日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
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一般講演
  • 大田 博子, 新宅 祐子, 正畠 和美, 前田 奈穂, 森田 保司
    セッションID: 1J103
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    「目的」近年医薬品の安全使用に関する意識が高まっている中、薬剤師の院内リスクマネージャーとして、薬剤部のみならず各種委員会などと横断的連携を図り薬剤の安全使用に積極的に関わっている。特に抗菌薬に関してはTDMを通して、またICTの一員としても薬剤師の関わりが大きい。今回院内インシデントレポートおよびTDM、ICT活動から、抗菌薬の安全かつ適正使用における多角的な活動について報告する。
    「方法」1)当院では院内で発生したインシデント事例レポートは各部署のリスクマネージャーが収集し、院内医療安全管理室に報告する。そのうち誤薬に関するレポートについては2005年8月より薬剤部リスクマネージャーが薬学的見地からコメントし、医療安全管理室経由で提出部署に返却している。今回2006年4月より2008年4月までの誤薬レポート(薬剤部提出分を除く)を集計し、最も多かった抗菌薬について分析した。2)従来、指定抗菌薬の使用状況および2週間以上投与継続例を院内感染対策委員会で報告していた。2006年4月よりICTを再編成し、各職種から成るICTで定期的に長期使用症例を検討し、必要があればICTラウンドを行なうことにした。ICTとして抗菌薬の適正使用に関する活動を報告する。3)2006年1月からリネゾリドを除く抗MRSA薬使用に際してTDMを導入した。薬剤部に使用申請書を提出すると、担当薬剤師が初回投与設計を行い主治医に提言、投与量を設定する。投与後3~4日後に血中濃度を測定し、必要に応じて再投与設計をする。TDM施行症例について適正使用の観点から検証を行なった。
    「結果および考察」1)2005年度の誤薬レポート数は360枚、2006年度は428枚、2007年度は556枚で増加傾向にあった。2007年度誤薬レポートのうち薬学的コメントをつけて返却したのは413枚で、抗菌薬・抗真菌薬が56枚と最も多かった。2)抗菌薬・抗真菌薬インシデントの原因は投与忘れが最も多く、次いで薬剤の名称違い、指示時間の遅れなどであった。抗菌薬は時間指示投与のため、単純なうっかりミスによる投与忘れや指示時間の遅れが生じると考えられた。また、薬剤の名称違いは、抗菌薬を変更する際情報伝達過程の誤りから生じていた。対策として看護科の協力を得て院内で抗菌薬の投与時間を統一し、タイマーの導入や指示伝達過程の改善を図った。この効果について今後評価をしていきたい。3)医局と協議の上、抗MRSA薬や広域スペクトルを有する抗菌薬を指定抗菌薬として申請・許可制とし、また投与指示の期間を1週間以内に限定し、必要があれば再度指示を出す運用にした。それにより抗菌薬使用総本数は減少傾向を示した。4)指定抗菌薬2週間以上使用症例は2004年度の抗MRSA薬 29例、抗MRSA以外 43例から2007年度はそれぞれ19例、23例と減少傾向にあった。指定抗菌薬使用症例は薬剤部で毎日チェックし、ICTが早期介入を行なった効果が出ていると考えられる。5)薬剤師による初回投与設計を行なわなかった症例では70_%_が目標の血中濃度を達成しておらず、TDMにより全体の30_%_に用法用量の変更が見られた。当院ではTDMの導入や指定抗菌薬届け出制導入等により、薬剤師が抗菌薬の適正使用に関与する機会が増えた。チーム医療の中で多職種の協力を得て更に継続的に活動していきたい。
  • 岡本 妙子
    セッションID: 1J104
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    化学療法レジメンの見直しと電子カルテへの登録 岡本妙子(おかもとたえこ)・佐々木英雄・小林万里子 吉田厚志・平松義規 豊田厚生病院 化学療法・レジメン・電子カルテ 〈緒言〉豊田厚生病院では、平成15年10月に、病院機能としてリスクを回避するシステム作りの一環として抗がん剤の過量投与による事故防止のため、化学療法のレジメンを登録制にした。レジメンは各診療科で作成し化学療法委員会で承認した。その後4年間見直しをすることがなく、レジメン数は183件に増加していた。しかも、レジメンの名称は各科で決定されていたので薬品名の略号がまちまちで、同じレジメンで消化器内科と外科ではレジメン名が異なっているなど複雑であった。化学療法はオーダーする医師と調製する薬剤師、患者に投与する看護師と異なる職種が関わるので、わかりやすいレジメンであることはリスクを回避するための必要条件である。平成20年1月1日病院の移転とともに電子カルテを導入することになったのを機に、わかりやすいレジメンを目標に見直しに着手した。また、電子カルテがレジメン機能付きであったので、見直し後に点滴内容を含む電子カルテ用レジメンの作成も行った。 〈方法〉消化器内科と外科、呼吸器内科と外科は同じレジメンで名称が異なる登録であったので、内科と外科を統一しそれぞれ消化器、呼吸器とした。また、薬品の名称等にパクリタキセルやドセタキセルの商品名を使用したり、略号も様々であったのでそれらを統一することとした。また、各レジメンの使用件数を提出された予定表から、入院は平成17年12月~平成19年8月まで、外来については平成17年4月~平成19年8月まで調査し、その結果を各診療科へ提示し平成19年11月末までに見直しを依頼した。それと同時に各レジメンの点滴内容を支持療法も含めてエクセルファイルに入力して提出してもらった。12月上旬より電子カルテに登録を開始し12月31日までに終了した。 〈結果〉レジメン見直し ・レジメン数の変化 消化器41(内科30、外科11)が見直し後消化器25(内科19、外科6)に減少、呼吸器39(内科32、外科7)が見直し後呼吸器34(内科32、呼吸器2)に減少した。その他診療科も使用しないレジメンの削除により、全体では186件から127件へ、3割減となった。しかし、わずか3ヶ月の間に15件の新規登録もあった。 ・略号の統一 パクリタキセル(タキソール)→PAC ドセタキセル(タキソテール)→DOC ・電子カルテへの登録 点滴内容は各科毎でセット化していたものを電子カルテのレジメン機能に登録したので、ハイドレーションや支持療法の制吐剤のデキサメタゾン投与量、パクリタキセルのプレメディ等を統一することができた。また、休薬期間の設定、抗がん剤の投与量換算設定、最大投与量の設定、滴下順の設定を登録した。 <考察>移転後レジメン機能を有した電子カルテの使用で医師はオーダーをする際自分で薬用量や休薬期間のチェックができ、看護師は滴下順のチェックができる。また、レジメン登録に薬剤師が関わることで支持療法の統一が図られ、休薬期間、薬用量のチェックが確実にできるなど、抗がん剤の安全で適正な投与に今回の電子カルテのレジメン機能システムの利用は有用であると考える。そのため、今後もそのもととなるレジメンの見直しは必要である。そこで化学療法委員会に、1年1回の見直しを提案し決定された。
