日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
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一般演題
  • 伊藤 富雄, 松下 次用, 成瀬 貴之, 土屋 重義, 野坂 博行, 大林 浩幸, 吉田 正樹, 林 弘太郎, 山瀬 裕彦, 平石 孝
    セッションID: 2E01
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 当院健康管理センターの人間ドックでは、スクリーニング検査として腹部超音波検査を行っている。腹部超音波検査において、最も多い検出所見は脂肪肝であり、内臓への脂肪蓄積として捉え、メタボリックシンドローム(内臓脂肪蓄積、糖・脂質代謝異常、高血圧)の一病態でもあると考えた。脂肪肝有所見者群におけるメタボリックシンドロームの存在実態を調査した。対照として非脂肪肝所見群と比較検討したので報告する。
    <方法> 平成16年7月より平成17年4月の間に、当院健康管理センターにおいて人間ドックを受診した3,188名(男性2,025名、女性1,163名)の中で、腹部超音波検査受診者2,566名を対象とした。(1)肝実質高エコー像(2)肝・腎・脾コントラスト陽性(3)肝深部エコー減衰増強の所見を脂肪肝と捉えた。
     脂肪肝群455名(男性352名、女性103名),年齢(男性33才から79才平均52.4才・女性30から78才平均50.6才),非脂肪肝群1,695名(男性952名、女性743名),年齢(男性30才から78才平均48.2才・女性30才から81才平均47.2才)。
     メタボリックシンドローム診断は、日本動脈硬化学会などにおける診断基準(腹囲周囲径:男性≧85cm・女性≧90cm、これら所見に加えてトリグリセライド≧150mg/dlかつ/または低HDL<40mg/dl。収縮期血圧≧130mmHgかつ/または拡張期血圧≧85mmHg。空腹時血糖≧110mg/dl。以上の検査値を2項目以上有すること)を適用した。
    <結果>
    I. 腹部超音波検査有所見実態
     腹部超音波検査総数2,566名中、有所見者数は1,564名(60.95%)であった。その内訳は以下のとおりで、多所見順位は(1)脂肪肝:455名(29.1%),(2)胆嚢ポリープ:282名(18.0%),(3)肝のう胞:206名(17.5%),(4)腎のう胞(右・左):192名(12.3%),(5)腎ストロングエコー(右・左):69名(4.4%)などとなった。
    II.脂肪肝群と非脂肪肝群におけるメタボリックシンドロームの存在実態
     脂肪肝群の腹囲:男性85cm以上・女性90cm以上は、男性352名中254名(72.2%)女性103名中29名(28.2%)であった。
     非脂肪肝群の同腹囲:男性952名中344名(36.1%)女性743名中35名(4.7%)であった。診断基準に従い診断された脂肪肝群のメタボリックシンドロームは、男性78名(30.7%)女性9名(31.0%)であり、高血圧を有する症例が、男性67名(85.9%)女性9名(100%)と高率にみられた。
     非脂肪肝群のメタボリックシンドロームは、男性952名中73名(7.7%)女性743名中6名(0.81%)であり、高血圧を有する症例が男性73名中62名(83.3%)女性6名中5名(83.3%)と高率にみられた。
    診断基準の腹囲異常と代謝異常1項目を有する症例は、脂肪肝群男性254名中95名(37.4%)女性29名中10名(34.5%)。非脂肪肝群のそれは、男性344名中108名(31.4%)女性35名中14名(40.0%)みられた。
    <考察> 内臓脂肪蓄積とメタボリックシンドロームをリンクする意義として、脂肪肝は効果的に役立つ所見であるとおもわれた。脂肪肝群・非脂肪肝群の双方ともに、高血圧を伴うメタボリックシンドロームが高率にみられ冠血管危険因子に影響を与えている可能性が高いといえる。予防医学や管理・治療などにおいて生活習慣の改善が重要な課題となる。
  • 清水 敏夫, 小松 淳子, 長沢 正樹, 市川 英幸
    セッションID: 2E02
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>最近は、40歳・50歳代だけでなく、高齢社会を反映して、70歳・80歳代の受診者の比率が以前より高くなってきている。高齢の受診者について、ドックの内容検討の資料として、アンケートを実施したので、その結果を報告する。
    <方法>高齢者にみられる問題として、尿漏れ、転倒をとりあげ、平成16年10月から12月の期間で50歳以上の一泊ドック受診者にアンケートを実施し、175名の回答を得た。
    <結果>(1)尿漏れ:過去1年間に尿漏れありとしたのは、男性128名中で14名(10.9%)、女性47名中で20名(42.6%)であった。失禁例の分類では、男性では切迫性が多く、混合性が続き、腹圧性は認めない。女性では、混合性が多く、腹圧性、切迫性の順となる。(表-1・2) (2)転倒歴:転倒しそうになったことがあるとの回答は、男性で13名(10.2%)、女性で9名(19.1%)であった。(表-3)
    <考察>アンケートの回答で、尿漏れ経験は、男性128名で14名(10.9%)、女性47名で20名(42.6%)であった。ガイドラインの数値を下回るものの、近い結果であった。性別・年代別にみると、男性では65歳以上で、女性では55歳以上で尿漏れの頻度が増加していた。時間を決めて排尿する「排尿習慣の再学習」は切迫性尿失禁に有効で、ある程度排尿をがまんする「膀胱訓練」は切迫性・腹圧性・混合性尿失禁に有効、「骨盤底筋訓練」は腹圧性尿失禁に有用、切迫性には有効とされている。従って、男性では排尿習慣の再学習と膀胱訓練を指導し、女性では骨盤底筋訓練と膀胱訓練の指導が必要となる。
    高齢者が自立した生活を維持するためにも、転倒の予防は重要と考える。今回のアンケートで転倒しそうになったことがあるとの回答は、男性で13名(10.2%)、女性で9名(19.1%)であった。報告例に比べ、やや低い印象であるが、日頃の運動習慣がありながら、転倒しそうになったことがあることより、バランスを重視した「転倒予防運動」の指導が必要と思われる。
    <結論>高齢者にとって、加齢変化や、生活習慣の蓄積に起因する問題はあるが、尿漏れや転倒予防で、適切な運動習慣は、活力のある生活をおくるためにも重要と考える。
  • 松本 典子, 佐藤 いづみ, 谷 智恵子, 井上 裕美子, 曽我 佳代, 中村 恭世
    セッションID: 2E03
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>当センターでは宿泊人間ドック受診者を対象に食生活診断を実施している。今回非肥満者と肥満者について、またその肥満者の内さらに血清脂質異常、高血圧、高血糖の有所見数で、栄養素等摂取に違いがあるかを検討したのでここに報告する。
    <対象及び方法>平成17年度に宿泊人間ドックを受診した1,776名で男性1,103名、女性673名、平均年齢50.2歳。
     その内BMI25未満の者1,279名(男性717名、女性562名 平均BMI21.9)を非肥満群、BMI25以上の者497名(男性386名、女性111名 平均BMI27.3)を肥満群とし、栄養素等摂取の比較を行った。
     更に肥満群をBMIのみ異常の者134名、BMIの他に血清脂質異常(TG150mg/dl以上かHDL40mg/dl未満のいずれか又は両方)・高血圧(収縮期血圧130mmHg以上か拡張期血圧85mmHg以上のいずれか又は両方)・高血糖(空腹時血糖110mg/dl以上)のいずれか1つの所見を有する者197名、2つ128名、3つ38名の4グループに分け、栄養素等摂取の比較を行った。食生活問診は30項目からなる頻度調査を用い、ドック受診当日に管理栄養士が聞き取り確認を行った。
    <結果>非肥満群と肥満群の栄養素等充足率で有意な差が見られたものとして、エネルギーでは非肥満群106.2%に対し、肥満群111.8%と肥満群の方に明らかな過剰摂取が見られた(p<0.05)。炭水化物は非肥満群96.1%、肥満群100.5%で有意差が見られたが(p<0.05)、両群とも適正範囲内の摂取であった。蛋白質、脂質に関しては有意な差は見られなかった。またアルコール類の摂取エネルギー量は非肥満群83kcal、肥満群100kcalで肥満群の方が多く摂取しているという結果であった(p<0.05)。食物繊維の充足率に関しては有意な差は見られず、いずれも47%程度しか満たしていない状況であった。次に食品群別充足率で見ると、両群に有意差は見られなかったが肉類(非肥満群158.7%、肥満群161.2%)、油脂類(非肥満群121.3%、肥満群124.8%)で過剰摂取が見られ、野菜類(非肥満群39.7%、肥満群40.2%)は不足であった。
     また肥満群の有所見数における栄養素等摂取の違いについて見ると、4つのどのグループにおいても栄養素等と食品群別充足率のいずれにも有意な差は見られなかった。
    <考察>今回、非肥満群に比べ肥満群は肥満を引き起こす一要因のエネルギー量が確実に多いということが明らかになった。過剰が目立ったアルコール類や肉類、油脂類、またメタボリックシンドロームの予防・改善には欠かせない食物繊維(食品群では野菜類)については、肥満群はもちろん非肥満群に対してもあらゆる疾病の予防や改善の為に、今後の指導の重要項目としておさえていく必要がある。また、肥満群の有所見数における栄養素等摂取に差が見られなかったことにより、まずは根底にある肥満を改善することが、血清脂質異常や高血圧、高血糖の改善にも繋がると考える。その為にはエネルギー量の過剰摂取を抑え、個々にあった的確な栄養指導を展開していくことが大切である。また、肥満の改善には欠かせない運動との関連についても今後検討していく必要があると思われる。
  • 桐原 優子, 林 雅人 他
    セッションID: 2E04
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 飲酒・喫煙習慣については健康日本21においても国民の健康づくりのために一次予防の観点から目標値を設定して取り上げられている。第53回の当学会で臨床検査データと飲酒・喫煙習慣との関連について報告したが今回は対象の例数を増やし、年代別に検討したので報告する。
    <対象および方法> 対象は平成15・16年度秋田県厚生連9施設で健康診断を受診した男性7,809名とした。喫煙習慣〔喫煙無・以前喫煙有・現在喫煙有〕と飲酒習慣〔飲酒無・飲酒2合未満(以下、少量飲酒)・飲酒2合以上(多量飲酒)〕の組み合わせで区分し、検査データ(BMI・血圧・HDLコレステロール・トリグリセライド・空腹時血糖・GGT・白血球)との関連をみた。統計処理にはStat?Flex(kkアーテック)を用い、異常者頻度の有意差検定にはχ検定を用いた。
    <結果及び考察>
     1) BMI異常頻度は多量飲酒・非喫煙群で高く、特に若い年代に肥満者が多く、年代とともに異常者が減っていた。現在喫煙群はとくに減少が目立った。
     2) 収縮期血圧は高齢者に高血圧者が多く、年代とともに異常者は増えている。その傾向は多量飲酒群において顕著にみられた。
     3) 低HDLコレステロールは飲酒群の異常者が少なく、喫煙群の異常者が多い。特に飲酒無・現在喫煙群において顕著にみられた。
     4) トリグリセライドは若い年代に異常者が多く、多量飲酒・現在喫煙群に顕著であった。
     5) 空腹時血糖は50代に異常者が多く、また飲酒群の異常者が多かった。
     6) GGT・白血球は若い年代に異常者が多く、70代の異常者は少ない。GGTは飲酒群、WBCは喫煙群に異常者が多くみられた。
     7) 検査項目を目的変数、喫煙・飲酒の有無を説明変数、年齢・現病歴を制御変数とし、重回帰分析で検査値との関連をみた。喫煙習慣はトリグリセライド・白血球に正の関連、BMI・血圧・HDLコレステロールに負の関連がみられた。飲酒習慣は血圧・HDLコレステロール・トリグリセライド・空腹時血糖・GGTに正の関連がみられた。
     喫煙習慣とトリグリセライドは相関していたが、非飲酒群では相関がなく飲酒群のみでみられ、飲酒習慣との重相関によるものと考えた。酒は「百薬の長」といわれているが、適量を超えれば「万病の元」になることに留意が必要である。特に毎日飲酒者は飲酒量が多くなり、問題が多いことから、特に若い年代への適量飲酒の指導が必要と思われる。
    <まとめ> 飲酒・喫煙習慣と検査データとの関連を年代別にみるとBMI・トリグリセライド・GGT・白血球は若年、空腹時血糖は壮年、血圧・HDLコレステロール低値異常は高齢者に異常者が多くみられた。重回帰分析でみると、飲酒習慣は血圧・HDLコレステロール・トリグリセライド・GGTに正の関連がみられ、喫煙習慣はトリグリセライド・白血球に正の関連、BMI・血圧・HDLコレステロールに負の関連がみられた。多量飲酒・喫煙は検査データに悪影響を及ぼしており、これまでにも言われていることであるが特に若い年代への適量飲酒・禁煙の指導に関する強化が必要と考える。
  • 高瀬 浩之, 谷口 正仁, 鳥山 隆之, 岡戸 建央, 田中 覚, 水上 泰延
    セッションID: 2E05
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>Arterial stiffnessは動脈壁の固さを意味する心血管危険因子のうちの1つで、脈波伝播速度(PWV)を計測することで非侵襲的に評価することができる。PWVは種々の要因で増加するが高血圧とも関連が深い。しかし、臨床の場面でPWV高値の正常血圧者にしばしば遭遇する。そこで、我々は正常血圧者において高血圧症が臨床的に診断される前、つまり『高血圧前段階』の間に、PWVが増加するかどうか検討した。
    <方法>2001年7月から2004年6月までの期間中、当病院で毎年の人間ドックを受診している正常血圧者(4,074名)のうち、form PWV/ABI(コーリン・メディカルテクノロジー)を用いて上腕-足首間PWV(baPWV)を計測した460名(27-79歳、平均年齢57歳;女性=44%)を対象とした。降圧薬・糖尿病薬・高脂血症薬などの薬物治療を受けている対象者は今回の検討から除外した。全ての対象者は、登録時にルーチンの身体検査、心電図検査、胸部X線検査、心血管疾患危険因子に対する血液検査およびbaPWV測定を行った。登録後、対象者を680±274(平均±標準偏差)日間追跡調査し、登録時のbaPWVと高血圧症発症率の関係を検討した。高血圧症は、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血90mmHg以上、あるいは医師からの降圧薬処方開始と定義した。
    <結果>観察期間中、高血圧症は52名の対象者(11.3%)に発症した。高血圧症発症者は非発症者に比べて、高齢(61 vs 56歳、p<0.0001)、BMI高値(23.5 vs 22.3 kg/m2、p=0.0038)、血圧高値(126/77 vs 117/71 mmHg、p<0.0001)、HDL-コレステロール低値(58.8 vs 64.2 mg/dl、p=0.0144)、中性脂肪高値(133 vs 104 mg/dl、p=0.0011)であった。性差、腎機能、総コレステロール値、空腹時血糖値、喫煙の有無では有意差を認めなかった。当院におけるbaPWVの正常値(1,400 cm/sec;60歳未満、1,600 cm/sec;60-69歳、1,800 cm/sec;70歳以上)を用いたカプラン-マイヤー解析では、高血圧症の発病率は、baPWVが正常値以上の対象者のほうが(171名中29名;17.0%)baPWVが正常値未満の対象者より有意に高率であった(289名中23名;8.0%、p<0.0001)。登録時の年齢、性別、BMI、収縮期および拡張期血圧、糖尿病、脂質異常、血清クレアチニンと喫煙習慣で補正した多変量ハザード解析では、登録時のbaPWVの危険率は1.002であった(95%CI:1.001-1.003、p=0.0022)。結論として、増加したbaPWVは、正常血圧者における将来的な高血圧症発症の増加と関連している。よって、正常血圧者におけるbaPWVは将来の高血圧症発症予測のマーカーになる可能性がある。
  • -発泡剤を少量バリウムで飲用-
    安藤 秀人, 丹羽 政美, 深澤 基, 安部 威彦, 伊藤 栄里子, 伊藤 道廣, 末松 弘志, 安藤 俊郎, 山瀬 裕彦, 藤本 正夫
    セッションID: 2E06
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <背景> 第53回本学会において同一被検者による比較検討を行い、「粉末製剤バリウム(以下Ba)250gは、現状使用していた300gに比べ、胃小区および辺縁描出能の低下が明らかで、胃集団検診への導入は困難である。」と報告した。我々は、その原因が50g少ない含有量による胃内Ba濃度の低下であると考えた。そこで、胃内濃度低下を抑えるため、発泡剤を水ではなく、少量Baで飲用する方法を試みた。
    <目的> 発泡剤の飲用方法を変更し、受診者のアンケート調査を含めた総合的な評価を行い、Ba250gが導入可能かどうかを明らかにする。
    <対象> 平成15年及び16年に職域検診を逐年受診した76名
    <使用Baと発泡剤の飲用方法> 平成15年は、300g(230%、130ml)水20mlで発泡剤飲用(方法A)。平成16年は、250g(200%、120ml)Ba10mlで発泡剤飲用(方法B)。
