日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
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一般演題
  • 古田 悟, 渡邉 常夫, 松下 次用, 吉田 正樹, 川島 司郎, 山瀬 裕彦
    セッションID: 2J09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    透析患者は定期的に病態をコントロールするため、多量の採血を必要とされる。また、背景に慢性的な貧血が進行している患者が多いため、採血量を最小限にとどめることが望まれる。近年、血液ガス分析装置の分析能の向上により多数の項目が全血にて測定できるようになってきた。今回、我々はヘモグロビン(Hgb)、ヘマトクリット(Hct)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロール(Cl)を対象とし、血液ガス分析装置と従来法のデーターの比較検討を行なったのでその結果を報告する。
    【対象】
    平成16年9月から平成17年4月までの透析患者のうち、定期検査を行なった、のべ634名。
    【使用機器、測定項目】血液ガス分析装置 カイロン850(大誠医科) Hgb,Hct,Na,K,Cl
    多項目自動血球分析装置 XE-2100(シスメックス) Hgb,Hct
    多項目自動生化学分析装置 TBA200FR(東芝) Na,K,Cl
    【測定方法】
    表1 参照
       
    【検討方法】
    透析患者の血液ガスを採血後直ちに氷冷し30分以内に測定し、同時に提出された生化学検査及び貧血検査のデーターとの相関を比較検討する。
    【結果】
    Hgb 相関係数0.872 Y=0.790X+2.073
    Hct 相関係数0.845 Y=0.866X+6.934
    Na 相関係数 0.812 Y=0.882X+17.349
    K  相関係数 0.983 Y=0.909X+0.346
    Cl  相関係数  0.892 Y=0.986X+2.865
    (X軸を血液ガスデーター、Y軸を従来法とする)
    【考察】
    検討した5項目の相関係数はすべて0.7以上となりピアソン積率相関係数の評価によると強い相関が認められる。しかし、Na,K,Clに関して血液ガス分析装置では、全血で測定するため、従来法より若干低く出る傾向が認められた。血液ガス分析装置は、検体到着から結果報告までが非常に短時間で検体量も少量で実施することが出来る。しかし、透析患者の検査結果のわずかな増減は、患者の病態のコントロールに大きく影響するため、従来法との違いを充分に認識し検査結果をみる必要があると考えられる。
  • 加藤 達也, 佐橋 賢二, 石川 ひろみ, 山野 隆, 江口 和夫, 日比野 充伸, 坂倉 毅, 深沢 英雄, 田原 裕文, 角田 博信
    セッションID: 2J10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉現在、腹部超音波検査は非侵襲的スクリーニング検査として多くの施設の人間ドックで用いられている。その対象範囲は消化器領域の上腹部から婦人科及び泌尿器科領域を主とする下腹部にまで及ぶ。特に、膀胱充満状態における前立腺の観察は容易で、その重量の測定は簡便に行なえる。しかし、前立腺重量には年齢や体格等により個人差がある為、その総重量だけで初期の前立腺肥大症を評価するのは十分ではなく、そのためにはさらなる指標が必要と考えた。今回我々は前立腺の総重量に占める移行域(transitional zone;TZ)の割合(%)を求め、前立腺肥大症の随伴症状との相関性を考察したので報告する。
    〈対象および方法〉対象:平成16年12月から平成17年3月までに腹部超音波検査を施行したJAドック受診者135名のうち良好に前立腺内部の観察が可能であり、かつ今までにドックにおいての異常項目の無い男性56名(30から59歳、平均47.5歳)について、前立腺肥大症による排尿困難、残尿感、尿線狭小の有無で症状群19名、非症状群37名とした。さらに各群を年代別に分け、その差異を評価した。
    方法:前立腺の総重量及びTZの重量は、膀胱充満状態にて恥骨上縁から横断走査より前立腺の左右径および前後径を、さらに縦断走査にて上下径を計測し、回転楕円体の公式(π/6×左右径×前後径×上下径)と、比重1.05g/cm3を用いて求め、それらからTZの割合を求めた。超音波装置は東芝製SSA-550Aを使用し、探触子は3.75MHzコンベックス型を用いた。
    〈結果〉表1(年代別総重量及びTZの割合)に示す。
    〈考察〉30から40歳代は、総重量が非症状群、症状群ともに差異が少ないのに対して、TZの割合は症状群が30%以上の高値であった。これは初期の前立腺肥大症においては総重量が有意に増加せずTZの割合が増加することを示している。TZは周囲組織の圧排を伴い肥大するが、前立腺自体はその被膜の作用によって形を平たい楕円体からいわゆる肩の張った丸みのある楕円体への形状変化を伴った重量増加を起す為に、総重量がTZの重量に比べ反映されにくくTZの割合が増加すると考えられた。
    50歳代では、症状群の総重量の増加があり、TZの割合は高値を示さなかった。これは、比較的長期にわたる前立腺内圧の上昇が被膜の伸展を来し、そのため前立腺全体の肥大が総重量測定に反映されるため、相対的なTZの割合上昇を示さないものと考えられた。
    〈まとめ〉初期の前立腺肥大症においては、総重量よりもTZの割合の方が前立腺肥大の随伴症状の有無をよく反映すると考えられ、ドックにおいてその報告は重要であると思われた。
  • 田中 和幸, 岩本 洋, 庄司 徳代, 端山 律子, 菅沼 徹, 熊木 伸枝, 飯尾 宏, 別所 隆
    セッションID: 2J11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】超音波検査上、虫垂疾患の中で日常多く遭遇する疾患は急性虫垂炎である。虫垂病変には大きく炎症性病変と腫瘍性病変に大別されるが、腫瘍性もしくは腫瘍様病変の中でも虫垂癌は比較的稀な疾患である。今回われわれは虫垂癌の術前超音波検査を経験したので報告する。
    【症例】37歳 男性
    【主訴】右下腹部痛
    【既往歴】特記するべき事項なし
    【現病歴】来院2週間前よりシクシクする右下腹部痛があった。来院前日より体がだるく右下腹部痛が続くため当院内科受診された。体温は37.3度で右下腹部圧痛を認めた。採血,超音波,CTの結果、虫垂炎の疑いがあるため外科依頼された。
    【血液学、生化学的検査】WBC:8800/μl CRP:10.16 mg/dlその他検査項目に異常なし。
    【超音波検査】右下腹部回盲部付近に限局的に壁の肥厚した消化管像を認めた。大きさは4.9×2.1×2.8cm大であった。壁と思われる低輝度に不整肥厚した部位を認め、その層構造は不明瞭であった。内部は高輝度な不均一な充実性エコー像となっていた。カラードプラーにてこの部位に直線的に走行する比較的太い血流シグナルを認めた。この消化管病変は回腸末端部下方、回盲部付近に連続している事から腫大した虫垂と考えた。病変周囲エコーレベルはやや上昇していた。また内部に糞石エコー、内部および周囲に膿瘍様エコー及び液状エコーを認めなかった。その他上腹部(肝、胆、膵、脾、腎)に明らかな異常所見、およびリンパ節腫脹を認めなかった。以上の所見から虫垂炎もしくは腫瘍性病変を疑った。
    【腹部CT】右下腹部に径4cm大の充実性病変の存在と周囲のfat densityの上昇を認め、虫垂炎を疑う所見であるが充実性腫瘍も否定できない所見を認めた。
    【入院後経過】理学的所見及び検査結果より腫瘍性病変も否定はできないことから待機的手術治療が行なわれた。
    【手術所見及び病理組織学的診断】開腹すると虫垂は大きく腫大しており、その炎症は周囲に広がっていた。術中迅速病理診断にて高分化腺癌であったためリンパ節郭清を伴う回盲部切除術に切り替えられた。
    病理組織学的診断:高分化腺癌、深達度:ss  ly1,v0 、H0,P0,N(-)(stageII)
    【考察】超音波検査上、虫垂疾患の多くは急性虫垂炎であり、原発性虫垂癌に遭遇する機会は少ない。この症例では当初虫垂炎を疑って検査を進めた。しかし病変部の超音波所見はいわゆるpseudo-kidney sign様にも見えた。さらにカラードプラー所見や虫垂炎にみられる超音波所見に乏しいことを含めて検討した結果、虫垂腫瘍も疑われるにいたった。虫垂炎症状にて超音波検査を行なう場合にも、その性状をよく観察し検査を行なう必要があると思われる。
    【まとめ】今回われわれは、超音波検査にて右下腹部痛にて来院した37歳男性の虫垂癌の一例を経験した。その術前診断に超音波検査が有用であった。
  • 岩本 洋, 端山 律子, 田中 和幸, 庄司 徳代, 菅沼 徹, 熊木 伸枝, 篠田 政幸, 別所 隆
    セッションID: 2J12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】超音波検査では乳腺症に伴う限局した境界不明瞭な低エコー領域を認めた場合,その領域が乳腺症による不均一な領域によるものなのか,腫瘍像として捉えにくい腫瘍(腫瘤像非形成型腫瘍)によるものなのか,このような腫瘤像非形成性病変の判断に苦慮することが良くある.今回われわれはカラードプラ・パワードプラを使用したことで,腫瘤像非形成性病変の鑑別に有用であった症例を経験したので報告する.
    カラードプラ・パワードプラを用いた病変部の評価としてはI,IIのように分類している.I病変部のvascularityの評価は1)a(hypo)vascular 2)isovascular 3)hypervascular,II病変部の血管走行パターンはa)栄養血管と思われる血管が腫瘍の周囲を沿って(鈍角)流入するパターンb)栄養血管と思われる血管が腫瘍に直接(鋭角)流入するパターンc)周囲乳腺組織に比べびまん性に血管の不規則な増勢が認められるパターンに分類している.
    【症例】44歳,女性
    【既往歴】特記すべきことなし
    【現病歴】平成14年7月ごろより,左乳房にしこりを自覚し血性分泌も認めたため,他院を受診したが異常なしと診断,同年12月症状が悪化したため当院を受診した.
    【検査成績】血液検査では,特に異常は認められなかった.
    【乳房超音波】乳腺実質は全体的に豹紋状パターンを示し,不均一であり基礎疾患に乳腺症が疑われた.はっきりとした腫瘤性病変は描出されなかったが,左CE領域に実質よりも不均一で限局した境界不明瞭な低エコー領域(0.9×0.7cm大)を認めたためカラープラ・パワードプラを行なったところ同領域は他の領域よりもかなりvascularityの上昇が認められた.さらにその周囲を観察すると広範囲(5.3×4.9×2.1cm大)にわたってvascularityの上昇が認められる領域が描出された.微小石灰化を思わせる点状high echo像は認められなかった.炎症等による広範囲なvascularityの上昇は考えにくく,hypervascularな腫瘤像非形成型腫瘍を考えた.
    【マンモグラフィ】Lt‐MLO,CCおいてLt-C領域にはっきりとした微小石灰化が多数集簇した領域は認められなかった.(category2)
    【病理診断】DCIS ; ductal carcinoma in situ
    (intraductal carcinoma with focal micro-stromal invasion)
    【まとめ】今回この症例においては,I病変部のvascularityの評価は3)hypervascular,II病変部の血管走行パターンはc)周囲乳腺組織に比べびまん性に血管の不規則な増勢が認められるパターンであったことから、hypervascularな腫瘤像非形成型腫瘍を疑うことが出来た。よって基礎疾患に乳腺症があり周囲に比べさらに不均一で限局した境界不明瞭な低エコー領域を認めた場合には補助的診断としてカラードプラ・パワードプラを積極的に行なう必要があると思われる。
  • 山下 茂子, 井坂 茂夫, 藤田 敬子, 松田 浩子, 田中 美代子, 山本 利子, 市村 小百合, 中村 早苗
    セッションID: 2K01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    当院では、平成13年に医療安全対策委員会を発足し、医療事故防止に取り組んできた。中でも転倒転落に対する看護師の意識変化がアンケートによって確認出来たのでここに報告する。
    アンケート結果の前に、まず当院が行なっている転倒転落防止対策を紹介する。患者や家族と一緒に、入院時にアセスメントスコアシートを作成する。このシートによって患者の転倒転落危険度が1-3に区分され、危険度認知シール貼付の実施や、家族に対して資料の配布並びに説明が行なわれ、患者の状態を看護師だけでなく家族とともに把握出来るようになった。
    また、マニュアルやフローチャートを作成して、転倒転落発生時の対応をスムーズに行なう事により、患者側、病院側両者のリスクを軽減することが出来た。特に病院側リスクでは、転倒転落発生報告が増加傾向にあるものの、クレーム(医療事故)としての報告が無くなった事は、成果が実ったと高く評価できる。
    先に述べた成果を生んだ要因として、看護師の意識変化が大きく関わっている事が考えられ、この変化を確認するためアンケートを実施した。アンケートは岩本氏らによる著書「看護・医療における事故防止の為の教育方法の開発に関する研究」を参考に、4つのカテゴリー「危険性に対する意識・気づき・予測」「個々にあった看護計画・実施」「転倒転落時の看護師の判断と行動」「事故の振り返り」に分け作成した。
    アンケートにて確認できた事は、スコアシートの作成により危険度の意識付けが出来、危険性に対する予測(直感・感性・あれ?いつもと違う)、危険予知能力を高められたという事、危険度を踏まえたうえで、患者個々にあった看護計画が実施されている事、転倒転落時の対応が統一され、迅速かつ的確に処置や対処が行なわれるようになった事、インシデント・アクシデント症例の分析やカンファレンスによって、情報を共有化することで知識が増え、即現場に生かされている事、などである。
    結果としてスコアシートの有効活用ができ、危険性に対する意識が高まって、患者個々に合わせた防止対策になったと考えられる。また、看護師の意識が高く保たれている事によって、看護師のスキルアップとともに、看護レベルが引き上げられ、看護体制が向上しただけでなく他の成果も生んだものと考えられる。
  • 高野 康二, 菊地 浩之, 高島 賢治, 佐藤 栄輝, 細谷 晶志, 福村 浩一, 坂本 貢, 佐藤 長典
    セッションID: 2K02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    医療現場は高齢化に伴い、ベッドからの転倒・転落の事故事例が後を絶たないのが現状である。市販品の中に転倒・転落防止器具として、ベッドから起きるとセンサーチップが装置から抜けて鳴るタイプ、ベッドから降りてマットを踏むと鳴るタイプなどがあるが、ナースコールを鳴らすタイミングに問題がある。そこで、心電図モニターケーブルとナースコールを改良して、安価でナースコールを鳴らす装置(以下、セーフティコールとする)を製作した。ナースコールを鳴らすタイミングも良好なシステムでベッドからの転落防止に多大な信頼性を得たので報告する。
    【使用機材】
     ナースコールシステムはアイホン社製UBXシステム(PHS連動式)に日本光電社製心電図モニター電極リード(BR901)と抵抗100Ω、70cm程度の電線、1m程度の固定用紐、シリコンチューブその他、半田、プラスチックボンドなどを用いる。(図-1)
    【設置の実際】
    セーフティコールのクリップと電線の接続部に取り付けられた紐をベッドマット下の金具に取り付ける。マットを戻した状態でクリップを引き外れない事を確認する。患者の肩付近にクリップを取り付け、寝返り程度では外れないが、起き上がると、クリップが外れる位置に調節する。(図-2)
    【アンケート調査】(配布143部中回収103部)
    実際に使用した病棟看護師にアンケート調査を行った結果、1.ナースコールが鳴るタイミングは?とても良い13% 良い45% 普通40% 遅い2%、2.取り扱いはどうですか?使い易い84% 使いづらい16%、3.転倒・転落に有効だと思われますか?特に有効8% 有効65% 普通29% 無効1%、4.使用してよかったと点は? 転倒前に患者の元に行ける42% 事故防止につながった26% 無理に抑制しなくてよい20% 安心して他の業務が出来る7% その他5%、5.良くなかった点は? 外れると鳴りっ放し67% 体動や寝返りで外れる事がある20% 鳴らなかった4% 自分で操作されてしまう4% その他5%、6.看護業務は軽減しますか?出来る32% 出来ない18% 分からない50%などの結果が得られた。
    【考察】
    ベッドからの転倒・転落事故の主な原因は、夜間、トイレに行こうとする時に歩行が十分出来ないことに気づきながらもベッドから降りて転倒してしまう事例が多く報告されている。そこで、今回作成したセーフティコールは、患者がベッドから起き上がった時点で患者に装着したクリップが外れ、ナースコールが鳴る。看護師が持つPHSに連動して、「○○さん、今いきますからそのまま待っていて下さい」とベッドから降りる動作を一時的に静止させることにより、転落事故を減らすことが出来るようになった。「トイレに行く時はナースコールを押して下さいね」とお願いしても、押してくれないのが現実である。このような患者に取り付けることにより有効性を発揮するものと思われる。アンケート調査から無効と答えたのは1%で99%の看護師は必要性を認めている。転落前に静止出来る点などに対する安心感がある反面、一度なるとナースコールが鳴りっ放しになるため、必ず患者の元へ行かなければならない点が看護業務の軽減にはつながらない要因と思われる。
    【まとめ】
     セーフティコールは転落防止に安価で有用な一手段である。
  • !)シグナルの有効性!)
    水出 亜理沙, 佐々木 美枝子, 足立 妙子, 岸本 光江, 磯山 洋子
    セッションID: 2K03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    [はじめに]
    当病棟の過去2年間60件のインシデントレポート分析結果から、事故発生場所はベッドサイドとトイレに多く、入院患者の特徴として、脳血管障害後遺症により座位バランスが不安定な患者や認知障害によりナースコールが押せない患者が多いことが理由であることがわかった。しかし、他チームの患者に排泄介助を依頼された場合、患者の転倒の危険性を把握しきれず、担当看護師に聞くか、看護室に戻り安静度を確認する必要があった。そこで、安全で適切な介助方法を把握する手段としてベッドサイドでのシグナルの使用を試みた。結果、トイレでの転倒事故件数が減少し、スタッフの転倒事故防止に対する意識の向上がみられたので報告する。
    〔目的〕
    トイレ介助場面での転倒事故防止に対するシグナルの有効性を評価する
    <用語の定義> シグナル:今回の研究で作成した患者の安静度と危険度を標示したもの
    [研究方法]
    期間:2004年8月から2005年3月
    対象:当病棟看護師24名 看護助手4名
     対象患者:転倒・転落スコアシート2以上の患者80名
    方法:1. シグナル作成 赤色:ベッド上安静・車椅子
    (座位バランス不安定、監視が必要) 黄色:車椅子(座位バランス安定
    2.シグナル使用期間(2004年11月から2005年3月)
    3.シグナル使用後のインシデントレポートから転倒場所を集計
    4.シグナル使用後のスタッフへのアンート調査
    倫理的配慮:対象患者と家族に本研究の趣旨を説明し同意を得た
    [結果]
     シグナル使用期間中の転倒事故は11件であった。インシデントレポートではシグナル使用前後とも転倒場所がベッドサイドに多いことに変化はなかったが、使用後にトイレ・廊下・洗面所が0件であった。(図1)スタッフのアンケート結果では「ベッドサイドのシグナルを参考にする」は80%であったが、他チームの排泄介助に関しては、100%がシグナルを参考にすると回答した。また、転倒事故防止についての関心も以前より高まったと93%が回答した。
               図1
    [考察]
    シグナル使用後にトイレ、廊下・洗面所での転倒が0件であったことは、シグナルによりベッドサイドで患者の安静度と転倒の危険性が瞬時に把握でき、適切な介助方法の提供につながったためと考える。また、アンケート結果で特に、他チームの排泄介助に関してはシグナルを100%参考にして介助していることから、スタッフ全体が意識を共有化することで,統一した転倒ケアのための動機付けにもつながったと考える。このことから、今回の研究はトイレ介助場面での転倒事故防止とスタッフのリスクマネジメントに対する意識の向上に有効であったと考える。今回は、トイレでの転倒予防に焦点を当てたが、今後は病棟の特殊性を考え、さらにさまざまな要因をアセスメントし、具体的な介入計画を実施して転倒事故予防に努めていく必要がある。
    [おわりに]
    転倒事故の絶対的対策は困難であるが、継続してシグナルを使用することで今後も転倒防止に努めていきたい。
  • 佐藤 美智子, 関 美代子, 鎌田 佳代
    セッションID: 2K04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>医療事故に対する病院内外の関心は高まり、今やリスクマネジメントは医療や看護を提供するにあたり最優先されるものとなっている。医療事故の中で転倒・転落(以下、事故とする)は薬剤関連事故に次いで多く、リスクマネジメントの観点から有効な対応が求められている。当院では平成15年より入院時 転倒・転落アセスメントスコアシート(以下、スコアシートとする)をチェックして危険度に応じたケアプランを立案しているが、事故が減少していないのが現状である。過去1年間、事故を起こした事例の要因分析を行ない、事故防止に役立てたいと考え取り組んだので報告する。
    <方法>
    研究期間:平成16年5月1日-9月30日
    研究対象:過去1年間 当病棟で事故を起こした7事例
    アクシデントレポート、カルテより患者背景・事故発生時の状況を情報収集して、原 英樹氏の著書「医療事故要因分析マニュアル」を参考に事例を分析し、事故を起こす確率の高い要因を明らかにする。
    <結果と考察>事故が起きた事例の疾患は尿路結石、膀胱腫瘍、皮膚科疾患で年齢 68-88歳 男性4名、女性3名。スコアシート危険度II2名、III5名。
    分析と要因ではADL、精神状態の把握・認識不足、不穏患者へのリスクの認識・配慮不足、安全対策マニュアルの備、安全管理に対するスタッフの教育不足、スタッフ間での情報共有の不足、モニター監視が徹底されず有効に活用されていない、などがあげられた。
    7事例のうち、スコアシートで危険度IIIが5名で事故が十分に予測できたにもかかわらず発生した、川島は1)「適切なアセスメントをすることで転倒を予測し、未然に防ぐことができる」と述べている。事故防止にはアセスメントが重要であり、アセスメントの不足が具体的な対策に至らず事故をまねいたといえる。ADL・精神状態の把握不足や認識不足、スタッフ間での情報共有不足は事故の発生原因と考えられる。また、事故を予測しモニター監視のできる環境でも、ベッドの位置や照明などが有効に活用されず監視が徹底されないなど、安全教育や安全対策の不備がある。榊原は2)「転倒・転落の事故防止は、看護婦個々の能力のレベルとは別に、チームとしてどう予防・予測するか、看護計画の内容を周知徹底し、実施していくかが鍵であろう。」と述べており、特に危険度の高い患者に対しては情報の共有を密にし、スコアシートの再評価や看護計画の修正をする必要がある。東京発医療改革病院経営本部サービス推進部の転倒・転落防止対策マニュアルでは防止策として[1]転倒・転落の危険度の高い患者さんは、シグナルを決め全職員が共通認識を持つ。[2]転倒・転落の起きやすい要因を知っておく。[3]既往歴、現症から患者さんの危険度を正確に把握する。[4]スタッフ同士の情報の共有、連携強化とチーム全体で観察。を挙げており、シグナルの活用や情報共有などの必要性を再認識した。
    原は3)「事故防止について徹底的な分析を行う、再発防止のために、なぜ起きたか本質的原因は、どこにあるのかを探り今後いかに防ぐかを検証しなければならない」と述べているように、全スタッフが事故防止への意識向上と緊張感を持ち、また目的意識を持って日々の業務を行うことが必要と考えた。
    <おわりに>リスクは人間が活動する限り何らかの形で必ず存在し、エラーは人間の正常な行為で事故を予防するためには十分に対策を講じる必要がある。この研究に取り組み、リスクに対しての認識が深まったが、事故防止のためには更に具体的な対策・方法を検討する必要があり、今後の課題にしたい。 
  • 大塚 睦美, 上原 妙子, 岡江 俊治