  • 投与スケジュールの検証
    宇野 智江, 原田 正弥, 長谷川 毅, 三宅 孝
    セッションID: 1J105
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉TS-1胃癌術後補助化学療法比較試験(ACTS-GC)において、胃癌補助化学療法としてのTS-1投与は安全にして有効であり、Stage_II_,_III_胃癌手術後の標準薬となると考えると結論づけられた。TS-1の標準なプロトコールは4週投与2週休薬であるが、高齢者の多い当院においては、2週投与1週休薬法(2週投与法)にて投薬される場合が多い。 先回、我々は2週投与法(2週投与1週休薬法)と4週投与法(4週投与2週休薬法)におけるTS-1の6ケ月服薬完遂率を調査・比較し、6ケ月服薬完遂率は2週投与法で87.5%、4週投与法で37.3%となり、TS-1の2週投与法は患者のQOLを低下させずに外来で安全に治療できる意義ある方法だということを報告した。さらに今回、2週投与法における延命効果を確認するため追跡調査を行ったところ、8割以上のケースは2週投与法で投与されており、Stage_III_、_IV_の患者においても4割近くが12ケ月を超えて治療継続可能であったことがわかったのでそれについて発表する。
    〈対象および調査内容〉 2007年1月より2008年3月までに当院外科でTS-1を投与された胃癌(6例)、大腸癌(10例)、乳癌(1例)、膵癌(1例)の患者18症例を調査対象とした。調査内容は、1.TS-1開始時の患者年齢 2.開始時の腎機能 3.投与量および投与スケジュール 4.有害事象発現の有無と対処法 5.TS-1投与継続期間とした。
    〈結果〉1.開始時の患者年齢:62歳~80歳。 2.開始時の腎機能:血清クレアチニン値1.0mg/dlを超える例はなし。3.4週投与法:2例、2週投与法:16例。4.4例に好中球減少が見られ、休薬期間を2~3週間取った後に投与を再開した。ただし1例のみ3日後に中止し他の代謝拮抗剤へ変更となった。5.2008年4月末の時点で、12ケ月を超えて治療継続が可能であったのは7例、6ケ月~12ケ月未満の間治療継続したものが6例であった。
    〈考察〉今回の調査期間におけるTS-1投与スケジュールは、4週投与法が2例(11.1%)、2週投与法が16例(88.9%)であり、2週投与法主流で行われていることがわかった。また年齢も高く、Stage _III_、_IV_といった厳しい条件にも関わらず、患者への負担の少ない2週投与法で行うことにより、有害事象で投与を中止したのは1例のみで、7例(38.9%)の患者は12ケ月を超えて治療継続できたことを確認した。調査期間中、4例(22.2%)に投与を延期すべき好中球減少が現れたが、休薬期間を2週間あるいは3週間に延長することでTS-1再開が可能であった。当院においても、薬剤師が術後よりベッドサイドにて抗がん剤の用法・副作用・注意事項等を説明し、化学療法に対する不安を軽減できるよう努めているが、今回の追跡調査から消化器症状に比べて自覚症状がはるかに現れにくい好中球減少については、定期的な診察と頻繁な血液検査の必要性を患者に訴えるべきだと再認識した。
  • 術前のマッサージを実施して
    池田 美咲喜
    セッションID: 1J106
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    意識下で手術を受ける患者へのタッチ効果
    _から_術前のマッサージを実施して_から_
          池田美咲喜(いけだみさき)
          北信総合病院・手術室
    リラクゼーション・タッチ
    〈はじめ〉
     意識下で手術を受ける患者にとっては、全身麻酔の患者とは違い、手術に対しての不安・緊張を手術が終了するまで感じなければならない。柳氏は、看護に活かすタッチ効果として、「マッサージは、生理的・精神的なリラクゼーションに有効である」と述べている。今回、局所麻酔手術を受ける患者に対し、ハンドマッサージを実施することにより、不安・緊張が緩和できるか検証した。
    〈方法〉
    1.調査期間・対象:2007年9月_から_11月
    2.調査対象:形成外科・眼科の局所麻酔手術を受ける患者
    3.方法:副交感神経が優位である状態を示す、_丸1_血圧の低下、_丸2_心拍数の減少、_丸3_RR間隔の延長を指標とし、調査する。
    <マッサージを実施する患者>(以下__I__群とする)
    ・マッサージ前、中、後、手術開始時、手術開始5分後_から_30分後までの5分間隔、手術終了時のそれぞれで、血圧・脈拍・心電図(RR間隔)を測定。
    ・ハンドマッサージの実施。(片手5分間ずつ)
    <マッサージを実施しない患者>(以下__II__群とする)
    ・手術前、手術開始時、手術開始5分後_から_30分後までの5分間隔、手術終了時のそれぞれで、血圧・脈拍・心電図(RR間隔)を測定。
    〈結果〉
    1.年齢と性別
    ・__I__群:年齢 16~85歳 平均60.6歳 男性10名 女性8名 計18名
    ・__II__群:年齢 44~85歳 平均68.2歳 男性8名 女性10名 計18名
    2.収縮期血圧の変動
     _I_群でのマッサージ中では、平均_-_11.28_mm_Hgの低下、18名中15名が_-_3_から__-_46_mm_Hgの収縮期血圧の低下がみられた。__II__群では、手術前に18名中16名に7_から_63_mm_Hgの収縮期血圧の上昇がみられた。
    3.心拍変動
     心拍数の変動では、マッサージ中の変化はあまり見られなかった。__II__群の患者では手術開始までほぼ変化が無く、不安・緊張が続いている状態であると考える。__I__群・__II__群一致して、血圧・心拍数ともに手術終了に向かい減少している。
