日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
選択された号の論文の386件中51~100を表示しています
一般演題
  • ~処方別エラー防止のポイント・服薬確認の徹底~
    安西 登美子, 伊藤 弥生, 伊川 順子, 益田 和明
    セッションID: 1B17
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに  看護部より提出されたオカレンスレポートに基づき、与薬業務のどの段階でどのようなエラーが起こっているのかを検証した結果、処方の違いでエラー箇所に特徴があること、服薬確認を確実に行うことで与薬エラーの早期発見と減少に効果があったので報告する。 _I_方法 1.平成14年4月~平成18年1月の与薬エラー222件を処方別に業務フロー分析 2.院内与薬業務の標準化と与薬事故防止対策マニュアルの作成 3.服薬確認票の作成と導入 _II_結果・考察 1)処方別エラー分析と与薬業務の標準化  処方別に「指示出し」から「服薬」までのどの段階でエラーが多く起こっているのかを検証した。『定期処方』では、看護師による配薬時の与薬忘れや患者間違いが多く、『移行・変化する薬剤の処方』では指示受け時と保管場所へのセット時にエラーが多かった。『持参薬』については、指示受け時とセット時にエラーが多く、『退院処方』では処方の渡し忘れと看護師が服薬指導を行う際にエラーが多かった。発熱時、疼痛時の『頓用指示』においては、指示の読み間違いエラーが多く発生していた。『麻薬処方』では配薬時にエラーが多く、これは麻薬が種類によって投薬日、投与時間のバリエーションが多いために混乱したり、与薬時間の情報収集不足等が要因として考えられた。『他科処方』では持参薬との重複や入院主科と他科処方の一部重複エラーが多かった。これらの分析結果を基に、エラーの少ない病棟の手順を調整しながら院内の標準化と与薬事故防止対策マニュアルを作成した。 2)服薬確認票の作成と導入  与薬事故原因は「確認が不十分」が76.2%と圧倒的に多く、確認ミスはヒューマンエラーに大きく関係していた。また、内服薬は点滴注射と違い、処方箋で確認しながらの配薬ではなく、多くの場合薬剤名を把握しないまま配薬していることや、看護師は特定の患者、薬剤以外は服薬確認を確実に行っていないことが事故の要因となっていることがわかったため、服薬確認を確実に行うためのツールとして「服薬確認票」を作成・導入した。最終段階で確認を確実に行うことにより、与薬忘れがあっても次の勤務者や患者・家族によって早く発見され、すぐに対処できるシステムに変更した。 まとめ  物事を変えること自体にもリスクは伴うが、「患者の安全を第一に考えた与薬業務」を所属長・リスクマネジャーに投げかけ、業務の見直し、標準化を図った。与薬エラーを0にすることは難しいが、エラー減少に向けて医師・薬剤師・看護師のコラボレーションを大切に、情報提供や問題提示をして行きたい。
  • 小俣 博之
    セッションID: 1B18
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈緒言〉当病棟には、内服管理方法の明確な判断基準が無いため、個々の看護師のキャリアや能力によって、判断基準に差が生じやすい。そのため、時には、不適切な管理方法が選択され、飲み忘れや過剰内服といった、内服に関するインシデントが発生している。佐々木は「患者の服薬間違いは、患者側の原因ではなく、看護師の判断ミスと指導不十分から生じるものが多いといえる。」と述べている。 そこで今回私達は、当病棟の看護師が内服管理方法の選択に対して、どの様な判断、観察から、内服管理方法の選択をしているのかを明確にしたいと考えた。安全で正確な与薬を行なうために、内服管理選択マップ(以下マップとする)を作成し、内服管理方法の選択の基準を統一したいと考え、この研究に取り組んだ。 〈方法〉対象は、当病棟に勤務している看護師20名で、研究期間は平成18年9月から12月までとした。 内服管理方法の選択について、どの様な観察、判断をしているかを記入してもらい、KJ法を使用して、カテゴリー化を行う。その結果を踏まえてマップを作成する。作成したマップの使用調査をし、マップの評価を行う。調査に対しては、倫理的配慮を行った。 〈結果〉KJ法結果は、_丸1_入院前の状況_丸2_薬に対する理解度_丸3_持参残薬の状況_丸4_ADL能力(視力・聴力レベルを含む)_丸5_認知領域及び情動領域のレベル_丸6_薬の種類と数_丸7_患者の年齢の7項目に分類された。 得られた意見から、管理方法の選択で「看護師個々のアセスメント能力による差異が生じていること」、「看護師の主観や考えが、大きく影響していたこと」が分かった。これらの結果から、看護師の主観や力量に追うことの無い、統一した基準が必要であると感じた。 マップは、愛知医科大学の塩見利明医師らが考案した、服薬能力判定試験を参考に作成された、久留米大学医療センターの「内服管理選択MAP」を参考にした。完成したマップを用いて、当病棟で現在内服を行っている19名に調査を行った。調査の結果、4名の内服管理方法の変更が可能であった。 調査の結果から、内服薬の安全で、正確な管理に向けた看護介入として、マップを使用することは、統一したアセスメントを行う上で有用であったと考える。現在のところ、マップの調査の結果を基に変更した内服管理方法で、内服に関するインシデントは一件も発生していない。 今後は、入院時の、評価だけでなく入院中の患者の症状や、理解力・作業能力・ADLに変化が生じた際には、マップを再度使用し、内服管理方法を検討していく必要があると考える。
  • 江口 裕子, 長井 悠輔, 霍間 尚樹, 小林 悠子, 山本 修也, 藤原 由紀子, 押見 肇, 徳間 一夫, 山下 正秀
    セッションID: 1B19
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【緒言】 「正しく、誤りなく薬を調製する」ことは、思ったほど容易なことではない。ちょっとした思い込みや、ついうっかり見落とした等の理由から誤った投薬がしばしば発生し、時には患者の生命さえも危機にさらすこととなりかねないことは、過去に例からも明らかである。こうした意味からも役割の認識と同時に、過誤を起こさない業務の流れや仕組みを薬局内に作り上げることが重要である。事例を検証して、原因を分析し、事故を起こさない対策が必要である。個人の意識も重要であるが、薬剤部全体の問題と捕らえ、ハード面からチェックシステムを構築するなど、日頃からの意識が必要である。今回、過去に起こった事例を集計し、改善された点、今後直していかなければならない点などを検討したいと思う。 【方法】 1. 調査対象と期間 調剤過誤:薬剤部外に投薬された外来調剤過誤 ヒヤリハット:外来調剤中で事前に防げた過誤 調査期間 旧上越総合病院(新築移転前):H17年4月~H18年3月、新上越総合病院(新築移転後):H18年4月~H19年3月、佐渡総合病院:H13年6月~H14年12月、長岡中央綜合病院:H10年8月~H11年7月 2. 調査項目 日付、処方箋枚数、過誤内容、過誤程度 【結果】 A.旧上越総合病院(新築移転前) B.新上越総合病院(新築移転後) C.佐渡総合病院 D.長岡中央綜合病院 _丸1_ 調剤過誤件数とエラー率 外来総処方箋枚数:調剤過誤件数:% A.87364枚:25件:0.029% B.99741枚:28件:0.028%C.471220枚:137件:0.029%D.312377枚:119件:0.038% _丸1_ 上越総合病院のヒヤリ件数 外来総処方箋枚数:ヒヤリ件数:% A.87364枚:1525件:1.75% B.99741枚:1027件:1.03% _丸3_ 調剤過誤のランク別件数 ランクを5段階にわけ調査した _丸4_ 上越総合病院の調剤過誤事例報告 ケース_丸1_~_丸4_まで報告 _丸5_ 上越総合病院の異種調剤エラーの内訳 規格違い:同効薬(規格違いを含まない):類似名(規格・同効薬違いを含まない):その他A.8件:47件:47件:50件 B.75件:63件:28件:30件 _丸6_ 上越総合病院の規格違いエラーの内訳 頻度の少ない処方で頻度の多い薬品と取り違い:頻度の少ない処方で頻度の多い薬品と取り違い:頻度に差のない処方での取り違い A.29:29:15 B.36:26:36 _丸7_ 異種調剤エラーの多い薬品 _丸8_ 重篤な副作用の考えられる異種調剤 【結語】 結果より下記の対策を行った _丸1_1シートの錠数を把握する_丸2_同種医薬品の複数規格の見直し_丸3_処方箋チェック_丸4_装置瓶充填時に2名でチェック_丸5_散薬鑑査システムの導入_丸6_錠剤配置を薬効別に変更_丸7_処方箋の印字を変更し規格を先に表示する  以上の対策により調剤過誤の発生を未然に防ぐことができた。
  • 小島  絢子, 駒形  佳奈子, 竹内  由利子, 大田  和美
    セッションID: 1B20
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈緒言〉医療内容の多様化、高度化、患者様の高齢化、ニーズの複雑化などにより医療状況が変化している。近年ますます医療事故に関する関心は高まっている。また、薬剤関連の事故は、医療事故の中でも比較的頻度が高い。現在病棟で起きている事故で最も多いのが誤薬・転倒・転落である。 当病棟でも薬の未投与、薬の紛失などの誤薬に関するイベントが4月8件・5月4件発生した。そのことから内服薬の誤薬に焦点を当て、独自の誤薬防止策を作成した。その結果効果が得られたので報告する。 〈方法〉実施期間は平成18年4月1日~平成18年5月30日の間のイベントレポートの提出結果を集計し当病棟の与薬管理の現状把握をした。その結果を基にSHELLモデルを用いて要因分析を行った。そして、誤薬防止策を作成し平成18年6月1日~平成18年7月30日の間実施、評価をした。 〈結果〉 _I_)SHELLモデルを用いた要因、分析結果 S:ソフトウェア(手順、表示面) 〔要因〕 ・片方のチームのみ残包確認を行っていた。 ・日勤帯のみの残包確認を行うことで1包不足、1包余りがないか確認できたが誤薬の早期発見には至らない。 ・内服薬と一緒に保管できない薬(冷所薬、麻薬など)の有無はフローシートでしか確認できなかった。 〔防止策〕 ・各勤務帯で残包確認をすることを統一する。 ・内服薬と一緒に保管できない薬は、氏名、薬品名、用法を明記した赤丸札を使用する。 ・他科の薬がある場合は他科薬と明記したシールを貼る。 H:ハードウェア(設備面) 〔要因〕 ・他科の薬は28日分や90日分など多く処方され薬を紛失しやすい。 〔防止策〕 ・他科の薬を定期処方日に合わせて薬袋に入れる。 E:環境 〔要因〕 ・慌しく業務をしている中で準夜帯の薬をセットしている。 〔防止策〕 ・準夜帯の薬準備場所を静かに集中してできるカンファレンス室に特定する。 L:人間 〔要因〕 ・確認不足、薬の内容を把握していない ・業務が慌しい時は、時間指定の薬を忘れてしまいやすい。 〔防止策〕 ・カンファレンス室に誤薬についての資料を貼り喚起する。 _II_) 防止策実施の結果 防止策実施後、イベントレポートの提出が4月8件、5月4件だったのが6月3件、7月0件に減少した。細かく分類すると「薬の1包余り」が9件であったのが1件。「指示受けミス」2件であったのが1件。「薬の紛失」が1件であったのが0件に減少した。
  • 内藤 道子, 清都 寛子, 目時 美喜子, 五十嵐 せつ子
    セッションID: 1B21
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉 医療事故防止のため、ヒヤリハット報告制度を実施しているが、同様のミス(インシデント)が繰り返されている。一方、危険予知トレーニング(KYT)が、産業界で実践・活用され、作業環境の安全のための重要な手段として普及しており、近年、医療現場で注目され始めた。これらの状況を踏まえ、より安全で信頼性のある医療環境を目指し、漠然とKYTを行うのではなく、実際に発生したヒヤリハット事例を分析・整理し、そこから抽出された原因・対策を活用してKYTを行うことにより、透析室スタッフの安全に対する意識をより効果的に向上させる事を目標にアプローチを行ったので、その結果をここに報告する。 〈方法と実際〉 (1)調査期間・2006年1月~12月に起きたヒヤリハット件数は軽微なインシデントも含めると226件で月平均19件であった。これらの報告の内容を分析した上で、主な事例に対する原因・対策を整理し、プライミング、透析時、注射、等の項目に分け、_丸1_発生状況・要因_丸2_実施した対策_丸3_行動目標をまとめたヒヤリハット事例集を作成した。 (2)作成したヒヤリハット事例集を基に朝のミーティング時に当日の注意事項を確認し、行動目標を全員で唱和する、ワンポイントKYTを2007年3月から実施した。 (3)KYTの実施前と後で透析室スタッフ(看護師15名、技士4名)の安全に対する意識の変化について、アンケート調査を実施した。 (4)KYT実施後のヒヤリハット報告の件数、内容について分析した。 〈結果〉 KYTの実施前のアンケート調査では、発見したヒヤリハットの報告率は7~8割で、100%報告していると答えたスタッフは、19名中4名であった。KYT実施後のアンケート調査の結果では、安全に対する関心が高まった、ミスを積極的に報告するようになったと答えたスタッフが増え、全員が今後もKYTを継続した方が良いと回答した。さらに2人が、朝のKYTの行動目標を思い出しミスを未然に防止することができたと答えた。
    また、KYTを開始した、3月の1ヶ月間のヒヤリハット件数は60件と増加したが、軽微なインシデントのみであった。
    〈考察〉 血液透析は体外循環による治療法であるため、1つのミスが直接生命維持に影響を及ぼす危険性がある。そのため、スタッフ同士が連携し、ミスを未然に防止できる環境を作り上げる必要がある。そこで、実際に発生したインシデントの全容をスタッフに知ってもらうため、ヒヤリハット事例集を作成した。事例集は、行動目標を簡潔で唱和し易くし、写真やイラストを積極的に用い、誰にでも分かるように工夫したため、円滑にKYTに活用することができた。その結果、ヒヤリハット報告が60件と増加したが、これはヒヤリハットを隠さず報告し、安全な職場にしようという意識が高まったことによるものと考えられる。さらに、行動目標を全員が声をそろえて唱和することで、スタッフの連帯感も生まれた。KYTはすぐに目に見えた効果が現れるものではなく、継続することが安全な業務遂行に必要であると考える。 〈まとめ〉 _丸1_ KYTの実施は透析室スタッフの安全に対する意識の向上につながった。 _丸2_ 行動目標を全員が声をそろえて唱和することで、スタッフの連帯感が生まれた。
  • 原 由紀乃, 青木 京子, 太田 栄子
    セッションID: 1B22
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    <緒言> 新人看護師(以下、新人とする)は、慣れない職場環境に加え知識・技術も未熟であるためインシデントを起こすリスクが高い状況にある。私は今年プリセプターを行う中で新人がインシデントを起こしたとき、その辛さを共に実感してきた。  新人のインシデントを減少するため事例分析を行った結果、インシデントの背景にある要因が明らかとなったため報告する。 <方法> 1.調査期間 平成18年4月~9月 2.研究対象者 当病棟に勤務している平成18年度新人看護師4名 3.データ収集方法 調査期間内に当病棟で新人によって報告された当院共通のインシデントアクシデントレポート(以下インシデントレポート)から、内容・原因、発生月、勤務帯(平日、土日祝日の日勤・夜勤別)を抽出する。さらにインシデントとして一番多く報告されている注射・点滴について取り上げ、新人にその内容に関する「知識の有無」「経験の有無」「その時の業務量」「心理状態」「他の看護師との関わり・協力依頼」について半構成的インタビューを行った。<結果・考察> 調査期間中に当病棟で報告されたインシデントは合計49件であった。そのうち新人は19件であり、全体の約40%であった。新人が起こしたインシデントの発生月をみると、4月0件、5月1件、6月5件、7月5件、8月4件、9月4件となり、6月以降多く報告されていた。一番多かったのは、勤務帯別では、平日日勤12件、内容別では、注射・点滴が8件、原因別では観察不足が9件であった。  6月から急にインシデントの報告件数が増加したことは、新人がチームの一員として動き出す時期によるものと考えられる。勤務帯別で平日日勤帯の報告が多かったことについては、平日は検査や入院が多く、業務が慌しくなることによるものではないかと考えられた。内容別で注射・点滴に関するものが一番多く挙げられたことは、当病棟では扱う注射・点滴の数も多いうえ、内容も多種にわたること、また原因別で観察不足が多いことについては、検査やケアが多く、業務に追われる余裕の無さが関連していると考えられた。 インシデント内容で最も多かった注射・点滴について新人にインタビューを行ったところ、知識・経験の有無では専用の溶解液があることを知らなかったなど、業務量では業務が重なって多忙な時など、心理状態では焦りや緊張した時、任せられた仕事を一人で抱え込んでしまう時など、他の看護師との関係では相談や協力依頼ができないことなどがインシデントの要因となっていることが分かった。 これらには「相談が出来ない。」という新人の共通の思いが聴かれた。まだ優先順位の判断が出来ず、周囲のスタッフとも十分な関係作りが出来ていない新人にとって、「相談すること」はとても難しいことなのだと分かった。 このように、新人に直接インタビューをすることで生の声を聞くことができ、私達は新人の知識や経験不足のみを補うだけではインシデントは減少しないということがみえてきた。今回の研究から、インシデントの直接の要因として新人の心理状態が大きく関与していることが明らかとなった。新人がタイムリーに相談でき、先輩と良好なコミュニケーションを図ることができれば、インシデントは減少するのではないかと思われる。
  • インシテ゛ント・アクシテ゛ントレホ゜ート分析より
    飯島 満枝
    セッションID: 1B23
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    近年、医療の質の保証が叫ばれており、医療安全への取り組みが重要である。当院の医療安全の体制として、医療安全管理委員会を頂点に、医療安全管理室、MRM(メディカル・リスク・マネジメント)委員会・感染委員会・倫理委員会・情報開示委員会がある。 医療安全管理室は、今年度設置され、目的は、「_丸1_安全で質の高い医療を提供するために、職員個々が安全に対する意識を向上させ、業務を的確に遂行できるように医療安全活動を推進する。_丸2_インシデント・アクシデントの分析・事故防止対策を検討し日常の業務に反映させる」であり、MRM委員会との連携が非常に大きい。 昨年のインシデント・アクシデントの分析にて、 次の課題が提示された。 1.報告書の提出は変更前に比べ増えているが、提出部署に偏りがあり、全職員に対して報告の徹底を継続して啓蒙していく必要がある。 2.報告を評価・分析し、それに基ずく予防的対策のシステム化への取り組みが必要である。 今回、いくつかの事故防止対策を行い、H18年4月~H19年3月までのインシデント・アクシデントレポートの集計・分析とから、当院の現状と更なる課題を見出したので報告する。
  • 横山 亮, 医療安全管理 委員会
    セッションID: 1B24
