日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
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一般演題
  • 西島 健, 高山 義浩, 小林 智子, 小澤 幸子, 岡田 邦彦
    セッションID: 1D18
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】第2報では、2002年より2006年までの5年間に佐久総合病院を受診した新規HIV感染者について、AIDS発症者数、国籍、医療保険の有無、初診時受診契機、感染経路、転帰により分析する。そこから対策すべき課題を検討し、とくに佐久総合病院が実施もしくは検討している外国人感染者を対象としたHIV対策を紹介する。
    【結果】2002年1月より2006年12月までに39人の新規HIV感染者の受診があり、24人(61.5%)のAIDS発症者の受診があった。その国籍の内訳は、日本人27人(69.2%)、タイ人12人(30.8%)であった。また、タイ人感染者のうち医療保険のない者が6人(15%)を占めていた。これら39人の初診時契機は、AIDS関連疾患の発症 61.5%、その他の疾患による受診 17.9%、パートナー陽性のために検査 12.8%、妊娠時検査 7.7%であり、自主的に検査を受けて陽性が判明したケースは1例もなかった。感染経路は、84.6%が異性間性的接触であり、大多数を占めた。以下、同性間性的接触による感染 7.7%、薬物使用 2.6%、不詳 5.1%と続いた。また、その転帰は当院通院中 71.8%、死亡 10.3%、帰国支援 7.7%、行方不明 5.1%、他院に紹介 5.1%であった。
    【考察】農村地域ではHIV感染の拡大が進んでおり、いわゆる「いきなりエイズ」症例が全国と比しても高く、早期発見がすすんでいない状況が継続している。その背景には、自主的に検査を受けて判明するケースが認められないことからも、一般市民への啓発活動の遅れが大きな要因と考えられる。日本人については様々な施策が展開されつつある。しかし、次いで外国人への感染拡大が確認されるものの、無資格滞在外国人であることが少なくないため、自治体行政によるアプローチが困難となっている。よって、医療機関と地域のNGO活動との連携による展開が求められている。無資格滞在外国人の感染が判明した場合に、単に帰国させる対応では単なる感染者のたらい回しにすぎず、国内でもHIV検査を受けるように促すことができない。よって、陽性判明後に彼らが医療面・社会面において安心して受診できるシステムを事前に策定しておく必要がある。
    【提言】この地域でエイズ治療拠点病院として活動してきた佐久総合病院は、自治体や保健所などと連携して様々なHIV対策を実施もしくは検討している。しかしながら、外国人向けの対策は途上であり、感染増加の状況からも緊急の課題と考えている。これまでも外国人向けの医療相談会を年に2回程度実施してきたが、本年度より在日タイ国領事館と協力して佐久総合病院内に移動領事館を開設。このとき併せて、佐久総合病院として医療相談会を実施する方針としている。こうして、タイ人らへの社会的・身体的問題へ包括的に対応できる体制を整え、外国人らとの信頼関係を深めてゆきたい。また、無保険の外国人においてHIV感染が判明した場合、何らかの方式による医療費助成制度を策定し、帰国支援まで安定した医療サービスを提供できるようにしたいと考えている。
  • 中山 雄二, 笠原 順子, 川上 八重子, 松永 ひろ江
    セッションID: 1D19
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    新潟県厚生連三条総合病院は、外来12診療科があり、その内訳は内科(常8)、循環器科(常1)、整形外科(常3)、外科(常3)、産婦人科(常2)、小児科(常2)、耳鼻咽喉科(非常1)、眼科(非常1)、皮膚科(非常1)、泌尿器科(非常1)、歯科,歯科口腔外科(常1)、福祉センター(常2)であり、一般病床199床(内48床障害者等一般病床)を有する混合型の救急告知病院(常勤医22名)である。三条市は、平成17年4月末の合併前人口約84,588人で、開業歯科診療所は49施設、下田村と栄町との合併後の人口は平成19年3月末時点で106,736人、54施設で、病院歯科は3病院にあります。当院歯科口腔外科は昭和42年に開設され、昭和62年に、病院全面新築移転を機会に、診療室拡張、歯科用治療用椅子ユニット4台に増設されました。またスタッフは歯科衛生士2名に加え、平成16年4月から受付として、歯科医療事務1名(委託)となりました。また、診療スタイルは、常勤歯科医師1名に、新潟大学医歯学総合病院顎顔面口腔外科学講座より、歯科口腔外科医を週1回、木曜日又は金曜日に、出向してもらい、外来小手術や入院手術を行っています。今回、昭和61年7月に赴任してから21年経過し、病院新築移転後20年経過したことを機会に、過去21年間の外来新患患者の動態及び傾向を調査し、分析することにより、総合病院での歯科口腔外科の在り方や意義について、臨床統計的に観察を行ったので、その概要を若干の考察を加えて、報告します。対象は昭和61年1月から平成18年12月までの21年間に三条総合病院歯科口腔外科に来院された新患患者様で、昭和61年1月から平成7年12月までの10年間は、新患患者数は重複例を含みますが、平成8年1月から平成18年12月までの11年間は重複例を含みません。最初の10年間と最近11年間に分けて、年次別推移、月別新患患者数、性別及び年齢別患者数、居住地域別患者数、疾患別患者数の年次別推移(智歯周囲炎、歯及び軟組織の外傷、顎骨骨折、顎骨の炎症、口腔粘膜疾患、顎骨の嚢胞、軟組織の嚢胞、主な悪性腫瘍、顎関節疾患等)、院外の地域別紹介患者数、院外紹介患者数の年次別推移、最近11年間の外来収入の年次別推移について、調べました。外来収入は平成17年4月の点数改正を機に減少しましたが、最近11年間の新患患者数は年々、増加しており、また院外紹介患者数も増加傾向にあります。新患患者数の増加対策として、開業歯科医や学校保健室への時間外急患受け入れ可能の文書案内や消防署への電話案内、インターネットでの案内、さらに1年に約1回、地元のFMラジオ(FM三条)へ歯科口腔外科疾患のアピールを行っています。
  • 北村 彰浩, 三島 友美, 江端 梨紗, 吉田 慎一
    セッションID: 1D20
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】臨床場面では頚椎頚髄疾患患者が主訴として『しびれ』を訴えることを経験する.しかし『しびれ』とは主観的なものであり,その病態を理解することや上肢機能にどのような影響を及ぼしているのかを理解することは難しいのが現状である.そこで今回『しびれ』が上肢機能,日常生活活動,日常生活関連動作にどのように影響をしているかを検討し,臨床場面の一助とする.【対象】頚椎頚髄疾患患者7名を対象とした.性別は男性2名,女性5名であった.平均年齢は61.6±14.6歳であった.【方法】頚椎頚髄疾患の抜糸習日に『しびれ』の評価としてVisual Analog Scale(以下,VAS),筋力評価として握力,ピンチ力(3指つまみ・側腹つまみ),上肢機能の評価として簡易上肢機能検査(以下,STEF),能力の評価としてTHE DASH THE JSSH Version(以下,DASH)を測定した.尚,DASHは能力の項目のみ評価した.統計的検定としてWilcoxonの符号付順位和検定を用い,有意水準を5%とした.【結果】右上肢のしびれの部位はなしが2名,指・手部が3名,指・手部・前腕が1名,手背・手掌が1名であった.VASでは0が2名,1以上5未満が3名,5以上が2名であった.握力は10kg以下が1名,10kg以上20kg未満が5名,20kg以上が2名であった.3指つまみでは0kg以上3.0kg未満が1名,3kg以上5kg未満が3名,5kg以上が3名,そして側腹つまみでは0kg以上3.0kg未満が1名,3kg以上5kg未満が2名,5kg以上4名であった.STEFでは80点未満が2名,80点以上90点未満が2名,90点以上が3名であった.左上肢のしびれの部位は指・手部が5名,指~上腕が1名,手背・手掌が1名であった.VASでは0がなし,1以上5未満が2名,5以上が5名であった.握力は10kg以下が2名,10kg以上20kg未満が4名,20kg以上が1名であった.3指つまみでは0kg以上3.0kg未満が2名,3kg以上5kg未満が4名,5kg以上が1名,そして側腹つまみは0kg以上3.0kg未満が1名,3kg以上5kg未満が5名,5kg以上1名であった.STEFでは80点未満が2名,80点以上90点未満が3名,90点以上が2名であった.DASHでは40未満が1名,40以上60未満が3名,60以上が3名であった.Wilcoxonの符号付順位和検定の結果は以下の通りである.右上肢においてしびれの程度と有意な差が認められたものは握力・STEF・DASHであった.そして左上肢においてしびれの程度と有意な差が認められたものはSTEF・DASHであった.【考察】右上肢では握力・STEF・DASH,左上肢ではSTEF・DASHで有意な差が認められた.今回の結果からしびれの程度はつまみ動作や握り動作に影響するだけでなく,日常生活の場面においても阻害因子となっていることが考えられる.今後は症例数を増やし,より深く検討をしていく必要がある.
  • 佐藤 敏光, 柳澤 宗, 戸田 恭子, 佐藤 奈菜子, 松岡 悟, 坂本 哲也
    セッションID: 1D21
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】運動療法は糖尿病患者の基本治療の一つであるが、北国に住む者にとって、冬の気温の低さと降雪は運動療法の妨げとなる。しかし、一方で、除雪作業は日常生活に必要不可欠な重労働であり、むしろ活動量が増加することも考えられる。平成18年1月、秋田県は昭和48年以来32年ぶりの豪雪にみまわれたが、翌平成19年1月は降雪が殆んど無い暖冬となった。そこで、この2年における冬期間のHbA1cの変化を比較し、降雪量が糖尿病患者に及ぼす影響について検討した。 【対象】当院の循環器を受診している患者のうち、糖尿病を有し、平成17年11月、平成18年2月、同11月、平成19年2月にHbA1cの測定を行った患者135名。平均年齢72歳±8.4歳、男性70名、女性65名。 【方法】前年11月のHbA1cを基準に、降雪量が最も影響を及ぼすと考えられる翌年2月のHbA1cとの差を?HbA1cとして、カルテから後方視的に調査し、性別、年代別の検討を行なった。降雪量は秋田気象台発表のものを使用した。 【結果】降雪量は平成18年冬417cm、平成19年冬72cmであった。全体では平成18年の?HbA1c(?HbA1c(H18))は+0.1%、平成19年の?HbA1c(?HbA1c(H19))は+0.36%(P<0.001)で平成19年の増加の方が大きかった。性別では、男性は?HbA1c(H18)0%、?HbA1c(H19)+0.38%(P<0.001)、女性は?HbA1c(H18)+0.25%、?HbA1c(H19)+0.33%で男性の方が?HbA1c(H18)は小さく?HbA1c(H19)は大きかった。年代別では、60歳未満は?HbA1c(H18)-0.54%、?HbA1c(H19)+0.17%、60歳代は?HbA1c(H18)-0.1%、?HbA1c(H19)+0.14%、70歳代は?HbA1c(H18)+0.21%、?HbA1c(H19)+0.54%(P<0.001)、80歳代は、?HbA1c(H18)+0.34%、?HbA1c(H19)+0.28%であった。?HbA1c(H19)がいずれの年代においても正で、冬期のHbA1cの増加を示していたのに対し、?HbA1c(H18)は、若年では負になっており、年齢が上がるにつれ増加する傾向が見られた。また、?HbA1c(H18)は80歳未満では、すべての年代で?HbA1c(H19)より小さかった。 【考察】?HbA1c(H19)は、性別、年代別を問わず正となっており、暖冬では糖尿病患者のHbA1cは上昇していた。一方、?HbA1c(H18)は男性ではゼロで、若年では負になっていた。男性、若年者は除雪作業の主な担い手であり、豪雪時には除雪に従事する糖尿病患者ではHbA1cが低下することが示唆された。 【結語】暖冬では糖尿病患者のHbA1cは上昇していたが、豪雪時には除雪作業に従事する糖尿病患者ではHbA1cが低下することが示唆された。
  • ~意識レベルの向上、呼吸機能の改善をめざして~
    久光 教公, 金田 幸子, 角田 倫子, 若重 ゆきえ
    セッションID: 1D22
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに〈BR〉 脳卒中患者の全身状態は改善されても、脳の機能障害により、意識障害、呼吸機能障害を伴う場合がある。そこで、平成17年度より病棟リハビリテーションの一環として、腹臥位療法を取り入れた。初年度、腹臥位療法の実施によって、遷延性意識障害患者の意識レベルの改善が図られることがわかった。これらのことから、2年目からは、気管切開を行っている患者を対象に腹臥位療法を実施することで、意識障害・呼吸機能障害の改善を促し、気管カニューレ抜去につながるのではないかと考え、本研究に取り組むこととした。〈BR〉 _I_ 研究目的〈BR〉  当科に入院中で、意識障害・呼吸機能障害の患者に腹臥位療法を取り入れ、意識障害・呼吸機能障害の改善を図ることができる。〈BR〉 _II_ 研究方法〈BR〉 急性期を脱し、慢性期に移行し(入院から2週間以上経過)、家族から承諾を得られた11名に、腹臥位療法を1日20分間実施した。〈BR〉 _III_ 結果〈BR〉 腹臥位療法の実施により、11例中8例において、追視や発語がみられるといった意識レベルの向上がみられた。これら8例のうち7例は、経口での摂取が可能となった。関節拘縮をきたしていた3例においては、2例で関節可動域の拡大がみられた。また、気管切開患者5例中3例において、呼吸機能の改善がみられ、気管カニューレを抜去することができた。〈BR〉 _IV_ 考察〈BR〉  腹臥位療法を行うことにより、視床下部への刺激を与え、患者の覚醒度が促進されるといわれている。このことより、廃用症候群の予防にもつながり意識レベルの向上や呼吸状態の改善に繋がると考えられる。〈BR〉 気管カニューレ抜去のための条件として、_丸1_痰の量の減少、_丸2_唾液を飲み込むことができる、_丸3_カフなしの気管カニューレに移行している、_丸4_意識レベルの向上などが挙げられる。この条件を満たすためにも腹臥位療法を継続していく必要がある。〈BR〉 _V_ 結論〈BR〉 1. 腹臥位療法を行うことにより、意識レベルの向上、呼吸機能の改善がみられる。〈BR〉 2. 気管カニューレを抜去するためにも腹臥位療法を継続していく必要がある。
  • 浦田 加奈子, 西川 奈津子, 藤岡 陽子, 加藤 彩, 梶川 尚子, 牧野 桃子
    セッションID: 1D23
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    (はじめに)心臓血管外科が当院に新設され今年で4年目になる。医師の指示に基づいて、理学療法士、看護師を中心に心臓リハビリテーション(以下心リハと略す)に取り組んでいる。しかし、看護スタッフの間から、リハビリで行う安静度と看護師の把握している安静度が異なるという指摘があった。そこで、心リハにおける現状とスタッフの意識について調査することとした。 (研究目的)1、看護師と理学療法士の安静度に対する認識の違いを明らかにする。2、心リハへの取り組み現状を明らかにし、改善点を考察する。 (研究方法)1.対象:心リハに関わる看護師(看護師勤務年数平均5.1年、当病棟勤務年数平均2.9年、循環器病棟勤務年数平均3.4年)26名、理学療法士(当院平均勤務年数3.4年3名以降PTと略する。)2.期間:第1回調査 平成18年9月27日~10月3日、第2回調査 実施できず 3.調査方法:1)安静度の認識、確認方法、リハビリへの積極性などについて(資料参考)質問調査表を用いて調査した。2)分析方法は:各質問に対し、_丸1_看護師勤務年数_丸2_当病棟勤務年数_丸3_循環器病棟勤務年数に分類し、F検定後、t検定施行。心臓血管外科発足当時からいるスタッフとそれ以外のスタッフで比較する為、循環器勤務年数について、3年目以下と4年目以上に分類し、2×2のクロス検定を施行しその差をみた。PTについては看護師と区分し、参考意見としてその結果をみた。 4.倫理的配慮:得られた結果は本研究以外では使用しないことを提示し、質問調査表を配布した。また、調査は全て無記名で実施した。  (考察)PTのアンケートは統計的に分析することができなかったが、PTは看護師はリハビリに積極的に関われていると認識している一方、看護師はリハビリに積極的に関われていないと感じているのということが分かった。また、パス表においては看護師が活用できていない現状に比べ、患者が活用している場面を見かけた割合は高かった。さらに、当病棟の勤務年数が多いスタッフほど心リハに対し、改善が必要であると答え、改善点を複数回答している割合が高いということが分かった。つまり、現状の問題点として心リハに関わっているスタッフ間に認識の違いがあること。また、看護師と患者のパス表活用度に差があること。さらに、看護師の当病棟勤務年数により現状の問題点を把握し、改善点を考えていく能力が3年目以下と4年目以上で差が出ていることが挙げられる。これに対し、畦地1)は「心臓リハビリテーションチームとして、多くの職種のスタッフがコミュニケーションを密にしながら、1つのユニットとして動いていくことである」と述べ、他職種間の連携、情報交換の重要性を提言している。このことから、PTと看護師間だけでなく、看護師同士の情報交換をこれまで以上に密にしていくことで認識の違いを少なくできるのではないと考える。さらに、6B病棟勤務年数の多い看護師は少ない看護師に対し指導を行なうとともに、心リハに多く関われるよう援助していくことで、心リハへの問題点を共有していくことができるのではないかと考える。  また、原木2)らは「患者が主体的に取り組むことが出来るものを目指す」ことの重要性を述べており、山口3)は「スタッフは術前の患者の健康維持行動を把握し、患者が継続しやすい運動を患者とともに考えるという姿勢が必要である」と述べている。このことから、患者の個別性を把握し、有効な心リハを行えるよう、改善が必要であると考えた。
  • ~川根町「2006年度 すこやかいきいき教室」~
    杉山  基, 藤田  貴子, 坪井 声示, 玉内  登志雄
    セッションID: 1D24