    <検討方法>
     検討項目1-視覚評価:1.胃小区描出能 2.辺縁描出能 3.気泡形成の有無 4. 十二指腸へのBa流出量(以下Ba流出)の4項目について、認定医1名と撮影担当技師8名が、方法AとBを行った同一被検者のX線写真を比較読影した。視覚評価の基準は5点評価すなわち、Aに比べBが非常に良い:5点、Aに比べBが少し良い:4点、AとBがほぼ同等:3点、Aに比べBが少し悪い:2点、Aに比べBが非常に悪い:1点として行った。
     検討項目2-アンケート調査:対象受診者の方に、発泡剤のバリウム飲用について方法AとBを比べた意識調査を行った。
    <結果および考察> 胃小区および辺縁描出能では、3に近い平均点を示し、ほぼ同等の結果が得られた。含有量の少ないBaにおいても、発泡剤をBaで飲用することにより、胃内濃度を高く保つことができたためと考えられる。
     方法Bは、気泡の増加による画質低下が懸念されたが、ほぼ同等の結果であった。気泡は、増加するとおもわれるが、撮影技術により気泡が読影の妨げにならないようにすることは可能であるとおもわれる。
     方法Aでは、胃を膨らました後、Baをいれることができるので、流出がおこりにくいと思われる。一方、方法Bでは、胃が膨らむ前にBaが入るため、流出が起こりやすいと思われたが、方法Bに流出の多い結果を示さなかった。気泡形成と同様で、撮影技術によって、十分に対応可能であると考える。
     アンケート調査では、水に比べBaの方が発泡剤が飲みやすいと答えた方が69%、次回もBaの方が良いと答えた方は73%認められ、受診者の意識はBa飲用に圧倒的に良い傾向を示した。さらに、ゲップの我慢がBaの方が楽であると答えた方も76%に認められた。以上のアンケート結果は、胃X線検査を回避する受診者の減少につながるものと思われ、受診率の向上が期待できると考える。
    <まとめ> 方法Bによって、Ba250gが胃集検に導入可能であった。導入によって、受診者の負担軽減が可能となり、受診率向上が期待できると思われた。
  • 岡本 歩, 武山 直治, 大沼 俊和, 小林 加代子, 上木 美智子
    セッションID: 2E07
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉検診効果を高めるためには、検診及び精検受診率の向上を図り、検診及び精検機関の精度を一定以上に維持する必要がある。そのためには地域の関係機関が連携し取り組む必要がある。旧高山市住民の胃がん検診は、H11より当検診センターで実施しているが、胃がん発見率が徐々に低下傾向にあった。そこで関係機関に胃がん検診検討会への参加を呼びかけ、共にこの地域における胃がん検診の現状を分析したので報告する。
    〈検討会開催方法〉内容:(1)飛騨地域胃がん登録状況(2)検診と精度管理方法、(3)検診実績、(4)検診・精検受診勧奨の方法、(5)X線写真による症例説明を、各機関が発表し意見交換した。参加機関:飛騨地域保健所、高山市保健センター。精検医療機関(市内のT病院、開業医、当院)。
    〈結果〉1.胃がん登録状況の分析:表1、2より飛騨地域の胃がん罹患率は全国とほぼ同じであるが、死亡率はやや高く近年上昇している。有効な検診に向けて取り組む必要がある。
    2.検診結果の分析:要精検率は年々低下し、消化器集検全国集計(H15)の10.8%と比較しても低い。また胃がん発見率はH14より低下傾向で全国集計の0.15%を下回っていた(表3)。この要因の一つに、初回受診率が低いことが考えられた。検診対象者の拡大に向けて申し込み方法の検討や啓蒙活動が必要である。
    3.精検精度の分析:(1)精検方法はほとんどが胃カメラであったがUGIの実施もあった(図1)。精検としてUGIを実施してよいか討論した。その結果、精検の場合は検診よりきれいな写真を撮る必要があるとの意見が出された。この意見を反映し、市で配布する「胃精密検査実施医療機関一覧」は、きちんと精検を行える機関であるか検討する方向性が出された。(2)精検機関の割合は開業医が半数、残り半数が当院とT病院であった(図2)。また胃がん発見割合は、当院が半数以上、開業医3割、T病院1割以下であった(図3)。精検実施数に比例した胃がん発見数が求められ、役割を果たすために、精度を高める努力が必要である。数値より分析することで問題が明確化し方向性を見出すことができた。今回の検討会により、関係機関が胃がん検診の現状を認識し問題点を共有することができた。この会を継続し、有効な胃がん検診の実施に向けて取り組みたい。
  • -検診対象者の検討-
    塚越 愛子, 西沢 延宏, 野口 修, 丸山 雄一郎
    セッションID: 2E08
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> JA長野厚生連では、1985年から県内11病院と健康管理センターで「肺癌専門委員会」を組織し、胸部検診活動を行っている。私たちは更なる肺癌早期発見のために独自にらせんCT検診車を整備し、長野県内の巡回型肺癌検診を2001年1月に開始した。4年間(2001から2004年)の肺癌CT検診の結果を報告し、さらに喫煙との関連を含め検診対象者について検討した。
    <方法> 2001年1月からの4年間、JA長野厚生連らせんCT検診車により、県内を巡回し、肺癌検診を実施した。CT撮影方法は、管電圧120kVp、管電流25mA、テーブル移動速度15mm/回転、0.7秒/回転、ピッチ1.5とし、肺尖部から肺底部方向に撮影した。撮影したCT画像はJA長野厚生連の各病院で分担し高精細モニターを有する端末で読影するとともに、読影結果をオンラインで健康管理センターに集計した。読影の判定区分は日本肺癌学会判定基準に拠った。
     今回さらに発見癌者の喫煙状況について検討を加えた。
    <結果> 2001年6,633名、2002年6,369名、2003年8,309名、2004年9,257名と受診者は増加してきており、総計30,568名の検診を行った。男性が58%、女性が42%で平均年齢は、男性56.04歳、女性57.68歳であった。
    <判定結果> 判定結果で精密検査対象となるD・E判定は、2001年の17.7%から2002年は15.5%、2003年12.7%、2004年10.1%と低下してきている。
    <精密検査結果> 精密検査の受診率は2001年は89.8%であり、2002年は89.8%、2003年86.2%、2004年81.5%である。
     精密検査の結果、2001年は44名(0.663%)、2002年は17名(0.267%)、2003年27名(0.325%)、2004年23名(0.248%)、総計111名(0.363%)(男性40名、女性71名)の肺癌患者が発見され、ほとんどの症例で手術が行われた。発見年齢のピークは男女共に60・70歳代で、平均年齢は男性64.68歳、女性63.56歳であった。
     発見癌は、他研究同様90%程度が腺癌で、10mm以下の小型肺癌が約半数を占めた。発見された腺癌患者のうち、約70%が非喫煙者の女性であった。また扁平上皮癌は発見癌全体のうち5%であるが、全員喫煙者か過去喫煙者の男性であった。
    <考察と問題点> CT検診は、肺癌発見率が高率であることや圧倒的に早期の肺癌が多いことなど、従来の胸部検診に比べて優れた成績を上げており、肺癌死亡の減少に役立つと考えている。特にCT検診で多く発見される腺癌は症状が出にくく、ゆっくり進行するためCT検診による早期発見の意義は大きい。
     肺癌の最大のリスクファクターは喫煙とされており、確かに喫煙と関連の深い扁平上皮癌も少数だが発見されている。しかしCT検診で発見された肺癌の90%は喫煙と関連の少ない腺癌であり、非喫煙者の女性である。
     一方CT検診を行っている実施主体では、検診対象者を多量喫煙者とし、補助金の対象も限定しているところもある。まだ一般的にも肺がんイコール喫煙というイメージが強く、その上検診対象者が限られているため、肺癌が発見される機会が見過ごされてしまう可能性が高い。今後個人及び各組織へ、肺癌の動向をふまえたこれらの情報の伝達を一次予防と共に行い、肺癌検診の必要性を周知させていく役割があると考える。
  • 中澤 あけみ, 小山 千恵子, 森 広美, 小林 栄子, 井出 真一
    セッションID: 2E09
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>当院では、平成16年度より感染予防対策を強化し職員が無料でインフルエンザ予防接種(以下予防接種)ができるように取り組んでいる。平成17年度よりJA健康保険組合(以下JA健保)から被保険者の予防接種費が半額補助になり病院の負担も軽減した。今回、当院での健康保険加入者を対象にしたインンフルエンザ罹患調査をもとに予防接種費用と医療費について検討したので報告する。
    <対象・方法>佐久総合病院のJA健保被保険者1675人全員に対して予防接種状況・未接種理由・インフルエンザの罹患状況・休んだ日数を平成17年11月から平成18年3月まで5回にわけアンケート調査を行なった。更に、インフルエンザ罹患者53人中50人(94%)の医療費を調査し平均医療費(9,573円)を算出した。今泉らの報告から接種率が低い場合の罹患率に基づき当院を当てはめ予防接種補助費とインフルエンザ罹患によるJA健保の医療費の総支出を推計し、当院の平成17年度の総支出と比較検討した。
    <結果・考察>(1)1675人の各調査の回収状況の平均は、97.8%とかなり高い回収率であった。(2)インフルエンザの接種状況は接種者1.438人(85.9%)未接種者201人(12.1%)接種不明者36(2.1%)であった。未接種者の理由としては「以前接種後に具合が悪くなった」が78人(38.8%)と一番多く、次に「接種時期に調子が悪い」21人(10.4%)であった。(3)インフルエンザの罹患状況では、接種者の罹患は47人(3.3%)で未接種者の罹患は6人(3.0%)、全体の罹患率は3.2%であった。山下らの研究結果の接種率93.9%の罹患率3.0%とほぼ同様であった。期間による罹患率のピークは1月中旬_から_2月中旬で全国のインフルエンザ流行と同様にみられた。(4)罹患のための休みの状況では、接種者の休んだ平均日数は1.5日であり、未接種者は2.8日と接種者の方が1.3日少ない。(5)費用については、JA健保の予防接種補助の支出は2,444,600円で、それに対してJA健保のインフルエンザ医療費支出は355,232円の見込みとなり総支出2,799,832円。これに対し今泉らの調査結果の接種率49%の場合の罹患率17.9%を当院の1639人をあてはめ推計すると、予防接種支出は1,365,287円と低くなるがその反面、健保の医療費支出は1,966,386円になり総支出は3,331,773円で接種率85.9%より49%の方がJA健保の総支出が531,941円多くなると推計された。
    <結論>今回の結果より、予防接種の補助を充実させ、接種率を高め罹患率を下げる方がJA健保の費用効果はかなりよいということが推計された。さらに、予防のメリットは費用効果だけではなく、職員の医療費負担の減少、身体面の負担軽減、仕事の効率性への影響も大きい。今後、さらに予防の評価が問われる時代になるため、インフルエンザの流行状況との関連も考慮し、費用効果等の検討を継続したい。
  • 前田 秀一, 伊木 雅之, 梶田 悦子, 岩佐 勢市, 山崎 巌, 三田村 純枝, 村中 喜代美, 山下 郁恵
    セッションID: 2E10
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>県民の骨粗鬆症予防に資するために、平成2年に福井県大野市の山間部酪 農地区と福井市の海浜部漁業地区在住の35歳以上の中高年女性を対象に腰椎骨密 度と生活調査を実施し、15年が経過した平成17年に追跡調査を実施した。
    <方法>調査対象は、初回の受診者(山間部:90名、海浜部131名)の計221名であ る。その内、拒否、死亡、施設入所、転居者は除外した。調査内容は、以下の通りである。
    <骨密度測定>バス搭載型2重エネルギー_X_線吸収法(DXA)骨密度測定装置(Hologic社製QDR4500A)を用い、腰椎骨密度を測定。骨密度変化率は、初回骨密度から追跡時骨密度を差引き、追跡年数の15年で除して1年当たりの変化率を求めた。
    <生活調査>初年度とほぼ同様の調査票を事前配布し、特に牛乳摂取状況を主に食習慣等を保健師が面談にて聴取した。
    <結果>受診者(率)は134名(60.6%)であり、平均年齢は70.5±9.2歳(山間部:67.2±8.7歳、海浜部:72.5±8.9歳)であった。骨密度の判定は日本骨代謝学会の診断基準を用いた。骨粗鬆症と判定された人は、50歳代で20%と出始め、加齢ともに増加する。逆に正常を見ると、50歳代では64%であったが、60歳・70歳代では20%程度に、80歳代ではわずかに5.9%となっている。
     図1には初年度と15年後の骨密度の変化を示した。30歳代ではわずかに低下し、40歳、50歳代では閉経時期にあたることから、低下率が大きく閉経の影響が見てとれる。60歳以降になると、骨密度の大きな低下は見られず、閉経の影響は60歳代でほぼおさまってくるものと思われる。
     図2には15年間の地区別腰椎骨密度の年間変化率を示した。いずれの年齢階級においても山間部に比較し、海浜部の変化率が少なかった。また、年齢階級を比較すると、40歳代での変化率が大きかった。
    骨密度変化と生活要因との関連では、全対象で牛乳をこの15年間に1日1本以上飲用する者の骨密度の低下が少なかった。また、有経、閉経に関わらず、体重減少群は骨密度が大きく低下した。
    <考察>高齢社会が進展する中、女性の骨粗鬆症を起因とした「骨折」を予防することが健康長寿社会の実現には不可欠である。閉経後に急激に骨密度が低下することから、閉経時期までの骨密度低下を如何に抑えるかが重要である。骨密度低下はそれ単独では重大な支障を来たさず、問題は骨密度低下によって起こる「骨折」である。15年の長期追跡調査から適正体重の維持、牛乳摂取の有効性が示唆され、本結果を県民の骨折・骨粗鬆症予防活動に役立てていきたい。
  • 水野 章, 埜村 智之, 相田 直隆, 石川 雅一, 諦乗 正, 伊藤 恭子, 豊田 芳典, 瀬古 ちさと
    セッションID: 2E11
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> いなべ総合病院は三重県最北に位置する220床の病院ですが、近隣に大病院はなく地域の中核病院としての位置付けであります。診療圏人口は約71,000人となりますが、病院の川上人口はわずか20%で地理的条件はやや不利な立地となっております。病院の歴史は47年ありましたが、建物の老朽化をきっかけに平成14年9月新築移転し、総合病院として再出発いたしました。しかし、優秀なスタッフが揃っているにも関わらず、地域の中では病院の診療機能の拡充はなかなか浸透しませんでした。そこで、地域の中に出向いて、健康講話などをして、地域住民の健康管理の啓蒙をしつつ、病院機能の宣伝を始めることにしました。
    <方法> 対象はいなべ市・東員町を96地域に分け、まずJA各支店が持つ老人会や老人クラブから始めました。翌年からは行政がもつ健康福祉部の老人クラブや女性部、地域にある健康クラブなどからも依頼が来るようになり、頼まれれば何処でも聴衆の多少に拘わらず出かけました。講演の内容は高齢者の健康維持・健康管理の話、生活習慣病や癌の話、健診の話など要望に応じて決めました。講演はあまり難しくならないようにして、スライドで写真やイラストなどを多用してビジュアルにまとめ、お話しました。2年目からは腰痛防止や寝たきり予防のリハビリ実演、コメディカルの話なども行なうようにしました。
    <結果> 地域別には96地域中53地域に延84回講演に出かけました。さらにその他の行事や依頼に応えて、3年間で合計141回の出前講演を行いました。延回数では院長45回、内科22回、外科8回、整形外科2回、小児科3回、その他の医師2回、理学療法士・作業療法士で49回、看護師11回、管理栄養士・薬剤師など7回となっています。聴衆は20名から300名位まで、平均約65名でした。「院長さんはじめ病院の先生が来て話をしてくれた」というところに意義がありました。即ち、自ら出向いて地域住民に近づいて行く姿勢に近親感を覚え、診療や健診に足を運んで頂けるようになりました。
     平成14年度の新外来患者数は13,761名で新入院患者数は2,611名であったのが平成17年度では前者が23,974名(174%)、後者が3,810名(146%)に増加し、ベッドの稼働率も82.3%から92.7%に上昇しました。健診センター受診者数は平成15年度が2,068名でしたが17年度には3,746名(181%)に増加しました。事業収益は14年度が33億8千万円で17年度は46億9千万円(139%)に増加しました。これらの実績は大学にも好印象に伝わり医師数も14年度は24名でしたが17年度には32名に増えました。地域住民の健康管理も担おうとする病院の姿勢は行政にも理解して戴き、市民健診の人間ドッグに組込んで頂きました。また行政とともに病気の第一次予防・第二次予防を促進する地域一体型の健診システム作りの基盤もできたといえます。待っていては道は開かれません。こちらから出かけて地域に溶け込んでいく姿勢が良い医療環境を作ることにつながります。
  • 出浦 喜丈
    セッションID: 2E12