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    1,はじめに  医療の現場では、安全管理の必要性が重要視されているのはいうまでもないが、安全管理を確立するための方法として事故報告書の記載も定着してきている。当院でも、報告書の記載はされているが、それを分析し現場に返す課程が滞っていた。今回、報告書内容の統一と、データ分析を容易にする目的で「事故報告書集計ソフト」(以下、集計ソフト)を作成した。その、集計ソフト作成までの経過及び内容を紹介する。報告書で得られた結果を財団法人日本医療機能評価機構医療事故防止センターのデータと比較したので、その結果と今後の課題について報告する。 2,当院の概要  病床数        199床  外来診療数       12科  病棟数         4病棟  職員数        282名  職員の平均年齢    41.1歳  職員の平均経験年数  13.5年 3,集計ソフト作成の経過  2006年1月から検討に入り、4月より使用を開始した。幾つかの修正、追加を行い10月完成に至る。 4,集計ソフトの紹介   1)基本情報   2)事故の経過・考察   3)事故原因分析   4)リスク委員評価 5,比較結果  2005年10月1日から同年12月31日までに、財団法人日本医療機能評価機構医療事故防止センター(以下センターとする)に報告された44,266件の報告データと、2006年4月1日から2007年3月31日までに提出された三条総合病院(以下当院とする)の事故報告書、463件のデータにおいて、_丸1_発生曜日_丸2_発生時間帯_丸3_当事者の職種経験年数_丸4_当事者の部署配属年_丸5_事故の行為別発生件数_丸6_発生要因の6項目について比較した。 6,今後の課題 今後の課題の1つは、発生要因の項目で、身体的、心理的状況、勤務状況の把握をし、事故発生との因果関係の有無を確認し対処することである。その1つとして、配属部署が変わった職員に対する業務環境整備の見直しも必要と言える。  2つめは、転倒・転落の防止、である。どの様な場合に、どの様な対応をするか、院内統一した方法が求められている。  もう一つは、情報の保護、管理の問題である。 7,おわりに  集計ソフトによる報告書の作成によって、データ集計・分析が容易になり早期に事故の原因・発生状況を具体的に表示できるようになった。その結果、各部署での事故の傾向も解るようになった。事故内容が具体的に把握できるということで、職員一人一人の事故に対する意識は高まったと考える。しかし同様の事故は引き続き起きているのが現状である。今後も、集計ソフトを活用し事故報告書の蓄積・分析を行い、その情報を職員全体に提供し、事故発生防止対策の一つにしていきたいと思う。
  • 山田 純子
    セッションID: 1C01
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    1、はじめに 当病棟では、2年前に「感染拡大につながる看護師の無意識行動について」の看護研究を行った。その結果オムツを床に置くことが感染拡大につながるのではないかという考察が得られている。しかし、現在もオムツ交換時に使用したオムツを床・ベッド上に置く行為がみられている。なぜ感染につながっているとわかっているのに行ってしまうのかを明らかにしたいと考え、現在病棟で行われているオムツ交換の実態を調査し、改善策に取り組んだ 2、研究方法 1)期間:平成18年8月~11月 2)対象:6A病棟看護師24名 3)方法:アンケートによるデータ収集後KJ法による分析検討を行い、改善策を3つ考案し、それぞれ2週間ずつ実施。その後再アンケートを行い、スタッフの意識の変化を比較検討。 3、結果 1)実施前アンケートによる意識調査 2)KJ法による分析検討  下記の3つのカテゴリーに分類。 (1)人的な理由 (2)物的な理由または環境的な理由 (3)間違った知識 4、考察  意識変化は認められたが、実際は床の上に直接オムツを置いていると答えたスタッフが多かった。「赤信号みんなでわたれば怖くない」という行動は、社会心理学の用語でいえば「同調行動」「責任の分散」といわれるが、オムツを床に置く行為もこれと同様であると考えられる。それによって大きな問題が起こらなければ、誤った行為であることも認識していないので、その学習内容が「習慣化・強化」していったと考えられる。  人は集団になればなるほど、一人一人の責任を軽く考える性質がある。また、人は習慣化された行動パターンでいたいと考える傾向がある。オムツ交換の場合、「床にオムツを置く」ことで習慣化されており、その行動を変えるにはエネルギーが必要である。それは、習慣化された状況を変えることでもある為、「面倒くさい」「嫌だなぁ」という感情が働く。行動に強く影響するのは思考より感情なので、変えることが大切と理解していても、なかなか行動が変えられない。  行動を変えるには知的な理解に加え感情を動かす必要があると考える。今回私たちが改善策として行った3つの方法を、スタッフに浸透させることが出来なかった。意識の変化は認められたが行動の変化にまでは至らなかった。その理由として、当病棟では処置や検査などが多く、業務の多忙さから看護ケアの優先度として、オムツ交換時の感染拡大に対する意識が低いと考えられる。 5、まとめ 今回の研究を通してスタッフがどのようにすれば行動に移すことができるかという課題が残った。この課題を達成するためには、スタッフへの啓蒙活動の強化と共に、オムツ交換時にビニール袋の使用を積極的に取り入れ、習慣化していく必要があると考える。その行動を患者の感染予防であるという認識の向上につなげ、より安全で充実した看護ケアが、提供していけるように努めていきたい。 引用文献  1)板垣英治、吉谷須磨子:看護業務後の白衣・予防衣の汚染状況調査―病床環境・看護業務後の予防衣の汚染状況調査から―、感染防止、Vol.15 No.6 Page53-56、2005 2)吉谷須磨子:MRSA感染患者に対する感染看護の評価、感染防止、Vol.14 No.5 Page27-29、2004 参考文献 病棟でのMRSA感染についての見直しについて、聖マリアンナ医科大学病院看護部看護研究集録、No.11、Page51-53
  • 濱野 香苗
    セッションID: 1C02
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉佐賀県の北部海上にあるA島は遣唐使や朝鮮出兵にも関係した歴史のある島で、宗教や血縁を中心とした結束が固い。昨年A島の高齢者の心理的・物理的サポートの実態を報告した。今回は、A島の生産人口であり、高齢者を支えている介護保険第2号被保険者の心理的・物理的サポートの実態を調査した。 〈研究方法〉A島の第2号被保険者に調査目的やプライバシーの保護等の倫理的配慮を説明し、調査に同意の得られた104名を対象に、構成的質問紙を用いた面接調査を平成18年6月~12月に行った。調査内容は属性および心理的サポート、物理的サポートである。心理的サポートは心配事や悩み事を聞いてくれる人、気を配ったり思いやったりしてくれる人、元気づけてくれる人、くつろいだ気分にしてくれる人の有無を、物理的サポートはまとまったお金が必要な時に貸してくれる人、留守やちょっとした用事を頼める人、短期間の病気の時に看病や世話をしてくれる人、長期間の病気の時に看病や世話をしてくれる人の有無を、いつもいる(3点)から特にない(0点)のリッカートスケールで求め、合計点で3段階に分けた。分析方法はχ2検定を行い、5%を有意水準とした。 〈結果〉性別は男性51名、女性53名、平均年齢53.1歳(40~64歳)であった。世帯構成は、親と同居51.9%、配偶者と二人暮らし20.2%、配偶者・子供家族と同居20.2%、子供家族と同居3.8%、独居3.8%であった。宗教は仏教50.0%、カトリック49.0%であった。 心理的サポートは低い1.9%、中程度6.7%、高い91.3%であり、男女で有意差はなかった。心配事や悩みを聞いてくれるのは配偶者52.9%、友達18.3%、気を配ったり思いやったりしてくれるのは配偶者51.9%、子供13.5%、元気づけてくれるのは配偶者31.7%、子供20.2%、友達19.2%、くつろいだ気分にしてくれるのは、子供25.0%、配偶者19.2%、友達14.4%、孫12.5%であった。 物理的サポートは低い4.8%、中程度10.6%、高い84.6%で、男女で有意差はなかった。まとまったお金を貸してくれるのは兄弟20.2%、親戚10.6%、留守やちょっとした用事を頼めるのは親22.1%、隣近所16.3%、配偶者15.4%、短期間の病気の時の看病や世話は配偶者58.7%、親17.3%、子供12.5%、長期間の病気の時の看病や世話は配偶者51.9%、親14.4%、子供13.5%であった。6年前と比較した互いの支え合いの強さの変化は、変わらないと強くなったを合わせて75.0%であった。 〈考察〉A島の第2号被保険者の高い心理的・物理的サポートは8割以上で、支え合いの強さも7割は変わらないや強くなったと感じており、宗教や血縁を中心とした島民間のサポートシステムが維持されている。心理的サポートでは配偶者や子供、友達の存在が重要であり、物理的サポートでは配偶者や親ばかりでなく、都市部では薄いと言われている兄弟や親戚、隣近所によりサポートされていることが明らかになった。第2号被保険者が高齢になっても住み慣れたA島で生活するためには、地域における心理的・物理的サポートシステムを維持することが重要である。 本研究は平成18年度科学研究費補助金(基盤研究C)による研究の一部をまとめたものである。
  • ~院内ボランティアによる病院の活性化~
    伊藤 しげ子, 水野 章, 諦乗 正, 河内 嘉文, 伊藤 恭子, 伊藤 雅彦, 川瀬 朋子, 小寺 久子, 三和 静代, 井後 一夫
    セッションID: 1C03
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    _I_、はじめに いなべ総合病院は三重県最北に位置する220床の病院です。診療圏人口は約71,000人で地域の中核病院としての役割をもっている。 当院は平成14年9月、新築移転をした。しかし、移転当初最新の医療設備、優秀なスタッフが揃っているのにも関わらず、地域の中では病院機能の理解はなかなかなされず、病院の活性化はならなかった。 そこで、以前より活躍していた院内ボランティアの方にまず病院の機能を理解してもらうために「ボランティア委員会」を立ち上げ、年間2回の研修会と3回の委員会の開催をした。また、病院祭の際には、餅つきやアンケートの手伝いをしてもらい、職員と一体となって地域の人へのアピールを行ってきた。地域の人で作るボランティアの方の地域への宣伝効果は大きなものがあり、現在外来患者数880人(移転当初750人)、入院稼働率92%(移転当初88%)と活気ある病院になってきた。 その経過を報告したいと思う。 _II_方法 1、ボランティアグループ 1)ほほえみの会 100名登録   (玄関患者介助) 2)ほほえみの会ひまわりグループ8名     (小児科外来絵本読み聞かせ)3)敷地内草取りボランティア130名     (シルバー) 4)敷地内草取りボランティア 5)小児科病棟絵本読み聞かせ 1名 2、 活動内容 1) 毎日2~3名が玄関で患者介助 2) 第1月曜日に2名が実施 3) 毎月1日と10日に敷地内の草取り実施 4) 年1回敷地内の草取り実施 5) 毎月第_I_土曜日に実施 3、 病院祭 毎年開催する病院祭に、餅つき、アンケート聴取の手伝いやイベントコーナーへの参加など病院行事への自発的な参加を行っている。 4、 研修会 年2回実施 _III_、結論 最初は20名ほどから始まったボランティア活動は、現在230名を超える大きな輪になった。ボランティアの人が「自分たちが支えている病院」という気持ちを持ってもらうことこそが病院活性化につながると考え、研修会、委員会、病院祭の参加とまずは病院へ足を運んでもらうこと。もう1つはボランティアの方が地域住民の代表者となり、病院への要望・意見を言ってもらい病院改善を行ってきた。年2回開催する研修会には、院長、事務部長、看護部長、外来師長が必ず出席して、常に病院の方針を話し理解していただき、考えを共有するようにした。 また、ボランティアからの要望は最大限取り入れた。そうしたことで徐々に「自分たちの病院」という思いが広がっていき、その思いは地域の人にも広がっていった。 移転後5年目を迎えた現在、救急車搬送率、外来患者数、入院患者数、健康診断受診者数等全てにおいて右肩上がりの成績を収めており、まさしく地域とあゆむ中で病院の活性化はなされてきたと感じている。
  • ~ドレナージチューブ留置患者の事例を通して~
    和泉 裕子, 渋田 真理子, 山本 智子
    セッションID: 1C04
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに 医療改革による病院機能の分化、診療報酬改定により早期退院が図られている。疾病や障害を抱えたまま場合在宅療養生活の支援が必要である。今回、敗血症ショックで入院し、肝性脳症による昏睡を繰り返し、状態が不安定なまま長期入院となった患者が退院した。在宅療養生活が可能となった経過を報告する。 _I_.患者紹介  患  者:80歳 男性  家族背景:妻と二人暮らし。長男、長女は道外に在住 病  名:多発性肝膿瘍、胆管炎、肝硬変、肺血性ショック 現 病 歴:H18年1月11日、肝膿瘍による敗血性ショックによりより入院。経皮的胆管ドレナージ(以下PTCDとする)、肝膿瘍ドレナージ施行する。出血性ショックの為DIC発症。入院3ヵ月後にやっと全身状態が落ち着き、退院を目標に取り組むこととなったが、その後も昏睡、不穏状態を繰り返した。 _II_.倫理的配慮 妻へ口頭で事例発表の主旨とプライバシ ーの保護について説明し同意を得た。 _III_.看護の実際 1.全身状態が安定し、退院支援を開始した時期((H18.4.17~5.24) 医師より「やっと状態が落ち着いてきた。外泊をしてみよう。」と面談があった。本人は、「家に帰りたい。」という思いが強かったが、妻は退院のイメージがつかず不安を抱えていた。妻との面談を繰り返し、福祉用具の準備や介護保険の申請などの調整を行った。外泊により退院後の生活をイメージできるよう関わったが、外泊後、妻の退院への不安が強くなり、その後具体的支援の調整をすることができなかった。そのため、妻の気持ちの変化を把握し、支援の方向性を確認した。 2.介護認定を受け在宅療養支援について具体的に取り組んだ時期(H18.6.22~7.6)□□退院に向けて、妻を含めた調整を繰り返し、要介護4で認定を受けた。居宅支援事業所との連絡調整により、24時間の対応や必要な福祉用具の導入ができた。本人、妻とともに準備していく中で、妻も退院に向け、前向きに取り組むようになった。 3.退院後訪問看護ステーションと連携した時期(H18.7.7~9.18)退院決定後は、病状が不安定で昏睡状態に陥ることもあったため、病院との連携を密に行う必要があり、訪問看護を導入した。当初妻は、自宅に他人が入ることへの抵抗感があったが、訪問看護師の対応に安心された。また、外来受診がスムーズに出来るように調整した。退院後は予想以上に病状の改善が見られた。PTCDからの漏れが多く、一時再入院するが、その後もスムーズに退院となった。 _IV_.考察 入院が長期となり、本人の家に帰りたいという思いは強かったが、病状が不安定なため在宅療養が可能なのか判断は難しかった。妻は、外泊後一人での介護、病状の変化について不安が強くなり退院を考えられなくなった。外泊前から妻と同じ目的で準備が進められていたら、退院に向けた取り組みがもっと早期に出来たのではないかと考える。退院支援開始後も昏睡や不穏、ADLの低下を繰り返したため、支援開始から退院まで2ヶ月を要した。その間も、退院支援が中断されないように支援を継続したことで、地域へ連携することができたと考える。
  • ~AIDS患者の1例を経験して~
    長谷川 浩一, 林 真人, 川口 健司, 田代 晴彦, 森川 篤憲, 岡野  宏, 川上 恵基, 村田 哲也
    セッションID: 1C05
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    (症例)患者はインドネシア国籍の29歳男性で、平成19年1月17日に頭痛を主訴に当院外来を受診。頭部単純CTで左側頭葉に低吸収域を呈する脳病変を認めた。しかしながら不法滞在者であると判明し、それ以上の精査治療は母国で行うべきと初診医が判断し、即時の帰国を勧めた。しかしながら、症状は徐々に悪化し発熱と意識障害をきたしたため、1月21日に当院救急外来を受診し内科入院となった。入院時、口腔内カンジダ症を認め、抗HIV抗体が陽性であった。髄液検査では異常を認めなかったが、AIDSによる脳トキソプラズマ症が最も疑われ、ST合剤とクリンダマイシンの投与を開始した。治療により解熱しCRPも9.0から0.5に低下したが、意識状態の改善はあまり認められず、到底旅客機で帰国できる状態ではなかった。2月1日に局所麻酔下で定位的に病変部位の生検術を施行し、病理組織にて脳トキソプラズマ症の確定診断が得られたため、2月8日に三重大学附属病院血液内科に転院した。その後、ピリメサミンを用いた積極的な治療により旅客機で帰国できる状態にまで回復した。 (当院での対応)不法滞在のため保険には未加入で、治療費は自費のため金銭的な援助をインドネシア大使館にも相談したが、予算がないため金銭的な援助は不可能との返事であった。また、当院はAIDS拠点病院に指定されていないため、県内のAIDS拠点2病院への転院も考慮したが困難であった。三重大学附属病院のみHIV感染により何らかの合併症を発症している事が確認されていれば、何とか受け入れ可能であるが、少なくとも脳の生検でAIDS以外の脳病変を否定する事が前提条件であった。HIVに対する手術器具の消毒法もHCV等と同じであるが、HIV感染患者の手術は当院では初めてであり手術室等からの反対もあったが、転院のためには他に手段はなく、当院でやむなく生検術を施行した。 (考察)不法滞在患者でなく金銭的に問題なければ、大学病院以外のAIDS拠点病院への転院も可能であったと思われるが、研究機関でもある大学病院しか受け入れは許可してもらえなかった。鈴鹿市は外国人の割合が高いので、不法滞在の外国人も多いと予想されるが、これは全国的な問題と考えられる。不法滞在者であるからといって人道的に治療を拒否する事はできず、行わなければならない。その様な場合、どこからか金銭的な援助を得て、なんとか治療を行える方法はないのであろうか。また、外来受診の翌日に名古屋の入国管理局から連絡があり、すぐに帰国させる様に伝えたが、手続き上少なくとも1週間以上かかり、結局その間に症状が悪化し帰国できなくなってしまった。不法滞在ではあるが、この様な緊急事態の場合、入国管理局はもっと早く帰国の手続きをとる事はできないのであろうか。この患者は治療により帰国できる状態にまで回復したが、回復しなかった場合は二度と自国の土を踏む事はできなかったと考えられた。
  • 藤井 隆, 占部 洋司, 國田 英司, 前田 幸治, 田崎 直仁, 辻山 修司, 関口 善孝, 藤川 光一, 山口 裕之
    セッションID: 1C06
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】冠動脈プラークの性状評価は,血管内超音波(IVUS)を用いるのが一般的で現在では後方散乱波解析を考慮したプラーク組織性状診断(IB-IVUS等)が併用されつつある.一方,CTにおけるgrey scaleでのプラーク視覚評価(ROIやprofile curve)には限界がある.新しい解析法を使用したプラークの性状評価が可能となった. 【方法】狭心症患者3例に対しGE社AW 4.3のPlaque MapTMを利用し64列MDCT撮像後,1ボクセル毎に冠動脈プラークのカラー解析を施行した.Schroeder分類と対応させた当院独自のCT値境界と色調(-20~50HU:soft:黄~緑色の3階調,50~120HU:intermediate:青,120~500HU:造影血管内腔:透明,500~2000HU:石灰化:赤)を決定,病変部におけるcross sectional MPR像(multiplanar reconstruction)でプラーク性状解析を行ないIB-IVUS所見と比較した.IB-IVUSでは,lipid pool (-49~-42dB:青),fibrosis(-42~-34dB:緑)~dense fibrosis(-34~-25dB:黄),calcification(-25~-11dB:赤)とIB値によりプラーク性状を規定した. 【結果】CTによるプラーク性状は, 症例1:安静兼労作時狭心症,soft plaque主体の90%偏心性狭窄, 症例2:労作性狭心症, intermediate plaque主体の50~75%偏心性狭窄, 症例3:ASO術前評価,軽度石灰化を伴うmixed plaqueの50~75%中心性狭窄であった. プラーク性状においてIB-IVUSでは,各々soft,fibrous,mixed plaqueの所見が得られCT診断と一致した. プラーク性状に応じたプラーク形態もgeometricalにほぼ一致した.しかし解像度の点でIVUS画像がCT画像に比して優れていた. 【考案】冠動脈狭窄に加えプラーク情報が得られることでインターベンションの計画,心血管イベントのリスクも予測できる可能性が考えられた. さらに高分解能の検出器を積んだCTの開発により,非侵襲的MDCTで診断されるプラークは,侵襲的なIVUSと同等に診断できる可能性がある.