    4.RR間隔変動
     マッサージ中と手術開始_から_終了にかけてのRR間隔は、0.06秒の延長がみられた。
  • -手術担当看護師が男性であったことへのアンケート結果より-
    平本 廉昂, 松浦 美由紀, 松村 鶴代
    セッションID: 1J107
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    男性手術室看護師が担当した女性患者からの反応
    -手術担当看護師が男性であったことへのアンケート結果より-
    厚生連広島総合病院 手術室
    平本 廉昂(ひらもと やすたか)
    松浦美由紀・松村 鶴代
    男性手術室看護師・女性手術患者・意識調査
    〈はじめに〉
    当院の男性手術室看護師は、女性手術患者は男性手術室看護師が担当になることに羞恥心や抵抗心をもっているのではないかと考えていた。そこで、女性手術患者は男性手術室看護師に対してどのように意識しているのかを明らかにしたので報告する。
    〈研究方法〉
    男性手術室看護師が担当した女性手術患者を対象に、独自で作成した選択・記述式のアンケート調査を行い検討した。倫理上の配慮については、本研究以外の目的では使用しないこと、個人が特定されないことをアンケート用紙に記載し、結果のあったものを同意が得られたとした。
    〈結果・考察〉
    手術室入室時に担当看護師が男性だったことに「気が付かなかった」患者は、対象の年齢に高齢者が多かったこと、これから受ける麻酔や手術、未知なる環境に対して不安や緊張が強いこと、入室後すぐに麻酔導入のために気が付けなかったことが伺える。さらに気が付いた患者の中で「嫌ではなかった」理由として『恐怖でそれどころではない』など、担当看護師のことを意識する余地がないことがわかる。また『男性・女性とか関係ない』という言葉から、女性手術患者にとって手術室看護師が男性・女性に関係がないことがわかる。また、男性看護師が嫌と答えた人がいないことからもわかるように、男性の力強さなど前向きな評価があり、男性手術室看護師を肯定的にとらえてくれていることがわかる。
    次に「担当になってもよいと思う」理由として『これからの時代は男女平等に何事も行われた方がいいと思う』とあることから、今の時代に男女の隔たりなく男性看護師を受け入れており、専門職として責任を果たすことで、男女どちらでも良いということがわかる。そしてこれは事前に手術担当看護師が男性であるとわかっていた時の希望の有無の結果につながるように、「予定担当者のままでよい」理由として、『看護師が手術中に患者を女性として見ているとは、とても思えない』ということから、看護師を専門職として理解してくれていることが伺える。また、少数意見として「できることなら女性にしてほしかった」の理由から、大半の女性患者は男女区別なく手術室看護師を専門職としてみてくれているが、産婦人科などの患者の家族の中には、男性看護師に抵抗を示していることも理解できた。また、今後手術室看護を受けるときの希望の有無では手術を受ける患者によっては、羞恥心などから女性を希望する人もいるということがわかった。これらのことから、現状では、術前訪問で個々の患者や家族の想いに応じた対応が必要であると考える。
    〈おわりに〉
    私たち男性手術室看護師は、『女性手術患者は男性手術室看護師に対して抵抗心や羞恥心があるのではないか』と思っていた。しかし、看護を受ける女性手術患者は、男性手術室看護師に対して、私たちが考えているほど「抵抗心」や「羞恥心」を抱いていないことがわかった。また、看護師を専門職として理解し受け止めてくれており、手術室看護師を男女の隔たりなく受け止めていてくれることが理解できた。今後も、手術室看護師としてさらに適切な看護援助を行っていきた
  • 河合 則子, 福田 厚子, 片桐 美代子, 丸野 恵美子
    セッションID: 1J108
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉自施設の内科外来の看護業務は診療の補助業務が主である。診療の補助業務の内容は外来カルテの準備・運搬、患者確認・呼び入れ、血液検査の結果確認、検査伝票準備・予約・説明・案内、レントゲンフイルムの準備・片付け、診察の介助等である。これらの看護業務は患者が安全・安心に診療が受けられるようにするためのであり、同時に患者に対して診療の待ち時間の短縮につながっている。日々、繁雑な診療の補助業務に追われ、看護師が患者と向き合うのは検査や入院の説明の時である。しかしその説明は十分な時間を確保することが困難である。看護の対象である患者に対し看護専門職としての役割を果たしているかというと疑問がある。そこで、何が忙しいのかを明らかにするために毎日、各診察室から報告される「業務報告書」に所感の記載欄を設けた。所感を記載することをきっかけに看護師は患者に注目するようになった。そして、継続看護の対象者を把握できるようになりカンファレンスの実施へと繋がった。カンファレンスにおいて継続看護の対象者を選定し継続看護が展開されることとなった。今回、継続看護の実践に至った経過と実施状況について報告する。
    〈取り組み1-所感の記載:18年8月開始〉1日の看護業務を振り返るために、看護師全員が「業務報告書」に所感を記載した。1ヶ月間の所感の記載内容は「患者に関すること」「業務に関すること」等、11項目に分類できた。この「患者に関すること」に挙げられた事例が継続看護の対象者のきっかけとなった。
    (取り組み2―カンファレンスの実施:平成19年9月開始)所感に記載された内容について看護師全員で情報を共有する場が必要となった。そのため週1回のカンファレンスを実施し継続看護の対象者を選定した。
    (取り組み3―継続看護の実践:平成18年9月開始)継続看護の対象者は外来カルテの表紙に「継続看護」の付箋を貼付し一目でわかるようにした。主任看護師が当日、診療開始前に継続看護の対象者を把握し該当診察室の担当看護師に継続看護の対象者があることを伝えた。対象者への関わりは診察室担当の看護師が診察介助の流れの中で面談時間を調整し実施した。看護記録の記載は気軽に取組めるよう自由記載とし、記録用紙は病棟で使用する看護記録用紙を使用した。
    〈実施状況:平成18年9月~平成19年8月〉継続看護実践の対象者は164人(月平均14.8人)であった。対象者としたきっかけは「血液検査・測定値に問題のある事例」「内服開始・変更となった事例」等14項目に分類された。看護支援内容は「生活状況確認と指導」「服薬状況確認と指導」等9項目に分類された。