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉川根町は大井川流域にある人口6236人で高齢化率31.4%(静岡県平均19.8%)、林業と茶農家が大半を占め、川と山に囲まれSLが走る風光明媚な地域である。当院では農村地区の検診事業に積極的に取り組む中、リハビリテーション科でも介護予防事業に参画している。今回は当科が関わる「すこやかいきいき教室」(以下、教室)について紹介し、参加者の変化に見られる介入の効果について報告する。 〈対象と方法〉2006年4月から1年間(18回)、在宅高齢者を対象に午前中2時間、町民センターで運動器の機能低下予防、QOLの向上を目的に開催した。教室は、保健師、看護師、理学療法士、運動指導士、社会福祉士など多職種が関わり、3ヶ月1クールで行った。 介入方法として理学療法士は個々の運動機能評価と日常生活動作能力を基に個別指導を行い、保健師と協議し個人目標と介護予防プランを作成した上で在宅での運動の継続を促した。心身機能の低下や疾病などのために、日常生活の一部に介助を要する虚弱高齢者に対して、保健師と理学療法士で初回と最終回に運動機能評価(握力、開眼片足立時間、5m通常歩行時間)を測定し、あわせて家庭での様子や感想などを聴取した。 〈結果〉5名の虚弱高齢者のうち初回のみ参加の1名以外については経過を追うことができた。対象の平均年齢は82.0±4.5歳、全員女性でであった。  教室では事前に合併症の把握や開始時の健康チェックを行い、虚弱高齢者の対応として内容を考慮し、段階的に運動の目的、種類、強度などを調整しリスク管理に留意し安全な教室運営に心がけた。初期の「コンディショニング期」には運動負荷に耐えられるように、深呼吸やストレッチング、ウォーキングを中心に低負荷での運動を行い、在宅でも運動を行うよう評価に基づく個別の運動プログラムを指導した。「筋力向上期」には運動の種類や強度を漸増し、体力に応じて下肢と体幹筋の増強を行い、在宅での運動も座位から立位での運動に進め、最終的に日常生活活動や余暇活動に対応できるような「機能的運動期」へと展開した。 教室開始時と3ヵ月後の終了時との比較では、運動機能評価のうち5m通常歩行時間のみ全員が改善したが、握力と開眼片足立時間については顕著な改善はみられなかった。聴き取り調査で、教室に参加して楽しい、みんなと会って話ができて嬉しい、運動すると褒められるなどの感想を受け、表情や服装などの変化や生活意欲の向上なども見受けられた。 〈考察〉高齢者の運動効果について、Fiataronrによれば、ナーシングホームに居住するほどの虚弱高齢者であっても積極的な運動介入により運動器の機能向上がもたらされ生活機能が改善し85歳以上の高齢者であっても介入効果が期待できる、とされている。加齢に伴う生活機能の低下に、廃用症候群が関与していることから運動器の機能向上が重要であることは言うまでもないが、その必要性を十分に認識されていないことや運動習慣がないことが多い。在宅での運動の継続や日常生活活動の拡大には生活意欲向上が不可欠である。 今回、教室を通じて参加者の主観的な変化に留まったが、今後効果判定が示せる評価項目の検討を行い、教室参加者と共に教室の事業評価も必要である。
  • ~第2報:血清TSH異常者の分析~
    佐藤 繁樹, 佐々木 沙耶, 西井 由貴, 飯田 健一, 紅粉 睦夫, 真尾 泰生
    セッションID: 1E01
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉当院人間ドックでは2005年度より甲状腺機能障害を早期に発見し、専門医による的確な治療を行い、患者様のQOLを高める目的で甲状腺刺激ホルモン(TSH)測定をドック受診者全員に実施している。 我々は、昨年の第55回日本農村医学会において2005年4月~9月までの当院人間ドック受診者8,303名について、男女別血清TSH分布、男女別基準値の算出、血清TSH低値者の年齢分布及び男女比較、血清TSH高値者の年齢分布及び男女比較の検討を行い報告した。そこで今回は更に例数を増やし2005年度の人間ドック受診者16,664名を対象とし測定値の分析とTSH異常者の頻度および精密検査受診者の解析を行ったので報告する。 〈方法〉調査対象は、2005年4月~2006年3月までの当院人間ドック受診者16,994名(男10,330名・女6,334名、平均年齢 男52.3・女51.5歳)について以下の検討をした。 1.男女別血清TSH測定値の分布 2.血清TSH高値およびTSH低値者の性別・年齢別の頻度 3.血清TSH異常者の疾病分析および頻度 血清TSHの測定は、CLIA法(化学発光免疫測定法)である、アボット社ARCHITECTアナライザー専用試薬「アーキテクト・TSH」を使用した。 〈結果〉1.血清TSH測定値の分布は、高値の方に裾を引く分布(対数分布)となったので全測定値を対数変換し正規分布とし、±3SDを越える測定値を反復切断した後の16,369名(男10,153名、女6,203名)について95%(±1.96SD)の範囲を基準値とした。その結果、全体で0.362~3.665μU/ml、男性0.345~3.299 、女性0.410~4.145μU/mlとなった。また、平均値は男性1.261 、女性1.553μU/mlで女性が優位(P<0.01)に高い値を示した。 2.TSH低値者(0.362μU/ml未満)の頻度は、男性4.1%、女性3.3%で年齢が高くなるにつれ減少傾向を示した。TSH高値者(3.665μU/ml以上)は、男性2.8%、女性4.6%となり男女とも年齢とともに増加したが女性は男性より年齢による差異は少なかった。 3.当院の早期受診基準であるTSH 0.1μU/ml未満120名(0.72%)のうち受診者は95名(当院受診42名、他院受診53名)であった。また当院受診者の診断内訳は、バセドウ病17名、無痛性甲状腺炎16名、潜在性甲状腺機能亢進5名、他4名であった。TSH 5.0μU/ml以上240名(1.44%)のうち受診者は102名(当院56名、他院46名)で当院受診者の診断内訳は、機能低下22名(橋本病14名),潜在性機能低下17名(橋本病5名),機能正常化17名(橋本病3名)となった。 〈考察〉血清TSH値の平均値には性差、年齢差を認めた。血清TSH異常例(TSH 0.1μU/ml未満, TSH 5.0μU/ml以上)は、男性1.8%女性2.7%に認められTSH低値例は若年者に、TSH高値例は高齢者に多く認めた。 甲状腺機能異常の頻度は比較的多く、当院精査受診者から推定する疾病頻度は、バセドウ病0.29%,無痛性甲状腺炎0.27%、潜在性含む機能低下症1.0%であり甲状腺機能障害を早期に発見し、専門医による的確な診断と治療を行うことで患者様のQOLを高める事が出来る事から人間ドックに血清TSH測定を導入する意義は高いと思われる。 また、血清TSH異常者の精検受診率を上げていくことが必要と考える。
  • ~試薬の基礎的検討~
    石原 勝, 三輪 幸利
    セッションID: 1E02
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    緒言〉 亜鉛(Zn)は、生体内のすべての組織内に分布している必須微量金属の1つであり、多くの金属酵素の重要な構成成分として存在し、亜鉛欠乏の検出は疾患の治療に結びつく重要な情報として、味覚障害・創傷治癒遅延や急性重症疾患などに用いられている。 今回我々は汎用自動分析装置で測定可能なキレート発色剤5-Br-PAPSを用いて検体を前処理なしに直接・比色測定する試薬である「アキュラスオートZn」(シノテスト)について院内導入が可能か検討したので報告する。 〈方法〉 測定機器:日立7180型自動分析装置 測定試薬:アキュラスオートZn(シノテスト)検討項目:同時再現性・直線性・プローブコンタミネーション・相関性については測定検体は当院ICUより提出され同時に亜鉛測定依頼(外注)と臨床化学検査依頼があった臨床化学検査用検体を使用し検討した。相関性検討に用いた外注検体は特殊専用容器に採取したものである。 〈結果〉 同時再現性:_丸1_プール血清及び_丸2_Znコントロールを用いて、n=20で同時再現性を検討した結果_丸1_Mean 79.9μg/dl、SD 0.97 CV 1.21%_丸2_Mean 104.0μg/dl、SD 1.34 CV 1.29%であった。直線性:高濃度亜鉛水溶液を希釈し、検討した結果 700μg/dlまで原点を通る良好な直線性が得られた。相関:原子吸光法(外注検査法)(X)とアキュラスオートZn(Y)の相関性についてはn=85相関係数r=0.9601  回帰式y=0.9887×+1.6と良好であった。プローブコンタミネーションについては同時測定で影響が見られた総蛋白(ビューレット法)、アルブミン(BCP法)、IP(酵素法)UIBC(ニトロソPSAP法)との組み合わせについて影響が見られたが、コンタミネーション回避プログラム(ハイキャリノンなどの洗浄)を使用で影響が回避された。 (まとめ) 今回、汎用自動分析装置において同時再現性、希釈直線性、原子吸光法(外注検査法)との相関性において一部の検体で乖離差がみられたがほぼ満足な結果を得た。同時測定試薬等のコンタミネーションの影響については回避プログラムを使用することにより回避できた。また採取管の種類により亜鉛汚染の影響がないような結果が得られ、本法による汎用機での測定は採血業務・血清分離業務など技術的な軽減だけでなく、近年、褥痩との関係から栄養指標として、ICUなどの急性重症疾患などからのの需要も多く院内分析・即時報告をするうえでメリットも多く有用な検査法と考える。
  • ~採血管による影響の検討~
    三輪 幸利, 石原 勝
    セッションID: 1E03
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈緒言〉 近年亜鉛欠乏の検出は褥瘡との関係など栄養指標としてまた疾患の治療に結びつく重要な情報源として需要が多くなっている。しかし特殊な血中亜鉛濃度を調べるうえでは現在多くの施設では外注検査センターで原子吸光法による検体分析が殆ど大部分を占め、特殊専用容器に別採取する必要があり、採血量の増加が懸念され検査結果を得るためには数日要する。また当院において外注特殊専用容器に分注するとき「針刺し」と云うアクシデントが生じたので、採血量の軽減と検体分注時のリスクの軽減を図る為に、臨床化学項目を採取目的とする採取管での同時検査可能か検査データーへの影響等について「アキュラスオートZn」(シノテスト)を用い検討した。 〈方法〉 汚染の影響度は臨床化学項目を採取目 的とする採取管に規定量の精製水、プール血清を加え、倒立にて静置後、Zn濃度を測定し汚染状況を検討した。 測定機器:日立7180型自動分析装置、測定方法:キレート発色剤5-Br-PAPSを用いる直接・比色測定、測定試薬:アキュラスオートZn(シノテスト)を使用し、測定条件等は能書通りとし、コンタミネーション回避プログラム(ハイキャリノンなどの洗浄)を使用し測定した。 〈結果〉 今回の採血管による亜鉛汚染検討では一部の採血管では汚染の影響が認められZn値が高目の傾向を示したが、当院で採用している臨床化学項目を採取目的に使用している採取管(ベネジェクト_II_)では殆ど影響が認められず、他の臨床化学項目との同時採取測定が可能となった。 〈まとめ〉 1. 一部の採血管では汚染の影響が認められZn値が高目の傾向を示したが、当院で採用している臨床化学項目を採取目的に使用している採取管では殆ど影響が認められなかった。 2.市販されている一般的な採取管については亜鉛汚染の無い事が保証されておらず、使用前に各ロットごとに 亜鉛汚染の無い事を確認すれば充分可能と考える。 3.キレート発色剤5-Br-PAPSを用いる直接・比色測定の「アキュラスオートZn」を用いることでより迅速・正確な測定により院内検査導入が可能となった。 4.従来のような外注時の採取特殊専用容器への分注時の手間・採血量・血清分離等業務の軽減が図られ、採血管本数が少なくなる事で採血時・分注時のリスク軽減とコストダウンが図れる。 今後一般的な採取管についても亜鉛汚染の無い事を確認すれば充分他の臨床化学項目との同時採取・院内測定が可能と考えられ、生体内亜鉛に関する知見が深まると確証する。
  • 中村 智之, 西田 修, 原 嘉孝, 加古 裕美, 栗山 直英, 山田 美智, 田村 哲也, 坪内 宏樹
    セッションID: 1E04
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈緒言〉
    亜鉛はヒトの生命維持に必須の微量元素であり,生体内での作用は多岐にわたることが明らかになっている。ヒト体内での含有量は鉄に次いで2番目に多い。鉄の大部分がヘム鉄として存在し機能しているのに対し,亜鉛は約300種もの酵素機能に深く関与し,その多くで活性中心元素として作用したり,DNAやRNAをはじめとする蛋白の高次構造を維持するための構造中心としての役割を担っており,亜鉛は細胞の機能維持に最も重要な微量元素といえる。
    健常人における亜鉛の一日必要摂取量は10~15mg/日とされているが,その吸収については平均43~66%と報告によりばらつきが見られ,健常人における通常の摂食状態では,その必要量がようやく満たされている状況と考えられている。一方,体内プールは約2.0gと少ないため,経口摂取ができず十分な亜鉛補充が行われなかった場合には,容易に亜鉛欠乏状態に陥ると考えられる。
    集中治療管理を必要とする症例では,経口摂取が不可能なうえにSIRSや手術侵襲のために代謝・免疫・抗酸化作用・創傷治癒の活性化により亜鉛需要が亢進し,亜鉛欠乏状態である可能性がある。今回われわれは集中治療管理を必要とする症例において,血清亜鉛濃度測定の意義について検討したので報告する。
    〈対象〉
    2005年7月から12月の6ヶ月間に当院ICUに入室した254症例。平均63.3±15.9歳。最高年齢91歳。最低年齢2歳。男性175名,女性79名。
    〈方法〉
    血清亜鉛濃度の測定は,SRLの原子吸光分析法にて行い,基準値を65~110μg/dlとして検討した。
    〈結果〉
    254例全例におけるICU入室時の血清亜鉛濃度の平均値は47.8±19.3μg/dLであり,入室時の段階で既に血清亜鉛濃度が基準値を下回っている症例が多数であった。 疾患に関わらず入室時血清亜鉛濃度の平均値は低値であり,特に人工心肺使用の開心術後,開腹術後,Sepsis,消化管出血などでは,他の急性疾患に比べて入室時血清亜鉛濃度は低い傾向が見られた。非術後の急性疾患症例に比べ,術後症例における入室時血清亜鉛濃度は有意に低かった。Sepsis以外の非術後症例に比べ,Sepsisの診断でICUに入室した症例における入室時の血清亜鉛濃度は有意に低値であった。さらにSepsis症例のうち,7日以上の集中治療管理を要した症例において,経過中の血清亜鉛濃度と炎症性サイトカインのIL-6との関係を検討したところ,血清亜鉛濃度とIL-6との間には負の相関関係を認めた。
    〈結語〉
    1.集中治療管理を要する症例では,血清亜鉛濃度は入室時より低い傾向が認められた。
    2.希釈の影響が考えられる術後症例や消耗性疾患であるSepsis症例では,入室時血清亜鉛濃度は特に低値であった。
    3.Sepsisでは,炎症が強いほど血清亜鉛濃度は低値であった。
  • 藤谷 富美子, 佐藤 礼子, 小野 久美子, 工藤 由美子, 田村 尚子, 浅野 善文, 菊地 孝哉, 杉田 暁大, 西村 茂樹
    セッションID: 1E05
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈はじめに〉平成17年4月より由利本荘市総合健診受診者全員に,腹部超音波検査を実施することになった。今回,平成17年度の総合健診受診者の腹部超音波検査成績について検討を加えたので報告する。
    〈方法〉平成17年4月から平成18年3月までの一年間に由利本荘市総合健診を受診した3,360名(男性1,415名,女性1,945名)を対象とした。検査方法は,午前中の空腹時に上腹部を中心に規定の走査方法で観察した。一日平均34.3人を午前7時半から二人の技師で担当した。使用装置は,アロカ社のProSound SSD-5500(3.5MHz),ProSound α5 SV(2~6MHz),SSD-2000(5MHz)を用いた。
    〈結果〉受診者は30~79歳であり,平均年齢は59.5歳だった。年代別の受診者数は60歳代が1,196名で最も多く,50歳代を含めると2,221名となり,50歳60歳代で全受診者の66.1%を占めていた。また,どの年代においても男性より女性の受診者が多かった。判定基準別で「正常」と判定されたのは1,107名で全受診者の32.9%を占めていた。正常以外の有所見者は2,253名,67.1%で,そのうち「精密検査を要する」と判定されたのは315名で,要精検率は9.38%だった。年代別の有所見率は加齢とともに高くなる傾向を示したが,男女別の有所見率は男性67.7%,女性66.6%と大きな差はみられなかった。臓器別の有所見者数は,脂肪肝1,062例が最も多く全受診者の31.6%を占めた。その他に肝嚢胞567例(16.9%),胆嚢ポリープ274例(8.15%),胆嚢結石179例(5.33%),主膵管の拡張39例(1.16%)、膵嚢胞21例(0.63%),腎嚢胞507例(15.1%)が認められた。精密検査受診状況は,要精密検査者315名中,223名(70.8%)が健診後に当院の外来を受診し精密検査を受けていた。精密検査後に発見された疾患としては,腹部大動脈瘤2例,腎細胞癌2例,転移性肝癌1例,腸閉塞1例などがあった。
    〈考察〉総合健診は,単に疾病の発見のみではなく,健康増進を目的に複数の検査項目を実施することで健康異常を総合的に評価し,日常生活に活用するような事後指導を行う健診システムである。当院では平成17年度より,総合健診の充実を図るため腹部超音波検査を実施することになった。今回の臓器別の所見で最も多かったのは男女ともに脂肪肝だったが,脂肪肝は動脈硬化症や糖尿病などのメタボリック症候群及び予備軍として,積極的生活保健指導の対象になると考えられる。また今回の総合健診では,自覚症状もなく,採血など今までの健診項目では発見できなかった疾患も何例か発見された。このことは,総合健診における腹部超音波検査の有用性が示唆されたものと思われる。超音波検査は施行者の技術によって精度が異なることが知られている。見逃しのない精度の高い検査を実施するために,我々技師の知識と検査技術の向上,また多くの経験を積んでいくことが必要と考える。今後は,膀胱充満法を取り入れるなど,下腹部スクリーニングの充実も検討していきたいと考えている。
    〈まとめ〉平成17年度由利本荘市総合健診における腹部超音波検査成績について検討を加えた。有所見率は67.1%で,加齢とともに増大する傾向がみられた。また要精密検査者315名のうち3例の癌症例が発見された。健診における腹部超音波検査は悪性疾患の早期発見に有用であると思われた。
  • 小松 浩基, 長尾 専, 水野 誠士, 中尾 達也
    セッションID: 1E06
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 従来、人工心肺下での心臓手術(CABG、弁置換術、弁形成術等)では、脳神経合併症の発症を抑えるために、送血圧を規定することで行われてきたが、術後脳梗塞発症を認めることは否めない。これを減少させることを目的に、当院では2002年4月より、網膜中心動脈(眼動脈)の血流の有無を眼球超音波法(OUS) で確認し、送血流量、送血圧を患者個々に規定したところ、術後脳梗塞が低減されることが示唆されたので報告する。
    【対象】当院において、1997年7月~2006年12月までに実施された841例の心臓手術のうち、CABGのみを実施した287例 (オペ室へ入室時にすでに低血圧等で脳神経系に何らかのダメージを受けた可能性のある症例5例は除外) を対象とした。内訳は眼球超音波を実施した群(OUS群)127例(除外4例)と、実施していない群(NOUS群) 160例(除外1例) である。CABGに限定したのは、脳神経合併症が脳への低圧灌流によるもの以外の要因(空気遺残による塞栓等)を除外し検討するためである。
    【方法・検討内容】OUSは、アロカ社製SSD-2200(術中経食道心エコー装置)付属の 汎用型3.5MHzセクタプローフ゛で行い、1回の施行時間は眼球への影響を考慮し、極力短時間で評価した。
     <1>2群での術後脳梗塞および術後一過性脳神経イベント(術後譫妄、不穏、瞳孔不同など)の発症率と 2群間の有意差
     <2>送血圧40mmHg未満があった群(U40群)と、40mmHg以上を維持した群(O40群)の2群における術後脳梗塞および術後一過性脳神経イベントの発症率と2群間の有意差
     <3>術後脳梗塞および術後一過性脳神経イベントの発症の有無と、麻酔時間、手術時間、人工心肺時間、大動脈遮断時間、低灌流圧時間の時間的要因との有意差
    【結果】 
    <1>NOUS群とOUS群の発症率の差の検定
    術後脳梗塞 :NOUS群160例中5例(3.1%)、 OUS群127例は発症なし(0%)で2群間の術後脳梗塞発症率に有意差を認めた(P<0.05)
    脳神経イベント:NOUS群160例中41例(25.6%)、 OUS群127例中26例(20.5%)でいずれの発症率もOUS群が低値傾向だった。