    セッションID: 2K05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    医療ミスは、医療にたずさわる医師、看護師等が人為的ミスにより、患者に対して的確ではない処置を施してしまうことで患者は死亡あるいは重篤な状態に陥ることに成りかねない。私達、放射線科看護師は、患者への安全と安楽を確保し検査がスムーズに進むよう放射線技師と協力し業務を行なっている。業務手順に基づき教育を受け、責任をもち実施している。CT造影注入における血管確保は看護師に任されている。血管確保の穿刺をする体位は両手を挙上し肘関節前腕肘かの内側肘静脈に注射針を穿刺する、血管外に漏れない、短時間に行なう等、厳しい条件で精神的プレッシャーを克服し努力している。しかし、CT造影を読影した医師が「空気が混入している」と指摘、その空気量は0.3mlと微量ではあったが、アクシデントとして取り扱われた。アメリカの文献では空気混入報告例は23%で、体内に300ml空気が注入すると死亡すると報告されている。今回の原因は、確認ミスなのか、思い込みミス、手技ミスなのか、防ぐことができないのか等、その分析と防止対策を検討した。その方法として、SHELモデルを使っての分析、看護師間での手技の確認、他施設の業務手順を参考にするためのアンケート調査を行なった。結果及び考察としては、原因となる確認、思い込みはないとは言い切れないが、看護師間での手技の確認をすることで、知識技術未熟性、独善性は解決できたと考える。手技は最終的に「これでよし」と確認したとしても、微量な空気混入を防止することは困難である。しかし、空気混入を最小限するために点滴セット、延長チューブを温めて使用することでルートに張り付いている気泡は防ぐことができるのではないか考えた。他施設のアンケート調査結果から業務手順の見直しと看護師間での手技の確認をすることが防止策となると考える。
    参考文献
    佛坂博正: 静脈内空気塞栓の一例:臨床放射線。Vol39.No10,1994
    久志本 成樹 :空気塞栓。腎と透析。1989臨時増刊号
    津田 僑子:空気栓塞の検討と対策。臨床麻酔。Vol8.No12,1984,12
  • -閉塞の有無と関連要因との比較-
    小林 百合, 山口 奈都世, 加納 一二三
    セッションID: 2K06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
     日本看護協会看護基準集に1)「末梢静脈に抗生物質などを間欠的に輸液する場合、毎回翼状針や点滴セットの針を用いて穿刺する方法(抜き刺し)は、穿刺のたびに患者に苦痛を与える上、金属針の使用による皮下組織への静脈液浸潤の危険があり、重篤な合併症を引き起こす危険があります。また、医療従事者の労働ばかりでなく針刺し事故による血中ウイルス感染の危険性も増し、近年大きな社会問題となっています。」と記載されている。当病棟では一時的に輸液ラインがはずれ、患者のADLが高まるなどの理由もふまえ、末梢静脈点滴ラインの開存維持の為に生理食塩水による間欠的注入ロック(以下生食ロックとする)を施行している。しかし生食ロック後数時間経過し次の点滴を行う際には、3人に1人の割合で点滴ラインが閉塞しており再度穿刺することが多くみられた。閉塞要因として留置針が細いほどルート内の血液が容易に凝固し閉塞しやすいのではないか、ADLが拡大しているほど動作時の怒積によりルート内に血液の逆流が起こり閉塞しやすいのではないか、生食ロックしている時間が長いほどルート内の血液が凝固し閉塞しやすいのではないかと考えた。
    今回点滴ラインの閉塞と閉塞要因の関連性について比較検討した結果、留置針の太さと閉塞とは関連があり18ゲージほど閉塞率が低い、ADLと閉塞との関連はない、生食ロックしている時間が長いほど閉塞率が高い傾向にあることが明らかになった。閉塞と留置針の太さは関係があることから、生食ロックをする場合は可能な限り太い針で穿刺したほうがよい。しかし対象患者への苦痛から、生食ロックの利点を説明するなど情報提供したうえで、患者とともに考えていく必要がある。ADLについてはシュアプラグ延長チューブで陰圧ロックしてあれば体動による管内への血液の逆流が増すことはないと考える。生食ロックしている時間については閉塞率の高い24ゲージで24時間以上生食ロックをする場合において、次回点滴までの間に定期的に生食フラッシュを行った方が、閉塞率が低くなると予測する。今回の調査前に閉塞が多かった理由は、看護師間で陰圧生食ロックの手技が統一されていなかった為、陰圧で生食ロックが出来ず血液の逆流によりカテーテル内の血液が凝固し、閉塞していたと思われる。新しい処置を導入した際には、看護師間の十分な情報伝達やマニュアル作成による手技の統一も重要であると考える。
     今回の検討を経て当病棟における生食ロックの閉塞の要因が明らかになった。今後はこの研究を生かし末消点滴の開存維持について、患者の安全性、ADLを考慮したうえで適切な留置方法を行なっていきたい。
  • 島崎 豊, 土屋 幸子, 伊藤 幸代
    セッションID: 2K07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     輸液ラインに使用する三方活栓は,コックの操作性や利便性などにより,部署によって多用しているのが現状である.
     しかし,一般的な三方活栓の混注口は開方式になっているため,混注口からの細菌汚染の原因となることが指摘されおり感染対策上問題視されている.
     近年は,三方活栓の短所である混注口を閉鎖式にした製品が各社から販売されている.今回,各社から販売されている閉鎖式三方活栓の5種類について,その操作性や安全性などを評価したので報告する.
    【対象器材】
    A:セイフTポートタイプII®(日本シャーウッド)
    B:プラネクタSC®JMS)
    C:トップ三方活栓NL®トップ)
    D:シュアプラグ三方活栓®テルモ)
    E:BD Qサイト三方活栓®日本べクトン)
    【方 法】
     5社の製品について,コック操作レバーの操作性,混注口アクセス時の専用アダプター使用の有無や操作性,混注口の形状と消毒(拭き取り)のしやすさ(混注口に蛍光ペンを塗布し乾燥させて,アルコール綿で清拭した後,ブラックライトで判定),経済性などについて評価した.
    【結果及び考察】
     混注口へのアクセス時に必要な専用アダプターはA社の場合,間欠的な注入時と持続注入時でも専用のアダプターが必要であった.B社は持続注入時に必要であったが他の製品は不要であった.混注口へのアクセスは症例によって頻回に行われることもあるため,コスト増の原因となることが示唆された.
     しかし,プライミングボリュームが無いのは,構造上の特性から専用アダプターが必要なA社とB社であった.コック操作レバーの操作性は,A社のコックは固くて使いにくく,D社は操作レバーが I 字型のため開通方向が他社と逆であり操作間違いが危惧された.混注口の状態と消毒のしやすさは,E社が最も混注口の面がフラットであり消毒も容易であった.
     閉鎖式三方活栓は,通常の三方活栓と比べて汚染の頻度が低いと一般的に考えられている.しかし,混注口の消毒を確実に行なわないと汚染が除去できないことがあり細心の注意が必要である.
     各社の構造にはそれぞれ違いがあり,その特性を理解して正しく使用することが要求される.A社とB社はプライミングボリュームを重視したことで,専用のアダプターが必要になり,操作性や経済性に問題を残した.
      A社・B社・E社には,三方活栓タイプ以外に輸液ラインにコックを使用しないT字型ポートタイプがあり,特にE社はデッドスペースもなく専用アダプターも不要のため,輸液ラインアクセスの主流になることが示唆された.
    【結 語】
    ・三方活栓の使用は,閉鎖式であっても必要最小限にとどめる
    ・それぞれの製品特性を理解して使用する
    ・閉鎖式であっても混注口の消毒は厳密に行なう
    ・三方活栓タイプとT字型ポートタイプを組み合わせて使用すれば,E社の製品が有用である
  • 鶴巻 章
    セッションID: 2K08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    (はじめに)
    ヨード造影剤は非イオン性が主流となった現在、安全性に対する信頼度は高く、日常の放射線診療において広く用いられている。
    しかし、少ないながらもヨード造影剤による副作用発現は報告されていることから、当院において1998年より副作用調査およびインフォームド・コンセントを継続している。
    今回、調査の途上において、ショック状態に陥った症例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
    併せて調査開始から2004年末日までの調査結果を報告する
    (症例)
    氏名SI・76歳・男性
    病歴
    99 4月 左尿管癌のため、左腎尿管全摘
    7月 膀胱癌出現
    04 2月 左頸部鎖骨上腫脹
           移行上皮癌であったことから尿路系からの転移と診断
    (経緯)
    04 3月25日
        転移巣検索を目的として胸腹部CTを施行。
        造影剤100mlを3ml/secで注入。
    検査終了後、喉頭不快の訴え。
    血圧低下(60mmHg)
    硫酸アトロピン・ソルコーテフを投与。
    意識レベル低下。けいれん発作
    (処置室に移動)
    カタボン投与
    心室頻拍(VT)発現を確認。
    除細動器用意。
    数分でVT回復。
    血圧回復、意識レベル回復
    (考察)
    今回の症例は造影剤投与後に主に循環器系の症状を呈したものである。
    これについて当初は造影剤の刺激により、冠動脈のれん縮を来たしたのでないかと思われた。
    しかし心疾患の既往があるため、虚血性心疾患の発作が偶発的に起きたという可能性も否定できない。
    また、頸部リンパ節の腫脹によって迷走神経が圧迫され、迷走神経反射を起こした可能性も指摘された。
    この様に、造影剤以外の因子が関与している可能性は含みつつも、造影剤投与直後にショック状態に陥ったという事実は動かしがたく、我々放射線業務に携わる者としては造影剤による副作用との認識をもつべきであろう。
    現在、副作用発現を確実に予知あるいは防止する方法はないとされるが、問診等によるリスクレベルの確認が重要とされる。当院では造影剤投与に先立って、リスクレベルのチェックはもとより、より詳しい説明を加えるためにインフォームド・コンセント(IC)と造影剤投与の副作用発現調査を実施している。
    それによって患者さん側に十分な説明がなされると同時に、職員にも造影剤の副作用に対する正しい認識を定着させる一助となっている。
    1998年の開始より、重篤な副作用の発現例は2例目である。
    即発性副作用発現率1.28%(2,6953例中)(1998-2004)  文献 3.13%(片山)
    遅発性副作用発現率4.28%(25,153例中)(1998-2004)  文献 8.00%(吉川)
    また、副作用発現に備えて救急体制を備えておくことも求められるが、当院ではこれについても緊急時に即応して人員を召集する体制がとられており、今回の事例の際には、これが有効に機能したことによって、迅速な対応がなされたものである。
    今後も造影剤使用の際にはその利点を活用すべく最大限の診断情報を提供しながら、不測の事態に対して十分な注意を払って行く所存である。
    (結語)
    ・X線造影剤投与後にショック状態に陥った症例を経験した。
    ・迅速に対応し、大事には至らなかった。
    ・造影剤投与に際して、問診等のリスクマネージメント、および副作用発現に備えた体制づくりが必要であると考える。
    (参考文献)
    小塚 隆弘 造影剤要覧 21版 日本シェーリング 1999
    片山 仁 造影検査実践マニュアル  医科学出版社1999
    Yasuda R :Delayed Adverse Reactions to noionic monomeric contrast-enhanced media.Invest Radiology33,1:1-5,1998
  • 五十嵐 健一, 澤田 恵美子, 平沢 博, 河内 貞臣
    セッションID: 2K09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉
    近年、血液事業上の安全対策の推進により輸血用血液の安全性は徐々に高まってきたが、輸血副作用を根絶することは今もなお困難である。当院では、安全かつ効果的な輸血療法の実施を目的として、輸血療法委員会が「輸血実施記録」を作成し輸血実施に関する情報を記録するシステムを2004年6月より導入した。それにより、臨床側と検査部側の両方で輸血実施に関する詳細な情報を共有することが可能となった。今回我々は、診療科より回収された「輸血実施記録」により即時型輸血副作用の発生状況を調査した。また、導入による利点や課題なども合わせて検討を行なった。
    〈輸血実施記録の概要と運用〉
    「輸血実施記録」は1血液製剤につき1枚、製剤と共に診療科へ払い出しを行なう。まず輸血実施者2名がチェックリストを元に患者と製剤の血液型、交差試験結果など必要な確認を行なう。そして、輸血前後に体温及び血圧の測定を行なうとともに、副作用発生の有無を計4回に渡りチェックする。記録終了後は診療科と検査部で一部ずつデータを保管する。
    〈方法〉
    2004年6月-2005年3月までに当院にて輸血を行なった患者303名、総輸血数1887バッグ、総単位数7203単位(Ir-RC-MAP 1264バッグ、2261単位、FFP 245バッグ、487単位、Ir-PC 378バッグ、4455単位)について製剤別、副作用別に発生状況を調査した。尚、自己血に関しての調査は今回行なわなかった。
    〈結果〉
    総輸血数に対する副作用の発生率は3.4%(65例)、内訳は発熱が1.3%(25例)、蕁麻疹が1.2%(22例)、血管痛が0.5%(9例)、不快感が0.3%(5例)、その他が0.1%(4例)であった。また、製剤別にみた発生率はIr-RC-MAPが3.2%(40例)FFPは2.0%(6例)、Ir-PCは5.0%(19例)であった。また、今回の調査では特に重篤な副作用の発生はみられなかった。
    〈考察〉
     輸血副作用はIr-PC、Ir-RC-MAP、FFPの順に高率に発生していた。Ir-PCにおいてはそのほとんどが蕁麻疹(17例)であり、発熱は(1例)に留まった。これは白血球除去フィルター使用による副作用予防の効果が要因の1つとして考えられた。Ir-RC-MAPでは発熱が半分を占め、その全てが輸血後に発生していた。しかし、体温測定は輸血の前後のみであるため詳細な体温の変化を発見できなかった可能性が示唆された。血管痛の多くは輸血開始後5-15分で発生したが、皆、一過性の症状で終了まで持続するものはなかった。
    〈結語〉
     「輸血実施記録」による輸血情報を元に即時型輸血副作用の発生状況を調査した。これを導入したことにより、製剤ごとの詳細な副作用発生状況を把握することができ、また、それらを集計することで臨床が必要とする輸血副作用に関するデータを検査部から提示することも可能となった。更に、輸血実施者の輸血副作用を早期発見することや、輸血を安全に実施することへの意識が高まったものと思われた。しかし、副作用発生時の原因究明と再発予防策などはまだ構築されておらず、今後の課題である。
  • 別所 裕二, 鈴木 美絵, 松島 由実, 村田 哲也, 川上 恵基, 山本 伸仁
    セッションID: 2K10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】methicillin耐性Staphylococcus aureus (MRSA)による病院感染に加え,薬剤耐性菌の増加が問題となっている。当院では1999年にICT(Infection Control Team:感染対策チーム)を発足して活動している。その活動の一環として実施している薬剤耐性菌をターゲットにしたサーベイランスシステムと2002から2004年における薬剤耐性菌の動向について報告する。【対象】細菌培養検体から薬剤耐性菌が分離された全入院患者,月平均54件【方法】臨床検査技師から臨床現場へ報告する細菌培養結果と同時にICTサーベイランス用紙を発行する。それをもとに専任ICN(Infection Control Nurse:感染管理認定看護師)が院内をラウンドし,各症例について感染状況(感染状態・保菌状態など)を判断したデータを臨床検査技師が集計・統計を行っている。感染・保菌率=感染・保菌患者数/のべ入院患者数×1000として集計した。それらのデータは週1回実施しているICTラウンドや感染対策委員会で分析し,継続的な監視を行なっている。【結果】MRSAの感染率に差はみられなかったが,保菌率は有意な上昇を認めた。また,その他の薬剤耐性菌による感染率に関しては減少傾向であった。【考察】以前,当院ではカルバペネム耐性緑膿菌を始めとする薬剤耐性陰性桿菌が多く検出されており,また報告された感受性データを見ていないと言った事例もあったため,ICTラウンドにおける適正使用の指導やICTニュースなどによる啓蒙を行なったことが,薬剤耐性陰性桿菌による感染率が減少したと考えられる。また各病棟薬剤師による抗菌薬に関する監視や指導の効果も大きいのではないかと思われる。MRSAは皮膚・呼吸器・消化管などに定着しやすく,健常人から分離されることも少なくはない。またMRSAは健常人にとって大きな問題とはならないが,患者がひとたび感染すると難治化することが多く,全身状態の悪化や入院の長期化を強いられることになる。MRSAの感染率に差がみられなかったことから十分ではないが感染予防対策が講じられているのではないかと考えられるが,MRSA保菌率の有意な上昇や患者の高齢化などを考えると,今後は徹底した,あるいはより強化した感染予防対策が必要不可欠である。大きな社会問題にまで発展している病院感染の予防対策を推進していくことは,質の高い医療を提供することや,病院の不利益を抑えることにつながり,ICTの活動意義は大きいと考える。今後も病棟ラウンドによるサーベイランスを継続することにより,薬剤耐性菌の動向を正確に把握するとともに,アウトブレイク(多発流行)の予防に務めていくことが必須である。
    【まとめ】MRSA保菌率の上昇は,近い将来感染率の増加につながると考えられ,スタンダードプリコーション(標準予防策)および接触予防策の徹底が重要である。ICTの一員である臨床検査技師は,サーベイランスを実施することで現状を把握するとともに,薬剤耐性菌の動向に関する情報をリアルタイムに現場に発信していくことが必要である。
  • 兵道 美由紀, 田上 ホナミ, 鳥居 さと子, 佐藤 紀子, 山田 久喜, 内藤 淳, 犬塚 和久, 金光 真治, 渡邉 篤
    セッションID: 2K11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】
    安城更生病院は、1935年に開設され、西三河南部地域における中核施設として展開する病院である。当院は1993年に感染対策マニュアルを作成し労働安全衛生委員会の部会として活動を開始し、2002年5月に新築全面移転を機に感染管理の実働組織としてICTを編成し3年が経過した。
    移転時の感染対策として環境整備の充実、熱水洗浄消毒装置・ペーパータオルが導入された。また週1回のICT活動を実践し、院内での感染動向の把握及び巡回も定期・臨時を含め院内を網羅し現場とともに問題解決のための原因究明に努めてきた。しかし感染率は移転前後を比べても減少させることは困難であった。
    【目的と方法】
    接触感染対策における手洗いの重要性を啓蒙することは大切であるが、具体性に欠けていたことに着目し、部署別の手指消毒サーベイランス(手洗い回数)を集計する仕組みを整えた。同時に感染管理の指標菌(MRSA)を常時監視することで、両者の比較から汚染の原因を解明することとした。またCDCの新しい手指衛生ガイドライン推奨による速乾性手指消毒剤を用いた手洗いについて、部署毎に適正な手洗い回数を予測し、1か月の目標使用量を示した。個別の介入として、まずICUでのMRSA感染率の低下を目標とした。ICUは構造上すぐに手を洗う事が難しいため、速乾性手指消毒剤を常時携帯させることにより、手洗い回数を増加させることとした。
    【結果】
     I CUにおいては速乾性手指消毒剤による手洗い予測回数を100回/日/患者以上と算出した所、予測適正使用量の約3分の1であった。MRSA新規発生率は100人に対して、2003年7月アウトブレイク時11.63で、2003年度平均3.27と院内平均0.86を大幅に上回っていた。介入により個人携帯性を導入した2004年2月以降の、速乾性手指消毒剤の使用量は著名に増加した。2005年3月の延べ患者数142人に対する使用量は約22,500mlであり、これは180回/日/患者の手洗いに相当する。2004年9月以降の院内新規発生例はなく、感染率は0.98(院内平均0.9)と低下した。
    【考察】
    ICUでの個人携帯性によるMRSA感染率低下は他部署への刺激にもなり、徐々に携帯性が拡大されつつある。適切な手洗いが接触感染対策に有効である事を証明できたものと考える。 ICTの役割は情報の発信及び共有をすることは勿論、感染対策に関する部署別の手順書を作成するなど、対策の理解を確実にするための方略として、教育とトレーニングが重要となる。リンクナースへの関わりなど、押し付けではなく自発的に活動ができるような働きかけが重要であると考え、今後の課題としたい。
  • 伊藤 幸代, 土屋 幸子, 脇坂 達郎, 島崎 豊, 岩堀  裕之, 諸戸  昭代, 大川  浩永
    セッションID: 2K12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    医療の安全や質保証が問われる今日、院内における感染制御は重要な課題として位置付けられている。
    当院では、平成2年9月より院内感染対策委員会を発足し、平成12年頃より委員会の作業部会による血管内カテーテル血流感染症のサーベイランスを行なっている。その後、昨年度より感染制御の実働部隊としてICT(感染対策チーム:Infection Control Team)を立ち上げチーム活動をより強化している。
    今回は、当院におけるICTの活動状況について報告する。
    【メンバー構成】
    医師-1名、看護師-3名、薬剤師-1名、検査技師-2名
    【活動内容】
    1.ミーティングとラウンド
    医療安全管理部(感染対策室)において、毎週火曜日、16時から1時間から2時間程度実施。
    2.具体的内容
    1)血流感染対策
    ・MRSAや血管カテーテル関連感染症のアウトブレイク時の対応として、関連部署へラウンドを実施。必要に応じて現場指導を行った。
    ・血管カテーテル感染症の問題となる症例について検討しラウンドを実施。必要に応じて現場指導を行った。
    ・『末梢カテーテル挿入時の感染対策』パンフレットを作成して各部署へ配布し啓蒙した。
    2)耐性菌対策
    ・病棟における耐性菌患者の対応と抗菌剤の使用方法などについて担当医と検討した。
    ・医局勉強会(抗菌剤検討小委員会主催)において症例検討会を開催した。
    3)術創感染対策
    ・術後創感染症の対応として関連部署の調査を実施。
    ・スタッフの行動レベルの検証、鼻腔MRSA保菌調査など。
    ・部署のカンファレンスにおいて対応策を検討した。
    ・関連部署におけるマニュアル作成と資源などの調整を行なった。
    ・手術部位感染症サーベイランスの導入に向けて現在検討中。
    4)その他
    ・リンクナース(看護部感染対策委員)のラウンドチェック項目について、オーディットシートを作成し運用。
    ・新人職員(研修医・看護師など)オリエンテーションと1か月後研修会を実施した。
    5)医療材料
    導入されたもの
    ・安全装置付き留置針。・単包アルコール綿。検討中のもの
    ・CV挿入時キット製品。・採血、注射時の手袋着用。・末梢カテーテル挿入キット。・手荒れ対策として、ニトリル製の手袋や他社のアルコール手指消毒剤。・標準予防策グッズをセットするホルダー。
    3.ICTメンバーの学会発表、研修会参加など
    1)学会発表
    ・日本手術医学会、日本農村医学会学、日本静脈経腸栄養学会、日本環境感染学会など
    2)学術講演
    ・地域の医師会研修会、保健所研修会、介護保険施設研修会、中部地区中材業務研究会、日本医療福祉専門学校特別講義、感染対策ワークショップ『安全で正しい輸液プロセス実践のためのノウハウ』など
    3)研修会参加
    ・厚生連院内感染予防対策研修会、厚生連院内感染予防対策セカンドクラス研修会、保健所主催結核予防研修会、他病院の感染研修会、日本医療評価機構主催病院感染制御と改善支援セミナー、東海院内感染予防フォーラムなど
    【おわりに】
    ICTを構築して一年が経過した。ICTは、他職種が集まり院内感染を制御する目的を達成するため、それぞれ専門分野の視点で具体策を検討し活動している。
    また、地域の医療施設や介護施設との連携と啓蒙活動を継続することは、中核病院としての使命であると考える。
    今後は、ICTを通じてさらに自己研鑽に努め、スタッフ教育を強化して感染制御の標準化や質の向上を図っていきたい。
  • 森 範子, 日比野 純子, 森 直子, 栗山 尚子, 二ノ宮 三生, 渋谷 智顕
    セッションID: 2L01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>当院では2004年4月より栄養支援委員会を設立し準備期間5か月を経て栄養支援委員会の目的であるエビデンスに基づいた栄養管理を行ない、早期回復・合併症の予防、生活の質の改善を図るため2004年9月より全科型NST活動を開始した。そこで当院のNST活動7か月の現状と課題を報告する。