    (考察・まとめ)看護師たちは所感を記載することで看護を振り返り、患者に注目するようになった。カンファレンスでは患者について情報・意見交換行い看護ケアのあり方を看護師間で共有した。看護記録を残すことで看護師が変わっても継続して看護を提供することが出来た。継続看護が展開出来たことは、看護師が看護を必要とする患者を捉える力や、看護が必要な患者に適切な看護支援を提供する力を持っていたことによるものである。そして、潜在していた看護の力を発揮するきっかけとなったと考える。引き続き継続看護を展開し外来看護の質の向上に努めたいと考える。
  • 橋本 夕子, 川又 光子, 菊池 美恵子, 和田 幸枝
    セッションID: 1J109
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに〉
    整形外科疾患では術後の深部静脈血栓症(以下DVTと略記)の発生頻度が高く、ときに致死性の肺血栓塞栓症へと進展する可能性があるため早期発見と十分な予防が重要である。当科でも弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法(以下フットポンプと略記)でDVTの予防に努めているが、さらに効果的に予防が徹底できるよう過去の症例をDVTリスクレベルで分析し、当科の予防法について具体的に報告する。
    〈研究方法〉
    期間 2007年1月~12月
    対象:入院患者615名
    方法:カルテより情報収集
    1.年齢
    2.リスク別(低・中・高)
    3.当科の予防法で妥当であるか検証
    〈結果〉
    対象を発達段階で比較すると、乳・幼児・児童・青年期17%、成人期19%、中・壮年期21%、老年期が43%であった。特に65歳以上の高齢者が38%を占めており、ガイドラインにある付加的な危険因子(以下危険因子と略記)で中等度の危険をもつ患者が4割近く占めているのがわかる。そして、対象の72%が手術を行っており、内訳として上腕(肩関節を含む)23%、脊椎9%、下腿66%、その他2%であった。DVTリスクレベルに分類すると低リスク23%、中リスク53%、高リスク22%であり、中・高リスクが75%であった。
    〈予防の実際〉
    当科での予防法として、弾性ストッキング、弾性包帯、フットポンプ、早期離床、積極的な足関節運動、脱水予防のための飲水指導を行っている。
    弾性ストッキングは手術当日の朝からほぼ全例に着用し、フットポンプは手術室入室直後から帰室後も終日施行することをスタンダードとしている。終了時期は、弾性ストッキングは病棟内歩行を、フットポンプは離床を目安にしている。
    <考察>
    ガイドラインによると、「中リスクには弾性ストッキングあるいはフットポンプ、高レベルにはフットポンプあるいは抗凝固療法」を手術前・中から開始することを推奨している。当科でも75%の中・高リスクの患者に対してガイドラインに沿って予防を行っている。また、高リスク手術の場合、術中高率にDVTが形成されるという報告もあり、弾性ストッキングとフットポンプを併用することで予防の効果がさらに期待できているのではないかと考える。
    また、年齢的に見ると、6割は65歳以下で危険因子は弱いと考えられるため、手術直前の着用で妥当であると考えられる。しかしガイドラインでは、「40歳以上の入院中の患者73%は2つ以上の危険因子をもち」そして、「弱い危険因子の場合でも複数個重なればリスクレベルを上げることを考慮する」とあり、当科の64%がそれに相当し、装着時期、終了時期ともに効果的ではない可能性がでてくる。よって、術前から十分な情報収集とアセスメントを行い、入院早期より薬物療法を含めた予防法を検討し実施することが必要であると考える。
    〈まとめ〉
    今まで高リスクレベルの症例には入院当日より弾性ストッキング等の予防を開始していたが、今後はさらに視野を広げ、様々な角度からリスクレベルを評価し、それに基づいた予防の実践が必要であることがわかった。よって、術前に評価できる当科独自のアセスメントツールの作成が今後の課題として明らかになった。
  • 川村 秀樹, 近藤 征文, 岡田 邦明, 石津 寛之, 益子 博幸, 秦 庸壮, 田中 浩一, 山上 英樹, 横田 良一, 渡会 博志
    セッションID: 1J110
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)腹腔鏡下胃切除術は多くのディスポーザブル製品を使用するため,請求可能な材料費を上回る分の使用する材料費が開腹胃切除に比べて大きいといわれている.そこで腹腔鏡下胃切除におけるコスト面での問題を調査するために開腹胃切除と腹腔鏡下胃切除において使用した材料費の合計,手術料および入院費を比較した. (対象・方法)2007年8月から11月に当院で施行した幽門側胃切除(開腹:ODG5例,腹腔鏡下:LADG5例),胃全摘(開腹:OTG5例,腹腔鏡下:LATG5例)において手術材料費,手術料,入院費(入院料+診療収入)を調査した. 胃切除術による利益=胃切除の手術料-(使用したディスポーザブル製品の材料費-請求可能なディスポーザブル製品の材料費)とした.材料費は定価を用いた. (結果)ODGの手術利益は426000 - (251191.8 - 103948.0) = 278756.2円,LADGの手術利益は510000 - (473103.2 - 153396.0) = 190292.8円となった.OTGの手術利益は583000 - (327617.4 - 140540.0) = 395922.6円,LATGの手術利益は691000 - (556710.4 - 196364.0) = 330653.6円となった.ODGでは平均コストは1390464円,平均入院期間は21.4日であり,1日あたりの平均コストは65140.0円であった.それぞれLADGでは1484254.0円,18.8日,80805.4円,OTGでは1956664.0円,24.4日,82397.1円,LATGでは1686936.0円,18.4日,91894.8円であった. (結論)腹腔鏡下胃切除は開腹胃切除に比較して手術費は多いが手術による利益は少ない.現状では十分なコスト削減対策が必須である.全入院中の入院費は必ずしも高くならないが在院日数が短いため1日あたりの入院費は高い.