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <研究目的>途上国においても、保健ボランティアは、地域において保健活動を効果的に実践するために、不可欠である。わが国における旧八千穂村の衛生指導員や須坂市の保健補導員は、保健ボランティアの典型といえるが、現在、多くの途上国で、保健ボランティアの組織化とその活動の強化が試みられている。わが国の保健ボランティア活動の経験を参考に、途上国における保健ボランティア活動を強化する目的で、国際的な保健ボランティアの比較対照研究をおこなった。
    <研究方法>日本、フィリピン、ベトナムで、保健ボランティアに関する基礎調査をおこなった。旧八千穂村の衛生指導員、須坂市A地区保健補導員、フィリピンでは、ルソン島コルディレラ地域の2州3自治体の村保健ボランティア(BHW)を対象に、64項目からなる質問表を用いた基礎調査をおこなった。調査対象者351名中342名(実施率97.4%)で調査を実施した。(表1、図1)
    <結果>八千穂村の衛生指導員は全員が男性、須坂市保健補導員は全員が女性で、いずれも各部落(区)から推薦されて活動している。活動内容は、検診など行政の保健サービスに対する協力支援もしているが、自己研修や学習活動などを通じて主体的な活動を求められている。これに対して、フィリピンのBHWは、国の制度として導入されている。調査をした3地区のBHWは、大半が医師のいる診療機関や病院から4-8km以上離れたバランガイ(村)保健センターを中心に、栄養、母子保健、FP/RH、IEC/健康教育, 感染症などの分野で活動している。BHWの大半が女性で、平均年齢45才、平均任期は12年で、日本より長く活動しているが、活動に必要な器材不足や研修機会が少ないなど、改善すべき余地が大きい。ベトナムやラオスでも保健ボランティアが存在しており、“健康な村つくり運動”などの地域活動に参加している。これらの途上国における保健医療の現状と保健ボランティア活動について研究結果を報告する。
    <考案と結論>
    (1)フィリピンでは、BHWの活動の90%が、町保健センターの保健サービスプログラムに関係している。したがって、町保健センターとBHWの関わり方を工夫し、日常的な連絡、協議や研修など通じて、保健センターや病院との協力体制を強化する必要がある。
    (2)八千穂村の全村健康管理のような、地域と住民の参加性が高く、地域や保健ボランティアのインセンティブになるプログラムを計画実施することが重要である。
    (本研究は、国際保健医療協力研究:途上国における社会開発技術・地域保健システムの強化に関する研究班の平成17年度分担研究として実施された。)
  • 小林 哲雄, 岡部 明美, 畠山 富子
    セッションID: 2E13
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>美里分院3F病棟は、精神療養病棟として60名が入院しており、平均年齢は60歳である。入院患者は統合失調症が98%と多く、平均在院期間は1766日(平成16年6月現在)に及んでいる。長期慢性入院患者の多くは、精神症状が落ち着いても、社会生活を送る生活技能が不足しており、特に人との付き合い方が苦手なため、退院しても病状を崩すことが多いとされる。当病棟においても、対人技能の不足から「あいさつができない」、「いやと断れない」などの患者が多く見られる。そこで、当病棟では、生活技能の獲得に有効 とされているSST(social skills training 以下SST)を行っている。
     今回は、対人技能の向上をめざし、約3ヶ月間のSST活動を行った。どのような活動がしたいのか、話し合いをもとに、病院外でのセッションを行い、そして、病棟で入院患者の前でSST活動の経過を発表することができた。これらの活動を通して、SSTが失われた生活技能を獲得する一助として有効であることが、メンバーの表情から確認することができた。今後のSST活動の有効性と活動のあり方について考察したので報告する。
    <研究経過と考察>今回SSTのメンバーは、生活を送る技能の乏しさがあるため、セルフケア能力を高め社会復帰への足がかりをつかもうとしている患者である。患者に見られる生活技能の乏しさは、生活技能を学習していないことや、学習したとしても陰性症状により持っている技能を発揮できないことからきている。そのため、「生きる喜び」を感じるどころか、朝の挨拶さえしない毎日を過ごしている。
     SSTのセッションでは、最初、ウオーミンク゛アッフ゜で自己紹介を兼ねゲームを行い、和やかな雰囲気作りをした。不参加や断りの自由を保障しながら、挨拶や礼儀の課題を出し合ったり、課題のロールプレイを行ったりしながら進めた。セッションを開始する際には必ず、「SST参加のルール」、「良いコミュニケーション」、「練習の順序」が書かれた3枚の用紙をボードに提示し、メンバーと確認したあと活動した。「SST参加のルール」は、人の良いところは褒め、良い練習ができるように他の人を助けあい、「良いコミュニケーション」では、相手と視線を合わせ、はっきりと大きな声で、明るい表情で話す、さらに、「練習の順序」では、課題を出し練習場面を作って練習をし、良いところを褒めるなど心がけ進めた。
     実際にメンバーとセッションを繰り返した結果、単語のみだったやり取りから、「やりたいことを考え」、「実行したことに感動し」、「褒められたことで輝く笑顔が見られ」、何より今まで見られなかった、「人前で話をすることや自分の気持ちを相手に伝える事」など触れた事でSSTの効果を実感することができた。SSTで練習したことによりメンバー個々の対人技能獲得のスキルアップにつながったと言える。
     SSTは、「患者の不足しているところ、弱いところを看護者が補うのではなく患者自身が判断し、前向きに行動できるようになることを目的としている。」 SSTを行うにあたって私は、メンバーが他のメンバーから褒められた場面や、課題達成を支える関わりを大切にした。メンバーの対人技能を向上させるためには、メンバーの肯定的で前向きな姿勢を引き出すことが重要な要素だと再確認できた。
  • 平成11年と平成17年の比較
    濱野 香苗
    セッションID: 2E14
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>佐賀県の海上にあるA島の老年人口割合は28.8%で、全国19.5%、佐賀県22.1%を大きく上回っており、さらに増加が予測される。高齢者が地域で満足のいく生活を送るためにはどのようなサポートシステムを構築すれば良いかを考える基礎資料として、A島の高齢者の心理的・物理的サポートの実態を調査し、平成11年と比較した。
    <研究方法>A島の65歳以上の高齢者154名のうち、調査に同意の得られた120名を対象とした。構成的質問紙を用いた面接調査を、平成17年6月から11月に行った。調査内容は属性および心理的サポート、物理的サポートである。心理的サポートは心配事や悩み事を聞いてくれる人、気を配ったり思いやったりしてくれる人、元気づけてくれる人、くつろいだ気分にしてくれる人の有無を、いつもいる(3点)から特にない(0点)のリッカートスケールで求めた。物理的サポートはまとまったお金が必要な時に貸してくれる人、留守やちょっとした用事を頼める人、短期間の病気の時に看病や世話をしてくれる人、長期間の病気の時に看病や世話をしてくれる人の有無を、いつもいる(3点)から特にない(0点)のリッカートスケールで求めた。分析方法はχ検定を行い、5%を有意水準とした。
    <結果>性別は男性50名、女性70名であり、年齢は65歳から97歳、平均年齢76.3歳であった。世帯構成は、配偶者と二人暮らし30.8%、配偶者・子供家族と同居25.0%、子供家族と同居22.5%、独居17.5%であった。宗教は仏教50.8%、カトリック48.3%、神道0.8%であり、主観的健康状態は良い33.3%、悪い30.0%、普通24.2%であった。 
     心理的サポート(12点満点)は低い(0-3点)3.3%、中程度(4-8点)13.3%、高い(9-12点)83.3%であり、平成11年は低い6.6%、中程度9.8%、高い83.6%で、有意差は見られなかった。平成11年、平成17年両方に回答した81名中、心理的サポートが増したのは28.4%、減ったのは14.8%であった。 
     物理的サポート(12点満点)は低い(0-3点)0.8%、中程度(4-8点)11.7%、高い(9-12点)87.5%で、平成11年は低い4.9%、中程度13.1%、高い82.0%であり、有意差は見られなかった。平成11年、平成17年共に回答した80名中、物理的サポートが増したのは31.3%、減ったのは26.3%であった。6年前と比較した互いの支え合いの強さの変化は、変わらないと強くなったを合わせて70.8%であった。
    <考察>A島の65歳以上の高齢者の心理的サポートと物理的サポートは8割が高いサポートであり、平成11年の調査結果とほぼ同じ結果であった。また心理的サポートも物理的サポートも6年前よりも増えた割合の方が多かった。支え合いの強さも7割は変わらないや強くなったと感じており、島民間の地域のサポートシステムが維持されていることが明らかになった。さらに増加するであろうA島の高齢者が住み慣れた島で生活するためには、平成12年に導入された介護保険等の公的サポートの活用と共に地域におけるサポートシステムを維持することが重要であると考える。 
     本研究は平成17年度科学研究費補助金(基盤研究)による研究の一部をまとめたものである。
  • ー退院支援に伴う問題点を明らかにするー
    生永 美代子, 貝原 恵子, 吉永 千奈美, 助井 宏美, 山本 慶子
    セッションID: 2E15
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>現在、日本は高齢社会の上に核家族社会となっている。核家族化は高齢者世帯の増加につながり、高齢者への介護力の低下を招いている。高齢者世帯は、退院後の方針が決まらず入院期間延長がある。私たちは1. 高齢患者が、家庭に帰ることに伴う問題を明らかにする2.高齢患者の受け入れ状況を調整するための手がかりを知る、を目的とした研究に取り組んだ。課題が明らかになったので報告する。
    <研究方法>
    期間 H16年 5月1日から10月31日
    対象 65歳以上、日常生活自立度A2からC2の患者・家族48名
    方法
    1.入院時に看護師が退院後の生活にむけて援助することを説明する
    2.同時に患者・家族の退院後の希望を聴取する。
    3.入院中は、7日毎カンファレンス行う。入院診療計画書の予定期間を手がかりに退院調整をすすめる。
    4.在院日数延長患者の理由を分析する。
    倫理的配慮
    1.研究で使用した希望聴取表は今回の研究以外では使用しない。
    2.医師より全身状態が極めて不良と判断された患者は対象者であっても研究対象としない。
    <結果>在院日数延長患者の理由の内訳は、74%が病状変化、19%が様子観察、5% はリハビリ、2%はリニアックが理由であった。
    <結論>患者が在宅に帰ることに伴う問題は2点となった。
    1.患者・家族と医療者の退院に対する認識の違い。
    2.福祉サービスについての患者・家族、医療者の知識不足。
    <考察>患者・家族と医療者との退院に対する認識の違いは、「退院は完治してからするもの」という思い込みが影響している。実際、看護師から退院について説明を受けていても、医師に直接入院延長を依頼する患者・家族もみられた。また、高齢者は医療依存のある状態で退院することが多いため身体的問題や、不安などの精神的問題もある。これに対しては、患者の生活の中心は地域社会であるということを説明し、できるだけ患者・家族の希望する環境を整えることが必要と考える。
     福祉サービスについての患者・家族、医療者の知識不足は、退院後の方針決定遅延につながる。患者・家族に福祉サービスの情報を提供し、入院早期から退院援助するためには医療者の知識が豊富でなければならない。
    <まとめ>今回明らかになった課題は、今後退院支援を行ううえで重要なものとなった。これを踏まえたうえで患者・家族の希望にできるだけ沿った退院支援を行っていきたい。
  • 久和田 瑞穂, 今中 喜美子, 村中 好美, 串畑 重行
    セッションID: 2E16
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>慢性腎不全保存期患者の多くは医師から透析についての情報提供がなされているが、患者の理解が十分に得られているとはいいがたい状況である。このため透析導入にあたって患者の意思決定及び治療への参画は十分とはいえないのが現状である。当院においては、主治医より指示のあった時点で透析担当病棟の看護師が情報提供にあたっており、情報提供のシステムは機能しているが、内容においての統一は十分ではなかった。今回、現状での問題を解決するための情報提供のツールとしてライフシュミレーションを作成し、活用を開始するにいたったので報告をする。
    <現状>当院では透析の導入が近くなった保存期患者に対し、医師が透析の必要性と血液透析および腹膜透析の2種類の透析方法があることを伝える。その上で病棟スタッフによって治療方法の違いや双方のメリット及びデメリットについて時間をかけて説明し、さらに血液透析と腹膜透析の見学の機会を提供する。その後患者自身により透析方法を選択させるシステムをとっている。このシステム開始以後2年が経過し、血液透析・腹膜透析の導入比率はほぼ1対1である。しかしながら担当スタッフによる透析方法の説明時のデバイスの選択(ビデオあるいはパンフレット)はそれぞれに任されていたため説明の内容に若干の差が出ることがあった。説明内容が統一できれば導入以後の教育においても順調に経過すると考え、統一ツールの作成、検討に至った。
    <結語>患者と家族による治療法の選択がなされる事が、その後のスムーズな透析治療の展開に繋がることとなる。また選択においての情報提供は不可欠であるが、患者(家族)の依存度の高い腹膜透析が増えている点は本システムの効果と考える。また、患者及び家族と医療スタッフ間で情報を共有し信頼を確立するためには統一された説明用デバイスが必要であり、今回のライフシュミレーションの作成と活用は効果的と考えている。また、地域医療支援病院である当院の役割として、認知度が十分といえない腹膜透析についての情報も提供しながら、地域の腎不全における医療・看護の水準を向上させるため取り組みが必要であり、今回の取り組みはホームページを活用し地域で共有することを考えている。
  • -法的知識の有無と利用状況に焦点を当てて-
    瀬能 美代子, 鈴木 芳江, 竹村 晶子
    セッションID: 2E17
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>日本の女性雇用者数は増加傾向にあり、働きつつ妊娠、出産、育児を続ける女性をサポートする法整備がなされている。しかし、これらのことが女性の就労の妨げとなっていることは少なくない。今回当院で分娩した褥婦の就業状況及び法制度の知識、利用状況を知り、看護者としてどのような援助が必要なのかを考えるため、アンケート調査を実施した結果、法的制度の周知度と利用状況などを知ることが出来たので、ここに報告する。
    <研究目的> 
    当院産婦人科外来利用者を対象に労働基準法第6章の2の知識及び、利用状況について質問紙法を用いて調査し、その実態の把握を試みる。
    <研究方法>
     (1)期間
     ・平成17年9月-平成17年11月の2ヶ月間
     (2)対象
     ・当院産婦人科外来に産後1ヶ月健診に訪れた褥婦100名
     (3)方法
     労働基準法第6章の2の知識と利用状況を把握するためのアンケ?トを作成し、同意のもと記入後、手渡しにて回収。統計をとる。
    <倫理的配慮>
     アンケートは無記名とし研究目的と共にこの研究以外に使用しないことを説明し同意を得て実施。
    <結果>
    育児担当者は母(自分)97名であり、妊娠発覚時の就業者は73名である。
    (1)雇用形態
    正社員30名(41%)、準社員8名(11%)、パート21名(29%)、アルバイト7名(10%)、事業主(自営)3名(4%)、その他4名(5%)
    (2)妊娠発覚後の就業状況仕事を辞めた46名(63%)、産後休暇をとり継続2名(3%)、産前・産後休暇をとり継続4名(5%)、産前・産後・育児休暇をとり継続18名(25%)、休暇をとらずに継続3名(4%)対象者全員に働く女性の妊娠・出産育児に関する制度について調査した(表1)利用状況(予定を含む)(表2)
    <考察>
    産前の就職状況は73%に対し、妊娠中及び産後仕事を辞めたのは63%であった。青木1)らは、「わが国においては、近年女性の社会進出が著しいものの、今なお男は仕事、女は家事、育児、という性(別)役割分担が根強いもの事実である」と述べている。育児の中心は母親であるとの結果からも、推測ができる。産前・産後休暇・育児休業の制度は6割強の周知度に対し、その他の制度に関しては1_から_2割程度の周知である。「産前休暇」「産後休暇」「育児休業」については制度を利用しようとする状況があるものの、利用者は周知度よりも低いことがわかる。(グラフ1)。つまり知っていても利用できない現状であるとわかる。正職員以外の就業者が5割以上いることから雇用形態によっては制度が利用できないことも考えられる。
    <おわりに>
    今回の調査により法的制度の周知が進んでいない現状が明らかになった。そこで、私達看護者が法的制度の知識普及に努め、妊婦、産婦が働きながら安心して妊娠、出産、育児を両立できるよう支援していくことが今後の課題といえる。