    <方法>栄養支援委員会の構成メンバーは医師部門6名、看護部門15名、コメディカル部門5名(薬局1名・栄養科1名・検査科1名・放射線科1名・理学診療科1名)、事務部門1名の計27名である。NST回診はChairman(医師1名)、Executive director(医師1名)、Director(管理栄養士1名)、Assistant director(看護師1名・薬剤師1名)の5名で活動している。月一回の委員会では症例報告、勉強会等を行なっている。NST回診は週一回火曜日3時より5名で行ない各病棟ではリンクナースが回診に付く。対象患者の抽出はSGAを用いたスクリーニングで行い、アセスメント依頼書を受け介入する。その後NSTラウンド報告書としてリンクナースを通じて主治医に提案される。

    <結果>NST対象症例は現在までに46症例、述べ388例に介入した。良好にて終了・退院した症例22症例(47.8%)、全身状態悪化・死亡にて中止となった症例11症例(2.4%)、主治医からの中止症例3症例(0.6%)であった。一症例につき平均8±7回介入を行なった。対象患者の年齢は平均78.8±9.2才(90代6名・80代17名・70代14名・60代8名・50代1名)、介入時のAlb値3.0±0.7g/dl、TLC1285±473 /μL、介入時の投与エネルギー量平均1074.5±362.4kcal、必要エネルギー量平均1413.0±204.9kcalであった。(当院の栄養療法基準値:Alb値3.0/dl以下・TLC1000/μL以下)