  • 竹之内 美樹, 福山 國太郎, 谷畑 英一
    セッションID: 1J111
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    (はじめに)
     肥厚性瘢痕はしばしばケロイドと混同されているが、隆起した瘢痕の中で、周辺への拡大傾向がなく発生後数年かけて平坦化してゆくものであり、ケロイドとは別個に定義される。
     肥厚性瘢痕の予防・治療方法は形成外科、皮膚科ではよく知られているが、その他の診療科にはあまり知られておらず十分な対応がなされていない。今回ストーマ外来で、正中創に肥厚性瘢痕が生じたがストーマ装具の貼付部のみ肥厚性瘢痕がなくきれいに創が治癒している患者2例を経験したので、文献的考察を加え報告する。
    (症例)
     症例は2例とも60歳代女性、下部消化管穿孔のためそれぞれHartmann術、S状結腸部分切除術を受け、2例ともS状結腸単孔式ストーマを造設された。切開創は下腹部正中約10cmで、ステープラーを使用し縫合。周術期は問題なく経過し退院となった。術直後よりCPB系皮膚保護材のストーマ用装具を使用していた。経過観察中に正中創に肥厚性瘢痕を形成したがストーマ用装具に覆われていた部分のみは異常なく治癒していた。
    (考察)
     肥厚性瘢痕は多くの患者に発生し、生命予後には関与しない合併症のため、これまで一般外科領域では殆ど重要視されていなかった。しかし、瘢痕としても目立ち、強い掻痒感を訴える患者もおり、その予防は患者のQOLの向上に大きく貢献すると思われる。
     発生原因は、真皮深層に損傷が及びかつ治癒までの炎症反応が遷延するためとされるが、体質にも影響され、明確には理解されていない。組織学的には異常に増殖した膠原線維が特徴で、主として垂直方向に増殖する傾向があり、正常皮膚は押し広げられる。もっとも重要な予防方法は創縁の真皮層どうしが同一の層でしっかり接着するように縫合することであり、そのためには多数の埋没縫合や細かい単結紮を併用したマットレス縫合などが推奨される。しかしながら、一般外科領域では手術時間を短縮し手術侵襲を軽減するために皮膚の縫合は簡便な単結紮やステープラーが用いられることが多いのが現状である。
     自験例では、正中創に肥厚性瘢痕が形成されたがストーマ用装具の貼付部位のみが肥厚性瘢痕の形成を免れた。ストーマ用装具には創傷被覆材の成分が含まれており、これが正常な創傷治癒過程を促した可能性もあるが、ストーマ用装具には粘着力もあるため、これが腹部の創の減張につながり肥厚性瘢痕の形成が予防された可能性もある。一般に肥厚性瘢痕の予防・治療には圧迫も有効であり、ストーマ用装具の貼付部位以外でもベルトにより圧迫されていた部分のみに肥厚性瘢痕が発生しなかった症例もあることから、装具による創の圧迫もこれらの症例で肥厚性瘢痕が生じなかった原因として有力である。
     近年は再利用可能なシリコンゲルシートも肥厚性瘢痕治療の簡便な方法として登場しており、創がストーマ用装具に覆われない場合でもこの様な製品を利用して肥厚性瘢痕の予防・治療に努めるべきであると思われた。
    (結論)
     今回、ストーマ用装具で肥厚性瘢痕が予防できた2例を経験し、肥厚性瘢痕が予防可能であることが分かった。肥厚性瘢痕によるQOLの低下を軽減するため、希望者には術後の予防的ケアを紹介し、関わっていくことが出来ると考えられた。
  • 田上 真
    セッションID: 1J112
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    肝硬変に合併した難治性腹水に対して腹腔―静脈シャントが有効であった2例 西美濃厚生病院内科 田上 真・河口順二・浅野貴彦・岩下雅秀・畠山啓朗・林 隆夫・前田晃男・西脇伸二・齋藤公志郎 〈緒言〉肝硬変非代償期または肝不全に合併した難治性腹水の治療は困難なことが多い。入院安静臥床、利尿剤投与、腹水穿刺排液などを根気よく組み合わせてもすぐに再燃、増悪または一向に治療に反応しないこともある。今回我々は、これら保存的治療を行ったが全く改善傾向を認めなかった肝硬変非代償期に合併した難治性腹水患者に腹腔-静脈シャントを造設し、著明な改善を得た2例を経験したので報告する。 〈方法〉2症例ともDenver社製デンバーパックを使用し、局麻下に右肋骨部皮下にポンプチャンバー(ダブルバルブ)を埋没し、腹腔―右鎖骨下静脈シャントを造設した。 1.静脈へのアクセス 局所麻酔下に右鎖骨下静脈にアプローチし、ガイドワイヤーを上大静脈に留置する。2.ポンプチャンバーポケットの作成 肋骨下縁から4~6cm下で乳頭線やや外側に切開部を作り、ポンプチャンバーが指で押しやすくなるように、肋骨の真上にくるようにする。3. 腹腔カテーテルの挿入 内臓損傷に注意して腹腔穿刺し、ガイドワイヤーを留置、腹腔側カテーテルを挿入する。4.トンネリング 腹腔側から作成したポケットを介して、付属のトンネラーで皮下トンネルを作成し、右鎖骨下までカテーテルを通す。5.静脈カテーテルの挿入 ダイレーターでダイレーションした後、シースの中へカテーテルを透視下で挿入する。 〈症例〉症例1は76才男性、C型肝硬変、糖尿病にて通院中、腹水コントロール困難にて入退院を繰り返す。今回入院中も安静、利尿剤増量、穿刺排液などを繰り返したが一向に改善傾向を認めず、まず先行して脾塞栓術を行った。6割程の塞栓にて血球数減少症の改善は認めたが、腹水は減少せず、術後も穿刺排液を必要としたため腹腔―静脈シャントを造設した。その後腹水は減少傾向を認め、術後2~4週でほぼ消失し、退院が可能となった。症例2は69才男性、アルコール性肝硬変にて通院中、腹水コントロール困難にて入退院を繰り返す。今回入院中も安静、利尿剤増量、穿刺排液などを繰り返したが一向に改善傾向を認めず、まず先行して脾塞栓術を行った。