    <2>O40群とU40群の発症率の検定
    術後脳梗塞 :O40群 142例中3例(2.1%)、U40群 145例中2例(1.4%)
    脳神経イベント:O40群 142例中28例(19.7%)、U40群 145例中39例(26.9%)で2群間の術後脳梗塞、脳神経イベント発症率に有意差は認めなかった。
    <3>時間的要因との検討
    術後脳梗塞 :麻酔時間、手術時間、人工心肺時間、大動脈遮断時間、低灌流圧時間のすべての平均時間において、有意差を認めなかった。
    脳神経イベント :麻酔時間、手術時間、人工心肺時間、大動脈遮断時間では有意差を認めなかったが、低灌流圧時間で発症率に有意差を認めた(P<0.05)
    【結語】術後脳梗塞、一過性脳神経イベントの発症率を抑制するには、従来の人工心肺送血流量・送血圧を規定するとともに、手軽に実施可能な眼球超音波により血流の有無の評価を随時実施し血圧を管理することで、脳神経合併症を低減させ、患者の術後QOLを高めることができる可能性が示唆された。
  • 田中 和幸, 岩本 洋, 庄司 徳代, 黒石 正子, 佐藤 嘉洋, 荒幡 篤, 菅沼 徹, 井野元 智恵, 飯尾 宏, 別所 隆
    セッションID: 1E07
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【はじめに】超音波検査における乳腺腫瘤の良悪の判定には通常Bモードによる判定基準を用いて超音波診断を進めるが、時に判断に苦慮することがある。今回我々はカラードプラ・パワードプラ(以下CD、PDと略)を伴用し、乳腺病変周辺の血流パターンについて検討したので報告する。 【対象】平成16年4月~平成18年10月の間、当院の超音波検査(CD、PD使用)で乳腺病変を指摘しABCを行って病理学的診断のついた良性77症例と悪性45症例の122症例。 【方法】当院ではCD、PD用いた乳腺病変部の評価は以下のように分類している。 _I_.乳腺病変部(腫瘤内部・外部近辺)のvascularityの分類としてisovascular(正常部位と思われる組織とほぼ同等なもの)とhypervascular(正常部位と思われる組織に比べ血流シグナルの豊富なもの)とに分ける。 _II_.乳腺病変外部の血流走行パターンの分類としてType1(腫瘤周囲にスポット状もしくは沿うように描出されるもの)、Type2(腫瘤に対して垂直に向かう(直接的)ように描出されるもの)、Type3(周囲組織に比べびまん性に血流シグナルの不規則な 増勢を認めるもの)、Type4(Type1~3以外)、そして病変外部血流なしの5パターンに分けた。以上の二つの分類について対象の122症例について良性、悪性別に検討を行った。 【結果】病理学的良性、悪性について_I_、_II_分類別症例数を以下の表-1,2に示した。 【考察】病理学的に悪性と診断された45症例の内、28症例(62%)が病変部付近hypervascularであった。また悪性でありながら、17症例(38%)は病変部付近isovascularであったがその内14例はBモードで悪性疑いであった。今回の検討上では、悪性のもののvascularityは良性のものの割合に比べ高く、病変部外部の血流走行パターンも良性では少ないType2の占める割合が多かった。乳腺超音波検査における良悪診断は、Bモードでの日本乳腺甲状腺超音波診断会議による診断基準に従い進めるが、苦慮する場合には積極的にCD、PDを使用し、vascularityが高い場合は悪性を念頭において慎重に検査を行う必要があると考える。また今後は腫瘤の組織型や腫瘤径も含め更なる検討が必要と思われる。      Type1 Type2 Type3 Type4 外部血流なし 計 iso&hypo 15 0 0 0 54 69症例(90%) hyper 1 3 2 2 0 8症例(10%) 計 16症例(21%) 3症例(4%) 2症例(3%) 2症例(3%) 54症例(70%) 77症例 表-1良性と診断された77症例についての分類(77症例) 表-2悪性と診断された45症例についての分類(45症例)       Type1 Type2 Type3 Type4 外部血流なし 計 iso&hypo 2 0 0 0 15 17症例(38%) hyper 3 15 6 4 0 28症例(62%) 計 5症例(11%) 15症例(33%) 6症例(13%) 4症例(9%) 15症例(33%) 45症例
  • 樋田 郁治, 塩崎 正樹, 廣瀬 尚樹, 風間 梨江, 西田 正人, 菊地 慶介, 山本 真
    セッションID: 1E08
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 肺ガン検診の精密検査で行われる気管支擦過細胞診(以下BBC)は主に肺癌診断の補助として古くから用いられている診断領域の検査である。結果は治療方針を左右するほど重要な検査である。従来複数枚のスライドガラスに塗布された患者の一部を検索していたが様々なアーチファクトによりしばしば診断に苦慮する場面に遭遇する。また蓄痰容器は、剥離細胞を良好に保存するため肺ガン検診で利用されている。今回我々は当院呼吸器内科の協力の下、精度向上の観点から蓄痰容器を用いたBBC処理を試みたのでその細胞像を供覧し併せて成績を報告する。 【対象及び方法】 対象は平成17年1月より平成18年6月までの期間で施行したBBCのうちスライドガラス塗布後の擦過器具を蓄痰容器で洗浄後に提出された206例の223件とした。 方法は蓄痰容器からオートスメア法により回収された材料(以下AS)と従来法のスライドガラス材料(以下SG)の間で一致率の比較検討を行った。また併せて対象において組織診が行なわれた170例について最終診断である病理組織学的な側面からの比較検討も同様に行った。さらに細胞診断業務量の差異について鏡顕範囲の面積、鏡顕の所要時間および検査に関わる費用の視点からASとSGの間で比較検討を行なった。 【結果】 ASとSGの一致率は209件94%であった。組織診との一致率はASで137件86%、SGで135件80%であった。またAS及びSGを合わせた細胞診全体では156例83%であった。さらに業務量の差異に関する検討では一枚当りの費用ではASがSGの約2倍であった。標本枚数はAS223枚、SG1434枚のため鏡検所要時間はASがSGの約1/7であった。 【考察】 組織診との一致率はASで高い傾向が見られ精度向上に寄与すると思われた。また今回の検討ではSG作成後にASを実施したためASに偽陰性が増えたが、二例はASのみ陽性を示しており本法の必要性がうかがえた。さらに業務量の差異では一枚当りの費用がASで約2倍増加するもののSGの標本枚数が1/7となることで、総体的な費用の圧縮と鏡検所要時間の大幅な短縮による効率化がはかられた。くわえてBBCの採取から標本作成までの手順が画一化されるため手技の標準化が可能であると思われた。 【結語】 我々臨床検査技師はその技術を活かし地域住民の健康を守っている。効率化によって多くの生命を救う事が出来ると思われた。また機器の先進化が進む臨床検査の中で細胞診断はまだ発展の途上にある。今後も精度向上を踏まえつつ効率的な業務となるように取り組んで行きたいと思われる。
  • 原田 康夫, 山本 敦子, 内藤 淳, 待田 智
    セッションID: 1E09
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     現在、多くの輸血検査室で輸血用血液製剤一元管理を行っている。しかし、血漿分画製剤一元管理を行っている輸血検査室は多くはない。
     今回、当院における輸血管理システムによる血漿分画製剤一元管理の現状と今後の課題について報告する。
    【経緯】
     当院は、1997年6月に厚生労働省より通達された血液製剤10年管理に基づき、1999年11月より輸血検査システム(BTRAS:CSI)を当院仕様にカスタマイズし、輸血用血液製剤一元管理を実施した。さらに、2000年2月より血漿分画製剤を輸血検査室管理とし、同システムによる一元管理を実施した。
    【現状】
     当院輸血検査室では現在、特定生物由来製剤を含む22種類(アルブミン製剤2種、グロブリン製剤8種、凝固因子製剤7種、組織接着剤3種、その他2種)の血漿分画製剤を扱っており、納品から出庫及び履歴管理まで全てシステムにより管理されている。
    【システム管理の利点】
    1. 省スペースで投与記録等の長期管理が可能である。
    2. 記載・確認ミス等人的要因によるミスを回避できる。
    3. システムの検査・製剤追跡画面並びにデータLogを参照し、フィードバックが可能である。
    4. 情報がデータベース化されているため、必要時に情報を抽出することができ、人的負担が軽減される。
    5. 血漿分画製剤Lot個々の有効期限をシステム入力することにより、
    在庫管理に活用できる。
    【システム管理の欠点および問題点】
    1. 製剤Lot・有効期限がバーコード化されておらず誤入力の可能性が
    残る。
    2. 有効期限の表示が統一化されていない。
    3.比較的使用頻度の少ない、あるいは疾患特異性の高い血漿分画製剤に対し、在庫数の設定が困難である。
    4. 力価の異なる同種の血漿分画製剤に対し、製剤バーコードが同一であるため誤入力の可能性が残る。
    【結語】
    当院の血漿分画製剤管理はシステム導入により一元化を可能とした。しかし、製剤Lotのバーコード化等システムだけでは対応できない部分も存在し、各製剤メーカの対応が望まれる。
    また、多くの血漿分画製剤を扱うことにより、相応の知識も必要となる。勉強会等を企画し、技師全体の知識を向上する必要がある。
    今後は、使用頻度の少ない製剤に対し、医師並びに輸血療法委員会との連携を更に強め、過剰在庫を減らし、適正在庫数を設定していきたい。
  • 山本 加代子, 池部 晃司, 白井 和美, 笹谷 真奈美, 水野 誠士, 川尻 なぎさ
    セッションID: 1E10
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    今回、外科領域の術中検査として検査した際に全てのパネルセルと反応する不規則性抗体が検出され、精査の結果、高頻度抗原に対する抗Ku抗体を保有した症例を経験したので報告する。高頻度抗原に対する抗体を保有する場合、ほとんどすべてのパネルセルと反応し陽性となるため、一般病院での同定や抗原陰性血の確保は困難である。このような場合、血液センターとの情報交換や連携が重要となり、主治医との迅速かつ的確な連絡を改めて示唆された1症例である。
    <症例>
    患者 : 66歳 女性 妊娠歴あり 2子出産経験あり  現病歴:2006年12月   胃部不快感出現  2007年1月   食欲低下、体重減少のため他院受診  2007年2月1日 胃癌精査のため当院外科紹介受診      2月13日 膵臓、胃十二指腸摘出手術のため、輸血に備え、 タイプ&スクリーニング実施  既往歴:特になし
    <結果>
    ABO式血液型 O型    Rh式血液型 (+)
       不規則性抗体(カラム凝集法)Pegクームス法、フィシン法 (2+)~(3+)陽性 抗体同定用パネルセルにて、Pegクームス法 自己対照以外すべて(3+)~(4+)陽性 レクチンH(3+)の反応 在庫MAP3本とのクロスマッチ Pegクームス法(4+)  上記の結果より、高頻度抗原に対する抗体の保有を疑い、広島県赤十字血液センターに精査を依頼した。その結果、ABO式、Rh式以外その他の血液型検査をさらに実施したところ、Kell式血液型がK-k-、Kp(a-b-),Js(a-b-)であり、抗Ku血清と患者血球との反応が陰性であることから、稀な血液型K0が疑われた。また、O型K0血球と患者血清との反応を確認したところ、生食法、ブロメリン法、Pegクームス法すべてにおいて陰性であったため、血清中には抗Ku抗体の存在があると考えられた。
    <まとめ>
     全てのパネルセルと反応することから高頻度抗原に対する抗体を疑い、血液センターに連絡し、精査と適合血の確保を依頼した。抗Ku抗体の存在が確認され、適合血が広島に解凍赤血球4単位あるとの連絡があった。主治医には高頻度抗原に対する抗体を保有しているため、適合血の確保が容易ではないことや、解凍赤血球の使用について説明した。高頻度抗原に対する抗体の同定は、一般病院では困難なため、血液センターとの情報交換や速やかな血液製剤供給体制のための連携が重要となると思われた。また今回の場合、術中および時間外に対応した症例であり、タイプ&スクリーニングの事前検査の重要性を再認識し、同定不能な時の適切な対応ができるマニュアルを備えておくことが重要と思われた。
  • 土屋 雅子, 有賀 充江, 伊藤 富雄, 山田 哲司, 吉田 正樹, 野坂 博行, 平石 孝
    セッションID: 1E11
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉Campylobacter fetusはCampylobacterの中でもCampylobacter jejuniによる腸管感染症と異なり、腸管外感染症を起こす場合が多い。C.fetusの腸管外感染で最も多いのは敗血症次いで髄膜炎であり、肺炎・心内膜炎・腹膜炎・脳膿瘍・卵管炎・骨髄炎・関節炎等の多くの局所感染を合併する。今回我々は、C.fetusによる胸膜炎の症例を経験したので報告する。
    〈症例〉
    患者:80歳 男性
    主訴:発熱、呼吸困難
    既往歴:高血圧(65歳)、脳梗塞(76歳)、甲状腺機能低下症(78歳)
    生活歴:ペットなし、鳥類との接触なし
    現病歴:平成18年9月13日より、左側腹部痛出現。9月15日より発汗(+)。9月17日より38.5℃の発熱。当院に9月19日受診し内科にて左呼吸音低下、胸部X-Pにて左胸水を指摘され入院となる。
    〈入院時検査結果〉
    生化学検査:TP 6.5g/dl ALB 3.3g/dl T-Bil 1.2mg/dl AST 45IU/l ALT 17IU/l ALP 322IU/l γ-GTP 72IU/l LDH 232 IU/l CHE 124IU/l CRE 0.8mg/dl BUN 17.2 mg/dl UA 4.2 mg/dl T-cho 113 mg/dl HDL-cho 18 mg/dl Na 137mEq/l K 4.1 mEq/l Cl 104 mEq/l CRP 15.59mg/dl CEA 1.60ng/ml
    血液学検査: Hb 11.0 g/dl RBC 348×104/μl Ht 32.9% WBC 76.2×102/μl PLT 22.4×104/μl 白血球分画 分葉核球 77% リンパ球 15% 単球8%
    胸部X-P・CT:左側胸水(+)
    平成19年9月20日 入院後静脈血にて血液培養実施。胸腔穿刺し胸水を採取。
    胸水穿刺液検査:PH 8.0 比重 1.032 リハ゛ルタ反応(+) 蛋白4.3g/dl 糖84 mg/dl 単核細胞90% 多核細胞10% LDH 509IU/l CEA 1.40ng/ml ADA 33.7IU/l 結核菌(PCR) 陰性。
    〈細菌学的検査〉
    静脈血・胸水を好気性ボトル・嫌気性ボトルに採取し、胸水ボトルにはFOSキットを加え、全自動血液培養装置(BACTEC 9050)にて培養を開始した。培養3日目に血液・胸水共に好気ボトルで陽性。増菌された内容液を無菌的に採取し、遠心分離後沈渣の塗抹標本にて、細長く一部がらせん状に彎曲したク゛ラム陰性桿菌を確認した。沈渣を羊血液寒天培地・チョコレート寒天培地・スキロー寒天培地にて炭酸ガス培養を実施した。培養2日目に直径1.0~1.5mmのS型コロニーの形成を確認。オキシタ゛ーセ゛(+) カタラーセ゛(+)のク゛ラム陰性らせん状桿菌であった為、Campylobacter spp.を疑って同定を行った。同定キットAPIヘリコ(ビオメリュー)にてCampylobacter fetusと同定した。薬剤感受性はディスク法でPIPC・ABPC・IMP/CS・GM・CAM・MINO・CP・LVFX・FOMについて行った結果、感受性(+)と判定した(但し、Campylobacter はフ゛レイクホ゜イントの設定がされていない為、腸内細菌の基準で判定)。患者にはPIPCを朝夕2g14日間点滴静注。体温は入院7日目より平熱となった。10月4日にはCRPが0.61 mg/dl、胸部CTにて胸水著減し、10月7日退院となる。
    〈まとめ〉
    C.fetusによる胸膜炎の症例を経験したので報告した。C.fetusによる感染症は生肉・生肝などの摂取が関与することが報告されているが、今回の症例では感染の原因は特定できなかった。
  • 末松 寛之
    セッションID: 1E12
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    <はじめに>アカントアメーバは1974年に英国で初めて報告され、本邦でも200例以上知られる難治性感染症である。今回、我々は微生物学的検査により診断が確定した自験例2例について検査所見を中心に報告する。
    <症例1>42歳女性。使い捨てのコンタクトレンズを井戸水にて洗浄し、繰り返し使用していた。平成14年5月30日、右目眼痛にて近医受診、抗菌剤とステロイド剤の点眼を処方され、症状改善せず6月7日精査加療希望し当院眼科を受診。
    <症例2>17歳男性。ソフトコンタクトレンズを使用。平成17年8月29日、両目眼痛にて当院受診。角膜の検査所見から、加療入院となった。
    <細菌学的検査所見>角膜の鏡検では、アクリジンオレンジ染色、グラム染色、ファンギフローラY染色のいずれも、上皮細胞に付着するリンパ球大の細胞や厚い壁を持つシスト様の細胞が観察されたが、アメーバと確定はできなかった。
    培養は、納豆菌と加熱大腸菌を餌として用いた。これらの菌浮遊液を濃厚に塗布した無栄養寒天培地の中心に試料を接種、30℃で培養した。翌日、透過光にて観察すると、試料の周囲0.5ミリほどが透明化し、翌々日には約2ミリに拡大した。シャーレ裏面からの鏡検(100倍)では、栄養体が培地表面を蛇行して進んだ痕跡と多数のシストが観察された。シストは強拡で2重の細胞膜構造を持つ多角形、定型的なアカントアメーバの形態であった。
    症例2のコンタクトレンズ保存液とシストのPCRでは、Acanthamoeba polyphagaと同一の増幅産物が確認された。
    <臨床経過>症例1は本症に有効とされる抗真菌剤の治療に抵抗し、入院29日以降、陰性化した。症例2は早期に0.02%ヒビテンが使用され、1週間で陰性化した。症例1はわずかな角膜の混濁を残して退院、症例2は後遺症なく退院、2例とも再燃を認めていない。
    <考察>角膜の鏡検は、試料が微量な上に細胞層が厚く塗沫されると病原体の確認が難しい。アクリジンオレンジやファンギフローラYは、暗視野に目的物が光るため感度が高く、加えて他の染色液を重ねられる利点がある。本例でも、PASやグラム染色に移行できたため、眼科材料には有効な染色法と思われた。
    しかし、虫体は多彩な形態を呈し、特に病初期は虫体量が少ないため鏡検だけで確定することは難しい。ゆえにアメーバの培養は、同定に不可欠と思われる。培養の餌としては1昼夜培養後の加熱大腸菌が知られているが、作成に時間を要とするため迅速性に欠ける。納豆菌は、市販の納豆から菌浮遊液を得られるので培地の作成が短時間で済む点や、発育速度も大腸菌と差がなく検体接種後数時間で栄養型が確認できたことから、有効な方法と考えられた。
    本角膜炎は、治療時期を逸すると失明や視野障害を残すため、検査成績が患者のQOLを大きく左右する。コンタクトレンズの使用、ヘルペスや真菌・一般細菌など他の検査所見、通常の加療に反応しない角結膜炎や眼痛などでは、アメーバの可能性を考慮し、検査を進めることが必要と思われた。
  • 田辺 加奈子
    セッションID: 1E13