    <考察及び結論>低栄養状態が見逃されている患者が多くNSTへ抽出されてくる患者はリンクナースの栄養管理への関心度に左右されるため、患者全員を対象としたスクリーニングが有効と思われる。栄養支援委員会の構成メンバーの栄養管理への意識や関心が十分ではなく今後も構成メンバーの栄養管理の必要性・早期介入の大切さ等の啓発が必要と思われる。褥瘡委員会へのリンクも必要である。最後に主治医のNSTへの理解と信頼を高めるにはアウトカムの公開ではないかと考える。
  • 山本 京子, 結城 敬, 中村 二郎, 佐藤 栄一, 平林 章江
    セッションID: 2L02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    佐久総合病院NSTは、栄養不良患者の早期発見と早期治療を行なうことによって、治療効果をあげ、合併症を予防し、さらには入院期間を短縮するために、チーム医療を行うことを目的として2002年準備委員会を立ち上げ活動を開始し、4年目を迎えた。その活動経過と現時点での成果を評価し、今後の維持・発展における問題点について検討した。
    【経過】
    2002年4月にNST準備委員会が設置され活動を開始し、栄養の知識を高めるため8月より院内輸液勉強会を月1回のペースで開始した。発足当初は、医師、栄養士、看護師、薬剤師、の数名で活動を行なっていたが、現在では、臨床検査技師、言語聴覚士、医事課が加わり多方面からのアプローチが出来るように組織化されている。
    2002年11月よりカンファレンスを持ち、2003年9月より回診を始めた。現在では毎週木曜、午後にカンファレンス・回診を行なっている。2003年10月NST依頼票を作成し、各病棟に配布した。NST依頼がしやすいように、またスタッフが患者の状態を把握しやすいようにと考えた方法である。依頼内容から経腸栄養をおこなっている患者の下痢や嘔吐など、トラブルを各病棟それぞれかかえており、経管栄養の進め方に悩んでいることがわかり、2004年3月には経腸栄養のマニュアルを作成した。2004年5月にはスキンケア委員会にNST活動が加わり委員会活動が設立された。2004年11月にはNSTパスを製作し、回診時に必要なデーターがそろうような形とし、主治医との連携が取れるよう、アドバイス記入欄の他に、主治医からもNSTへのメッセージが記載できるようにスペースを設けた。2004年12月にはこのような栄養剤の成分表を製作し、またNSTファイルとして各病棟に配布した。
    【NST介入症例数】
    2003年度は、22症例であったが2004年度は倍以上の56症例のNST介入依頼を受けた。
     グラフのように、脳外科からの依頼が急増している。リハビリ科・小児科・整形外科など依頼科も広がりを見せている。全身熱傷・重症膵炎は100%依頼を受けている。
    【特別加算食割合】
     特別加算食は、NSTの活動以前は20%と他施設と比べてもかなり低い数字だった。しかし啓蒙活動を行った結果現在では30%の数字をキープしている。特別加算食は10%増すと150万円/月の増収につながる。
    【問題点】
    1.現在の問題点として、スキンケア・リンクナースなどとの横のつながりがうすい。
    2.カンファレンス・回診にメンバーが参加する時間がない。
    3.NST勉強会への参加者が少ない。
    4.アンケートによる職員の栄養に関する意識調査の結果まだまだ関心が薄い。
    5.NSTの活動が院内に定着していない。
    などが上げられる。
    【今後の課題】
    今年度からNSTスキンケア委員会の中に再度NSTの必要性を浸透させ、院内全体で入院時栄養評価を導入していく準備に取り掛かっている。また、スタッフが興味の持てる勉強会の開催をして栄養療法に関心を持ってもらいNST活動を今以上に定着させていく必要がある。
    【まとめ】
     当院でのNST活動は4年目に入った。今後はNSTメンバーの能力保持と、モチベーションの維持が最も重要であり、このための努力を怠ってはならないと考えている。
    今後入院時栄養評価の導入と、経済効果など目に見える活動に取り組んでいきたい。
  • ー入院時と入院2週後を比較してー
    野口 真美, 山本 順子, 倉益 直子, 富永 勉
    セッションID: 2L03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
    当施設では2002年9月より病院全体のNutrition Support Team(以下NST)が発足し、全入院患者のスクリーニングと介入症例のアセスメント・リアセスメントからなるNST活動を実施している。入院患者の低栄養には、入院時低栄養と入院後低栄養に大別されるが、脳神経外科患者においては入院後低栄養となる頻度が高いと考えた。そこで、当施設で実施しているNST活動によって脳神経外科患者の栄養状態の変化を調べたので報告する。
    <方法>
    期間、2004年2月-5月、(1)脳神経外科病棟入院患者のうち、2週間以上入院した患者について入院時と入院2週時の栄養状態をSGA(スコア1-4)、客観的データ(スコア1-4)により独自に設定した全スコア(スコア1-4)で比較した。(2)栄養不良が疑われた患者について身体計測、臨床検査データをもとに栄養アセスメントを実施、評価した。
    <結果>
    期間中脳神経外科入院患者104名、2週間以上の入院36名。(1)36名中、入院2週後の全スコアが悪化した者21名。不変13名、改善した者2名であった。(2)入院時全スコア3以上の者は3名だったが、入院2週時全スコア3以上の者は14名で、入院2週時低栄養が疑われた。14名のうち2名が死亡、2名は明らかな改善を認め、残り10名のアセスメントを実施した。身体計測、臨床検査値からなるアセスメントの結果3項目以上の該当を低栄養と判断。6名が低栄養と判定された。
    <考察>
    脳神経外科患者は発症が急であり入院時全スコアはほぼ良好である。今回の研究では、入院2週後全スコアの悪化が認められ、少なからず入院後低栄養が明らかとなった。また、症状が重篤な症例ほど低栄養となりやすいことも分かった。当院NSTでは、入院時低栄養抽出のための、スクリーニングを実施。更に入院後低栄養を予測し、土曜回診を実施。栄養経路、アルブミン値などから、NST介入症例を抽出しアセスメント・プランニング・リアセスメントを行なっている。また、栄養状態改善の指標としプレアルブミン値を活用している。今後は、NST介入が脳神経外科患者の予後に影響反映していくか研究の必要がある。
    <結論>
    脳神経外科患者においては、入院時栄養状態は良好であるが、入院後低栄養となる例があり、NST介入が期待される。
  • (経口摂取に経腸栄養療法又は中心静脈栄養療法を併用した場合の比較)
    藤巻 加世子, 櫻井 優子, 新国 恵也
    セッションID: 2L04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    2004年6月からNST(栄養サポートチーム)が発足し、勉強会、回診、カンファレンス等の活動を行なってきた。病院長が任命したNST医師を委員長に、看護師・薬剤師・栄養士・臨床検査技師・言語療法士・医事担当者がそれぞれメンバーとなっている。当初はそれぞれのメンバーが何をすべきか理解できずにいたが、NSTに依頼された症例を通じて栄養の重要性が認識され、業務内容の見直し等に取り組んでいる。
    【NST活動について】
    栄養状態の悪い患者様に対してNSTに依頼票が提出されると、栄養士がアセスメントを行ない、必要栄養量の算出と投与計画の作成、NST医師に確認を取った後、主治医に提案する。NSTからの提案が採用され、実施されるとNSTメンバーが栄養療法をサポート、モニタリングしていく。回診、カンファレンスを定期的に行ない、患者様の状態の変化に伴って再アセスメントして、栄養管理計画の見直して主治医に再提案する。
    <症例>
    65歳.男性。低血糖性の意識障害で救急搬送される。1か月前から食事摂取量が減少し、急激にやせてきた。活動性も低下してきて、両下肢に浮腫が出現した。入院当初は抹消静脈栄養法を行なっていたが、自己抜去を繰り返し、食事摂取量は1割-2割だった。消化管機能に問題はないので、経鼻胃管栄養療法と経口食の併用で栄養投与することとした。必要栄養量を経口摂取のみで充足できることを目標にしたが、必要栄養量を充足することはできなかった。在宅に戻るために腸ろうを作成し、基礎栄養量を腸ろうから投与して食べたいものを食事から摂取することとした。
    <症例>
    89歳.女性.仙骨部褥瘡.食欲不振。2か月前から食事摂取量が減少し、下肢の浮腫と仙骨部に難治性の褥瘡ができたため入院となった。入院当初から中心静脈栄養療法を行ない、同時に3分粥食を併用していたが、摂取量は2割-3割だった。形成外科での褥瘡の治療と同時に全身状態の改善と経口摂取可能となることを目標にNSTに依頼があった。必要栄養量は中心静脈栄養にて充足されていた。経口摂取量を増量するために、食事内容の工夫や濃厚流動食の追加を行なった。褥瘡も完治し、中心静脈栄養から経口食へ移行し、退院。在宅では、濃厚流動食と普通食を併用して必要栄養量を充足することとした。
    <まとめ>
    2症例の経口摂取までの栄養状態と経口摂取量の増量までの日数について比較検討した。食事摂取量が、5割になった時の日数と、その後の食事摂取量が一定になった期間を比較した。腸管を利用した栄養療法の方が食事量摂取量の増加が比較的早い時期から始まり、安定した摂取量になった。
  • 鈴木 祥子, 山田 紀子, 森奥 登志江, 加藤 昌彦, 谷山 元, 早川 富博
    セッションID: 2L05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、わが国ではライフスタイルの変化に伴い糖尿病患者が急速に増加している。糖尿病患者の治療ではとくに食後の血糖管理が重要とされる。一方、今日では疾病予防や健康増進を目的とした食品が数多く市販され、そのひとつに食後の急激な血糖上昇を抑えるとされる発芽玄米がある。そこで今回は発芽玄米に着目し、その摂取が血糖管理に有用かどうかを検討するため、以下の研究を行なった。研究1では白米食と発芽玄米食をそれぞれ単独で摂取させ、研究2ではそれぞれを副食とともに摂取させて、血糖値、インスリン値に及ぼす影響をみた。
    【方法】研究1:対象は健常成人10名(男/女=4/6、平均年齢38.8歳、平均体格指数22.0kg/m2)とした。試験前日の22時以降は絶食とし、早朝空腹状態で白米食(白米70g)を単独摂取させ(白米食群)、摂取開始直前と食後30,60,90,120分に採血を行ない、血糖値、インスリン値を測定した。また、血糖およびインスリン曲線からそれぞれの曲線下面積(AUC)を算出した。つづいて同一対象者に1日以上空けて発芽玄米食(白米35gと発芽玄米35gの混合)を単独で摂取させ(玄米食群)、同様の検討を行なった。研究2:健常成人14名(男/女=7/7、平均年齢37.9歳、平均体格指数21.4 kg/m2)を対象とした。白米食群、玄米食群それぞれに副食を加えて摂取させ、研究1と同様の検討を行った。副食は両群とも同じ内容とした。統計には分散分析、多重比較およびT検定を用い、p<0.05を統計学的有意差ありとした。
    【結果】研究1:血糖値は両群とも食後30分で有意に上昇(p<0.01)し、食後60分で前値に復した。また食後すべての時間帯で玄米食群は白米食群よりも低値を示し、食後90分では有意に低値であった(p<0.01)。インスリン値は両群とも食後30分で有意に上昇(p<0.01)し、その後は徐々に低下した。食後90分、120分で玄米食群は白米食群に比し有意に低値を示した(いずれもp<0.01)。血糖およびインスリンのAUCは玄米食群が白米食群に比し有意に小さい値を示した(いずれもp<0.05)。研究2:両群の血糖値は食後30分で有意に上昇(p<0.05)し、その後は徐々に低下した。インスリン値は両群とも食後30分で有意に上昇(p<0.01)し、その後は徐々に低下した。食後すべての時間帯で玄米食群は白米食群に比して低値を示し、食後60分(p<0.05)、90分、120分(いずれもp<0.01)では有意に低値を示した。インスリンのAUCは玄米食群が白米食群に比し有意に小さい値を示した(p<0.05)が、血糖のAUCは両群に有意な差を認めなかった。
    【考察】発芽玄米単独摂取群は白米単独摂取群に比し血糖上昇がゆるやかで、インスリン分泌量も少なかった。副食を加えたところ、両群の血糖値に差を認めなくなったが、インスリン分泌は玄米食群で抑制された。以上より発芽玄米食の摂取にはインスリン節約効果が認められ、血糖管理への有用性が示唆された。
  • 水野 豊, 陳 鶴祥, 安藤 修久, 大池 恵広
    セッションID: 2L06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】平成12年3月の老健第65号の一部改正により「50歳以上の女性に対しては2年に1回のマンモグラフィと視触診による検診を原則とし、50歳未満の女性に対しては年1回の視触診を行なう」との通達が、また平成16年3月の厚生労働省のがん検診に関する検討会ではさらに現行の乳がん検診の見直しを行い、その内容として「マンモグラフィ併用検診を原則とし、検診対象年齢を40歳以上、検診間隔は2年に1度」とするなど、乳がん検診の中心はマンモグラフィ併用検診であることが明らかになってきた。
     この流れを受け当施設でも平成15年度よりドック受診者に対しマンモグラフィ併用乳がん検診の有用性を積極的に啓発してきた。そこで今回われわれは啓発活動開始後の平成15年、16年度とそれ以前の平成14年度のマンモグラフィ併用乳がん検診の現状を比較検討したので報告する。
     【結果】平成14年度の当施設でのマンモグラフィ併用乳がん検診受診率は28%であったが、啓発活動開始後の平成15年度は52%、平成16年度は64%と急激な増加を認めた。また平成16年度の年代別マンモグラフィ併用乳がん検診受診率は40歳代:63.8%、50歳代:65.6%、60歳以上:68.4%、30歳代:54.3%で各年代において平成14年度より明らかに受診率が増加した。平成16年度のマンモグラフィ併用乳がん検診受診者の年齢構成を検討すると、40歳代:36.1%、50歳代:38%、60歳以上:12.8%、30歳代:13.1%で乳がん罹患率の高い40歳代から50歳代が全体の7割以上を占めていた。
     マンモグラフィ併用乳がん検診の検診成績を検討すると、要精検率が平成14年度21名(8.5%)、平成15年度32名(6.9%)、平成16年度65人(12.3%)で受診率の増加にともないやや要精査率が増加した。一方がん発見率は平成14年度1名(0.40%)、平成15年度1名(0.22%)、平成16年度2名(0.38%)で各年度とも妥当な結果であった。
     【考察】今後はさらに罹患率が高い40歳代から50歳代のマンモグラフィ併用乳がん検診受診率向上のための啓発活動や、検診精度(とくに要精査率について)を維持していくために40歳代のマンモグラフィ2方向撮影の推進に努めていく必要があると思われた。
  • 浅野 雅嘉, 土屋 十次, 立花 進, 熊沢 伊和生, 川越 肇, 名和 正人
    セッションID: 2L07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    乳癌検診における視触診(以下、PE)、超音波検査(以下、US)および乳房撮影(以下、MMG)各々の検査法で検出し得なかった乳癌症例を比較検討することにより、三者併用検診の有用性を検証した。3年間に三者併用検診により検出した30例の発見乳癌のうち、PE見落し群は9例、US見落し群は6例、MMG見落し群は7例で、正診率はそれぞれPEが70%、USが80%、MMGが76.7%であった。MLOフィールド外で腫瘤を見落した1例を除けばMMGの正診率は80%であった。USを省いたPE・MMG二者併用検診では30例中2例、6.7%の乳癌が見落され、同様にMMGを省いたPE・US二者併用検診では3例、10%の乳癌が見落されたが、PEを省いたUS・MMG二者併用検診では1例、3.3%の乳癌が見落されるにとどまる結果であった。PEとMMG見落し群は各検出例に比し有意に小腫瘤径乳癌が多いが、US見落し群では有意差を認めず、USの見落しは腫瘤の大小ではなく乳癌のUS画像診断上の問題であることが示唆された。PE見落し群はMMG見落し群に比して有意に組織学的浸潤度が低い症例が多かったが、リンパ節転移は3例を数えMMG見落し群の1例より多く、更にその3例とも0.8cmから0.9cmの小腫瘤径乳癌であった。この非触知乳癌をUSとMMGが両者同時に、あるいは単独で辛うじて拾い上げていた。
  • 神谷 有希, 吉岡 登志子, 西野 直樹, 兼村 武浩, 山田 正, 松野 俊一, 中西 茂樹, 仲田 文昭, 山本 悟, 渋谷 智顕
    セッションID: 2L08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    目的: 平成12年3月に老健第65号でマンモグラフィ併用検診が厚生省より勧奨された。それにより視触診のみの検診から併用検診へと移行する市町村が徐々に増えている。    当院でも、近隣の市町村を中心に平成6年より三者併用(視触診+超音波+マンモグラフィ)検診を行なっているが受診者は平成12年度より増加している。また、今日では三者併用検診(二者併用検診)が定着し始めている。

        今回、当院においての検診成績を提示すると共に、検診受診初年度ではなく、繰り返し受診により発見された乳癌症例について検討したので報告する。

    対象:平成12年4月から平成16年3月。
       その間、隔年又は通年検診を受診し、検診で指摘され当院において癌と診断された10症例。

    方法:癌症例において三者の所見、病理型について検討した。

    考察: 今年度よりマンモグラフィ併用検診対象者が40歳代まで引き下げられたが、当院の癌発見年齢も40歳代が多い。また、それらの乳腺評価は不均一高濃度であった。   発見乳癌をモダリティー別に見ると、やはりマンモグラフィ単独発見乳癌は多いが、超音波のみで発見された乳癌も29例中2例を占めた。超音波においては、術者の経験等が問題であり、まだまだ検討の余地はあるものの、三者併用検診の有用性が示唆された。また、要精検率が低いのも三者併用検診の利点である。    くり返し検診で発見された乳癌においては、全ての症例T1N0 Stage1と初期乳癌であった。前年度は、すべての症例において異常なしという結果であったが、再度マンモグラムを見直してみると、指摘できたのではないかと思われるものもある。この原因として、ポジショニング不良や、管理不良のフィルム、読影技術、超音波に関しては術者の技術力等が考えられる。今回経過を追ったマンモグラムを見たことで、乳腺は各個人の経時的変化を見ることが大変重要であると分かった。マンモグラム上経時的変化を追う為には、精度の保たれた現像フィルムと、安定し統一されたポジショニングが必要であり、それは読影を左右する。また、CR画像においては、検討の余地がかなりあるパラメーターも原因の一つではないかと考えられ、デジタルマンモの難しさも感じられた。