  • 南佐久郡における心筋梗塞発症者の年齢分布
    高松 道生, 飯島 秀人, 矢島 伸樹, 前島 文夫
    セッションID: 1C07
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    [要約] 1990年から発症登録が行われている南佐久郡居住者での心筋梗塞発症例を居住自治体別に検討した。市町村合併前の旧臼田町、旧八千穂村、南・北相木村居住者では他の町村に比べて発症年齢が高齢によっており、発症を遅らせる何らかの原因がある可能性を示唆する。 [研究の背景]
    2002年の本学術総会において報告(第12報)したように佐久地域では1990年代の10年間に心筋梗塞の発症増加を認めていないが、高齢者人口の増加に伴って動脈硬化性疾患が増加するとの指摘がなされている。可能な限り発症の高齢化を図ることが健診の重要な意義でもあるが、自治体毎の発症年齢を比較することでその要因を明らかにする必要があるものと考えられる。 [対象と方法]
    旧南佐久郡(合併前)居住者の心筋梗塞発症例を50歳代までと60歳代以上の2群に分け、各自治体の発症数を比較した。本研究は厚生労働省多目的コホート研究において1990年から継続して取り組まれている、佐久地域における心筋梗塞発症登録のデータを基に行った。当コホート研究の対象は、旧南佐久郡在住の1930年1月1日~1949年12月31日出生住民であり、心筋梗塞の診断は1)胸痛、2)心電図、3)血液生化学データ、4)病理解剖を組み合わせて行い、確実例のみを登録した。有意差の検定にはPearsonカイ二乗検定を用いた。 [結果] 1990年から2006年までの17年間に130例の心筋梗塞発症登録が得られた。コホート集団が固定されているため、発症年齢は43歳から74歳となっている。旧臼田町(現佐久市)、旧八千穂村(現佐久穂町)、南・北相木村では60歳以上の発症が70%を占めており(南・北相木村では全例が60歳以上での発症)、他の町村に比べて発症が高齢に寄っている(p=0.016)。南・北相木村は人口規模が1000人程度と少ないためこの両村を除外してもp=0.034とやはり有意差が認められた。 [考察] 居住自治体による発症年齢の差が何に起因するかは今後の検討課題であるが、自治体毎の年齢分布やリスク出現率、健診受診率や事後指導、保健師の活動状況等の検討が必要と考えられる。今年度から開始される生活習慣病プロジェクトはコホート研究として取り組まれる事になっており、農村地域における循環器疾患の発症状況やリスク評価に新たな知見をもたらすものと期待されている。多くの医療機関が研究に参加する事が期待される。
  • 杉浦 伸也
    セッションID: 1C08
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    ステント留置後亜急性期に巨大仮性冠動脈瘤を呈した一例 症例は66歳女性。僧房弁閉鎖不全症、高血圧、高脂血症、発作性心房細動などで外来通院中であり、平成18年9月より無症状ながら白血球・CRP上昇及び貧血を認めたが、原因不明であった。 平成19年2月9日急性下壁心筋梗塞にて入院し、右冠動脈#1に99%狭窄を認めたため同部位に対しPCIを施行した。血栓吸引にてほとんど血栓は吸引されず、明らかなplaque ruptureは認めなかったものの、Duraflex4.0-14を留置した。入院中に高熱認め血液培養よりStreptococcus bovisを認めたが諸事情にて退院となった。 3月6日胸痛を主訴に来院され、心電図にてST低下をV4-V6で認め、緊急心臓カテーテル検査施行した。その結果右冠動脈ステント挿入部に巨大仮性動脈瘤とそれによる右冠動脈の圧迫狭窄の所見を認め、心臓血管外科紹介となった。術中大動脈弁と僧帽弁にvegetationを認め、右冠動脈瘤起始部のステント留置部位に巨大な仮性動脈瘤を認めた。今回の原因は感染性心内膜炎に伴う冠動脈の塞栓及び亜急性期の巨大仮性冠動脈瘤形成と考えられた。大動脈弁弁置換術、仮性動脈瘤切除、バルサルバ洞形成、大伏在静脈グラフトにて右冠動脈へバイパス術を施行となった。今回非常に貴重な症例を経験したため若干の考察を交え報告する。
  • 齊藤  崇, 松岡  悟, 阿部 元, 新田  格, 寺田 舞, 金澤 正範, 佐藤 和明, 佐藤 貴子, 守田 亮, 浅香 力, 相馬 大 ...
    セッションID: 1C09
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【背景と目的】心房細動(Af)の発症率は加齢によって増加するところから、本邦では今後50年間で3倍近くその頻度が激増するとの試算があり、特に農村地域ではこの現象がより先鋭化した形で進行すると予測されている。Afは脳塞栓などの血栓塞栓症リスクを高める一方で、血行動態悪化により心不全発生とも密接に関与しているが、一方で抗不整脈薬による治療(rhythm control)が、rate controlに比し長期予後を必ずしも改善しないとの報告(AFFIRM試験)もあり、大きな臨床的課題となっている。一方、発作性心房細動(Paf)に対する日本循環器学会ガイドラインでは、基礎疾患の有無、心機能に応じ、slowないしintermediate kinetics型のNa channel阻害薬(class I)を各々第一適応としているが、これらclass I薬単独投与に対する無効例が少なからず存在し、塞栓症リスク、心不全リスクが高い例ほどAfコントロールが困難であるというジレンマがある。そこで、日循ガイドラインに沿って選択投与された_I_群抗不整脈薬に対し多剤抵抗性を示した基礎心疾患を有する持続性ないし慢性Af例に対し、富山大学の藤木らによって考案された新規カクテル療法であるbepridil/aprindine療法を行ってその効果と安全性につき検証した。 【方法】本研究では平均2.5剤のclass I薬に対して抵抗性を示した持続性ないし慢性Af 14例(平均年齢72.1±4.8歳)を対象としてmultichannel blockerであるbepridil (BEP)+fast kinetics型class I薬であるaprindine (APR)併用療法の除細動効果につき検討した。基盤疾患は高血圧性心疾患(6例)、大動脈弁膜症(3例)、僧帽弁疾患(2例)、虚血性心疾患(1例)、その他2例であった。投薬プロトコールとしては、平均2~4週のbepridil投与後、単独で効果の得られなかった14例にaprindineを上乗せする形で行なった。 【結果と結論】BEP(128.8±28.9mg/day)、APR(38.6±3.8mg/day)投与により、14例中11例で薬理学的除細動に成功した。副作用はOMIに見られたQT延長が1例(bepridil 200mgから100mgへの減量で改善)、肝機能障害のためaprindineを中止せざるを得なかった1例のみであった。以上から、bepridil/ aprindine併用療法は基礎心疾患を有し、多剤抵抗性を示すAf例に対し高い有効性と安全性を有することが確認された。
  • 梶田 智穂, 河田 智恵子, 小松 浩基, 水野 誠士, 藤井 隆, 近藤 朗子
    セッションID: 1C10
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】収縮障害のみならず拡張障害によって心不全が生じることが知られている.拡張障害に伴う心不全の改善経過を心電図と僧帽弁血流速度,組織ドプラ法を重合した指標等により経時的に追跡しえた症例を経験したので報告する.  【症例】30歳 男性,主訴:眼のちらつき,家族歴:父・祖母: 高血圧 経過:検診受診歴:10年間無し.2007/1月から上記症状を自覚,近医眼科受診,眼底の出血・白斑・金箔様反射・乳頭浮腫を指摘,BP 234/162 mmHg と悪性高血圧を認め,2007/1/30当院眼科より当科紹介,2007/2/1入院となった. 身体所見:高度肥満,血圧:右240/150,左232/166mmHg.心雑音,腹部血管雑音なし. 検査所見:尿蛋白>300mg/dl,尿潜血(+++),BUN:31 mg/dl,Cr:2.59 mg/dlの腎機能障害を認め、血漿レニン活性:26.8 ng/ml/hr (0.1~2.0),血漿アルドステロン:40.8 mg/dl (3.6~24.0) と高値であった.胸部Xp:心拡大(心胸比54%),軽度肺鬱血を認めた. ECG:左房負荷(V1誘導で深い陰性P波,II, III, aVFでwideかつtall P波)とI, aVL, V6で陰性T波と左室肥大を認めた. UCG:左室壁厚:20mmと中等度左室肥大,左室拡張/収縮末期径:55/40mm,駆出率:50.7%,左房径:52mm,極めて軽度の僧帽弁閉鎖不全を認めた.僧帽弁血流波形で拡張早期波(E)速度:0.69m/s,心房収縮期波(A)速度:0.49m/s,E/A比:1.41と高値で偽正常化を示した.Tei index:1.01,組織ドプラ法による僧帽弁輪部運動速度の拡張早期波(e’)より求めたE/e’は20.1と高値で拡張能障害を認めた. 経過:入院後開始した降圧剤により血圧は170/110mmHgと低下した.2/14(2週後)のUCGではE波:0.67m/s,A波:0.50m/s,E/A比:1.26,Tei index:0.79,E/e’:12.3と改善したが,収縮率,左房径は入院時と変化を認めなかった.2/19(3週後)のECGでV1の陰性P波高とII, III, aVFのP波高は減高した.2/26(4週後),検査所見では尿蛋白:30mg/dl,Cr: 2.05と改善,胸部Xpでは心胸比50%,肺鬱血も改善した.またCTで腎動脈狭窄と副腎腫瘍を認めなかった.  【考察】 本例の病態としては,高血圧心の非代償性心肥大に伴う心不全が考えられた.また降圧剤(後負荷軽減)と心不全改善に伴う左室拡張末期圧低下により拡張能は改善した可能性が考えられた.  【結語】  左室肥大と腎機能障害,眼底変化を伴う若年者悪性高血圧例において、降圧により左房負荷(心電図P波)と拡張能の指標を経時的に追跡し、短期間で拡張能が改善した症例を報告した.
  • 坂口 久美子, 丑山 茂, 三澤 卓夫
    セッションID: 1C11
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    目的および方法  肺高血圧症は収縮期肺動脈圧35mmHg以上,安静時肺動脈平均圧25mmHg以上と定義される.本報告の目的は肺高血圧症を来す肺疾患の心電図所見について検討することである.  2000年から2005年までの6年間に施行された心臓超音波検査9785例の中から, 収縮期右室-右房間圧較差が35mmHg以上の肺高血圧を示した心疾患の既往のない肺疾患(肺結核後遺症,肺気腫,慢性気管支炎,気管支喘息,間質性肺炎,肺癌,肺血栓塞栓症)合併例100例(男性58例,女性42例)を肺高血圧群(以下PH群)とした.また対照として2004年から2006年の3年間に圧較差35mmHg以下の心疾患の既往のない肺疾患合併例91例(男性66例,女性25例)を非肺高血圧群(以下非PH群)とした.非PH群には肺血栓塞栓症は含まれていない. 統計学的検討はχ2検定とHabermanの残査分析を用い,1)PH群と非PH群の心電図所見の比較検討2)PH群における特定の肺疾患の合併による心電図所見の特徴の検討3)非PH群における特定の肺疾患の合併による心電図所見の特徴の検討を行った.   結果  1)PH群と非PH群の比較では,QRS電気軸の右軸偏位,V<SUB>1-3</SUB>のR波減高, 移行帯の時計方向回転,右心性P波(V<SUB>1-2</SUB>),陰性T波(_II_,_III_,aV<SUB>F</SUB>)および陰性T波( V<SUB>1-3 </SUB>)がPH群に多く認められた.  2)PH群の検討では,肺結核後遺症で右心性P波(V<SUB>1-2</SUB>)の所見が他の肺疾患と比較して多く,またP波電気軸の右軸偏位も有意ではないが頻度の高い傾向を示した.間質性肺炎ではV<SUB>1-3</SUB>の R波減高,P波電気軸の右軸偏位および右心性P波(V<SUB>1-2</SUB>)が,また肺血栓塞栓症では,陰性T波(V<SUB>1-3</SUB>)とS_I_Q_III_T_III_パターンが多く認められた.  3)非PH群の検討では,間質性肺炎で陰性T波(V<SUB>1-3</SUB>)が他の肺疾患と比較して多く認められた.  考察  原発性の心疾患による肺高血圧症も,肺疾患による二次性の肺高血圧症も,肺高血圧症を示す心電図所見は右室負荷・右室肥大が基本所見であるとされる.今回,QRS電気軸の右軸偏位,V<SUB>1-3</SUB>のR波減高,移行帯の時計方向回転),陰性T波(_II_,_III_,aV<SUB>F</SUB>),陰性T波(V<SUB>1-3</SUB>)および右心性P波(V<SUB>1-2</SUB>)がPH群では非PH群に対して多く認められ,二次的な肺高血圧症による右室負荷,右室肥大およびそれに伴う右房負荷を反映した心電図所見と考えられた.また,P波電気軸の右軸偏位と肺性P波(_II_,_III_,aV<SUB>F</SUB>)については,PH群,非PH群ともに高頻度に認められており,これらは肺疾患自体により高頻度に認められる右房の負荷所見と考えられた.肺疾患別の検討では,肺結核後遺症は呼吸不全の頻度が高いが, PH群において右心性P波(V<SUB>1-2</SUB>)が他の肺疾患と比較して多く,またP波電気軸の右軸偏位も頻度の高い傾向を示し,右心房への負荷状態の反映と考えられた.間質性肺炎は蜂巣肺や肺野の縮小が特徴とされるが,PH群においてV<SUB>1-3</SUB>R波減高とP波電気軸の右軸偏位が他の肺疾患と比較して多く認められ,間質性肺炎の病態は電気軸の回転や偏位に対する影響が大きいのではないかと推測された.また右房負荷への影響も大きいと考えられた.肺血栓塞栓症では右側の誘導での陰性T波とS_I_Q_III_T_III_パターンが多く認められ,急性の右心系圧負荷所見の反映と考えられた.