    <引用文献>
    1)助産学大系5 母子の心理・社会学 青木康子 加藤尚美 平澤美恵子 p99、p39、
    <参考文献>
    1) 厚生労働省平成17年3月28日「平成16年版 働く女性の実情」
    http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/03/h0328-7a.html#zu1-9
    2) 国民衛生の動向2003年 
  • 柳瀬 智恵美, 上田 征子, 竹内 麻里子, 鎌田 菜香
    セッションID: 2E18
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院の母児同室は、出産翌日より開始され消灯後は授乳の時間に新生児室へ母が通う方法であった。2004年4月より良好な愛着形成と母乳栄養の確立をめざし、出産当日より24時間母児同室を導入した。そこで直母回数・母確率・新生児の体重減少に与える影響について分析、検討した。
    <研究方法>
    1)対象…平成14年10月から平成17年9月までの期間、当院で経膣分娩にて出生し出生から退院まで当病棟に在籍した544名(低出生体重児、光線療法を受けた児を除く)。
    2)方法…対象を以下の群に分け、新生児カルテより集計した結果から、X2検定による有意差を求めた。
    A群…夜間母児異室、243名。
    B群…24時間母児同室、301名。
    <結果>
    1)直母回数
     (1)平均直母回数
    A群:6.8回/日 B群:9.3回/日
     (2)時間帯別直母回数
    A群:7時から12時・・・1.8回、12時から21時・・・2.9回21時から7時・・・2.1回
    B群:7時から12時・・・1.9回、12時から21時・・・3.9回21時から7時・・・3.5回
    2)退院時母確した人の生後72時間の直母回数
    3)最低体重減少率
    A群・・・8.0% B群・・・7.7%
    4)日齢1の糖水追加人数
    5)母確率
    <考察>産褥初期において、乳汁分泌の発来とその確立には高濃度の血中プロラクチンを必要とする。そのため出生直後からの頻回の吸啜刺激が必須である。退院時母確した人の生後72時間の直母回数はB群で有意に多く、頻回の直母により母乳分泌が促進された結果といえる。日齢1の糖水追加人数はB群で有意に少なかった。出産直後からの24時間母児同室により早期から直母が可能になった結果である。また、両群の体重減少に有意差はなく、今までの糖水追加は不要であった事がわかった。
     退院時の母確率は、両群に有意差はなかったが、一ヶ月健診時の母確率はB群で有意に高かった。これは、早期の頻回直母による母乳分泌促進の効果や24時間一緒に過ごす事で一日のリズムを母が体感できた結果と考えられる。
     直母回数が多いにもかかわらず母確しなかった人は、有効な吸啜が行われていなかった可能性がある。有効な吸啜でなければ母乳分泌の促進もされず、正しい授乳姿勢(ポジショニング)や児の正しい吸着(ラッチ・オン)が行われなければ乳首のトラブルにもつながる。
     現在当院では、ポジショニングの指導や吸啜が困難なケースに搾乳の指導やナーシングサプリメンターなどの補足用補助器具を使用した直母を行っており、その効果については今後の研究課題としたい。
    <結論>
    1)退院時母確した人の直母回数は有意に多かった。
    2)退院時の母確率は有意差がなかった。しかし出生直後より母児同室を開始することで糖水追加を必要とした児が減少した。
    3)糖水を追加しなくても体重減少には影響を及ぼさなかった。
    4)1ヶ月健診時の母確率は有意に上昇した。
     
  • 当施設の現状を中心に
    永沼 晃和, 桑原 智, 細木 和典, 吉川 道世, 森田 雅弘, 堀田 浩, 木村 和善, 櫻庭 光夫
    セッションID: 2E19
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 現在当施設では乳腺腫瘤形成性病変に対し,1988年に日本超音波医学会から公示された「乳房超音波断層法の診断基準」(以下,日超医基準とする)を参考とし評価・表現している。しかし日超医基準は,高周波診断装置が主流となった現在の乳腺超音波診断に対し腫瘤を適切に表現できていない可能性もある。そこで,今回我々は現在参考としている日超医基準と良悪性評価との関連性及び日超医基準以外に良悪性評価に有効であるといわれている評価項目についての有用性とその関連性を検討したので報告する。
    <対象> 平成15年9月_から_平成17年3月の間に当施設外科を受診し,乳腺超音波検査により腫瘤形成性病変を疑われ,細胞学的検査又は病理組織学的検査により,診断がおこなわれた137例(良性59例,悪性78例)を対象とした。
    <方法>
    1) 超音波リアルタイム画像において,乳腺腫瘤形成性病変に対し,日超医基準各項目及び良悪性ついての評価をおこなった。
    2) 日超医基準以外の腫瘤形成性病変に対する評価項目の中で,良悪性評価に有効だと思われたechogenic spot,connective tissue sign,境界線の途絶の3項目(以下3評価項目とする)について,現在乳腺超音波検査に携わっている技師3名により超音波フィルム画像を再読影することで評価した。
    <検討項目>
    1) 日超医基準各項目に対し,数量化2類による多変量解析を行うことにより悪性腫瘤に対する偏相関係数を算出し,各項目と良悪性評価との関連性を検討した。
    2) 3評価項目それぞれについて,良性・悪性の内訳を出すことにより良悪性評価に対する有用性を検討した。
    3) 3評価項目と良悪性評価との関連性の高さを知ることを目的とし,日超医基準に3評価項目を加えた10項目に対し数量化2類による多変量解析を行ない,偏相関係数を算出することで3評価項目と良悪性評価との関連性を検討した。
    <結果及び考察>
    1) 日超医基準各項目に関する数量化2類による分析をおこなった結果,偏相関係数が,形状,境界エコーで0.346,0.280となり,他の項目と比較し,良悪性評価との関連性が高い傾向を示した。この要因としては,これらの項目が,腫瘤の浸潤の有無を表現しているためと考えられた。
    2) 3評価項目において,良性・悪性の内訳を出した結果,3評価項目とも悪性を示す割合が有意に高く,良悪性評価に対する有用性が示唆された。3評価項目は悪性腫瘤の発育に随伴する所見を評価・表現しているためと考えられた。
    3) 日超医基準に3評価項目を加えた10項目に関する数量化2類による分析の結果,echogenic spot,境界線の断絶では,偏相関係数がそれぞれ0.424,0.250となり,他の項目と比較し良悪性評価との関連性が高い傾向を示した。 connective tissue signにおいては0.007となり,他の項目と比較し関連性が低い傾向を示した。
     connective tissue signが低い傾向を示した要因として,今回は超音波フィルム画像からの評価であり,検査時における技師の認識不足から適切な画像が残されていないことが要因の一つであると考えられた。
  • 常山 聡, 日下 起理子, 田村 裕恵, 小松 良一, 久保田 芳正, 櫻井 宏治, 赤羽 弘充, 高橋 昌宏
    セッションID: 2E20
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>乳腺粘液癌は、腫瘍性上皮細胞から細胞外へ分泌された粘液巣を特徴とする特殊型の浸潤性乳癌である。発生頻度は全乳癌の1_から_4%であり、比較的まれな腫瘍である。また、予後については他の組織型に比して良好である。今回我々は、17症例の粘液癌における予後因子について、他の組織型との比較を行なった。
    <対象と方法>1995年から2004年に当院外科にて手術が施行され組織学的に乳腺粘液癌と確認された17症例を対象とした。また、比較対象として2002年_から_2004年の期間に当院で手術施行され、組織学的診断において粘液癌を含む特殊型を除いた166症例を使用した。
    これらの症例について、予後因子としてのエストロゲンレセプター(ER)、プロゲステロンレセプター(PgR)、p53、Her2/nueとの比較を行なった。
    <結果>ERにおける陽性率は、粘液癌では17症例中16件が陽性であり94%であった。また他の組織型では、120症例中84件で陽性率は70%であった。
     ERは乳癌における予後因子として有用とされており、悪性度と負の相関を示すとされている。今回の結果における粘液癌のER陽性率は、他の組織型に比して高く、予後が良好であることを示していると考えられる。また、粘液癌でER陰性の症例1例は、肺転移をおこしていた。
     PgRについては、粘液癌で13例が陽性で陽性率76%、他の組織型では120症例中陽性68例で陽性率51%であった。
     PgRも乳癌における予後因子として有用であり、ER同様に悪性度と負の相関を示している。今回の結果における粘液癌のPgR陽性率も、他の組織型に比して高く、予後が良好であることを示していると考えられる。また、肺転移をおこした粘液癌については、PgRも陰性であった。
     p53については、粘液癌で1例が陽性で陽性率6%、他の組織型では126症例中45件が陽性で陽性率36%であった。
     p53については、ER・PgRとは反対に悪性度と正の相関を示すとされている。今回の粘液癌のp53陽性率は、他の組織型に比し低く、予後が良好であることを示していると考えられる。
     Her2/nueについては、粘液癌で1例が陽性で陽性率6%、他の組織型では146症例中30例が陽性で陽性率21%であった。
     Her2/nueは、p53同様にER・PgRとは反対に正の相関を示すとされている。今回の粘液癌のHer2/nue陽性率は、他の組織型に比し低く、予後が良好であることを示していると考えられる。また、粘液癌でHer2/nue陽性の症例1例は、ER・PgRともに陰性で肺転移をおこしていた症例であった。
    <考察>乳腺粘液癌は他の組織型に比較して、予後は良好であるとされている。また今回検討した予後因子からも良好であることが示されている。
    また、粘液癌17症例中現在までに転移が確認されている1例については、ER・PgRともに陰性、Her2/nue陽性と今回検討した3つの予後因子が、悪性度の高い可能性を示している。
    乳腺粘液癌においては、予後因子で悪性度が高い可能性を示している場合、将来の転移の可能性も考慮し、経過を観察していく必要があると考えられる。今後、再発の有無を含めた術後経過と予後因子の関係についても更なる検討をしていく必要があると考えられる。
  • 賢木 静, 千田 恵子, 鎌田 玲子, 吉田 隆子
    セッションID: 2E21
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉 今回、甲状腺腫瘍摘出術施行において、腫瘍の浸潤により気管切開術(以下気切)を予期せず施行された事例を経験した。術後患者は気切に関する知識のないまま生活習慣を変更せざるを得ない状態となった。そこで入院前の生活を考慮し援助を行った結果、気切後のボディイメージの受容、食べる楽しみの回復、生活上の自己管理ができたのでその関わりについて報告する。
    〈患者紹介〉  79歳 女性
    病名 甲状腺腫瘍(T4N1)現病歴 平成17年5月手術目的で入院し、甲状腺腫瘍摘出術施行。腫瘍が両側声帯まで浸潤していた為、術後反回神経麻痺による窒息の危険が高く家族同意で気切施行し、気管カニューレ(以下カニューレ)が挿入された。社会背景 家族は84歳の夫、次女、孫2人の5人家族で、手術直前まで川柳の指導や講演を全国各地で行っており、各地の名産品を食べることを楽しみにし、話し好きで明るい性格であった。
    看護問題
     (1)気切後のボディイメージに戸惑っている。
     (2)咽頭痛や嚥下によるムセがあり、食事に恐怖感がある。
     (3)退院後の生活についての不安がある。
    看護目標
     1.気切後のボディイメージが受容できる。
     2.経口摂取でき、食べる楽しみが回復する。
     3.退院後の生活の注意点について患者・家族共に習得できる。
    〈結果〉 患者はカニューレが入っている事をなかなか理解できず、術前のように発声しようとしたり、口から排痰しようとする行動が繰り返し見られた。そこで、段階的に患者の年齢に合わせ理解できるような行動目標をたて、理解度を確認しながら介入を行った。初めは鏡を見る事からとし、カニューレの位置が認識できるようにした。また一緒に鏡を見ながら触っても心配ない事や、排痰時の方法について指導を繰り返し行った。その結果怖がって消極的であった患者は次第に鏡を見る時間が増え、自分で排痰する事が可能となった。術後21日目スピーチカニューレに交換でき、発声に関する行動目標を持ち、一緒に発声訓練を行った。患者は「これで先が見えてきた」と表情も明るくなり、うれしそうに他患者へ自ら話しかける場面が増えた。会話の中で気切口を小鳥の巣箱にたとえて、愛着を持って関われるように変化が見られた。食事については、術後1日目に食事開始した際のムセが恐怖感につながり、患者の同意の下やむを得ず経管栄養に移行した。しかし「味気ないものね」と次第に経口摂取への願望を示す言葉が増え、創状態の安定と共に嚥下訓練を開始し、1時間以上かけてムセなく食べられるようになった。退院に向け、入浴、洗髪、更衣、カニューレ管理の注意点についてパンフレットを用いて患者・家族へ指導を行い家族の協力も助け、注意点を守った生活行動がとれるように変化した。
    〈結論〉
    1.気管切開術後のボディイメージの受容には、気切部を体の一部として理解する事に加え、気切前の生活に戻れる自信と患者の楽しみの回復ができるような援助が必要である。
    2.高齢者の指導には、患者の社会背景に合わせ、各段階での目標を持たせること、家族の支援が重要である。
  • 杉山 貴敏
    セッションID: 2E22
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>近年, 傷を消毒しない,傷を湿潤環境下で治療する創傷治療(湿潤療法, Moist Wound Healing)が提唱されている. この療法は生体の細胞成長因子を積極的に利用する治療法で,創傷の治癒が従来の治療に比べて早いのが特徴である.口腔外領域は創を創傷被覆材などで閉鎖し湿潤環境下で治療し,口腔内領域はすでに唾液による湿潤環境にあるため, 含嗽剤をふくめた消毒を行わないことが, 湿潤療法を実践することにあたると考えられる.当科では平成15年5月より現在にいたるまで, 抜歯をはじめ外傷など創傷治療は全て湿潤療法に基づく治療を行っている.
     今回,西美濃厚生病院歯科口腔外科で演者自身が行った平成13年5月より平成17年5月までの全ての創傷治療について, 湿潤療法実施前と湿潤療法実施後の2群に分けて, 術後の治癒不全, 感染等について比較検討を行った. 対象は1歳より96歳までの患者計733名, 湿潤療法実施前群(平均年齢60.2歳)556例, 湿潤療法実施後群(平均年齢58.5歳)591例で乳歯抜歯症例は除外した. 術後, 抜糸時に創が哆開した症例, 創のびらん,潰瘍,壊死を生じた症例,細菌感染を生じた症例,創部の疼痛が消失しない症例を治癒不全例とした。
    <結果>治癒不全例は湿潤療法実施前群52例(10.97%), 湿潤療法実施後群21例(3.55%)であり湿潤療法実施群が有意に少なかった. また, 抜糸までの期間は湿潤療法実施前群平均6.83日, 湿潤療法実施後群4.78日であった.
    <考察>以上の結果より、創を消毒しても術後の治癒不全や創感染を防止することはできないこと,湿潤療法による治癒期間の短縮の可能性が示唆された.
     夏井は,創感染は縫合糸,壊死組織,血腫,痂皮などの異物が存在するからおこるのであって,細菌が存在するからおこるのではないと述べている.皮膚や皮下組織の感染は細菌単独でおこすためには組織1gあたり105から106個の細菌が必要とされているが,異物の存在下では200個の細菌で感染が成立するといわれている.消毒薬による消毒は一時的に細菌数を減少させるが,皮膚の皮脂腺や汗腺,口腔常在菌の増殖により細菌数は1日を通しては大きくは変化しないと思われる。
     また、創傷治癒には肉芽組織が増生し,線維組織や上皮組織が再生されなければならない。消毒薬はイソジンガーグルの希釈濃度0.23から0.47%でも組織障害性をもっており、組織再生に必要なPDGF, EGF, bFGF, TGFβ, NGFなどの細胞成長因子を無効化し,上皮細胞や線維芽細胞の増生を阻害している。さらに,口腔内で消毒効果を発揮させるにはイソジンではポピドンヨード濃度で0.1%濃度を2から3分間持続させることが必要である.唾液で満たされた口腔内で、この濃度を保つことは困難である。
     つまり、口腔内の消毒は,消毒効果よりも組織障害作用の方が大きく,治癒を遅延させているのである。口腔領域の創傷時には水道水や生理食塩水あるいは消毒薬を含まない含嗽剤で口腔をよく洗浄し,壊死物質や血腫など感染源をよく取り除くことが大切であり,異物である縫合糸などは可及的早期に抜糸する必要があると考えられる.湿潤療法により生体の治癒能力を最大限に発揮させ,治癒を早めることが, 術後障害も減少させることができると考えられた.