    結語:早期乳癌を発見するにはくりかえし検診は重要である。発見率を上昇させる為に経時的変化の追える最良のマンモグラムを提供し、超音波技術を向上させ、地域の早期乳癌発見に努めていきたい。
  • 安西 里奈, 小宮山 レイコ, 宮崎 勝吉, 佐々木 隆昭, 海津 元樹, 親松 学, 服部 晃
    セッションID: 2L09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>本邦では近年乳癌の発生率が増加し、疾患自体はもちろん検診や精密検査の方法についても関心が高まっています。乳癌は乳腺実質である乳腺小葉と乳管内に発生し、その進展様式には周囲浸潤型発育と乳管内進展が存在し、各種画像検査により腫瘍の広がりを術前に把握することが治療計画を作成するために必要となります。
    <目的>温存療法で腫瘤の部分切除を行なう際、病変の取り残しで問題となるのがその周りの乳管内進展巣の存在です。触診はもちろん、マンモグラフィーや超音波検査では、乳管内進展の三次元的な把握は困難です。CT,MRIで使用される造影剤は、乳癌病巣のみではなくこの乳管内進展巣へも取り込まれます。これらの検査で、造影剤が腫瘍の進展範囲に取り込まれ造影される様子を時間的,空間的に捉え、乳癌の温存可否や温存の場合の切除範囲決定における治療計画に役立てています。我々はこの方法を用いて乳腺疾患の術前検査を行なっており、今回その局所切除例における成績を調査することにしました。
    <方法>当院で2003年4月-2005年3月までに乳腺DynamicCT・MRIの両検査を行った症例について比較検討を行ないました。CT機種は東芝,Asteionを使用。撮影条件は、表1を参照して下さい。撮影体位は、あおむけで腕は顔の前で組むようにし、乳房の形態が手術時の体位に近くなるようにしています。
    MRI機種は東芝,VISART/Progress 1.5Tを使用。撮影条件は、表2を参照して下さい。撮影体位は呼吸による乳房の移動を無くし、より鮮明な画像を得るため患側の乳房をコイルのなかに入れ、うつ伏せで行っています。
    <結果>当院で2003年4月-2005年3月に悪性を疑われ、CTとMRIを両方施行した症例は40例ありました。そのうち、30例が乳癌であり、22例に温存術が行なわれました。温存症例のうち切除断端陽性であったのは1例のみでした。
    <考察>MRIやCTで得られた画像は、病変の広がり診断ができ、治療の方針決定および乳房温存縮小術のために役立っていると思われます。さらに3次元画像の作成は患者様への説明における直感的理解にも有用と思われます。
  • 内藤 早苗, 佐藤 嘉洋, 鍛代 久美子, 小俣 芳彦, 熊木 伸枝, 飯尾 宏, 別所 隆
    セッションID: 2L10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    乳腺の葉状腫瘍は線維腺腫と類縁の腫瘍で,非上皮性成分である間質と上皮成分である腺成分との混合腫瘍である.線維腺腫よりも線維性間質の増生が強く,しばしば葉状を呈する.間質の細胞密度,細胞異型,腫瘍辺縁の周辺組織への浸潤性により,良性・境界悪性・悪性に分類される.今回,我々は肉腫様変化を伴った悪性葉状腫瘍を経験したので報告する.
    【症例】
    69歳,女性.数年前より時々胸背部痛を認めていた.心臓カテーテル検査のため,当院循環器内科へ入院した.カテーテル検査を施行した際に,左乳房に手拳大の腫瘤を看護師に指摘され,当院外科を紹介受診した.
    腫瘤は可動性で弾性硬,マンモグラフィーでは左乳房下外側に境界明瞭な分葉状の充実性腫瘍を認めた. 超音波画像においては,4.9×1.8×2.4cm大の腫瘤で,境界はほぼ明瞭,分葉状を呈し,内部エコーはほぼ均一であった.その後,細胞診にて“結合組織および上皮性混合腫瘍”を疑い,左乳腺腫瘤切除術が施行された.
    【細胞像】
    超音波下穿刺吸引細胞診では,軽度核腫大した,結合性が強く大きなシート状の集塊を伴う乳管上皮と,裸核の筋上皮様細胞が散見された.また,背景には軽度の核腫大,類円形核を伴う孤立散在性から小集塊を伴う細胞を認めた.
    【組織像】
    摘出された腫瘤の肉眼所見では,境界はほぼ明瞭で,白色から淡褐色調の6.0×5.0×4.0 cmの充実性腫瘤であり,一部は分葉状増殖を示していた.分葉状部分と腫瘤部分とでは組織学的相違がみられたが,境界部では移行像も認められた.
    分葉状部分では背景に浮腫状から粘液基質様の変化を伴い,紡錘型腫瘍細胞が増殖していた.核は不整で腫大し,核小体は明瞭であった.腫瘍細胞は部分的に周囲脂肪組織へ浸潤していたが,腺上皮や筋上皮には異型は見られなかった.
    腫瘤部分では,上皮成分はほとんど無く,紡錘型腫瘍細胞と血管成分が増殖しており,淡明または泡沫状の豊かな胞体を持つ腫瘍細胞も散見された.核分裂像は双方の部分において2から3個/10HPFであった.
    腫瘍細胞の一部はオイルレッドO染色にて陽性であった.免疫組織化学染色において,腫瘍細胞はVimentinに陽性で,S-100蛋白の発現は一部に認められた.このほかにCytokeratin,Desmin,α-Smooth muscle actin,CD34,Factor VIII,CD68,Myoglobin,Skeletal Actinは陰性であった.
    以上の所見より,粘液型脂肪肉腫様の変化を伴った悪性葉状腫瘍と診断した.
    【結語】
    悪性葉状腫瘍においては本症例に見られたような脂肪以外に骨,軟骨,筋肉への分化を示す場合も報告されている.今回の細胞診検査では,異型細胞の採取量が少なく,悪性変化について指摘出来なかった.超音波下穿刺吸引細胞診検査は組織の一部をピンポイントで採取しており,組織診との診断の食い違いがみられることがある.しかし,画像や検査結果を総合的に判断し,腫瘍が大きい場合や内部像の性状が異なる場合は,数箇所穿刺することにより,精度が向上すると考えられる.
  • 馬場 真子, 長谷川 しとみ, 伊藤 洋一
    セッションID: 2M01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     褥瘡対策は高齢化社会にともない看護サイドだけの問題ではなくなってきている。当院では病院全体で取り組む必要性を感じ、医師(外科・皮膚科)、看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、医療事務員のメンバーで褥瘡対策委員会を構成し活動を行なってきた。活動を開始して2年以上経過し現状を振り返り報告する。
    【実際の活動】
     2002年7月に褥瘡委員会発足。診療計画書、褥瘡対策のフローチャートの作成、大浦スケールの解釈の検討を行なっていった。また、物品の整備として骨突出測定器と体圧測定器、体圧分散マットレス、ポジショニングクッションを必要数購入した。同時期に褥瘡対策活動の内容を広めると共に褥瘡マニュアルの見直しを目的に各病棟・外来から代表を1名選出し、チーム会を結成した。同年11月より褥瘡回診を開始し、創処置と褥瘡対策フローチャートの活用状況を確認し、指導を行なった。2004年8月よりWOC認定看護師が褥瘡回診に加わっている。
     2003年1月より委員会では褥瘡患者の事例検討を開始した。各部門での褥瘡患者への関わりを報告し方向性を検討した。また使用している褥瘡発生報告書、診療経過表などを評価、修正していった。看護師によるチーム会でも事例検討を開始し、患者用の指導パンフレットも作成した。
     教育としては、褥瘡チーム員を中心に院外の褥瘡ケアに関する研修や学会に参加、院内でも褥瘡予防について褥瘡チーム員が、褥瘡治療について皮膚科医師が勉強会を数回開催した。2004年度は、新採用者研修に「褥瘡対策」を取り入れた。また、WOC看護師主催のスキンケアや褥創についての研修を行い、啓蒙活動に務めている。
    【結果】
      褥瘡委員会、褥瘡チーム会、褥瘡回診の定例化が浸透した。褥瘡委員会では事例に対し各部門から意見を出し合い、多角的に見た意見、今後の方針の検討が定着してきた。褥瘡チーム会では、各病棟の褥瘡患者について発生原因を振り返り対策を考える事が定例化し、珍しい症例や褥瘡対策、ケアで問題と感じる事を検討し、共有する事ができている。
     週一回の褥瘡回診では、前日に各病棟で患者毎の褥瘡対策の評価がされ、記録に残す事が浸透してきた。創周囲の洗浄方法、被覆材の貼付方法などの統一も図れてきている。しかし、褥瘡発生率(持ち込みを除く)は、2003年度3.00%、2004年度3.56%で、0.56%増加しており、成果としては認められない。
    【課題】
     院内の褥瘡対策のシステムは確立できてきているが発生件数は減少に至っておらず、発生原因の分析、対策、予防策の適正な実施と患者個々の状態変化に対応できる観察、判断能力の強化が必要であると感じている。また終末期患者における褥瘡発生が褥瘡発生患者の3割強を占めている為、いかに患者にとって苦痛なく個別に対応した予防策をとっていく事も課題と感じている。
    【まとめ】
     個々の事例を大切にし、システムを活用し共有が図れる事で褥瘡対策の充実を図っていきたいと考えている。
  • 槙本 利美, 奥本 真史, 奈良木 八重子, 福本 久省
    セッションID: 2M02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】当院は山間部に属し、入院患者の占める老年者の割合は、約7割(平成16年11月12日実績69%)で、褥瘡の発生するリスクの高い患者が多く存在する。そこで、平成13年より褥瘡ケアチーム(DCT)の活動を開始し、毎週褥瘡回診を行っている。そして、入院時よりすべての患者様において、ブレーデンスケールと日常生活自立度でアセスメントし、その結果に基づいて体圧分散寝具を選択、使用している。今回仙骨部の病的骨突出の程度と体圧と体圧分散寝具の使用状況を調査し、検証と若干の示唆が得られたので報告する。
    【目的】体圧分散寝具と体圧と骨突出の関係をしらべ体圧分散寝具が的確に使用されているか検証する。
    【方法】当院入院中患者様32名を対象に調査を行った。使用器具として、簡易体圧測定器「セロ」、骨突出スケール「堀田式骨突出度簡易判定機」を用いた。そして、骨突出スケールにて骨突出の程度の測定、対象患者様の仙骨部の体圧を測定、当院の体圧分散寝具の使用状況を調査した。
    【結果】当院では、入院患者の約7割の人に病的骨突出が確認された。骨突出中以上では、マット使用郡32.0±16.1mmHgに対し、マット非使用郡52.5±18.4mmHgと有意(p<0.008)をもって減圧していた。また、病的骨突出が中度以上、日常生活自立度B2以上の患者様においては体圧分散寝具を使用していた。
    【考察】今回の調査では、エアー系のマットを使用している人の体圧の平均値は18.7mmHgで、最高でも23.1mmHgであった。褥瘡発生危険域である32mmHg以上は、クリアしていた。しかしウレタン系のマットを使用している人の体圧は、平均が、37.7mmHg最高は、66.7mmHgであった。この結果から考えるとウレタン系のマットを選択した場合は、皮膚の観察を十分に実施し、簡易体圧測定器で体圧を測定後、日常生活自立度や、栄養状態、BMIなどを考慮してマットの種類の変更や、他の除圧用具との併用などの工夫が必要である。このように体圧分散寝具を選択し使用することは、褥瘡予防に大変重要なことであると思われる。これに加え、私たちは体位変換や感染予防のための清潔ケア、皮膚の観察を充分に行いセルフケアの充実を徹底し褥瘡予防に努めている。そのような日ごろのケアの効果も今回の結果につながっていると推測される。
    【結語】今後褥瘡委員会では、調査結果を生かして17年度は入院時のアセスメントシートの改善にとりかかる予定である。また職員全体や、地域の医療施設、介護施設を対象に教育、啓蒙活動を強化し、褥瘡発生ゼロを目指したチーム医療を実践して地域社会にも貢献していきたい。
  • ー体圧計を使用して現状を知るー
    青木 理奈, 浅井 香予
    セッションID: 2M03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     高齢化社会を向かえて中山間地に位置する当院では、入院患者の多くが高齢者によって占められており、外科系病棟である当病棟においても術後一時的に寝たきり状態となる患者も多くなっている。また、栄養状態の低下や糖尿病などの基礎疾患を持っていることも多く、褥創予防のための体位変換は看護者にとって重要な業務となっている。
     褥創は、一定の場所に一定以上の圧力が加わることによって虚血性壊死が生じて発生する皮膚潰瘍であり、予防のためには効果的な体位変換が必要と言われている。しかし、体位交換の方法(使用するクッションの種類・角度)は人様々ある。そこで現状のケアを見直すため検討したので、その結果を1つのプロセスとして報告する。
    【対象および方法】
    対象・・当病棟に入院中の体位の異なる3名の患者を対象とした。
    方法・・体圧計を使用して、以下の手順にて検討を進めるとともに当病棟の褥創発生率についても調査した。
    (1)現状を知るため、除圧なし(体位変換用枕使用せず)および除圧あり(体位変換用枕使用)にて臥位・側臥位の体圧を測定した。
    (2) (1)の結果を参考に、研究メンバーで体圧がうまく分散されている体位を検討した。
    (3)看護者が統一した体位交換が出来るよう、患者個々の枕元に体圧計を使用して行なった体位の写真を貼付する。
    【結果および考察】
     看護者が30度ルールを意識しているためか体型に関わらず、全ての数値において30mmHg以下となった。しかし、踵の除圧に対する意識が強いためか、腸骨と外果との圧の差が大きくなっている。また、当病棟の褥創発生率は背部8%、仙骨51%、下腿17%、腸骨8%、後頭部8%、踵部8%であり、仙骨での発生が半数を占めていた。病院全体としては、背部4%、仙骨44%、下肢7%、腸骨15%、後頭部2%、踵部2%、大転子7%、肩2%、臀部7%、尾骨2%、指2%となっていた。
    【まとめ】
     当病棟の看護者が施行している体位交換は、30度ルールを意識して施行していることが判ったが、臥位においては体圧の差が大きいため見直しが必要であると考える。自分達が施行しているケアでは、褥創の好発部位とは異なる他の部位(背部・下腿)に褥創が多く発生していることが分かった。そこで、看護者全員が再度体位変換の知識をしっかりと身につけ、統一されたケアが患者に提供出来るよう今後も継続した研究を続けていく必要があると考えられる。
  • 西尾 弘子, 鬼頭 ひと美, 森 和子
    セッションID: 2M04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
     【はじめに】
     当院では、直達牽引を必要としている患者に対して、ブラウン架台を使用していた。ブラウン架台は、確実に良肢位を保持できるというメリットがある。反面、身長・脚長差のある症例には調節が困難であり、架台自体が固く褥瘡が発生しやすいというデメリットがあった。近年、他施設では以上のことより、直達牽引時にビーズクッションや改良架台を取り入れている。ビーズクッションは、体圧が分散され、通気性も良いとされていることから、褥瘡発生率を低下させるといわれている。そこで、当院では整形外科の医師の協力の下、2004年6月1日よりビーズクッションを取り入れた直達牽引法を導入した。そこで、今回ブラウン架台よりビーズクッションへ変更後の褥瘡発生について検討したので報告する。
    【対象・方法】
    1、 対象:2003年1月1日-2005年5月31日間に当院にて直達牽引を実施した。
         患者229例を以下の2群に分類
    A群:ブラウン架台を使用した患者173例
    B群:ビーズクッションを使用した患者56例
    2、 方法:1)褥瘡発生率
         2)既往歴(高血圧・糖尿病)で分類した褥瘡発生率
         3)血液データー(総タンパク,血清アルブミン,ヘモグロビン),身体計測(肥満指数)で分類した褥瘡発生率を比較・検討した。
    【結果】
    1)褥瘡発生率はA群:26.0%,B群:15.0%と減少傾向ではあるが、有意差は認めなかった。
    2)高血圧を有する患者の褥瘡発生率はA群:25.0%、B群:10.0%と有意差は認めなかった。  糖尿病を有する患者の褥瘡発生率はA群:55.6%、B群:0%と有意に減少を認めた(p<0.05)。さらに、少数例であるがビーズクッションとエアマットを併用することで、糖尿を有する患者に褥瘡は発生しなかった。
    3)タンパク、血清アルブミン値で分類した患者の褥瘡発生率はA群、B群とも有意差は認めなかった。ヘモグロビン値11.3g/㎗未満の患者の褥瘡発生率はA群:22.6%、B群:7.3%と有意差を認めた(p<0.05)。
  • !)WOC看護認定看護師介入による褥瘡ケアの改善!)
    大槻 尚美, 羽賀 久晃, 桑田 裕美, 岡谷 知恵, 岡田 亜砂子, 小野 朋子, 宍戸 正子, 森田 町子, 平山 薫
    セッションID: 2M05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>脳神経外科疾患では、脳圧のコントロールにおける頭側挙上の保持が余儀なくされている。また、意識障害に伴う体動不能により褥瘡発生のリスクが高く、褥瘡形成すると治癒までに長期を要する現状があった。今回、ポケットを形成したIV度の褥瘡に対しwoc看護認定看護師(以下wocナースとする)のコンサルテーション介入により、治癒過程に応じたスタッフへの指導、徹底したケアの実践により褥瘡の治癒が促進した症例を経験したので報告する。
    <研究方法>研究期間:2005年2月2日から4月12日
     方法:1,wocコンサルテーション依頼方法と活動内容
      2,褥瘡ケア方法(従来のケアとwocナースの指導によるケア)
    3, DESIGNで評価
    症例紹介:57歳女性 くも膜下出血 水頭症
    意識状態遷延 GCS10点(E4V2M4)
       四肢麻痺あり自力体動不能
       第14病日で褥瘡形成 ポケットを形成したIV度の褥瘡を有する患者
    倫理的配慮:本研究での写真撮影や経過内容において個人が特定されないように配慮することを説明し、同意を得た。
    <結果>当院のwocコンサルテーション依頼は規定の依頼書に相談内容を記載しwocナースへ提出。wocナースは初回訪問時に環境や創傷の治癒の評価を行ない、従来のケアの問題点や今後のケア方法を指導。
    従来の褥瘡ケアは創部の洗浄後、適宜回診時外科的デブリードマンを施行しつつヨードホルムガーゼを使用しガーゼで被覆する方法であった。予防には体圧分散寝具(エアーマット)を使用し、2時間毎の体位変換を行っていた。wocナースの初回訪問での指導内容は、(1)創周囲の皮膚・創面の洗浄方法(2)ガーゼの当て方(3)マットレス内圧設定チェック(4)シーツ・バスタオルの最小限の使用について(5)体圧のカットオフポイント(6)積極的な外科的デブリードマンの推進であった。指導内容のケアを徹底し1週間毎の訪問時には、必ず医師も同席し、評価・根拠に基づいた治療方針についてのディスカッションが行なわれた。褥瘡は、コンサルト初回DESIGN合計23点であったが、62 日を経過し、10点へと改善がみられた。
    <考察>褥瘡ケアは、病棟の医師と看護師が取り組むものだという概念があった。しかし、今回のwocナースのコンサルテーション活動によりチーム医療の重要性を再認識できた。的確な指導により、従来のケア方法の問題点をみいだすことができ、治癒傾向につながった。従来のケア方法の問題点として考えられることは、除圧が不十分であったこと、経過に合わせた処置方法ではなかったこと、スキンケアが不十分だったことが挙げられる。これらを改善したことが褥瘡の治癒を促進させたと考える。そして、褥瘡の治癒過程に合わせたドレッシング材や薬剤の選択は効果的であったと言える。また、体圧分散寝具の使用は、適正を十分把握しなければ、効果を得ることは困難である。
    woc ナースの訪問は,スタッフに科学的根拠に基づいたケア方法を認識させ、ケアの質を高めることができた。また、それだけではなく医師・褥瘡リンクナース・スタッフの治療やケアに取り組む体制が重要であることを知るよい機会となった。
    <結語>チーム医療を実践し、科学的根拠に基づいた褥瘡ケアをすることで創傷治癒を促進することができた。
  • 大井 初江, 近藤 貴代
    セッションID: 2M06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    平成14年10月より厚生労働省より褥瘡対策未実施減算の告示通知がなされ、体圧分散マットレス(以下マットレスと称す)の使用が対策に含まれた。当院においても委員会の年間活動としてマットレスの適正使用調査を行ない強化してきたが、平成15年10月より標準マットレスの見直しについて検討しリバーシブルマットレスを導入した。マットレス導入前の問題およびその後の状況について報告する。
    【標準マットレス導入前の問題点】
    1.緊急入院の際、マットレスに空きがないことが多く必要患者に早期対応できない状況があった。
    2.夜間など人員が少なく病棟間のマットレスの貸し借りなどで労力が必要であった。
    3.マットレスの早期対応が出来ないことにより褥瘡が悪化したケースがあった。
    【リバーシブルマットレス導入後の状況】
    リバーシブルマットの使用基準として、ソフト面使用は褥瘡発生リスクのある日常生活自立度B・Cの患者やOPE後3日間の患者、夜間の緊急入院や患者の状態に変化があった場合とした。ハード面の使用はOPE後3日目以後で離床できる患者、ADL自立患者、臥床時間が短くなった場合やリハビリ期の患者である。マットレス導入前の平成14年は入院時の持ち込み褥瘡を含めて、ステージIII以上の重度の褥瘡患者は6名であった。マットレス導入後はステージIIの浅い褥瘡発生はあったがステージIIIに移行する重度の褥瘡患者はいなくなった。リバーシブルマットの切り替え時に患者の意見を確認したが、一時的な違和感の声はあったがその後の寝心地等に問題はなかった。交換後の利点としてマットレスに抗菌、防水効果があるため、防水シーツやバスタオルの使用が軽減できた。また汚染時はぬれたタオルでマットレスを拭くことができるため便利であった。夜間入院時に患者の状況に合わせて看護師1人でマットレスを簡単に準備することができた。
    【考察・まとめ】
    褥瘡予防のためにはマットレスの適正使用が重要であるが、その対応が早期にできるようになったことは大きなメリットである。これまでの標準マットレス使用時のマットレスパッドが不要になったことで、寝具のずれやしわが解消できたことも褥瘡予防につながった。さらにマットレスの使用基準を定めたことで、スタッフが同一レベルで交換ができるようになり予防対策の意識づけとなり、さらにスタッフの褥瘡予防への関心が高まった。褥瘡予防は標準マットレスを見直し検討することも重要課題であると考える。
  • 浅井 貴子, 瀬高 有希子, 花田 祐子
    セッションID: 2M07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに
    赤塚1)は「手術中の同一体位や非生理的体位で,最も問題になるのは神経障害と皮膚障害である.褥瘡は長時間の同一圧迫・応力・末梢組織の虚血・皮膚の湿潤により生じやすい.」と述べている.当手術部門の年間手術件数は2500件に及び,平成16年度は19件の褥瘡発生を認めたが,手術室退室時,翌日には17例が消退していた.予防対策として,除圧・除湿・手術担当チームによる手術体位の固定,手術前の患者の情報交換など褥瘡ケアリーダーを中心に取り組んだ.
     褥瘡発生要因を分析し対策を講じ,継続的にケアを提供する事が褥瘡予防に有効であることが示唆された.

    I.研究目的
     手術室で発生した褥瘡の発生要因を分析し,褥瘡予防ケアの有効性を検討する

    II.研究期間
     平成16年4月-平成17年3月

    III.研究方法
    1.研究対象
     平成16年度全手術2528件中,褥瘡が発生した患者19例
    2.研究方法
    1)データ収集・分析方法
    (1)手術後褥瘡を発生した事例を「褥瘡予防に関する診療計画書I」に記載
    (2)(1)の記載内容から,手術体位,手術時間,褥瘡発生部位,褥瘡深達度,検査データ(アルブミン・TP・Hb)褥瘡発生の要因を分析
    (3)褥瘡発生要因から予防対策を検討

    IV.結果及び考察
     H16年度の手術件数は2528件であり,褥瘡発生件数は19件(0.75%)であった.診療科別では,外科10件,整形外科8件,泌尿器科1件であった.褥瘡が発生した手術体位は腹臥位8件,仰臥位7件,砕石位4件であった. 褥瘡発生の手術時間は5時間以内が14件,5時間以上が5件であった.手術時間3時間以内で褥瘡が発生した事例は8例であり,手術時間が長くない患者にも発生している事がわかった.褥瘡発生部位は,仙骨部の発赤6件,顔面5件,腋窩,背部と認めた.深達度は発赤13件・水疱形成した事例は5件で整形手術の特殊体位であった.褥瘡発生患者のBMIは,平均21.7(±4.3)であり,TPなど問題となる検査データは認めなかった.褥瘡発生の全事例中,翌日以降,継続して観察や処置が必要だった事例は2件で,その要因は,摩擦と皮膚湿潤によるものと考えられた.早期にWOC看護師の指導や皮膚科受診を実施した事で増悪を防ぐ事ができたと考えられる.また,褥瘡が発生した19例の中には,発生時期と手術体位の因果関係を明確にできない事例も認められた.調査した19例の結果から当手術部門の褥瘡発生要因として,特殊体位・摩擦・皮膚の湿潤などが考えられる.これまで皮膚湿潤対策としてワセリン軟膏を塗布していたが,手術後の患者の皮膚は汗などで常に湿っている状態であった.除湿シーツの導入は,皮膚の乾燥を維持できた事で褥瘡予防に効果があったと考えられる.手術室における褥瘡予防は,専門的視点から要因を分析し,看護師が褥瘡に対する知識,技術を習得して予防ケアを実施する事が重要である.