6割程の塞栓にて血球数減少症の改善は認めたが、腹水は減少せず、術後も穿刺排液を必要としたため腹腔―静脈シャントを造設した。その後腹水は減少傾向を認め、術後2週でほぼ消失し退院予定である。 〈考案〉難治性腹水に対する腹腔―静脈シャントの歴史は古く、1962年以来幾種類かのシャントが試みられた。しかし当時はDICの概念や治療法も確立されておらず、多くは重篤な合併症を併発し、効能は不評であった。しかし今回用いたキットは内科医でも短時間で局麻下にシャントを比較的容易に造設でき、適応条件をよく検討する必要はあるが、術後の合併症コントロールも良好である。腹腔―静脈シャントは肝機能自体を改善するものではないが、数か月入院を余儀なくされ、退院の目途も立たなかった難治性腹水患者の腹水を消失または軽減させ、食事摂取可能となり、倦怠感、呼吸困難などの症状を改善させ、退院可能とすることにおいて、非常に有用な方法であると考えられた。
  • 八木 梓
    セッションID: 1J113
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    胃・腸切除術後のキシリトールガム咀嚼による腸蠕動促進の検証 八木梓1)(やぎあずさ)竹内伸一1)・小林万里子1)・田中真由美1)・若松景子1)内田純子1)・矢口豊久2)愛知県厚生連海南病院外科病棟1)・同外科2) 咀嚼・ガム・腸蠕動 〈緒言〉近年、キシリトールガムを咀嚼し腸蠕動を促進させるという研究が発表されている。そこで今回、当病棟では先行研究より症例数を増やし、キシリトールガム咀嚼の有効性を検証したのでここに報告する。 〈方法〉1) 調査期間:平成18年7月より平成19年11月8日まで。2)対象: 開腹により胃・腸切除術を受けた患者130例。3)方法_1_無作為抽出法にて咀嚼群と非咀嚼群のグループに分ける。_2_咀嚼群は、術後1日目より5日目まで1日3回15分ずつキシリトールガムを咀嚼する。_3_腸蠕動音を1日3回聴取する。_4_初回排ガス・排便の時間を比較する(t検定)。 _5_術後6日目に咀嚼群に対し咀嚼時間・噛むことの是非・ガムの味についてアンケート調査を行った。4)対象の背景調査: 性別・年齢・手術歴・術式・麻酔時間・手術終了時間・硬膜外麻酔の有無と薬品名・術後経管栄養の有無・術後離床状況・初回排ガス・排便までの時間・腸蠕動促進剤の使用の有無と薬品名・食事開始日・術後より退院までの日数とした。 5)評価分析方法: u検定にて咀嚼群・非咀嚼群の術後腸蠕動促進に関し、有意差が認められるか検討した。 〈結果〉咀嚼群60名、非咀嚼群70名のデーターを収集した。初回排ガスの平均時間は、咀嚼群約58.3時間、非咀嚼群約59.4時間であり、両群の差は約1.1時間で咀嚼群が早かったが有意差はなかった(p=0.8086)。次に初回排便の平均時間は、咀嚼群約100.3時間、非咀嚼群約113.8時間であり、両群の差は約13.5時間で咀嚼群が早かったが有意差はなかった(p=0.1382)。1分間の腸蠕動回数の平均は、ほぼ咀嚼群が非咀嚼群より上回っていた。しかし統計学的には、術後1日目の朝はp=0.054、昼はp=0.0154で有意差を認めたが、夕以降は有意差がなかった。 麻酔等の背景因子において両群間に差はなかった。  アンケート結果では、咀嚼時間は『ちょうどよい』が60%、ガムを噛むことについては『何とも思わなかった』が24%、味については『おいしい』が51%あった。 〈考察〉ガム咀嚼によって腸の運動が促進され、術後の回復が早まることが文献的に報告されており、今回、当病棟では開腹による胃・腸切除術を受ける患者を対象に腸蠕動促進の検証を行った。その結果、キシリトールガムの咀嚼は、離床状況に影響されることなく(結果は今回示していません)、術後早期の腸蠕動が回復することが明らかとなった。  石山らは「ガム咀嚼開始と同時に交感神経が亢進し、終了後は徐々に減弱しながら副交感神経が亢進する」さらに「交感神経亢進により、消化器系の血流量増加や唾液の分泌が促され、そのことが消化機能の開始のシグナルとなっている」と述べている。このことより、ガム咀嚼が自律神経の働きを促し結果的に腸蠕動の促進へとつながったと考えられる。また、咀嚼群のアンケート結果で、『爽快感が得られた』『気晴らしになった』などの回答から、ガム咀嚼が絶食時の空腹感を紛らわす等、リラックス効果をもたらし副交感神経優位となり腸蠕動を促進させる要因にもなったのではないかと考える。
  • - 当院の糖尿病患者データを中心に -
    杉浦 正士, 舟橋 こずえ, 福富 達也, 早川 富博
    セッションID: 1J114
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉今年度から開始された特定健診・特定保健指導のメインターゲットが糖尿病である事から判るように、糖尿病対策は我が国の最重要課題となっている。また、HbA1cは測定が容易でありデータの安定性も優れている事から糖尿病管理の中心的指標として広く用いられている。
    しかし一方では、HbA1cの値に季節変動がある事も報告されており、管理には季節変動も考慮に入れるべきとする報告もある。今回はこれらの点に注目し、当院の健診受診者および糖尿病にて受診中の患者データを用いて当地域の糖尿病実態および継続受診者の季節変動について検討したので報告する。 〈対象および方法〉
    1)当地域の糖尿病予備群・有病者
    平成18年4月から平成19年3月の1年間に当院にて健診受診した受診者の内HbA1cを測定した2,373名を対象とした。
        男性 939名、女性 1,434名 年齢 40~103歳(平均 66.3歳)  対象者を性別で10歳刻みに年代ごとの予備群・有病率を算出し厚労省の全国平均と比較検討した。HbA1c6.0以上を有病者とした。