  • 災害伝言板による連絡網の確立を
    平間 好弘, 澤畑 博, 沼崎 誠, 吉田 公代, 新谷 周三, 椎貝 達夫
    セッションID: 2E23
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> 新潟県中越地震や阪神淡路大震災の勃発により、国民は思いもよらぬライフパニックを体験した。ライフパニックとは、流通経済大学の故渡辺博史社会学部長が提唱した言葉で、「人生の生活や生命を不本意に襲う危険の伴う出来事」。したがって、その危険や不幸をできるだけ最小限にくいとめるための対策が必要である。
     そこで、当院では昨年、地域住民300人と職員580人に「地域との関わり」や「災害発生時の救援・救助活動」などのアンケートを行い、その結果から問題点や改善すべき点を明らかにすることを目的に実施したので報告する。
    <方法:結果> 住民アンケートは、昨年の10月に開催された病院祭「第15回ふれあいまつり」に合わせ見学者に無作為で行い、職員アンケートは1月に実施した。
     注目された「地域との関わり」では、実際におこりうる3つの緊急事態をあげ、それらの出来事に近隣の人が見舞われた場合、「助けられそうですか」をきいた。
     住民アンケートでは、「助けられる」「たぶん助けられる」を合わせた救助活動の割合は、<災害後の救助活動>79.8%、<災害発生時の救援・救助活動>68.7%であった。職員は、<災害後の救助活動>64.6%、<災害発生時の救援・救助活動>63.3%で、ほとんど差はなく「助けられない」の割合を大きく上回っていた。
     一方、情報関連については、震度6以上の地震が発生した場合に利用可能な携帯電話によるiモード災害伝言板を住民の24.9%、職員の50.6%が「知っている」と回答した。NTTドコモのiモード災害伝言板は、伝言登録をすると同時に、5個所にメール送信が行なえる。当院では、(1)当院の災害用携帯電話アドレス(2)当院の災害用パソコンアドレスを入力するよう職員に依頼し、直接災害対策本部が『確認』できるシステムとして昨年の2月から訓練を実施している。
    <考察> 相模湾のフィリピン海プレートと陸側の北米プレートの境界の活断層の一部(約25km)にマグニチュード8程度の規模の直下型地震が発生する可能性が高い、と政府の地震調査研究推進本部が発表している。
     茨城件沖地震に関しては、今後30年間以内に90%の確率で発生する予測が出ている。
     地域の災害に関して、消防署員や警察署員、看護師、NTT職員などのOBの方たちが講師となった災害講習会の開催を提案する。
     例えば(1)災害に対する心構え,(2)もしものときの救助活動,(3)もしもの時の連絡方法などの講習会の開催である。
     またアンケートでは、iモード災害伝言板を知っている方が少ないことから、病院ニュースや報道機関を利用し、住民と職員への災害伝言板の周知が必要である。
    <結語> 新潟県中越地震では、全国の救急病院に配置されている厚労省の「広域災害救急医療情報システム」が利用できなかった。そこで、同システムと一緒に設置した携帯電話(通話のみ)に iモード機能を付けることにより、災害用伝言板を利用し、5個所のメール送信を(1)病院長,(2)病院の災害対策委員長,(3)市町村,(4)県,(5)厚労省などの担当部署アドレスを登録することにより、地域あるいは全国の病院の状況を把握することができ、重症な患者さんの円滑な移送を可能にするのではないだろうか。
  • 岡田 邦彦, 渡部 修, 佐藤 栄一, 長尾 知哉, 篠原 玄, 斉藤 太
    セッションID: 2E24
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     信州ドクターヘリは佐久総合病院を基地病院として、平成17年7月から運航を開始した。当初は長野県の東信地域をはじめとして全県下にかけてのシミュレーションを行いつつ、その運航範囲を広げて行き、10月の終りには全県下を対象とするようになった。
     出動実績を見てみると、この3月までに233件の出動要請があり、現場出動が141件、施設間搬送が37件、キャンセルが12件であった。その内容を検討してみた。
     月別に見てみると、8月と冬場に出動が多く見られた。8月は東信地域にある菅平ラグビー場での外傷が多く見られ、冬場はスキー場での外傷、特にスノーボート゛における外傷が多く見られた。このスノーボードにおける外傷は3月終わりまでに約70件を数えた。
     地域別に見てみると当院から半径約30kmの範囲にある東信地区、つまり佐久・上田地域への出動が137件、それより遠い地域への出動が41件であった。特に冬場になってからの東信地域以外への出動が多く見られるようになった。
     目的地までのフライト時間は、最初の2ヶ月は平均12分であったが、しだいに伸びて行き、平成18年1、2月では平均20分を要し、遠くまでのフライトが増えていることがわかった。
     疾患分類では外因性が127件、内因性が52件であった。外因性では外傷が119件と圧倒的に多く、内因性では心大血管系が17件で最も多かった。
     この9ヶ月間を通して実感できた事は、ドクターヘリの有効な運航のためには、現場の救急隊員の適切で迅速な判断がもちろん大切であるが、受け入れ機関側もそれに応じたスムーズな対応が不可欠なことである。
     我々はドクターヘリの効果的な運用および普及をめざして、当初より毎月の事例検討会を行ってきた。開催場所は基地病院に限定せず、要請が多く見られる地域での検討会も行ってきた。これにより多くの救急隊および医療機関の声を聞くことができ、ドクターヘリの普及が県下に進んできたと評価している。
     最後に曜日別に出動実績を見てみると、土日で40%以上を占めており、まだ日常の救急医療体制に浸透しているとは言い難い。信州ドクターヘリが今後長野県の救急医療に少しでも貢献できるように、そのPRに努め、実績を積み重ねてゆきたい。
  • 子安 正純, 度会 正人, 田渕 昭彦
    セッションID: 2E25
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <症例1>39歳女性。プールにて溺水によると思われるCPAで発見。発見時VFでDC施行にて心拍再開するも呼吸停止、除皮質肢位。脳低体温療法を導入し、意識状態は改善。長期臥床による下肢深部静脈血栓を生じ、下大静脈フィルターを留置し独歩退院。
    <症例2>60歳男性。陳旧性後壁梗塞の既往あり。自動車免許書き換え講習中にCPAとなる。搬送時VF。脳低体温療法にて状態は改善しICD植込み施行し独歩退院。
    <症例3>43歳女性。陳旧性下壁梗塞の既往あり。職場にてCPAにて発見。救急隊到着時VF DCにてAfとなる。除脳硬直。低体温療法を導入。意識状態は改善。ICDを植込み、独歩退院。
    <結論>症例を適切に選択し、速やかに脳低体温療法を導入することにより良好な神経学的予後が期待できる。
  • 林 勝知, 上田 宣夫, 森 茂, 三鴨 肇, 山田 敦子, 島田 武
    セッションID: 2E26
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>中濃厚生病院救命救急センターは、2000年8月から約6年、岐阜県の狭義の中濃地域(関市、美濃市)で、救急診療を行っている。今回、当センターとして、岐阜県中濃地域の救急医療体制の検証を行ったので報告する。
    <検証結果>
     1.当センターの現状:年間の総救急患者数は約2万人で、重症度別にみると、一次が約90%と多い。救急車搬送による救急患者は、開設後約2年間は、一次が60から70%と多かったが、その後の約4年は一次が約50%となり、それに伴い急性心筋梗塞及び脳卒中等の重症救急患者の中濃医療圏の他の病院からの紹介、転送も増えてきている。ときどき生じる問題は、(1)約1時間に、三つの消防組合からあわせて4から5例の救急車搬送の要請があることにより初療室が混雑したこと、(2)中濃消防組合から約1時間で心肺機能停止状態(CPA)2例、重症外傷1例症・中等症外傷3例のホットラインが4回あり、大混雑の中で、診療を行なったこと、(3)夜間の中濃消防組合からの救急車搬送が、他の三つの二次病院ではなく、ほとんどが当センターであったこと等である。中濃地域の救急の協議会等で病診連携や二次病院の救急診療の役割分担を要望しているものの、未だ改善されてはいない。今後とも、行政の協力も求めながら、システムの改善を目指している。また、夜間、休日に直接来院する軽症患者が多いため、救命救急センターの利用法についてという掲示を出して、軽症例については、開業医の受診を奨めている。平日夜間については、少し受診患者が減少した。しかしながら、休日の午前中は多くの小児患者が来院している。このことについても今後改善されるよう模索している。
     2.メディカルコントロール:オフラインメディカルコントロールとして、(1)中濃消防組合の救命救急士に対する包括的指示下の除細動のトレーニングは、プレコース、本コースあわせて8時間行った。(2)中濃消防組合の救命救急士でない一般の救急隊員約120名には一次救急処置(BLS)、自動体外式除細動(AED)のトレーニングを1)に準じ計8時間のトレーニングを行った。(3)気管内挿管の研修を2005年2名の救命救急士、2006年3名の救急救命士に行った。いずれも消防組合からの評価は高かった。
  • 鈴木 和広, 加藤 活大, 西村 大作, 鈴木 夏生, 矢口 豊久, 池内 政弘, 神谷 泰隆, 平松 武幸, 水野 志朗, 三宅 隆
    セッションID: 2E27
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 愛知県厚生連では、傘下9病院の医局長が幹事となって、愛知県厚生連医師会が運営されている。毎年、幹事会で決定された活動テーマに沿って各病院から現状報告と問題提起がなされ、幹事会での議論を経て、医師会総会で幹事会活動報告としてその総括がされている。2003年度の活動テーマは「救急医療」と決定されたが、これは、今後ますます救急医療に対する地域からの要請が高まり、その重要性が増すであろうことから、各病院の現状を把握の上、病院間で情報を交換し、それぞれの救急体制の整備に役立てることが目的であった。
    <方法> 各病院の幹事を通じて、2002年度の救急来院患者数、救急車搬入数、救急入院患者数などの統計および人員配置と教育体制に関してアンケート調査を行った。さらに、各病院が抱える問題点を列挙し、幹事会で報告の後、対策について議論を交わした。
     救急来院患者数などの各統計量については、Mann-WhitneyのU検定を用いて解析を行った。
    <結果> 9病院全体で、年間約16万名の救急患者を診療し、2万3千台以上の救急車を受け入れていた。施設数では県全体の3.6%に当たる病院群が、出動救急車の10%強に応需している計算となった。救急来院患者の7.4%が入院を必要としており、全入院患者の1.05%を占めていた。立地別に見ると、都市型に分類される病院群のほうが郡部型に分類されたそれらよりも、救急来院患者数、救急車搬入数および救急入院患者数が有意に多かった。配置人員については、診療時間内は多くの病院が各科での対応となっており、研修医を含めた医師および看護師が、救急外来に常駐している施設は少数であった。休日の日直体制での平均配置人数は医師が3.1名、看護師が3.2名であり、当直では、それぞれ3.1名と2.9名であった。教育については、定期的な講習会、講演会あるいは症例検討会が行われている施設は少数であった。問題点として、もっとも重視されたのは人員不足であり、医師、看護師のみならず、診療協助部門、事務部門の各部門でも、多数の救急患者への対応には職員数が十分でないとの指摘がされた。
    <考察> 立地条件による差異はあるが、各病院ともその規模に応じた救急患者の受け入れを行っており、愛知県下の病院群のなかでも救急医療への寄与は大きいと考えられた。しかし、人的資源の不足および救急医療の質の確保が問題点としてあげられており、救急医療向上のためには、職員の啓蒙のみならず、厚生連の病院間あるいは地域の医療機関の間での取り組みが必要になると思われた。
  • 岩崎 弘子, 日向 美佐江, 砥石 智, 甘利 雅子, 木次 光, 重田 美保, 新井 祐子, 北岡 宏太, 松井 孝仁, 岡田 邦彦
    セッションID: 2E28
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <はじめに>ドクターヘリシステムは、救急現場活動と施設間搬送を主目的とした病院外救急医療システムである。前者は、ヘリコプターで救急現場に医師・看護師を派遣し、初期治療の早期開始と決定的治療までの時間短縮を目的としている。信州ドクターヘリは、国と長野県の補助事業であり、当院を基幹病院として、平成17年7月より全国で10番目に運航が開始された。広大な長野県内を夏はラグビー外傷、冬はスキー・スノーボード外傷と徐々に出動実績も上がっている。
     フライトナースとは、ヘリコプターに搭乗し、院外で医療活動を行う看護師のことである。信州ドクターヘリでは、当院所属の看護師経験5年以上、救命救急センター・ICU(以下ICUとする)経験3年以上のリーダークラスの看護師で、ドクターヘリ講習会を受講しているという基準を設けている。当院は屋上ヘリポートが設置されており、ドクターヘリ導入前より防災・県警ヘリの受入を行っている。ヘリ搬送患者のほとんどが、ICUに入院していること、ヘリポートの下の階がICUであり、要請から出動まで時間がかからないという条件から、現在のフライトナースはICUスタッフの中から9名選出されている。しかし、病棟スタッフであるため初療経験に乏しく、初期治療に関する経験・知識不足という大きな課題があった。この課題に対し我々は、研修などで自己研鑽し事例検討を行いながら、現場経験を重ねつつ活動している。
    <目的>今回、信州ドクターへリ事業におけるフライトナースの役割を検討する。
    <方法>平成17年7月より1年間の信州ドクターヘリ運航実績の中で、現場活動におけるフライトナースの役割について集計し、その課題も含め検討した。
    <結果>活動内容の集計では、モニター管理・酸素投与・静脈路確保・薬剤投与・気管挿管介助・バイタルサインの測定・記録などが多く行われている。その他、家族看護・現場調整などである。
    <考察>救急処置の多くは、ICU内業務と一致している事が多い。しかし、救急現場は院内のように、人員、医療物品、場所が十分に確保されているわけではない。そのため、限られた人員、物品、場所でフライトクルー、救急隊と協力しながら、臨機応変に活動を行う必要がある。
     フライトナースは現場活動をスムーズに行なうために、日頃の看護から救急現場を意識し、予測、準備、即応力、判断力を磨き、時には機転を効かす能力を養う。また、事例検討やシミュレーションを重ね、情報の共有化を行い、患者の安全を確保する管理方法を考えていかなければならない。
     現場調整には、1)患者・家族、2)救急隊、3)フライトクルー、4)他病院に対するものがある。日頃から患者・家族看護、スタッフコミュニケーション、他病院・消防機関との連携で、確実な情報連絡や現場調整能力を携えていかなければならない。
     患者に起こりうる事態の予測をし、五感を使った観察力、患者を安全に搬送するための管理、現場調整、家族看護がフライトナースには求められる。
    <おわりに>フライトナースの役割は「患者管理」「家族看護」「協働」「調整」である。今後も、当院におけるフライトナースが救急現場に行く意義を考え、救急医療の質の向上を図りたい。
  • 上澤 弘美, 井川 洋子, 谷貝 玲子, 大槻 勝明, 笹沢 ひろみ, 森田 町子
    セッションID: 2E29
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>急性薬物中毒では誤薬や自殺企図など様々な原因があるが、その8割は自殺企図であると言われている。当院においても過去の調査から81.9%が自殺企図患者であった。そのため、コメディカルとの協力体制や精神科医療施設との連携を図ってきた。そこで今回、急性薬物中毒患者の動向を調査することで、看護介入のあり方や今後の課題について考察したので報告する。
    <研究目的>急性薬物中毒患者の特性と傾向を調査集計し、どのように変化しているのかを明らかにすることで、今後の看護の方向性と課題を見いだすことができる。
    <倫理的配慮>調査対象者の個人情報の保護に努める。
    <研究方法>対象:A群(過去の調査) 1988年6月から1999年12月までに入院した中毒患者(n=593)
    B群 1999年1月から2005年12月までに入院した中毒患者(n=356)
     データの収集:入院カルテから年齢、性別、原因物質、在室日数、自殺企図の有無を調査。
    <結果>表1に示すように自殺企図は増加傾向であるが有意差までは認められなかった。原因物質では医薬品に対し有意にB群で増加が認められており、家庭用品、自然毒では減少が認められた。
    <考察>当院では2002年より心療内科医師による外来診療が始まり、入院早期から精神科医療の協力を得やすくなった。しかし、自殺企図患者が減少していないことは患者を取り巻く環境や複雑な社会状況があり医療者では対応しきれない部分も大きいと考える。急性薬物中毒の8割強は自殺企図であり、医薬品の多量服用によるものが多いことが結果からも明らかになっており、この数字は岩崎1)らが報告した34%と比較しても極めて高かった。岩崎1)らが報告してからすでに10年を経過しており、この間に、(1)薬物の氾濫と多様な入手経路、(2)薬物の危険性に対する認識希薄化・容易な認識が進んだものと考える。看護師は救急の現場において短い期間でも信頼関係を構築し効果的なサポートを行うことが求められている。そのため患者や家族の立場になって傾聴し理解的態度で対応が必要不可欠である。さらに、患者を取り巻く危機を理解したコミュニケーションが必要であり、状況や今後の見通しを伝え、不安の緩和や精神的支援に努力している。今後は自殺企図患者への更なる社会資源を含めたサポート体制を考えていく必要がある。