  • 福岡 俊彦, 高山 聡, 大野 智之
    セッションID: 1C12
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに  前立腺癌の肺転移は、剖検症例での検討では骨転移についで多いとされる一方、臨床的には頻度は低いとされる。今回咳嗽を主訴として来院し、これが契機となって転移性肺腫瘍が発見され、その原発が前立腺でかつ他部位に転移を認めなかった比較的まれな症例を経験したので報告する。  症例  症例 : 87歳 男性  主訴 : 咳嗽  既往歴 : 特になし 生活歴 : 喫煙なし 元アクセサリー販売業  現病歴 : 2006年3月下旬ころから感冒様症状が出現し近医受診した。近医で抗生剤、鎮咳剤が処方されたが軽快しないため当院受診された。 胸部レントゲン写真及びCTで複数の結節影、腫瘤影を認めたため精査目的で入院した。  入院時身体所見:意識清明 身長150cm 体重45kg 体温36.6℃ 血圧131/70mmHg 脈拍70/分整 SpO2 96%(室内気) 胸部、腹部特記すべきことなし 浮腫なし 排尿障害の自覚なし。  入院時検査所見 : 入院時調べた範囲内では特に大きな異常は認めなかった。  胸部レントゲン写真所見 : 複数の結節影と腫瘤影を認めた。  胸部CT所見: 複数の結節影と腫瘤影を認め、所見から転移性腫瘍を考えた。  腹部CT所見 : 前立腺外腺の濃染域が認められた。前立腺以外所見はなくリンパ節腫大も認められなかった。  骨シンチ: 特に所見なし  入院後経過:   咳嗽は短期間の鎮咳剤投与で軽快した。胸部CT所見から転移性肺腫瘍と診断した。腹部造影CTでは、前立腺外腺の濃染域が認められ、前立腺疾患が疑われたが、非特異的であり質的診断は困難とされた。排尿障害はなかった。腹部CTでは他に所見はなくリンパ節腫大も認められなかった。原発巣検索のための消化管検索は患者の同意が得られず断念し、肺腫瘍に対してCT下生検を行うことになった。CT下生検は胸壁に接している腫瘍に対して行った。肺腫瘍に対するCT下生検の病理像では免疫組織学的にPSAに対して陽性で前立腺癌の肺転移が疑われた。前立腺生検を行ったところ前立腺癌と診断され、前立腺癌とその肺転移と診断した。血清PSAを測定したところ66.765ng/ml(正常4ng/ml以下) と高値であることも判明した。以上を踏まえ泌尿器科に転科の方針となった。患者がしばらく受診せず、治療開始は5ヵ月後となったが、ホルモン療法でPSA値は低下し正常化した。また胸部病変も軽快した。  考察  前立腺癌の肺転移は、剖検症例での検討では骨転移についで多く、46%に肺内転移を、21%に胸膜転移を認めたとする文献がある。一方、臨床的には頻度は低く、初診時に胸腔内転移が存在する割合は5%以下であるとされる。また本例は他部位に転移が認められず、肺のみに認められている。肺転移があり、他部位に転移がないのは7.5%とされ、以上から本例はまれな症例であったと考えられる。治療はホルモン療法が効果的とされ、本例も胸部所見が軽快し、PSA値が正常化した。男性で転移性肺腫瘍をみたときに、原発を頻度の高い消化管のみならず前立腺の可能性を想起することは重要と考えられた。その際血清PSAのチェックは役立つと思われた。
  • 小松 良一, 田村 裕恵, 常山 聡, 久保田 芳正, 櫻井 宏治, 中西 京子, 井出 宏, 秋葉 裕二, 船井 哲雄
    セッションID: 1C13
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    <はじめに>
     近年、悪性中皮腫発生とアスベスト曝露の関連性が明らかとなり、わが国のアスベストの使用量を勘案すると本腫瘍の2030年までの増加が懸念される。初発症状は体腔液の貯留を認める例が約70%といわれており胸水・腹水などの細胞診断が重要視される。今回我々は、胸水細胞診が発見契機となった胸膜悪性中皮腫の2例を経験したので、その細胞所見・免疫染色所見を中心に報告する。
    <症例1>
    62歳男性、職業漁業、他院にて健診胸部XPで右胸水を指摘され精査目的にて当院受診となる。胸水細胞診にて、中皮細胞類似の異型細胞を多数認め悪性中皮腫または腺癌が疑われた。精査にて他臓器に所見はなく、胸腔鏡下肺生検となる。胸壁全域及び肺胸膜表面に白色結節を確認し、生検病理組織診断にて胸膜悪性中皮腫の所見であった。
    (細胞所見)
    乳頭状および平面的細胞集団を散見し、核円形中心性、核クロマチン細顆粒状増量、核小体肥大、細胞質はライトグリーン好染し、集団辺縁での不明瞭化が認められた。細胞相接像、対細胞を散見した。
    (免疫染色所見)
    中皮関連マ-カ-のcalretinin、CK5/6、HBME-1はいずれも陽性、腺癌マ-カ-関連のCEA、Ber-EP4は陰性を示した。
    <症例2>
     56歳男性、職業建築業、労作時の息切れを主訴に他院受診し、胸部XPで左胸水を指摘され当院受診。胸水細胞診にて悪性細胞を多数認め、腺癌よりも悪性中皮腫が疑われる。精査にて他臓器に所見はなく、胸腔鏡下肺生検施行となる。壁側胸膜にNodule多発を確認し、生検病理組織診断にて胸膜悪性中皮腫の所見であった。
    (細胞所見)
    核の密集する多数の球状および乳頭状細胞集団を散見し、核は均一円形、中心性、核クロマチン微細増量、核小体1個肥大を認めた。細胞質はライトグリーン好染性で集団辺縁での不明瞭化が認められた。また、細胞相接像、対細胞もともなった。
    (免疫染色所見)
    中皮関連マ-カ-のcalretinin、CK5/6、HBME-1はいずれも陽性、腺癌マ-カ-関連のCEA、Ber-EP4は陰性を示した。
    <考察>
     近年、悪性中皮腫細胞所見及びその免疫染色所見が多数解析され報告されてきているが未だ、体腔液中に出現する悪性中皮腫と腺癌及び反応性中皮細胞との鑑別に確立した手法はなく、診断に苦慮する現状である。当院で経験した2症例においての悪性中皮腫を疑う細胞学的所見は 1)集団を形成する個々の核が円形均一で中心性に位置 2)核クロマチン増量と核小体肥大 3)細胞質がライトグリ-ンに好染 4)微絨毛発達による細胞質辺縁不明瞭化 5)細胞相接像、対細胞の存在であった。また、免疫染色所性見ではcalretinin・CK5/6・HBME-1陽性、CEA・Ber-EP4陰性であり、これらの抗体の組み合わせが鑑別診断に役立った。
    <まとめ>
      今後、悪性中皮腫の急増が予測され、その早期診断のためにも体腔液の細胞診断は重要である。細胞像の詳細観察により中皮腫が疑われる場合は積極的な免疫染色の追加が肝要と考えられた。
  • 石井 梨絵
    セッションID: 1C14
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    症例は54歳男性。主訴は発熱、喀痰、咳嗽で、胸部X線と胸部CTにて肺癌が疑われた。経気管支鏡下肺生検を施行し、悪性黒色腫と診断された。原発巣と考えられる皮膚病変は発見できず、診断時には多発転移をきたしており、現在化学療法を施行している。 悪性黒色腫は皮膚を原発とすることが非常に多いが、まれに粘膜や眼や肺に発生することがある。今回呼吸器症状を呈して発見された悪性黒色腫を経験したので報告する。 悪性黒色腫は皮膚原発のことが非常に多いが、この症例では原発を疑うような明らかな皮膚病変は認められなかった。腹部CT、腹部エコーにて多発肝転移、腹腔内リンパ節転移、腹膜播種、胸膜播種を認め、stage_IV_の診断となった。10月13日より化学療法を開始し、現在までで3クール施行しているが、腫瘍は増大してきている。悪性黒色腫は病期が進行していない場合は手術療法が第一選択であるが、遠隔転移を生じた場合は手術療法の適応はなく全身化学療法が治療の主体となる。現在のところfirst choiceとしてはダカルバジン、塩酸ニムスチン、ビンクリスチンによるDAV療法もしくは、ダカルバジンのかわりにペプロマイシンを使用するPAP療法が行われている。これらの化学療法の奏功率は部分緩解を含めて2~3割程度と言われている。 悪性黒色腫はメラニン色素を産生する細胞であるメラノサイト由来の腫瘍である。メラノサイトは皮膚、眼、中枢神経系などに分布し、悪性黒色腫の原発部位としては皮膚や眼球が多い。肺原発の悪性黒色腫は非常にまれで、肺腫瘍全体の約0.01%ほどと言われているが、その反面肺は皮膚や眼球原発の悪性黒色腫の転移の好発部位であり、肺原発の悪性黒色腫と診断するには慎重な検討が必要である。(肺原発の悪性黒色腫の診断基準としては_丸1_単発性の肺腫瘍であること _丸2_肺門に近い病変であること _丸3_皮膚や粘膜、眼球などに加療もしくは切除の既往がないこと _丸4_免疫染色あるいは電顕による悪性黒色腫の確定診断 _丸5_剖検にて他の部位に原発病変を認めないこと等が挙げられる)肺原発の悪性黒色腫の特徴としては、中枢気道に原発することが多く、気管支鏡では中枢気道に突出するポリープ状の腫瘍を認める。 この症例は肺原発の悪性黒色腫の特徴と類似しており、肺原発の可能性が考えられた。悪性黒色腫は非常に転移を来しやすく予後は不良である(悪性黒色腫の予後は、遠隔転移のあるものでは平均生存期間1~2年ほどといわれている。Stage_IV_の5年生存率は0%)。早期発見できれば外科的切除が可能なこともあるため、気管支内腔にポリープ状に発育する腫瘍として、非常に稀ではあるが鑑別診断として考えておく必要がある。
  •  ~最近2年間の症例から~
    渡 正伸, 熊谷 元
    セッションID: 1C15
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉近年、肺癌は日本における癌死亡原因の第1位となっている。肺癌の発生率が増加していることが大きな要因だが、肺癌が早期発見しにくく、また根治性が低いことも死亡率の増加に深く関係している。肺癌の治療成績を向上させるためには早期に診断を行ない、治療を行なうことが必要である。しかしながら、多くの肺癌患者は根治術不能の進行癌の状態で発見されることが多いのが現状であり、無症状かつ早期の肺癌患者は検診を受けたり、偶発的に診断される機会がないかぎり、発見困難と言える。  そこで、当院における肺癌患者の受診経緯と進行度を分析し、根治術可能な早期肺癌患者を数多く発見していくための手がかりについて考察する。 〈方法〉最近2年間(2005年1月~2006年12月) に当院、呼吸器外科、呼吸器内科で入院加療を受けた肺癌患者について検討した。2年間の肺癌患者は合計214人で男性152人、女性62人。平均年齢は73.5才で男性75.2  才、女性69.3才であった。根治術を受けた患者は74人でその内、手術単独であった患者は56人、術前術後に他の治療法も行なって集学的治療を実施した患者は18人であった。根治術を受けなかった患者は140人で、化学療法単独の患者は60人、放射線治療単独の患者は16人で、集学的治療を受けた患者は54人、経過観察および緩和治療のみの患者は10人であった。  根治術を受けた群(Op+) と根治術を受けなかった群(Op-) について、肺癌診断時における症状の有無、検診で発見されたか否か、病期、病理組織について検討した(表1)。 〈結果〉すべての肺癌患者中、根治術を施行できた患者は74人で34.5%であった。 (Op+)群では66人、89.1%が診断時無症状であったが、(Op-)群では8人、5.7%が無症状に過ぎなかった。 (Op+)群では34人、45.9%が検診で発見されているが、(Op-)群では4人、2.8%が検診で発見されているだけであった。 〈考察〉肺癌患者の平均年齢は73.5才で、(Op+)群では72.1才、(Op-)群では74.2才で両群間に有意差は認めなかった。全肺癌患者中で根治術を受けた患者は34.5%に留まった。また根治術を受けた患者はそのほとんどは無症状で発見動機は検診か偶発的に発見されていた。根治術を受けなかった患者では検診で発見された者は2.8%と僅かであった。  当院近隣において、根治術可能な肺癌患者をより多く発見するためには、より多くの人に検診を受けてもらうことが必要で、肺癌患者の年齢を考慮すると60才台、70才以上の人は特に受診すべきと考えられた。
  • 山本 真, 山口 葉子, 渋江 寧, 泉 寛志, 高村 圭, 高橋 聡貴, 吉川 隆志
    セッションID: 1C16
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    当科における睡眠時無呼吸症候群(SAS)の臨床と簡易睡眠モニターの意義について 背景;SASの診断の補助として咽頭呼吸音、鼻、口での気流チェック、経皮酸素飽和度などの項目で終夜スクリーニングをすることが広く行われている。当科でもこの簡易睡眠モニターを使用しスクリーニングを施行、その後夜間睡眠ポリソムノグラム(PSG)で診断し経鼻持続陽圧療法(nCPAP)を導入、治療をしている。しかしながら最近ではPSGの代用として簡易モニターで十分であるとの意見もある。もっとも重症のSASの診断は十分可能であるが、臨床症状は強いが無呼吸(低呼吸)指数(A(H)I)が10前後の軽症例では治療の要否の判断が難しいこと、また生体に悪影響を及ぼす酸素飽和度低下の指数(一時間あたりの3%を超える酸素飽和度低下の回数:DI)やその最低値(lowestSpO2)などの意義つけがいまだあいまいである。 目的;当科における睡眠時無呼吸症候群の臨床の現状を解析すること。次に汎用されている簡易睡眠モニターのデータを検討し、SAS診療での新たな位置付けを模索すること。 対象と方法;対象は2002.7-以降SAS検査目的で簡易睡眠モニター(アプノモニターII,III:チェスト社製)検査を受けた432例 方法は簡易睡眠モニター施行後SAS患者のプロフィールの分析、その後CPAP導入例、非治療例で簡易モニターのデータ項目の解析を施行した。 結果;432例中AHI>5の症例は295例(68%)うち男性250例、年齢中央値51歳(7歳-84歳なお20歳以下は5例)。症状については他者からの無呼吸の指摘が最も多く200例(68%)、次にいびき183例(62%)また昼間のひどい眠気は133例(45%)であった。交通事故の症例は8例(3%)であった。睡眠時無呼吸症候群の患者の当科への受診契機は179例(61%)が他院、他科紹介で内訳は内科(神経内科からの26例を含んで)99例、耳鼻科51例であった。SAS症例では体重分布は平均55kgで90kg<54例(18%)、80kg<102例(35%)、BMIの平均は27.4±5.5SDで30<の高度肥満者は78例であった。PSGでAHIが15以上の中等症で原則CPAPを導入したが導入症例は141例であった。nCPAP症例では91例(65%)が閉塞型優位であった。15例(11%)中枢型優位であり、混合型優位は26例(18%)であった。合併症として42例に高血圧(30%)、15例(11%)に糖尿病を認めた。 nCPAP導入例、非治療例の簡易モニター項目の比較ではAIは平均30.7±SD19.1と21.5±15.9(p<0.01)当然有意差があるものの非治療例で平均値が21と15以上の結果であった。またDIは31.7±24.6と12.9±14.8(p<0.01)とやはり有意であった。さらに lowestSpO2でも67.7±14.8と77.5±12.7(p<0.01)と有意であった。以上より簡易モニターの測定項目のみでも(AI、DI, lowestの組み合わせで)ある患者群ではnCPAPの加療開始が可能であると考えられた。
  • 小澤 佳広, 亀井 佐知, 楠葉 藍子, 大野 和也, 渡辺 耐, 豊嶋 敏弘, 稲葉 宏, 半田 満里子, 山本 幹夫, 松永 勇人
    セッションID: 1C17
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉日本人成人の気管支喘息有病率は約3-4%と報告されている。一方、日常の外来で高齢になってから発症した気管支喘息の患者を診察することもまれではない。無症状の健康診断や人間ドック受診者の中に閉塞性肺機能障害を持つ人が少なからずみられるが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や塵肺などの職業性肺疾患で説明不可能な症例も多い。これらの多くは自覚症状のない気管支喘息の可能性がある。 〈方法・対象〉当院の健康診断・人間ドックを受診し呼吸機能検査を施行された者のうち、FEV1%<70を満たし且つF-Vカーブが閉塞性肺機能障害として矛盾しないものを外来受診とした。喫煙歴の有無、職業歴の詳細な聴取と胸部レ線よりCOPD、塵肺などの職業性肺疾患が否定的であった症例8名に診断的治療を行った。混合性肺機能障害例や関節リウマチ等に合併する閉塞性細気管支炎、明らかなびまん性汎細気管支炎等の閉塞性肺機能障害例も除外した。 年齢は30歳から74歳、男性5名、女性3名で、うち4名に小児喘息の既往があった。 受診時のFEV1%は44~65%で日本呼吸器学会の重症度分類では軽症から中等症の症例であった。 治療はロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)のみ1例、LTRA+長時間作用型β2刺激薬もしくは貼付型β2刺激薬(併せてLABAと略)1例、ステロイド吸入薬(ICS)のみ1例、ICS+LTRA1例、他4例はICS+LTRA+LABAであった。 〈結果・考察〉症状の訴えのない症例でも病歴の詳細な聴取から、小児喘息の既往が判明したりmorning dipを疑わせる朝の重苦しさや痰の喀出を自覚している症例が多かった。治療を統一してのstudyではないが通常の気管支喘息治療に対し全ての症例でFEV1の改善がみられた。うち4例では20%以上の改善がみられたが、治療の内訳はLTRAのみ1例、ICS+LTRA1例、ICS+LTRA+LABA2例であった。自覚症状の劇的な改善は1例で認められたが他症例ではみられなかった。 またFEV1改善後に再度悪化する症例や、他薬内服の為これらの薬剤を中止してしまう症例もあり、有症の気管支喘息と同様に患者教育が必要と感じられた。 奏効しなかった症例もFEV1はわずかだが全例改善しており、その中には著明にFVCの改善している例もあり、気道のremodelingの起こった慢性喘息の可能性を考慮し服薬を継続している。 以上より、1.治療で利益の得られる気管支喘息症例が潜在的に少なからず存在し、2.健康診断時の呼吸機能検査は、詳細な病歴聴取と組み合わせることでそのスクリーニングとして有用である、と判断した。 文献的考察を含め報告する。
  • 西脇 伸二, 河口 順二, 川出 尚史, 岩下 雅秀, 田上 真, 畠山 啓朗, 林 隆夫, 前田 晃男, 齋藤 公志郎
