で禁煙を決定することが必要であると考える。また、年代別に見ると40代では「たばこを吸える場所が少なくなった」「職場で吸える場所が少なくなった」を合わせると6割以上である。G町内では、保健センター・小学校が禁煙となっている。喫煙場所の制限は、禁煙志願のきっかけになると考える。60代以上でこの理由が少ないのは、退職後や農業者の家庭を拠点としている人が多く、禁煙場所の制限が少ないためと推察する。喫煙場所の制限は、禁煙志願のきっかけになると考える。
    健診データーとの関係を、たばこを「吸っている」「以前吸っていたがやめた」「吸わない」の3群に分け一元配置分散分析をおこなった。BMI、収縮期血圧、HDL、TG、γ!)GTP、WBCにおいて有意差がみられた。その中で吸っている人のTGの平均値が異常値であった。次に喫煙指数別に3群に分け分析を行った。収縮期血圧、TG、γ!)GTP、WBCにおいて有意差が見られた。その中で、喫煙指数600から999、1000以上のTGの平均値と、1000以上のγ!)GTPの平均値が異常値であった。今回のアンケートでたばこを吸っている人の57.4パーセントが酒を飲むと本数が増えると答えている。このことから、喫煙のみではなく、飲酒も相互関係があると推察される。身近な健診データーとの関係を活用し禁煙教育を進めていきたいと考える。
    IV.まとめ
    アンケート結果から職域・家庭での禁煙・分煙(喫煙場所の制限)がすすむこと、禁煙志願のきっかけをつかめるのではないかと考える。検査結果との関係では、2つの分析で中性脂肪に有意差があり異常値であった。喫煙指数別では、γ!)GTPに有意差があり異常値であった。     
  • 山田 泰之, 神谷 浩行, 岡田 淳志
    セッションID: 2F08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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     (緒言)前立腺癌は食事の欧米化と高齢化によって年々増え続けている。前立腺癌の死亡数は全癌(男性)の4%ではあるが、増加率ではNo1になっている。この背景には、前立腺疾患への認知度が高まってきたこと、全国の市町村で前立腺癌の腫瘍マーカーであるPSA検診が行なわれつつあることでさらに癌検出率が上がっていると考えられる。今回、愛知県海部郡でも平成16年6月から9月まで、初めての前立腺癌PSA検診が行われたのでその結果を報告する。
    (結果)PSA検診を受けた1865例のうち、PSAが高値だったのは171例で、PSAが4から9.9までは120例、10以上は42例、不明9例であった。PSAの異常値である4以上の患者に生検がすすめられたが、30例は生検を拒否され、前立腺針生検を受けた患者は141例だった。生検をうけた年齢は、50代が9例(1.4%)、60代が50例(29.2%)、70代が87例(50.9%)、80代が17例(9.9%)、不明8例(4.7%)だった。
     生検の結果、前立腺癌だったのは51例で生検を受けた内の29.8%に癌を認めた。36例(21.1%)は前立腺肥大症、54例(31.6%)は異常なしと診断された。PSAが4-9.9での癌検出率は17.5%、PSAが10以上では64%と高率だった。
     海南病院での生検は73人に実施され、海部郡およ近隣の病院で生検されたうちの42.7%を占めていた。
    (考察)前立腺癌の治療は早期の症例は手術治療、高齢者や浸潤癌の症例はホルモン治療を行なうのが一般的である。当院で癌と診断された患者、近隣病院から紹介された患者を含め、平成16年6月から平成17年3月までに当院で前立腺全摘術を施行したのは50例で、15年度の14例に比べると爆発的は増加であった。これはPSA検診の結果、前立腺癌患者が飛躍的に増加したと考えられる。
     今後のさらなる高齢化社会において、医師会と行政の協力によるPSA検診での早期前立腺癌の発見は、患者の生命予後に十分貢献するだろうと考えられ、さらにより多くの市町村でのPSA検診が望まれる。
     一方で、前立腺癌の中には臨床的に生命に影響を与えないようなラテント癌もあるとされており、治療しなくてもいいような前立腺癌も存在すると言われている。生検で見つかった前立腺癌を的確に将来予測できない現状では、診断されれば治療するしかないが、症例によっては無駄な治療になっている可能性もある。PSA検診による前立腺癌患者の急増は、我々泌尿器科医を悩ませる問題でもある。
  • 依田 芳起, 山田 和子, 花形 悦秀, 北橋 敦子, 塚田 登思美, 細田 健司, 渡辺 一晃, 大野 泰司, 加藤 淳也, 小林 一久
    セッションID: 2F09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    【目的】腹部超音波検査、乳腺超音波検査のカテゴリー分類の実態と精密検査結果を合わせ、カテゴリー分類の実情を検討し今後の診断能力向上に役立てる。
    【方法】(1)腹部超音波検診:判定で要精検となり、その中でも追跡が必要と考えられた追跡対象の所見に対し、担当した超音波技師がカテゴリー分類を行ない、その後の精検結果とあわせて検討した。
    (2)乳腺超音波検診:H.16年度に人間ドック及び巡回検診で乳腺超音波検診を受診した17,082例のうち、要精検の診断は263例(1.5%)、悪性疾患が疑われる追跡対象者は62例(総受診者の0.4%、要精検者の24%)で、この62例に対し精検結果とカテゴリー分類の比較検討を行なった。
    【成績】カテゴリーは、I悪性所見は認められない。II所見は認めるが、悪性の性状はない。III悪性の疑いあるエコー所見であるが、悪性と判定できない。IV悪性の疑いが濃厚な所見。V悪性と断定し得る所見とした。
    (1)腹部超音波検診:H.16年度に人間ドック及び巡回検診で腹部超音波検診を受診した66,068例のうち、要精検の診断は557例(0.84%)、悪性疾患が疑われる追跡対象者は62例(総受診者の0.09%、要精検者の11.8%)で、この62例に対し精検結果とカテゴリー分類の比較検討を行なった。
    1年間に発見された癌症例は25例で、肝細胞癌,11例、転移性肝癌,5例、胆管細胞癌,1例、胆嚢癌,1例、総胆管癌,1例、膵臓癌,2例、腎臓癌,1例、リンパ節転移,2例、膀胱癌,1例であった。
    カテゴリーII、IIIで悪性腫瘍であった症例は8例で、内訳は肝細胞癌4例、転移性肝癌2例、胃癌リンパ節転移1例、膀胱癌1例であった。カテゴリーVであったが、良性疾患であった症例は3例で、内訳はIPMT1例、Oncocytoma 1例、自己免疫性膵炎1例であった。
    (2)乳腺超音波検診:1年間に発見された癌症例は20例であった。カテゴリーII、IIIで悪性腫瘍であった症例は8例で、腫瘤にハローを有するもの2例、微細石灰化を有するもの2例あり、見直しではカテゴリーIVまたはVとして良いと思われる症例が3例認められた。1例は乳癌切除後のリンパ節転移であった。
    カテゴリーVであったが、良性疾患であった症例は2例で、1例は線維腺腫、1例は乳腺症の診断で、組織診断がなされていた。
    【結論】腹部超音波検診におけるカテゴリー分類はおおむねカテゴリーが上がると癌症例に合致していたが、一部症例で悪性度が一致していなかったものもあった。必ずしも悪性度に一致したものではなかった。カテゴリーVで良性疾患であったのは、比較的稀な症例が多かった。乳腺超音波検診でもカテゴリーが上がるにつれて癌症例との合致率は上昇したが、カテゴリーIIIを見直し検討した結果IV-Vの症例が38%(8例中3例)あり、読影力の向上が求められる。
  • 碓井 裕史, 久保 知子, 福岡 達仁, 野村 恵美, 鎌田 恭子
    セッションID: 2F10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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     生活習慣病は複数のリスクファクターの相加・相乗作用により発症する。特定の遺伝子変異もそのリスクファクターになることが近年明らかにされており,これからの健診では遺伝子解析の結果を利用して生活習慣を改善し,生活習慣病を未然に防ぐことも重要と思われる。本研究では肥満(β3アドレナリン受容体),飲酒(アルデヒド脱水素酵素),喫煙による肺がん発症[CYP1A1,グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)]に関する遺伝子の変異の有無を受診者に知らせ,その後の体重や生活習慣の変化を追跡した。対象は広島総合病院の35才以上の職員の内,遺伝子検査の同意が得られた145人(男性49人,女性96人)で,検査は当院臨床研究検査科で行なった。受診者の平均年齢は男性45.7才,女性45.3才であった。個人宛の報告書には各人の遺伝子型とその解説および生活習慣改善のためのコメントを載せた。β3アドレナリン受容体遺伝子解析では正常群87人,変異群58人であった。変異群の人は正常群に比べ,基礎代謝量が1日約200kcal少ないため,肥満になると減量しにくい。1年後,追跡可能であった126人中,正常群で48%,変異群で42%の人の体重が減少した。BMI(体格指数)25以上の肥満者で体重減少が見られたのは正常群で63%,変異群で40%であった。アルデヒド脱水素酵素2の遺伝子型は1/1型(お酒に強い),1/2型(強くはないが飲める),2/2型(弱くてまるで飲めない)に分類され,それぞれ76,61,8人で日本人における各遺伝子型の頻度とほぼ同じ結果が得られた。1/2型では細胞障害性のあるアセトアルデヒドが1/1型に比べ蓄積しやすいため,常用的な飲酒で1/1型に比べ食道がん,咽頭がんの頻度が増すことが知られている。追跡可能であった1/2型の常用飲酒者14人のうち,1年後には2人が飲酒量を減少させた。たばこの煙に含まれるベンツピレン等の発がん物質はCYP1A1酵素により,更に発がん性の強い物質に変換される。一方,これはGSTにより解毒される。CYP1A1遺伝子の多型およびGSTM1遺伝子の有無で,たばこによる肺扁平上皮がん発症の危険度が異なる。遺伝子解析結果を受けて,喫煙者18人中3人が禁煙あるいは喫煙本数を減少させた。また,非喫煙者85人中10人は家族の喫煙,周囲の喫煙に注意した。遺伝子結果報告後のアンケート調査で,大部分の人は遺伝子検査を受けて良かったと答え,その理由として生活習慣の見直しができる,自分の身体に興味が持てたとの意見が多かった。1年後,実際に行動変容に結びついたのは約1/3の人であり,ほぼ同数の人は結果を知り生活改善の必要性を感じるがなかなか行動に結びつかないと述べた。院内職員健診で生活習慣病関連の遺伝子検査はおおむね好評であり,生活習慣改善のための行動変容の契機になった。
  • 重田 匡利, 久我 貴之, 須藤 学拓, 山下 晃正, 中山 富太, 藤井 康宏
    セッションID: 2F11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    【目的】マムシは琉球列島を除く日本の全土に分布している毒蛇であり春から秋にかけて多くみられる。マムシ咬傷の症状として局所の腫脹・疼痛はほとんど必発であるがさらに全身症状として腎臓や循環器、神経、消化器、凝固系の異常をきたしDICや多臓器不全により死に至ることもある。本邦では年間2000から3000人が受傷しその内10から20名が死亡するとされる。田畑や山中での被害報告が多く農村医療では重視されると思われ、また当院ではマムシ咬傷患者が比較的多いことからその臨床像について検討したので報告する。
    【対象】当院でH11年8月からH16年8月におけるマムシ咬傷16例について治療法とその経過について検討した。患者は7_から_79歳(平均56歳)男性10名、女性6名であった。
    【結果】季節は夏に集中し7月_から_9月が11例(69%)であった。山中・畑での受傷が7例(43.8%)であったが9例(56.2%)は自宅屋内や庭、自宅周辺での受傷であり当院の近隣地区においては日常的にもマムシと遭遇する危険がある可能性が示された。来院前の処置としては咬傷部の吸飲、洗浄、患肢挙上、駆血が施行されていた。上肢の受傷では速やかに駆血され来院した症例は治療期間、腫脹の程度も軽く有効な処置と思われた。全身症状としては循環器症状として心悸亢進を1例、神経症状として複視や霧視を7例で認めた。また消化器症状として嘔気を2例で認めた。血液検査上の異常はCPK高値を8例(50%)で認めGOT上昇を4例(25%)で認めた。ほかアルブミン低下やD-dimer高値の症例も認めたが腎障害やDICの症例は認めなかった。またCPK高値群の平均入院日数15日±8.6SDでCPK低値群は7.4日±3.9SDでありCPK高値の症例は入院期間も有意に長くなった(p<0.05)。治療方針はGrade分類を参考にし、咬傷部の切開処置、輸液、マムシ抗毒素、セファランチン、抗生物質、ステロイド剤を併用し加療した。抗毒素の使用に関してはインフォームドコンセントのもとに施行することとしているが過去の判例もあり、結果的には16例中15例で投与し非投与は皮内テスト陽性の1例のみであった。使用した後に1例で発疹を、1例で血圧低下のショック状態を呈したがともに速やかに軽快した。受傷から来院までの時間は60分以内が13例(81%)でありほとんどの症例で速やかな処置が行なえた。治療の結果、腫脹改善傾向が認められるまでの日数は翌日に改善傾向となるものから10日目までかかるものまであり平均は約4.1日(±2.2SD)であった。また入院日数は2日間から30日間のものまであり平均は11.2日(±7.6SD)であった。腫脹、疼痛の消失には時間がかかり治療期間を再診のあったもの11名で検討すると7日間から59日間で平均26.6日±13.9SDであり完全に緩解するまでには相当数の日数を要するものと思われた。人工呼吸管理や血液浄化などの集中治療を必要とする症例は無かった。
    【結語】マムシ咬傷では迅速な初期治療、重症化への経過観察を含めた全身管理が必要である。当院の症例では集中治療を要するような重篤な症例は無く良好な結果であった。
  • 京谷 樹子, 中村 健, 大谷津 恭之
    セッションID: 2F12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    <はじめに>
    近年のペットブームによって、我々の生活に多くの動物が共生するようになった。しかしこの反面、これら動物における外傷例も増加の傾向にある。
    当院は佐久地方における中核病院であり通年、様々な動物咬傷患者が来院する。犬、猫はもとより熊、猪にいたるまで多種多様である。動物外傷は咬む・引っ掻くことにより引き起こされるが、引っ掻き傷よりも咬み傷の方が深く、時に感染をおこし、また機能障害を残すこともある。そこで今回は動物咬傷に注目し、さらにその中で最も多い手における咬傷について検討した。
    <対象>
    対象症例は1997年6月から2004年5月までに当科に来院した動物咬傷397例のうち、手部咬傷の171例(男性77例・女性94例)である。年齢は0歳から93歳までで、平均は43.2歳であった。加害動物は犬が116例、猫が39例で、これら2動物で全体の90.6%を占めた。希な症例としては人咬傷5例、兎咬傷5例、蛇咬傷4例、その他キツネ、ねずみ、ハムスター、猪、熊、猿、リス、などが認められた。これらの症例に関して、受傷部位、受傷年齢、感染率、感染例の受診までの期間、合併症、治療と予後について調査した。
    <結果>
    手部における受傷部位では手指が最も多く38.6%で次にMP関節部の28.7%であった。受傷年齢のうち犬の場合は、男性では40代に多い傾向を認め、女性では50代に多い傾向があった。また、10歳以下の受傷例も8例認められた。猫では、男性では70代、女性では40代に多い傾向を認め、男女ともに10代以下の受傷は認められなかった。感染例は35例で全体の20.5%で、その内訳は犬が116例中の18例10.5%で猫は39例中の16例41.0%におよんだ。感染例のうち16例45.7%は6時間内のいわゆるゴールデンタイム中に受診し、処置を受けている。感染例うち54.5%は糖尿病合併・ステロイド内服患者であった。感染例の初期治療を検討すると、犬の場合は感染後に受診した6例を除くと洗浄後に1次縫合した例が3例、ドレーンを留置した例が2例、創処置のみは7例であった。猫の場合は感染後に受診した8例を除くと洗浄後に1次縫合した例が2例、創処置のみが6例であった。
    <考察>
    犬・猫ともに中年以降の男女の受傷が多い。これは、1日のうちで最も一緒にいる時間が長く、動物との接触機会も多いためであると推測される。現に受傷機転をみてみると、喧嘩の仲裁や食事時に咬まれる症例が多くこの事からも中年以降の受傷が多くなる原因と考えられた。処置内容について考察すると、初期治療については1次縫合を行っても感染は起きないとする報告も認められるが、別の報告も認められ意見の分かれるところである。我々は今回の結果より次のように考える。犬咬傷のうち易感染性のない例では十分な洗浄を行ない、1次縫合を行なっても良いと考えるが、猫の場合は歯が細く鋭いために、刺入部が小さいにも関わらず、創が見た目以上に深部まで達することが多く、また感染の原因となるPasteuralla multocidaの保菌率も犬が21%なのに対し猫は71%と効率であり、十分な注意と処置が必要である。また人咬傷や糖尿病患者およびステロイド内服中患者のような易感染性の危険のある患者については特に感染に注意するべきである。また、これらの症例に関しては適切な説明と処置後の定期的な経過観察が欠かせないと考える
  • 味岡 絢子, 堀越 建一, 下村 昌史, 高崎 茂雄
    セッションID: 2G01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    【目的】医薬分業の広がりにより、平成16年度の全国平均分業率は54%を超えた。当院では平成13年11月より院外処方箋発行を開始し、原則として患者が院外処方箋・院内処方箋の選択をしている。平成16年度当院では、1日平均処方箋枚数は590枚に対し、院外処方箋発行率は11.3%と、約9割の患者が院内で薬を受け取っていた。今回、院外・院内処方箋に関して患者の意向を明らかにするため、調査したので報告する。
    【方法】平成16年12月14日から平成17年2月5日の期間中、当院外来患者を対象にアンケートを実施した。
    【結果】アンケート配布枚数2,000枚、回収率は82.2%であった。回答者は本人79%、家族17%、受診診療科は内科が最も多かった。薬の受け取りは77.1%の患者が院内を希望した(図1)。その主な理由は「わざわざ外に行く必要がない」であった(表1)。院外薬局でもらいたい理由は「待ち時間がほとんどない」が最も多かった(表2)。
    【考察】77%の患者が院内での薬の受け取りを希望しており、その主な理由は「わざわざ外に行く必要がない」であった。郊外に位置する当院の患者は、自家用車の利用が多く、帰宅時に院外薬局へ立ち寄ることに手間を感じていると考えられる。また、院内での薬を希望した患者のほとんどが院内薬局に不満を感じていなかった。当院ではオーダリングシステムを導入しており、院内での薬の待ち時間は患者の負担になっていないと思われる。また、システム上で処方歴が簡単に検索でき、処方箋発行時に院内他診療科との重複投与・相互作用チェックがされており、院外薬局のメリットを充足していると言える。院外薬局のメリットとして詳しい服薬指導があげられるが、院内においても必要とする患者は薬相談コーナーを利用していた。その他、院内を希望する理由として「院内のほうが安心できる」という意見が複数寄せられ、患者は院内薬局に厚い信頼を置いていることがわかった。患者は自身の意向に基づき院外処方箋・院内処方箋の選択をしており、それぞれの薬局で受けるサービスに満足していると考えられる。当院では今回の結果を検討し、さらに患者サービスの質を高めるため、外来患者への服薬指導を充実させ、待ち時間の短縮を図っている。
    【結論】多くの患者が院内で薬の受け取りを希望していた。患者の意思で処方の院内・院外を選択できる現行の方法は、患者満足度の高いサービスである。院外薬局のメリットが患者に十分に認知されていない現状において、院内処方箋に対する要望に応える為に、患者サービスの質を向上させ、多くのニーズに応えていきたい。
  • 秋田 浩子, 前川 義紀, 直井 秀樹, 丸山 康典, 松井 ちひろ, 中垣内 佳子, 梶屋 敏宏
    セッションID: 2G02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    緒言
     当院では平成14年4月から院外処方箋の全面発行を開始した.医師が処方指示書に記載されている前回処方内容を確認修正後,医事課が処方指示内容を入力し院外処方箋を発行する.その際,院内薬局で院外処方箋と処方指示書を照合し,問題がなければ,患者に院外処方箋を渡す方式で行なっている.又,保険薬局からの院外処方箋に対する疑義照会は,院内薬局が窓口となり,担当医師に疑義照会を行ない,保健薬局へFAXにて回答する方式で行なっている.