    V.結論
    1.事例毎に褥瘡発生要因を検討した事が褥瘡予防につながった.
    2.特殊手術体位の除圧・除湿・摩擦対策が示唆された.

    【引用文献】
    1.赤塚正文:手術体位が与える影響と注意点,オペナーシング,13(4),p17-21,1998.
  • -予防対策基準を見直して-
    菊地 ゆかり, 鈴木 かほる, 本田 智子, 山城 啓子
    セッションID: 2M08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
     大腿骨頚部骨折患者に対して院内の褥瘡対策をもとにケアをしてきた。
     しかし、平成15年度は患者75人中12人が褥瘡発生となった。平成15年度の患者データより牽引中と術後の患者に合わせた除圧材の使用方法、紙オムツを使用しないことでの皮膚の乾燥、ベッドアップ時に身体がズレない方法をとることが褥瘡発生予防につながると考えた。
     そこで、具体的な対策基準を作成し、実施した結果、褥瘡発生患者の減少につながったので報告する。
    <研究方法>
    1.期間:平成16年4月1日から平成16年10月31日
    2.対象:手術対象の大腿骨頚部骨折患者47名
    3.方法:患者の体型に合わせた褥瘡予防対策基準の見直しと実施
        基準の要点
         (1)除圧(体圧測定結果を指標とした除圧材の使用)
         (2)皮膚の乾燥(オムツの非使用、排便調整)
         (3)ズレ防止(ベッドアップ時の膝下枕の使用)
         (4)観察、プロペト塗布
    <結果>
    1.平成15年度と平成16年度の患者状況はt検定を行なった結果、年齢・男女比・検査データ(Hb・TP・Alb)では有意差はみられなかった。
    2.褥瘡発生患者は平成15年度12人(14%)から平成16年度1人(2%)に減少した。3.平成16年度の褥瘡発生患者は
    1人で、手術後3日目に湾曲した背部に表皮剥離が発生した。
     <考察>
     大腿骨頚部骨折患者の場合、体動により骨折部や創部への疼痛が増すことから、患者自身で身体のズレをなおしたり、除圧に有効な体位変換ができない。そのため患者に疼痛を与えないような除圧方法やズレを防ぐ方法を考える必要があった。
     今まで牽引時は、ベッドアップ30°に上半身を挙上していたため、仙骨や臀部に圧が加わり、褥瘡が発生していた。そのため、医師にベッドアップしなくても牽引効果は変わらないことを確認し、食事以外はベッドアップしないことで除圧を図った。また、体圧測定の結果より骨突出のない患者はウレタンマットだけで除圧が図られたが、骨突出のある患者はウレタンマットにレストンマットを重ねることで除圧が図れた。オムツ使用については、入院前の排泄状況を確認し、尿失禁のある患者は尿管挿入し、便失禁のある患者は排便調整を行ない、オムツを除去し、T字帯を使用したことで、皮膚の乾燥を図った。手術後は、食事時ベッドアップすることで、身体が下がり、背部や仙骨にズレが生じたため、膝下枕を作成し、使用した結果、食事中のズレはなく効果があったと考える。
     平成16年度の褥瘡発生患者の1人は、仙骨の骨突出や背部の湾曲があり、また、理解力の不足から独力で身体をずらすためリスクが高いと考え、対策基準の実施と背部の湾曲に合わせて穴開きレストンを作成し、湾曲部を浮かせるように除圧を図ったが、身体を動かすことでレストンがズレてしまい除圧されなかった。
    <結論>
    1.大腿骨頚部骨折患者の牽引中及び手術後に行う除圧、皮膚の乾燥、ズレ防止、観察、プロペト塗布のケア方法を作成、実施した結果、褥瘡発生予防ケアとして効果があった。
    2.背部の湾曲がある患者には、体型に合わせた除圧対策を今後も検討する必要がある。
  • 前島 ゆかり, 星 葉子, 長谷川 幸代, 天貝 恵子, 宮本 佳代子
    セッションID: 2M09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】原病や化学療法により免疫力が低下している患者が多い当病棟では、褥瘡が発生すると治癒しにくいという印象があった。今回、易感染状態でDESIGN14点褥瘡を形成した両下肢不全麻痺の患者に対し、褥瘡対策チーム、病棟スタッフが協働して関わり、回復した症例を経験したので報告する。
    【研究目的】褥瘡が回復に至った事例を通し、患者教育、褥瘡対策チームとの関わり、ケアを振り返ることで、スタッフの意識の変化と今後の褥瘡ケアについて検討する。
    【倫理的配慮】写真撮影や成果発表において個人が特定できないよう配慮することを約束し同意を得た。
    【研究方法】
    期間:2004年5月17日褥瘡発生日から7月27日褥瘡治癒日まで
    分析方法:褥瘡の状態をDESIGNにて評価
    【事例紹介】
    61歳 女性 2002年12月急性リンパ性白血病を発症
    2003年3月両下肢不全麻痺が出現、2004年3月に再発し入院、化学療法により二度目の寛解となる。5月の外泊中に仙骨部へ褥瘡を形成。抗癌剤を内服。膀胱直腸障害の為排泄は全介助、フォーリーカテーテルを留置。頻回な下痢症状により、1日5-6回のオムツ交換を必要とした。
    【看護の実際、経過】当初は、仙骨部へ発赤を形成した程度であったが、両下肢不全麻痺や低栄養状態が要因となり、9日後DESIGN8点の褥瘡となった。褥瘡対策チームに依頼し、処置方法、体圧分散寝具の選択、栄養面での介入をした。寝具は薄型エアーマットレスから高機能・圧切替型エアーマットレスへ変更した。栄養面では、患者と相談してヨーグルトなどを補食とした。週に一度の褥瘡対策チームによる回診を受け、デジタルカメラで褥瘡部を撮影し、患者本人・夫と状態を共有した。更に毎日のケアカンファレンスで褥瘡の状態、処置方法について情報共有・評価をした。ケアは洗浄から実施するため時間を要し、側臥位を保つ患者の負担にもなっていた。また、化学療法による副作用のため下痢症状が続き、褥瘡部に便が入り込み、1日6回程のケアを必要としたが、夜間帯も同一のケアを実施した。15日後DESIGN14点となった為、患者へ再度除圧の必要性を説明しベッドギャッジアップ30度まで、座位90度の保持、2時間毎の体位変換を徹底した。29日後、栄養面の変化なく下痢症状は続いていたが、DESIGN6点に回復した。50日後補食として微量栄養素補助飲料を1日1本開始しDESIGN4点、瘢痕化となった。71日後DESIGN2点に回復した。
    【考察】今回、低栄養、易感染状態は続いていたが、感染を起こすことなく褥瘡がDESIGN14点から2点に減少した。この要因として、(1)早期に褥瘡対策チームに相談、ケアカンファレンスを活用しプライマリーナースを中心としたケアの統一と評価を行なったこと(2)患者と共に褥瘡の状態を視覚的に評価でき目標を明確にしたこと(3)患者自ら、危険体位を理解し実施できたことが考えられる。これまでの褥瘡ケアでは、ケアの成果が得られずスタッフの疲弊に繋がっていた。しかし、今回の事例を通して一人一人がケアの成果を実感したことで褥瘡ケアに対する意識の向上、スキルアップへと繋がったと推察する。
    【まとめ】今回、私たちの関わりにより褥瘡が回復した。スタッフの褥瘡ケアに対する認識が高まり、やりがいや意欲への動機付けとなった。今後も検討を重ね、看護の質の向上へ繋げていきたい。
  • 太田 真裕美, 渡部 祐美子, 東 玲子, 豊田 江美子, 猪瀬 留美子
    セッションID: 2M10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    [はじめに]今回小腸瘻からの腸液によるスキントラブルをきたした患者を経験した。入院当初より、スキントラブルに対し皮膚保護材の使用、小腸瘻へのストーマ管理を行なった。その結果、良好な経過が得られたので報告する。
    [研究目的]ケア内容を振り返り、小腸瘻が形成された患者に対するスキントラブルの対応を明らかにする。
    [研究方法]1)事例検討2)カルテからの情報収集3)文献検索4)研究をまとめるにあたり、患者家族に承諾を得た。
    [現病の経過]平成15年1月に膀胱癌により膀胱全摘回腸導管造設術施行し自宅にて過ごしていた。平成16年2月腹腔内に腫瘍が発症し、4月腫瘍摘出を試みるも適応ではなく、ストーマ閉鎖及び遠位の回腸導管切除のみを行った。術後、創の離開が見られ、正中創とストーマ閉鎖部から膿状の排液が見られたが家族の管理が可能であるため退院となる。6月正中創離開部に小腸瘻が形成され、腸液によるスキントラブルが発生した。また、腫瘍が小腸瘻より突出し自宅での管理が困難となり入院となった。入院当初より、スキントラブルに対し粉状皮膚保護材、皮膚皮膜材を使用し小腸瘻に対しパウチングによるケアを行なっていった。しかし、9月2日全身状態が悪化し永眠した。
    [看護の実際]
    I期:ストーマ装具での管理:小腸瘻周囲の皮膚糜爛が著明にあった。患者は常に皮膚のヒリヒリ感を訴えていた。糜爛に対し粉状皮膚保護材や皮膚皮膜材を使用し小腸瘻にパウチングを行なった。また、ストーマ閉鎖部位からも膿状の排液がありパウチングを行った。それらを継続した結果、皮膚状態の回復が見られ疼痛の訴えがなくなった。
    II期:板状皮膚保護材とガーゼでの管理:皮膚糜爛は少しずつ回復し疼痛の訴えはほとんどなくなった。しかし、腫瘍の増大によりストーマ閉鎖部位との距離が狭くなってしまい、閉鎖部位に対しパウチングが困難となってしまった。そこで、板状皮膚保護材を皮膚全体に貼付し排液をガーゼで受ける方法へ変更した。しかし、2時間毎のガーゼ交換を要し再度、皮膚障害を発症してしまった。患者からは処置を拒否する言動が聞かれた。
    III期:自作装具でのパウチングと低圧持続吸引での管理:ガーゼでの対応は患者の苦痛が大きくパウチングが有効であると判断した。瘻孔全体を既製の最大サイズの装具で覆おうと試みるも、短時間で漏れを来たし管理困難となった。そこで、WOC看護認定看護師に相談し自作装具のパウチングを試みた。自作装具の作成において皮膚保護シートを全体の瘻孔サイズにカットし腸液が皮膚に付着する部位に、粉状皮膚保護材や皮膚皮膜材を使用した。その結果、皮膚障害が回復した。患者からは家に帰りたいという言動が聞かれた。
    [考察]今回、入院当初より皮膚糜爛に対しI期より継続し皮膚保護材を使用しケアを行っていったことは皮膚障害の回復に繋がったと考える。また、状態に合わせたケア方法をカンファレンスの場で検討したことは病棟スタッフの手技の統一に繋がり、皮膚状態が回復した一要因であったと考える。更に皮膚障害を来たした際、WOC看護認定看護師に相談し自作装具という新たな方法が得られたことはスタッフの知識の習得と技術が向上したものと思われる。また、患者のQOL向上という同じ目標に対してスタッフの一体感が生まれ、患者ケアの原動力になったと考える。
  • 近藤 貴代, 大井 初江, 山岸 庸太
    セッションID: 2M11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    わが国では高齢者虐待に関する概念や定義について、今のところ明確なものはなく高齢者虐待は児童虐待と比べ認識は低い状況にある。医療者が虐待を確信しても実際には家族介入できない状況や地域におけるサポート体制が整っていないのが現状である。
    平成15年・16年に褥瘡の治療ケアを行なった当院の入院患者135名について調査した結果、9名の患者が褥瘡発生の背景に虐待が関連している事実が明らかになった。この9名の患者の褥瘡の状態および虐待について報告する。
    【症例紹介】
    患者の年齢は67歳から98歳で男性4例、女性5例であった。既往には活動状況に影響を及ぼす脳梗塞後遺症や認知症、アルコール依存による慢性肝障害などがあり自立度はC1・C2 で介護度が高い状況であった。入院の動機は食欲不振による脱水や低栄養、尿路感染による発熱、肺炎などであり、主な介護者は配偶者1例、嫁1例、子孫6例、兄妹1例であった。
    【褥瘡の状態および虐待について】
    虐待の種類は、世話の放棄(ネグレクト)が8例と最も多く、次いで社会・経済的虐待4例、身体的虐待1例でこれらは2から3種類重複した状態であった。褥瘡発生に関連した虐待の状況は食事や水分を与えずの脱水や低栄養、排泄時や体位変換時の暴力行為、体圧分散寝具使用の拒否や実際に体位変換やおむつ交換がされていないことによる重度の皮膚障害があった。また1年以上入浴していないなど、いずれも排泄物による身体汚染が著しく、悪臭が強い状態での来院であり、褥瘡の深さはstageIIIからIVと重度の褥瘡で多発している傾向にあった。老老介護による過労の現状や家族がお金をかけたくないという事実、介護保険の申請の拒否など家庭内のことに関われない状況が存在した。
    【考察・まとめ】
    在宅で発生した9名の患者の褥瘡発生の背景には高齢者虐待が関連していた。いずれも介護度が高い患者で、主な虐待は世話の放棄であり褥瘡はstageIII以上で多発し重度の褥瘡に結びつく傾向にあった。介護保険導入により、これまで表面化されなかった家族内の問題など少しずつではあるが明らかになってきたが、実際には複雑な人間関係や家族間の問題が存在し医療者が介入できない状況も少なくない。少子高齢化・核家族・共働きの現状から介護不足の問題は深刻であり、今後は在宅における褥瘡対策を重視し家族関係や介護力の評価を強化する必要がある。また高齢者虐待と褥瘡発生の関連性を視野に入れた地域での取り組みが重要である。
  • 飛澤 貴子, 鈴木 美佐子, 小山 多美子, 北村 恵美子, 本庄 多美子
    セッションID: 2M12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    (緒言)平成14年褥瘡未実施減算が始まり、当院でも褥瘡対策委員会が発足され、褥瘡の発生予防に取り組んできた。毎月の各病棟における褥瘡集計は、平成16年307件(延べ人数)報告あり、院内の発生数98件、在宅・介護保険施設からの持込数179件だった。介護保険施設からの入院患者が院内発生の2倍弱であることから、情報不足が褥瘡の発生要因になっているのではないかと考え、予防に向けて研修会を開催した。研修会を継続し内容の充実をはかるために、2回の研修会終了後と半年後にアンケートを行ったので報告する。
    (研究方法)大曲・仙北地区の特別養護老人施設(14施設)介護老人保健施設(6施設)の職員に2回研修会の開催。(1回目)2月7日:褥瘡とは・好発部位と発生要因については看護師、栄養管理について栄養士が講義。(2回目)2月21日:スキンケア・褥瘡のステージと色による分類の処置・症例の紹介。1回目と2回目の研修会終了後アンケートを行い7月に追跡アンケートを行なう。
    (倫理的配慮)施設の職員に研修会の主旨とアンケートの依頼を口頭と文書で説明し同意を得た。
    (結果)1回目の研修会参加者は、特別養護老人施設(14施設)11名、介護老人保健施設(6施設)3名だった。摩擦とずれが、ベッドアップする時に変化する圧には体圧測定器を用いて数値の違いを確認した。栄養士から亜鉛や蛋白質を含む食品について説明。アンケートは14枚配布し3枚未回収だった。講義内容はわかりやすい9名。今後に役立つは10名だった。2回目の研修会参加者は、特別養護老人施設(9施設)11名、介護老人保健施設(2施設)2名だった。洗浄に使用する生理食塩水、褥瘡に使用する軟膏などはコストの面では医療と介護では違うことを説明。アンケート13枚配布し1枚未回収だった。講義内容はわかりやすい12名。今後に役立つは11名だった。追跡アンケートの結果は、参加した12施設に20枚配布し、8施設16枚回収した。研修会に参加して良かった16名。施設で活用されているかに対しては14名。今後褥瘡の研修会に参加したい12名。最新情報を勉強したいという内容が多かった。
    (考察)研修会は、デモンストレーションを取り入れ気軽に意見交換出来るように雰囲気作りを心掛けた。洗浄に使用するのは生理食塩水でなくても、微温湯で十分な量を使用すれば治癒が進む事の理解ができた。軟膏や被覆剤の使用は院内と介護保険施設ではコストの面にも違いがあり、その難しさを痛感した。現状を把握し、今ある材料で褥瘡を治療していくためには、褥瘡のステージと色による分類に合わせた処置の仕方を覚える事が解決策につながると感じた。今回の研修会は病院と介護保険施設の情報交換の場であった。私たちは介護保険施設での現状を知り、医療と介護の違いを学んだ。また、新しい情報を提供して欲しいとあった事から、医療の進歩に伴い良い介護を提供したいと思う気持ちは同じと感じた。今後も情報交換の場を提供し、地域連携を充実させ褥瘡発生予防に努めていきたい。
    (結論)研修会は介護保険施設の職員に情報提供ができると共に、介護保健施設の現状を知ることができた。       
  • 合田 友加, 谷貝 玲子, 木上 晴美, 笹沢 ひろみ, 佐久間 みつ子
    セッションID: 2N01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    (はじめに)危機的状況にある家族のニーズを満たすことは介入の第一歩である。個々のニーズに沿えるよう十字形チャートを用いて患者・患者家族ケアの問題点を分析し、介入を図ってきた。しかし、今年度の当病院における看護業務調査で、当病棟は「診察・治療の介助」が13.8%であるのに対し、「患者及び家族との連携」が2.9%と低かった。この結果から、再度十字形チャートを用いて分析を行ない、問題点の抽出、入院早期における介入方法を考えたので報告する。
    (研究目的)ICUにおける個々の患者家族に合わせたケアの提供ができる。
    (倫理的配慮)スタッフに対する聞き取り調査時、研究目的を説明し聞き取り調査は強制ではなく匿名化を図ること、結果により不利益が生じないことを説明し、同意を得た。
    (十字形チャートの結果)今回の十字形チャートの結果から、入院時看護師は業務に追われ家族との関わりが少ないことが分かった。
    (オリエンテーション用紙の改善)これまで入院オリエンテーションは要点だけを説明するだけの煩雑な状態であった。また看護について口頭で説明していた。そこで今まで一冊であったオリエンテーション用紙を、1)「ICUに入院される患者様のご家族へ」・2)「ICUでの看護」の二冊にした。そして患者家族の精神的状況を踏まえて説明し、患者家族の意向を看護ケアに取り入れるようにした。
    (結果・考察)患者家族は、入院後どのような看護ケアが行なわれているか情報を得たいというニーズを常に持っている。これまでICUでは、オリエンテーションは紙面で行ない、看護については口頭で説明してきた。しかし渡辺らは「ICUは特殊な環境であるため患者も家族も説明だけでは実感として理解できない。」と述べ、入院直後に口頭だけでの説明で理解を得ることは困難と考えた。そこで新しいオリエンテーション用紙1)・2)を用いて患者家族と関わりを図ったところ、日々の看護ケアの内容に理解が得られ、患者に対する要望やケアへの参加もあった。しかしその一方で、面会時常に患者に恐怖心を抱く家族も多く、救急の現場において患者家族の心理プロセスはさまざまである。そのような患者家族に対しては、早期の段階から患者家族の心理状況をアセスメントし、時には患者家族のありのままを受容して見守る姿勢も必要である。患者の在院日数が短いICUにおいて、日々行なわれる看護ケア内容を患者家族と共有することは、患者家族参加型医療を進める上での第一歩と考えている。今回オリエンテーション用紙を改善したことで、看護師から、患者家族とより深くコミュニケーションが図れるようになった、患者家族に早期から看護師の顔や名前を覚えてもらえた、などの意見が聞かれた。そしてオリエンテーション用紙を1)・2)として意識的に患者家族と関わることで、情報の共有から看護師の役割意識の向上につながったと思われる。今後もこのような患者家族ケアに対する分析と、患者家族のニーズを検討する学習会を、定期的に行なうことで、患者家族が今何を望んでいるかを常に把握し、個々の患者家族にあわせたケアの提供を今後も考えていく。
    (おわりに)患者家族参加型医療を充実したものとするために、短期間のうちに家族との信頼関係を築かなければならない。そのため関わりの早期の段階から、患者家族ケアの必要性を看護師個々が認識する必要がある。
                              