    セッションID: 1C18
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    目的:経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)は、経口摂取困難な症例の長期栄養補給路として広く普及している。しかし、胃手術後のためPEGが不能である場合や、PEG施行後嘔吐や誤嚥のため使用できない場合がある。我々は、それらの症例に対し経皮内視鏡的空腸瘻造設術(D-PEJ)を施行してきた。D-PEJの造設手技や管理上の問題点について報告する。
    方法:当院において平成16年5月より平成19年1月までに造設を試みたD-PEJ38例(平均年齢82.6±7.6歳、男17例、女21例)を対象とした。造設成功率、失敗の原因、合併症について検討した。またD-PEJ症例の長期管理における血中微量元素(Fe, Cu, Zn, Se)およびビタミン濃度(ビタミンA, B12, E)についてPEG症例と比較検討した。
    結果:38例の症例に対し、延べ40回のD-PEJを施行し、37例の造設に成功した。造設失敗例は施行中空腸が大きく移動して造設できなかった1例であった。また、2例では初回は適切な造設部位が見いだせず造設できなかったが、再施行にて造設し得た。造設手技に関連した合併症として、誤嚥性肺炎、皮下血腫、結腸誤穿刺、瘻孔感染、気腹、上腸管膜症候群を各1例ずつ認めた。慢性期の合併症として瘻孔周囲炎7例、誤嚥性肺炎6例、下痢4例、嘔吐3例を認めた。長期管理症例における微量元素およびビタミン濃度を表1に示す。D-PEJ群において血清銅および亜鉛濃度が有意に低値を示した。
    考案:D-PEJもPEGと同様に、ほとんどの症例で造設可能であった。合併症の中では瘻孔周囲炎の頻度が高く、腸液や膵液の漏出による皮膚炎が原因と考えられた。D-PEJでも胃液などの嘔吐や誤嚥をきたし、胃液の排液を必要とする症例も認められた。また、長期栄養の問題として銅や亜鉛が低下する傾向にあり、それらの欠乏症状に注意する必要があると思われた。
    結語:D-PEJはPEGと同様に施行可能である。造設後の管理は若干の工夫を要する。
  • ~ガムの咀嚼運動を取り入れて~
    山井 麻衣子, 寺田 優, 大野 公子, 千葉 一美
    セッションID: 1C19
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに〉消化管手術後の腸管運動促進はイレウス予防に重要である。当科では初回排ガスが72~96時間と遅延傾向にある。私達は、ガム咀嚼が術後の腸管運動促進に効果があることを知り、当科の消化管手術後の患者にも検討が可能ではないかと考えこの研究に取り組んだ。 (研究方法) 目的:ガム咀嚼が消化管手術後患者の腸管運動促進に有効か明らかにする 期間:平成18年8月1日~12月31日 対象:誤飲する危険がない、理解力のある消化管手術を受けた患者 方法:術前にガムを噛むことに対して説明・同意を得られた患者で、術後1日目より水分開始まで、1日3回5分以上ガムを噛んでもらい、初回排ガス・排便時知らせてもらう。その後アンケート調査。 〈結果〉症例数13例のうち5例は調査途中での中断となった。8例の平均時間は76.8時間。アンケートでは咀嚼の回数、時間、味、共に適当で、爽快感が得られたと回答があった。他に、初めてガムを噛んだ、食事変わりになって時間の意識が出来て良かったなどの意見が寄せられた。 (考察)現段階では、症例数も少なく、効果的か判断するには至らなかった。しかし、アンケートの中で、爽快感を得た人が87.5%いた。これはガム咀嚼による神経活動によるものと考える。石山は、「咀嚼を行うことで感覚入力し脳を刺激すると、一時的に交感神経を亢進させるが、運動を休止させると、自律神経の相反支配により副交感神経が優位に作用する。」と述べている。その結果、ガム咀嚼後は精神的にもリラックス状態になる。アンケートの中で爽快感を得た人が87.5%となったのはこのことからと考える。味についてはミント味レモン味で行ったがレモン味の方が好まれる傾向にあった。一般的には柑橘系の香りには、リラクゼーション効果があると言われている。一回の咀嚼時間はもともとガムを噛む習慣のある人には苦痛はなかったが、初めて噛む人・痛み・嘔気のある人には苦痛だったようだ。今回の取り組み以降、消化管手術後の腸管運動促進の援助にガムを取り入れているが、好みの味で苦痛のない範囲で行っている。術後の禁飲食の続く中、認知症のある患者には食事代わりで時間の意識が出来て良いなどの意見も聞かれた。術後は痛みの為に口腔内の清潔・離床も、ときには後回しになりがちである。咀嚼運動による唾液分泌は、口腔内の乾燥・感染予防にも繋がったと思われる。今回、ガム咀嚼を取り入れることで、ギャッチアップがスムーズに進む手ごたえがあった。これは早期離床への援助効果があったと考えられる。 (まとめ)1.ガム咀嚼は排ガス促進に明らかな効果は認められなかった。2.ガム咀嚼は爽快感が得られる。3.早期離床への援助効果があった。 (おわり)今回の研究では症例数も少なく、ガム咀嚼が腸管運動促進に効果があるかを判断できるまでに至らなかった。しかし、方法、対象などを検討し、今後も追跡していこうと思う。
  • 鈴木 智子
    セッションID: 1C20
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は58歳男性。上腹部痛を主訴に搬送された。造影CTで多量の後腹膜血腫と上腸間膜動脈からの分枝に連続する動脈瘤を認め、SAM(Segmental arterisl mediolysis)を疑い腹部血管造影を行い、塞栓術を施行した。術後は経過良好で退院し現在外来通院中である。今回、SAMに対しTAEが有効であった腹腔内出血症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。 SAM(Segmental arterial mediolysis)という概念は腹部内臓動脈瘤の成因として、近年注目されている。   もとは1949年にGruenwaldらが新生児の冠動脈疾患において、腹部領域の動脈においてSegmental arterial mediolysisに改めた。  SAMは、非炎症性、非動脈硬化性の病態であり、動脈壁中膜の融解、血管壁変性により、さまざまな臨床像を来たす。その疫学の関しては不明な点が多く、自己免疫性の疾患であるとする説やカテコラミンなどの血管作動性物質による血管攣縮が原因であるとする説などが言われたが、最近は罹患血管の分布、外観上からfibromuscular dysplasia(FMD)の前駆病変であるとする説が有力である。現在までに報告例は少なく、まれな疾患である。その報告例はほとんど成人の腹部症例であり、中年に多く、性差はないとされる。また、複数の動脈領域に多発性に動脈瘤を認めたという報告が多い(約30%)。こうした事実よりSAMにたいしては瘤の多発を念頭に置き、破裂動脈領域に限らず、より広範な腹部内臓動脈領域の検索が重要であると考えられている。しかし出血前に発見することはきわめて困難である。治療法としてIVR(interventional radiology)は診断に引き続き行える低侵襲な治療法であり、有用性は高い。しかしIVRで止血困難な例は手術が必要である。
  • 平澤 みゆき, 小山 美穂, 関 広恵, 細谷 美江子, 松永 友子
    セッションID: 1C21
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    当病棟において、開腹手術後の患者は、早期離床を目的とし、1病日に持続導尿カテーテル(以下フォーレとする)を抜去していた。しかし、過去一年間の94名の手術患者のうち、38%の患者が一過性の排尿障害と判断され処置を受けていた。 今回看護記録や看護師へのインタビューの中から術後の排尿に関する情報を分析した所、患者の状態やアセスメントが不足していたことが明らかになった。安易にフォーレを再挿入することは、患者にとって身体的、精神的に重大なストレスとなり、感染のリスクも相まって手術後の患者の回復を遅らせる要因となる。 そこで明らかになった問題点を基に術後の排尿ケアのアルゴリズムを作成し、13例の症例に使用した。その結果、以下のような事が分かった。 _丸1_ 術後一過性の排尿障害を起こした患者の要因調査を行った _丸2_ 男性患者、硬膜外PCAなどとの一定の相関は見られたが、はっきりとした根拠は得られなかった _丸3_ 記録面から看護師のアセスメント不足が明らかになった _丸4_ 排尿ケアアルゴリズムを用いケアを行った結果、硬膜外PCA挿入中に自排尿がみられた患者は13人中12人であり、硬膜外PCAが必ずしも排尿機能に影響しないと考えられる _丸5_ 今回の研究では、アルゴリズム使用症例数が少ないため、今後のデータ集積が必要である _丸6_ _丸5_と同様に、術後一過性の排尿障害に関する要因分析のデータを集積していく必要がある  今回の研究を通じて、開腹術後の一過性の排尿障害に関し看護師の見識を統一することで、患者に与える苦痛を少なくし、スムーズな自排尿への排尿ケアを方向付けることができた。術後の一過性の排尿障害に関しては先行研究が少なく、薬剤との関連のデータも不足している。 今後更にデータを集積し、アルゴリズムを変更していくことで、術後ケアの改善に努めていきたい。また今回の気づきに限らず排尿ケアに留まらないより良い術後看護を目指していきたい。
  • 高木 理光, 橋本 英久, 平松 達, 高橋 尚宏, 亀井 靖, 中西 茂樹
    セッションID: 1C22
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉従来より、急性腹症における超音波検査の有用性が多数報告されている。中でも消化管疾患における超音波検査の有用性についての報告は近年よく目にするところである。当院においても最近2年間の急性腹症の超音波検査時における消化管疾患の割合は約77%にのぼる。また消化管症状のない腹部超音波検査において偶発的に消化管疾患が見つかった症例が全消化管疾患件数の23%を占める。消化管超音波検査のうち疾患別に表すと、悪性腫瘍が11%、腸閉塞10%、炎症性疾患55%、その他24%である。 今回我々は急性腹症にて超音波検査を施行した際に上腸間膜動脈症候群を経験したので、数例の消化管症例をまじえながら報告する。 〈症例〉13歳、女性。身長156.4cm、体重43.9kg。嘔吐、腹痛を主訴に近医受診。投薬されるが症状は改善されず精査目的にて発症より2日後、当院受診となる。入院時検査成績は特記すべきことなし。KT=36.7℃で心窩部痛の訴えと嘔吐が続いていた。入院後CT検査所見は胃~十二指腸にかけての著名な拡張を認めた。原因不明のため腹部超音波検査を施行した。超音波検査使用装置:ALOKA社製 Pro-sound SSD-5500。使用プローブ:コンベックス型2.5~5.0MHz(可変式)である。腹部超音波検査において、著明な胃拡張および十二指腸水平部まで拡張を認め、それより肛側の小腸の拡張は認めなかった。左腎静脈の拡張をも認め、体位変換による変動も認めなかった。以上の所見より上腸間膜動脈症候群を疑い、減圧目的で胃管を挿入留置し排液を行なった。徐々に症状が軽快した4日後、再度腹部超音波検査を施行したところ腹部大動脈と上腸間膜動脈の間を通る十二指腸水平部を蠕動が伝わらず、ここより口側がto&fro状態になっており左腎静脈の拡張も認めた。翌日、腹部症状も消失したため、胃管より十二指腸造影を行い、造影剤のスムーズな通過と、正常な蠕動を認めたため胃管は抜去され退院となった。 上腸間膜動脈症候群とは、上腸間膜動脈と腹部大動脈や脊椎の間にて十二指腸水平部が圧排され通過障害を引き起こす疾患であり、発生機序として、大動脈からの上腸間膜動脈の分岐角度の狭小化や内臓下垂が挙げられる。その誘因としては体重減少、仰臥位での長期臥床、円背などが挙げられる。 急激に発症し嘔吐と腹痛を呈する比較的まれである急性型と、間歇的に食後の腹部膨満感や嘔気、嘔吐を呈し徐々に体重が減少する慢性型に分けられる。 治療は保存的治療が主流で、再発を繰り返す場合は手術適応となることもある。 本症例において超音波検査を施行することで十二指腸狭窄部の周囲組織との位置関係や、十二指腸水平部の壁の状態、蠕動の伝わり方など得られる情報が多くあった。 今回経験した症例は若年女性に発症した急性型の上腸間膜動脈症候群であり稀な症例であった。 〈結語〉上腸間膜動脈症候群をはじめとする、急性腹症の診断には非侵襲的で周囲臓器との位置関係を、ならびに周囲への炎症波及の程度を経時的な観察が可能である。消化管超音波検査は急性腹症の診断において非常に有用である。
  • 岩井 信策, 荒木  正雄, 林 幹人, 山縣 仁, 山口 雅代, 三橋 淳, 高野 靖悟
    セッションID: 1C23
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は62歳男性。近医での血液検査にて貧血を指摘されたため、大腸の精査目的で当院消化器内科を受診した。下部消化管内視鏡を施行し、直腸の正常粘膜に食い込んでいる白色調で糸状の虫体を認めた。鉗子にて虫体を摘出し、顕微鏡検査によってアニサキスと診断した。虫体摘出後の問診で、内視鏡検査3日前にタコとカツオの生食をしていたことがわかった。〈BR〉 海産魚類を生で摂取する習慣がある本邦において、消化管アニサキス症は比較的高頻度にみられる寄生虫疾患である。原因幼虫はAnisakis simplex、Anisakis physeteris、Pseudoterranova decipiensの3種ある。寄生魚類はサバ、イカ、アンコウ、サケ、タラ、マス、ニシン、イワシ 、サンマ、アジ、カツオと多種にわたる。年間発生症例は2000~3000例と推定され、発生時期12~3月に多く、7~9月に少ない。〈BR〉 アニサキスの成虫は、終宿主であるイルカ、クジラ、オットセイなどの胃壁に寄生し、虫卵が糞便と共に海中へ排出される。海中で孵化して第二期幼虫まで成長し、中間宿主であるオキアミに摂取される。オキアミの体内で第三期幼虫まで成長し、サバやイカがこのオキアミを摂取する。これらが終宿主に食べられると成虫にまで成長するが、ヒトに食べられると成虫にはなれずに第四期幼虫となり、胃壁や腸壁に侵入して激しい腹痛をおこす。〈BR〉 病型は胃アニサキス症、腸アニサキス症、腸管外アニサキス症(肺、肝、皮下等)の三つに分類され、大部分は胃アニサキス症が占める。発症様式には緩和型と劇症型がある。初感染時の虫体の刺入による刺激で発症する緩和型と、感作後の再感染によるアレルギー反応で発症する激症型に分類されるが、腸アニサキスは激症型が多い。_I_型アレルギーによりIgE抗体価が上昇し、_III_型アレルギーによりIgG抗体価が上昇する為、抗体価が陽性であれば診断の補助となり有用である。魚類の生食の機会が多い地域では健常者のIgE抗体陽性率が高い事や、発症早期は上昇しない事などから、急性期における抗体価測定による診断は事実上困難との考えもある。〈BR〉 根本治療は内視鏡下に幼虫を摘出する事以外には無いが、60℃1分以上又は-20℃24時間以上で死滅する為、予防は可能である。〈BR〉 寄生部位の多くは胃であり、下部消化管は0.5%に過ぎず、中でも大腸はさらに希少である。内視鏡検査によって虫体を摘出できた大腸アニサキス症の本邦報告例は、23年間(1983年~2005年)で39例のみであった。直腸はわずか3例で、無症状例は8例と少ない。腹痛や下痢などの消化器症状が、消化管アニサキス症を診断する際の手がかりとなり、消化管内視鏡を施行して診断確定となる症例が多い。直腸のアニサキス症は極めて稀な疾患で、無症状のまま偶然発見された貴重な症例であったので、若干の文献的考察を加味し報告する。
  • 池野 知佳, 吉澤 奈津子, 石黒 康浩, 三橋 淳, 荒木 正雄, 篠 美和, 河野 悟, 高野 靖悟
    セッションID: 1C24
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     症例は63才男性。2年前から糖尿病があり、また憩室出血の既往がある。入院2日前より下血、下腹部痛を認めており経過をみていたが症状が改善しないため当院救急部を受診した。受診時Hb7.8mg/dlと貧血を認め、タール便が続いていることから消化管出血を疑い入院となった。入院後禁飲食、輸血4単位施行とし経過みるも黒色便を認めるため、第2病日に上部消化管内視鏡検査を施行したが、明らかな出血源は認められなかった。同日夜間に気分不快を訴え、1200ml程度の下血を認め血圧70mmHg台まで低下し出血性ショックとなった。輸血6単位、アルブミン製剤など使用し緊急で下部消化管内視鏡検査を施行した。全結腸に憩室が多発しており一つ一つ確認するも、明らかな出血源は認められなかった。回腸終末部の観察では口側からの血液の流出が認められたため小腸出血が疑われた。出血源の確認と止血のために腹部血管造影を施行した。上腸間膜動脈領域からの出血を疑い同血管及びその分枝の選択的造影を繰り返すも明らかな出血源を認めなかった。塞栓術の施行は行わず終了とし経過観察となった。しかし同日夜間に再度1000ml程度の下血を認めたため、再度下部消化管内視鏡検査を施行した。回腸終末部には血液の貯留を認めず、上行結腸の憩室の一つより拍動性の出血を認め出血源と診断した。クリッピング、ボスミン散布、局注するも完全には止血できず再度出血する可能性もあるため右半結腸切除術を施行となった。<BR>  一般的に憩室出血は良性疾患のため治療方針に迷うことが多いが、多くは禁食による腸管安静や止血薬投与により自然止血する。最近では積極的に緊急下部消化管内視鏡検査が行われ内視鏡的止血術が成果を挙げている。しかし大腸憩室出血は出血量が比較的多く、出血性ショックをきたす症例もある。また出血源の特定が難しく、かつ出血を繰り返すことが多い。大量出血で循環動態が安定せず内視鏡的治療が困難な症例では、緊急腹部血管造影を施行し出血部位の同定ができれば、引き続き血管塞栓術を施行する。憩室穿孔による汎発性腹膜炎症例や大量出血が持続する憩室出血症例では、敗血症や出血性ショックを併発するため内科的治療に固執せず、緊急手術を選択することが重要である。今回出血性ショックとなるほどの出血を繰り返すも下部消化管内視鏡、血管造影にて出血部位の特定、止血が難しく、外科手術を余儀なくされた大腸憩室出血の症例を経験したので報告する。
  • 藤澤 大輔, 河野   悟, 藤平 大介, 小池  卓也, 乗松  東吾, 大屋  喜章, 篠   美和, 吉田  徹, 田中 知博, 風間 ...