     当院では平成16年3月に「良質で安全な医療を提供する」をキャッチフレーズにISO9001医療マネジメントシステムを導入した.半年毎に医療サービス目標を設定し,医療サービスマネジメントの向上を行なっている.今回,薬局では,『疑義照会率を減少させる』ことを目標に掲げ,検討を行ったので報告する.
    現状・分析
     1.平成16年12月から平成17年2月の疑義照会内容を検討した.3か月間の外来処方箋枚数(A)20,104枚.疑義照会件数(B)96件.疑義照会率(B/A×100)0.48%であった.
     2.照会内容を分類した場合,「用法用量に関する疑義」25件,「処方内容と患者認識との相違に関する疑義」24件,「保険適応上の問題」10件,「調剤上の問い合わせ」8件,「患者の変更希望」13件,「形式上の疑義」3件,「前回処方との相違」3件,「禁忌・副作用等の疑い」3件,「重複投与」7件であった.
     3.照会内容を処方箋記載不備などの「形式上の疑義」以外の事例について,処方監査上の「薬学的疑義」と,患者応対や薬歴照合を通じて生じた「臨床的疑義」に大別した.薬学的疑義は37件(40%),臨床的疑義は56件(60%)であった.
     4.「薬学的疑義」のうち,「特定の用法を有する薬品」関連疑義は4件,「投与上限」関連疑義は6件,「製品規格」関連疑義は2件だった.
     5.保険薬局からの疑義照会FAXの受診時間と,回答の送信時間の差を疑義照会時間として,時間を計測した.(中央値10分.最大47分.最小1分.n=62)
    対策
     「特定の用法を有する薬品」,「投与に上限のある薬品」,「製品の規格」について,医師の処方時に認識可能なよう,また,院内薬剤師の監査に漏れがないよう,処方指示書の薬品名の表記に特定の用法・投与の上限期間・製品の規格を各々追加した.
    実施
     実施は,「製品の規格」については平成17年3月から,「特定の用法を有する薬品」,「投与に上限のある薬品」については平成17年4月からとした.
    結果
     対策実施後3月の「製品規格」関連疑義は0件であった.4月の「特定の用法を有する薬品」関連疑義は1件,「投与上限」関連疑義は3件であった.
    考察
     当院の疑義照会率0.48%が,他施設の発表と比べ低いのは,院内薬剤師の処方監査の影響と考える.このことは,疑義照会にかかる10分程の患者の待ち時間減少と,医療過誤防止の面で,医療サービスに繋がる.今回,対策実施後の結果の評価期間が短く充分な結果は得られず,今後の継続評価が必要であるが,今回の対策は,院内薬剤師の意識の向上と医療の標準化に寄与したと考える.また,今後も疑義照会件数を減らすよう,必要なDI情報の追加を行ない,医師・医事課職員へのアピールを行なうなど,ISOの基本姿勢での一つである「継続的改善」を行なうことで,良質で安全な医療を提供することに務めたい.
  • 鈴木 敬子, 渡邉 操, 中村 治彦, 齊竹 達郎
    セッションID: 2G03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
    当院は平成12年10月に現在の地へ新築移転した。移転により部屋が広くきれいになったことや、手作りのささやかなお祝いやきめ細やかなケア・指導といった産婦人科病棟のスタッフの努力により、移転後の分娩件数は順調に伸びている。
    当院では入院患者全員を対象に、院長直通の退院時アンケートの記入をお願いしている。平成16年春、分娩のため入院した患者よりこのアンケートを通じ、「産後の薬の説明書には副作用がたくさん書かれていて不安になった。」との声が上がった。この声をきっかけに、産婦人科病棟で産褥婦への服薬指導の改善を考えることになり、病棟担当薬剤師もこれに協力することとなった。今回はまず薬剤師が中心となってお薬説明書の見直しから始め、話し合いを進める中で、一部の患者については直接薬剤師が服薬指導を実施する運びとなり、チーム医療を一歩進める結果につながったのでこれを報告する。
    <方法>
    1)病棟担当薬剤師でお薬説明書の原案を作成。これを病棟のチーム会で検討し、病棟スタッフから要望・意見をもらった。 2)それまでのお薬説明書を配られている患者を対象にアンケートを実施した。興味や理解度について調査、また自由記述欄を設け、要望や意見も出してもらった。 3)これらを踏まえた上で修正を重ね、最終案を作成した。
    <結果・考察>
    分娩は自費扱いであるため、これまで服薬指導・配薬に薬剤師は一切関わっていなかった。従来、産褥薬は薬剤科で予製したものを病棟に常備し、助産師または看護師が口頭で簡単な説明を加えながら、お薬説明書とともに配薬していた。この説明書には薬剤科が外来用として使用しているものを病棟スタッフが加工したものを用いており、薬剤師は直接関与していない。今回の見直しにあたって、病棟スタッフからは、こちらから提示した原案についての意見の他、それまでスタッフ自身が感じていたこと、気になっていたこと、そして患者から相談を受けた点や不安を訴えられた点などが、意見・要望として積極的に出された。患者アンケートからは、選択式の回答では不満の声はほとんど見られなかったが、自由記述欄からは病棟スタッフからの意見に通じるものも含めていくつかの意見が挙がってきた。これらをもとに新しいお薬説明書を作成した。
    平成16年11月より新しいお薬説明書を導入。同時に保険適応となる帝王切開術による分娩の患者を対象に、薬剤師による服薬指導・配薬を始めた。自費扱いの患者については、現状では薬剤師が直接服薬指導を行なうには至っていないが、お薬説明書の作成を病棟チーム会とともに行なうことで、指導内容の統一・レベルアップを図ることができた。今後も積極的に病棟スタッフ、患者の声を取り入れ、さらなる改善を図っていきたい。
  • 平石 啓, 山中 克俊, 鈴木 敬久, 関野 好孝
    セッションID: 2G04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     近年、院内感染に対する関心が急速に高まりつつある。そのため、各施設では感染症制御チーム(ICT)が結成され、院内感染防止のため日々活動を行なっている。当院においても、医師、看護師、薬剤師、検査技師等のコメディカルでICTが結成され、現在活動中である。院内感染防止対策を行なう上で、消毒薬や抗菌薬の適正使用を実施するためには情報解析も重要な役割と考える。今回、薬剤部では、入院患者に使用された抗菌薬について、系統別使用頻度および増加傾向にある薬剤の使用動向を調査し、若干の知見を得たので報告する。
    【調査方法】
    平成12年4月から平成17年3月までの5年間における入院患者全病棟全科における医事課のデータから抗菌薬を抽出し、使用量を調査した。
    【結果】
      当院における抗菌薬の使用総数は、平成12年度から平成13年度にかけて急激に増加したが、平成14年度以降では増減があまり見られなかった。系統別においては、どの年度もセフェム系の抗菌薬の割合が一番多く、次いでペニシリン系、カルバペネム系が上げられた。この3種類で全体総数の8割以上を占めていた。系統別で変化がみられたのは、カルバペネム系で使用割合が徐々にではあるが増加傾向を示した。ポリペプチド系は特に変化がみられなかった。
    【考察・まとめ】
      今回の調査により、入院患者に使用された抗菌薬はセフェム系が最も多く、その中で、第三世代の抗菌薬がどの年度も約4割を占めていた。難治性の感染症の場合、カルバペネム系は治療領域が広く、効果の出やすい薬剤であるので、当院においても増加傾向があった。しかし近年、新たな耐性機構を獲得したβ—ラクタマーゼ産生耐性菌(ESBL)などが出現し、第二世代、第三世代で充分治療可能であったものが難しくなってきている。第三世代セフェム系、カルバペネム系の使用増加に伴い、耐性菌の産生を促す可能性があり、今後正確な菌の検出と適切な薬剤選択の迅速な対策が必要と考えられる。ポリペプチド系の使用量が増加しなかったのは、MRSA院内感染が、飛沫感染ではなく接触感染なので、ICTの啓蒙活動により院内で広まるのを抑えられたためと考えられる。今回得られた情報を生かし、各部署での感染に対する関心を高めて院内感染対策に必要な情報を積極的に共有しチーム医療に貢献していきたい。
  • 前田 健晴, 佐々 英也, 冨田 敦和, 前田 直希, 羽田 清, 沖 健次, 本多 鋭孝
    セッションID: 2G05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】
    塩酸バンコマイシン(以下VCM)は腎機能障害患者・透析患者等の腎不全患者や高齢者等では投与量、投与間隔の調節が必要であり、TDMにより有効性・安全性をチェックすることが望まれている。
    当院の入院患者の注射個人セット時に投与患者に関する情報をふまえてチェックするには、その都度オーダリングシステム等で必要事項の確認を行なわなければならず、注射セット・服薬指導を行なっていない病棟も一部あり、全患者を対象としたチェックをすることが人的・時間的にも困難であった。
    そこで、全患者を対象としたチェックと患者情報・処方情報等をもとにチェック内容の標準化を目指しVCM一次チェックシステム(以下チェックシステム)を構築し、運用を開始したのでここに報告する。
    【システム】
    チェックシステムは、Microsoft社のAccessを用いて作成した。
    当院では、オーダリングシステム(NEC Mega-Oak)を導入しており、医師が入力した注射オーダはすべて薬剤科部門システム(小西医療器)に送られる。
    薬剤科部門システムから当日施行分のVCM投与患者と透析情報を抽出、オーダリングシステムから患者基本情報と検査データを抽出する。これらの情報を基に得たクレアチニンクリアランス値から、VCM添付文書上にある1日投与量の設定のためのMoelleringらのノモグラムを利用し目安投与量を計算するようにした。
    患者情報(氏名、体重、性別、年齢、血清クレアチニン値、クレアチニンクリアランス、透析情報)、処方情報(投与量、投与間隔、処方コメント、病棟・科名、処方医師名)、算出した目安投与量、過去の処方履歴を表示させ、チェックシートとして出力するようにした。
    【運用】
    当院では、午前午後の2回注射セットを行なっている。チェックシートは、午後の注射セット後に発行し、患者情報・処方情報・算出した目安投与量等をもとにして一次チェックを行なうようにした。
    また、チェックの結果に応じて、塩野義製薬株式会社の解析ソフト(SHIONOGI-VCM S_edition Ver1.00 for Windows)を用いてシミュレーションを行なうようにした。
    【考察】
    チェックシステムを使用することにより、注射個人セット・服薬指導の有無によらず全患者を対象にした標準化した一次チェックをすることが可能となった。
    今後は、抽出からシミュレーションまでチェックシステム上で行なえるようにし、より簡便で質の高いシステムにしていきたい。
    また、病棟業務との連携、併用薬の影響など検討を加えていくことで、より信頼性の高い情報提供を行なえるようにし、薬剤の有効性・安全性の向上に努めていきたい。
  • 永木 寛之, 伊藤 美智子, 市岡 秀介, 津山 いずみ, 西尾 政則, 安藤 操, 山瀬 裕彦
    セッションID: 2G06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉インスリン製剤は患者が医療行為を行うという特殊な製剤であり、患者個人にゆだねられる部分が大きい。インスリンの自己注射は手技によって血糖コントロールが大きく左右される。当院では平成16年3月からペン型インスリン製剤の切り換えを行なった。これを機に再指導を行ない、指導手順の見直し・手技の難解個所を把握する目的で調査を行なった。又、患者の年齢・使用経験年数によって手技手順の正解率が左右されるかについても着目し検討した。
    〈対象〉平成16年6月-9月までの4か月間、当院外来で処方された患者を対象とした。インスリン製剤使用患者数216人、薬局指導患者数116人のうちバイアル型インスリン製剤からの切り替え及びインスリン製剤を初めて使用する患者を除く109人(男:女 54:55・平均年齢63.6才)を対象とした。
    〈方法〉チェックリスト(注射の準備・空うち・単位設定・注射の仕方・注射終了後)に従い、正解・不正解の判定を行なった。
    〈結果〉図1・図2を結果とする。
    〈考察〉年齢別評価においては、高齢者になるにつれ正解率の低下が確認された。これは単に手技の複雑さだけでなく、加齢による身体機能低下・理解力の低下も理由として考えられる。核家族化が進み高齢者の自己管理が増えている為、高齢者には特に繰り返し指導する必要があると考えられる。使用経験年数別評価にいたっては、使用経験年数によって差は見られなかった。しかし注射の仕方は対象者全てにおいて低下が見られた。これは指導者側が患者の難解箇所にポイントをおいて指導が行われていない為起きた結果と思われる。再指導においてはポイントを分析し患者個人にあった説明が効果的だと思われる。図1 図2
  • 市村 美智子, 大谷 俊裕, 椿 浩之, 大和田 順子, 常盤 英文
    セッションID: 2G07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>当院では、外来インスリン自己注射施行患者に、医師からの指導依頼書に基づき、手技指導を行なっている。インスリン療法において、患者のQOLは重要な因子の一つであると考えられる。一昨年に発売となった持効型アナログ製剤ランタス注カート300(以下、ランタスと略す)は、1日1回の注射で、ほぼ一日にわたり生理的なインスリン基礎分泌のパターンを再現できるため、患者のQOLを向上させることが可能である。しかし、緊急安全性情報にて、過量投与の危険性について喚起され、またカートリッジの交換においてもデバイスの操作法は簡便とはいえない。ランタス導入に伴い、患者のQOLを踏まえた指導方法を検討することを目的として、使用実態とHbA1c値の変化について調査したので報告する。
    <方法>当院において、平成16年3月から6月までにランタスに変更となったインスリン自己注射施行患者20名(年齢21歳-69歳)を対象に、1.導入後(22日-36日経過)の手技の評価、2.導入後(22日-36日経過)のQOLと誤操作の関係、3.HbA1c値(導入時と導入6か月後)の変化とQOLの関係について調査を行なった。
    <結果>手技の評価においては、基本的な操作であるインスリンの残量を確認しない.注射時にダイアルを押し込んだまま10秒待てないなどの患者が多く見られ、また使用中のインスリンカートリッジを本体から外し、再装着して使用している患者が2名いた。
    導入後のQOLと誤操作の関係においては、インスリン治療が患者のQOLに与える影響を測定するための質問表(ITR-QOL)を用いて評価を行なったところ、QOLの高さを示す総合スケールが高い患者は低い患者に比べて、誤操作の割合が低かった。中でも感情スケールの低い患者においては誤操作の割合が高くなった。感情スケールにおいては、基本的な操作ができない群では、できる群に比べて糖尿病治療のために制約される時間が多く、またインスリンを打つことが気になり負担であると強く感じていることが解った。
    HbA1c値の変化とQOLの関係においては導入時と導入6か月後のHbA1c値を比較したところ、20人中16人はHbA1c値に改善が見られた。ITR-QOLを用いて評価を行ったところ、総合スケールが高い患者は低い患者に比べてHbA1c値が改善する傾向を示した。
    <考察>今回の調査より、適正使用と良好な血糖コントロールには、患者のQOLが影響していることが解った。我々は、患者のQOLを高めるための指導をすることにより、良好な血糖コントロールが得られるものと考える。また、基本的な操作がクリアできない患者に対しては、繰り返しの指導が必要である。
     今回の調査・結果を踏まえ、今後も更により良い指導を行なっていきたい。
  • 熊木 昇二, 岡沢 香津子, 渡辺 英理子
    セッションID: 2G08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】当院では98年6月より新GCPに対応する治験受け入れを開始し、当科は99年11月より治験を受け入れてきた。今回これまで当科で受け入れた治験の実施状況を調べ、問題点を明らかにすることを目的とした。