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>わが国も高齢化社会を迎え、当病棟入院患者も高齢者世帯が多く見られる。そして、内服薬での疾患管理をしている患者がほとんどである。入院前に内服薬を自己管理していた高齢者患者が飲み忘れ、用量の間違いなどにより残薬数が合わないことがあり、看護師管理となることが多い。今回、その実態を知るためにアンケートを行い検証した。                <結果>(1)患者背景は65歳以上の患者。仕事をしている患者は少なかった。         (2)あなたは処方された薬を指示されたとおり飲んでいますかという問いでは、「きっちり内服している」が10名、「時々忘れる」が6名、「内服していない」は0名。              (3)薬を内服しなかった理由は、「うっかり忘れた」、「外出先で飲み忘れた」が多く、次に「時間が遅れて飲まなかった」、「外出先への持ち忘れ」が多かった。                 (4)あなたの薬は何種類ありますか、薬の量についてどう思いますかという問いでは、5種類以上が最も多く、薬の量については、「ちょうど良いと思う」の回答が1番多かった。        (5)薬の内容や飲み方について医師より説明を聞いていますか、という問いに対して「よく聞いている」が7割以上であった。しかし、内服処方の際、必ず医師や薬剤師から説明があると思われるが、6人に1人は説明を受けていないと感じている。                     <考察>65歳以上の自立している患者は、自宅でうっかり飲み忘れた、または外出先で飲み忘れていたり、持ち忘れていたりしていたパターンが多 いという結果になった。一般的に生理的機能の低 下が見られる高齢者では「うっかり飲み忘れる」リスクが高くなると考えられる。今回アンケートを依頼する際「きちんときっちり内服している」と言っている患者も多く見受けられた。しかし、看護師が入院時、持参薬の残薬を数えたところ、そう答えた方の多くは数が合わないことが多かった。高齢者は、自分できちんと管理できていると思い込み、間違って内服していたり重複して内服している方も多いのではないかと考えられる。種類も5種類以上という回答が多かったことからも種類が多ければ多いほど、その管理は複雑になると考えられる。                入院中は看護師管理であった方でも、退院の際、看護としては何も働きかけがないまま、また同じ状況で自宅で自己管理していく現状がある。退院が決まると、内服について医師や薬剤師から指導が入るが、アンケートの結果から、説明を受けたがあまり聞いていない、あるいは聞いていないという回答もあった。看護師は再度理解したかどうか確認したり、退院後はどのような状況で内服管理をしていくのか、その患者の個々の理解度、能力、家庭環境を知り、看護として関わることも今後必要と考えられる。            
  • ~木炭を使用した場合~
    佐藤 栄子, 細金 佳子, 佐藤 加代美, 尾見 朝子, 片桐 善陽
    セッションID: 1E14
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    _I_ はじめに   当病棟は脳血管疾患などにより、片麻痺、四肢麻痺の患者が多数を占めている。上肢に麻痺がある場合、手掌部が屈曲、拘縮により 湿潤し不潔になりやすく悪臭を伴いやすい。 そこで、消臭、除湿、空気清浄化に効果があり、安全、安価で洗って再利用できるという利点を持つ木炭を用いて、消臭効果を試みた。 _II_ 研究目的:木炭パックを使用することにより、麻痺側手掌の不快臭が軽減でき、有効性を知る。 _III_ 研究方法 1 対象患者   手指拘縮の患者男性2名 女性1名 2 調査方法 調査期間 平成19年2月18日~2月24日 麻痺側の手掌内に木炭パックを握らない状態で入浴当日の入浴前後、入浴後の3日間を6段階臭気強度表示法を用いて職員5人が測定し平均値を出す。 次に木炭パックを使用した状態で同様に調査を行う。 _IV_ 結果 A氏は、木炭パック未使用時の一番高かった数値は3.2であった。入浴直後は1.4、木炭パックを使用してから1、2日目は徐々に減り3日目は0までいった。 B氏は、木炭パック未使用時の一番高かった数値0.4であった。入浴直後は0に減ったが、木炭パックを使用してから3日間ともに数値の変化が少なく、 3日目は0.4となった。C氏は、木炭パック未使用時の一番高かった数値は3.6であった。入浴直後は0.2、木炭パックを使用してから1日目が0まで低下。 しかし2日目は4.2と増加し、3日目には1.6となった。 _V_ 考察 今回、木炭を使用して、手掌内の不快臭を消臭できるかと研究を試みた。対象となった患者は全員、週2回の入浴のみであり、手掌内が汚れていない限り手洗いは行っていない。 また、見た目の変化も少ないことから臭気における対策ができていなかった。 入浴前の不快臭は強く、入浴により不快臭が減少し、時間、日数が経過とともに不快臭の数値が上昇するものと考えていた。 結果、3人の対象患者の手掌内の不快臭の消臭効果は木炭パック使用前に比べて数値的に効果があったといえる。 A氏B氏共に使用後の数値はほぼ無臭に近い少数点での平均値を出すことが出来た。C氏は研究途中の2日目に木炭パックが手掌内から外れていたため、数値がその日だけ異常に 上昇していたことが予測できる。外れていると効果がないということであり、例え短時間でも外れていた場面で数値は上昇し、その後装着した翌日には数値は減少した。このことから、 木炭パックの消臭効果は高いといえる。しかし、麻痺側の手掌内に木炭パックを装着するということは容易に出来ることではなく、今後は握らせ方の工夫が必要である。 今回は臭いを6段階臭気強度表示法を使用し平均値を出すという方法で行ったため、臭覚の個人差は少なかった。木炭の消臭効果により数値的変動は少なく、おおむね不快臭は 軽減できる結果が出た。  _VI_ 結論 木炭には消臭の効果があり、その効果は麻痺手の不快臭の軽減にも有効である。麻痺側手掌だけではなく棟内のさまざまな臭いの消臭に木炭を活用することで、良い療養環境を 提供していきたい。
  • 荻原 園子, 朝倉 喜子, 寺島 三保子, 樋口 夏美, 矢澤 正信
    セッションID: 1E15
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>  当病棟は42床の一般病棟であり、10:1看護加算を取っている。診療科は内科(神経・呼吸器・消化器)で、慢性期・高齢者・重度障害者・介護施設への入所準備期の患者が多くを占めている。また、当院併設の老人保健施設201床を持つ特性からも、医療上の看護・処置のみならず生活全般に介護を要する者が大半である。 そこで平成18年4月1日より、患者一人一人に合わせた十分な日常生活援助を行うと共にQOL向上を目的に、規定の看護師・助手の他に介護福祉士6名が配属された。 この介護福祉士の導入が病棟運営にどんな効果をもたらしたのか、実績調査と看護スタッフの意見から、検討した。 <方法> 1)H17年度とH18年度の当病棟・病院全体の病床稼働率・平均入院患者数を比較した。2)当病棟の病棟日誌より入浴介助・食事介助・排泄介助数について、H17年7月とH18年7月の1日平均介助数を比較した。3)昨年度より継続して病棟に勤務している看護スタッフに対し介護福祉士導入による変化を聞取り調査を行った。 <結果> 1)病床稼働率は、H17年度89.0%H18年96.5%と7.5%増加した。病院全体でも6.8%向上した。平均入院患者数は、H17年度37.4人H18年度40.5人であり、病院全体ではH17年度117.4人H18年度127.0人と9.6人増加した。 2)一日平均の介助者数は、食事介助H17年11.7人H18年21.3人経管栄養 H17年9.6人H18年13.3人入浴介助 H17年4.7人H18年6.3人排泄介助H17年22.2人H18年35.3人と全て増加した。 3)病棟看護師らは、介護福祉士と共同で行った業務の中で、散歩・認知症等の不穏患者対応・病棟内生活リハビリの実施・個別ケア(身体清潔・排泄)・退院に向けたカンファレンスの導入について、効果があったと評価する一方で、業務の多くが看護師の補佐的役割であり、介護福祉士が独自の発想と責任において任される分野が少ない為、介護福祉士がその業務にやりがいを持てないのではないか、と懸念する声も聞かれた。 <考察>  これまでは、重介護患者を多数抱えることで看護師の業務量が増加しすぎてしまい、病床稼働率を高く維持する事は現場看護師の抵抗もあり困難であった。介護福祉士による介護力強化のもと、慢性期重介護患者を当病棟に集中させることで、病床稼働率・入院患者数は向上し、病院全体の稼働率の上昇に繋がった。また、介助者数も全てにおいて増加した。以上の成果は、当病棟への介護福祉士の導入によって実現できたと考えられる。 更に、病棟内で集団レクリエーションや日常生活リハビリテーションを個人の状況に合わせて実施し、多職種による退院に向けてのカンファレンスも積極的に開催されるようになり、今や介護福祉士のいない状況は想像し難い。  今後は、介護福祉士の業務を看護師の補佐的役割にとどめることなく、専門職として介護に独自の発想と責任を持ち、患者一人一人に合わせた介護計画の立案・実施・評価を行うよう改善することで、業務へのやりがいを感じられるのではないかと考える。  また、医療中心に生活している入院患者への介護福祉士の介入には制約も多く、医師・看護師・リハビリスタッフ・医療ソーシャルワーカー等多職種との連携や指示の統一をいかに行うかが、今後の課題である。
  • 春日 由美, 伊藤 智美, 清田 知佐
    セッションID: 1E16
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
    日本における胃がんの発症率は欧米諸国に比べ圧倒的に高いことが知られている。胃切除術後(以後、胃切)患者は食事摂取量低下や、消化・吸収の低下により低栄養状態が持続する。このため、食事に対する不安を持ち続けるのではないかと考えた。
    原口氏らの研究によると、「胃切後食の開始においての不安を20人中17人持っており食べ方や症状の出現に対するものが多かった。」1)と述べられている。また、井上氏らは「パンフレットは医療情報や知識を提供でき、患者教育にも効果があった。」2)と述べている。以上から当病棟では、これらの不安を取り除くためにパンフレットを用いた支援をしている。しかし、当病棟で用いているパンフレットの効果は評価されていないのが現状である。さらに、病棟看護師からも現在使用しているパンフレットの内容が適切であるか?との声があり、今回新たにパンフレットを見直し、そのパンフレットの効果を検討したのでここに報告する。
    <背景>
    研究対象者は11名。うち、男性8名、女性3名だった。胃全摘が5名、部分切除が6名の内訳であった。
    <考察>
    1、 パンフレットを渡す時期:11名中10名が「適切」と答えた。しかし、胃切除したあとの食事について不安の訴えが数人から聞かれた。現在、手術後にパンフレットを渡しているため、患者は今後の食事についての不安を抱いたまま手術に望んでいると考えられる。
    2、 指導法:パンフレットを用いることで、患者とのコミュニケーションの場が作られる。しかし、パンフレットは口頭での説明を強調でき、理解しやすくするための1方法であり、一般的な内容である。そのため、患者の訴えを聞いたり、よりきめ細やかな指導を行うことが患者の不安の軽減につながると考えられる。
    3、 内容:10名が全項目について「わかりやすい」と答えた。しかし、今回は患者の主観的な意見しか調査できなかったため、調査内容が不足していたのではないかと考えられる。
    <結論>
     胃切後患者への指導パンフレットの効果として、以下の事が分かった。パンフレットを渡す時期は9割の人が「適切」と答えたため、よかったのではないかと考える。パンフレットの内容は9割の人が「分かりやすい」と答えたため、適切な内容であったと考えられる。
    _V_、おわりに
     患者教育をする上で、パンフレットの使用だけではなく、個別性を図ることで人間関係を作ることが大切であると学ぶことができた。
     今回、対象者が11名と少なく、アンケート内容も簡潔であったため、多面的に評価をすることができなかったのではないか、と考える。今後、患者の意見を多く取り入れ、パンフレットの改善とともに個別性の看護を提供することが課題である。
    引用文献
    1) 原口他:第34回成人看護_I_2003胃切後患者と家族の退院後の食生活に関する不安要因の分析 P175~177
    2) 井上富博:第33回成人看護_I_2002外来手術を受ける患者への術前オリエンテーションの有効性 P57~59
  • 高木 純子, 岩崎 里枝, 丸原 愛子
    セッションID: 1E17
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    (はじめに)高齢者の多い総合病院では、日常生活援助に介助を要する患者が激増している。そのため、看護ケアの充実を図り、患者により良い看護を提供することを要求されるが、業務が煩雑化しており十分に実践できていないのが現状である。本来、看護師は清潔援助が重要であると認識していながらも十分に実践できていないのは何故なのかを、業務量調査とともに看護師に対する職務満足度からも検討し、清潔援助に影響する要因を明らかにする。 (方法)調査対象:総合病院に勤務する助産師・看護師・准看護師127名。 調査期間:2006年1月17日~1月31日 調査方法:無記名自記入式用紙による、スタンプスらが開発した職業における満足度と、独自に作成した清潔援助に対する満足度の調査を行った。また、同時に看護業務量調査を行った。質問紙の回答を、職務満足度については1~7点、清潔援助に関する満足度については1~4点に点数化し、得点は職務満足度と清潔援助に関する満足度それぞれを集計し、その関連性を見るためにピアソンの積率相関係数を用いた。看護業務量調査は、各病棟において1週間調査した。調査内容は、_丸1_総患者数・担送数・護送数_丸2_入院数_丸3_退院数(死亡退院数も含む)_丸4_手術件数_丸5_検査数_丸6_処置数とした。 (結果)回収率:104(82.5%)。有効回答数:100(96%)。対象看護師の、看護の経験年数平均は12.5年であった。職務満足度の構成要素の割合を示した結果、割合が高い要素には看護師相互の関係の66%、職業的地位の62%が挙げられ、低い要素としては過去に行われた職務満足度調査と同様に、看護業務が40%と最も低く、看護業務6項目のうち「もっとたくさんの時間がそれぞれの患者に対してあったなら、もっと良いケアが出来るだろう」という質問項目に対しての満足度が最も低い結果となり、仕事が忙しすぎて患者に十分な看護ができていないと感じていることが明らかとなった。清潔援助に関する構成要素の割合は、清潔援助に対するやりがいが87%と最も高く、看護業務の中でも、清潔援助が重要であると考えていることが明らかとなった。その一方で清潔援助の頻度は53%にとどまり、重要と感じていながらも実践できていないのが現状である。また、この2つの満足度の関連性をピアソンの積率相関係数で求めた結果、職務満足と清潔援助に対する満足度に弱い正の相関がみられた。看護業務量調査からは、看護業務の中でも、入院対応・ナースコール対応・認知症対応が清潔援助に最も影響しているという結果がでた。 (結論)清潔援助に対するやりがいは高く重要と認識していながらも、看護業務量の多さが清潔援助に影響を及ぼしていることが分かった。看護の基本とも言える清潔援助が十分に行えることが、看護師の職務満足にも影響すると考えられる。
  • 野田 智子
    セッションID: 1E18
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉 慢性疾患がわかったときの親の苦悩は大きい。年齢が小さければ小さいほど、親としての自責の念や将来への悲観、治療内容によっては日常生活が制限され、親の不安や負担は大きくなる。小児科領域は患児自身へのアプローチと同じくらい親へのアプローチも大切になる。そして、親同士のセルフヘルプによる親のエンパワメントを高めることも大切な支援である。今回、地域の身近な取り組みとして、慢性疾患児を抱える親の会を立ち上げたのでその経過を報告する。 〈方 法〉 1. 立ち上げのきっかけ:ある患児の母親の思い  平成17年10月に入院していた2歳ネフローゼ症候群患児の母親が相談室に来談。他の患児や親がどのように生活しているのか、兄弟児へのかかわりにも悩み、長期の付き添い入院がもたらす家庭との二重生活は相当ストレスとなっていた。相談室では母親の気持ちを受け止めながら、様々な事を振り返る機会を提供した。県内の患者会情報も提供したが、集いが遠方で参加困難であり、地域で情報交換ができないものかという話になる。これをきっかけに、患者の親を主体とした親の会を立ち上げる方向で、病院として検討することになる。 2.「若鮎の会」の立ち上げ 平成17年12月、小児科医師、病棟・外来の看護師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーにて協議し、慢性疾患児を抱える親のニーズと対象者について検討した。対象者は、当面は1ヵ月以上の入院生活を経験している可能性の高い院内学級入級者と小児慢性疾患申請者とした。親の会の名称「若鮎の会」は地元木曽川を上流へと泳いでいく若鮎のように、力強くたくましく生きていってほしいという願いを込めて命名した。 〈結果及び考察〉 平成18年2月、87名を対象にアンケートを実施し、35名(40%)から回答を得た。今後の会への参加希望者は28名であった。疾患は、血友病、_I_型糖尿病、慢性腎炎、心身症などである。疾患は違っても「将来への療養上の不安」「兄弟へのケア不足」「経済的な問題」「保育園・幼稚園・学校との関係」など共通の問題を抱えていることが明らかになった。医療従事者や同じ親同士の交流を希望しているにもかかわらず、その機会が得られていない事もわかった。4月に第1回の集いを開催。親同士の経験を語り合い、今後の活動の意義を確認した。9月の休日に第2回を開催し、ゲームや座談会など昼食をはさん家族ぐるみでの交流ができ、日頃の家庭での対応も知ることができた。平成19年3月には入院中の親も交えて第3回を開催。今後の活動は年3回とし、勉強会やレクリエーションなど、より有意義な内容にしていく予定である。 疾患の違う親同士での交流はうまくいくのか内心不安もあったが、治療療養生活上の悩みには共通点が多々あった。特に、親の主体性にかかわる療養上の人手不足やメンタルケアの部分で、親が思った以上に悩み、対処している事実を知り、医療従事者がもっと配慮すべき点が沢山あることを実感した。親を支える事が患児を支えることになるのであり、そのことを忘れずにより充実したサポートシステムを皆で創りあげていきたい。
  • 瀧澤 華織
    セッションID: 1E19