    セッションID: 1C25
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は23歳女性。主訴は腹部膨満。生後より日大駿河台病院小児科に糖原病_I_型と診断され通院加療していた。平成7年腹部超音波検査にて肝内に腫瘤を認めるも経過観察していた。就職後、食事療法のコンプライアンス不良となり、また、平成15年右季肋部に腫瘤を触知するようになったため精査したところ多発する肝腫瘍の増大を認め、平成19年1月18日、肝腫瘍切除目的で、紹介入院となった。糖原病に合併した肝腫瘍では腫瘍からの出血や悪性化が報告されており、肝切除術は相対的適応となっており、平成19年1月19日肝拡大右葉切除術とラジオ波焼却術を施行した。手術時間は6時間5分。出血量1800ml。術後経過良好であり術後12日目(平成19年2月3日)退院となった。肝重量は(2480g)で、割面では最大径約13cmの結節を認め、内部に出血、壊死がみられた。他にも多数の結節を認めた。組織学的には線維性の被膜を有し、やや大型の細胞が索状に配列しており、核の大小不同が見られるが、異型性は目立たなかった。細胞質は淡明で泡沫状、脂肪変性も著明であった。_I_型糖原病,von Gierke病とは、 (概念)グリコーゲンからグルコースへ分解過程で使用されるglucose-6-phosphatase の活性低下によって肝臓や腎臓に多量のグリコーゲンが蓄積する常染色体劣性遺伝の遺伝病である。(頻度)1964年~1996年まで報告された国内発症例は300例。その内、_I_型糖原病は39%である。肝腺腫の合併は比較的高率だが、悪性腫瘍の報告は18例である。(症状)低血糖発作 肝腫大 低身長 鼻出血 。(治療 ) 食事療法。腫瘍からの出血や悪性化が報告されており、肝切除術は相対的適応となっている。(予後)長期予後良好で最大の予後決定因子は、腎障害であり、死因の大半は腎不全である。今回 我々は糖原病に合併した巨大な多発性肝腫瘍の一切除例を経験したので報告する。
  • 矢野 一郎
    セッションID: 1D01
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    小児気管支喘息のガイドラインにより、吸入ステロイドが普及してきており、患児のQOLは改善してきているといわれています。しかし、救急外来では気管支喘息発作は重要な疾患であり、外来処置にて改善がなければ、当然ながら、入院の必要がある疾患であることには変わりありません。そこで、今回、その現状を把握するため、平成17年度に喘息発作などのより、当院の時間外外来受診した喘息および喘息性気管支炎の症例を報告します。当院の平成17年度の外来受診数を示します。やはり、かぜが流行る12月、1月が受診回数が多かったようです。総時間外外来受診数は1023回で、喘息および喘息性気管支炎は70回で、占める割合は6.8%でした。平均年齢は4.1歳でした。平成17年度に当院に受診している気管支喘息は613例で時間外受診例の割合は8%、喘息性気管支炎は177例で時間外受診の割合は4%でした。月別では10月が12回と最も多く、5月、12月にも10回認められました。 月別に総受診数に占める割合を示します。やはり、10月に喘息の受診率が多く認められました。年齢では4歳にピークがありました。6歳未満で77%、乳児喘息といわれる2歳未満では、24%でした。家族の不安もあり、低年齢の受診が多い傾向が認められました。喘息発作の誘引ではいわゆる、上気道炎によるものがほぼ半分の52%認められました。RS感染症、これは喘息性気管支炎として取り上げているものの中に見られました。肺炎、インフルエンザ、運動会に行ってという者も認められました。しかし、「誘引なし」というものも32%に認められました。外来での対応は吸入のみは42%、吸入+ネオフィリン点滴が27%、吸入+ネオフィリン、ステロイド点滴が31%でした。 入院となったものは全部で21人(30%)でした。入院した患児を年齢別に示したものです。1歳が5例で最も多く、6歳未満では総入院数の71%、2歳未満では33%に認められました。やはり、低年齢の入院が目立ちました。 まとめ 1. 当院における平成17年度の時間外外来受診数は1023回で、喘息および喘息性気管支炎の受診数は70回で6.8%でした。 2. 受診数は10月に12回と最も多く、5月、12月が10回でそれに次ぎました。 3. 受診年齢は6歳未満で全体の77%、2歳未満で全体の24%、入院年齢は6歳未満で全体の71%、2歳未満で全体の33%でした。低年齢の受診が多いのは家族の不安が強いこと、症状の進展も早いことなどのためと思われた。 4. 発作の誘発は上気道炎が52%と最も多く認められました。しかし、誘引がないものも32%認められ、発作の出現に注意が必要である。 5. 時間外受診後、入院した症例では、コンプライアンスが悪かった症例、長期管理治療が不十分であった症例が認められました。 6. 一人当たりの受診回数はほとんどが1回であった。しかし、6回の症例も1例あり、個々の管理は重要であると思われました。
  • 佐々木 明
    セッションID: 1D02
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉脳下垂体および周辺の疾患は原因別に腫瘍、結核、真菌などによる感染症、サルコイドーシス、ランゲルハンス組織球症、外傷、または分娩障害による下垂体柄断裂等が挙げられてきた。病変の及ぶ範囲により下垂体前葉、後葉ホルモンのさまざまな欠落症状を伴う。近年、画像診断技術の進歩により従来特発性とされてきたものの中に下垂体周辺の新しい慢性炎症性疾患が存在することが明らかになってきた。小児では器質性疾患を除くと成長ホルモン(GH)分泌障害と中枢性尿崩症が併存するケースの報告はきわめて少ないが、今回両者を合併しMRIで下垂体柄の肥厚を認めた壊死性漏斗下垂炎(necrotizing infundibulohypophysitis;NIH)と思われる症例を経験したので報告する。 〈症例〉11歳男児 正常満期産、生下時体重3150g 身長48.5cm、仮死なし。4歳頃から身長の伸びが鈍化、6歳頃から顕著となり7歳で-2SDを下回った。また6歳頃から毎晩夜尿症が見られた。初診時身長123.2cm(-2.8SD)、体重は26.9kg(-1.3SD)。外表奇形はなく二次性徴発現もなし。精神発達、運動能力は正常である。1日の尿量は4000mlに及ぶ。骨年齢は9歳6ヶ月相当。ドパゾール、アルギニン負荷によるGH分泌刺激試験で著明な分泌不全を、また水制限試験、ピトレッシン試験により中枢性尿崩症を認める。頭部X-P、CTでトルコ鞍、鞍上部に異常なし。髄液検査、視野検査は正常。MRIのT1強調画像にて下垂体柄の肥厚が見られた。 〈経過〉抗利尿ホルモンの合成アナログであるDDAVP1日2回点鼻により尿量は正常にコントロールされ夜尿症も消失した。GH週6回の自己注射開始後身長は1年目14cm、2年目11cm伸び現在は-1.0SDと著明に改善している(図1)。MRIで定期的に経過を観察しているが下垂体柄肥厚は不変である。現在に至るまで脳腫瘍など他の器質的疾患は発見されていない。 〈考察〉これまでに下垂体領域の非特異的炎症性病変としてリンパ球性下垂体炎が知られていたが1993年成人におけるNIHとリンパ球性漏斗神経下垂体炎(lymphocytic infundibuloneurohypophysitis;LIN)が相次いで報告された。いずれもMRIで下垂体柄肥厚、症例によっては下垂体の腫脹も起こる。NIHでは下垂体前葉、後葉、下垂体柄の部分にリンパ球浸潤の他、壊死、線維化が起こりこのため尿崩症の他、前葉の甲状腺刺激ホルモン、性腺刺激ホルモンの分泌障害を示す。LINは後葉、下垂体柄部にリンパ球浸潤が認められるが壊死は存在しない。尿崩症を伴うが基本的には前葉機能は侵されない。自己免疫機序によって引き起こされ自然退縮、またステロイドが効果を示すことがある。今回の症例では組織像の確認が出来なかったが特徴的な画像、前葉のGH分泌障害、後葉の抗利尿ホルモンの分泌障害、3年間に亘る経過観察からNIHと考えられた。      
  • ~母親が行える仕上げ磨きの工夫・口腔ケア器具を使用して~
    坂詰 朱美, 池田 陽子, 清水 マサエ, 清水 秀子
    セッションID: 1D03
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>小児期の永久歯の萌出は6~8歳頃に始まる。虫歯の発生率は年令と共に増加傾向があり、口腔ケアが大切な要素である。とりわけ障害があって生活習慣を保護者に依存しがちな児にとっては、発達段階に沿った指導と保護者への援助が必要である。今回、小児科外来において自閉症児の母親から「歯磨きを嫌がって仕上げ磨きがよくできないし虫歯の治療もできない。」と相談を受けた。そこで、その母子に対して母親が出来る仕上げ磨きの方法を検討した。
    <方法>患児は小学校1年生。自閉症により自発言語がほとんどなく、他者とのコミュニケーションが困難であるが、食事、排泄はほぼ自立している。前歯2本が永久歯であり乳歯の虫歯を指摘されている。
    母親の同意を得て、面接や電話を通して家庭で母親が行っている仕上げ磨きの現状を把握し、問題点の明確化、対策の検討、実施評価を行う。
    <看護の過程及び結果>
    1)母親からの聴き取りで把握した状況。
     含嗽は含んで出す程度で、歯磨きは自分で歯ブラシを持ってくわえるが磨こうとしない。母親が仕上げ磨きをする時、歯ブラシを噛んでしまって動かすことができない。歯科医院を受診したが、治療に抵抗するため7月以降中断している。
    2)問題点の抽出と対策
     児は歯磨きに対して拒否的で十分に口を開けてくれないことが問題とされたが、言葉による説明で納得して口を開けることは難しいと判断した。また歯科治療の対象であり早急な対処が必要とされていた。対策として、口腔ケア器具を使用し簡単に開口保持ができ、短時間で効率よく仕上げ磨きができないか検討した。
    使用を試みた口腔ケア器具は、「オーラルケアデンタルサポート」と「クルリーナブラシ」の2点とした。
    3)実施過程
     口腔ケア器具を紹介し、母親から使用してみたいという意思表示があった。その後の面接で器具の使用目的と使用方法を説明し、家庭で実施してもらうこととし、期間中母親と電話で連絡をとった。2週間後には「クルリーナブラシを持って自分で口に入れているが、デンタルサポートは押しで出してしまう。」という状況だった。それに対しクルリーナブラシを有効に使用するために、児の頬部を口腔内側へ押し込むようにして仕上げ磨きをすすめた。その後は歯磨き自体を嫌がるため、無理強いせず様子を見ていた。4ケ月経過後には普通の歯ブラシを使い、仕上げ磨きは十分にできないという報告だった。
     自閉症があり歯を磨くという行為の意義を伝えるのが困難である児に対して、今回使用した口腔ケア器具は十分な効果が得られず、母親の行う仕上げ磨きに進歩はみられなかった。しかし、時間をかけて根気よく接する事により結果が期待できる可能性もあると考える。今後も母親が意欲とゆとりを持って児に接することができるようにサポートして行きたい。
  • ~パンフレット作成、指導を実施して~
    豊野 里美, 石川 弘美, 清水 亜紀, 保科 恵子
    セッションID: 1D04
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉当小児科病棟に入院する患児は、喘息・肺炎・胃腸炎などの急性期疾患が主であり、在院平均日数は8日と短期間である。年齢は学童11%幼児35%乳児38%新生児16%と乳幼児が大半を占めている。入院後乳幼児の母親からお尻が赤くなってどうしたらいいかなどの質問やオムツかぶれで痛がり泣く児が度々みうけられた。そこでオムツかぶれの発症調査を行い清潔ケア指導を実施した。
    〈方法〉
    1.期間:平成18年4月から9月
    2.対象:3歳未満児と付添者(主に母親)20名
     1)指導前にアンケート調査
     2)パンフレット作成・指導ケアの実践
     3)実施後の聞き取り調査
    3.倫理的配慮:対象者に調査の主旨を説明、自由参加でありいつでも辞退できる事、調査内容は無記名とし、同時に今回の研究以外に使用されない事を口頭で説明し承諾を得た。
    〈結果〉平均入院日数は5日間で、オムツかぶれを発症した患児は20名中9名であった。そのうち7名が退院する前に完治し、他2名は改善傾向にあり退院となる。
    〈考察〉オムツかぶれは予防することが重要と考えられているが入院に伴い患児は清潔ケアが制限される。その中でも乳幼児の陰臀部は、かぶれやすい状況にある為快適な入院生活を送れるよう援助して行く事が必要である。指導前調査で、家族は入院中どのように予防ケアしていいか解らずにいる事がわかった。
     検討により、家族の意識を高める援助が必要と考え、ポイントを絞り写真つきのパンフレットを作成実施指導した。母の記憶の手助けとなり、認識や理解が深まり退院まで継続して実施できた事や、皮膚発赤もすぐ軽減し治りが早かった事は効果的であったと考える。入院期間が短いことで、家族に処置や観察を委ねる事が増加している。その為さらにきめ細かい指導や配慮が看護師には要求されている。母親の期待する援助を考えることができ、統一したケア指導の必要性について看護師の意識を高めることへも繋がったと考える。
     入院2~3日目にオムツかぶれが発症する事が多く、入院早期に指導実施した事は皮膚をよい状態に保持でき、皮膚発赤の改善効果や悪化防止に有効である事が示唆された。
     調査から「背中まで見るようになった」などの母の声があった。母へ知識や情報を提供し、指導・実践して携わることで、母の観察能力も高まり児へのよりよいスキンケアに繋がったと考える。また母親が必要とする援助を改めて調査し、検討したことは有効性があるといえる。退院後も続けたいとの意欲的な意見も多く、家族看護へも繋げるきっかけとなり、ケア・指導の効果がみられた。入院当初から児・母親とのコニュミケーションを十分にはかり、指導援助を一緒に取り組み関わっていくことは、有意義であると考える。個別性を重視しながら日々検討し、母親参加を進めた家族指導を継続していきたい。
    〈結論〉
    1.パンフレットを用いて説明・指導を行う事は認識が高まりケアの動機付けとなる。
    2.入院当初から指導、ケアすることにより、オムツかぶれ増強の予防効果と改善効果がある。
    3.児の家族ケア指導は家族(母)の理解と協力が必要不可欠である。
    4.看護師間での統一した継続的関わりが必要である。
  • 宮島 雄二, 坂本 昌彦, 中村 麗亜, 大江 英之, 服部 哲夫, 城所 博之, 久保田 哲夫, 加藤 有一, 小川 昭正, 久野 邦義
    セッションID: 1D05
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は血小板の破壊亢進による後天性の出血性疾患であり、治療の基本方針として2004年に小児血液学会ITP委員会から診断・治療・管理ガイドラインが作成された。また成人の慢性ITPではH.pylori感染の関与と除菌療法の有用性が示されている。今回我々は、当院で経験した小児ITPの臨床像と長期予後およびH.pylori感染の関与について検討したので報告する。
    【対象】1990年1月から2007年3月までに診断された15歳未満のITPで、血小板数5x104/μl未満を今回の検討の対象とした。H.pylori感染の有無は、2002年以降に発症もしくは慢性型として経過観察をしていた24例で検討を行った。
    【結果】この間に診断されたITP患者は79例で、性別は男41例(51.9%)、女38例(48.1%)であった。平均年齢は3歳6ヶ月で、0~4歳55例(70.0%)、5~9歳19例(24.1%)、10~14歳9例(11.4%)、最も多い年齢は2歳の18例であった。初発時の血小板数の平均値は13911/μlで、1x104/μl未満が39例(49.4%)、1~1.9x104/μlが25例(31.6%)、2~2.9x104/μlが7例(8.9%)、3~5x104/μlが8例(10.1%)であった。病型は、急性型61例(77.2%)、慢性型15例(19.0%)、再帰型2例(2.5%)、(1例は観察期間が短く病型判定不能)であった。初回治療は大量グロブリン療法55例、ステロイド療法9例、無治療観察15例であった。初発時の血小板数毎の各治療頻度(グロブリン、ステロイド、無治療)は、1x104/μl未満の症例では33例、4例、1例、1~1.9x104/μlの症例では18例、5例、2例、2~2.9x104/μlの症例では3例、0例、4例であった。3x104/μl以上の症例は全例無治療で観察されていた。H.pylori感染は2例(急性型1例、慢性型1例)に認められたが、いずれも除菌療法無しで血小板数は改善した。慢性型と診断された症例の発症年齢は6歳2ヶ月で、急性型の2歳10ヶ月より有意に年齢が高かった。性別は男7例女8例、初発時血小板数の平均は10733/μlで急性型(14920/μl)と有意な差を認めなかった。5例は7ヶ月~2年6ヶ月で血小板数10x104/μl以上に改善した。脾臓摘出は3例に行われ、全例血小板数は正常化した。他の7例は現在も血小板減少が持続しているが、5 x104/μl未満は3例のみであった。慢性型の1例と発症後3ヶ月の1例が、血小板数1x104/μl未満で多数の出血斑が持続するため少量プレドニゾロンの内服を続けている。
    【結語】小児ITP患者の慢性型は19.0%であった。発症年齢が高い症例での慢性型の頻度が高かったが、その他に慢性型に特徴的な臨床所見はなかった。現時点で運動制限が必要な5 x104/μl未満の症例は79例中4例のみ(5.1%)であり、慢性型でも長期予後は比較的良好であった。H.pylori感染の関与は成人と異なり低いと考えられた。
  • 小川 昭正, 中村 麗亜, 大江 英之, 服部 哲夫, 城所 博之, 久保田 哲夫, 加藤 有一, 宮島 雄二, 久野 邦義, 度會 正人
    セッションID: 1D06