    【対象と方法】99年11月から2005年3月までに当科で受け入れ、エントリー期間が終了した治験は12治験であった。内訳は、第II相前期試験2治験、第II相後期試験1治験、第II/III相試験2治験、第III相試験5治験、長期投与試験2治験であった。このうち対象薬にプラセボが含まれていたものは7治験であった。対象疾患は、骨粗鬆症が4治験、関節リウマチが5治験、深部静脈血栓症が3治験であり、そのうち急性疾患の治験は骨粗鬆症の新鮮脊椎圧迫骨折を対象とした1治験だけであった。当院では医師による診察中に治験対象患者をスクリーニングすることを原則としている。すなわち、まず医師が診察中の患者に対し診療録より適格性を確認する。おおむね適格であると判断できた患者に対し、治験の概要を口頭で説明する。そこで治験に興味を示した患者に対し、同意説明文章を用いた治験説明日を予約する。あわせて当院のCRCに連絡し、選択基準の合致、除外基準への抵触の有無、併用薬剤などを確認する。問題のないことが確認できた患者に対し、治験説明日に同意を取得する。除外基準に抵触した患者には電話等で治験説明日の予約を解消する。
    【結果】契約症例数は155名であり、同意取得数は132名であった。そのうちエントリーできた患者は119名であり、実施率は76.8%であった。実施率を各相別で比較すると、第II相前期試験は契約症例数16名に対し同意取得数7名、エントリー数4名であり実施率は25.0%であった。第II相後期試験はそれぞれ20名、19名、18名で実施率は90.0%、第II/III相試験はそれぞれ45名、42名、39名で実施率は86.7%、第III相試験はそれぞれ58名、51名、45名で実施率は77.8%、長期投与試験はそれぞれ16名、13名、13名で実施率は81.3%であった。対象薬のプラセボの有無で比較すると、プラセボが含まれていなかった5治験では契約症例数48名に対し同意取得数40名、エントリー数35名であり実施率は72.9%であった。一方プラセボを含んだ7治験ではそれぞれ107名、92名、84名で実施率は78.5%であった。急性疾患を対象とした1治験では、契約症例数8名に対し同意取得数4名、エントリー数はわずかに3名で実施率は37.5%にとどまった。同意取得後エントリーできなかった13名の内訳は、同意撤回が4名、同意取得後のスクリーニング検査で選択基準に合致しなかったものが4名、除外基準に抵触したものが5名であった。
    【結論】当科における治験実施率は比較的高かったが、第II相前期試験と急性疾患を対象とした治験において実施率が極端に低かった。またプラセボの有無はその実施率に影響をしていなかった。
  • 成瀬 加代, 川井 正光, 三宅 芳男, 岡本 妙子, 神谷 勝, 平野 喜代実
    セッションID: 2G09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】当院では平成9年7月より薬剤科を治験事務局とし、薬剤師が治験コーディネーター(CRC)として治験に参加している。治験は臨床試験という性格上被験者の自由意志が尊重されなければならず、その為同意取得は容易ではなく目標被験者数の確保は困難をきたすことが多い。今回、産婦人科における閉経後の女性を対象とした骨粗鬆症の被験者募集において新聞広告を利用した事例について報告する。<BR>【方法】地方紙の全三河版(約50万部)に宣伝広告をし、コールセンターにて受付した。<BR>【結果】コールセンターへの問い合わせ電話総数 39名 〔図1〕<BR>【考察】今回の治験参加者は、産婦人科医師による通常診察において1年間スクリーニングし、同意説明を依頼された総数18名のうち3名であったのに対し、新聞広告後約1か月間でコールセンターへの問い合わせをした総数39名のうち1名であった。問い合わせ電話総数は当初予測を下回る結果となったが、これは今回広告を掲載した地域に農村部が多く保守的な地域性によるところが大きいと推測され、名古屋市近郊地域に掲載した方が良かったのでないかと考える。また、今回は被験者登録期間の締切り間近という事から1回限りの掲載であったが、もう少し早い時期から数回の広告掲載をすることにより更に多くの治験参加者が見込めたのではないかと考える。被験者募集の効果として、広告掲載の方法は掲載前約1年間で1名の治験参加者数に対し、掲載後約1ヶ月間で1名と大きかったと考える。<BR>【まとめ】最近マスメディアを利用した治験参加者募集が増えつつあるが、当院における今回の試みにおいても新聞広告という手段は有効であると感じた。今後の被治験者数確保においては早期からポスター掲示と広告掲載を併用する等の手段も検討して行きたい。
  • 青山 真季, 冨田 敦和, 前田 直希, 羽田 清, 沖 健次, 本多 鋭孝
    セッションID: 2G10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】
    近年、経管栄養療法を施行する患者が増加傾向であり、薬物療法を行なう場合、錠剤・カプセル剤は手間と時間を費やして粉砕又はカプセルをはずして調剤を行なっているのが現状である。そこで、粉砕調剤に代わる『簡易懸濁法』という、簡便かつ有用な方法を得たので、薬剤師及び病棟看護師における業務の効率化を目指し、『簡易懸濁管理システム』を構築し、臨床使用したので報告する。
    【簡易懸濁法】
    じほう社刊『経管投与ハンドブック』を参考にした。
      1. シリンジに薬剤を入れる。
      2. 温湯(約55度)20mLを吸引する。
      3. 10分間放置後、崩壊・懸濁状態を確認した後、与薬する。
    【簡易懸濁管理システム】
    患者IDを入力し、患者情報、処方内容、簡易懸濁の可否、投与方法を記載した『手引き書』を発行する。簡易懸濁の可否は、『経管投与ハンドブック』やインタビューフォーム、メーカーからの得た情報を基に判定し、薬品マスタを作成した。
    【調査・検討事項】
    1、手引き書に従い調剤した場合の薬剤師の調剤業務と病棟看護師の手技の一元化について検討した。
    2、簡易懸濁法導入後3か月間(平成17年1月から3月)における粉砕指示処方箋のうち、簡易懸濁法を用いた調剤が可能である患者とそのまま粉砕調剤の患者の処方箋枚数について調査した。
    3、病棟看護師に本法についてのアンケート調査を実施した。
    【結果】
    1、システム化し手引き書を作成することにより、薬剤師が簡易懸濁の可否の判定を迅速かつ一律に行なうことができた。又、本法では調剤業務の簡略化及び調剤時間の大幅な短縮を図る事が出来た。病棟看護師においては、手引き書を参照に与薬を行なうため、手技の一元化を図る事が出来た。
    2、粉砕指示処方箋256枚中、本法を用いた調剤が可能となった処方箋は136枚(約53%)であった。
    3、看護師の評価として、セット時間の短縮、以前と比較して正確に投薬できるなど、簡易懸濁法の評価は良かった。
    【考察】
    以前と比較して、粉砕指示の約半数において本法が可能である点や調剤時間の短縮により業務の効率化を図ることができた。看護師においては、セット時の薬剤識別の簡便化及びその際に薬剤をこぼしてしまうことがある点などの改善により、正確な投薬が可能となった。又、中止など医師の指示変更の際も柔軟な対応が可能となり薬剤の有効利用につながった。
    タガメットは細粒の溶解性が悪いため、錠剤で本法を用いた方が簡便であるという特例があることが判った。又、薬価について、散剤・水剤よりも錠剤の方が安価であるものが多く、療養型病床においては本法を用いる方が治療にかかる薬剤費を軽減できることも判った。
    【結語】
    医師、看護師の協力体制により薬剤科と病棟の両サイドにおける業務の効率化を図ることができた。今後においては、本法の在宅患者への導入の可能性について検討していきたい。
  • 岩井 友香里, 大野 愛, 三浦 崇則, 勝見 章男, 加藤 智則, 伊藤 達也, 小野 芳孝
    セッションID: 2G11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     サリドマイドは、鎮静・睡眠薬として世界中で使用されたが、胎児寄形という大きな薬害を引き起こし、販売が中止された薬剤である。近年、アメリカで難治性多発性骨髄腫に対し治療効果があると報告され、患者の個人輸入によりサリドマイドが使用されている。しかし、その管理は必ずしも適正であるとはいえず、再びサリドマイドによる被害が発生する危険性が否定できない状況であり、昨年12月に、厚生労働省より「多発性骨髄腫に対する、サリドマイドの適正使用ガイドライン」が出された。当院では、それ以前からサリドマイド治療がスタートしており、我々もサリドマイドの管理と運用に積極的に関わってきたので、その運用方法と現在の状況を報告する。

    【運用方法】
     サリドマイドが患者の輸入手続により手元に届いたら、すぐに薬剤・供給部門の専用の保管場所に保管し、サリドマイド管理用ファイルを作成する。管理用ファイルには、患者名、患者ID、生年月日、管理ファイル作成日、作成者、依頼医師名、入庫日、入庫数、ロット番号、残数を記入している。サリドマイドは麻薬と同等の扱いで調剤や受け渡しを行ない、常に施錠された場所に保管するなど厳重に管理している。また、サリドマイドによる治療は入院中に開始されるため、病棟薬剤師が服用前に服薬指導を行なうこととした。その際に、用法、用量、副作用に加え、サリドマイドの社会的な背景をお話し、服用中の飲み残しがあった場合、服用が中止になった場合は必ず薬剤・供給部門への返却をお願いした。また、自宅での管理方法の指導も行ない、誤って第三者がサリドマイドを服用することがないように十分に説明を行なった。

    【実際の状況】
     現在内服中の患者は、体調不良等により飲み残しが発生した際に、薬剤・供給部門の窓口に飲み残し分をすべて返却している。患者自身がサリドマイドの返却の意義を充分に理解しており、不要なサリドマイドはすべて回収され、この薬物が適正に管理されているといえる。

    【おわりに】
     サリドマイドを薬剤・供給部門で厳重に管理し、患者へ十分な説明を行なうことで、他に薬害を出すことなく安全に治療を進めることができている。過去の経緯から、サリドマイドが適正に使用されないことで、全面的に使用が制限されてしまう事態を招く可能性もある。サリドマイドの承認を待つ患者も多い中、その適正使用に薬剤師が関わる意義は大きいと考える。今回の経験を生かし、他の薬剤の適正使用にも薬剤師が積極的に関わり、患者の治療の選択肢の幅を広げていけたらと思う。
  • 安藤 満
    セッションID: 2H01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    アメリカ合衆国の離脱とロシアの未批准により長い間未発効であった京都議定書が、昨年11月のロシアの批准により、2005年2月16日発効することとなった。地球温暖化抑制という非常に困難な課題を、国際的協同により達成しようとする画期的な第一歩が始まることとなる。石油資源の主要な産出国が集中する中東は、依然として不安定なままであり、前途は決して楽観できる状況にはない。しかし手を拱いて温暖化を更に加速させる事態は避ける必要があり、問題は山積しているが進みながら考えるしかない。
    現代は豊富な化石燃料に支えられた人類史の中でも特異な時代と考えられるが、現代の延長線上に未来があるという錯覚を払拭する時に来ている。顕在化している現象の中で、地球温暖化と石油減耗がある。いずれの問題にも安易な解決策は無く、予測の科学的正確さが問われる時期に来ている。1990年、気候変動に関する政府間協議(IPCC)の第一次評価委員会に参加する中で認めた「地球温暖化に伴う健康リスク」(日農医誌39、907-913、1990)を発表した当時は、地球温暖化が起こることへの疑念が多く出された。温暖化が確実に進行しつつある現在、そのような疑念は払拭されている。
    南極の氷河の氷床に閉じ込められた過去の大気のガス分析によると、産業革命以来大気中二酸化炭素(CO2)濃度の増加が顕著であることが判明している。後述するように化石燃料の使用による二酸化炭素の増加は、地球温暖化の主要な原因となっているが、その背景には増大する世界人口と発展する世界経済がある。現在進行し続けているエネルギー資源の大量消費と、熱帯林を始めとした森林伐採による生態系破壊が、CO2のさらなる大量放出へと結びついている。
     地球の温暖化という未知のリスクを避け次世代の環境を守ることは大切であるが、将来の世代に核廃棄物汚染のリスクを負担させることは、現世代の身勝手な論理といえる。ドイツや北欧では原子力発電を中止し自然エネルギーの急速な開発を進めている。日本においても自然エネルギーの拡大と省エネルギーの徹底は、総合的な意味において現世代のなし得る最善の手法と考えられる。世界各国において自然エネルギー開発が急速に進んでいるが、特にデンマーク、ドイツ、オランダを始めとしたヨーロッパ諸国において積極的な利用拡大が図られている。これら諸国では化石燃料から自然エネルギーへのエネルギーシフトを図るため、税制上の大幅な優遇処置を講じている。日本においても農村は自然エネルギーの豊富な環境に恵まれており、石油消費抑制のため自然エネルギーの積極的利用が緊急に必要とされている。
  • 関口 鉄夫, 臼田 誠
    セッションID: 2H02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉
     N町は相模湾に近く、「気候温和に、景勝に秀で、山の幸海の幸にも恵まれた不老長寿の里として(中略)、ここを終生の地として居を構えた人たちも多い」(N町郷土史)地域で、「湘南リビエラ」と呼ばれている。
     調査対象となった団地は相模湾から北へおよそ2kmの位置にあり、標高100から150mの台地斜面の沢に立地している。居住者の多くは首都圏への通勤者で、居住年数は4から12年程度である。
     団地上部斜面に同町の中規模の一般廃棄物焼却施設(固定式バッヂ炉・8時間操業)と小規模な管理型最終処分場がある。両施設とも廃棄物処理法に基づく規制基準は満たしているが、団地住民からは「悪臭がひどい」、「庭木や家が汚れる」などの苦情が絶えず、一部住民は人格権に基づき、同焼却施設の操業禁止を求める裁判を提訴している。
    〈調査とその方法〉
     2002年10月、同団地の植物の状態、金属類の錆の状態、降下物に関する調査を実施し、粗大ばいじんの降下を確認。特異な植物の枯死や金属類の錆を観察した。
     焼却施設周辺を200mのブロックに区切り、それぞれのブロック内の植物の葉を採取し、顕微鏡によってその種類を同定し、粒度(20μ以上)による分布図(個数)を作成した。その結果、本地域では同施設を中心に大量の降下煤塵が確認されきわめて劣悪な生活環境にあることが分かった。また、植物の異常の分布、金属類の錆に一定の傾向があることが推定された。
     これらの調査結果を元に、同団地自治会は住民の健康状態に関する「自覚症状調査」(アンケート法)を農村医学研究所に委託することを決めた。
     この調査の一環として、同施設操業状態と排出ガスの流れ(地表風の流れ)を検証した。
     同施設の能力については、公表された施設図面と住民の観察記録、地表風は実測・地形解析とアンケートの生活環境に関する回答の分布から検討した。
    〈結果〉
    (1) 同焼却施設は大量のミスト、ばいじんが大量に排出される構造である。
    (2) 焼却施設からの排出ガスは、地形によってどんな風向の場合も団地内に流れ、団地下部の凹地にはガスが滞留する。
     以上の点にかんがみ、同焼却施設が団地住民の生活や健康に強い影響を与える可能性があると断定した。
  • 臼田 誠, 広澤 三和子, 前島 文夫, 西垣 良夫, 矢島 伸樹, 夏川 周介, 関口 鉄夫
    セッションID: 2H03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉ミカンや落花生の栽培が盛んな神奈川県N町の一般廃棄物焼却施設(し尿焼却と最終処分場も併設)周辺住民は、長年にわたる本施設からの悪臭、騒音や煙ならびに粉塵などによる生活環境や健康への不安を募らせていた。さらに、近隣自治体からの生ごみを受け入れたバイオガス発生施設を本施設に増設するという企画が浮上し、本施設直下にあるM自治会では現在の本施設による周辺環境ならびに住民健康への影響を調査したいとの依頼が当研究所にあり、調査を実施した。その結果の内で環境影響については前演者が述べたので、ここでは周辺住民への健康影響について報告する。
    〈調査対象および方法〉2004年9月、上記の一般廃棄物焼却施設直下にあるM自治会全住民(622戸、2200人)を対象に、生活環境の変化や現在の自覚症状などを問う調査票による健康アンケート調査を実施した。対象住民の居住地が本施設から900m以内という近距離にあるため、対象住民全体を一つの集団としてデータ処理を行なった。そして、得られたデータを当研究所が実施した以下の2つの焼却施設周辺住民健康影響調査データと比較し、本対象住民の状況を判断することとした。比較データ1:埼玉県T市の県下最大産廃焼却施設周辺住民調査(対象994人)、比較データ2:長野県K町の民間産廃焼却施設周辺住民調査(対象4,443人)