    2)糖尿病患者のHbA1c季節変動
    上記期間内に当院外来受診しHbA1cを測定した受診者の内、下記の区分分けした4シーズンの全てでHbA1c測定した受診者を抽出。この抽出者を更にHbA1c7.0以上と未満で分け、その範囲内で変動している受診者を抽出して季節変動分析の最終対象者とした。
    シーズン区分・・_丸1_1~3月 _丸2_4~6月 _丸3_7~9月 _丸4_10~12の4期にクラス分け
    最終対象者
    HgbA1c≧7.0 男性 89名 女性88名
    HgbA1c<7.0 男性129名 女性123名
    最終対象者について、性別に各シーズンの平均値および標準偏差を算出して季節間の有意差検定を行った。
    〈結果〉
    1)糖尿病予備群・有病者の検討結果・・男性では、予備群・有病者とも全国平均に対し低値であり特に70歳以上の有病率は低値であった。女性では、予備群・有病率とも全体では差を認めなかったが、60歳以上の有病率は低値を示した。
    2)季節変動の結果・・男女とも両群で_丸1__丸2_期と比較して_丸3__丸4_期は低値を示しており有意差を認めた。特に女性の7.0以下群においては、_丸2_期は_丸1_期に対しても高値を示した。
    〈考察〉当地域は、退職後も農作業など活動的な生活を営む傾向が強く食生活も都市部とは異なっている。上記結果より得られた全国平均と比較して当院の糖尿病有病者が低い事は、地域的に農作業などに従事する住民が多い事と食生活の影響と考える。また、HbA1cが1から2ケ月前の状況を反映する事を考慮すると、季節変動においても同様の要因により、農作業などにより活動的な夏期と不活発な冬期で有意差が認められたと考える。
    〈まとめ〉当院は愛知県西三河の中山間地に位置しており、都市部の住民とは生活環境も大きく異なっている。今回の検討にて_丸1_全国平均と比較して糖尿病の予備軍および有病者の割合が低い _丸2_糖尿病患者のHbA1c値は冬期に高く夏季に低値となる傾向が認められた などの結果が得られ地域性を窺わせる結果となった。
    2型糖尿病では生活改善が薬物療法に優先して行われるため、今後は今回の結果を踏まえ日常生活の把握と季節変動への考慮を含めた治療計画が必要と考える。
  • ~糖尿病問題領域質問表を使用して~
    羽生田 愛子, 富田 豊子, 丸山 聡美, 坂口 美代子, 丸山 とく子, 吉澤 美智子, 永井 秀子, 土信田 文隆, 宮原 隆成, 北澤 ...
    セッションID: 1J115
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    【はじめに】 2型糖尿病患者は良好な血糖のコントロールを長期に維持することが必要である.その為、セルフケアを行なう事にストレスを感じる事が多い。今回糖尿病教育入院前後に、糖尿病問題領域質問表(以下PAID)を使用して負担感情の変化を調査し、面接を行い負担感情軽減の支援を行なったので報告する。PAIDは糖尿病に特異的な感情状態の評価法で、20項目の質問からなり糖尿病に対するさまざまな内容となっている。各質問は1~5までの5段階評価で、負担に思う気持ちが高いほど点数が高くなる。
    【対象及び方法】 2006年10月から2007年1月までに初回糖尿病教育入院をして入院時・退院1ヶ月後・退院3ヵ月後の調査を行なえた患者10名のうち、3名(以下A氏・B氏・C氏とする)を報告する。
    【結果】A氏のPAIDの結果は、21-20-20であり負担感情は低かった。入院時のHbA1c値は5.9-5.7-5.6%、体重は3kg減少した。「食事は以前の80%ほどに減らし食べ過ぎに注意している、1日30分ウォーキングしている」との言葉が聞かれた。B氏のPAIDの結果は、46-36-32であった。食事と治療の項目の点数が入院前4に対し退院後2に減少した。HbA1c値は6.3-6.2-6.3%、体重は2kg減少した。「1日15分程度の運動を始めた、食事はできる範囲で無理なく続けられるようにしたい」との言葉が聞かれた。C氏のPAIDの結果は、53-69-58と負担感情が高く、食事、合併症、精神的不安の項目が入院前1または3から退院後4から5に上昇していた。HbA1c値は12.6-7.8-7.7%、体重は1.9kg増加した。食事、アルコールを減らす努力をしているが、しかし、運動は行なえていない。「今後も不安だし疲れてしまった」との言葉が聞かれた。
    【考察】 A氏は以前から運動習慣があり、食事に対しては妻に任せきりであり、本人は負担に感じる事がなかったと推測される。よってPAID値が低かったものと考えられる。しかし、PAID値が低いからといって安易に治療の理解ができているとは限らないため見極めが必要である。B氏に対しては面接時にライフイベントの時は食事を楽しんでその後ふだんのカロリーに戻せばよいと指導した。指示カロリーに慣れ食品交換表を使いこなせるようになった。このことから、少しずつ治療に対して理解が深まり自信を得ていると思われる。C氏のPAID値が2回目に上昇していた事については、教育入院をしたことで糖尿病の知識が深まり、かえって不安になったためと考えられる。先がとても長いため、頑張りすぎずに治療法を一つ一つ身に付けていけるよう、患者の言葉に対して傾聴することが重要であると考える。PAIDを活用してのメリットとして、医師は事前に負担感情の内容を把握し易くなり、指導のポイントが明瞭となった。看護師は面接時に問題を聞きだし易くなり、指導しやすくなった。 患者に接する時間に限りがある外来において、短時間で患者へのアプローチポイントを把握する事ができた。患者の療養環境や心理面において、どの程度問題点を抱えているか把握して、指導する事が必要と考えられる。今後は、外来から病棟へ、病棟から外来へ情報提供することにより継続看護に繋げていく必要があると思う。