    <参考文献>
    1)岩崎康孝、黒澤尚、山本保博、他:第三次救急施設に搬入される自殺未遂者の自殺企図前後の精神科治療の経過について.精神科治療学9:183-195,1994
  • 廣瀬 有紀, 岡田 恵理子, 野嶋 洋子, 山田 賢一, 鈴木 雅恵, 神谷 須磨子
    セッションID: 2E30
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院は平成14年5月に移転後、西三河南部医療圏の3次救急病院として、重篤な救急患者に高度な医療を総合的に提供できるよう活動を開始した。
     開設5年目となるが、現在までの患者数及び救急車台数の把握は行ってきた。しかし、3次救急の患者数の把握は行えていなかった。そこで、昼間救急を対象とし1次から3次の重症度別患者数の把握と3次救急の中からCPAに焦点を絞り症例数の把握を行った。
     それをもとに当院における3次救急としての役割を看護師の視点から考えたので報告する。
    <目的>3次救急としての役割を果たす使命があるため、病院として正確な3次救急患者数を把握しておく必要がある。その上で、3次救急病院としての役割を再認識する必要があると考えた。
    <方法>私たち救命センター専任看護師の勤務する昼間救急における1次から3次の重症度別患者数の把握と、3次救急の中からCPAに焦点を絞り症例数の把握を行った。更に、3次救急の受け入れ体制を検討した。
    <結果>移転直後平成13年度月平均来院者数2451人が平成16年度には3510人まで増加、救急車来院者数も平成13年度月平均413人から平成16年度には558人までに増加した。2005年4月から12月までの1次から3次の各割合は、1次が51%から66%、2次が31%から43%、3次が2%から8.5%であった。更に、CPA症例数は平成17年1月1日から12月31日までの1年間で当院に搬送されたCPA症例は113例であった。
    <考察>3次の患者数は、1割にも満たずCPAのみでも113例である。CPAのみを捉えると数値としての増加は、移転前と比較して大きく差はない。一般的に3次救急病院として求められることは、 重篤な救急患者を、常に必ず受け入れることができる診療体制をとること・ICU、CCUを備え、24時間体制で重篤な患者に対し高度な治療が可能なこと・医療従事者に対し、必要な研修を行うことなどがある。しかし、重症度別数値より1次2次救急が9割以上を占めている。西三河南部医療圏の地域性や近隣病院の受け入れ状況の影響もあると考えられる。地域から求められる病院の役割として、1次2次救急の役割を果たしつつ、1割にも満たないが3次救急に対応できる救命救急センターとして使命を果たすことが求められていると考える。
    <まとめ>3次救急としての役割を果たす使命があるため、病院として正確な3次救急患者数と症例を把握しておく必要がある。地域性を考慮しつつ、1次2次救急を受けながらも、3次救急病院として重篤な救急患者に対し初期対応が行える必要がある。今後は、救命救急センター常駐者だけでなく、応援スタッフの教育・指導を行っていく必要があると考える。
  • 工藤 文枝, 高橋 優子, 永瀬 絵美, 中村 真衣子, 池田 千穂, 佐藤 文子, 成田 雪美
    セッションID: 2E31
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉 当病棟は、腎臓内科、糖尿病代謝科眼科、皮膚科の混合病棟である。病棟内には透析設備のある病室(以下透析部屋とする)があり、そこで重症患者や移送困難な入院患者が週3回透析を受けている。歩行可能な患者は院内にある腎臓病センターで透析を行っている。当病棟ではH14年に災害マニュアルが作成されていたが、内容は火災中心であった。また看護体制の違いから、透析部屋の対応が盛り込まれておらず、震災が発生した場合、以前のマニュアルでは迅速に行動できないと考えた。そこで今回震災に着目しマニュアルを作成、それを基に学習会、デモンストレーションを実施、評価したので報告する。
    〈方法〉期間:H17年9月1日から11月30日対象:病棟看護師23名、看護助手2名
    〈方法〉
     1.ビデオ学習後、震災に対する意識調査
     (一部記述式回答)
     2.震災マニュアルの作成
     3.マニュアルの学習会、透析離脱方法のデモンストレーション、実施後のアンケート調査
    〈結果〉 震災に対する意識調査では、「震災時何が一番不安か」では、患者の搬送方法、どのように動いたらよいかわからないなどの意見が聞かれた。「震災時の透析対処方法をしっているか」では知らないが56%だった。「病棟独自のマニュアルは必要か」では全員が必要であるとの回答でマニュアルに基づいた避難訓練の実施を希望していた。その後、意識調査の結果を基にマニュアルの見直しを行い、震災発生時の個々の役割、行動を明確にするため看護師7名(Aチーム3名、Bチーム3名、透析係1名)、助手2名の日勤体制での組織図を作成した。また、これらがイメージ出来るよう組織図を基にした学習会と透析中の離脱方法のデモンストレーションを行った。学習会とデモンストレーションを行った後のアンケート結果では、学習会を行ったことで自分の役割や行動をイメージできたという意見が91%だった。「透析の緊急離脱方法について理解できたか」では全員が「はい」だった。また、意識調査の結果を基に、患者様に対する備えとして、8項目を挙げてマニュアルに取り入れた。
     マニュアルを基に学習会、デモンストレーションを行ったことは、個々の役割を具体的にイメージすることに繋がった。また、透析離脱のデモンストレーションを行うことで震災時の対応について知識の統一化が図れ、効率的に行動出来ると考える。更に、災害発生時迅速に対応するためには、定期的な避難訓練、災害に対するスタッフ、患者への教育が必要であるという結果に繋がった。
  • 手術適用変形性膝関節症の早期診断の為に
    長谷川 聡洋, 斎木 誠, 和田 智文, 高玉 敬洋, 木村 栄司, 中野 秀昭
    セッションID: 2F01
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     X線写真による,手術適用内側型OA膝の早期診断を目的に,従来の片脚立位撮影に,30,45,60°の屈曲撮影を加え,検討を行った.結果,全体で41.2%の膝にstageの上昇が見られ,特に立位伸展位でstage_III_であった膝では,76.9%に有意なstageの上昇が見られた.当院ではstage_IV_以上が手術適用であることから,立位伸展位でstage_III_であった膝に対し屈曲撮影を追加することは,手術適用の早期診断の上で有用であると考えられた.また,至適屈曲角度については,3つの角度間に有意差が無かった事,患者の苦痛,簡便性などから,30°屈曲位が望ましいと思われた.
  • 奥村 暁恵
    セッションID: 2F02
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 近年、乳がん罹患率及び死亡率は増加傾向にあり、早期発見・早期治療の重要性が叫ばれている。早期発見のためにはマンモグラフィ併用乳がん検診(以下、マンモグラフィ検診)が非常に有効であり、マスコミなどでも取り上げられる機会が増え、認知度が高まっている。実際に当院でも検診マンモグラフィの撮影件数は増加傾向を示し、ある程度の知識を持っている受診者も見受けられる。マンモグラフィ検診におけるマンモグラフィの最も重要な役割は異常の有無を確認する存在診断である。しかし、マンモグラフィの役割はそれだけではない。良好なポジショニングで標準撮影を行い、さらに適切な方法で追加撮影を行うことによって情報量を増やし、鑑別診断・再現性の確認を行うことが可能となり、治療に貢献し、QOLの向上に寄与することができる。そこで、今回はマンモグラフィ検診において、マンモグラフィで要精密検査となった症例に対して追加撮影法の必要性、さらに有効な撮影方法について検討する。
    <方法> 2005年、当院でのマンモグラフィ検診受診者は500名であった。このうち96名が要精密検査となったが、当院ではこれらの症例に対しては追加撮影を行わずに超音波検査を行い、さらに必要な場合はMRI検査を行っていた。2006年は要精密検査症例に対しても追加撮影を行うこととし、超音波検査、さらに必要な場合はMRI検査を行うこととする。ここで追加撮影法についても検討し、2005年と2006年の比較、さらに追加撮影を行ったことによってカテゴリー分類に変化が生じたか、鑑別診断・再現性の確認を行うことが出来るかどうかについて考える。
    <結果> 2005年のマンモグラフィ検診受診者500名のうち、カテゴリー1が384名(76.8%)、カテゴリー2が20名(4%)、カテゴリー3が95名(19%)、カテゴリー4が1名(0.2%)であった。また、カテゴリー3のうち、約半数の所見が局所的非対称性陰影(以下、FAD)であった。このうちカテゴリー3以上が要精密検査となる。当院乳腺外来を受診し、最終的にMRI検査を受けたのは12名であったが、すべての症例において異常なし、あるいは良性疾患であった。2006年については現在検討中であるが、再現性(特にFADについて)・鑑別診断は当然のことながら、視触診の結果も踏まえて追加撮影を行うことにより、超音波検査やMRI検査にも貢献し、さらに検査の精度を高めることができると考えられる。
  • 松田 盛功, 水谷 弘二, 中野 智高, 川合 信也
    セッションID: 2F03
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> 近年MRIの技術が進歩して心臓のMRI(MRCAG)が撮像できるようになってきた。
     今回、そのMRCAGにおいて撮像条件などの比較検討を評価したので報告します。
    <方法> MRCAG(HoleHeart 3D)撮像は、心臓の拡張期・収縮期に冠動脈が一時的に止まって見えるタイミングを利用して撮像する。またこの撮像は、呼吸同期(NavigatorEcho)も併用するため少し腹部をバンドなどで固定して呼吸の変動を抑制して撮像する。今回そのタイミング(拡張期・収縮期)と腹部の呼吸抑制した時としない時それぞれ撮像を行いその画像をSoapBubble及びAW(AdvantageWindows)にて視覚評価を行った。
    ・使用装置及び使用COIL
          PILLIPS社 Intera Nova (1.5T)
          SENCE Cardiac Coil
    ・撮像条件
          TR 4.2msec TE 2.3msec FA 90°
          Matrix 256×512 
          Slice厚 0.75mm Gap 0mm 枚数 180 
          FOV 280mm  RFOV 85% 
          呼吸フリー 撮像時間 5min_から_15min 
    <結果> まず腹部を抑制しない時の拡張期と収縮期の画像を比べると拡張期ほうが冠動脈がよりきれいに描出されている。これは、拡張期のほうが血液が送り出される為とおもわれる。次に、腹部を抑制した時の拡張期と収縮期の画像を比べるとまた拡張期のほうが冠動脈がよりきれいに描出されている。これにより、拡張期のほうがきれいに描出されるといえる。また、腹部を抑制した時と抑制しない時の拡張期の画像を比較すると抑制した時のほうが呼吸の変動が少ないことによりよりきれいに描出された。
    <考察> 拡張期と収縮期を比較すると拡張期のほうがきれいに描出された。また、腹部を抑制したほうが呼吸の変動が少ない為によりきれいに描出されたこれらのことより、MRCAGを撮像するにあたっての撮像条件は腹部を抑制しなおしかつ拡張期で撮像するのが望ましいと思われる。
  • 伊藤 良剛, 今尾 仁, 榊原 克冶, 遠藤 慎士, 光岡 孝
    セッションID: 2F04
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉従来、MRIで皮下腫瘤などの検査の際に病変部位の目印として、皮膚面にアダラートをマーカーとして貼り付けていた。ところが検査後のはがし忘れによる誤飲の可能性や、薬剤の管理面などで問題があった。そこで我々は、新たな皮膚マーカーとして、安価で容易に入手が可能な市販の口中清涼剤を使用し、アダラートや他の皮膚マーカーを比較して、その有用性を確認したので報告する。
    〈使用機器・材料〉MRI装置:GE社製 Signa Horizon LX 1.5T皮膚マーカー(合計4種類)
     1.口中清涼剤(小林製薬:商品名;ブレスケア)
     2.アダラート(バイエル薬品)
     3.硫酸銅水溶液 10mmol/l、
     4.ベビーオイル(ピジョン社製)、
    人体模擬ファントム:皮付き豚ばら肉
    〈方法〉
     実験1:各パルスシーケンス(FSE法のT1強調、T2強調、T1強調脂肪抑制画像)における各皮膚マーカーの信号強度を測定し、比較検討した。
     実験2:皮付き豚ばら肉を用いた人体模擬ファントム上に各皮膚マーカーを並べ、撮像した。そして皮膚マーカーからのアーチファクトの有無を調べた。
    〈結果〉
     実験1:測定結果を表1に示す。T1強調画像では、すべての皮膚マーカーは高信号を呈した。T2強調画像では口中清涼剤は高信号であったが、アダラートが他の皮膚マーカーより信号が低かった。脂肪抑制では口中清涼剤の信号が低下し、ベビーオイルは無信号となった。
     実験2:口中清涼剤を含め、全ての皮膚マーカーからのアーチファクトは観察されなかった。しかし実験1と比較して、皮膚マーカーのコントラストが異なった。この原因は、チューニング(シミング)時の中心周波数の違いによる影響であった。(図1)
    〈まとめ〉口中清涼剤は、皮膚マーカーとして十分な信号強度を呈した。その理由は多くの脂質と金属化合物(アルミニウムレーキ)が含まれているためと考えられた。安全性とコストの面では、口中清涼剤は他の皮膚マーカーより優れていた。これらの点から口中清涼剤はMRI用皮膚マーカーとして有用と考えられた。しかしサイズがやや小さいため(小豆大)、その使用の際には工夫が必要であった。
  • 楳田 雄, 吉村 明伸, 松岡 理恵, 今井 美穂, 小野江 雅之, 末松 太, 梅村 喜昭, 藤野 明俊, 佐多 和仁, 田中 孜
    セッションID: 2F05
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>椎間板ヘルニアのMRI検査においては、硬膜外脂肪の圧排や神経根の圧排像など数多くの注目すべき画像所見が存在しており、これらの所見が確定診断の一助となっている。中でも外側型椎間板ヘルニアによる神経根の圧排に、T1強調double oblique画像が有用といわれている。
     当院のMRI検査においては、外側型椎間板ヘルニアを疑う場合に通常の水平断・矢状断像のみならず、直接神経根をスライスするT1強調double oblique画像を追加撮像している。この撮影を追加することにより、神経根の圧排程度を良好に描出することができ診断、治療法の決定に有用であったので、症例とともにその撮影法をここに報告する。
    <使用装置>PHILIPS社製 Intera Achieva 1.5T Nova
    <撮像プロトコール>TSE法 T1強調画像で、TSE factor/3・TR/500ms・TE/11ms・NSA/2・Matrix scan/336・reconstruction 512・スライス厚/4mm ・撮像時間1分20秒で両側撮像している。
    <撮像方法>目的椎間板レベル水平断像にて神経根に垂直面に設定し、冠状断像にて神経根に垂直面に設定し撮像する。
    <まとめ>T1強調double oblique撮影のおける神経根像は、円状に描出され、周囲は脂肪に包まれている。しかし外側型椎間板ヘルニアにおける神経根像はヘルニアの圧排を受け形状が変形して描出される。なお当院では外側型椎間板ヘルニアによる神経根の圧排を複数スライスに認めた時、その神経根の障害と診断している。
     T1強調画像のdouble oblique画像は ミエログラフィーと異なり造影剤を使用することなく、非侵襲的で簡便な検査方法であり外側型椎間板ヘルニアの診断において特に有用な撮影法であると考えられた。
  • -東芝画論コンテスト受賞画像の紹介-
    海津 元樹, 平松 明樹, 石井 真, 小宮山 レイコ, 安西 里奈, 稲葉 光昭, 島倉 誠, 宮崎 勝吉, 佐々木 隆昭, 服部 晃
    セッションID: 2F06
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> 当院では2001年9月よりCT MRI画像の立体3D画像を作成出来るワークステーションコンピューターZIO-M900(アミン_(株)_)が導入となり、臨床応用が始まった。当初は経験者が極端に少なく、試行錯誤であったが、臨床側の強い要望と画像診断科医の適切なアドバイスにより、画像作成技術の向上が図られた。また、全国各地の施設から応募され、真に臨床的に有用な撮影技術・画像作成技術を評価する目的で本邦において唯一行われている医療画像コンテスト「東芝画論」に当時から毎年応募し、2002年からCTは連続4回、MRIは2回受賞している。今回はこの6症例の入賞画像から特に臨床的に有用であったと思われる3画像の撮影および画像作成技術を提示する。
    <画像表示>