    〈結果〉アンケートの回収率は92%と高率であった。本対象住民では都市圏への通勤のために、居住地での滞在時間が8時間以内の割合が多かった。生活環境の変化では、「臭いがする」との回答が64%と最も高く、これは比較データよりも有意に高い値であり、これが本施設による影響の特徴と考えられた。「窓ガラスや庭木が汚れる」などの粉塵による影響はT市の焼却施設から1000ー1500m地域住民と同程度の訴えがあった。
     本対象住民の平均年齢は2比較住民よりも若く、現在治療中の病気では最も多い高血圧症が4%以下と比較2住民よりも有意に低かった。具体的な24項目の自覚症状では、「喉がいがらっぽい」「風邪でもないのに咳が出る」「目がしょぼしょぼする」「皮膚のかゆみ」など多くの項目で、本対象住民の訴え率は、比較したT市の焼却施設から1000mー1500m地域住民や長野県K町の焼却施設から400mー800m地域住民の訴え率と同程度あるいはそれ以上であった。また、24症状を喉・呼吸器・眼・皮膚・頭の6症状群にまとめて比較すると、その傾向がより明らかとなった。
    〈考察〉N町の一般廃棄物焼却施設によるM自治会住民への健康影響がダイオキシン騒動の中心地であるT市の焼却施設周辺住民と同程度であり、しかもM自治会住民の多くの居住時間が少ない状況を考えると、本施設による影響は深刻であると考えられる。
  • 矢島 伸樹, 佐々木 貞治, 飯島 秀人, 前島 文夫, 西垣 良夫
    セッションID: 2H04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <研究目的> 農業体験が身体機能に与える影響を、健康指標データとの関連により解明し、農業体験が有する高齢者の身体機能の低下軽減効果について検討する。農業体験と健康の結びつきを解明することにより、都市と農村の対流促進モデルを提言する。
    <方法> 本研究の目的に添って、農業との関わり方の差によって生活状況(食事や嗜好品)、血液検査データに差があるかどうか検討するため調査を行なった。長野県厚生連健康管理センターのヘルススクリーニング受診者で、1998年または1999年とそれぞれの4年後にも受診した初年度65ー74歳の住民を対象者とした(合計:女性3049名、男性2161名)。検討においては、年代を65ー69歳、70ー74歳の2つに分け、さらに農業との関わり方の差により、対象者を農業非従事者と農業に1日3時間以上従事している人、さらに農業非従事者で花・野菜作りを趣味とする人の3つのグループに分類した。このように分類した6つのグループで、生活状況では喫煙、飲酒、食材摂取状況、検査データでは、高血圧、糖尿病、高尿酸血症、高脂血治療、血中脂質の比較検討を行なった(開始年度と4年後)。
    <結果の概要> (1)農業をしない人と農業に1日3時間以上従事している人の健康指標の比較においては(開始年度と4年後)、農業をする人の群は農業をしない群と比較し、全般に良好な食生活習慣、動脈硬化危険因子(高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症)が少ない傾向が認められた。食材摂取においては、65ー69歳において男女とも群間に有意差が認められ、農業をしない群において摂取食材の種類が少ない人が多かった。また検査データに有意差を生じた項目は男性の糖尿病、高尿酸血症、女性の高脂血治療者、男女の血中脂質等である。
    (2)非農家で花野菜作りを行なっている人については、ほとんどの項目において順位が農業者と非農家で花野菜も作らない人の間に入っており、農業をまったくしない人に比べ、生活状況においては食材摂取状況が良好で、検査データにおいては動脈硬化危険因子がやや低い傾向が認められた。
    (3)農業を3時間以上している群では、男性、女性、開始年代を問わず、食材摂取状況が良好であり、高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症の検査データにおいても、農業をしない群に比べて良好と言える傾向であった。要因については今後の検討課題であるが、これらの疾病のリスクファクター、予防対策として、食生活習慣、運動習慣が大きな比重を占めることから、日常の農業労働がこれらの疾病予防に有益に作用した可能性があり、注目に値する。
    本研究は、独立行政法人農業工学研究所の交付金プロジェクト研究の一環として実施した。研究の推進に当たっては、農業工学研究所、外部評価委員の方々から有益な助言をいただきましたことを深謝致します。
  • 中山 大輔, 三浦 利子, 杉田 淳平, 菊池 みずほ, 小林 栄子, 西垣 良夫, 井出 久治, 杉山 章子
    セッションID: 2H05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>長野県八千穂村は全国でも先駆的な試みとして1959年に「全村健康管理」を開始した。この健康管理事業を基盤として生まれた、住民による活動について、その形成と発展の過程を明らかにし、住民主体の活動の進展を可能にする要件を検証したので報告する。
    <方法>(1)2003年8月ー2004年9月にかけて複数の住民・行政職員・専門職員から、面接による聞き取り調査を実施した。聞き取った内容は、録音後、遂語録としておこした。倫理的配慮として、聞き取り調査対象者へ研究目的・録音および検討方法について説明し了承を得た。(2)八千穂村における個人・諸団体の実践記録等の一次史(資)料を収集・整理し、活動過程を時系列にまとめて年表化した。さらに個々の事実関係の連関を示すアロー図を作成した。(3)聞き取りと史(資)料の検討から得られた内容を、行政・専門職が住民を支援するために用いたエンパワーメントの方法に着目して分析し、住民主体の活動の進展を可能にする要件を検証した。
    <結果>(1)1957年に、行政・専門職の働きかけで誕生した「栄養グループ」は、関係者の支援を受けながら実践を重ね、1970年代後半には、住民の発案による組織を立ち上げ、栄養や食生活にとどまらない広範な問題に取り組むようになった。(2)住民は、生活に密着した活動の中から地域に潜在していた保健・福祉のニーズを掘り起こし、問題解決のための方策を試みるとともに行政に対応を求め、新たな社会資源の創出を促した。
    <考察>住民主体の活動の進展を可能にする要件として、(1)行政・専門職の住民に対するエンパワーメントが挙げられる。モノ・カネ・場所といったハード面の環境整備とともに、状況に応じて適切な助言や働きかけを行なうソフト面からの支援が、関係者の連携のもとで有機的に組み合わされて実践された。行政・専門職の多くが村の住民であり、地域の一員として人々と協働したことが、活動の的確性や継続性を生み出した面も見逃せない。(2)住民の組織化も活動の進展に大きな役割を果たした。行政・専門職が、婦人会や公民館活動で生まれたグループなどの既存の地域集団を活用しながら、人を育てる組織づくりを行ったことによって、自主的な組織形成を目指す住民の力が引き出された。(3)重要な要件として忘れてはならないのが、「全村健康管理」事業で培われた「基盤」である。健康管理事業の中で形成されてきた関係機関・関係者相互のネットワークの存在が、エンパワーメントを実効あるものにし、事業を通じて住民が獲得した「健康意識」が、行政を動かすまでに活動が発展する原動力となったのである。 地域におけるヘルスプロモーションは、住民による主体的活動なしには成立しない。八千穂村の実践から、行政・専門職による適時・適切なエンパワーメント、活動を有効に機能させる組織、そして活動の舞台となる「基盤」の整備といった住民主体の活動実現に欠かせない諸要件を検証することができた。
  • 金沢 敏勝, 藤本 吉範, 重光 陽一郎, 大田 政史, 奥田 晃章
    セッションID: 2H06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】骨粗鬆症性椎体骨折は日常診療上よく遭遇する疾患であるが、一般的に安静臥床あるいは外固定等の保存療法によって良好な治療成績を獲得できる。一方、椎体骨折後に骨癒合が得られず無腐性壊死を生じた場合、本病態は保存療法に抵抗性であり、治療に難渋することが少なくない。近年、経皮的椎体形成術(percutaneous vertebroplasty,以下PVP)が高齢者の骨粗鬆性脊椎椎体骨折に応用され、低侵襲性で速やかに除痛が得られる等の利点が報告されている。今回、骨粗鬆性椎体骨折後無腐性壊死病変に対して行なったPVPの有効性とその問題点を検討した。
    【対象、方法】2003年9月より2005年2月までの間に、当科でPVPを施行した骨粗鬆性脊椎骨折56症例(男性15例,女性41例)を対象とした。手術時年齢は63から91歳(平均77歳)、追跡調査期間は2か月から1年6か月(平均10.5か月)であった。Th8からL5椎体にPVPを施行し、1椎体にPVPを行った症例は42例、2椎体は11例、3椎体は3例、計73椎体にPVPを行なった。椎体圧迫骨折に伴う遅発性脊髄麻痺を5例に認め、Frankel分類はCが4例、Dが1例であった。術前検査として腰椎骨塩定量、脊椎X線動態撮影、reconstruction CT、ダイナミック造影MRIを行なった。PVP手技は全麻下に腹臥位として、14G骨生検針を両側椎弓根から刺入して、椎体造影を行なった後に、polymethylmethacrylate(以下PMMA)骨セメントを椎体内に注入し、翌日から歩行を許可し、術後3日目に退院とした。患者自身に腰痛をVisual Analog Scale(以下VAS)を用いて10段階で評価させ、術前と術後で比較した。 術後に脊椎単純X線およびreconstruction CTを撮影し、骨セメントの漏出の有無などを確認し、術後成績との関連を検討した。
    【結果】使用したPMMA量は,0.5から12ml(平均3.1ml)であった。術前のVASは8から10(平均9.4)から、術後0から8(平均1.7)と有意に改善した。最終経過観察時のVASは、0が20例、3以下が33例、4以上が3例であった。遅発性脊髄麻痺がみられた5例は、術後Frankel分類Cが1例、Dが3例、Eが1例となり、1段階改善が4例、不変が1例であった。術後、軽微な外傷にて隣接椎体に圧迫骨折が生じたのは、12例13椎体であった。骨折が発症した時期は術後3日目から7か月の間であり、5例が術後10日以内であった。PMMA骨セメントが椎体外に漏出した症例を13例に認めたが、脊柱管にPMMA骨セメントが漏出した症例は無かった。9例に椎間板内への漏出を認めたが、隣接椎体の骨折を認めなかった。
    【考察】PVPは脊椎椎体無腐性壊死に対して速やかに十分な除痛が得られ有効な治療法と考えられた。遅発性脊髄麻痺の症例では麻痺の改善が見られる症例が存在した。一方、隣接椎体の圧迫骨折が約21%に生じ、PVPの問題点と思われた。PMMA骨セメントの漏出による、合併症は見られなかった。
  • 前原 秀二, 黒佐 義郎, 小島 秀治, 相澤 充, 萩尾 慎二, 青山 広道, 島谷 雅之, 多川 理沙
    セッションID: 2H07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    〔緒言〕一般に椎間板ヘルニアは線維輪の亀裂部を通って内部の髄核が膨隆、脱出した状態を指す。椎体骨端核の成長障害(隅角解離)を伴った腰椎椎間板ヘルニアは発症の要因、手術法など一定の見解が得られていない。そこで、当科で経験した症例を検討し、考察を加えて報告する。
    〔対象〕当院において2000年5月から2005年3月まで、腰椎椎間板ヘルニアの手術を99例に施行したが、9例(9.1%)に隅角解離を伴っていた。その内訳は13から50歳(10代:3例、20代:4例、30代:1例、50代:1例)であり、性別、スポーツ活動、職種、腰痛歴、症状、高位、術式について検討する。
    〔結果〕男性4例、女性5例が隅角解離を伴っていた。学生(4例)ではスポーツ活動を活発に行っており、就労者(5例)においてもスポーツ歴があり、立位時間の長い職種が3例であった。腰背部痛の既往があり、スポーツ活動後あるいは就労後に発症していることが大半だが、1例は投球動作後に腰背部痛を自覚し発症している。高位別には、L4/5が5例、L5/Sが4例となった。術式は、両側拡大開窓4例、片側開窓3例、片側椎弓切除1例、内視鏡下ヘルニア摘出1例であった。骨片の処置を9例中3例に行った。骨片はエアードリル、キューサーなどを使用し切除した。何れも部分的切除によって神経根の可動性を得ることができた。また、術中脊髄造影を行ない、神経根の描出を確認した例もあった。術後経過期間は1か月から2年5か月であるが、何れも経過良好である。
    〔考察〕隅角解離はスポーツや外傷などによる外力が急性、あるいは慢性の反復する機械的刺激となって、小児期の脆弱である軟骨及び骨性終板の間に亀裂を生じ、さらに同部に外力が加わると椎間板内圧が上昇して線維輪とともに隅角を後方へ移動させ生じるとされている。しかし、椎体終板骨折との説や、外傷とは無関係であるとの報告など一定の見解が得られていない。好発部位はL4下縁、S1上縁とされている。
     隅角解離を伴った腰椎椎間板ヘルニアの手術は骨性成分の除去が必要な場合、十分な視野の確保が重要となる。そのため、部分的あるいは一塊に椎弓切除を行ない隅角摘出する方法や、椎弓切除後に後方固定を行なう報告もある。また、隅角摘出が困難な場合、打ち込みを行なったり、処置しないとの報告もあり統一された見解はない。
     そこで当科の症例につき検討するとスポーツ歴や、活動性の高い例が大半である。また、若年期に腰痛歴があり、何らかの外力が誘引となっていることが考えられる。高位はL4下縁3例、L5上縁1例・下縁2例、S1上縁が3例であった。術式選択にあたり、十分な術前、術中の判断を要する。術前にヘルニア、骨片が神経根に及ぼす影響を推測し、開窓範囲を決定した。また、ヘルニア摘出後の神経根の可動性により骨片摘出の必要性を判断した。経過観察期間が短い例もあるが良好な成績を収めている。
  • 中村 恒一, 谷川 浩隆, 最上 祐二, 君塚 康一郎
    セッションID: 2H08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    今回われわれは、術後早期の骨折を来たしたLocking humerous spoon plateの1例を経験したので報告する。症例は78歳女性で、平成16年6月17日交通事故にて受傷した。同日当院に救急搬送となった。現症:身長158cm、体重58kg、右利き。右肩の腫脹痛みあり。Neurovascularの損傷は認められなかった。初診時レントゲンでは右上腕骨の頚部骨折、および骨幹部の粉砕骨折が認められた。受傷後1日に全身麻酔下にて、Delto-pectoral approachからのLocking humerous spoon plate(LHSP)による内固定を施行した。受傷後4日の時点でベットサイドにて右肘をぶつけるようについてしまい、以後右上腕の腫脹、痛みが増強。レントゲンにて右上腕骨遠位骨片に縦方向の骨折線が認められた(図表1)。骨折線は遠位2本のロッキングスクリュー刺入孔を通って縦に走っていた。髄内釘による再手術を施行し、その後の経過は良好である。
    【考察】上腕骨近位骨折に対する従来型のプレート固定システムは、スクリューの把持力を用いた、プレートと骨片間の摩擦力でプレートと骨片を固定するものであり、皮質骨の薄い上腕骨頚部、特に骨質の低下している骨粗しょう症患者では強い固定力は期待できない。 Locking compression plates(LCP)は従来型のプレートと比較し、プレートとスクリュー間がロックしてAngular stabilityを有することにより、骨粗鬆症患者、粉砕骨折患者でも強い固定力を得ることが可能である。今回のような術後の外力が従来型のプレート固定で起こった場合はスクリューのLoosningによる骨片の偏位を起こしたであろう。LCP固定ではAngular stabilityを有することにより、外力が直接骨全体にかかり今回のような縦骨折を起こしたものと考えられ、それだけ強い外力であったと思われる。最近の報告では、スライドに示すようなLCPプレートの合併症も散見されている(図表2)。またLocking screwではスクリューの刺入方向に自由度がないため方向を誤りやすいというDemeritも指摘されている。
    【まとめ】術後早期の骨折をきたしたLocking humerous spoon plateの一例を経験した。LCP固定ではAngular stabilityを有し、骨粗しょう症患者でも強い固定力を有するが、術後の強い外力に対してはスクリュー刺入部での骨折を起こすことがある。
  • 石突 正文, 尾澤 英彦