  • プレイルーム会の現状から、看護師の意識改革を行なって
    戸上 一子, 田郷 佐江子, 甲斐 晶子, 安藤 千穂, 高柳 奈津子, 松尾 千嘉, 岩男 ひろ子, 佐々木 静代, 一柳 容子
    セッションID: 2N02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    1 はじめに
    子供は入院することにより、疾病の治療、処置による苦痛、恐怖心、不安などの体験を余儀なくされる。それらは、小児の成長、発達に影響すると言われている。さらに、乳幼児は言語により自分の思いを表現することが困難であるため、入院による小児の反応は不機嫌や拒否、退行現象などに現れる。一方、小児は遊びを通して、自分の気持ちを表現し不安や苦痛を軽減すると言われている。以上のことから、入院児にとって安心して治療に臨める環境を提供していく手段の一つとして遊びは必要なものといえる。当病棟では、急性期の患児が多いため入退院が激しく、治療が最優先されるため、遊びの援助を取り入れるのが難しい現状となっている。そこで、昨年よりプレイルームでのお遊び会(以後プレイルーム会とする)に保育士の協力が得られ、入院している小児に意図的に遊びを提供できるようになったが、看護師はほとんど参加できなかった。そのため、入院患児の健康状態を把握した看護師と保育士が連携して遊びの援助を行なっていく必要があると考え、看護師がプレイルーム会に参加できるよう対策を考え実践したので、その結果を発表する。
    2 研究目的
       入院患児に日々の看護の中で保育士と連携して遊びを提供できる
    3 研究期間
       平成15年11月19日から平成16年4月28日
    4 研究方法
    1)小児病棟看護師25名を対象に、現在の遊びに対する意識などについて自作質問用紙による調査
    2)看護研究メンバーと病棟担当の保育士が話し合い、遊びの援助方法を考える
    3)プレイルーム会に担当看護師を決めて参加する
    参加後に小児病棟看護師23名を対象に、プレイルーム会参加の実態や遊びに対する意識などについて自作質問用紙による調査
    5 結果・考察
    1)プレイルーム会参加前の遊びに関する実態調査
       アンケート調査で、遊びを日々の看護の中に取り入れたいと思っている者は、(88.0%)であったが、日々の看護の中で遊びを行なっている者は9名(36.0%)と少なく、半数以上は、遊びを行なっていなかった。小児の成長発達段階や疾病、治療、処置などによる影響を理解し、小児の置かれている状況をふまえながら遊びを援助していく必要があると思われた。
    2)保育士との話し合い
       研究開始前はプレイルーム会に看護師の参加はほとんどなく、患児の情報提供も不十分なまま開催されていたので、看護師の参加があると安心出来るという意見が聞かれた。安全かつ適切な遊びを提供するため看護師1名がプレイルーム会に参加する事とした。リーダーが受け持ち部屋の考慮やメンバー間で処置やケアの手助けをするなどの協力体制がみられた。
    3)プレイルーム会参加後の調査結果
       プレイルーム会参加後の調査(図2)より、今後も保育士と協力してプレイルーム会に参加できるという者は多く、継続していくことができると考えられる。しかし、少数ではあるが時間の不足や気持ちのゆとりがないとプレイルーム会に参加するための協力ができない、業務に支障があったという事実もあり、今後何らかの対策が必要と考えられる。
    6 結論
    1)遊びに関する実態調査では、遊びを日々の看護に取り入れたいと思っているものは80%を超えて多かったが、実際に取り入れているものは35%程度であり、その理由としては、業務が多忙な事や、提供できる遊びに関する知識不足が挙げられた。
    2)遊び援助が行えるように環境を整える事で、遊びに対する意識が高まり、チーム間での協力体制が見られた。また、保育士と看護師が連携する事によって役割分担ができ、負担が少なくなりプレイルーム会への参加がしやすくなった。
    3)保育士と共にプレイルーム会に参加する事で、遊びに対する看護師の苦手意識と保育士の不安が軽減した。
                