    (症例1)図1 肺動脈血栓症 症例は30歳代男性。循環器内科から肺動脈血栓の疑いでCT検査施行。肺動脈の血管の透亮化と血管内に存在する血栓を充実性に表現する手法を独自に開発し、3D画像作成を行ったところ、本疾患の病態把握が容易となり、治療前後の比較にも有用であった。
    (症例2)図2 膵癒合不全 症例は50歳代男性。膵管造影で体部での途絶を認め、消化器内科よりMRI(MRCP)精査を依頼された。主膵管と副膵管の非癒合が証明され、技術的に困難な内視鏡的副乳頭造影をせずに確定診断が可能となった。
    (症例3)図3 晩期残存乳歯・未萌出永久歯および顎骨内嚢胞 症例は小児女性。パノラマX線写真で第二小臼歯埋没および顎骨嚢胞性病変を認め、手術依頼目的で当院歯科口腔外科を紹介され、CT撮影を依頼された。3D画像を作成したところ病巣と下顎管の位置関係が立体的に把握でき、術前情報として有用であった。
    <結語> CT MRIの撮影画像データを応用した3D画像は、我々画像検査・診断にかかわる医療従事者が想像する以上に、臨床各科からの期待が大きく、疾患の形態学的な把握に重要な役割を果たす。しかし、臨床側から要望する情報と、撮影データ、3D作成の表示方法がうまく一致しないと折角の努力が半減することもしばしば経験する。また、画像作成には高度の病態知識や相当な時間と労力が必要となり、臨床側の要望に十分応えられていない施設が多いのもまた事実である。当院では、臨床医が必要とする情報のポイントを技師が検査前に把握し、撮影時にその描出が明確に出来るデータ収集(撮影方法)を心掛け、画像作成時には依頼医師および画像診断医の適切なアドバイスを元に真の病態をわかりやすく表現した立体画像の提供を行っている。このような方法で画像を作成すると、依頼医はもちろん、患者本人への説明にもそのまま利用でき、患者自身の病態の把握や理解にも役立つ。今後もさらなる技術向上を維持し、作成者の自己満足のみの画像ではなく、真に依頼医の要望を満たした立体画像作成を心掛けたいと考えている。
  • 山田 泰司, 菅原 司, 岡崎 真悟, 中村 俊一, 永井 信, 近藤 規央, 藤永 明
    セッションID: 2F07
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>昨今、消化管X線撮影の領域においてもデジタル化(Digital Radiography)の波は押し寄せており、イメージインテンシファイア(I.I.)からの情報をテレビカメラで映像化していた部分をデジタル変換する方式や更に最近では平面検出器(Flat Panel Detector)を用いてデジタル変換する方式を搭載した装置の導入が増えつつある。
     消化管X線画像はX線自体の性質の故、肺野や腸管のガスといった透過しやすい部分に重なると黒くつぶれ、椎体と重複、体厚の影響といった透過しづらい部分では白くつぶれる傾向があり、このような状況下で小さな病変をモニターやフィルム上で表現することは従来のアナログ方式でも難しく、最近までデジタル化が入り込めなかった大きな壁の一つであった。しかしデジタル変換装置やコンピューターの演算能力等の飛躍的な向上により上記の弱点がかなり克服され、その利点を生かせば、従来のアナログの画質と同等もしくはそれを凌ぐという機器の報告も散見されてきた。
     DRの利点の一つとして、現像を待たなくても撮影とほぼ同時に画像を観察できたり、画像処理を施すことによりコントラスト、濃度等を簡単に調整できることがあげられる。
     今回、当院で導入したDR装置の新しい画像処理技術、Digital Compensation Filter(以下DCF)は、入力光が多くて画像が部分的に黒つぶれしている場所のみを自動で検出し、その場所のみに画像処理を施し、画像全体のコントラストを変えることなく、高濃度部の表現力を向上させることが可能となった。さらに最新の技術では、このDCFを透視画像にリアルタイムで施すことが可能となったため、従来のような透視中のハレーションが激減し、透視診断に大きく寄与しているといわれている。
     消化管X線撮影における透視観察の重要性は昔から叫ばれているところである。とくに我々技師が携わる胃・大腸をはじめとするX線検査では、透視の段階で病変の有無を判断することを至上としているので、透視の画質は当然被曝の影響を考えながらではあるが、向上させたいところである。
     そこで今回我々は、より多くの病変を透視下で発見、確認できるような透視画像の向上を目的に、透視DCFの評価を基礎的、臨床的に行い今後の検討を行ったので報告する。
    <方法>検討方法としては、低コントラスト分解能、高分解能測定用のファントムの描出能について、アクリルファントムの厚さ、ハレーションの程度を可変させた状態で透視DCF(5チャンネル)の効果を目視で評価した。また臨床評価においては基礎評価を参考に、どうような時と場合において透視DCFが有用なのかを検証した。
    <使用機器>画像処理装置:東芝社製ADR-1000A(1024×1024マトリクスCCDカメラ搭載)。 透視撮影台:DBX-6000A。透視DCFユニット:FDCF-1000A。分解能ファントム:PTW-FREIBURG社製X-Check FLU。
    <結果>当院では、すでに透視及び撮影DCFについては臨床上有効と判断して現在使用中ですが、更に詳細につきましては当日報告させていただきます。
  • 田口 雅士, 芝田 弘, 寺島 清, 瀧澤 勉, 三澤 卓夫
    セッションID: 2F08
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>虚血性心疾患の診断法の一つとして201Tl(以下,Tl)負荷心筋シンチグラフィーが広く用いられている.しかしTlは, 比較的半減期が長く被曝の観点から大量投与は難しく,また,体内での減弱や散乱の影響を受けやすい核種であるため,特に男性では右冠動脈支配領域である下後壁において虚血の判定に苦慮すると言われている。
     そこでTl負荷シンチグラフィーの下後壁に対する有病正診率向上のため男性平均画像を作成し,正常画像・正常値を把握し,正常画像との対比から偽陽性例の心筋再構成画像に影響を与えた因子について検討を行った。
    <対象>偽陽性群は2002年5月から2004年12月に行われたTl負荷心筋シンチグラフィー746件中,下後壁の虚血が疑われ,冠動脈造影が施行されたものの冠動脈造影で異常なしと確定診断された男性症例8例,平均年齢は76.3±9.0歳であった.また,負荷心電図・シンチグラフィー・心臓超音波検査で正常と判定された20例,平均年齢67.6±10.5歳を男性正常群として比較を行った。
    <方法> Tl負荷心筋シンチグラフィーは負荷終了後5から10分後より負荷像,3時間後に安静像の撮像を行った.画像収集には3検出器型ガンマカメラPRISM IRIXを用い,360度楕円収集を行い,得られた投影元画像から心筋再構成画像を作成した.そして,体内での減弱や散乱の影響が少ない前壁を基準に下後壁との集積比を求めた.また,全体の洗い出し率,下後壁の洗い出し率を求めた.さらに,偽陽性例の心筋外集積の有無について投影元画像から評価した。
    <結果>男性正常群平均画像の下後壁/前壁集積比は負荷時0.85, 安静時0.86と下後壁の集積が有意に低下していた.洗い出し率は全体では39.0%,下後壁37.4%であった。
     偽陽性群と男性正常群の比較では, 下後壁/前壁集積比,全体の洗い出し率,下後壁の洗い出し率のいずれも偽陽性群が有意に低値を示した。
     負荷時,肝臓に強い集積が見られたのは偽陽性症例8例中5例でありいずれも洗い出し率が30%以下に低下していた.また,胃・腸管への強い集積が見られたのは3例であり,いずれも心筋集積が不均一だった。
    <考察>下後壁/前壁集積比は正常群に比べ偽陽性群で有意に低値を示したが,横隔膜の挙上の度合いには個人差があり,特に偽陽性群では横隔膜の挙上による減弱の影響を強く受けたと考えられた.また,洗い出し率30%以下であった偽陽性症例5例はいずれも負荷時に肝臓への集積が強く認められており,一時的に肝臓に取り込まれたTlがその後徐々に心筋に再分布したため洗い出し率が低下したのではないかと考えられた.これらは心筋の再構成画像のみでは評価が困難であり,横隔膜挙上や心筋外集積を把握するため投影元画像の観察が必要と考えられた。
     負荷時に胃・腸管の高集積が認められた3例では心筋集積が非常に不均一であり胃・腸管の高集積がストリークアーチファクトを発生させたと考えられた.ストリークアーチファクトを画像収集後の処理過程で軽減させることは困難であり,発生予防のため可能な限り絶食下で検査を行い胃や腸管,肝臓への集積を軽減させる必要があると考えられた。
    <結語>Tl心筋シンチグラフィーの精度向上には投影元画像を観察し,横隔膜挙上の程度,心筋外集積を把握すること.ストリークアーチファクト軽減のため検査前の絶食が必要と考えられた.
  • 稲葉 光昭, 石井 真, 八藤後 拓哉, 佐々木 隆昭, 海津 元樹, 鈴木 啓介, 種田 宏司, 服部 晃
    セッションID: 2F09
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>近年各施設でMSCTの導入が相次ぎ、諸学会で有用性に関する講演を数多く耳にする。また医療技術の目覚しい進化に伴いここ数年に、4列から64列といった多列化が進み、現在は治験段階ではあるが128列の市場投入も近い。今回、核医学設備のない当院において心臓冠動脈検査が安定して行える64列MSCTが導入され、半年を経過したので、当院におけるMSCTの臨床的診断の位置、特に循環器領域において検討した。
    <使用装置・諸条件>
     使用装置:東芝Aquilion 64列System
           根元杏林堂デュアルショット
     WarkStation:アミンZioStation
     造影剤:350_から_370mgI/ml非イオン性製剤    60ml→4.0ml/sec     (Flash:生食 30ml)
     撮影条件:120kV 400mA 0.4sec/rot 0.5mm×64 HP=11.2
     再構成法:TCOT segment
    <方法>心臓CTと心臓血管撮影の結果を、視覚的および計測値をそれぞれ抽出しretrospectiveに比較検討する。ま心臓-CTにより得られた4D-Volume Dataを用いて、専用解析ソフトを使用し心機能評価を行いそのデータと心臓超音波とを比較する。
    <結果>心臓CTおよび心臓血管撮影の画像より算出した結果から導いた考察を示す。冠動脈に視点をおいた時の視覚的評価(Volume Renderingと透視画像)においては、幾分CTが動的および生体的Artifactが抽出され、数例偽狭窄を形成していた。さらにCurved Planer reformationによる血管断面の形状と狭窄率の比較では主観的に相関が得られていると思われるが、時間分解能と空間分解能の面から見ると冠動脈造影に劣ることはいうまでもない。また算出したNPV・PPVでは、上記の原因を反映しNPVが低い数値を示していた。心臓超音波との比較では、EF・SV・壁厚・LVVなどの各測定値の比較では、近似値を示していた。
    <考察>当施設においても、堂領らの報告や他の論文により報告されたものと同程度の結果が得られたため、当院での循環器領域のMSCTの有用性が立証された。また心臓超音波との比較においては、超音波よりCTは撮影技術者の技量に左右されにくく、検査の再現性に優れていると考えられた。今後CTの利便性と4D-Volume Dataを最大限活用するために、心室中隔欠損症などの先天性心疾患や心筋症・心臓弁膜症などへ適応すべく撮影技術の検討を進めている。さらに最近のトピックスとして上がっている心筋Viabilityの評価についても遅延造影MRIと遅延造影CTと相関が見られると示唆する報告があり、以後の報告に期待がもたれる。しかし、CTでは造影剤の副作用や注入時の血管漏出の危険性が秘めていることを周知し、緊急時の対応策や環境設備・STAFFの教育などを念頭に置かなければならない。さらには撮影後の画像処理に費やす時間と経費も同時に考慮しなければならないと考える。以上より当院では現在既存する設備や装置を考慮し、さらに離島診療を担う基幹病院として虚血性心疾患および心臓バイパス術後の経過観察における第一選択としてMultiSlice-CTによる心臓CTを用いることを目標としている。
  • 電子カルテ、PACSとの連携を踏まえて
    高田 章, 岡江 俊治, 福嶋 洋道, 大嶽 一夫, 市川 敦子
    セッションID: 2F10
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     2005年4月より18F-FDG(フルデオキシグルコース)を用いたPET検査が保険適用となったが、施設内でサイクロトロンを用いて薬剤を合成する必要があった。2005年8月より18F-FDGの販売が開始され、合成工場の近隣の施設であれば配送された薬剤を用いて検査を行うことが可能となった。
     当院ではシーメンス社のPET-CT装置Biograph Sensation 16を導入し、2006年4月より配送された薬剤を用いて運用を開始している。また、2002年より電子カルテが導入されており、検査のオーダリングから結果の表示までが電子カルテ上で行えるようになっている。また、画像はフィルムレスで、PACSによる運用となっている。PET-CT検査の保険適用は15疾患と限定されており、適用から外れたオーダーが入らないようなシステムの構築が必要であった。体重が重いほど画質が劣化しやすいため、その影響を最小限にとどめるよう体重に応じて検査の順番を決められるようにした。血糖値の影響を受けやすいため、食事制限や糖尿病薬剤の投与方法についての説明書を電子カルテから印刷できるようにした。
     1症例の撮像時間はおよそ30分であるが、症例によっては遅延像を追加する必要がある。18F-FDGの配送は1日に3回あり、そのスケジュールに合わせて無駄なく遅延像が撮像できるように検査のスケジュールを組む必要が合った。遅延像の撮像が必要か否かは1回目の撮像の終了後、30分の回復時間の間に放射線科医が決定している。即座に判定できるように放射線科医がPET-CT室に常駐するようにした。
     作成される画像は400から500枚と膨大であり、電子カルテのビューアで全てを観察することは容易では無い。また、画像を作成する過程でDICOMのタグが消失してしまい、位置情報が分からなくなってしまうため、PET画像、CT画像、PETとCTの融合画像は全く同じスライス断面で作成し、同一断面を表示しやすくする工夫が必要であった。
     読影に関しては、全く新しい検査であり、重要な位置づけの検査のため、放射線科医および放射線技師が毎日カンファレンスを行って診断している。
     検査開始前には院内向けに説明会を2回行い、運用直前の医局会でも再度説明を行っているが、当初の検査の予約は少なかった。科ごと、医師ごとにPET-CT検査の認識が異なっており、十分な宣伝が足りなかったためと考えられた。
     これらの電子カルテやPACSを通したPET-CT検査の運用の問題点やその解決方法について概説する。
  • 患者様に快適な空間でより良いPET-CT検査を提供するために
    大嶽 一夫, 市川 敦子, 牧野 美浩, 宍戸 健, 桐村 美里, 後藤 健太
    セッションID: 2F11
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
     今年度、4月12日より、PET?CTの稼動を開始し、約1ヶ月が経ちました。未だ無我夢中で、検査に取り組んでいるという段階で、抄録にPET?CTについてを語れるような状態ではございません。
     しかし、?患者様に快適な空間でより良いPET-CT検査を提供するために?を目標に掲げ、スタッフ全員一丸となって一生懸命努力を重ねております。
     10月の農村医学会には、皆さんが聞いてよかったとおもわれるようなPET?CTの使用経験をお話したいと思っております。
     PET?CT稼動にあたり、PETの特殊性をよく考え、当病院独自で構築した方法(体重別オーダーリング、タイムスケジュール、待機室&回復室の充実、患者様説明DVDなど)についてもお話したいと思っております。
  • 石川 晃則, 澤田 道人, 長砂 達明
    セッションID: 2F12
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    モニタ診断における検像システムの構築
    安城更生病院・放射線技術科
    ○石川晃則 澤田道人 長砂達明
    <目的>
    モニタ診断において重要なことは,医師が診断する画像と技師が配信する画像を可能なかぎり一致させることである。従来は,高精細なビュアーで確認することなく画像の配信を行い,画像の品質を保証するという点で十分満足のいくシステムではなかった。そこで,われわれは新築移転を機に,配信する画像の品質を保証するためのシステムを構築したので報告する。
    <方法>
     1.配信画像と診断画像を一致させるため,PACSで使用する高精細のビュアー(BARCO社製)をKONICA REGIUS-IMにセットアップした。
     2.REGIUS-IM上で,サムネイル画像をクリックすることで高精細ビュアーに画像を表示し,同時に撮影オーダー情報を表示するようにした。
     3.撮影オーダー情報を確認することで,最適な画像処理を高精細ビュアーで行い,画質を保証して画像を配信するようにした。
    <結果>
     1.IQASによって画質を保証した画像の配信が可能になった。
     2.配信画像とほぼ同一の画像を診療科で読影することが出来るようになった.
    <考察>
    今後PACS運用において,画質を保証した画像の配信を行うためのシステムが重要になると考える.