    セッションID: 2H09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】関節固定術は整形外科でしばしば行なわれる手術手技で、関節の破壊が強い場合や変形が強い場合に選択される。一般的な手技は関節面を切除し適合性を良くしてワイヤーやプレートで固定する。われわれは指の遠位指節間(DIP)関節に対して、関節面を操作することなく、指尖より小切開でscrew 固定する方法を開発したので、手術手技および適応・長所・短所などについて報告する。
    【手術手技および症例】開発の経緯:この手技は切断指再接着例に対して行なった。切断指再接着例ではある程度の循環障害が残るため中節骨などの骨接合部の偽関節や遷延治癒が置き易い。この治療として、指先より Herbert screw で固定する方法を用いた。この際、骨折部と共に DIP 関節も伸展位に固定されることになる。再接着指では腱の癒着により DIP 関節の可動域は期待できないため許される手技といえる。この手技により骨折部の癒合が得られたが、レントゲンで経過を追っておくと、関節面の操作をなにも行なっていないにもかかわらず DIP 関節が骨癒合し固定されることがわかった。このような症例を4例5関節経験した。この経験から、変形性指関節症の症例や透析による関節破壊の3症例に対してこの手技を応用した。即ち、指尖から約 5 mm の小切開で指骨針を刺入し、それをガイドとして Herbert screw を刺入して関節を固定する。術後は副子固定することなく、5日後に抜糸し、日常生活に復帰させる。
    【結果および考察】全例に固定部の骨癒合が得られた。再接着例の固定部の癒合は5から15か月と遷延傾向にあった。変形性関節症の固定は6か月で完成した。このように通常の固定術より癒合まで長期間を要するが、その間、日常生活で指を使用させているので不自由の訴えはない。この手技の利点としては、術後すぐ重労働以外の日常生活で指が使えることである。また、欠点として DIP 関節は伸展0°で固定しなければならないことである。
  • 谷川 浩隆
    セッションID: 2H10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年の高齢化社会に伴い四肢体幹に疼痛をきたす運動器の生活習慣病が増加している。厚生労働省の調査によると有訴者の1から3位までは腰痛、肩こり、関節痛という運動器疼痛に独占されている。これらの患者の多くは整形外科を受診するが、身体的検査治療に終始するのみであり背後にある心理社会的な要因までは考慮されないことが多い。このような運動器生活習慣病に対する整形外科領域内での心身医学的アプローチの可能性を検討した。

    【方法】骨粗鬆症、関節リウマチ、変形性脊椎症、頚肩腕症候群など運動器生活習慣病は多い。これらの症例で身体的治療だけでは消失しない疼痛などや並存する抑うつや不安などに対して心身医学的なアプローチを行ない検討した。

    【結果】関節リウマチでは症状の増悪する時期には線維筋痛症を合併する症例が見られた。これらの症例の多くに抑うつ傾向が認められたため、支持的共感的に接しSNRIなどの抗うつ剤などを使用することによりSDSや疼痛VAS、全般VASなどの改善がみられた。これらは関節リウマチの経過中に2次性線維筋痛症をきたしたと考えられた。線維筋痛症の身体症状に対しては器質的原因だけでなく症状の成因に関与する心理社会的な要素を考慮して症状の軽快を導いた。また腰椎症や腰部脊柱管狭窄症などから生じる坐骨神経痛でも疼痛が通常の治療で軽快しない症例に対して家族背景など心理社会的要因からストレスの有無を探り心身医学的な視点で対応し症状の軽快が得られた症例があった。

    【結論】腰痛や肩こりなどの運動器に疼痛をきたす生活習慣病は関節リウマチ、骨粗鬆症、変形性腰椎症、頚肩腕症候群など有病率の多い疾患が多い。これらの疾患では主として器質的病変が原因で疼痛などの身体症状が起こるが、その程度や持続はまちまちであり心理的要素が加わり病状に深く関与することがある。また広く慢性疲労症候群、線維筋痛症や過敏性大腸症候群を含むFunctional somatic syndromeでは心理的要因の強い患者ほど自分の症状を純粋に器質的なものと確信する傾向がある。これらの患者は身体愁訴に拘泥し心理的背景の存在を否定するため心療内科や精神科を受診することはほとんどなく整形外科のような身体科を受診することが多い。さらに身体科医が心理的要因が原因と考え心療内科へこコンサルトを提案しても拒絶されることが多い。このような患者に対して整形外科では器質的疾患を検索治療するという従来の方法論のみで治療されていることがほとんどである。身体的検査治療に専念する治療者の姿勢はFunctional somatic syndromeの患者の期待に応えるものであり良好な医師患者関係が結ばれていることも多いが、時には背景の心理社会的要因への洞察が不十分なため愁訴のとれない症例などを生じている。患者は身体科医による身体的治療を望むのであるから身体科医の診療のなかにこそ心身医学的な視点が必要と考えた。
  • 萩尾 慎二, 黒佐 義郎, 小島 秀治, 相澤 充, 青山 広道, 前原 秀二, 三宅 諭彦, 藤田 浩二, 多川 理沙, 佐藤 智哉
    セッションID: 2H11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
     高齢の大腿骨頸部骨折患者が入院時に熱発を呈することをしばしば経験する。また大腿骨頸部骨折患者の主な合併症として肺炎や尿路感染症が挙げられる。今回、入院時に採取した尿の細菌培養を行ない熱発と尿路感染(腎盂腎炎)との関係を調査した。
    【方法】大腿骨頸部骨折患者を入院時熱発群(術前最高体温38.0以上)と非熱発群に分け年齢、性別、入院時血液検査(白血球数、CRP、好中球%)、尿沈渣による白血球数、尿培養結果、入院時胸部レントゲン像による肺炎の有無、術後最高体温との関連を調査した。
    【結果】調査数15症例(平均82歳、男性1例、女性14例)のうち術前38.0度以上の熱発が見られたのは4例(全て女性、平均78.8歳)だった。熱発群ではCRPが平均3.5と上昇していた(非熱発群は平均1.6)。血液検査の白血球数、尿沈渣による白血球数、胸部レントゲン写真による肺炎像の有無、術後最高体温については非熱発群との差を認めなかった。尿培養では熱発群2例(50%)、非熱発群4例(36.4%)で陽性であり計7例中大腸菌が3例で検出された。
    【考察】大腿骨頸部骨折患者は大多数が高齢者であり、複数の合併症を有することが多い。入院後患者が熱発したとき、その原因として(1)骨折自体による熱発 (2)肺炎 (3)腎盂腎炎などが考えられる。受傷後、臥位が続けば肺炎、腎盂腎炎を併発するリスクは高くなると予想されるが、今回の調査では入院時検査において発熱群と非発熱群との差を認めなかった。その理由として(1)感染症の併発の有無を問わず骨折自体による熱発が多くの症例でみられる (2)入院後早期に手術が施行(平均手術待機日数1.5日)され、その際に使用される抗生剤により感染症が治癒したと考えた。尿培養では一般的に言われているように大腸菌が検出されることが多かった。我々の施設では術後抗生剤としてセファメジンα(セファゾリンナトリウム:第一世代セフェム)を使用しているが、今回の調査中に培養で検出された6菌種のうちセファメジンに感受性がなかったのは1菌種のみであった。
     熱発がないにも関わらず尿培養陽性だった例(無症候性細菌尿)が多くみられたことより、熱発時に細菌尿を認めたからといって熱源の探索を怠ると他の原因の見落としにつながる危険性が十分にあると思われた。
  • 矢野 一郎, 冨田 智子, 村川 和義
    セッションID: 2I01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    背景;鶏卵アレルギーの児は気管支喘息などの合併も多く、そのためにもインフルエンザワクチンの接種が必要である。しかし、ワクチンに含有する鶏卵成分のため、一部にはアレルギーに対する保護者の過剰反応もあり、接種を敬遠している場合、できないと思い込んでいる場合がある。今回、私たちはインフルエンザワクチン接種の重要性を充分説明し、その上で鶏卵アレルギー児を中心に皮内反応を行い,ワクチン接種を行なった。皮内反応はインフォームドコンセントの上でも有用であったので報告する。皮内反応は小倉らの方法に従い、10倍希釈ワクチン液(0.02ml)による皮内注射を行ない、膨疹径、発赤径をもって、陰性、疑陽性、陽性、強陽性とするものである。皮内反応を行なった児は以下の16例である。
    対象;1,鶏卵成分で即時型反応を呈した既往のある児は5例。2,卵白RAST2以上で完全除去をしている児は6例。3,卵白RAST2以上で、不完全除去をしている児は4例。4,その他(前回接種時に腋下リンパ節腫脹)1例。
    結果;1の皮内反応は陰性2例、疑陽性2例、陽性1例であった。ワクチン接種を陰性および疑陽性の4例は全量接種、陽性の1例は分割接種を行った。接種後2日で、重大な副反応は認めなかった。2は陰性3例、疑陽性2例、陽性1例であった。陰性および疑陽性の5例は全量接種、陽性の1例は分割接種を行った。全例、重大な副反応は認めなかった。3は陰性1例、陽性2、強陽性1例であった。陰性の1例は全量接種、陽性の2例には分割接種した。全例、重大な副反応は認めなかった。強陽性の1例は中止とした。4の1例は陽性であったが、分割投与した。
    まとめ;1.今回、私たちは鶏卵アレルギーのある児を中心に皮内反応を行ない、インフルエンザワクチンを接種した。2.即時型反応を起こした既往のある児は陰性あるいは疑陽性が4例、陽性が1例であった。3.RAST2+以上で完全除去中の児は陰性あるいは疑陽性が5例、陽性が1例であった。4.RAST2+以上で不完全除去中の児は陰性1例、陽性2例、強陽性1例であった。5.16例中、陰性あるいは疑陽性は10例で全量接種、陽性が5例で分割接種を行なったが、重大な副反応はなかった。強陽性は1例で接種中止した。6.皮内反応を行なうことにより、鶏卵アレルギーなどのため、予防接種ができないと思っている児に安全に接種を行うことができた。このことは、アレルギー児に予防接種行う場合、インフォームドコンセントを行なう上でも有用と思われた。
  • 水谷 直樹, 小川 理栄子
    セッションID: 2I02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】我々は発熱、両側眼瞼下垂、傾眠傾向、複視、眼振、難聴、大腿部疼痛などの多彩な神経症状で発症したSLEの1例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。
    【症例】10歳3か月女児(平成5年2月19日生まれ)。
    主訴:両側眼瞼下垂、傾眠傾向、複視、眼振、
    家族歴:父方祖母がSLE、
    既往歴:溶連菌感染症の診断で当院小児科にて数回入院治療を受けている。平成14年6月20日-28日にはエコー13型による無菌性髄膜炎で当科にて入院治療を受け全快している。他に特記すべき事項はない。
    現病歴:平成15年5月22日-23日、学校からキャンプに参加している。帰宅後、両眼がかすむ、物が二重に見える、うとうとと眠ってばかりいる、両側眼瞼が下がってしまう、人が言う事が聞こえ難いなどの神経症状を主訴として当科を受診した。症状の改善見られず、5月29日精査、治療目的で入院となった。
    臨床経過:顔面の定型的蝶形紅斑、関節炎、蛋白尿などの典型的な所見は見られなかったが、持続する発熱、白血球減少、補体の低値、抗核抗体および抗DNA抗体陽性、LEテスト陽性を認め、厚生労働省研究班の基準に基づき、眼筋症状を伴なうSLEと診断した。診断後、低Na血症、尿中Na排泄増加、意識障害などの臨床症状、検査所見を認め、SIADHの合併と診断した。直ちに水分制限し、高張NaCl輸液などの治療で回復した。6月13日からメチルプレドニゾロン60mgの点滴静注によるパルス療法を開始した。熱は順調に下がり、1週間後には眼瞼下垂、複視、傾眠傾向、筋肉痛などの神経症状も徐々に改善し、プレドニゾロンは経口投与に変更した。約6週間後にはそれらの神経症状はほぼ消失し、ステロイドの減量を開始した。その後、神経症状の再発もなく、スケジュール通り減量でき、現在プレドニゾロン10mg経口投与中で外来にて治療、経過観察中である。
    【考察】SLEは遺伝的因子に加え、ウイルス感染、免疫学的異常などの多くの因子が関与して、生体内に自己抗体が産生され、多臓器に多様な障害を及ぼす全身疾患である。特に腎障害の有無がその予後を大きく左右するとされ、神経症状としては、痙攣、意識障害、精神障害などが挙げられている。今回、我々は眼瞼下垂、傾眠傾向、眼振、複視などの多彩な神経症状を主訴としたSLEの1女児例を経験した。当初、テンシロンテスト陽性と判定されたため、重症筋無力症の全身型あるいは多発性筋炎合併の疑いと考えられたが、補体の低値、抗核抗体および抗DNA抗体陽性などの所見から、外眼筋麻痺などの神経症状を伴なうSLEと診断した。多彩な神経症状を伴なうSLEは稀で重症な例として文献上散見されるが、その発生機序の詳細については不明な点が多い。本例ではステロイドによく反応して、主要な神経症状は改善したが、その治療、寛解維持は難しいとも言われ、今後も慎重に治療、経過観察していく必要があると考えられた。
  • 武藤 太一朗, 西村 直子, 渡辺 直子, 安 在根, 齋藤 明子, 小山 慎郎, 小川 貴久, 西尾 一美, 中島 伸夫, 尾崎 隆男
    セッションID: 2I03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】左心低形成症候群(HLHS:Hypoplastic Left Heart Syndrome)は左心系の低形成を示すチアノーゼ型の先天性心疾患(CHD)である。無治療ではductal shock、呼吸不全をきたす。生後早期に死亡する最も予後の悪いCHDのひとつであり、治療の進歩にもかかわらず長期生存例は極めて稀である。今回、24歳で死亡し剖検を行ったHLHSを経験したので、病理学的所見を加えて報告する。
    【症例】 24歳男性
    【入院までの経過】 生後1か月にHLHSと診断され、8か月時に両側肺動脈絞扼術が行なわれた。ばち指とチアノーゼを認め、SpO2は70%台後半であった。15歳からは在宅酸素療法を行なっていたが、日常生活に支障はなく、高校卒業後は仕事に就いていた。21歳時に心房粗動での入院歴がある。定期検査では、多血症と高尿酸血症、軽度の蛋白尿、血尿を認めていた。
    【入院経過】平成16年1月スーパーで倒れ、救急車で搬送された。直ちに心肺蘇生を行ない、入院となった。意識レベルGCS 3、血圧 170/98mmHg、心拍数 108/分。動脈血pH 6.992、pCO2 96.3mmHg、pO2 22.4mmHg、BE -11.0mmol/L、WBC 11,000/μl、RBC 839×104/μl、Ht 70.4%、Plt 13.3×104/μl、AST 85IU/L、ALT 70IU/L、Na 137mEq/l、K 4.4mEq/l、Cl 102mEq/l。胸部X-pで心拡大(胸郭比76%)、心電図で右室肥大・右軸偏位を認めた。頭部CTでは脳溝に沿ってhigh density areaがみられた。人工換気を行ない、強心剤、脳圧降下剤の投与など全身管理・治療を行なったが、38時間後に死亡した。
    【病理所見】著しい心肥大を認め、心尖部は右室で占められていた。左室はやや低形成で容量の狭小化がみられた。大動脈弁は閉鎖し、線維性で索状の上行大動脈と大動脈弓部を認めた。肺循環と体循環は、心室中隔欠損と動脈管開存を介してすべて右室に依存していた(図)。組織学的に左右の心室筋は繊維化が強く、個々の心筋細胞は肥大していた。すべての臓器に多血症と心不全に由来する著しいうっ血を認めたが、肺梗塞、脳梗塞、クモ膜下出血は認めなかった。肝臓は腫大し、組織学的にはうっ血性肝硬変の所見であった。腎のメサンギウム領域の軽度増殖を認めたが、尿細管は正常であった。
    【考察】長期生存できたHLHSの剖検例は極めて稀なものである。チアノーゼ型CHDでは、慢性の組織低酸素、二次性の赤血球増加により慢性的な異常を生じ、成人期には、脳梗塞、過粘稠症候群、胆石、冠動脈拡張、高尿酸血症、糸球体硬化症、ばち指など全身多臓器の異常を伴い問題となる。本症例も低酸素血症、多血症、高尿酸血症、蛋白尿、血尿、ばち指などがみられ、病理学的にも全身諸臓器の変化を認めた。以上より、長期間にわたる心筋機能障害が死亡の原因と考えられた。
  • 石澤 麻以子, 島袋 剛二, 平光 史朗, 大井 理恵, 松原 健二, 遠藤 誠一, 坂本 雅恵, 大原 基弘, 清水 純一