  • 自己効力向上への関わりを中心に
    西山 由佳里, 朝熊 由美, 伊藤 由紀, 清水 三千子, 新開 妙子
    セッションID: 2N03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 近年、糖尿病患者は増加し、わが国の糖尿病患者は740万人にまで達している。糖尿病の治療が不十分だったり、自覚症状がなく放置している患者が多いのが現状である。糖尿病治療の目的は、健康な人と変わらないQOLの維持、健康な人と変わらない寿命の確保であり、そのためには良好なコントロールを行なうことが目標となる。ケアの基本は、患者にこれまでの生活の問題点を認識させ、いかに行動変容を促すかにある。
    <目的> 行動の変容を導き出せた症例を通し、自己効力を向上させる患者とのかかわり方ついて問題点を明らかにし、看護の方向性をみつける。
    <研究方法> 薬物療法のみ実施していた患者に対して、入院時、入院1週間後、退院時、退院1か月後に半構成面接で実施した。バンデューラの4つの自己効力を高める情報にあてはめ分析を行なった。分析した結果については、師長・主任にアドバイスを受け信頼と妥当性を確保した。また本研究において対象者には研究協力の同意を得ている。
    <結果・考察> バンデューラは自己効力を高める4つの情報として「遂行行動の達成」「代理的経験」「言語的説得」「生理的・情動的状態」とあげている。入院時は「一生注射していくなんて嫌」「人に知られたくない」など消極的な態度であった。そのためI氏の想いを傾聴し、自己学習や血糖値の正常値化など些細な事でも褒め努力していることは認めるよう関わった。また,同疾患のコントロール良好な患者と共に運動を行なうことを計画した。1週間後には「自分のことだから頑張れる」との言葉が聞かれ,積極的に運動に出かけ,インシュリン注射を受容でき前向きな姿勢に変化した。このような行動の変容は言語的説得や代理的説得となったと考える。次に遂行行動の達成のために患者自身に生活スケジュールを計画してもらい試験外泊中スケジュール通り生活し退院後の成功体験につながるよう不可能な箇所の修正を行なった。退院時は治療の継続により血糖値の正常化を認め「これからも頑張れそう」と前向きな姿勢がみられたことは遂行行動の達成と考える。この働きかけにより患者は「できない」という思い込みから解放され生理的・情動的状態となり前向きな姿勢で治療に望めたと考える。退院1か月後は血糖値をグラフにしたり、1時間の運動が継続できておりスケジュール通りの生活を送れていることから遂行行動の達成であると考える。入院中から関わった看護師が退院後も面接を行なったことは、退院後生じてくる問題や葛藤を一緒に解決してくれる人がいるという心の支えとなる。信頼している人が退院後も面接してくれるから頑張ろうと自己効力向上につながったと考える。今後は看護サマリーで外来看護師へ申し送りを行なうだけでなく、病棟看護師がフォローすることで患者の自己効力を向上させることが求められる。
    <おわりに> 患者の気持ちを理解し患者との間に信頼関係ができている病棟スタッフが退院後も継続して関わることで患者の自己効力を向上させることができた。この結果は成功した1症例にすぎず,一般化するにはデータが少なく今後もデータを収集する必要があるため研究の限界とする。 
  • 児玉 知子, 瀧澤 佳子, 草間 由香里, 板倉 紀子, 高野 かよ子, 菊地 幸代
    セッションID: 2N04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    (はじめに)
    透析導入を余儀なくされた患者は、病気の予後や透析への未知なる不安、社会的役割の変化等、様々な不安を抱え透析を受容していく。そのため患者が透析を受容できるよう、透析療法選択時{血液透析(HD)・腹膜透析(PD)}の指導を行なわなければならない。今回透析療法を行なっている患者から、腹膜炎の辛さ・怖さ・シャント穿刺時の痛みなどの様々な声がきかれたので、選択時十分な指導が行なえていたかアンケート調査を実施した。その結果、透析療法を理解して選択した患者に於いても、導入後の予期せぬトラブルが発生した場合や、尿毒症期に説明されよく覚えていないなど、不満があることが明らかになった。そこで、選択時の指導内容を見直し、パンフレットの改正を行ったので報告する。
    (期間)平成17年1月から4月
    (対象)平成16年新規透析導入患者83名中50名(HD・32名 当院PD外来通院患者18名)
    (方法)
    1)透析療法選択時の状況に関するアンケート調査を実施し、内容を分析する
    2)透析療法選択時のパンフレットを改正する
    (結果・考察)アンケート調査の結果は、
    1)<透析療法を勧められた時期>は、尿毒症期84%、導入期12%、保存期4%と、多くの患者が何らかの症状が出てから説明をうけていた。選択時の説明が尿毒症期であることは、患者の身体面や精神面でも苦痛を伴うものであり、説明を十分に理解し納得して選択するには不十分と考えられる。今後は、身体症状を伴わない保存期が望ましく、早期に透析療法についての情報提供を行えるよう、医師と連携を図っていく必要がある。
    2)<選択時の説明は十分であったか>は、はい78%、いいえ22%で、尿毒症状による体調不良や高齢者の特徴である認知力の低下などがあり、説明が解りにくかったと答えている。そのため、患者の体調、患者・家族のニードにそった十分な説明と個別性のある指導を提供し理解を得ることが重要である。
    3)<選択時の不安>は、ある84%、ない16%であった。不安があるの内訳は、HDでは24%で、一生続けなくてはいけない事、透析中・透析後の不均衡症候群や血圧の変動などであった。PDでは、76%と圧倒的に不安材料が多く、PDの手技や機械操作について1人でできるのか、続けていけるのか、トラブル時、対処できるのか等などであった。このことからも、PDは在宅療法であり全て自己管理が必要なため、患者は不安を抱えやすい事がわかった。そのため、選択時の指導を十分に行い、緊急時の体制や統一した指導が行えるよう、体制を整え安心していただくことが重要だと考える。
    4)<パンフレットの内容>は、理解できた69%、やや理解できた23%、理解できない8%であった。理解できない理由は、内容が難しく、特に高齢者では理解しにくいなどがほとんどであった。パンフレット内容で事前に知っておきたかった事については、ない72%、ある28%であった。その内訳は、HDでは透析中の同一体位、穿刺時の痛み、透析中の排泄などで、PDでは腹膜炎の痛みの程度や排液不良、旅行に行けること、機械の故障や音についてなどであった。そのため、このような内容をふまえたパンフレットの改正を行なった。
    (まとめ)
    1) 慢性腎不全で透析療法を余儀なくされた患者の問題点が明確になった。
    2) 透析療法選択時に必要なパンフレットの改正が示唆された。
  • 橋本 光子, 大洞 亜紀, 伊藤 幸代, 川添 さゆり, 佐藤 玲子
    セッションID: 2N05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉下肢静脈還流障害は、整形外科領域における下肢の手術後の安静による静脈還流の低下が大きな要因とされている。この下肢静脈血栓を起こし、肺血栓塞栓症の原因となり、重篤になる恐れもある。当病棟でも、手術後の下肢静脈血流障害予防のため、弾性ストッキングの着用を行ない、間欠的加圧装置(AVインパルス)を併用している。
    AVインパルスの効果は、ある程度留まった血液を機械的に押し流すことによって、深部静脈血栓を予防するとされている。また、弾性ストッキングの効果は、下肢を圧迫し、静脈の総断面積を減少させることによって流速を増し、血栓をできにくくするとされている。それぞれの効果は明らかにされているが、実際に併用しても下肢静脈血流障害予防に効果があるかということに着目し、私達は、現在行なっている弾性ストッキングとAVインパルスの併用の効果について、組織血流量をもとに検証を行なった。
    〈方法〉期間は平成16年8月-平成17年1月。対象は、当病院スタッフ26名と内科疾患がなく測定下肢に病変がない入院患者4名の合計30名。条件設定は、組織血流量測定前3分間は、安静臥床。測定部位は、左第1趾の足底側。測定器は、レーザー組織血流計「オメガフローFLO-NT」を使用。
    データの取り方は、データが流動的なため10秒ごとに3回測定し、平均値を算定する。
    以上の条件設定のもと(1)安静臥床時の素足の組織血流量の測定(2)弾性ストッキング装着中の組織血流量の測定(3)弾性ストッキング装着中にAVインパルスを行ない1分間経過時の組織血流量の測定を行なった。分析方法は、(1)から(3)の組織血流量の平均値を算定し、t検定を行なった。
    〈結果〉平均値からみると素足8.6(ml/min/100g)に対して組織血流量が最も増加したのは弾性ストッキングとAVインパルスの併用9.9(ml/min/100g)、次いで弾性ストッキングの9.7(ml/min/100g)であった。t検定の結果からは、素足と弾性スッとキング装着時ではp値0.02、素足と弾性ストッキングとAVインパルスの併用ではp値0.04でありそれぞれの方法の間に有意差(p<0.05)が認められた。
    〈考察〉このレーザー血流計は表面下1mm程度の微小循環血流を測定したもので、毛細血管の血流量といえる。皮膚表面組織には表在静脈系の毛細血管が走行しており、深部静脈とは穿通枝を通じて連絡されている。そのため組織血流量が増加することにより、深部静脈へ流入する血流量も増加し、血栓予防に効果があるのではないかと考える。
    〈まとめ〉今回の検証により弾性ストッキングとAVインパルスの併用は組織血流量を増加し、その有用性が実証された。
  • -在院日数短縮に向けての成果と今後の課題の検討-
    渡辺 和美, 依田 尚美, 小池 恭子, 新津 真佐子, 中村 二郎, 大井 悦弥, 嶋崎 邦夫
    セッションID: 2N06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
     当院では平成11年に日帰り手術センター(以後DS)を開設し、日帰り及び短期入院手術・検査に関わってきた。DS対象検査は、心臓カテーテル、前立腺針生検などがある。他には全身麻酔下での手術の術前検査がある。術前入院期間の短縮、DPC導入にむけての試みとして、胃癌、肺癌、乳癌、大腸癌などの術前検査の導入を検討してきた。平成16年7月から胃癌の術前検査と術前オリエンテーションを行なうことを開始した。
    平成17年3月現在で12名の患者に実施した。結果、在院日数の短縮ができ、また、退院後のアンケート調査から今後の課題について検討したので報告する。
    <実際>
    平成16年7月ー平成17年3月までの胃癌切除術(以後胃切)を受けられた患者 全体68名 内12名をDSで対応した。DS対象は合併症の少ない患者、通院距離、方法に無理がないこと、術前検査を外来か入院で行うか患者の希望を主治医が確認し決定した。
    ・術前検査項目
    胸腹部レントゲン検査 心電図 呼吸機能検査 採血 出血時間 検尿腹部超音波  胸部腹部CT 胃内視鏡 胃透視 便潜血検査
    従来の入院での術前検査では、入院から手術前日までの平均入院日数が11日であり、DSにて外来術前検査を実施後の入院では術前日までの平均入院日数が1.5日であった。外来での術前検査への通院日数は平均2ー3日であった。
    オリエンテーションは従来入院の患者は入院後に実施し、外来検査の患者はDS看護師により、術前検査ー入院・手術・退院までの経過をクリニカルパスに添って説明を実施した。
    在院日数の比較については従来の入院は平均41日 DSにて術前検査後入院は平均18.5日であった。
    また、DSにて術前検査を行なった患者にアンケート調査を行なった結果、外来検査及びDSにての説明に対しおおむね良好な印象をもっていただいた。具体的な意見としては、「手術前で不安の中での検査であったが、説明が詳しかったので多少なりとも現実と直面できた」「病名を聞いたときはショックだったが、来院のたびに励まされ、無事に手術を終えることができた」などがあった。
    <考察>
     術前検査を外来にて行ない、術前の入院期間を減らすことにより、在院日数の短縮につなげる事が可能である。しかし手術を受ける患者には、病気、手術、入院、術後の経過などに不安があり、アンケートの結果からも術前から詳しい説明が必要であることがわかった。
    <まとめ>
     日帰り手術センターにて術前検査・オリエンテーションを実施し、在院日数の短縮をすることができた。今後、他疾患の予定手術患者の術前検査・術前オリエンテーションをDSセンターにて行なうことにより、在院日数の短縮が計れると思われる。
  • 瀬木 貴子
    セッションID: 2N07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    目的
    本研究では、全身麻酔下で開腹術を受ける患者への、保温着が従来の方法に比べ保温効果が有効であるかを検討することを目的とする。
    対象および方法
    1.対象
    対象は、開腹術を受ける外科および産婦人科患者群(n=36)とした。患者群は、保温着を着用しない患者群(非保温着群;n=19)と、保温着を着用する患者群(保温着群;n=17)に分けた。倫理的配慮として、患者に対して事前に本研究の目的および方法を説明し、同意を得てから本研究を実施した。
    2.方法
    1)保温方法
    手術台の上に38℃の温水を入れた加温マット(アイカ;簡易低体温加温装置)を敷き、その上にヘ゛ット゛シーツを敷いた。加温マットとヘ゛ット゛シーツの間にハ゛スタオルを2枚敷いた。術後に着用する患者の手術着等は、手術台からストレッチャーへ移動した時にすぐ着用できるように準備をしておき、その上に電気毛布をかけ、手術台からストレッチャーに移動する直前まで温めた。輸液加温器(アニメック)を麻酔導入後より使用した。手術室内室温は、術前後を26-28℃、術中を23-24℃とした。
    2)保温着
     保温着は、[1]ホ゜リエステル100%(フリース素材)、[2]両上肢・両下肢を覆うもの、[3]生地の色は、温かみの感じられる黄色とした。
    3)体温測定
    体温は、皮膚温(日本光電 YSI-409 JGサミスタ温度フ゜ローフ゛ 体表用)と鼓膜温(仁丹耳式体温計S-15)を手術開始から手術終了まで測定した。皮膚温測定は、胸部,上腕,前腕,手背の4か所をそれぞれ15分毎に測定した。
    4) 自覚症状調査
     対象患者に、術後3_から_4日に手術室内の温覚に関する自覚症状(寒さの程度)を問診して調査した。
    結果および考察
    1.皮膚温・鼓膜温
     手術開始と開始後180分の皮膚温(℃)は、33.2,32.5、保温着群33.5,33.5であった。鼓膜温(℃)では、非保温着群36.6,36.2、保温着群36.4,36.1であった。非保温着群は手術開始後皮膚温で低下し、保温着群は皮膚温と鼓膜温ともに低下しなかった。非保温着群は体温下降しているが、保温着群は体温変化していないことが分かった。
    2.自覚症状
     自覚症状では、ほとんどの患者が手術室内の温感に関することを覚えていないという解答であった。しかし、術後にシハ゛リンク゛が観察された患者は0例であった。手術終了直後に「寒かった。」という言動が聞かれた症例は非保温着群(19症例)のうち4例であった。
    3.考察
     保温着は、従来の保温方法に比べ、保温着を着用することにより皮膚温への保温効果が得られることにより、患者の自覚症状を改善させる効果を示したと考えられた。今後も、患者が寒さを訴えることなく手術が受けられるように、手術室看護を行っていきたいと考えている。
    まとめ
      今回の研究で、保温性のあるフリース素材で作成した保温着は、開腹患者の手術中の体温低下を予防し、また、患者の自覚症状の改善にも有効であると考える。
    参考文献
    1)赤田隆、(1999)術中体温管理に用いられる加温/保温法と冷却法、p43-50,オヘ゜ナーシンク゛Vol14,No.8
    2)伊藤真起他、(1990)術中体温の変動とその対策、p215-217、第21回日本看護学会集録
    3)設楽敏郎、(1999)体温調節機構の基礎、p22-26、オヘ゜ナーシンク゛Vol14,No.8
    4)鎌田康宏,山陰道明,並木昭義他、(1999)全身麻酔と体温、p33-37、オヘ゜ナーシンク゛Vol14,No.8
    5)根岸千晴、(1999)体温管理と患者予 後、p51-56、オヘ゜ナーシンク゛Vol14,No.8
    6)一條敏江、(1990)全身麻酔下における術中体温低下防止-保温用具の工夫について-、p211-214、第21回日本看護学会集録
    7)西村美香他、(1993)手術中における体温保持のリネンの考案・作成、p153-155、第24回日本看護学会集録
  • セルフモニタリングを用いて
    高木 美奈枝, 森 絵里, 小寺 典子
    セッションID: 2N08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     胃切術除後患者にとって食事療法は、術後の経過において重要であり、上手な食事の取り方を入院時より身に付け退院後も継続できるように指導していかなければならない。
     当病棟では、胃切除術後に受け持ち看護師がパンフレットを使用して分割食の食事指導をしている。1食分の食事を2回に分割して1日6回配膳しているが、2回目の食事を配膳すると「またきたか」と嫌な顔をする患者や、2回目の食事には全く手をつけない患者もいて上手く分割食が取れていない。これは食事指導に問題があるのではないかと感じ、改善することにより理解度が向上すれば分割食ができるのではないかと考えた。
    【方法】
     患者自身が自己を観察し記録する事で、具体的な気付きをもたらし評価可能なものとするセルフモニタリングを用いた食事指導を患者に実践し(対象群)、胃切除術を受け従来どおりの指導を受けた患者(非対象群)と比較検討した。なおパンフレットは病棟看護師にアンケート調査し問題点を抽出して改善した。
    【結果】
     食事指導に対する理解度において対象群は、手術後の胃の変化55%、食事時間91%、咀嚼回数100%、分割摂取91%と理解度が向上しており、分割摂取以外は有意差がみられた。
     退院後の生活においては、対象群は一回の食事時間は20から30分以上が45%、一口の咀嚼回数は20から30回が55%、食後の過ごし方は82%が時間は短くても座って過ごしている。食後の腹部症状の有無は64%がなく、全ての項目に有意差みられた。分割摂取は退院まで継続できた患者が非対象群では1人もいないのに比べ、対象群では45%ができた。
     改善後のパンフレットについて、看護師は「今まで曖昧だった指導内容が統一され、ポイントを押さえた指導になった」「セルフモニタリング表を用いることは患者と共に反省できる、再指導しやすい」等回答している。
    【まとめ】
     今回パンフレットを具体的な行動レベルで表示する様に改善し、セルフモニタリングを取り入れた指導を行なうことで患者の理解度は向上し、分割摂取できる患者が増えた。しかも、看護師の意識の向上もはかれ指導の統一にも繋がった。今後も患者の年齢、価値観を考慮しながら食事指導を継続していきたい。            
  • 三浦 亮子, 佐藤 久美子, 小林 裕美, 大友 克子, 堀 由記子, 佐々木 雅子, 渡邊 良子
    セッションID: 2N09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    【研究目的】
       抗不整脈剤の知識を深め基準書を作成し活用する事は抗不整脈注射時の不安軽減に繋がるか明らかにする。
    【研究方法】
     対象:当循環器科病棟に勤務する同意を得られた看護師23名・准看護師1名
     調査期間:(前)2004年6月10日から6月17日(後)8月20日から8月27日
     方法:調査研究(留め置き法)
     学習会及び基準書作成前後で抗不剤整脈注射時の不安の程度5段階評価で比較検討する。
    【内容】
      抗不整脈剤注射時の不安に思っている事を記述式で回答してもらい、不安内容の多いものを6項目選出した。基準書は、商品名・適応・用法・用量・副作用・禁忌の 項目で簡潔にまとめ字の大きさや色彩を工夫した。設置場所は、ファイル以外に注射薬品準備台と看護休憩室とした。
    【結  果】
    基準書活用前後の抗不整脈剤注射時の不安の内容と程度は、以下の結果であった。薬効については、非常に不安が、前6名・後2名。やや不安が、前12名・後12名。副作用については、非常に不安が、前11名・後2名。やや不安が、前6名・後15名。注入速度・投与量については、非常に不安が、前9名・後0名。やや不安が、前13名・後11名。使用方法は適切かについては、非常に不安が、前7名・後1名。やや不安が、前13名・後6名。同じルートから数種類の注射薬注入可能かについては、非常に不安が、前17名・後1名。やや不安が、前5名・後13名。抗不整脈剤ルートから側管注射可能かについては、非常に不安が、前21名・後5名。やや不安が、前3名・後5名。
    スタッフの意見は 
    前:勤務交代をすると知識不足のためミスを犯しやすくマニュアルがあれば良い。
      誰でも同じレベルになる工夫が必要。
    後:手にとってみながら使用でき不安が少なく安全にできると感じた。
      知識は深まったが緊張感と漠然とした不安がある。
    [考  察]
    抗不整脈剤注射時にスタッフ全員が、知識不足からくる不安を感じていることが明らかになった。学習会や基準書活用後は、各調査項目において不安の程度が軽減し今回の取り組みが効果的であったといえる。これは、学習会で知識を深め基準書の内容、設置場所を工夫した事で安全に関われるという思いになり不安の軽減に繋がったと考える。今後も学習会や基準書の見直しを行いスタッフの意識を向上させ安全対策に向けた活動を継続していく必要がある。
    【結  語】
    1、抗不整脈剤注射時にスタッフ全員が知識不足からくる不安を感じている事が明らかになった。
    2、学習会と基準書を作成し活用する事は、抗不整脈剤注射時の安全性の向上と不安の軽減に繋がった。
  • -推進要因の検討-
    香田 留美, 西脇 美紀, 若山 広子
    セッションID: 2N10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    <はじめに>
     脳血管疾患患者の排尿障害は、急性期の膀胱機能は低活動性膀胱となり尿閉がみられ、慢性期には、過活動性膀胱となり尿失禁や頻尿が出現するといわれている。当病棟において、尿失禁の為にオムツを使用している患者が67%を占めている。日頃、排泄の援助をしていく中で、オムツで排尿している患者が時々尿意を訴える場面がみられた。オムツは、失禁対策として必要な時期を過ぎても安易に用いられている場合が多い。そこで、今回、高齢で脳血管疾患患者の排尿の自立に向けてケアプランを作成し、個々に合わせた援助を行なうことで排尿の自立につながり、その推進要因について検討を行なったので、ここに報告する。
    <対象>
     2004年7月-10月 高齢脳血管患者で、オムツを使用している日常生活自立度B1-B2の患者 5名
    <方法>
    (1)排尿状態チェック表と排尿動作のチェック表で尿意の有無と移動動作を把握する。
    (2)現在の排尿パターンを排尿状態の経過表より観察をする。1週間記入する。
    (3)ケアプランを実施して1週間毎に、排尿動作のチェック表を記入し評価する。
    <結果>
    対象者全体でケアプラン開始前後を比較するとADL面は0-8点、精神面は2-8点の改善がみられた。精神面で3名は、排尿行動に介助を必要とするものの尿器・トイレで排尿することが可能となり、オムツ以外で排尿しようという行動につながった。2名は、尿意がはっきりせず排尿に対する意欲も低下し、行動制限もあったことから排尿の自立は出来なかた。
    <考察・まとめ>
     今回の研究では、トイレや尿器を使用して排尿することに焦点をおいた。定期的にトイレや尿器での排尿を促していくうちに、排尿に対する意識づけができ、次に尿意を知らせる手段を指導することで尿意を訴えることが可能となった。それによって、患者自身が排尿行動を再認識したことが排尿の自立に結びついたと考える。
     排尿の自立の成功の要因は次のようにまとめられる。
    (1)排尿に対する誘導により排尿への意識が高まり、尿意が確実のものとなる。
    (2)何らかの手段で尿意を伝えることができる。
    (3)意識レベルが良く、理解力もあり、コミュニケーションが可能である。
  • 経済面・漏れ防止に着目して
    佐野 すず子
    セッションID: 2N11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
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    【はじめに】当病棟は60床の医療型療養病棟であり、寝たきりで自動体動や意思疎通が困難で経管栄養をしている患者は常時35%以上である。医療型では紙オムツは家族が準備されるため、多様なオムツを使用している。
     オムツの当て方は、スタッフ個々の技量に任されていたが、漏れ予防として何枚もの重ね使いがされ、在宅時と比べて使用量が多いと家族より指摘を受けた。そこで、スタッフアンケートで使用状況を調査し、オムツの使い方を基本提示することで、オムツ使用量を減らすことができた。
    【方法】
    1)オムツの当て方を男女とも基本提示したパンフレットをスタッフに配布し、基本提示の前と後にそれぞれスタッフアンケートをする。
    2)サンプル2名の基本提示前後のオムツ消費量と金額を算出する。
    【結果】
     基本提示として、男性は縦折にしたパッドの中央で男性器を挟むようにしてパッド両端を寄せる。もう一枚のパッドで、寄せたパッドの両端を三角包みする。女性はパッド2枚を縦に5-8センチずらして重ね、女性器に当てるパッドは後方へ一掴みして後方へ折り込み、重ねた2枚のパッドの端が恥骨を覆う位置にする。カバーのテープは両鼠径から左右正中に止め、腹部側のテープは腸骨に掛けるようにして恥骨方向に止める。
     アンケートの対象者は介護員18名、看護師12名の30名で、基本提示前と提示一か月後の二回とも回収率96%。基本提示後は平オムツをカバーの中に入れた使い方は14名から7名に減った。パッドのビニール面を裂く使い方は13名から2名に減った。オムツの消費量は86%が[減った]と感じ、外漏れによる病衣交換の頻度は48%が[減った]と回答し、[増えた]との回答はなかった。
     オムツ消費量と金額の変化
      3日間測定の合計金額 [カバー(単価\152) 尿パッド(単価\28.5) ]

    S・M氏  基本提示前  (\1643.5)カバー5枚 パッド31枚 大便3回
             提示後  (\1187.5)カバー2枚 パッド31枚 大便1回
    H・M氏  基本提示前  (\1510.5)カバー3枚 パッド37枚 大便2回
             提示後   (\1235.0)カバー4枚 パッド22枚 大便3回

    【考察】メーカーのケアアドバイザーによる学習会を開きオムツの当て方の基本を学ぶが、現場で生かされず3枚以上のパッドの重ね使いが続いていた。そこで、当て方の基本提示を示すために、使用頻度の高いパッド9種類の吸収量、吸収速度、逆戻りと肌触りを調べ、オムツ排尿体験をスタッフにも奨め実感してもらった。この経過を経て、一枚のパッドに効率よく吸収させる当て方を基本提示として、パンフレットにしたことで全体的にスタッフの理解が得られたと思う。
     アンケート結果では、カバーの中に平オムツを入れた使い方は減ったが、緩下剤を使用した場合、排便時のカバー汚染予防のために平オムツを使用する場合もあるため、7名という数は多いと一概に言えない。基本提示を見ていないスタッフがいた可能性もあるが、最終的にオムツの使用量、尿漏れ頻度が減少したと回答していることから、基本提示は効果があったといえる。加えて、サンプル2名は確実に基本提示に沿って実施し、金額面でも有意な差が出ている。今後、排便コントロールがオムツ金額を減らす重要な要素といえる。
  • -背抜きのアンケート調査を行って-
    黒田 薫, 前田 聖子, 白土 美由紀, 飯村 早苗
    セッションID: 2N12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/11/22
    会議録・要旨集 フリー
    I.はじめに
    当病棟には、高齢で日常生活動作の低下に伴う嚥下障害がある患者が多く入院している。そのため、日常生活の援助は、看護業務の中でも、重要な役割を占めている。日頃より、食事介助時や経管栄養中に自力座位が保持できない患者に対し、ベッドアップを行ない、体位変換用の除圧クッションや枕・掛け布団などで、体位が崩れないように工夫をしている。しかし経管栄養時や食事中の体位が長い時間保持できずに、途中数回の体位の修正を行なっているのが現状である。そこで「背抜き」についての認識度・有用性についてのアンケート調査を行なった。その結果スタッフ間に「背抜き」の有用性を意識付けすることが出来、固定具だけに頼ることなく安定した体位保持が出来るようになったのでここに報告する。
    II.研究目的
    固定用具・保持用具に頼ることを少なく、経管栄養時や食事介助時に安楽な体位を長時間保持できるよう看護ケアの基本を再認識することを目的とする。
    III.研究方法
    1.研究期間:平成17年3月1日-3月31日
    2.対象:当病棟看護師 21名
    3.調査方法:記述式アンケート調査
    4.背抜きについての勉強会の実施
    IV.結果
    事前アンケート調査ではベッドアップはどの位の角度で行なっているかの質問に対し、60°と答えたスタッフが多く、また、べッドアップをし、その後の体位の崩れを感じたかの問いに対し、ほとんどのスタッフが感じていると答えた。また、崩れた体位に対し、どのように対応したかの問いに対し、用具を使用して再度保持したスタッフが7割であった。一回の食事介助に何回くらい体位を直しているか聴いたところ、2回と答えたスタッフが最も多かった。そして「背抜き」に対して質問したところ、半数以上のスタッフが、「知らない」との結果であった。 アンケート実施後、背抜きについての勉強会を実施し、背抜きの必要性や効果についてスタッフに伝達した。その後、スタッフに食事介助や経管栄養中のベッドアップ時に背抜きを取り入れて、実際にどのような印象であったか事後アンケート調査を行なった「以前より崩れなくなった」との回答が全員からえられ、今後背抜きを行なったほうがよいですかの質問には「はい」との答えが得られた。
    V.考察 今まではただ崩れないようにする事にばかりに気をつかっていたのではないかと感じた。そのため身体の周囲をかためることで崩れなくなると思い込み、用具に頼り過ぎていたのではないかと考える。上田らは、「ギャッジアップの角度が大きいほど「背抜き」前の体圧やずれ力も増加するが、「背抜き」を行なうことで、ずれ力はジャッジアップの角度に関わらず減少した」1) と述べている。このように背抜きは安楽な体位の保持を自分で行えない患者にとってベッドアップの際に身体の重心や姿勢を整える重要な手技と考える。またこのことにより基礎看護技術の大切さを再認識し患者の安楽にもつながる統一した看護が提供することができると考える。そして背抜きを行う事により除圧され体位の崩れも軽減し褥瘡予防にもつながるのではないかと考える。
    VI.おわりに
     今回のアンケート調査により日頃行っている看護業務の基礎を見直す事が出来、固定具だけに頼ることなく、これからも患者の安全・安楽を考えたよりよい看護提供を心がけていきたい。
    引用文献・参考文献
    1)上田三千代,他:周手術期の褥瘡発生のリスクが高い患者に対するケア,月刊ナーシング,23(5),p72,2003.
    2)大久保裕子,ほか:ベッドの背を上げ下げするときの身体の影響,日本褥瘡学会(JpnJPU),2(1):p45-50,2000.
    3)大浦武彦:わかりやすい褥瘡予防・治療ガイド.p28-101,2001.
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