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉小児における上室性頻拍はしばしば経験するが、乳児期に発症するものは急激にうっ血性心不全が進行し、重篤な状態となる。 また年長児では、ときに再発が多く日常生活のQOLが障害される。 近年小児でもカテーテルアブレーション治療が行われるようになり年長児の生活のQOLが改善され福音となっている。<BR> そこで、最近7年間に当科で経験した上室性頻拍症の15症例について臨床像、短期治療、長期治療につき検討した。<BR> 〈結果〉乳児期発症は9例(男児4例、女児5例)、幼児期以降の発症は6例(男児4例、女児2例)であった。 乳児期発症例はすべてが生後3ヵ月以内に発症していた。 3例は初診時に著明なうっ血性心不全を呈していたが、残りの6例は、偶然に発見されていた。 うち1例は胎内で一時頻拍を指摘されたが出生時は不整脈は認めず生後4日から上室性頻拍発作を発症した。 急性期の治療は、1例は治療開始前に自然軽快したが、他の8例は digoxinの急速飽和とATP急速静注をおこない発作は治まった。  幼児期以降発症の6例の年齢は4歳から13歳で、発作時心拍数は毎分160から270であった。 症状も腹痛や胸部不快感・動悸で、循環呼吸状態への大きな影響は認められなかった。 薬物治療は、ATPの急速静注、又はATPとDigoxinの併用であった。 乳児期発症の9例のうち非発作時の心電図から副伝導路の存在が示唆されるものは3例であった。 発作予防薬は、digoxinが5例、digoxinとpropranololの併用が3例 頻回に再発した1例はdigoxin,propranolol,disopyramide の併用をおこなった。 digoxinは血中濃度に注意して全員が内服した。予防内服の期間は 全例で8ヶ月~1歳までで、内服中止後 発作が再発した例は、なかった。 幼児期以降発症例では、1例がmanifest WPWであった。 発作予防薬は原則的には無しとしていたが、経過中発作が頻回になった2-3ヶ月間のみ、やむをえず予防内服を行った。 2例では、薬物が必要な発作の頻度が高く、年齢が高くなるにつれて生活に支障を来たすようになった。 そのため高周波カテーテルアフ゛レーションの適応と考え、施行したが、その後は上室性頻拍発作はなく良好な経過をたどっている。<BR> (結語) □乳児期早期の発症例では重症の心不全に陥る前の発見が重要でその後数ヶ月を良好な発作予防をすることが重要であり、 年長児では頻回発作する例ではカテーテルアブレーション治療にもちこむことがQOL改善のため重要であることを再確認した。
  • 伊藤 忠彦, 平井 大士, 蜂谷 明
    セッションID: 1D07
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【緒言】トキシックショック症候群(TSS)は毒素産生性のstaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)、またstreptococcus pyogenes(A群レンサ球菌)によって引き起こされ、発熱、ショック、多臓器不全を特徴とする急性の病態である。我々は、ショック、DIC、多臓器不全を来たし、血液浄化療法等を施行したが死亡したA群溶血性レンサ球菌によるTSSの1例と熱傷後のC群溶血性レンサ球菌によるTSSの1例を経験した。
    【症例1】4歳女児。<現病歴>平成18年12月16日7時30分頃より突然の悪寒、戦慄が出現。その後、発熱、嘔吐、血尿を認め、近医受診。精査のため当院へ紹介となる。当院へ向かう車中にて意識状態の低下あり。<現症>意識レベルJCS-300、呼吸停止、頚動脈脈拍を触知せず。網状チアノーゼを認めた。<検査所見>WBC25300, Hb10.4g/dl, Ht29.6%, Plt356万, BUN18.1,Cr0.69,GOT94, GPT17, LDH2000, CK3321, CRP0.77。PT20%,APTT>180sec, フィブリノーゲン 82mg/dl, AT_III_61%, FDP>500μg/mlとDICを来たしていた。<経過>外来にて気管挿管、エピネフリン静注にて心拍再開。病棟到着後、心拍数30台、再度エピネフリン静注、心臓マッサージを行い、心拍は回復。DOA,DOB開始となる。敗血症性ショック、TSSを疑い、CTRX, PAPM/BM 静注、γグロブリン大量療法(1g/kg/day)を開始。DICに対し、FFP、メシル酸ナファモスタット、AT_III_の投与を開始した。しかし、多臓器不全が急速に進行。入院2日目より血液透析、血漿交換、エンドトキシン吸着を施行するも改善なく、入院3日目に永眠。咽頭のA群レンサ球菌迅速診断陽性であったこと、急速に発症した血圧低下、腎不全、多臓器不全の臨床症状より、A群レンサ球菌によるTSSと診断した。
    【症例2】11ヵ月男児。<現病歴>平成19年2月19日、午前7時頃、ポットのお湯を自分で倒し、左上肢、右手背に熱傷重傷。当院形成外科受診、左上肢熱傷TBSA6%、II度熱傷の診断で入院。19日夜から40度台の発熱、嘔吐、全身の発赤疹が出現、20日敗血症、TSSを疑い当科転科。<現症>体温39.7度。全身の紅斑様発疹、頻拍(225/min)、多呼吸(60/分)を認めた。<検査所見>WBC6900, Hb 12.4, Plt 23.4万, GOT 145, GPT 93, LDH 312, CRP 2.73<経過>細胞外液補充、CTRX、PAPM/BP静注、γグロブリン大量療法(1g/kg/day)、HDC静中を開始。3分間の全身性間代性けいれん発作あり、DZP4mg静注とミダゾラム持続静注にて治療した。発熱は持続し、尿量減少、血圧は81/41まで低下した。PT(INR) 2.26, PT 37%, APTT 48.1sec, フィブリノーゲン 426, ATIII 68%, FDP 12.28とDICを合併。FFP、メシル酸ナファモスタット、ATIII投与を開始した。2月21日、肝機能改善、DICも沈静化した。2月23日、解熱。熱傷部位からC群溶血性レンサ球菌(Streptococcus dysagalactiae ssp dysagalactiaeと同定)が分離、TSSと診断した。2月27日、形成外科にて植皮術を施行、3月16日退院。
    【結語】溶血性レンサ球菌感染は日常的に経験するが、TSSを合併することがある。救命には早期診断とγグロブリン大量療法、血液浄化療法などの、迅速な集中治療が重要である。
  • 東條 正幸, 高野 靖悟
    セッションID: 1D08
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【はじめに】
    溶連菌感染後急性糸球体腎炎は、A群β溶連菌感染後に発症し先行感染後糸球体腎炎としては最も検討が行われている疾患の一つである。咽頭炎や呼吸器感染後では通常1~2週間の期間を経て、皮膚感染後は3~6週の期間を経て発症するとされている。本症例では先行感染による咽頭炎、ASOの高値と低補体血症、肺炎の合併が認められた。肺炎と糸球体腎炎を合併し低補体血症を呈する病原体としてマイコプラズマ、クラミジア、肺炎球菌、ブドウ球菌などが報告されている。本症例では明らかな溶連菌感染があったと考えられるが、発症時肺炎を合併しており、同様の症例報告もいくつかなされている。肺炎と溶連菌感染後糸球体腎炎の同時発症の関連性を示唆する症例の一つとしてここに報告する。
    【概要】
    症例:8歳2ヶ月男児。
    平成18年11月末に熱発にて近医受診し咽頭炎と診断。その後軽快するも同年12月上旬より眼瞼浮腫、肉眼的血尿、熱発を認める。近医受診し腎炎疑いにて当院紹介受診、急性糸球体腎炎が強く疑われ入院となった。入院時のバイタルは血圧150/89、脈拍140回/分、呼吸数40回/分、SpO2 90%(room air)であった。検査所見は軽度の炎症所見とBUNの高値、Kの上昇(6.0meq/l)、補体の低値とASOの上昇、糸球体性腎炎を疑わせる所見を認めた。また、代謝性アシドーシスの所見も認められた。エコー所見では腹水と両側胸水を認め腎に異常所見なし。胸部レントゲンでは入院日から翌日にかけて肺炎像が明瞭化した。しかし肺炎の原因同定は行えなかった(マイコプラズマについては2回検索を行いどちらも所見無く、咽頭培養・血液培養も正常細菌叢・細菌発育なしであった)。腎炎に関しては補体の回復も確認され、臨床経過と検査所見より溶連菌感染後急性糸球体腎炎の診断となった。 入院後は安静臥床とし食事制限(塩分・カリウム・蛋白)、飲水制限を開始。高カリウム・高血圧・尿量低下に対し投薬開始、肺炎及び低酸素血症については抗生剤投与と酸素投与も開始した。カリウム値と代謝性アシドーシスについては入院翌日には改善し、高血圧・尿量・胸腹水・浮腫・体重については順調な改善が認められた。肺炎については入院2日目に肺炎像が明瞭化し炎症所見も悪化が認められた。抗生剤投与にて順調な改善が認められ、酸素状態も順調な回復が見られた。血尿については所見の変化認められなかったが、尿蛋白の低下、GFRの上昇を確認し退院となった。退院後は補体の改善傾向認められ、症状の悪化もなく順調な経過を示している。
  • 古沢 有紀
    セッションID: 1D09
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉『精神障害者の保健医療福祉施策は、「入院医療中心から地域活動中心へ」と大きな変革期を迎えている。』¹⁾といわれている。
     本事例は同居家族にも精神疾患があり、家族の協力が得られず、定期的な内服や不調の対応などが見過ごされてしまい症状の悪化をきたし再入院となったケースである。
    本事例に対し、退院後地域サービスを活用していく事に重点を置き、地域で生活できるようにするために、どのようなサポートを整える必要があるか、退院支援のあり方について考えてみた。
    〈研究方法〉期間:2006年1月~2006年10月
    〈事例紹介〉A氏 58歳 統合失調症 入院期間約6ヶ月。夫とは離婚し、現在認知症の母、統合失調症の息子との3人暮らし。
    現病歴:30歳代前半で発症。前回入院(入院期間約3ヶ月)は亜昏迷状態での入院。拒食・動悸・発汗などの症状がみられた。今回の入院の経過:定期受診はできていたが不安・緊張感が徐々に悪化、入浴・更衣などできなくなり、息苦しさ・手のしびれが出現し自ら救急車を呼び搬送され入院となる。入院後自律神経症状(動悸・不安・発汗・めまい)・不眠はあるが内服薬の使用で徐々に改善傾向となる。
    〈倫理的配慮〉A氏に本研究の目的・個人情報の保護について説明し同意を得た。
    〈考察〉前回は、地域サービスを入れずに退院し、その後自宅生活が維持できず再入院となった。第1期から誰かが見守り・手助けをすれば実施できる事がわかった。「精神障害の再発再燃原因の1位は服薬の中断であるが、ついで食事・金銭管理・整理整頓・寂しさなどが、生活破綻をきたしやすい原因」²⁾とあるようにA氏にとって日常生活を自立・維持していくことは大きな負担となると考えた。
     また第2期で週間予定表を作り活動範囲の拡大を試みたが、1日に複数のプログラムを行うことで発汗・不安などの症状が出現した。A氏の適応能力にあわせ、本人のペースに合わせていくことがA氏のストレスを減らし自立を促していくためには重要であったといえる。
     1期と2期からパーソナルケアや服薬管理の自立は症状の出現・悪化につながりA氏が自宅生活を維持していく上では負担が大きいと考え、炊事・洗濯・入浴にヘルパー、内服管理に訪問看護を導入した。退院当初のA氏は緊張・不安から不眠を訴え部屋から出る機会も少なかったが、ヘルパーや訪問看護の定期的な援助が入ることで内服や生活に大きな乱れがなく徐々に生活に慣れていった。料理OTは退院後1度も参加できていないが、自宅生活に慣れる事を優先的に援助していった。長期入院を防ぐ上で、様々なサービスを取り入れ自宅生活の中で自立を促していくことが重要である。また誰かが家に来て状態を常に把握してくれるという安心感は、再入院をしたA氏にとっては自宅生活を維持する上で大きな意味があったと考える。
    〈おわりに〉精神障害者を「入院医療から地域医療中心に」といわれている現在、患者の自立を求めるのではなく患者が自立できずに困っている部分をどのようにサポートすれば退院し地域で暮らせるのか、多職種との連携や継続して看護していくことの重要性を改めて感じた。
  • ~園芸作業の試み~
    小川  利子
    セッションID: 1D10
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈緒言) 精神科に入院する患者の一部はさまざまな原因により入院期間が長期になることがある。その患者は、慢性の経過をたどり無為、自閉やホスピタリズムといった弊害も生じ、日常生活も受身になる傾向にある。 当病棟は急性期と慢性期の患者の混合病棟であるため急性期の患者中心の看護になっている。そのため慢性期の患者の関わりが不足している現状がある。そこで慢性期の患者の関わりのひとつとして園芸作業を実施することにより慢性期患者の自発性や活動意欲の向上につなげることができるのではないかと考えた。 〈方法〉長期慢性期患者(3年以上当院に入院している患者)で日常生活は自立しているが単独外出(院内の買い物、散歩)のできない無為、自閉的に過ごしている3名の患者Aさん(女性)50代、Bさん(女性)50代、Cさん(男性)60代を対象として園芸作業を実施し、研究前、研究中、研究後の状態と言動を比較する。 〈結果〉慢性期の患者の意欲向上の働きかけに園芸作業が精神的、社会心理的効果から有効であるといえる。根拠として、研究前はBさん、Cさんは日中のほとんど入床して過ごし、ホールに出てくるのは食事の時くらいであり、Bさんは食事も自室で食べることが多かった。Aさんはホールには出てくるがホールの一箇所でじっと立っていることが目立っていた。また、3人とも無口で自分から話をすることがほとんどない患者であった。 看護者が「花壇へ行きましょう」と声を掛けると自分から履物を変えて準備をするなどの行動の変化が見られた。表情も明るくなり作業中も笑顔が見られることがあった。花壇がある場所は開放病棟に面している。私たちが作業をしていると開放病棟の患者が「頑張っているねー」「何を植えるの?」などと話しかけて来る場面もありそれに対して「チューリップ」「手伝ってよ」など返事を返すこともあり作業を開始する前より他の患者とのコミュニケーションが増えた。園芸作業をはじめてしばらくした平成17年の12月にCさんは開放病棟に移った。Bさんは平成18年2月から院内単独外出の許可をもらうことができ、園芸作業を始める以前は自分のベッドをカーテンで囲み臥床していることが多かったが、表情が明るくなり入床していることも少なくなりホールでテレビを見る。カーテンを開け同室者と一緒に談笑する場面も時々目にするようになった。そして、平成18年9月に開放病棟に移ることになった。 Tさんも表情が明るくなり、看護者に話しかけることが増え、他の患者さんに誘われるとトランプやオセロをする行動が見られるようになった。育てた花を見に行こうと言うと散歩にも積極的に参加し「花がきれいだねー」など自分から発言することが増えるなどの行動の変化が見られた。
  • 遠藤 恵理子
    セッションID: 1D11
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    統合失調症で開放病棟に入院中のA氏は入院6年目であるが陽性症状(妄想、滅裂思考など)と認知機能の低下があり、看護師や他患と時々トラブルを起こす事がある。A氏の心に中には「退院したい」という想いがあり、それを相手に上手く伝えられない事がトラブルに至る原因と考えられる。 A氏は人付き合いが苦手である事を自覚しており、ある時看護師にSST(社会生活技能訓練)を希望してきた。SSTはA氏にとって生活技能の改善が見られ退院へ向けての最初のステップにする為、その効果を見る事を目的に関わりをもった。個人SSTによる効果はアプローチの前後に精神科リハビリテーション行動評価尺度(REHAB以下リハブとする)で評価をした。 A氏は看護師に「いつからSSTをやるのですか」と積極的に声を掛けてきて意欲が感じられたが、訓練中は話が反れ、修正してもまた反れてしまう繰り返しが多く、進めていくのは困難であった。これは認知機能の障害が強く表れていたと考えられる。看護師の問題として話の反れた場合の軌道修正が上手く対応出来ず効果的なSSTにならない場合もあった。出来る時にはA氏にメモをとって貰いロールプレイを行って、宿題を出してみたが実践するのは難しく、A氏が自信をつけて貰える様褒めながら関わりをもったが般化する事は難しかった。A氏が訴えてきた場合には傾聴しつつ正の強化を与えていった。リハブの結果では「ことばの技能」は変化が無かったが「ことばのわかりやすさ」においては障害があるという方向から普通状態になった。以前はA氏の質問を一度に聞き取れず聞き返すと易怒的になり待つ事も出来ずにいたが個人SSTを実施するようになってからは易怒的になる事は少なくなり、看護師がすぐに対応出来ない場合、理由を話すと待つことが出来るようになった。個人SSTをする事はA氏にとってストレスがかかる事であったと思われるが看護師がじっくりと落ち着いて関わりをもった事がA氏にとって良い刺激になり心地良い程度のストレスになっていたのかも知れない。 「セルフケア」は変化が無く「社会生活の技能」に関しては普通状態から障害がある方向へと悪くなっている。担当看護師とA氏で小遣い管理などについて話し合い、その場ではA氏は理解出来て決めた計画を毎日継続していくのは困難であり、現実検討能力の低さや認知・学習障害(融通の利かなさ)が現れていた。状況によって分り易く説明し、決めた事を継続出来るよう関わりをもつ事が必要である。 A氏とに関わりから患者の訴えを傾聴し、共感的態度を示し信頼関係を築く事が改めて大切であると感じ_丸1_患者と共に入院生活のあり方や看護計画(患者目標)を話し合い、援助する事が大切である _丸2_看護師は患者の持っている能力の可能性を信じ継続した援助をしていく事が重要である事を学んだ。
  • 中根 一匡, 舟橋 恵二, 安田 直子, 西尾 一美, 西村 直子, 尾崎 隆男
    セッションID: 1D12