    セッションID: 2I04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    多胎妊娠の大部分は双胎妊娠であるが、生殖医療の介入に伴い三胎以上の多胎妊娠の割合がこの10年間で約3倍に増加している。多胎、特に三胎以上の妊娠が著明に増加し始めたのは排卵誘発剤が頻用されだした1980年頃からであり、さらにIVF-ET(体外受精)が実地臨床で適用された1984年以降に急増している。その1つの要因として体外受精の導入期に妊娠率向上のためより多くの受精卵を移植したことが指摘されている。しかし移植胚数を3個以上に増やしても妊娠率の向上には著変がないことが明らかとなり、移植胚数を3個までに限定することが推奨されてからは、四胎妊娠の発生率は減少してきた。その結果、母子保健事業団による平成15年の統計では多胎妊娠の内訳は双胎97.7%、三胎2.2%、四胎0.1%となっている。
    多胎妊娠でまず考慮すべきことは異常妊娠発生へのリスクが高いことである。例えば切迫流早産、妊娠中毒症・HELLP症候群、子宮内胎児発育遅延、子宮内胎児死亡などの発生が高率になる。これらの発生リスクは胎児数が増えるにつれさらに増加していく。特に早産率の上昇は周産期死亡率の増加につながり、脳障害などの後遺症を残す危険も高くなる。水上らによれば単胎妊娠での平均妊娠継続週数は約40週だが、双胎では約37週、三胎では約34週に短縮し、多胎妊娠の早産率は双胎妊娠では約45%だが、三胎妊娠になるとほぼ100%と報告されている。
    当院は茨城県新生児救急医療システムの県南中核病院の役割を担っているため多くのハイリスク妊娠が紹介されるのが特色であり、最近では多胎妊娠の外来紹介も増加している。この11年間(平成5年-16年)の当科における分娩総数は9495件で、うち双胎分娩数451件、三胎分娩数24件を経験した。当科では三胎の妊娠・分娩管理の基本方針として、妊娠初期に流早産予防としての頚管縫縮術、妊娠中期に1週間の教育入院、妊娠35週を目標に帝王切開分娩を行なってきた。今回はこの管理方式による三胎24例の妊娠分娩経過、出生児72例の予後について解析した結果を報告する。
  • 梅村 有美, 後藤 美代子, 高田 規久子
    セッションID: 2I05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    I.はじめに
    「日本人の出生体重はこの20年来減少し続けている」1)といわれている。しかし,当院においても同様の傾向があるのか疑問を感じた。そこで,当院における1983年と2003年の出生体重を比較し,出生時の体重は減少し,低出生体重児の出生数が増加しているのかを調査した。その結果から妊娠期より出産までの周産期看護に示唆を得たので報告する。
    II.用語の定義
    低出生体重児:出生体重が2500g未満の児。
    III.研究方法
     当院の1983年・2003年の分娩台帳から,正期産(妊娠37週_から_41週)においての出生体重,低出生体重児の割合,母親の年齢,初経産,合併症を調査し比較する。
    IV.結果
    1.対象の人数
    1983年の出産数495名中,正期産465名。2003年の出産数422名中,正期産403名。
    2.対象の背景
    1)母親の年齢
     2003年の方が平均年齢は1.7歳高い。
    2)初産婦経産婦の割合
     1983年は初産婦191名(41.1%),経産婦274名(58.9%)であり,2003年は初産婦214名(53.1%),経産婦189名(46.9%)であった。
    3)合併症
     妊娠中毒症と糖尿病の割合は,1983年と2003年ではほとんど差はない。
    3.出生体重
     出生体重の平均と標準偏差を求め,1983年と2003年を比較するためにt検定を行った。2003年の方が出生体重は小さく,有意差があった。(p<0.01)
    4.低出生体重児の割合
     1983年と2003年を比較するためにt検定を行なった。2003年の方が低出生体重児の割合は多く,有意差があった。(p<0.01)
    V.考察
     当院において正期産における出生体重の比較をしたところ,2003年の方が出生体重は小さく,低出生体重児の割合は2003年の方が多く,共に有意差があった。このことから20年前より出生体重は減少しており,低出生体重児の出生数は増加している。1983年より2003年の方が初産婦の割合が増え,母親の平均年齢が1.7歳と若干高くなっていることから,晩婚化が進み出産年齢の上昇が読み取れる。出産の高齢化は子宮内環境が悪くなり,このまま母親の年齢が高くなっていけば,低出生体重児出生率が上昇していくと思われる。 女性が妊娠前の体型を保つことへの関心は強く,当院の助産師外来において妊婦個々に対し体重増加の具体的な指導は行なわれていない。妊娠中のカロリー摂取制限により体重増加が抑えられることによって,出生体重の低下を招いていることが考えられる。体重増加量を算出し計画を立て,妊婦一人一人に適切な体重増加を得るために,妊娠期における助産師外来の保健指導を充実させていく必要がある。今回は妊婦の体重増加や喫煙,労働などについて調査は行なっていない。今後はこれらについても調査していきたい。
    VI.結論
    当院においても20年前に比べ出生体重は減少,低出生体重児の出生数は増加しており,全国の統計と同様の結果であった
  • 野々山 智仁, 清水 純一
    セッションID: 2I06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    超低出生体重児の救命率の上昇に伴い、治療を要する未熟児網膜症重症例の増加が指摘されている。今回われわれは土浦協同病院新生児集中治療室における超低出生体重児の未熟児網膜症についてその発症、治療、予後について検討したので報告する。
    対象は2003年3月から2005年2月までに出生し当院新生児集中治療室に入院し、死亡、転院を除き生存退院となった出生体重1,000g未満の超低出生体重児38例(男児21例、女児17例)である。対象の平均在胎週数は26.4週(23週-31週)、平均出生体重は822.0g(512g-994g)であった。未熟児網膜症は片眼のみを含めて34例(89.5%)に発症した。32例(84.2%)はI型未熟児網膜症と考えられたが、2例(5.3%)はII型、または中間型未熟児網膜症と考えられた。平均発症時期は修正在胎週数32.0週であった。レーザー治療は12例(31.6%)に施行した。治療時期は『I型は厚生省分類III期中期でさらに進行が見られる場合、II型または中間型は診断がつき次第』を基本としたが『Early treatment for retinopathy of prematurity cooperative group』の治療基準を参考とし症例によってはより早期に施行した。治療には全例双眼倒像鏡アルゴンレーザーを使用し仰臥位にて施行した。平均治療開始時期は修正在胎週数33.7週であった。片眼のみに治療をした例は無く全例両眼に施行した。レーザー治療を施行した12例のうち9例は1回のみの治療で軽快したが、3例は2回、1例は4回のレーザー治療を施行した。レーザー治療を施行した12例のうち11例は厚生省瘢痕期分類の1度または2度弱度と予後良好であったが、1例は瘢痕期5度(全網膜剥離)と瘢痕期2度強度となり両眼の失明は免れたが予後不良であった。重症瘢痕に至った症例はII型または中間型と考えられた症例であり、重症瘢痕形成率は2.6%であった。2004年に平岡らにより報告された『低出生体重時における未熟児網膜症:東京都多施設研究』によれば122例中(平均在胎週数26.7週、平均出生時体重782.5g)未熟児網膜症は105例(86.1%)に発症し(発症時期:平均修正在胎週数32.5週)、50例(41.0%)にレーザー治療を施行(開始時期:修正在胎週数35.7週)したとされている。また重症瘢痕形成率は4.9%であったとされている。今回の当院の結果と比較するとほぼ同様の結果ではあったが、治療率、重症瘢痕形成率は当院の方がやや低い傾向を示した。また治療開始時期は当院の方がやや早い傾向にあった。
  • 戸田 牧子, 榎 正行
    セッションID: 2I07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    新生児・乳児には特異的口腔疾患が見られる事がある。このほど当院で誕生した一卵性双生児(女児)に先天性歯が萌出した症例を経験したので報告する。
    <緒言>
    乳歯は生後5-7ヵ月に下顎前歯が萌出を開始するが、非常に早い時期に萌出する場合を先天性歯と言う。
      出産歯:出生時すでに萌出している
      新生歯:生後1ヵ月以内に萌出した場合
      その殆どが下顎A(下顎乳中切歯)である。
    <症例>
    本病院で平成16年に誕生した一卵性双生児(女児)に、日を異にして先天性歯の萌出が見られたので、その概要を報告する。
    双胎児は36週と3日で誕生した低体重児であり、妹の方に生後4日で萌出、遅れる事25日の生後28日目に姉にも萌出が見られた。
    <臨床所見>
    現症から下顎乳中切歯の先天性歯と診断した。本双胎児の場合、特に児の哺乳障害、母親の乳腺炎などの問題はなかったが動揺が著しく、誤嚥が危惧されたので抜歯を施行、抜去歯は歯根が未完成でピンセットで容易に抜去可能だった。
    <病理組織所見>
    抜去歯の歯根に黄赤色の柔らかい組織が付着しており、病理組織診断を行なった。
    中心に結合組織を見るが周囲は凝血でさらに表面を球菌のコロニーが多数取り巻いている。肉芽組織と診断し、malignancyの所見は認めない。

     病理的確定診断 「Granulation tissue with coccal colonies」

    <考察>
    先天性歯は日本においては0.1%程度の出現率であるが、海外では0.1%以下との報告で日本の方が出現頻度が高い。出現部位は殆どが下顎前歯(A)で、その出現率は先天性歯全体の83%以上と報告されており、過剰歯である場合もある。その原因は、遺伝、ビタミン不足 歯胚の位置異常、低出生体重などの諸説があるが定説はない。本症例も36週3日で誕生した低体重児であったが、因果関係は不明であった。
    一卵性双生児ということから考えると、遺伝的要素が最も強いのではないかと推定された。Riga-Fede病は1857年、Cardarelliにより、乳児の舌下部潰瘍として最初に報告されている。1881年Rigaは限局性の腫瘍として、1890年にはFedeが組織学的研究を報告した。当時は南イタリアでの報告が多く見られたため、その地域の風土病と思われた時代もある。このような経緯を経た後、現在では新生児や乳児の舌下面に生じる辱創性潰瘍としての定義が確率している。先天性歯はRiga-Fede病の主原因と言われ、その研究が多く発表されている。
    <結論>
    女児の一卵性双生児に見られた先天性歯について若干の考察をした。本症例はRiga-Fede病には移行しなかったが、著しい動揺があったため誤嚥の恐れがあると推定し、萌出後まもなく抜歯し、治癒した。その後、双胎児は順調に発育し、9ヶ月で標準体重になり順調な発育を続けているが、咬合誘導上の問題も含めた定期的観察が必要と思われる。
  • 堀口 睦美, 我妻 武士, 大原 秀樹, 堀井 修
    セッションID: 2I08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに
    現在、日本における骨粗鬆症患者は1000万人を越え、社会の高齢化と共にその数は増加している。骨粗鬆症により一度脆弱化した骨を健常骨に回復させることは極めて困難であり、また骨粗鬆症にともなった骨折はQOLを著しく阻害する。そのため、検診などによる骨量減少の早期発見と治療が重要となる。当院では施設ドックにおいて、平成7年より橈骨測定による骨粗鬆症検診を行ない、精密検査で腰椎の測定を行なってきた。しかし、検診結果と精密検査結果に大きな差がある例が若干みられた。今回、検診受診者の年齢とBMD値の傾向、精検受診率について、精検受診者については橈骨、腰椎のTスコアを比較し、そのうち差の大きかった例について検討を行なった。また、外来受診者の腰椎、大腿骨のTスコアの比較を行なった。
    2.対象及び方法
    対象は、平成13年4月から平成16年3月までに当院施設ドックで骨粗鬆症検診を受診した女性5893名とした。
     橈骨BMD測定はDCS-600(アロカ社)を使用し橈骨遠位1/3部位を測定した。腰椎BMD測定はQDR2000 (Hologic社)を使用した。
    3.結果及び考察
    検診受診者数を5歳ごとの領域に分け比較すると、50歳以上55歳未満が多く、30歳未満と75歳以上が極端に少数であり、全体の平均年齢は52.8歳であった。この偏りは、当院の骨粗鬆検診が施設ドックと併用しているためと考えられる。各年齢に対する橈骨の平均BMD をグラフにすると、これまで報告されているのと同様に、40代までにピークを迎え、後10年間ほどで急激に減少し、そのあと加齢と共に緩やかな減少を示している。
    当院ではTスコアが80%以下の受診者を要精検としており、今回1144名が対象であったが、その半数近くを平均BMDが基準値を下回る60歳代後半の受診者が占めていた。精検受診者は106名で受診率は約9%と低い値であった。原因として、結果通知に記載されるZスコアに対する誤った認識と、『骨量減少』に対する危機感の弱さが考えられ、我々医療従事者サイドからの情報の提供と、よりいっそうの働きかけが必要と思われる。
     精密受診者106名のうち、43名が腰椎Tスコアで80%以上を示した。このうち特に高値を示した19例について検討を行なった。19例中12例において、現在までに骨量の変化に寄与する疾患や治療を受けていることがわかった。また5例において椎体の変性が認められ、その平均年齢は約61歳であった。このように多くの因子が腰椎BMDに影響を与えており、問診時の確認で、不必要な検査を省いたり、より的確なアドバイスが出来るのではないかと考えられた。
    当院では精密検査で腰椎の測定を行っているが、従来、高齢者に対する腰椎測定は問題があるとされていた。今回の検討においても60歳代から腰椎の変性は見られており、他部位の評価も必要と考えられた。同装置による腰椎、大腿骨のTスコアは相関係数0.656と有意な相関が得られた。大腿骨骨折は骨粗鬆症において頻度が高く重篤な合併症であり、QOLを著しく阻害する。このような部位の骨量減少を見逃さないためにも、問診でBMDに影響を与える因子の高い受診者に対しては腰椎、大腿測定の併用による総合的な判定が必要と考えられた。
  • 渡邊 晃, 森田 雅弘, 細木 和典, 中山 美保, 稲場 達雄, 下村 優児
    セッションID: 2I09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    1 はじめに
    近年、急速な高齢化が進んでいる中、椎体の変形等が原因で起こる腰痛は高齢者に多く、それに対する腰椎X線撮影は臨床診断にとって重要な役割を担っていると考えられる。しかし実際の撮影において、高齢者における腰椎X線像は、骨量減少のためX線の透過性が高いことが多く、輪郭不明瞭な像やコントラストが低下してしまう現象が少なからず見られる。
    そこで今回我々は、腰椎、特に側面像における画質の改善を目的に、当院で使用されているFCRのマルチ周波数処理(以下、「MFP」とする。)の中でも濃度により強調の程度を決定するマルチ周波数強調タイプ(以下、「MRT」とする。)について、濃度特性や粒状度特性等の検討を行ったので報告する。
    2 方法
    ・検討パラメータ
    MRTの中から、全濃度域を均一に強調するFタイプ、Fタイプに対し低濃度域の強調を弱くしたPタイプ、Pタイプより更に低濃度域の強調を弱くしたTタイプ、もっとも低濃度部分に強調がかからないVタイプの4つのパラメータを使用した。
    ・濃度特性の評価
    それぞれのパラメータにより出力された画像濃度のばらつき(標準偏差)を濃度特性として評価した。
    ・差分画像による評価
    各パラメータで処理をした腰椎側面像の差分画像を出力し、強調度合いを比較した。
    ・視覚評価
    各パラメータで処理をした腰椎側面像を視覚評価した。
    3 結果と考察
     濃度特性においては、各パラメータの強調度の影響を受けた、それぞれに特有の結果となり、また、低濃度領域では線量不足によって量子ノイズが増加し、粒状度の劣化を認めた。
     差分画像においては、パラメータの強調度に伴い低_-_中濃度域での強調が弱くなった。
     視覚評価においては、パラメータ間で有意差も認められ視覚的に画質の変化を検出することができた。
     今回、MRTについて検討したが、画像の強調度を変化させることは粒状度だけでなく鮮鋭度にも影響を与えるため、一概にどのパラメータが最適とは断定できない。今後は、各処理の内容を理解し、部位にあった処理を総合的に評価していくことが課題と思われる。
  • 小野 尚輝, 新井原 泰隆, 石川 雅也, 浅井 太一郎, 大胡田 修, 三谷 登史恵, 島田 敏之, 佐藤 雅浩, 大川 伸一, 楠崎 浩 ...