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    _I_.はじめに 当病院のHbA1cの値が高い患者は、外来で医師から値を聞き、その値を糖尿病ノートに記入されるのみで、糖尿病に対する理解が薄く看護師からの指導もなかった。 今回時間の限られた外来の中で、糖尿病指導の方法を考え、実践した事についてここに報告する。 _II_.研究方法 外来受診時に医師の診察終了後に1対1で指導を行う。本日のHbA1cから生活を振り返り、問題点を患者自身から考えてもらう。 次回までにどのようにしたら問題を解決できるか一緒に考え目標を決める。 _III_.結果 3名の患者に対して指導を行った。 _IV_.考察 今回、診療時間内でこのような糖尿病指導を試みたが、外来の流れを乱すことなく、全ての糖尿病患者に対して充分な指導を行う事の難しさを感じた。 1回の診療時間が約5~10分位の中で、糖尿病患者一人一人に対して、隅から隅まで一緒に分析し、指導して行く時間を作ることは難しい。 そのため、自分で健康行動をとれると思われる患者には、糖尿病に関する知識と関心を高めてもらい、自分で自分をケアしていけるようになって欲しいと考えた。 そのためには、まず自分の病状を、受診の時に明らかになる検査データから分析できるようになってもらい、自分自身で原因を追求でき、生活を見直して行けるようになる必要がある。 このことができるようになれば、より個人の生活に密着した問題点が抽出でき、私達外来看護師も、もう一歩進んだ、その患者に本当に必要な個別指導ができるようになると考えた。 そして、患者自身も自分で導き出した問題点については、より生活を改善する意欲が高まるのではないかとも考えた。 実際に今回指導した患者も、1回目の指導時は、「食事が多い。運動しない。」など抽象的だった問題が、指導を重ねるうちに、「寝る前、空腹強く間食する。」や、「膝が痛くて運動できない。」 など原因が具体的な問題になった。問題が具体的になれば、解決策もより具体的になり、患者自身もやるべきことがわかりやすくなる。 自分のやっていることがよく分かるようになれば、頑張れたところと足りなかったところも分かりやすくなり、外来受診した時に成果や課題を語りやすくなる。 その事で一緒に落ち込み、目標達成を一緒に喜んだりすることができ、信頼してもらえる関係ができる。 時には忍耐も必要になるが、患者を「工夫する能力をもっている」ととらえ、患者と話し合いながら、患者自身が自らの生活習慣を考え、工夫できるように、また指導者も患者が必要な知識や 技術を生活に活かせるようにこれからも支援していきたいと思う。
  • 野村 賢一, 中村 治彦, 藤井 友和, 齊竹 達郎, 加藤 三記, 杉本 明子, 藤城 亮子, 福島 優子
    セッションID: 1E20
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    「はじめに」
      病棟薬剤師によるがん疼痛コントロールに対する薬学的ケアの実践の一例として、病棟におけるオピオイド製剤の使用実態をカルテより調査した。病棟看護師に観察項目として押さえておいてもらいたいところ、医師にオピオイド製剤の使用として注意してもらいたいところなどを明らかにするとともに、今後の緩和医療の充実につながる、より患者中心となる疼痛活動ができたので報告する。
    「方法」
    1.対象病棟の概要
    4東病棟 55床 診療科 内科 外科 疾患 糖尿病 透析導入 脳梗塞 呼吸器疾患(肺炎・気管支喘息)がん(胃・大腸・肺・乳・膵) ターミナル
    2.疼痛管理状況の調査
    調査期間2005年4月~2006年3月、がん終末期22症例について、WHO方式に基づいたがん疼痛治療を中心とした疼痛治療薬剤・鎮痛補助剤の使用方法やその副作用対策などを独自で作成した疼痛管理チェックシートに基づきレトロスペクティブな調査を実施した。
    3.病棟薬剤師による病棟看護師への教育活動
     患者QOLの向上を図るためにはチームとして疼痛管理の重要性・必要性の認識を高めることが極めて重要であることから、病棟薬剤師による看護師へのオピオイド製剤を中心とするがん疼痛コントロールについての勉強会を開催した。
    4.教育活動後の病棟看護師への疼痛コントロール意識調査
    病棟薬剤師による疼痛コントロール勉強会開催半年後、病棟看護師を対象に疼痛コントロールについての意識調査を行った。
    「結果」
    1.疼痛管理状況の調査について
    看護師においては看護記録内の観察項目の中で(±)などの記号や痛み自制内という言葉で痛みの程度を表現していたが、痛み評価方法(ニューメリック・スコア、VAS、フェイス・スケール)を使用して数値化しているものはなかった。また、オピオイド製剤投与後の一定時間後の除痛効果確認について実施しているケースはなかった。オピオイド開始によりそれまで使用していたNSAIDsは中止となり本来併用が望ましいがオピオイド単独となるケースが多かった。便秘、悪心嘔吐改善薬は本来定期投与が望ましいが症状の発生した場合に対応する頓服的な投与方法が多かった。
    2.教育活動後の病棟看護師への疼痛コントロール意識調査
    看護師への疼痛コントロール意識調査(対象者21名)では、疼痛ラダーを知っている、麻薬の種類を知っている、麻薬の副作用を把握している、麻薬使用中の患者様の観察項目が分かる、レスキュー後の患者観察については8割強の看護師がほとんど理解していた。
    3.患者参画型の痛み日誌作成
    患者主体の疼痛対策の充実を図るため痛み日誌の作成を試みた。患者参画型の痛み日誌はベッドサイドに置くこととし、患者様が医師、看護師、薬剤師と相談しやすい場所とした。
    「まとめ」
    病棟薬剤師によるがん疼痛緩和への薬学的ケアの実践として疼痛コントロールの現状分析から問題点を見つけ出し痛みのアセスメント方法、オピオイド製剤の特性、副作用、使用方法についてチーム医療の一員として参画した結果、患者様を中心とする質の高い疼痛管理の共通ツールとして痛み日誌をベッドサイドに導入することが出来た。こうした病棟薬剤師の活動により、チーム医療の充実が図られ、即応できる質の高い疼痛緩和治療への第一歩が構築できたものと思われる。
  • ~個別性のあるアセスメントシートの使用を試みて~
    杉原 周子, 増井 雅江
    セッションID: 1E21
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉<BR> 1986年に発表されたWHO癌治療の普及により、わが国における癌患者の痛みはかなり改善されてきたが、癌性疼痛緩和の有効率は40~50%に過ぎないという評価がある。その原因として、痛みはあくまでも主観的であり、誘因が複雑になることで痛みの程度を数値化し評価することを難しくしているためと思われる。しかし、緩和ケアを含む医療の目的は、患者・家族のQOLの向上にあり、生が続く限りその人なりのかたちで希望を持ち続けることができるよう援助することにある。したがって、患者の日常生活や思いをより深く知ることで、個々の生活スタイルに合わせた疼痛アセスメントを行なえると考え、アセスメントシートの作成を試みた。それにより、患者の訴えや痛みの度合いを表出しやすくなったという結果が得られたので報告する。<BR> 〈方法〉<BR> 1研究期間:H18年8月~11月<BR> 2研究対象:泌尿器科外来に通院している癌患者3名とした。条件として、病名を告知され、疼痛コントロールを行なっている患者とした。<BR> 3倫理的配慮:患者には、研究の主旨を説明し、承諾書に署名を得て協力を確認した。<BR> 4研究方法:患者情報はカルテや聞き取りによりおこなった。記入しやすさに留意しアセスメントシートを作成し、使用前後に患者に聞き取り調査をし、感想の比較をした。又、シートの評価及び修正は、外来受診日(2~4週/1回)施行し、最終的に個々のシート活用状況の検討、3名のシート活用状況の比較検討をした。<BR> 〈結果・考察〉<BR> シート記入状況・_I_氏:人体図へ直接記入し活用されていた。蜂窩織炎による入院にてシート記入中断した。_II_氏:物忘れがひどいという事で、普段より内服内容や症状を日記につけていたため、シート記入との二度手間にもかかわらず、毎日記入できていた。それにより、症状悪化時の原因、対応がスムーズにできた。_III_氏:症状が安定しており、自分のおもいは言えているという理由で、シートへの記入がおろそかになっていった。_I_、_III_氏のように、自分の思いの表出や疼痛コントロールが出来ている患者に対しては、選択方式によりC欄(どのように痛むか)D欄(痛みの変化)が直接人体図に記入でき、レスキュー使用時間、睡眠、便通、吐き気の有無欄のみの簡潔に記入できるシートで良かったと思われる。また、聞き取り調査では、「コントロールできているから記入しなくてもよい。受診時、言いたい事を忘れがちになってしまうが、シートを見せることにより、医師や看護師にわかってもらいやすかった。」という意見であった。3名の共通点として、手間や表現法に困難のない選択方式は、しっかり記入されていた。しかし、フェイススケール欄は判断基準が難しかったことや、痛みの変化がなかったことで、未記入が多かった。そこで、例えば読書好きの人のスケールは、0:痛み無く楽しく読書できる1:痛みは弱く読書できる2:痛みはあるが読書できる3:痛みがあり読書する気になれない4:痛みが強く読書できない5:痛みが強すぎて読書どころではない等、個別性をふまえた表現方法であったほうが、記入しやすかったと思われる。 <まとめ><BR> 個々の生活スタイルにあったシートを完成させるには至らなかったが、シートを導入したことで、患者の訴えを表出しやすくなった。<BR>
  • ~TQM活動を通じて~
    高木 嘉孝, 齋藤 宏明, 村山 明, 榎本 紀夫
    セッションID: 1E22
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当院ではTQM活動を院内全体の取り組みとしている。TQMとは「全体で医療、サービスの質を継続的に向上させること」を意味し、その手法を身につけることにより、改善を進める体質作り、サービス向上を含めた質を向上させることが目的である。今回薬剤科として「抗癌剤プロトコル登録」のテーマを選択し活動を行った。その取り組んだ内容、及び当院における外来化学療法の現状及び今後の課題等についてまとめた。
    (現状把握)薬剤科での抗癌剤調製はH14年11月より抗癌剤個人セット払い出しを開始。H16年2月より外科外来で行うインフューザーやシリンジ充填を除く抗癌剤調製を開始。H16年6月よりインフューザーやシリンジ充填を除く入院も含む全科での調製開始。H17年1月より外科外来のみインフューザーやシリンジ充填を含めた全症例の調製開始。H17年11月から入院外来の全症例調製開始と順次対応の拡大を行い、現在に至る。開始当時プロトコルの登録は行わず、薬剤個々の添付文書で処方内容の確認を行っていた。また化学療法注射箋も身長体重の記載欄は無く、体表面積も1.5m2で計算し、薬剤投与量の監査を行うなどの状況であった。その後プロトコル登録を行うも9療法の登録のみであった。
    (原因究明)プロトコル登録未実施に対し、各診療部長に対しアンケート調査を実施した。結果登録の必要性は理解しているが、多忙の為登録に取り組めていない。またすべての療法を把握している訳ではないことが判明した。
    (改善策の検討)問題解決に向けた重要要因、その具体的対策を考え、効果性、実現性、定着性、重要性を点数化した結果、現在実施されているプロトコルの明示、プロトコル登録用紙の変更、関連委員会の設立を行うこととなった。
    (改善策の実施)化学療法数調査時は32療法が存在しており、該当診療科部長へすべて明示し、結果39療法の登録が実施された。プロトコル登録用紙は、ほぼ自由記載であった書式を、必要記入事項を明確にした書式に変更した。また関連委員会として化学療法委員会を設立した。院内で協議する場を明確にし、化学療法マニュアルを作成、化学療法注射箋の変更、院内周知を行った。その他薬剤科の取り組みとして、用法用量の一覧リストの作成、及び併用禁忌・副作用の一覧リストの作成、各々のファイリング、登録プロトコルのエビデンス収集、PCにて抗癌剤投与に関する患者及び投薬管理が出来るデータベースの構築を行い、投与スケジュール管理が行える体制を整備した。
    (外来化学療法)現在化学療法は院内全体で63療法の登録があり、毎日平均外来4.6名、入院1.2名の患者に対し調製、投与を行っている。調製は実施連絡後に行い、調製終了後外来に連絡し、薬剤の搬送を行っている。
    (課題)新規プロトコル管理、内服抗癌剤の投与管理、内服注射併用時の投与管理、化学療法の処方監査の充実、最新治療法の情報収集・分析・提供・保存、全化学療法に対して薬剤管理指導の実施、H21年化学療法室設立時、薬剤師が1名出向となる。それに向けた癌専門薬剤師の育成等が課題と考える。
    (結語)TQM活動を通じ化学療法に関し、抗癌剤プロトコルの整備、化学療法委員会の設立、薬剤科での抗癌剤全症例無菌調製、患者データベースの構築、など多くの課題に着手し成果を残すことが出来た。今後もTQMの手法を活用し、多様な業務に対し積極的に取り組みたい。
  • 竹下 秀司, 岡田 奈月, 松山 耐至, 成島 春代, 川合 信行, 玉内 登志雄
    セッションID: 1E23
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉様々な薬剤耐性菌の出現が話題となっている昨今、抗菌薬の適正使用は国、地域、各医療施設が取り組んでいくべき重要な課題と言える。抗菌薬を適正に使用するためには、まず各医療施設における抗菌薬の使用動向を把握する必要がある。  JA静岡厚生連 静岡厚生病院(以下当院)では2005年3月から注射抗菌薬の使用量(使用本数)調査を行い、院内感染制御チーム(ICT:Infection Control Team)で検討している。この方法では病床稼働率が反映されず、使用量の大まかな目安にしかならない。  そこで、今回WHOが提唱するATC/DDD(Anatomical Therapeutic Chemical/ Defined Daily Dose)Systemを用いて、注射抗菌薬の使用動向を調査した。また、注射抗菌薬使用量と院内検出菌との相関性について検討したので報告する。 〈方法〉2005年4月から2007年3月までを調査期間とした。対象とした抗菌薬は、当院で採用されている注射抗菌薬のうち、22種類とした。各抗菌薬の使用数量は、オーダリングシステム端末の注射薬剤集計ソフトから入院使用に限り月毎に抽出した。抽出された数量と月毎の病床数及び病床稼働率を、WHOが提供する計算ツールソフトABC Calc(Antibiotic Consumption Calculator. Version3.0)に入力し、各注射抗菌薬のDDD/100bed daysを算出した。得られたデータは3ヶ月を1区間として比較検討した。  院内検出菌は調査期間内に入院患者から検出されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、緑膿菌、マルトフィリア菌について、抗菌薬使用量との相関性の検討を行った。検出菌件数は、当院臨床検査科細菌検査室の検出菌集計システムから月毎に抽出した。同一患者で同月に複数回同一菌種が検出されている場合は、1件としてカウントした。 〈結果〉_丸1_注射抗菌薬使用動向 当院における調査期間内の抗菌薬のDDD/100bed daysは約8~13であった。これは、1日100床あたり約1割前後の入院患者に抗菌薬が使用されていることを意味する。ペニシリン系、セファロスポリン系、カルバペネム系の使用量推移の比較では、セファロスポリン系の使用量減少に伴いペニシリン系の使用量増加が見られた。カルバペネム系は増加傾向が見られた。また、セファロスポリン系各世代とカルバペネム系の使用量推移の比較では、第2世代の使用量減少に伴い第1世代の使用量増加が見られた。第4世代はほぼ横ばい状態であった。抗MRSA抗菌薬ではバンコマシンとリネゾリドの使用量は相反していたが、2剤の合計は増加傾向にあった。 _丸2_抗菌薬使用量と院内検出菌の相関性  MRSA、緑膿菌、マルトフィリア菌の各検出件数と抗菌薬使用量との相関は認められなかった。しかし、MRSAと緑膿菌の検出件数には正の相関があり、また抗MRSA抗菌薬と抗緑膿菌抗菌薬の使用量にも正の相関が認められた。 〈考察〉ATC/DDDSystemを用い注射抗菌薬使用量を算出することで、当院における抗菌薬使用の動向が明らかとなった。内訳としては、ペニシリン系、第1世代セファロスポリン系の使用量増加が見られ、抗菌薬の適正使用が行えつつあると考えられた。一方広域スペクトル抗菌薬と抗MRSA抗菌薬の使用量増加に加え、MRSAと緑膿菌検出件数の相関から、治療による重感染の誘導が示唆された。これは、今後の抗菌薬適正使用に向けた課題となると考えられた。
  • 栗林 正彦, 森泉 ゆか, 西沢 延宏
    セッションID: 1E24
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院では、平成6年よりDPCへの対応を進めてきた。平成6年、診療情報管理課を設立し、平成10年より厚生省による入院医療費定額支払い制度の調査協力に参加した。平成11年日帰り手術センターを開設、平成16年DPC対策委員会を発足、平成18年4月よりDPC導入を行った。当院におけるDPC導入のポイントは、1)医療の質を上げる為にDPCを導入する。2)患者さん本位の医療は変えない。サービスの低下を起こさず、日常の医療を継続して提供する事であった。当院薬剤部では、以上のポイントを踏まえ、医療の向上と質の確保を目指し対応を行った。目標として、安全な医療の提供、医薬品の効率的な運用、地域院外薬局との薬薬連携の推進を上げ、取り組みを進めた。 <活動内容>効率的な医薬品の運用では、経済面より、後発医薬品の導入を上げた。平成18年4月当時、当院の採用医薬品は、全体で1742品目(内・後発医薬品75品目)後発医薬品(保険診療上の後発医薬品)の採用医薬品に占める割合は4.3%であり、当院では後発医薬品の使用に対して、積極的ではなかった。その為、後発医薬品に対して医局の認識を高める目的で、平成18年4月より始まった、「後発医薬品変更可処方箋」発行の推進に取り組んだ。3月にオーダリングの設定と医局及び地域2薬剤師会に対して説明会を行い、理解と協力を求めた。5月に後発医薬品WGを立ち上げ、後発医薬品導入の準備に入った。医師の後発医薬品に対する意識調査と協力を求める事を目的に、6月に医局へ後発医薬品アンケート調査を行った。アンケート結果を尊重し、7月より抗生物質注射薬を中心に、順次3月までに31品目の後発医薬品を導入した。 安全な医療の提供では、DPC導入により後発医薬品の使用増加が予想され、入院時持参薬を含め安全な薬物治療の確保を目標に、薬剤管理指導の推進を上げた。当薬剤部は、薬剤師25名中21名(内・新人4名)が兼務で薬剤管理指導業務を行っている。病棟業務を推進する為、病棟師長、看護師の理解と協力を得る事を目的に、全病棟(全17病棟)に対し薬剤管理指導アンケート調査を行った。その結果、病棟と担当薬剤師との連絡不備の問題が第一に上げられた。対策として薬剤師全員にPHSの支給を行い、問題を解決する事で成果が得られた。 <結果>後発医薬品変更可処方箋では、後発医薬品を含む処方箋発行率は、3月17.5%が4月68%に上昇した。後発医薬品導入により、18年度医薬品購入費(薬価計算)が2870万円減少した。薬剤管理指導実施数は、PHSの導入により、1600件台/月より2000件台/月に上昇した。 <まとめ>DPC導入に対しての取り組みを、経済的な面より捕らえた。しかし、第一目標である安全な医療の提供を確保するため、課題である後発医薬品の評価、入院時持参薬の対応、病棟活動の推進、外来治療への参加、薬剤過誤の防止など安全対策を、経済基盤の安定化と共に、医薬品の適正使用の推進を目標に、今後も取り組んでいきたい。
  • 今村 裕司, 藤野 明俊, 末松 弘志, 稲垣 秀司, 後藤 博, 渡邉 映元, 吉村 明伸, 山田 佳未, 田中 孜, 鷹津 久登
    セッションID: 1F101