  • 田實 直也, 片山 訓道, 久保田 敏行, 長砂 達明, 川野 衣代, 石川 一博
    セッションID: 2F13
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院に電子カルテシステムが導入されて早や4年が経過した。導入当初は職員の大半がコンピューター未経験であったが、最近では紙カルテを知らない職員が、紙カルテ時代を知っている職員の数を越す勢いである。
    今回は、導入した電子カルテシステムの4年間の大まかな経緯と発生した諸問題、そして解決方法を報告するとともに、今後の展開を検証する。(解決方法等については、紙面の関係上当日スライドにて報告する。)
    <初期のトラブル>導入初期に問題となった点において、特筆すべきものを選択して報告する。
    ・辞書変換の不具合
     導入当初、漢字辞書変換が思い通りに出来なく、診療遅延の原因となった。
    ・レスポンス
     カルテを開く時間が予想以上にかかり、利用者にストレスを与える要因となった。
    ・故障端末の対応方法
     故障端末をすばやく修理し、現場に戻す必要があった。
    ・基幹ネットワークの障害
     基幹ネットワークで原因不明の故障が相次いだ。
    <アンケート評価>導入したシステムに対し、評価の意味を兼ねてアンケート調査を行った。実施時期は導入後1年を経過した2003年に実施した。概ね高評価を得たが、画一的なシステム構成による不満も多少見受けられた。
    <新たな問題点>4年を経過すると医療情勢にも変化があり、現状のシステムでは対応できないことも表れる。日進月歩のIT分野では5、6年が機器更新のサイクルであり、現実的にも老朽化や領域不足といった問題が表れている。今回は当院における現状の問題点の一部を簡潔に報告する。
    ・化学療法におけるチェック機能の要望
    医療安全の観点から、化学療法においてはレジメンとして管理し、上限量や休薬期間チェックなどをシステム的に行う必要性が表れている。
    ・DPCの対応
    急性期病院の宿命として、DPCへ対応する必要が迫られている。
    ・レセ電算の対応
    電子カルテ構築時には、時期尚早として見送られたが、普及率が高まっている現在では、早急に対応すべき項目である。
    ・容量不足の対応(イメージ領域)
    医療情勢の変化により、同意書を必要とする機会が近年激増した。また、稼動後にスキャナ読込みの画質保持のため、解像度を上げた。これらにより、イメージ領域が想定の6年より早く枯渇する恐れが表れた。
    <今後の展開・方向性>上記問題を解決する方法としては、ハード増強とソフトのバージョンアップが考えられる。しかしながら、単に増強やアップを行うのではなく、今後は医療機器との接続による生体情報の自動書き込み(当院では一部実施済み)を構築したり、e-文書法に対応できるような画質を保持できるイメージ領域の確保などを検討することが必要と考える。これらにあわせ、以前から言われているレスポンス、使い勝手、安全面を考慮したシステム構築が今後の課題となり、我々が目指すべき医療情報システムといえるであろう。(当院は平成20年バージョンアップ予定)
  • 片山 訓道, 加藤 有一, 川野 衣代, 角谷 礼子, 畠山 まき子
    セッションID: 2F14
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院は平成14年5月の新築移転を機に電子カルテシステムを導入して4年が経過した。
     この間、レスポンスアップ、機能修正、マスタ調整などにより順調に稼働してきた。
     今回、新生児センター(以下NICU)を中心とする重症患者に対する機能追加を図ったのでその概要に関して報告する。
    <NICU業務の問題点>NICUでは、移転以後出産数の増加、未熟児の搬送増加により、当初予定されたベッド数をはるかに上回る数の新生児を抱え、医師が短時間に多くの情報を収集できるような情報用紙を看護師で作成し診療支援を行ってきた。しかし、これは看護業務を圧迫する原因の一因となり、現場で働くスタッフからはシステムの再構築を望む声が多く、平成16年12月よりシステム変更に関する検討を始めた。
    <システムに関する課題>当初、バイタルなどの情報は電子カルテとME機器が連携されていなかったため、手入力で行っており、入力が数時間遅れになることがしばしばあった。また、新生児フローシートには多くの情報がありすぎて把握しづらいという問題も指摘された。これらの問題を解決し、業務の効率化と安全面、さらに生体モニタの情報収集等、診療情報の充実も視野に入れたシステムの見直しの方向性を検討会で確認した。
     具体的な手段として、生体モニタメーカなどが提供する部門システムを導入する案と、電子カルテを改造して機能充実させる案が出されたが、すでに電子カルテが安定稼働しており大きく運用変更しない方がよいとの判断と、情報を一元的に扱えるメリットを優先した結果電子カルテを改造して機能追加する方針が打ち出された。
    <機能追加要望内容>医師、看護師の業務を洗い出し、システム化する点を以下のようにまとめた。
    1.医師回診用テンプレートに情報を自動収集
    2.フローシートのレスポンスアップと生体モニタ情報の自動記録
    3.患者の状態を把握できるトレンド情報(24時間のトレンド変動)を表示
    4.成長曲線の自動作成
    5.輸液のカロリー計算機能、摂取成分量が把握できる機能
    6.生体モニタとWeb連携し、リアルタイムに生体情報を参照できる機能
    7.カンファレンス用情報の収集機能
    <結語>院内どこにいても、患者状況の把握ができ、カルテの判読が容易であることが電子カルテの最大のメリットである。今回の機能追加によりICU、CCUを含めた重症病棟の生体モニタ表示が可能となった。また、増え続ける臨床情報を整理して判読できるようにフローシート機能を全面的に見直し、高速化に加えユーザー毎に項目の表示・非表示、表示順などの登録を可能する仕様にした。さらに安全性への配慮という点ではNICU注射機能などの専用機能を追加した。
     電子カルテは、安全に医療を行うためのツールとして一層完成度を高め、急性期医療においても紙カルテで成し得なかった様々な機能を備えた不可欠なツールになりつつある。
     今回の発表ではこれらのシステム改造に対する効果と今後の課題について報告する。
  • 住田 知隆, 塚原 裕志, 速水 亘, 渥美 諭, 水谷 弘二
    セッションID: 2F15
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 当院では近い将来の電子カルテと人手、時間、コストの効率化をはかるため、平成16年6月より放射線技術科で発生する画像をデジタルデータとして保管管理するシステム(PACS)を導入した。
     それに伴い放射線情報システム(RIS)と病院情報システム(HIS)とPACSのシステム構築を実現した。
    <目的> 当院では、病院情報システム(HIS)からのオーダは放射線部門においては放射線情報システム(RIS)によって管理され、各モダリティヘ撮影に必要な情報が送信され、撮影後その実施情報を放射線情報システム(RIS)へ返すシステムとなっている。放射線情報システム(RIS)で患者情報の選択を行う場合に何らかのインシデントにつながることが少なくない。そこで今回の放射線情報システム(RIS)の導入に伴い、オーダ内容および患者誤認防止のためにバーコードを利用することにしたので報告する。
    <概要:方法> 放射線受付時にIDの入力をして受付をするが入力の誤りで誤認する場合などが生じる。そこで放射線受付時にはリストバンド(入院患者用),患者IDカード(磁気カード),ベッドネームなどにプリントされている、バーコードによるIDの読み込みを行い、受付処理を行っている。撮影時には検査票のバーコードを読み込みオーダの照合や患者確認を行い、CR装置と患者情報のモダリティ連携といったフローで運用を行う。マウスによる選択を極力最小限に抑えるようにする方法である。
    <結果> 撮影時の撮影内容や患者取り違いのインシインシデントを減少することができた。
    <考察> IDをバーコード認証することにより、これまで人が介在することにより発生していた撮影時のID入力の誤りやマウスによる選択のケヤレスミスなど、人為的操作ミスを防ぐとともに、入力作業の軽減で、より患者に集中して検査することができるようになり、患者サービスの観点から見ても大きな成果があったものと考えられる。
  • 望月 剛, 窪田 薫, 室 美香, 石川 一博
    セッションID: 2F16
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
    当院では平成13年から「診療録等開示実施要綱」を策定し、診療情報の提供を行ってきた。これは、患者と医療従事者が情報を共有することで、信頼関係を深め、質の高い医療の実践を目指すものである。そのためには、患者や家族にも理解できるような、診療録の作成が不可欠と考えられる。
    今回、増加している診療録開示の傾向と診療録の記載について診療記録を管理する立場の視点から報告する。
    <当院における近年の開示件数の推移と傾向>
     診療情報開示件数
       H13年度(11月から)・・・1件
      H14年度・・・9件 H15年度・・・10件
      H16年度・・・13件 H17年度・・・25件
     平成13年11月から診療情報の提供を開始してから平成16年まで大きな変化はなかったが、平成17年度には倍に件数が増えている。従来の開示の傾向としては医療事故や医療過誤に関わる開示請求が大半であった。しかし、最近の動向としては、医療事故や医療過誤とはまったく無関係な患者から自分の診療内容や経過について知りたいということで開示を求めるケースが増加しつつある。
    <診療録の位置づけ>
    診療録の記載内容は、個々の医療従事者の裁量で記載されているのが現状であるが、患者の権利主張が強くなっている中では「診療録は、医師・医療従事者自身のメモではなく、患者の記録であり共有情報である公的文書」という認識を強く持つ必要がある。
    <記載のあり方>
    診療録開示が増加する中、開示のために記載を慎重にするのではなく、日常的に行なう記載が開示に耐えうる内容である事が求められる。そのために、医療従事者は常に患者本人が診療録を見た時にどのような印象をもつかを念頭に置きながら記載をするべきである。
    診療録への記載は、次の人(勤務者・世代)に必要な情報を引き継ぐことも目的にあり、様々な職種が関わったチーム医療の全てが凝縮されたわかりやすく正確な内容でなければならない。
    <診療情報管理士としての開示への関わり方>
    従来、診療情報管理士の業務は物の管理という面が強かったが、電子カルテとなった現在では診療情報の管理・活用という部分が重要になってきている。その1つとして診療録の記載について内容監査を行なう事によって精度を管理し保証することがあげられる。さらに診療録開示においては院内における様式・書式の作成や、開示の諸手続き・運用方法の構築などにも積極的に携わっていく必要がある。一般企業と異なり,病院はセクショナリズムが根強く存在することから,診療録開示をきっかけとして記載の組織的な考え方を医療従事者全体が共有できるように情報発信し方向付けをしていく役割も担わなければならない。
    また最近では診療録開示を紙媒体ではなく、電子媒体で提供したり、患者家族からの開示請求に応じたりなど多様化していく要求に迅速な対応を行なう必要もある。
    <まとめ>
    今、診療録開示が一般的になりつつある中で、安城更生病院の診療録は、日々の医療行為が正確に記載され、かつ日常の診療に役立つものであり、さらに情報共有や情報開示にも対応できる記載内容を目指している。
  • 鈴木 舞, 金 ひとみ, 松山 ふみ子, 熊谷 洋子, 高橋 真奈美, 佐藤 住恵, 佐藤 敏光, 吉田 世津子, 三浦 鋭子
    セッションID: 2F17
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉
     当病棟では、これまで急性心筋梗塞リハビリテーションクリニカルパス(以下、パスとする)は4週間パスを使用していた。急性心筋梗塞を発症する患者は壮年期に多く、入院により仕事を休む、家庭を留守にするということで精神的ストレスを抱えている。そこで、より短い3週間パスが検討された。しかし、心臓リハビリテーション(以下、心リハとする)は従来、指導士の資格をもつ専任看護師に一任しており、休日の心リハは実施されていなかった。今回、3週間パスの導入にあたり、休日の心リハを病棟看護師が行うことで、入院期間短縮を図った。しかし、病棟看護師からのアンケート調査の結果、休日の心リハ実施に対し、全員が不安だと答えた。そこで、効果的かつ安全に休日の心リハを実施できるよう取り組んだので報告する。
    〈方法〉
     1.期間:平成17年5月から12月
     2.対象:病棟看護師21名
     3.方法
      1)心リハのマニュアル作成
      2)専任看護師と病棟看護師間の申し送り書の作成
      3)専任看護師による学習会実施
      4)平成17年9月から3週間パスの使用開始
        休日の心リハ開始(患者10名に実施)
    〈結果〉
     休日に心リハを行うことに対し、病棟看護師全員が不安だと答えた。そこで、マニュアルを作成した。内容は、心リハの具体的手順や危険な不整脈、心電図変化等とした。次に、病棟看護師と専任看護師での申し送り書を作成した。専任看護師から病棟看護師への申し送り書は、依頼内容、冠動脈インターベーション(以下、PCIとする)の施行部位、残存狭窄部位、左室駆出率を記載し、病棟看護師から専任看護師へは、心リハ中のバイタルサイン、症状、依頼内容を記載した。どちらにも、不整脈出現の有無を載せ、ST変化を誘導毎に記入できる表形式とした。そして、注意事項を含め、これらについて、専任看護師による学習会を実施した。学習会後、見学・実施し、未経験者に対しては、伝達指導する体制とした。さらに情報が共有できるよう、心リハ実施前に不整脈発生の危険性やPCI、心エコーの所見及び合併症の有無について、カンファレンスを施行し、医師の許可のもと10症例に3週間パスを使用し、休日の心リハを実施した。これらの取り組みの結果、休日における心リハ実施に向けて、不安の軽減や自己学習意欲の向上につながり、病棟看護師90%の意識が向上した。現在、21名中17名の病棟看護師が心リハを経験しているが、実践の場での判断や対処に関しては、未だ不安をもっていることは事実である。今後は、心リハの経験を積み重ね、3週間パスを一層浸透させるとともに、心電図の判読をはじめ、実践の場での判断力を高める必要がある。更に、病棟看護師の意見を取り入れ、マニュアル、申し送り書の改良をし、より充実したものにできればよいと考える。
  • 菊池 優子, 三舩 真紀子, 泉 由紀子, 茂内 梓由子, 佐藤 やよい
    セッションID: 2F18
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    〈緒言〉 全身麻酔で手術を受ける患者に対し、緊急手術や意識障害のある症例を除くほぼ全例に術前訪問を行い、不安の緩和を図ると共に得られた情報を基に術中看護を展開し評価してきた。しかし従来の方法では統一した説明ができず、使用していた用紙は患者の情報から問題点・目標・評価まで網羅されていたが、内容はパターン化した経過記録的なものであり、記載にも時間を要していた。
    そこで術中看護の標準化を目的に、全身麻酔手術にクリニカルパス(以下パス)を導入した。
    〈方法〉
    1.目的  
     1)患者用パス、医療者用パスを作成する  
     2)術中看護をパスにより標準化する。  
     3)パス導入による効果を明確にする。
    2.期間 平成17年4月から平成18年3月
    3.対象 手術室看護師19名(師長を除く)
    4.方法: 1)パスを作成      
           2)術前訪問、術中看護時使用      
           3)使用開始3ヵ月後アンケート調査
    5.倫理的配慮  
    研究の主旨とプライバシーの保護を保証。 アンケートの内容は今回の研究以外には用いないことを説明。
    〈結果〉 術前訪問時に使用する患者用パスと術中看護時使用する医療者用パスを作成した。 患者用パスは出棟時から退室までを1枚の用紙にイラストを多用しわかりやすいように作成した。医療者用は入室前の部屋・ME機器の確認から退室時の病棟看護師への申し送りまでを時間・項目毎に一連の流れに沿って作成した。パス用紙内にアウトカムを明示し、評価欄を設けた。また問題発生時にはフォーカスにて記入できるよう看護記録欄を設けた。使用基準はこれまでと同様、全身麻酔で手術を受ける意識障害のない患者とし、看護計画は別紙にフローチャートで示した。
     使用3ヵ月後に師長を除く看護師19名アンケート調査を実施したところ、予定術式やアレルギーの有無の追加、表現方法の変更や、イラスト追加の希望がありそれらの意見を取り入れパスを改訂した。
     ほぼ全員の看護師は術前訪問に患者用パスを使用しておりメリットを感じていた。パス使用により経験の差に関わらず、短時間で統一した説明ができることは効果的な新人教育のツールにもなった。
     医療者用パスもほぼ全員がメリットを感じ使用している。特に新人にとっては標準パターンの学習が容易になると共に自分のできていない点や理解できていない点が明確になる。また他の看護師においても基本的な確認行為の実施により安全対策の徹底に繋がった。
     記述式の記録の削減により、評価の記載が簡単になり時間が短縮され、これまでの問題点が解決できた。またアウトカムの明示により達成のために何をすべきかを確認できるようになったことは、パスによりこれまでのプロセス重視からアウトカム重視の看護に変わっていった。
  • 連携パス作成に向けて
    鈴木 康司, 河内 貞臣, 新谷 周三, 酒井 裕, 南家 秀樹, 上杉 幸二, 神林 とも子, 倉益 直子, 高野 かよ子
    セッションID: 2F19
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/11/06
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    <目的> 当院では年間70例近くの大腿骨頚部骨折患者の治療を行っている。全てクリニカルパスを使用し、適宜パスの変更などを、各職種間で話し合い問題点について報告してきた(2003年日本股関節学会、神山ら)。今回、これまでの大腿骨頚部骨折パスを振り返り、今年度作成した連携パスを紹介し、作成に向けての問題点について報告する。
    <対象と方法> 2003年度から2005年度の当院で入院加療した大腿骨頚部骨折、転子部骨折症例。それぞれの年度で使用したパスにおいて入院日数、転帰(自宅退院または転院について)について調べた。
     手術は大腿骨頚部骨折(内側型)については2004年度までは原則的には転位型、非転位型に関わらずハンソンピンによる骨接合を施行した。2005年度からは転位型には人工骨頭置換術、非転位型にはハンソンピンによる骨接合術を施行した。転子部骨折については安定型はコンプレッションヒップスクリュー、不安定型はガンマネイルによる骨接合術を施行した。
     治療は原則的には受傷後数日内に手術し、手術翌日には離床し、荷重制限なく、歩行訓練開始した。
     2003年度は入院3週間パスであったが、2004-5年度はリハビリテーション目的の連携パス作成を試み、リハ転院を考慮した2週、3週、4週パスも作成した。2005年度は再び3週パスを主に使用した。
    <結果と考察> 2003年度の自宅退院は36例で、その平均在院日数27日、転院は14例で、その平均在院日数は30日であった。2004年度の自宅退院は53例で、その平均在院日数26日、転院は24例で、その平均在院日数は25日であった。
     2005年度の自宅退院は43例で、その平均在院日数27日、転院は30例で、その平均在院日数23日であった。自宅退院に関してはパスの変更に関わらず約4週間と一定の傾向であった。
     2004年度はリハ転院を考慮した連携パス作成を試みた結果、転院までの在院日数は減少したが、予後予測が難しく、2,3,4週パスの内、いずれかのパスを選択すればよいか難しい印象であった。今後連携パス作成に向けてはリハ目的の転院先との充分な協議、情報交換などの密な連携が不可欠であろう。
    <結論> 当院での大腿骨頚部骨折のクリニカルパスおよび今年度作成した連携パスについて紹介した。連携パス作成に向けてはリハ病院との密接な連携が不可欠である。
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