    セッションID: 2I10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    (はじめに)
    骨シンチグラフィーは、悪性腫瘍の骨転移巣検出率が95%以上と高く、前立腺癌、乳癌、肺癌、神経芽細胞腫などによる転移性骨腫瘍の診断に欠かせない検査となっている。しかし、脊椎骨への集積が、骨転移による病的なものであるか否かの判定が困難である場合が少なくない。今回われわれは、骨シンチグラフィーのSPECT像を作成し、Gd造影MRI像との比較を行なって、転移性骨腫瘍の診断能につき検討し、その有用性が認められたので報告する。
    (使用機器)
    RI:GE横河メディカル社製 Millennium VG Hawkeye options(2検出器型)MR: GE横河メディカル社製 Signa MR/i Echo Speed Plus 1.5T Infinity Version
    (対象と方法)
    対象は、骨シンチグラフィーSPECT像を作成し、またGd造影MRIも行われた12症例である。方法は、骨シンチグラフィーとして、99mTc-MDPまたは99mTc-H-MDP 740MBq静注3時間後に、全身planar像(前、後面(それぞれ15分))を撮像後、集積を認めた脊椎のSPECT像(360度を60方向から収集(40秒/view×60projection)12分。(収集マトリックスは64×64、再構成はOSEM(ordered subset expectation maximization)法を用い、transaxial,sagittal,coronal像を得る)を撮像した。Gd造影MRIは、通常の脊椎MRI(T2強調画像、T1強調画像の矢状断)に加えて、fat SAT併用Gd造影T1強調画像にて矢状断を撮像した。
    (結果)
    12症例中10症例が骨シンチグラフィーSPECT像で骨棘への集積と診断され、Gd造影MRI検査と病巣部分が一致した。12症例中2症例は、骨シンチグラフィーSPECT、及びGd造影MRIで、転移と診断された。骨シンチplanar像では、判別困難な病巣部分でも、SPECTを追加撮像することにより、病巣の局所の診断が可能であった。
    (考察)
    悪性腫瘍の骨転移巣検出に全身骨のGd造影MRI検査を施行することは、Tim(Total imaging matrix)の可能な装置を除いて一般的ではない為、通常は全身骨シンチグラフィーのplanar像を撮影することが一般的である。この時脊椎に集積像を認めても、転移巣であるか否かの判定で困難である事が少なくない。通常の前面、後面像に加えてSPECTを行なう事でtransaxial,sagittal,coronal像を得る事により、集積の局在がより明らかとなる。中でも骨棘への集積である事が明かとなると、転移ではなく脊椎症の可能性が高くなる。SPECT像の撮像時間は、一部位あたり10分程度であり、予約検査に影響することなく随時行なえる。この事は骨シンチグラフィーの診断能を高め、造影MRIを加えて行なう症例を減らせる可能性があることを示唆している。その他、胸椎と重なり読影しにくい胸骨転移の検索、膀胱に溜まった尿の影響による骨盤骨の検索、肋骨と肩甲骨の検索などにもSPECT撮像は有効であると考えられた。
  • 遠藤 利男
    セッションID: 2I11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    (目的)前立腺癌検診ではPSAの測定が必須となり、PSA高値群が紹介されて当院を受診されることが多くなっている。またPSAの重要な指標としてPSAを体積で割ったPSA濃度(以下PSA-Dと略)も注目されている。これには正確な前立腺体積が必要である。経直腸法(以下TRUSと略)で前立腺全体を5mm厚でスライスし各断面積を求めそれの積算値が現在最も正確といわれているが、全例に径直腸法を施行するのは困難である。そこでより簡便な経腹法による積算値に匹敵する推定体積を算出した。
    (対象)対象は97年1月より02年3月まで取手協同病院でTRUSと経腹法を同時に施行した1285例と同じく04.年9月より05年3月まで土浦協同病院で施行した102例の計1387例。年齢は18才-97才で平均年齢は67.9才である。
    (方法)TRUSによる各断面積の積算値と経腹法での長径、横経、厚経、最大断面積、および回転楕円体と仮定した近似計算値との相関を統計学的処理から求めた。また近年脚光を浴びているテッシュハーモニックス(以下THIと略)装置での前立腺癌の検出能を生検により結果が出ている21例について検討した。超音波装置は02年3月まではアロカSSD-2000。04年9月からは東芝APLIO-50を使用した。
    (結果)TRUSとの比較で経腹法による長径と厚径は体格と膀胱の充満程度による差が大きいためこれらを使った近似計算値は積算体積との乖離が大きい。経腹最大断面積はR=0.691と相関を認める。またTRUSでの体積と長径はR=0.762と強い相関がある。そこでグラフから経腹長径の補正値を求め、回転楕円体の体積として最大断面積と長径で計算した結果積算値と比較してR=0.8261。P値1.26×10-30とほぼ満足できる値が出た。
    またTHIによる前立腺癌17例はほとんどが低エコー腫瘤を認め、同部の血流の不整増生により鑑別できた。
    (考察)経腹法による体積を回転楕円体として近似計算する従来の方法は患者の体格による測定誤差が大きい。今回統計学的手法で体積の補正を加えた結果、より正確なPSA‐Dの算出が可能になりグレーゾーンであるPSA4-10の群でPSA‐D高値の群を精査の対象に絞り込めるようになった。またTHI装置では明らかに腫瘤と正常組織の境界のコントラスト分解能が向上した。またパワードップラーでより低流速の血流の検出能も向上した。
  • 矢崎 久巳, 田中 史朗, 奥村 功, 今村 裕司, 今井 信輔, 野田 秀樹, 三輪 正治, 西田 知弘, 小森 竜太, 桐山 香奈子
    セッションID: 2I12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    【はじめに】今日、腸重積症の診断と治療における超音波検査の有用性は数多く報告されている。今回我々は、器質的疾患合併による腸重積を3症例経験したので、腹部超音波およびCT検査での画像所見を添えて報告する。
    【症例】(症例1)45歳女性 主訴:腹痛 既往歴:31歳時、右乳癌手術 家族歴:特記すべきことなし 現病歴:平成7年9月頃より腹部全体の軽度痛みと共に嘔気が出現。以後幾度かの同様な症状を繰り返し、近医にて点滴加療されていた。平成9年8月15日、症状が出現し、増強したため、当院内科を受診した。貧血、黄疸なし。左下腹部に小児手挙大の腫瘤が触れ、同部位に圧痛を認めたが、筋性防御は認めなかった。
    (症例2)1歳男性 主訴:血便 熱発 既往歴・家族歴:特記すべきことなし 現病歴:平成15年9月11日に2度の下痢をし、翌日には粘血便となったため、両親が心配し当院小児科を受診した。現症:38.5度前後の熱発、キャンピロバクター腸炎
    (症例3)5歳 男性 主訴:腹痛 既往歴・家族歴:特記すべきことなし 現病歴:平成15年1月31日より間欠的に腹痛と嘔吐があり、翌日も改善がみられないため救急車にて当院へ搬送された。
    【考察】今回我々は、器質的疾患合併による腸重積を3症例経験した。日常診療にて間歇的腹痛、嘔吐、血便の3主徴を呈し、腫瘤触知をするとされているが、先に述べた3主徴、腫瘤触知の症状のそろわない症例に遭遇することも少なくなく、このような場合、特に超音波検査の有用性が高く、超音波検査を施行することで、この疾患の特徴的な像であるmultiple concentric ring sign(target sign)つまり、重積した層状の腸管壁、進入したstrangulated mesenteryやLNを描出することができる。症例1、症例2では小腸ム小腸型腸重積症であり、症例3は小腸ム大腸型腸重積であった。鑑別には一見して重積の外形寸法、観察部位の違いで判断の一考となる。整復後の腸管の浮腫上の変化や、腫大した腸管膜リンパ節の確認が出来るのも超音波の利点である。
    【結果及び結語】1.今回経験した腸重積症(小腸ム小腸)は超音波上multiple concentric ring signがみられ、外形寸法が20mmから25mmと比較的大きいものであった。
    2.小児の腸重積整復を施行しても整復困難な症例に対しては、器質的疾患を考慮する必要がある。
    3.成人の腸重積症の起因は80%以上腫瘍病変が疑われ、術前に質的診断を行うことでクオリティオブケアーにつながると考えた。
    4.CTで小腸大腸の腸管の把握が可能なため、診断の一助となる。
  • 岡田 元, 川村 真由
    セッションID: 2J01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    【はじめに】臨床検査の標準化活動は県単位、地区単位等で行なわれているが、全国厚生連としての組織的な活動は行なわれていない。標準化されつつある臨床化学部門の検査結果について、厚生連施設の施設間差実態がどのようになっているか、検討したので報告する。
    【方法】平成16年度日本臨床衛生検査技師会精度管理調査(日臨技精度管理)に参加した厚生連施設の施設間差、測定方法・測定機器採用状況等を調査し、全国集計と比較した。
    【結果】参加状況:日臨技精度管理調査の化学検査項目に参加した厚生連施設は90施設で、全国参加施設2662施設の3.4%をしめている。厚生連施設の参加内訳は、一般病院19施設、総合病院63施設、検査所1施設、診療所2施設、健検診センター4施設、療養所1施設であり、300床以上の施設が50施設をしめている。厚生連以外の公的医療機関の参加は、都道府県189施設、市町村407施設、赤十字74施設、済生会48施設、国関係148施設、社保関連が70施設となっている。
    施設間差:日臨技では統計数値を算出する前に、極端値を除去し±3SD 2回反復切断を行なっている。この反復切断に除去された厚生連施設が最も多かったのはクレアチニンの試料11で3施設の除去であった。2施設除外された項目は、直接ビリルビン、カルシウム、総コレステロールであった。全国施設の除外施設割合と比較すると、どの項目でも少ない割合だが、反復切断されるケースは、記入ミスか、測定値が大きく外れている施設なので1施設も除外されないのが望ましい。厚生連施設のなかでは、多くの項目で除外されているような施設は認められなかった。
    反復切断で除外された施設も含めて厚生連施設の集計を行なった結果、C.V.%が全国集計よりも大きかった項目はカルシウムだけであった。試料11で10.2%、試料12で7.3%と全国集計の8.0%、6.4%と比較して大きくなっている。今回の日臨技試料はカルシウム測定の酵素法とキレート法では反応性が異なり、ヒト検体を測定したときよりも大きな測定方法間差が認められている。そのため項目単位で集計を実施すると測定方法が分散するほどC.V.%が大きくなる。全国的に酵素法は8.3%の採用率であるが、厚生連では20.4%の施設が採用しているため、項目全体の収束率が全国よりも悪い結果となっている。また除外施設の多かったクレアチニンも試料11でCV%が12.0%と収束率が悪い結果であった。全国集計にはJaffe法が含まれ収束率が悪くなっているが、厚生連では全ての施設で酵素法を採用しているため、本来はもっと収束しても良いと思われる。その他の項目では、全国の反復切断後のC.V.%と同等以上とかなり良好な結果であった。
    酵素項目のJSCC採用率:ASTとALTでは全ての厚生連施設でJSCC標準化対応法が採用されている。しかしCKとALPで1施設、γGTで3施設、LDで9施設がJSCC以外の試薬を使用している。全国普及率と比較すると同等であるが、標準化を視野にとらえた厚生連組織活動等を実施する機会があれば、普及率向上につながると思われる。
    【まとめ】組織的な活動を実施していない厚生連の施設間差は予想以上に小さく、あと一押しで標準化が達成されると思われる。現在の医療状況を考えると、組織に関係なく臨床検査の標準化は達成されるべきであるが、標準化に必要なモノの多くは、単独の施設で購入するには高価な製品が多い。そのため標準化に対応できる施設と、できない施設の格差は大きくなりつつある。このような高価なリファレンスを厚生連で購入し、厚生連で統一された管理血清に目標値を設定することによって、少ない労力で厚生連の標準化が可能と思われ、そのような組織的活動が望まれる。
  • 川村 真由, 岡田 元
    セッションID: 2J02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】基準範囲とは、NCCLS等の設定方法に基づいて統計学的に算出された範囲である。しかし現状では、関連学会から提示されている病態識別値、試薬メーカー推奨の参考値、文献より引用した正常値など、設定方法は各施設により異なる。今回、病態識別値の提示されているグルコース・総コレステロール・中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール・尿酸について、基準範囲と測定値の関係を評価したので報告する。
    【方法】H16年度日本臨床衛生検査技師会 精度管理調査に参加した、厚生連90施設について比較・検討を行なった。
    【結果】病態識別値として、グルコースは日本糖尿病学会による糖尿病判定基準、総コレステロール・中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロールは日本動脈硬化学会による高脂血症の診断基準、尿酸は日本プリン・ピリミジン学会による高尿酸血症の診断基準をもちいている。グルコース110mg/dl未満を正常型とする病態識別値を用いる場合、基準範囲上限は109mg/dlとなるはずであるが、今回は110mg/dlも病態識別値を意識しているとして集計を行なった。また、総コレステロール・中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール・尿酸も同様の方法で集計を行なった。厚生連90施設で、病態識別値を引用した基準範囲を設定している施設数(%)を下記表に示す。
    厚生連施設で病態識別値を採用している施設数(%)は、LDLコレステロールを除く全項目で、全国における採用率を上回る結果であった。
    基準範囲と測定値の関係を比較した結果、他の基準範囲を採用している施設の測定値と明らかな格差は認められなかった。
    病態識別値を基準範囲として採用している厚生連施設の測定値は、方法間差が小さいグルコース・総コレステロール・中性脂肪・尿酸について全国集計と比較した結果、全項目でC.V.%(±3SD 2回除去)が全国集計より小さく、良好な収束を示した。
    【まとめ】現在では、測定方法の標準化が進み、測定値の施設間差は非常に小さくなっている。しかし、基準範囲の統一化は未だ発展途上であり、今後の課題といえる。各学会から提示された病態識別値は、“共通のものさし”として有用であり、グルコース・総コレステロール・LDLコレステロールは80%以上の採用率となっている。今回の検討結果より、厚生連施設で基準範囲に病態識別値を採用している施設数(%)は全国水準であり、測定値との関係も良好であった。今後は厚生連組織による標準化活動を行ない、尚一層の基準範囲統一化が進むことを望む。
  • 佐々木 司郎
    セッションID: 2J03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    (はじめに)臨床検査基準値は医療施設毎に健常者を選定し、分析値を統計処理して大略その集団の平均値±2SD値を求めて設定している。近年、臨床検査測定値の標準化が進み、医療施設間の検査測定誤差が収束されてきていることから基準値についても標準化の必要性が叫ばれ、現在、各県単位あるいはグループ単位でその為の作業が進んでいる。基準値標準化のメリットは多岐にわたるが、どこの医療施設で診察を受けても同じ基準で判定されることにより無駄な検査が行なわれなくなり、受診者の負担が減少すると同時に国の医療費削減にもつながることが大きなメリットとして取り上げられている。厚労省でも人間ドックなどの判定基準を統一するべく作業を進めることを明らかにしている。秋田県厚生連は県下に地域バランス良く9病院を有し、秋田県の地域中核病院として活動している。これまでは同じグループ病院ではあるものの臨床検査分析に関しての相互交流はなかった。しかし、秋田県農村医学会に組織された研究班活動をきっかけに臨床検査基準値の標準化を達成し得たので、その経緯について報告する。