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 心臓腫瘍に対して従来行われていたCT検査では,設定スライス厚・モーションアーチファクトにより存在診断にとどまっていたが,多列化したマルチスライスCTの出現で多心拍から同一心位相のデータ収集をする再構成法が実用化され,腫瘍の形状・内部構造・発生部位等が明確に診断可能となった。今回我々は,造影剤アーチファクトが最も影響する右房・左房の腫瘍が良好に描出できる造影剤注入法について模擬ファントムで基礎的実験を行い,臨床応用を行ったので報告する。 【使用装置】 東芝社製CT装置:Aquilion multi 16 super heart 造影剤注入器:根本杏林堂オートエンハンスA-50,DIP50,Dual shot ワークステーション:ZIO M900 QUADRA 【実験方法】 1、発泡スチロール内に,熱収縮チューブを設置する。ファントム外部から2本の血管を想定した造影剤(イオパミド-ル300mgI注入速度2~3mL/secと血液を想定して希釈造影剤50HU)を自動注入し,ファントム中心合流部でダイナミックスキャンを行い造影剤アーチファクトを視覚的評価した。 2、上大静脈を想定した自作ファントムを作成する。方法1と同様の方法で行い,造影剤(イオパミドール300mgI注入速度1~4mL/secと水)を同時自動注入し,アーチファクトを視覚的評価した。 【結果及びまとめ】 1、造影剤アーチファクトは,異なるCT値をもつ物質によるもので,人体に置き換えれば周囲組織・骨などの影響によって起こるものと同じである。 2、このアーチファクトは,造影剤と血液が複雑に混じり合う乱流によって助長され,さらに造影剤注入速度を上げることで増大する。 以上のことを踏まえて造影剤注入法を決定した。 右房腫瘍に対して3段階注入とする(使用造影剤)イオパミドール300mgI 100mL 1段階注入 造影剤3.5mL/sec 75mL 2段階注入 造影剤1.2mL/sec15mL+生食1.2mL/sec15mL を同時注入 3段階注入生食1.2mL/sec30mL 左房腫瘍に対して2段階注入とする(使用造影剤)イオパミドール370mgI  100mL 1段階注入 造影剤3.6mL/sec60mL 2段階注入造影剤1.8mL/sec32mL+生食1.8mL/sec32mLを同時注入 上記の造影剤設定条件によって,腫瘍の形状・発生部位・内部構造が造影剤アーチファクトの影響を受けず明確に描出でき臨床的に有用であった。また,冠動脈・心機能評価など多くの情報を同時に収集することができ診断の一助となった。
  • 小森 竜太, 土屋 十次, 仲田 文昭, 今井 信輔
    セッションID: 1F102
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    CT画像診断に必要な分解能は、空間分解能・時間分解能・コントラスト分解能の3種類だが、MDCTでは前二者の分解能は飛躍的に向上した。したがって、MDCTの利点を生かすには、コントラスト分解能の向上が重要となる。すなわち、造影剤を急速注入することで対象となる臓器の造影効果を従来よりさらに高いコントラスト分解能で得られる。CT用造影剤シリンジ容器には、プラスチック製とホウケイ酸ガラス製とがある。シリンジ容器の材質の違いによって注入圧に変化が見られるか実験、検討した。造影剤メーカー4社の造影剤(オムニパーク、イオメロン、イオパミロン、オイパロミン)を同じ条件下で注入した時の注入圧の変動を比較した。 〔使用機器〕造影剤注入装置デュアルショット(根本杏林堂) パソコン 〔方法〕 造影剤メーカー4社の造影剤シリンジ容器(オムニパーク、イオメロン、イオパミロン、オイパロミン)に水を入れて注入速度2ml/sec、3ml/sec、4ml/sec、5ml/secの時の注入圧を比較する。デュアルショットにシリンジをつけてエクステーションチューブをつたってバケツに水を注入する。注入圧データはデュアルショットに出たグラフをそのままパソコンに取り込みデータ処理する。各シリンジごとに、注入速度2・3・4・5ml/secで各々異なるシリンジ10本、計160回における注入時間(sec)と注入圧(kg/c_m2_)をグラフで表した。また5本のグラフの平均をだしてまとめた。 〔結果〕 注入速度2ml/secについては、注入圧変動が2kg/c_m2_以内でメーカー間の相違はなかった。 イオメロン、イオパミロンシリンジ容器は、注入速度4ml/sec以上では、注入圧変動が大きくなる傾向を示した。 イオメロンシリンジは、4ml/sec以上になると、他の2メーカーより注入圧が高くなる傾向を示した。 オムニパーク、オイパロミンシリンジ容器は、容器ごとの変動が少なく安定した容器であることが確認できた。 注入速度が上がるにつれて注入圧の変動が少なくなった。 各シリンジの5回の変動は、イオパミロンがやや変動があった。 〔考察〕 今回行った実験では、使用済みシリンジ容器であり、加温、造影剤濃度、粘調度、シリコン塗布等を考慮せずに、容器本来の評価で行った。今後、臨床で行う上記の条件で検討を行っていきたいと思う。
  • 古庄 剛, 土谷 龍彦, 丹田  忠公, 大原 真知子, 大賀 正俊, 鈴木 浩司, 加賀 明彦, 明石 光伸
    セッションID: 1F103
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
    1997年に日本脳ドック学会より発表された『脳ドックのガイドライン』が2003年の改訂により検査項目に血管壁隆起性動脈硬化性病変(プラーク)や狭窄・閉塞病変の観察を目的とした頚部血管超音波検査(以下US)が加わり脳ドックにおいて頚部血管の評価が異なる2種のモダリティにより行われるようになった。今回異なるモダリティ間での頚部血管の描出の相違を当院脳ドックの結果より検討する。
    <目的>
       頚部血管のモダリティによる描出の相違を検討する。
    <方法>
    _I_ 当院脳ドックの結果より頚部MRA所見とUS所見を比較する。
    _II_ 異常所見を指摘された画像を互いに比較する。
    <対象>
     2006.1~2006.12の当院脳ドック受診者138名(男性85名 女性53名)平均年齢55.6才
    <結果>
    _I_ 頚部MRAで異常なし137名で動脈硬化疑い1名であり、頚部USで異常なし89名で動脈硬化49名であった。
    _II_ 頚部USにてプラークを指摘された症例について再度頚部MRAの見直しを行ったが頚部MRAではプラークの存在を同定できるような所見は認めなかった。
    <考察>
     MRAは血管内腔を描出し、USは血管壁を描出している。モダリティの違いによる描出の相違を脳ドックの結果にて調べたが、血管壁の変化をMRAでは描出できていなかった。要因としてプラークの大きさ・形があると考えられる。MRAのTOF法は血流によるin-flow効果を利用し画像を作成するため、著しく血流を妨げるような大きいプラークや限局的な肥厚であれば血流に変化が生じMRAにて描出可能と考えられる。次にMRA観察時のウインドウとレベルもプラーク描出には一因となると考えられる。今回MRAの画像をビューアにて画像調整しながら観察を行うと頚部USにてプラークを指摘された同部位に信号の低下を認めプラークとの関連が考えられた。もちろん乱流等の影響も考えられるが、乱流の原因にプラークがあるとすれば、読影時に画像調整ができ血管内の信号の変化が判るような環境設備があると良いと考える。
  • 赤川 浩司, 池澤 正明, 内田 和仁 , 武石 敏雄, 中沢 洋治
    セッションID: 1F104
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <背景>
    当院では従来、急性脳血管障害(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)患者に対しては、アンギオ検査を行っていた。しかし現在では、MDCTの普及により3D-CT Angiography(以下3D-CTA)の依頼が増加している。
    2007年1月より、tPA治療を行うため、3D-CTA 検査を24時間体制で行うことが決定し、休日、夜間においても迅速な対応が必要となった。従来は電話にてCT担当者を呼び出していたが、それでは対応が遅くなり問題が生じると考えられた。
    <目的>急性脳血管障害患者に対し、すべての技師が頭頚部CTA検査に対応できるトレーニング体制を整える。
    <方法>
    1. 検査手順を可能な限りシンプルにするため、最低限の検査プロトコルを作成した。トレーニングではそれをベースに使用機器の取り扱い、患者のポジショニングなど各技師に説明し理解させた。
    2. 内容説明だけでは、手技及び撮影タイミングにおいてミスをする恐れがある。そのため、毎日の始業時間前に、頭頚部CTA検査予定時刻を各部署に伝え、実際の検査に立ち会うことができる体制にした。また、救急検査時においても同様とした。
    3. 複雑な行程を必要とする画像作成においては、各技師の空いている時間に画像作成ソフトの操作、脳血管のVolumeRendering(VR)画像、内頚動脈のMPR画像作成プロトコルを説明した。
    4. 一通りのトレーニングを経験した技師は、時間外検査に一人で検査に対応する事となるが、疑問が生じた時にはすぐにCT担当技師と電話で対応できるようにした。
    <結果と考察>
    現在では、多くの技師が検査対応可能となった。そのため、緊急のCT担当者の呼び出しはなくなり、より迅速に情報提供が可能となった。また、3D-CTA検査トレーニングの効果により脳動脈瘤クリッピング后のフォローアップや、他の部位のCTA検査等にも広く対応が可能となっている。このことからも、トレーニングの効果は大きいと考えられる。しかし日常業務のシフト上の問題でトレーニングに参加が出来ない、参加しても担当する順番が回ってこない等の問題があり、日直当直勤務をする技師全てが検査可能という訳ではない。また、複雑なVR画像、MPR画像作成にはまだまだ時間がかかることも問題であり、さらなる時間の短縮が必要である。
    現在、時間外勤務における3D-CTA検査は増加していることからも、今後は、より多くの技師の検査習得を進めていく必要がある。またCT同様に緊急MRI検査にも対応できる体制も整える必要がある。
  • 大胡田 修, 小屋 謙介, 佐藤 雅浩, 三谷 登史恵, 島田 敏之, 小野 尚輝, 浅井 太一郎, 石川 雅也, 新井原 泰隆, 大川 伸 ...
    セッションID: 1F105
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     MRI装置およびソフトウェアの進歩のスピードには目を見張るものがある。しかし装置の性能やソフトウェアの機能がいくら進歩しても、不均一な局所磁場に起因する防ぎようのないアーティファクトが生じる場合が多々ある。
     これに対し、以前はSat Padと呼ばれる画質向上用人体装着パッドが用いられていた。これはMRIにおいて形状が一定でない部位や複雑な部位で、磁場の均一性を向上させるとともに、固定用パッドとして用いることにより、動きによるアーティファクトも軽減することを目的として使用された。特に磁場の均一性が要求される脂肪抑制画像での画質向上のために用いられることが多かった。しかし1セット150万円程度と高価であったこと、中身が液体(水素原子を含まない過フッ化化合物の泡状物質)のため、沈殿により磁化率が変化してしまうという弱点と、破損した場合に液体であることから収拾がつかなくなるという弱点のために、広く普及しているとは言い難い状況であった。
     今回当院に、約1/3の価格で、これらの弱点を克服したスキャン・サポート・パット(以下S.S.P)が導入された。実際に健常ボランティアで使用してみたところ、S.S.Pの使用前と使用後では、特に頸部・頸椎領域で画質の向上が顕著であったので、画像を供覧しつつその特徴についても報告する。
    【S.S.Pとは】
     S.S.Pは、磁化率を生体組織に近似し、かつわずかに水素原子を含ませた約580mm×150mm×20mmの板状ゴム状のパットである。具体的には、ポリオールブレンドを原液とし、イソシアネートの硬化剤を用いて硬化させることのできる低硬度のウレタン系素材をベースに、四酸化鉄の微粉末をごく微量加えて成形することで、磁性体を固体内で安定した状態で保持することができ、また任意の形状のものを作成することを可能としたものである。
    【使用装置と方法】
     使用装置はGE社製1.5Tesla MRI装置のSigna HDおよび同じく1.5Tesla MRI装置Signa Infinityである。
     健常ボランティアは男4名、女2名の計6名で、頸部および頸椎のT2強調画像、脂肪抑制併用T2強調画像およびT1強調画像などにつき、S.S.Pの使用前と使用後の画質を比較検討した。
    【結果】
     S.S.Pを装着して得られた画像では、全例で局所磁場が均一化した良好な画像が得られた。特に脂肪波抑制画像での効果は顕著で、撮像範囲内で非常に有効な脂肪抑制効果が得られた。また安全な固定具としての役割も果たすことにより、モーションアーティファクトの軽減にも有効であると思われた。
    【終わりに】
     S.S.Pは、従来の画質向上用人体装着パッドと比較して非常に安価で、価格面で導入を躊躇する理由はもはや無いと思われる。使用により得られる効果は顕著であり、脂肪抑制画像では特に有効であった。
    今後は末梢の整形外科領域に使用できるようなサイズのものも提供されるようになることが望まれる。また特に低磁場MRI装置でのS/N向上のために、各装置での磁場強度に適した成分配合のパットが開発されることで、広く普及していく可能性があると思われる。
  • 平井 良, 大胡田 修, 島田 敏之, 小野 尚輝, 浅井 太一郎, 石川 雅也, 新井原 泰隆, 大川 伸一, 中島 三千代, 鈴木 靖彦
    セッションID: 1F106
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     第55回日本農村医学会学術大会にて膵・胆道系腫瘍のLAVA法の有用性について報告した。前回の大会では膵・胆道系腫瘍にLAVA法が有用であるだろうということは判っていたが, LAVA法というアプリケーションが行なえるSigna EXCITE HD 1.5Teslaが導入されたばかりのため、膵・胆道系においては正常例の供覧のみで、肝臓においてdynamic studyが有用であった症例を呈示するにとどまった。今回LAVA法が行なえる様になってから一年が経ち症例数が増え、膵・胆道系腫瘍においてLAVA法の有用性を再検証し報告する。また、新たに骨盤腔においても LAVA法を用いて有用であった症例についても画像を供覧しつつ報告する。

    【LAVA法とは】
     LAVA法(Liver Acquisition with Volume Acceleration)は肝臓のdynamic studyを行うことを目的に開発された3Dシーケンスである。MRIで腹部のdynamic studyに適用する際、最大の問題点はスキャン時間である。患者が息止めできる時間内にスキャン時間を設定する必要があるが、これまでの3Dシーケンスを用いて検査を行うと、空間分解能とコントラスト分解能両方を犠牲にした画像しか撮影できなかった。LAVA法では、息止めの範囲内で非常に空間分解能を高めることができ、3D法を用いることによりthin sliceの撮像も可能となる。

    【使用装置と方法】
     MRI装置はGE社製1.5Tesla Signa EXICITE HDで、使用コイルはGE社製8ch body phased array coilである。CT装置はGE社製4DAS-MDCTのLight Speed Plusである。
     LAVA法ではthickness 3~4mmで撮像を行った。dynamic studyを行う際、造影剤注入後の最適タイミングは患者に依存するため非常に重要である。当院では、患者の血流速度の違いによるタイミングのずれを防ぐためにsmart prepを併用し、より精度の高い腹部3D dynamic studyを行った。得られた画像と脂肪抑制を併用したT1強調画像及びCTの画像との比較検討をした。

    【結果および考察】
     脂肪抑制を併用したT1強調画像とLAVA法を比較すると、LAVA法の方が非常に空間分解能を高めた画像を得ることができた。また、dynamic CTと比較すると同等もしくはそれ以上の画像を得ることができた。3Dシーケンスの場合、撮像枚数が非常に多くなるものの、LAVA法ではreformatやMIP処理を行って観察をすることができるため、診断上特に問題になることはなかった。膵・胆道系腫瘍を撮像する場合には、smart prepやfluoro triggeringを併用し造影タイミングを最適化し、LAVA法を使用できる機種では積極的に使用をした方が良いと考えられる。また、骨盤腔においてもただ造影効果を判定するのではなくdynamic studyを行い、造影タイミングを最適化した画像を提供すると、比較的早期に造影効果が認められる部位が分離でき、臨床上有用であると考えられる。今後症例を重ねて更なる検証を行っていきたい。
  • ~高精度放射線治療センター3年間の実績~
    大谷 慎, 松本 好正, 長沼  敏彦, 笹本 孝広, 熊本 隆司, 伊藤 和正, 飯村 高行, 小俣 正, 福原 昇
    セッションID: 1F107
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 当院では平成16年に10年以上使用した放射線治療装置(医療用直線加速器:リニアックとする)を廃棄して新しく高精度放射線治療センターとして装置及び人員体制を維新して開設をした。現在まで3年が経過した中で我々が取り組んできた放射線治療の推移を業務実績の方面から分析したので報告する。 【方法】 平成14年度から平成18年度までの5年間について業務実績の解析を行なう。 装置を更新した平成16年以降は装置及び治療疾患についても分析を行う。 【結果】 平成16年6月まではリニアック、X線シミュレータ、治療計画装置はそれぞれ1台、CTは診断用を借りて行っていた。人員体制は、放射線治療医は1日/週、治療担当技師は1名(治療医が来るときは2名、看護師1名)で行っていた。高精度放射線治療センターではリニアック2台(汎用治療装置、CT同室設置装置)、治療計画装置2台となった。人員体制は放射線治療医常勤1名、治療担当技師6名(常時4名)看護師2名、事務員1名となった。新規患者数は、平成14年から18年までをみると、112,177,273,416,442名と当初の4倍と増えている。装置別では汎用装置ではCT同室設置より件数は多いが、点数では大きな差は見られなかった。治療疾患の構成をみると約40%は続発性疾患(転移性疾患)が閉めている。 【考察】 最近の放射線治療は非侵襲性のため各施設でも増加傾向にあると言われている。高精度放射線治療センター開設後の患者増加はこのことを示している。当院の特徴としてCT同室設置装置による治療を行っている。装置ごとの件数では汎用装置が多くなるが、CT同室設置にて定位放射線治療を行っているため点数では差がなくなっている。治療疾患の40%は転移性病変がしめているがCTを使用した治療、例えば前立腺癌などが増えているのが特徴である。 【まとめ】 高精度放射線治療センター開設後3年間の放射線治療の推移を報告した。現在の問題として品質管理、品質保証(QAQC)がある。患者が増えるに連れて治療時間も長くなりQAQCの時間が足りなくなってきている。今後はどのようにして確保していくかが重要な課題である。
  • 柳原 利行
    セッションID: 1F108
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    はじめに
    当病院では、乳癌の術後に骨シンチを骨転移の早期発見およびその経過観察の目的で施行してきた。しかしながら、従来の骨シンチ全身画像のみでは、異常集積や異常所見は発見できるが、はたしてそれが、骨転移によるものかどうかの鑑別診断ができなかった。特に骨シンチの異常集積のすべてが骨転移ではないので、今回、新しいRI装置を導入し、SPECTが容易にできる装置になったため、従来の全身画像のみでは、鑑別診断が困難であったものが、SPECT導入により異常集積の有無を単に指摘するだけではなくその病巣部の鑑別診断ができるようになったため、その可能性について検討し、骨SPECTの有用性についていくつかの知見を得たので報告します。
         対象および方法
    対象症例は、乳癌術後の一ヶ月後より二十年後までの経過観察中の患者様、50例。
    最終診断は、骨生検および骨単純X線検査、CT検査、MRI検査所見と臨床経過によりなされた。