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉  Moraxella catarrhalis (M. catarrhalis)は、小児の肺炎や気管支炎などの呼吸器感染症の重要な起因菌である。今回われわれは、当院小児科の呼吸器感染症患者より分離されたM. catarrhalisについて、その分離状況、β-ラクタマーゼ産生試験および薬剤感受性を調査し、われわれの5年前に行った調査成績(中根一匡,他:医学検査51,2002)と比較検討した。 〈方法〉 1.供試菌株  2005年11月~2006年10月の1年間に、当院小児科を受診した上気道または下気道感染症患者より採取した咽頭または鼻腔ぬぐい液を分離用検体とした。検体を5%ヒツジ血液加トリプチケース培地(BD)にて37℃24時間培養し、灰白色の特徴的なコロニーをさらに同培地にて純培養した。分離されたグラム陰性双球菌について、オキシダーゼ試験陽性、カタラーゼ試験陽性およびDNase産生試験陽性であることを確認後、HN-20ラピッド(ニッスイ)にてM. catarrhalisと同定した。94名の患者より94株が分離同定でき、それらを供試菌株とした。 2.β-ラクタマーゼ産生試験  β-ラクタマーゼ産生試験は、セフィナーゼディスク(BD)を用いたニトロセフィン法で行った。 3.薬剤感受性試験  薬剤感受性試験は、日本化学療法学会標準法に準じたドライプレート(栄研化学)を用い、微量液体希釈法にてMIC(最小発育阻止濃度)を求めた。検討した薬剤はABPC、CVA/AMPC、CCL、CPDX、CDTR、CFDN、CFTM、EM、CAM、AZM、RKM、MINO、CLDM、LVFXの14種類の抗菌薬とした。CLSIの判定基準に準じ、IとRを耐性株として検討した。 〈結果および考察〉 1. 月別分離状況  月別分離株数は、11月に16株、次いで12月および3月13株と冬季に多かった。 2. 年齢別分離状況  年齢別分離株数は、1歳未満が39株と最も多く、次いで1歳19株、3歳11株、2歳10株の順であり、4歳未満児が84%を占めた。 3. β-ラクタマーゼ産生試験成績  94株すべてがβ-ラクタマーゼ産生株であった。 4. 薬剤感受性  各薬剤のMIC50/MIC90値(μg/ml)は、ABPC 4/8、CVA/AMPC ≦0.12/0.25、CCL 2/8、CPDX 1/2、CDTR 0.5/0.5、CFDN 0.25/0.5、CFTM 1/2、EM 0.5/1、CAM ≦0.12/0.5、AZM ≦0.12/≦0.12、RKM 0.25/0.5、MINO 0.25/0.25、CLDM 4/4、LVFX ≦0.12/0.25であった。CVA/AMPC、CFDN、CAM、AZM、MINO、LVFXについては耐性株を認めなかった。  これら1~4の結果は、5年前にわれわれの行った調査と同様であり、M. catarrhalisの疫学的および細菌学的性状に変化を認めなかった。 〈まとめ〉  今回の調査期間中に94株のM. catarrhalisが分離でき、分離は冬季に多く、低年齢の乳幼児に集中した。すべての分離株がβ-ラクタマーゼを産生した。CVA/AMPC、CFDN、CAM、AZM、MINO、LVFXは、耐性株を認めず、M. catarrhalisに対する抗菌力は良好と考えられた。
  • 竹之下 秀雄, 小松 貴紀, 圓谷 隆, 山内 隆治
    セッションID: 1D13
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    A.11歳男児。2005年11月12日頃より発熱と頭痛が出現し、近医で加療されたが改善せず、16日には全身性に皮疹が出現したため、11月17日当科紹介された。初診時、全身性の紅斑、発熱、頭痛、刺し口、肝機能障害、CRPの上昇がみられ、つつが虫病が疑われ同日当科に入院した。入院来、ミノマイシン® の全身投与(11月17日~20日まで120mg/日、11月21日~24日まで60mg/日)を開始したところ、すみやかに改善した。つつが虫病IgM抗体価(Gilliam法)は、初診時が40倍未満、11月28日には160倍となり、最終的につつが虫病と診断した。小児のつつが虫病は比較的まれで、福島県の2003年~2005年の3年間のつつが虫病95例中1例のみであった。しかしながら、小児のつつが虫病は発症しにくいからではなく、つつが虫に吸着される機会が少ないからと考えられる。B.30歳女性。妊娠3か月。2006年10月20日頃より、発熱が生じ、23日には顔と躯幹に皮疹が出現した。当院産婦人科で精査・加療された(風疹、麻疹、伝染性紅斑のウイルス抗体価を測定したが、有意の結果はえられなかった)が、改善せず、10月27日当科紹介された。初診時、全身性の紅斑、発熱、頭痛、刺し口、肝機能障害、CRPの上昇があり、つつが虫病を強く疑い同日入院した。つつが虫病治療薬ミノマイシン®はBriggsの分類ではD(ヒトの胎児に明らかな危険があるという証拠があるが、危険であっても妊婦への使用による利益が容認されるもの)であるが、虎ノ門病院分類では妊娠前半期に限り1点(疫学調査は行われていない、ヒトでの催奇形を肯定する報告はない。動物生殖試験は行われていないか、または催奇形はみとめられていない)であるため、初診時よりミノマイシン®200mg/日の全身投与(11月9日まで)を施行したところ、すみやかに改善した。つつが虫病IgM抗体価(Gilliam法)は、初診時が320倍とすでに陽性であり、診断が確定した。母体と胎児に異常がなく経過観察中である。本邦において、妊婦に発症したつつが虫病の報告は本例を含み6例のみである。東矢らの例では第5病日に治療を開始したが、第3病日にすでに胎児が死亡し、棟方らの例では第5病日に治療を開始したが、妊娠9週目に胎児が死亡した。菅生らの例と自検例では、第9病日と第8病日に治療を開始し、一方は正常に出産し、一方の胎児は正常に発育している。妹尾らの例では自然治癒した後、治療を開始したが正常に出産した。このように正反対の胎児の予後が示されたため、つつが虫病は胎児にどのような悪影響をおよぼすのか、さらにはOrienta Tsutsugamushiの胎盤感染が生じるのか否か、などについては今後の症例の蓄積がまたれる。
  • 上澤 弘美, 谷貝 玲子, 大槻 勝明, 金澤 ひろみ
    セッションID: 1D14
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>血管内留置カテーテル関連血流感染(以下BSIとする)の感染経路は、刺入部、ルート、輸液、患者、細菌など様々な要因がある。今回、感染率低下を目指し、カテーテル挿入中のドレッシング交換についてサーベイランスを実施・評価したので報告する。
    <研究目的>中心静脈カテーテル(以下CVカテーテルとする)挿入中のドレッシング交換の頻度をCDCガイドラインに従い実施・評価することでBSIの推移と管理方法の方向性を明らかにする。
    <倫理的配慮>調査対象者の個人情報の保護に努める。
    <研究方法>A群:2005年1月~12月(n=397) カテーテル挿入部位の被覆については滅菌ガーゼもしくは滅菌透明ドレッシング材を使用。ドレッシング交換は連日施行。 B群:2006年1月~12月(n=382)カテーテル挿入部位の被覆についてはA群と同様。CDCガイドラインに従いガーゼ2日毎、透明ドレッシングは7日毎に交換。ドレッシング材の湿潤や汚染、あるいはカテーテル挿入部位の視診が必要な時は交換。
    統計処理:t検定、X2検定
    <結果>患者背景およびBSIにおいて両群共に有意差は認められなかった。(表1参照)挿入されていたCVカテーテル(スワンガンツカテーテルを含む)の本数はA群225本、B群197本であった。挿入部位別ではA群の鎖骨下静脈16本、大腿静脈92本、内頚静脈117本であり、B群では鎖骨下静脈15本、大腿静脈67本、内頚静脈115本であった。挿入部位別BSI発生状況はA群で鎖骨下静脈1例、大腿静脈4例、内頚静脈3例であり、B群では鎖骨下静脈1例、大腿静脈2例、内頚静脈3例であった。
    <考察>患者背景において両群での有意差は見られなかったため統計的に比較検討できると考えた。全米病院感染サーベイランスシステムによるとICUでのBSIは0.8~6.1と報告されている。今回の調査ではBSI0.49と低値であり、両群に有意差は認められなかった。このことから、ドレッシングの連日交換は必要でなく、CDCガイドラインに従った方法が有効であると考える。CDCガイドラインによると挿入部位別では鎖骨下静脈の方が内頚静脈、大腿静脈より感染のリスクが低いといわれている。今回の結果からも、内頚静脈から高頻度で挿入されていることが明らかになった。内頚静脈に挿入されたカテーテルは頚部の可動や形態的にカテーテル挿入部位のドレッシング固定が難しく、唾液などにより汚染されやすい現状である。今後は固定方法の工夫など、唾液による汚染防止を検討し、BSI低減のため継続してサーベイランスを行っていく。
    <まとめ>CDCガイドラインに従い連日ドレッシング交換を行わなくてもBSIは低値である。
  • 豊島 順子
    セッションID: 1D15
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    _I_ はじめに
     当院ではH15年度より病棟に対し感染対策ワードオーディット(以下オーディットとする)を導入している。オーディットの導入により細かな感染対策の統一や、環境の整備などが行え、また、結果を制御委員会に提出することで、現状の報告も行なえている。そこで今回、内視鏡室にもオーディットの導入を試み内視鏡室スタッフの感染に対する意識の向上、行動の変化が得られたのでここに報告する。
    _II_ 活動内容、期間及び内容
    H18年4月~ オーディットチェック表(以下チェック表とする)検討
    H18年8月~12月、月に一度プレテストとしてオーディット実施、実施者は内視鏡スタッフ
    H19年1、2月 チェック表の検討
    H19年3月、第1回目オーディット施行
    H19年4月、1回目オーディット後評価
    _III_ 結果
     院内のオーディットをもとにチェック表を作成、8月から12月までプレテストを行なった。プレテストの評価を図1に示す。また、第1回目オーディットの結果を図1に示す。又、オーディット終了後、話し合った内容を表2に示す。
    _IV_ 考察
    今回、オーディットの導入を試みて、内視鏡室特有の項目を盛り込み、各検査室毎の項目を作ることで、検査室全体の環境整理ができるようになった。プレテストでは、院内のオーディットと同様のかたちでチェック表を作成したが、各項目で見る部分や、評価のポイントにスタッフ個々で差が出ることがわかった。そのため、チェック基準を設けることでスタッフが同じ目線で評価できるように検討した。
     導入後の話し合いでは光源装置や、検査台、処置台の汚れが目立ち、各勤務で、担当者が検査の合間に清掃することにした。
     今回初回のオーディットを施行して、環境のスコアーが60%と低く総合スコアーも72%とかなり低いものとなった。今後、院内のオーディット同様、年3回行い、そのうちの1回はリンクナースが巡回し評価者や評価基準の妥当性について考え、スコアーの上昇を目指していく。
    _V_ おわりに
    1、オーディットの導入により内視鏡室の清掃状況が明らかになり、改善策を立てることができた。
    2、個々の感染に対する意識がたかまり、行動に移せるようになった。
    3、今後オーディットを行いながら評価時期を検討していく。
     
  • 橋本 武志, 長谷川 伸, 倉持 元, 関川 崇, 津吉 秀樹, 恩田 直明, 佐野 敦樹
    セッションID: 1D16
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈緒言〉劇症型溶連菌感染症は、突発的に発症し急速に多臓器不全に進行するA群β溶血性連鎖球菌による重篤な感染症である。今回、長時間PMX-DHP+CHDF療法により救命し得た劇症型溶連菌感染症の1例を経験したので報告する。 〈症例〉58歳。男性。  (主訴)殿部痛  (家族歴および既往歴)特記事項なし  (現病歴)平成19年2月10日温泉で転倒し、殿部を強打した。2月11日より発熱あり、2月13日午前3時頃、殿部の激痛を訴え当院救急外来に搬送された。  (現症)身長165cm、体重70kg、血圧93/57、脈拍 75/min 整、体温 39.2℃、開眼しているが意識ははっきりせず(JCS 1)。心肺所見および腹部所見に特記事項なし。左殿部に発赤・腫脹・熱感あり。直腸診上異常なし。浮腫なし。 (入院時検査所見)血液検査はRBC 510万/μl,Hb 14.1g/dl,Ht 41.2%,Plt 17.7万/μl, WBC 25,500/μl,AST 31IU/l,ALT 25IU/l,ALP 195IU/l,LDH 251IU/l,CK 859IU/l, Amy 31IU/l, CRP 22.02mg/dlであった。骨盤部CTにて左大殿筋周囲皮下脂肪組織の濃度上昇が認められた。  (入院後経過)左殿部蜂窩織炎、敗血症疑いの診断にて当院整形外科に緊急入院し、MEPM 0.5g×2/dayで治療を開始した。入院直後よりSpO2・血圧の低下がみられ、ドーパミン、ドブタミン、ノルアドレナリン点滴静注を追加した。2月13日午前10時頃心肺停止となり、蘇生し得たが、以後人工呼吸器管理となった。同日午後7時左右殿部及び陰嚢に壊死性変化を認め、同部位からA群β溶連菌(St. pyogenes)が検出され、壊死性筋膜炎を伴う劇症型溶連菌感染症と診断した。ABPC/SBT 1.5g×4/day、CLDM 1.2g×2/day、LZD 0.6g×2/dayを追加した。翌日よりサイトカインの積極的除去及び循環動態の改善を目的に、PMX-DHP1回24時間計2回をCHDFに直列にて連結し24時間連続治療を開始し、2月15日全身管理目的に当院内科に転科した。その後全身状態は徐々に改善し、2月19日PMX-DHP+CHDF療法を中止、2月20日抜管、2月23日カテコラミンは全て中止した。その後殿部及び陰嚢の創治療目的に当院整形外科に転科した。  (考察)劇症型溶連菌感染症はその病態が黄色ブドウ球菌によるtoxic shock syndromeに似ていることからtoxic shock like syndromeとも呼ばれており、その臨床像はA群β溶連菌による突発的な敗血症とこれに続く多臓器不全である。これに対して今回施行した長時間PMX-DHP+CHDF療法は各種炎症性サイトカインや外毒素を除去と循環動態を安定化することで病態を改善できたと考えられた。特に今回の症例のような劇症型感染症にはPMX-DHPを1回24時間計2回使用し、しかもCHDFと直列に連結して24時間連続して行ったことが本症例に対して奏効した理由と考えられた。  (結語)壊死性筋膜炎を伴う劇症型A群β溶連菌感染症に対し、抗生剤の投与に加え長時間PMX-DHP+CHDF療法を行い、救命し得た1例を報告した。
  • 高山 義浩, 西島 健, 小林 智子, 小澤 幸子, 岡田 邦彦
    セッションID: 1D17
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【緒言】佐久総合病院は長野県東部の農村地域に位置するエイズ治療拠点病院である。1986年から2006年までに85人の新規HIV感染者の受診があったが、とくに最近5年間では39人と急速に増大傾向となっている。そもそも長野県は新規HIV感染が人口10万人あたり1.26人/年(2002-2006年)であり、これは東京都の3.02人/年に次いで第2位と重点的に対策すべき地域に国により指定されている。ところが、佐久総合病院の診療圏については人口10万人あたり3.90人/年となることから、実は長野県のなかでも都市部ではなく、とりわけ農村部においてHIV感染が拡大している実態が浮き彫りとなる。こうした状況を受けて、長野県では『信州ストップエイズ作戦』が2006年より展開しており、県民へのエイズ危機への周知とHIV検査への誘導が一定の成果を収めつつある。しかし、全県的なHIV予防と診療の取り組みにもかかわらず、そのフレームによって救われない人々がいる。それは、外国人、とくに無資格滞在外国人である。農村地域におけるHIV感染の拡大を止めるためには、日本人のみならず外国人へも公平に保健医療サービスを提供してゆくことが重要であると我々は考えている。第1報では、まず具体的症例からその実態を紹介する。
    【症例】42歳、タイ人男性。約10年前に来日し、肉体労働に従事している無資格滞在外国人。2005年10月より倦怠感と咳を自覚。11月中旬、近医受診したところ、肺に結節影を指摘され、結核を疑われると同時にHIV抗体検査を施行された。同陽性のため、翌22日、当院紹介受診となる。精査により、脳結核腫を含む播種性結核により発症したエイズ(CD4 43/μL)と診断し、4剤による抗結核療法を開始した。約3ヶ月の治療経過で結核は軽快したが、抗HIV療法を含むこれ以上の治療継続は医療費の面からも困難と判断し、2006年4月に現地医療機関への紹介状を持たせてタイへ帰国させた。しかし、現地では医療機関を受診しないまま経過しており、東北部出身の村において2007年1月に永眠されたことを確認した。
    【考察】佐久総合病院の診療圏には、長野オリンピックをきっかけとした出稼ぎ目的の流入により無資格滞在の無保険外国人が多く、最近は親族不明の経済困窮者が目立つようになってきた。こうした人々のなかには、HIV感染者もいるが、エイズ発症ぎりぎりまで受診行動につながらない者が多い。本症例もまた、医学的・社会的に困難なエイズ発症例であったが、佐久総合病院で結核を含む日和見感染症の急性期治療をおこなった。その後は帰国支援により治療継続を期待したが、現地の医療につなげることができなかった。本症例のように、エイズ発症で医療機関を受診しても結局は死亡させてしまう経験を繰り返していると、「病院へ行ってもエイズは死ぬ病気」というイメージを外国人らに定着させてしまい、さらに受診行動を鈍くしてしまう結果となる。これは、本人の救命のみならず、感染拡大防止のための介入チャンスをも失わせるものである。よって、さらに現地の医療事情を把握し、現地の適切な医療機関、また経験豊富なNGOと密に連携してゆくことが求められている。しかし同時に、増加している無資格滞在外国人の健康問題について、国もしくは自治体行政による包括的対応も期待したい。
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