    (方法)精度管理を通じて9病院間の測定値を標準化し、基準値標準化につなげる。
    (結果)平成13年から15年度にかけて秋田県農村医学会に「人間ドックの検診成績から見た秋田県民の健康状態に関する共同研究班(班長:大淵宏道)」が組織され、その活動の中で病院間の臨床検査値と共に基準値のバラツキが問題視された。そこで臨床化学検査、血液検査について人血液を用いた精度管理を3回にわたって行なった。その結果、(1)病院間の測定値は高い相関を有し、補正することにより9病院の人間ドック成績を統一視することが可能であること、(2)基準値を統一視することにより各項目の異常率が収束すること、などが明らかになった。すなわち、各病院の基準値は設定時のいわゆる「健常者」の選択がまちまちであり、結果としてそのことが人間ドック成績の異常率差拡大の要因になっていることが示された。これらのことから基準値標準化の必要性を痛感し、厚生連臨床検査技師長会議の中に「臨床検査測定値・基準値等標準化委員会」を組織した。この活動を進めている過程で秋田市内5施設のグループで同じ活動がなされており、福岡県医師会などが設定した基準値と同じ数値を採用する方向であることが判った。同基準値は健常者設定などを厳しく管理した上で設定しており、その数値は全国的に複数の県で検証され、その妥当性が評価されている。測定値統一化のため福岡県で使用しているプール血清を入手し得たので2病院で分析を行なったところ測定誤差は許容範囲内に収まっていることが確認された。そこで市販コントロール血清を用いて9病院間の精度管理作業を行ない許容誤差範囲内に収まっていることを確認した。これにより福岡県医師会設定基準値を採用する事を決定した。また、血液検査基準値については慶應大学グループ病院で採用されている基準値が実用的であると判断し、さらに9病院のうち8病院で同じメーカー機種を使用していることから精度管理も問題なく出来ることから同基準値を採用することとした。
    (結論)以上の過程を経て平成17年4月より秋田県厚生連9病院において統一基準値採用に至った。今後、本学会を通じて全国厚生連規模で基準値標準化が達成されることを希望する。
  • 古谷 哲也, 鈴木 靖志, 有川 良二
    セッションID: 2J04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     現在、我々検査部には、日常の精度管理を含めた検査データの信頼性、質の向上が求められている。これらの分析装置の精度管理を行なうため、パソコンを用いて精度管理試料による内部精度管理とインターネット回線を活用した外部精度管理に取り組んでいる。これにより、日常検査の精密さが長期にわたり維持・管理され、同時に正確さが確保されることで検査データの信頼性を得られるようになった。
     今回は、そのリアルタイム外部精度管理システム“eQAPi”の使用状況とグループ内での運用について報告する。
    【方法】
     今回我々は、自動分析装置にシスメックス社のQOP(QAP Online Program)を接続し、日々の精度管理試料の測定データを自動的にパソコンに取りこみ、インターネット回線を利用してeQAPiサーバに転送する方法を採用した。
    【使用状況】
    1)リアルタイム異常判定
     精度管理試料の測定データをeQAPiサーバにオンライン送信し、施設専用のWebサイトにアクセスして、自装置のエラー状況やデータの多様な解析結果などを閲覧することができる。
    2)異常判定ルール
     eQAPiシステムでは、精密さと正確さの両面から判断できるように、日内データまたは、日次・月次データの平均値チェックだけでなく、ばらつきの程度についてもチェックを行なえる。この異常判定ルールを各項目ごとに設定できる。
    3)グループ施設管理機能
     グループ施設は、お互いにWebサイトからグループ内各装置のデータやエラー発生状況を閲覧することができる。また、グループ内独自のターゲット値(平均値、標準偏差)の設定・エラー判定条件の設定が可能である。
    【まとめ】
     eQAPiシステムを使用することで、内部精度管理と外部精度管理の両方を一目で確認できるようになった。また、当院を含めた厚生連6病院によるグループ内施設での統計データの解析も可能であり、検査データの共有化の点からも信頼性・質の向上が期待され、しいては、病院機能評価やISO認定取得にも有用であると思われる。
  • 池田 せつ子, 川井 光, 高見澤 靖子, 倉沢 紀恵子
    セッションID: 2J05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉厚労省は平成16年老健法事業見直しの中間報告で、介護予防とともにライフステージに応じた生活習慣病予防対策の実施を提言している。当センターは県下住民約10万人の、地域に出向いた集団健康スクリーニング(以下健診)を実施している。今回、ライフステージを考慮した結果報告などの参考にすべく、血液検査標準化実施項目を中心に加齢変化について検討したので報告する。
    〈対象と方法〉2004年4ー12月の20歳以上の健診受診者81,705人から、5種の除外条件で標準個体を抽出した。
    除外:現在治療中、BMI<18.5または25以上、SBP≧160,DBP≧100、毎日飲酒または1合を越える、現在喫煙中。抽出数:男性4,894、女性22,894名血算は、Sysmex-XE2100L、生化学検査は日立7600にて測定。標準化項目を中心に、5歳間隔の集団として、中央値と90または95(下限は5)パーセンタイル値を算出し、加齢変化と性差を観察した。
    〈血液検査の標準化〉AST・ALT・GGT・ALP・LDはJSCC標準化対応法で測定、標準物質は検量用ERM。総コレステロールはUV法、HDL-Cは直接法(第一化学)で、ともにCDC認証を受けている。HbA1cはDM-JACKII、日本糖尿病学会Lot2準拠のキャリブレータが基準。CaはOCPC法で測定、原子吸光法での値づけ標準血清を基準とし、上記項目は長野県検査技師会標準化サーベイでも許容されている。
    ◇基準範囲は±3SD棄却の後、パラメトリック(最小歪度)法で出した。
    〈結果〉TC、ALB、A1cの加齢変化を図に示す。男性は上昇・高齢域低下・低下・横ばいの4群に大別された。AST・LD・ALP・UN・A1cは徐々に上昇、ALT・GGT・TCは上昇するものの高齢域で低下傾向にある。大幅に低下したのは、ALB(5パーセンタイル:4.4→3.6)とCa(同:9.4→8.7)、TP・Hgbであった。女性は45ー50歳付近で大きく上昇する項目が多い。なお、TP・ALB・Ca・Hgbの低下傾向は男性ほど大きくないのが特徴的であった。
    標準化データによる基準範囲は測定方法が比較的混乱しがちなALP・LDのみ表に示した。
    〈考察〉老健法で示すライフステーシ゛3群(20ー39、40ー64、65ー)は男性についての傾向であり、女性は45ー50歳で区切る2群での対応がより望まれる。ここでは加齢変化の提示にとどめたが、発表の中では検査標準化項目の上記群別の基準範囲も示す予定である。
  • 加納 孝子, 松下 次用, 鳥羽 貴子, 安藤 操, 吉田 正樹, 山瀬 裕彦
    セッションID: 2J06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    【目的】
    糖尿病の三大合併症の一つである糖尿病性末梢神経障害の発症頻度は、年々糖尿病の増加と共に増えている事が、予測される。
    そこで、今回我々は、ヘモグロビンA1cと神経伝導検査との関係を比較し、検討したので報告する。

    【方法】
    対照は、2004年1月から2005年3月までの期間で神経伝導検査を実施した30代から80代の糖尿病患者30名(男性17名、女性13名)である。検討項目は、へモグロビンA1cと上肢(正中神経)の運動神経伝導速度(moter nerve conduction velocity:MNCV)と知覚神経伝導速度(Sensory nerve conduction velocity:SNCV)でそれぞれ潜時(Latency:Lat)振幅(Amplitude:Amp)持続(duration:Dur)伝導速度(nerve conduction velocity:NCV)と下肢の脛骨神経(MNCV);腓腹神経(SNCV)でそれぞれLat,Amp,Dur,NCVである。
    方法としてヘモグロビンA1c(y軸)と上下肢のMNCV,SNCVのNCV,Lat,Amp、Dur(x軸)の相関を取った。Latにおいては刺激点から記録電極までの距離を上肢は70mm,下肢は100mmで補正した。
    【結果】
    上肢においてMNCVはNCVで相関係数r=0.3948 回帰式 y=-1.206x+64.1と負の相関傾向SNCVは、Ampでr=0.3577 y=-1.220x+23.0 と負の相関傾向が見られたが、他の項目に対しては、特に相関しなかった。
    下肢においては、MNCV,SNCV共にDurにおいてそれぞれr=0.3643 y=0.183x+4.0,r=0.2136 y=0.170x+3.2と正の相関傾向が見られた。他の項目については、上肢と同様特に相関しなかった。
    【まとめ】
    上肢MNCVでヘモグロビンA1cが高くなると神経伝導速度が遅くなるという予測どおりの負の相関傾向となり、伝導速度が速くて太い神経線維の障害が考えられる。
    しかし、これは手根管症侯群を併発している可能性があり、今後それを除外して検討する必要がある。SNCVでのAmpとの相関傾向は、神経線維の数の減少、太い線維が細くなるなど軸索変性が考えられる。
    下肢MNCV,SNCV共に、Durとの相関傾向については、神経線維の同期性のバラつきが大きいことが考えられるが、生理学的に見ると、下肢のSNCVにおいては、NCVとの相関が一番強く現れる事が想定される為、技術的な問題があると思われるので、今後、技術面での改善を課題としたい。また、上肢、下肢との相関関係は、発表時までにまとめて追加報告したい。
  • 荒幡 篤, 岩本 洋, 田中 和幸, 菅沼 徹
    セッションID: 2J07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    【はじめに】
    手根管症候群は50歳前後の中年女性および糖尿病性神経障害のsubclinical neuropathyとして好発する代表的な絞扼性神経障害の一つである。本疾患の診断には末梢神経伝導速度検査が一般的に用いられており、その評価基準として正中神経の運動神経終末潜時、手関節部でのInching法などが利用されている。今回われわれは、当院にて従来より実施している第4指導出による知覚神経伝導速度(Sensory nerve conduction ; SCV)検査法から、その有用性について検討したので報告する。
    【対象および方法】
     当院で末梢神経伝導速度検査を実施した168名(男性41名、女性127名、平均年齢59.0歳)221神経を対象とした。計測は手関節から指間の正中神経SCV(第2・4指導出)、尺骨神経SCV(第5・4指導出)、および各導出時の振幅について行い、神経間ならびに導出部位別のSCV低下率などについて検討した。測定にはNicolet社製Viking IVを用いた。
    【結果】
    1.同一神経における導出部位別低下率
    正中神経では弟4指導出SCVが第2指導出SCVに比し、低下率12.6±5.9%と有意な差を認めたが、尺骨神経では導出部位による差は認めなかった。
    2.正中・尺骨神経間におけるSCV低下率
     ルーチン検査で用いる正中神経第2指、尺骨神経第5指導出によるSCV低下率に比し、両神経第4指導出では31.3±12.3%と有意に低下し、両群の差は9.6±5.7%であった。
    【考察】
    SCV検査を実施する場合、正中神経は第2指、尺骨神経は第5指を用いて測定するのが一般的であるが、今回の検討から手根管症候群の診断には第4指導出法の有用性が確認された。病変の局在診断にはInching法などの利用も重要であるが、特に従来の方法で判定に苦慮する症例では、本法を用いることでより簡便に電気生理学的診断が可能になると思われる。
  • 近藤 真佐美
    セッションID: 2J08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    <緒言>手根管症候群(以下CTS)はしびれ,知覚障害,夜間痛などがみられる疾患で,農作業における手指の運動過労など過度の手作業が原因の1つとして考えられている.CTSの補助的診断に電気生理学的検査が用いられ,障害部位の評価を行なうため手根管部前後の神経分節を1cm間隔で刺激し,伝導異常を検索するインチング法が知られている.今回,CTS症例のインチング法の結果をまとめ,CTSの診断におけるインチング法の有用性を検討したので報告する.
    <対象および方法>2003年9月から2005年3月の1年7か月間に当院整形外科を受診し,臨床的にCTSと診断された20例20手(農業あるいは兼農業7例,会社員4例,主婦2例,土建業1例,介護士1例,裁縫1例,その他4例)男性5例,女性15例,平均年齢=62.0±11.4(SD:以下同様)歳と,健常者例19例31手,男性7例,女性12例,平均年齢=58.2±7.7歳を対象に遠位潜時(以下DML),知覚神経伝導速度(以下SCV)の測定及びインチング法を行なった.測定機器はNECサイナックス2100ER2104誘発反応測定装置を用いた.インチング法は手首皮膚線を0点として1cm間隔を1点に手掌を遠位へ-6点までそれぞれ刺激し,SNAPを記録した.各刺激点間[-6から-5],[-5から-4],[-4から-3],[-3から-2],[-から-1],[-1から0]の1cm区間毎の伝導時間を求めた.またCTS症例の伝導時間が最も長くなる区間の分布を調べた.なお,統計学的検定にはMann-WhitneyのU検定を用いた.
    <結果>DMLはCTS症例では平均=6.4±1.3(SD:以下同様)msecと,健常者例の平均=3.2±0.3msecに比べて遅延していた(p<0.05).導出電極と手関節部の間のSCVでCTS症例が平均=36.3±5.1m/secと,健常者例の平均=59.8±5.5m/secより低下していた(p<0.05).インチング法における各区間での伝導時間は区間[-4から-3]でCTS症例が平均=0.80±0.62msec,健常者例が平均=0.22±0.07msec,区間[-3から-2]でCTS症例が平均=0.71±0.51msec,健常者例が平均=0.23±0.11msecと2区間でCTS症例が遅延していた(p<0.05).CTS症例の中で最も伝導時間の遅延がみられたのは区間[-3から-2]で20手中10手(50%),次に区間[-4から-3]で7手(35%),区間[-2から-1]で2手(10%),区間[-1から0]で1手(5%)であった.
    <考察>今回の検討でインチング法においてCTS症例は,伝達時間が遅延した区間は症例によりばらつきはあったものの,20手中18手は遅延した区間がそれぞれ1から2cmの長さに限局されており,区間[-4から-3]と区間[-3から-2]で健常者例に比べて遅延していた.このことは限局された部位での神経障害を示すものと考えられ,インチング法により限局された区間での伝導遅延を検出することがCTSの確定診断上有用であると思われた.ところで,DML,SCVに異常を認めないようなCTSの軽症例にはインチング法を追加して行なうことにより確定診断できる可能性がある.今後はこうした症例に対しインチング法を行ない,インチング法の有用性をさらに検討する必要があると思われた.
    <結語>CTS症例ではインチング法において,1cm区間の伝導時間が手首皮膚線から遠位に2から4cmの区間で健常者例に比べて有意に遅延していた.
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