    方法は,99mTc-HMDP(クリアボーン)740mBqを静注し2.5~3時間後にlnfinia Hawkeye4(GE社製)にて全身骨シンチを撮像し、異常集積の所見を確認後直ちに骨SPECTを施行した。
    骨SPECT、Transaxial像の集積分布から各疾患における集積分布パターンを分類し、骨SPECTの有用性を検討した。
    結果
    SPECT検査は、全身骨シンチに比べて、病巣前後の隠された病巣部分がSPECTで分離され描出される。
    したがって、SPECTでは従来の前後方向の全身骨シンチのみに比べ、異常、もしくは疑いをさらに解剖学的に明らかにし、Transaxial像では、椎体、肋骨などの異常集積が骨転移によるものか、脊椎症、骨折などによるものかの鑑別診断が、転移した癌細胞による骨破壊は骨髄から始まるので骨の中心部に存在し骨膜や骨皮質には少ない。対称的な位置に癌細胞の骨破壊の起こる確率は少ないので非対称的である。などの特徴的所見によりある程度診断が可能になったと考えられます。
                
  • 神谷 有希
    セッションID: 1F109
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    【はじめに】  マンモグラフィ(以下MMG)併用検診の普及に伴い、微小石灰化病変にて発見される機会が増加している。MMGで発見される非触知の病変部の生検診断は不可欠である。当院では2005年8月にProne式ステレオガイド下マンモトームを導入した。これまでに経験した問題点とその対策を報告する。 【対象】 2005年8月から2006年3月までに当院でステレオガイド下マンモトーム生検を施行した86例 【使用機器】 LORAD社製 Multi Care Platinum Johnson&Johnson社製 BYOPSYSマンモトーム 【検査手順】 _丸1_検査の説明 _丸2_乳房の固定 _丸3_スカウト撮影 _丸4_ステレオ撮影 _丸5_モニタ上で目標設定 _丸6_穿刺部位の消毒、局所麻酔 _丸7_ステレオ撮影 _丸8_穿刺位置の確認、目標手前までの穿刺 _丸9_針先確認のステレオ撮影 _丸10_Fire _丸11_Post-Fireのステレオ撮影 _丸12_病変採取 _丸13_標本撮影 _丸14_プローブ抜去、圧迫止血 【問題と対策】 ・穿刺方向   事前に撮影をしたMMG(MLO及びCC)にて石灰化の位置を確認し、穿刺部位が最短方向を取るように方向を検討。石灰化が胸壁に近くポジショニングが困難な場合は検査台の開口部から検側の腕を入れる方法が有用な場合がある。 ・圧迫厚   11Gのプローブは開口部が19mm、そこから先端まで8mmある為、吸引を考慮し30mm程度は必要である。圧迫厚の薄い乳房に対してはエアギャップ法を用いる。それでも乳房厚が不足する場合は、Fireを行わず手押しで実施する。 ・検査体位   腹臥位の際、肋骨が検査台にあたり痛みを伴う場合がある為、タオルやスポンジにて痛みを取る。     
  • ~第2報 デジタルマンモグラフィ受入れ試験及びマンモトーム導入における問題点と対処法~
    後藤 伸也, 嘉藤 敏幸, 柴田 信雄, 島田 友幸
    セッションID: 1F110
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉近年、食文化の欧米化等により日本での乳がんは上昇傾向にある。わが国では、長い間、視触診による乳がん検診が広く行われてきたが、症例対照研究に基づく検証等によって、視触診による乳がん検診の死亡率低減効果は認めなかったことから、マンモグラフィの導入へと転換していった。そのようななか、マンモグラフィによる乳がん検診の適正実施のためには、撮影技術ならびに診断精度の向上が求められるようになった。なかでも、マンモグラムの画質は診断精度にかかわる最も重要な因子であり、納入業者に任せず我々も受け入れ試験を行うことが必要と考えた。撮影されたマンモグラムが読影に適しているか評価することはもちろん使用機器の評価も、精度管理上必要不可欠である。
    当院ではH19年4月よりデジタルマンモグラフィを導入した。第1報では検診バスのアナログマンモグラフィを、今回の第2報ではデジタルマンモグラフィの受け入れ検査と、同一人物でのアナログマンモグラム、デジタルグラムの比較を行なうことができた。また、当院ではいままでマンモトームが必要な患者は他院への紹介となっていたが外科医からの要望もあり、デジタルマンモグラフィと同時にマンモトームも導入したので、問題点や対処法等を合わせて報告する予定である。
    〈審査項目及び方法〉圧迫器の確認、X線照射野・光照射野・受像器面の整合性、胸壁端付近の画像欠損確認、焦点の性能、管電圧の精度と再現性、線質(HVL)、平均乳腺線量、AECの性能等。また同一人物でのアナログマンモグラム、デジタルマンモグラムの比較は放射線科医、放射線技師、複数人による目視及び撮影条件の比較を行った。マンモトームに関しては実施件数を重ねた上で発表内容を検討する。
    〈使用機器〉
    X線発生器:TOSHIBA製「MGU-100B形」CR:KONICAMINOLTA製PCM「Mermaid」マンモトーム:MGDS-100D形、MGDS-100B形
    〈結果〉詳しい結果については当日会場で発表します。
  • ~旧システムとの比較~
    菅原 司, 山田 泰司, 岡崎 真悟, 中村 俊一, 永井 信, 東 弘志, 近藤 規央, 内田 多久實, 藤永 明
    セッションID: 1F111
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉胃バリウム検査において,透視観察の段階で異常所見を指摘することは,病変の存在や性質をより高い診断情報として読影者に提供することができると考える.その一翼を担う技師にとって自施設の透視観察の精度を検討することは,検査件数の多少に関わらず,高精度な検査を維持するためにも必要最低限な義務のひとつと考える.
    当院では、透視所見をよりわかりやすく的確に読影者に伝えるために,有所見時に,透視上で病変の存在が確実なものを確実所見,曖昧なものを不確実所見と表現している.このシステムを一年間(2004年4月~2005年5月)運用し,透視観察精度の評価を行った結果,胃角小彎での精度が他部位に比べ低い傾向を示したため,改善策として,透視観察をより強調するために,同部位にバリウムを流しながら透視・撮影をすることが必要と考え,それらの撮影法を追加することとした.
    このような中,2006年2月より,病院の新築移転にともない,撮影装置が従来のフィルム/スクリーン系システム(アナログシステム)に変わり,デジタルラジオグラフィー装置(DR装置)が導入され,デジタル化となった。
    実際に使用してみて,DR装置ではアナログシステムと同濃度のバリウムを使用した場合,若干コントラストが低くなる印象があったため,アナログシステムと同等のコントラストを維持するべく,基礎検討から得られたデータをもとに,バリウム濃度を190w/v%から220w/v%へと変更した.
    このように,旧システムから新システム(撮影法の変更,デジタル化,バリウムの高濃度化)への移行にともなう透視観察精度の変化を比較・検討することで,現行システムの問題点・弱点を見い出し,今後の更なる精度向上につなげることを目的に今回の検討を行った.
    〈方法〉透視所見を病変の存在の度合いで確実・不確実所見に分類した後,最終診断結果と比較し,次の項目について新旧システムの比較・検討をした.
    1.全透視所見と最終診断結果との関係.
    2.確実・不確実所見の部位・壁在・指摘病変別の関係.
    〈対象〉旧システムにおいて2004年4月から2005年5月,新システムにおいて2006年2月から2007年3月までの当院人間ドック胃バリウム検査の全透視所見とした.
  • 高田 章, 岡江 俊治, 市川 敦子, 田川 隆之
    セッションID: 1F112
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    病院では多くの業務従事者、職種の人たちが日常診療で放射線を用いている。放射線は五感に感じないため、放射線業務従事者といえども適切な知識がないと被曝を実感することができない。多少の被曝であれば健康被害は出ないため、無頓着に放射線を使用している従事者が多いのが現状である。適切に運用すれば安全に使用できる放射線であるが、放射線医療従事者として無用な被曝は現に慎まなければならない。また、それとは反対に放射線に対して過度に怯えたり、恐怖を持ったりして近づこうとしない者もおり、そのことが患者に過度の恐怖を抱かせることがある。 IVR(Interventional Radiology)では患者のみならず医療従事者も被曝するため、よりいっそう被曝管理に努める必要がある。とは言っても具体的にどのような方策をとればどの程度被曝を低減することが可能であるかと言ったことを知る機会は少ない。また、各所で言われている被曝に関する提言・勧告でもどの程度の被曝減少が見込まれるかは不明瞭である。 そこで今回、我々はX線検査室での直接線や散乱線を実際に測定し、具体的にどのような状況でどの程度被曝するかを調査した。直接線の被曝は散乱線に比べるとはるかに多かった。また、管球の上下の向きにかかわらず、管球側に散乱線が多かった。管球を斜位にした場合も管球に近い場所の被曝が多かった。パルス透視に使用により散乱線が減少した。拡大透視では散乱線が多くなった。また、検査室内での空中の線量分布の測定も行った。管球から1m程度の距離をとるだけでもかなりの被曝低減が行えると考えられた。 これらの結果から、既に言われていることではあるが、次の点に留意してIVRを行うべきと考えられた。直接線には極力手を入れないようにする。管球に近づくと被曝が多くなるため、斜位や側面透視の場合は管球側に近づかないようにする。カテーテルを大きく動かしたりしないときはパルスレートを落とす。拡大透視は最小限にする。管球からは1歩でもよいので距離をとる。 被曝の測定は、実際にどのような方策をとれば業務従事者の被曝を減らすことができるのかを知る上で有用と考えられる。それだけではなく、業務従事者に被曝という行為を意識させ、それによって職業被曝の低減、さらには患者の医療被曝の低減につながることが期待できる。この発表によって職業被曝、医療被曝の減少につながれば幸いである。
  • 赤羽 弘充, 高橋 昌宏, 中野 詩朗, 柳田 尚之, 正村 裕紀, 今井 浩二, 萩原 正弘, 北 健吾, 内田 浩一郎, 島田 慎吾
    セッションID: 1F113
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
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    〈緒言〉
    Stewart-Treves Syndromeは1948年にStewartとTrevesが乳癌術後の慢性リンパ浮腫を背景とした上肢のリンパ管肉腫を6例報告したことに由来する。
    現在では慢性リンパ浮腫に生じた血管肉腫の総称とされ、子宮癌や大腸癌の術後、外傷、寄生虫、放射線照射、脳出血後の痙性麻痺に続発したリンパ浮腫で報告されている。
    〈症例〉
    57歳、女性。
    H7年に左乳癌にて定型的乳房切除術、術後に放射線照射を受けている。
    H10年頃よりリンパ浮腫出現。
    H17年8月左上腕に皮疹が出現し(図)、生検にて乳癌の皮膚転移の診断。CEF療法6コースにて一時的に皮膚転移消失。
    同年12月皮疹再発。
    H18年1月weekly Taxol(3投1休)4コース施行。
    H18年3月病理診断にてリンパ管肉腫(図)。
    H18年5月整形外科にて左上肢切断。
    H18年6月多発肺肝転移出現。
    H18年7月Taxotere投与。
    H18年8月永眠。
    〈考察〉
    Stewart-Treves Syndromeは乳癌術後の0.045~0.07%に発症し、発症までの平均は約10年とされる。平均生存期間は12~19ヶ月、5年生存率8.5~13.6%と報告されている。
    本邦報告例では、子宮癌術後の下肢に発生した症例が多く、その80%に放射線が照射されている。
    発症要因として 慢性のリンパ浮腫、全身性の発癌因子の存在、放射線照射 の3つが考えられている。
    慢性のリンパ浮腫による局所の細胞性免疫能低下が腫瘍発生の母地となっているという報告は多い。
    また、第3の悪性腫瘍の合併頻度が9~19%と高いことから、全身性の発癌因子の関与なども推測されている。
    放射線照射は発症例に高い既往歴を有するものの、照射部位と血管肉腫の発生部位の相違などから、主因というより増強因子と考えられている。
    治療法は外科的切除、IL-2投与、放射線療法、Taxaneを含む抗癌剤投与などの報告があるが著効例は少なく、長期生存例が、診断から患肢切断までの期間が短い症例に限られていることなどから、リンパ浮腫自体の管理と厳重な経過観察が重要であると考えられる。
  • 丹羽 政美, 安藤 秀人, 伊藤 栄里子, 市原 幸子, 奥村 功, 松野 俊一, 渡邉 常夫, 水野 豊, 藤本 正夫
    セッションID: 1F114
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉乳腺疾患の画像診断において病変の存在診断や質的診断はもちろんのこと、乳癌の場合は広がり診断も治療方針決定のため重要である。一般的に乳腺画像診断はマンモグラフィー(以下MMG)と超音波検査(以下US)にて行われ、精密検査としてのコントラスト分解能に優れるMRIは病変の存在診断のみならず質的診断および乳癌における広がり診断に有用であるとの報告が数多く散見される。
    そこで今回当院でMMGもしくはUSにて良悪性の質的診断が困難であった症例におけるMRIの有用性について検討した。
    〈対象および方法〉2004年4月から2007年3月の3年間でMMGないしはUSが施行された2148例で、MMGもしくはUSカテゴリー(以下C)判定が3であった133例中、質的診断としてMRIが施行された31例を対象とした。31例の内訳は、MMG-C1でUS-C 3aが3例、MMG-C1でUS-C 3bが3例、MMG-C2でUS-C 3bが1例、MMG-C3でUS-C1が1例、MMG-C3でUS-C2が4例、MMG-C3でUS-C 3aが13例、MMG-C3でUS-C 3bが6例であった。MMGはGE社製Senograph DMR+、FUJI FCR PROFECT CS、USはGE社製LOGIQ 9 ver. Imajine _II_を使用し精度管理中央委員会認定読影医師1名、認定技師7名を含んだ11名で毎週検討会を行い、C診断を行った。MRIは、PHILIPS社製Gyroscan ACT NT 1.5Tを用いT1強調画像、脂肪抑制T2強調画像、およびGd-ダイナミック画像(ダイナミック曲線を含む)にて検討した。
     〈結果〉31例中10例がMRIによる質的診断で乳癌が疑われ、その所見は早期相での病変の濃染とダイナミック曲線でプラトーもしくはピークであった。最終的に7例が病理診断で乳癌と診断され、7症例中4症例は非浸潤癌でその他はアポクリン癌1例、硬癌1例、充実腺管癌1例であった。MRIの正診率は90.3%、感度100%、特異度87.5%、陽性的中率70.0%、陰性的中率100%であった。一方、良性と診断された21例は線維腺腫および乳腺症が主であった。またMRIで乳癌が疑われ、最終的に病理診断で良性病変と確認された3例は再度MRI画像を見直しても乳癌との鑑別は困難であった。
    〈考察〉MMG、USのみでは質的診断に苦慮するC3の病変に対してMRIは質的診断の一助になり得た。またMRIを用いることにより非浸潤癌も浸潤癌と同程度に検出が可能であった。さらに初回のUSで腫瘤の同定ができなかった疾患に対してMR画像を照らし合わせて再度USを施行する(2nd look US)ことで腫瘤の部位同定が可能になり同部を摘出生検することも可能であった。しかし一方で3例の疑陽性病変も認めた。この原因として線維腺腫の腫瘍血管密度が組織学的にも乳癌と類似していることによりダイナミック画像の特異度が低下することや、悪性所見として特異的な腫瘍辺縁の濃染像が線維腺腫や乳腺炎でもまれに見られることによるものと考えられた。今後はさらなる高分解能化を計り、拡散強調画像によるADC値などを取り入れ検討する必要性が示唆された。
    〈結語〉MMGとUSにて良悪性の鑑別が困難であったC3の病変にMRIの有用性が確認された。
  • ~母親へのアンケート・聞き取り調査から~
    深谷  陽子, 木村  聖子, 中沢  京子
    セッションID: 1F115
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>NICUでは以前からパンフレットを使い育児指導を行っていた。しかし、2005年に行った調査1)において退院後も育児不安や疑問が多く、パンフレットがあまり活用されていない状況が明らかとなった。そこで今回、調査で明らかとなった母親の不安や疑問を取り入れ、Q&Aやイラスト等を増やし、目的別に授乳・沐浴、育児の2種類のパンフレットに改訂した。これらのパンフレットを使い育児指導を受けた母親を対象に調査し、パンフレットの評価を行ったので報告する。<BR> <目的>指導を受けた母親を対象に調査を行い、改訂したパンフレットの活用状況を評価する。<BR> <方法>平成19年3月~4月末迄に、NICUに入院していた児の母親30名(重篤な合併症のある児は除く)を対象に、育児指導後にアンケート調査、退院後2週間以内に電話で聞き取り調査を実施し、結果を集計、分析した。<BR> <倫理的配慮>研究の主旨とプライバシーの保護について説明し、承諾を得て実施した。<BR> <結果>入院中のアンケートでは、パンフレットが授乳・沐浴と育児の目的別でよい、見やすく分かりやすい、文章とイラストのバランスがよい、退院後も参考になると思う等、全項目において8割以上の良い評価が得られた。パンフレットによって不安や疑問を解決できた内容は、吐乳時の対応と判断、沐浴の方法、母乳、成長発達、全身状態の見方、排気時の対処法、便性状、部屋の環境等であった。また、パンフレットがあっても解決できなかった内容は、沐浴直後の授乳と注意点、冷凍母乳の保存と解凍・湯せん方法、新生児に発症しやすい病気と対処法であった。パンフレットへの意見として「特に重要な点は太字や赤字にするとよい」があった。 聞き取り調査では、初産・経産に相違なくパンフレットの活用状況は退院後から4~5日間で、活用頻度は2~3回程度が多く、喘鳴時、顔の湿疹、母乳不足時等に参考になったとの意見も多く、役に立っている、すぐ見られる所に置いてあるとの意見が殆どであった。また、記載があるとよいと思う内容は、湿疹や病気のトラブル対処法、1日のスケジュール例、授乳の最大間隔や乳房トラブル対処法、水分補給の必要性等が挙げられた。<BR> <考察>NICUでは、児が小さく産まれ長期の母子分離状態となることが多い。育児への不安は育児経験の有無を問わず大きいものと考える。それらを考慮しNICUを退院した母親の育児に対する不安・疑問を取り入れたパンフレットにしたことで、より母親のニーズに対応できたと考える。さらに、聞き取り調査よりパンフレットの活用は、生活に馴染む退院後4~5日間に集中しており、有効活用されていたと思われる。パンフレットを目的別に分けたことやイラストを取り入れたことも、視覚的によい効果が得られたことと考える。また、今回もパンフレットに関する意見もあり、随時母親のニーズに添った意見を取り入れ、適宜修正していくことが今後の育児指導に役に立ち、育児不安の軽減にも繋がっていくと考える。<BR> <引用文献>1)深谷陽子:NICU退院後の両親の育児不安調査-両親・看護師に対するアンケートより分析-, 平成17年度 茨城県看護研究学会抄録,p.162~164,2005.
  • 岡野 学, 増栄 成泰, 河田 幸道
    セッションID: 1F116
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>類表皮嚢胞は、全精巣腫瘍の1-2%を占める比較的稀な疾患で、40歳以下の若い男性に発生することが多いとされている。今回、80歳の1例を経験したので報告する。 <症例>80歳、男性。   (主訴)左陰嚢内無痛性腫脹   (家族暦)特になし   (既往歴)70歳 脳梗塞 (現病歴)平成16年1月ころより排尿困難が続くため平成16年2月23日に当科を受診し、左陰嚢内腫脹を指摘された。  (現症)身長147cm、体重50kg。胸腹部に異常を認めぬものの、左陰嚢内に無痛性、弾性硬で鵞卵大の腫瘤を触知した。直腸診では前立腺は小鶏卵大、弾性硬、表面平滑であった。  (検査所見)尿検査ではSG1012, pH6.5、prot(±)、sugar(-)、urobil(±)、bil(-)、OB(-)、RBC0/HPF、WBC10-14/HPF、Bact(-)であった。血液検査はWBC9050/mm3、RBC437×104/mm3、Hb13.5g/dl、Ht37.8%、Plet31.5×104/mm3で、生化学検査はGOT13Iu/l、 GPT13Iu/l、 LDH286Iu/l、 Alp265Iu/l、 T.P6.6mg/dl、 Alb4.0mg/dl、 BUN20.3mg/dl、 Cr1.1mg/dl、 Na138mEq/l、 K5.0mEq/l、 Cl101mEq/l、 T.chol209mg/dl、 CRP2.32mg/dl、HCG-β0.1↓ng/ml、AFP3ng/ml、PSA4.9ng/mlであった.  (画像所見)超音波検査では腫瘤は充実性で10cmほどの大きさで内部エコーは中心部がややhighで周辺がややlowの2層として描出され一部不均一であった。CTでは腫大した左精巣を認めたものの、腹部および骨盤内には異常所見を認めなかった。MRIではT1強調画像にて腫瘤壁、内部ともに低信号、T2強調画像にて壁は低信号、内部は辺縁部が高信号で中心部が低信号の部分として認められた。また、造影剤にてもenhanceはされなかった。  (経過)以上より左精巣腫瘍の術前診断のもと、平成16年3月2日左高位精巣摘除術を施行した。摘出標本は大きさ10×7×7cmで重さ240gであり、内部は灰白色粥状物質が充満しており一部に赤褐色を呈していたが、肉眼的には正常精巣実質は確認できなかった。病理組織学的に、嚢胞壁は菲薄化した重層扁平上皮からなり、内腔は多量の角化物質で満たされていたが、皮膚付属器成分その他の組織成分を認めなかった。 <考察>精巣類表皮嚢胞は、1942年にDockertyとPriestleyにより初めて報告された。全精巣腫瘍の1-2%を占める比較的稀な良性腫瘍である。本邦では関井らの報告以来160例近くが報告されている。20-40歳の若い男性に多く発生するが、小児や高齢者にも発生例がみられる。陰嚢内に腫瘤を触知することで発見される場合が多く、触診では表面平滑で硬く触れるが圧痛は認めない。嚢胞径は2/3の症例が3cm以下である。患側については左右差がないとの報告が多い。発生要因ははっきりしていないが、奇形腫の3胚葉成分のうち、表皮の分化に沿って厳密に外胚葉成分のみが発育したものと一般的には考えられている。本疾患は病理学的にはPriceの定義で(1)嚢胞は精巣実質内に存在する、(2)嚢胞の内腔には角化物質や無構造物質が層をなして存在する、(3)嚢胞壁は重層扁平とそれを取り囲む繊維性結合組織からなる、(4)奇形腫様組織や皮膚付属器を有しない、とされている。画像診断の特徴としては、超音波検査では腫瘍はechogenic rimと呼ばれる周囲と明瞭に区別できる強いエコーレベルの隔壁を有し、内部エコーは比較的低エコーで時にonion skinと呼ばれる散在性の内部エコーを伴うとされている。今回われわれは行っていないが、腫瘍は無血管であるためカラードップラー法も有用とされている。MRIでは嚢胞壁はT1,T2強調像ともに低信号で、嚢胞内中央部はT1,T2強調像ともに低―中信号で、嚢胞内辺縁部はT2強調像では高信号で、造影剤によりenhanceされないとされる。  治療方針としては画像上本疾患が疑われた場合、腫瘍核出術行い術中迅速病理に提出し、本疾患であれば精巣を温存する。悪性腫瘍を否定できない場合は高位精巣摘除術を行う。山本らによれば本邦では精巣摘除術74.3%、腫瘍核出術25.7%であった。しかし、本例のごとく精巣全体を占める症例は本例を含め11例の報告があるが、いずれも術前に本疾患と診断しえず精巣摘除術が施行されていた。精巣全体を占める大きな症例では精巣実質がほとんどみられないため術前診断が困難であるためと考えられる。正常精巣が認められない原因としては、11例中10例が高齢者であることから長い罹病期間に腫瘍が徐々に増大し、角質物質が徐々に貯留することにより正常組織を圧排し萎縮させたものと考えられる。 <結語> 80歳、男性に発症し左精巣全体を占める大きな精巣類表皮嚢胞の1例を報告した。
  • 三宅 範明, 宮本 忠幸
    セッションID: 1F117
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言>  慢性血液透析を実施するにはバスキュラーアクセス(VA)が不可欠である。標準的内シャント(橈骨動脈-橈側 皮静脈間の皮下動静脈瘻)作製が自己血管の荒廃のため困難な症例が増加している。そのような症例では人工血管の使用、動脈表在化などによりVAを確保するという方法もある。しかし、いずれの方法でもVAを作製し得ない場合には血流量の多い静脈を毎回、直接穿刺する方法が選択される症例が出て来る。大腿静脈を直接穿刺する報告は散見されるが内頚静脈の直接穿刺の報告は少ない。今回我々は内頚静脈を直接穿刺し長期間血液透析を実施した症例を経験したので報告する。 <症例提示>: 症例: 80歳、女性 現病歴; 2000年3月、多発生嚢胞腎に起因する腎機能低下のため近医より紹介となる。同年11月21日、左手関節近傍で内シャント作製するもシャント血管の成長は不良であった。2001年4月10日、血液透析開始(BUN109,Cr 8.02)したが数日で内シャント閉塞のため4月18日に右手関節近傍で内シャント再建術を実施した。この内シャントは同年8月まで使用可能であったがシャント血管の狭窄、血流低下を生じ閉塞に至った。この時期より右内頚静脈の直接穿刺を開始した。以後、両側肘関節部、上腕部での自己血管による内シャント再建術、人工血管植え込み術、動脈表在化など(合計6回の手術)行ったがいずれも長期間はVAとして機能しなかった。2004年6月より左肘関節部での上腕動脈直接穿刺法と内頚静脈直接穿刺法を併用したが2006年10月からは内頚静脈直接穿刺法のみで血液透析を行っている。返血には外頚静脈を主に用いている。 <考察>  慢性腎不全の維持血液透析患者にとってVAは文字通り命の綱であり、必須のものである。近年、慢性血液透析の新規導入症例に占める糖尿病性症例の頻度は増加している。そのような症例では動静脈ともに標準的内シャント作製に不適である場合が多い。すなわち動脈硬化や長期間、採血のために穿刺を繰り返したことに起因する静脈の荒廃などによって内シャント作製そのものが困難であったり、作製し得てもシャント血管の発育が不良である症例が少なくない。  自己血管による内シャント作製が困難である場合、1)人工血管植え込み術、2)動脈表在化、3)長期留置型カテーテルの中心静脈への挿入留置、などが対応策として考慮される。 1)、2)は動静脈に問題を有する症例が多いため必ずしもVA確保に成功するとは言い難い。3)には血栓によるカテーテルの閉塞、カテーテル先端部が血管壁に密着することに起因する脱血不良、カテーテル感染などの危険性がある。  大腿静脈の直接穿刺により血液透析を長期間続行しえたとの報告は散見されるが、我々の調べ得た範囲では長期間、内頚静脈を使用したとの報告は無い。内頚静脈穿刺は大腿静脈穿刺に比し患者さんの羞恥心が軽減されるという利点がある。内頚静脈穿刺の合併症として大腿静脈穿刺と同様、動脈の誤穿刺があるが適切な圧迫止血で対応可能である。VAが自己血管や人工血管を用いても作製しえない症例にとって本法は選択肢の一つとなりうると思われる。 <結論> 諸般の事情により自己血管あるいは人工血管によるVAが作製できない場合には内頚静脈直接穿刺により血液透析を続行するという方法は1つの選択肢になりうると思われる。
  • 岩井 安芸, 高橋 教, 奥野 哲男
    セッションID: 1F118
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> 精索捻転は精巣の栄養血管が捻れて精巣が虚血状態になることにより疼痛が生じ、進行すると精巣が壊死に陥る疾患である。精索捻転を疑った場合は可及的速やかな整復固定術を行い精巣の温存をはからなくてはならないが、一般におよそ半数の精索捻転症例で手術時には精巣が壊死に陥っており摘出を余儀なくされると言われている。今回は精索捻転を疑った急性陰嚢症の臨床的背景を明らかにして精巣温存率を向上させるために、当院で精索捻転を疑い手術を行った症例の臨床的背景を検討した。 <対象と方法> 1986年1月から2007年4月までの間に当院で手術を行った急性陰嚢症63例。当時のカルテの記載とインターネット上の気象庁のデータベースから、当時の気温と初発から手術までの状況を集計し、検討した。 <結果> 手術前の診断は全例が精索捻転だったが、術前に用手整復が成功した症例は6例、残りのうち手術所見として捻転所見があった症例は30例、捻転所見が無かった症例は13例、精巣垂または精巣上体垂捻転の所見があった症例は13例、陰嚢水腫感染が1例であった。  用手整復が成功した症例と手術で捻転所見があった症例36例(第1群とする)は確実に精索捻転が起きていたと思われ、その内訳は以下の通りであった。年齢:5~37歳(平均15.3歳)、患側:左28例、右8例、回転方向:内旋15例、外旋3例(不明18例)、回転角度:90~720度(中央値270度)、発症時気温:-4.9~32.0℃(平均8.05℃)。一方手術で精巣垂または精巣上体垂捻転の所見があった症例と手術で捻転所見の無かった症例26例(第2群とする)の内訳は以下の通りであった。年齢:5~32歳(平均12.3歳)、患側:左14例、右11例、両側1例、発症時気温:-2.5~31.8℃(平均13.3℃)。両群を比較したところ発症時の気温には統計学的な有意差があった。第1群では11月から2月の間に61%の症例が集中していたが第2群では発症時期に明らかな偏りはなかった。  さらに、第1群の中で精巣を温存できた26例(第3群)と摘出せざるを得なかった10例(第4群)に分けて検討した。発症からなんらかの医療機関を初診するまでの時間に大きな違いはなかったが発症から泌尿器科初診までの時間の平均が第3群、第4群でそれぞれ4.3時間、82.3時間、と大きく異なっていた。 <結論>  当院では精索捻転は冬季に多く左の精巣が内旋することが多かった。従って特に冬季に左側の下腹部や陰嚢の疼痛を訴える患者の場合は精索捻転の可能性を考慮する必要があると思われた。 精巣を摘出した症例と精巣を温存できた症例では医療機関を初診するまでの時間には大きな違いがなく、泌尿器科を初診するまでの時間に違いがあった。従って精巣の温存には泌尿器科以外の診療科で精索捻転を疑い、速やかに泌尿器科を紹介することが重要と思われた。
  • ~看護師がうつ伏せ寝の患者体験を通して~
    緒方 久美, 服部 朝子, 杉浦 真希, 森脇 典子
    セッションID: 1F201
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉昨今、硝子体・黄班円孔の眼科手術において、SF6ガス及びairの浮力を利用し網膜の復位を目的に、術後3~7日間頭部安静をはかるために、腹臥位の保持が必要とされている。上記目的を受け、当病棟でも、眼科手術後はうつ伏せ枕(以下フェイスピローとする)を使用し安静保持に努めてきた。しかし、患者からは「息苦しい」「胸苦しい」「額の圧迫感がある」など苦痛の訴えが多く、安静保持の方法に問題を感じた。その為、看護師がうつ伏せ寝の実体験をすることで、患者の苦痛を実感した。
    そこで今回、フェイスピローの問題点を明確にし、改良型枕の作成と安楽物品の活用により、眼科手術後の安楽な体位を検討した為、ここに報告する。
    〈方法〉1)フェイスピロー(高さ7_cm_)使用後の意識調査 (対象:当病棟看護師11名、女性21~50歳、BMI18~23)
    2)フェイスピローによるうつ伏せ寝の場合の体圧測定(PREDIA 簡易体圧、ズレ測定器を使用)測定部位:額部、胸骨、右乳房、左乳房、腹臍高の5ヶ所で実施
    3)測定部位ごとに、夜勤の仮眠時間80分に1回ずつ体験する
    4)ベッドは患者と同じベッドを使用(パラマウントベッド KA―4150、マットレス KE-303厚さ80mm)
    5)改良型枕は従来の枕(フェイスピロー)の下に、通気目的のため網(30×40cm)をとりつけ、口元にあたる部分を一部カット、そこに籠を2つ結束帯で固定し高さ(籠の高さ6_cm_)を調整。また額部の圧迫を少なくするため、U字型(枕の厚さ6_cm_)で、スノービーズを入れた枕(以下U字型ビーズ枕とする)を使用。さらに、胸部にもU字型ビーズ枕(枕の厚さ9_cm_)を使用
    6)改良型枕とU字型ビーズ枕(額・胸部2ヶ所)の使用後、意識調査
    〈結果〉フェイスピローでは、息苦しさ、額部の圧迫感、胸部の圧迫感の順に苦痛があった。また、うつ伏せ寝ができたのは11名中10名、寝ることができたのは11名中3名であった。その理由としては「フェイスピローでは、頭の重さで枕が圧縮し、顔面がシーツについてしまい苦しかった」や、形はU字型を呈しているが「型くずれすることで口元が開き、顔が沈むために息苦しくなり眠れなかった」であった。改善点として、枕の高さ調整や、額への圧迫感の軽減が必要という意見があった。
    改良型枕では11名中9名が使用感は、適当であり息苦しさなどの自覚症状はなかった。
    改良型枕と安楽物品使用後に寝ることができたと自覚し、うつぶせ寝ができた時間は、15分以内2名、15~45分以内4名、45分以上5名であった。改良前後のうつぶせ寝には、苦痛の程度、体圧測定値、時間に差があった。
    〈考察〉フェイスピローの高さの調節による除圧と網と籠の工夫による通気性を考慮したこと、型崩れによる顔の沈みを軽減することで、息苦しさや圧迫による苦痛の軽減が図れたと考えられる。さらに、安楽物品として、額部・胸部にU字型ビーズ枕を使用することで「圧の分散」ができ自覚症状の軽減が図れたと考えられる。以上のことから、改良型枕とU字型ビーズ枕は、眼科手術後の安静保持における安楽な体位には有効であると考えられる。手術後の安静保持は、治療の効果を高め早期回復を促すためには不可欠である。今回の研究結果を日々の看護実践に活かし、今後も研鑽を積んでいきたいと思う。
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