  • 内田 みさ子, 柳橋 貴子, 清水 馨, 今井 泰平
    セッションID: 1J116
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    〈緒言〉糖尿病は、医学的管理に加え患者自身による主体的な取り組みが必要とされ、生涯にわたり継続したセルフコントロールが望まれる。農業従事者は会社員と違い季節によって活動量に差があるため、特にインスリン療法に依存している患者の血糖コントロールは難しい。当院では患者の療養行動をサポートするために、2006年11月より糖尿病看護認定看護師による療養支援外来を開始した。そこで20年来 HbA1c10%台だった患者が、療養支援開始約1年後にHbA1c6.8%まで改善した症例を経験したので報告する。
    〈目的〉療養相談時の介入方法を振り返り,患者のライフスタイルに沿った支援の重要性を明らかにする。
    〈方法〉1.文書ヒストリー調査;初回の療養支援から改善するまでの8ヶ月間の看護記録から血糖値がコントロール不良であった患者背景と療養支援方法を抽出した。
    2.面接法;患者に療養相談の所要時間、良かった点、要望について聞き取り調査をした。
    〈倫理的配慮〉患者に研究の趣旨を文書と口頭で説明し同意を得た。
    〈患者紹介〉60歳代男性,農業(蓮根と梨)
    20年前に糖尿病ケトアシドーシスにて発症した1型糖尿病。発症以来、低血糖発作で緊急搬送と高血糖を繰り返し、インスリンは増量傾向。外来で栄養士による栄養指導を受けている。また、飲酒の習慣がある。
    〈看護の実際〉療養支援までの経緯は、低血糖や高血糖の原因を自己流の食事療法と飲酒によるものと疑った主治医から禁酒の指導と再度栄養指導の依頼をうけた。初回の療養支援で自己管理の背景を聴取すると、農繁期に起こす低血糖を防ぐための過食や間食を行う事で高血糖となっている事が明らかになった。 まずは本人なりの療養行動を認めつつ、患者の生活形態と農業の作業工程を聴取した。そして、安酸史子氏らの提唱している看護者に必要な基本姿勢をとりながら、食事・薬物・運動・合併症・血糖ハ゜ターン等を指導した。また、セルフケアの確立にむけて、正木治恵氏の提唱している5つの看護援助方法で療養支援を行った。同時に主治医にコントロール不良の真の要因をフィードバックしインスリン量の減量を提案した。その後HbA1c値は改善した。患者との面接法での調査では、血糖値が改善した事をあらためて実感し喜び、生活に沿ったアドバイスを具体的に受けられた事が良かったという言葉などが聞かれた。
    〈考察〉単に知識や理想的なやり方を指示するのではなく、まずは患者の生活形態や患者なりの療養行動を聴くことで血糖コントロール不良の真の要因を明らかにする事が重要である。その上で、患者なりの療養行動を尊重しつつ、個人の生活に沿いながら専門的なアドバイスをし、改善策を自己決定できるように導く事が必要である。医師は多くの患者を診察しなければならず、個々人のライフスタイルに沿ったアドバイスをしたり、患者の自己決定を導く関わりをする事は困難である。そのため、糖尿病患者の療養行動を支援するためには事専門的な知識を習得した看護師と医師との連携は必須である。
    〈参考・引用文献〉
    安酸史子氏他,患者教育に必要な看護者のProfessional Learning Climate(PLC),看護研究, 36(3),P51‐62,2003
    正木治恵氏,臨床看護,20(4),P508-511,1994
  • 佐藤 碧, 竹下 秀司, 松山 耐至, 玉内 登志雄
    セッションID: 1J117
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    〈緒言〉自己血糖測定(SMBG)器の測定試験紙(以下センサー)はその保管状況で測定値に誤差を生じる。中でも医療現場では、センサーの容器を開封状態のまま放置することによって、湿度の影響が原因と考えられる、測定値の変化が問題となっている。
    しかし、湿度の影響が、どの程度測定値に変化を及ぼすのか、又、変化が出始める時期、期間、SMBG機種による違い、など不明な点も多い。そこで、センサーが湿度にさらされた場合の測定値の変化について検討したので報告する。
    〈方法〉SMBG機器を3機種用い、1日1回24日間測定を行った。機種はワンタッチウルトラGOD電極法(ジョンソンアンドジョンソン)(以下、O)、フリースタイルGDH電極法(キッセイ)(以下、F)、アキュチェックアドバンテージGDH電極法(ロシュ)(以下、A)を用いた。容器を開封したまま保管したセンサーと、密閉して保管し測定時のみ開封したセンサーで、標準液を測定した場合の値を比較した。標準液は5%ブドウ糖溶液(テルモ)を注射用水(ワッサー)で希釈し調製し、アンプルに封入しておいたものを使用した。湿度、温度も記録した。
    〈結果〉開封直後(0日目)の測定値に対する、各日数での測定値の比率R(%)(n日目の測定値/0日目の測定値×100)によって結果を示した。以下、容器を開封したまま保管したセンサーを<検体群>、密閉して保管したセンサーを<対照群>とした。Oについては、検体群のほうが、対照群に比較して、Rが小さくなる傾向にあった。また、時間の経過に関係なく、Rが変動していた。Fについても、検体群のほうが、対照群に比較して、Rが小さくなる傾向にあり、時間の経過に関係なく、Rが変動していた。R変動はOに比較すれば小さい傾向を示した。Aについては、検体群のほうが対照群に比較して、Rが大きくなる傾向にあった。また、検体群のRは時間の経過とともに高くなる傾向にあった。Fは温度・湿度、検体群・対照群に関係なく誤差が少なく、Oでは概ね両群とも誤差が少ないが、検体群のほうがやや誤差が大きく、Aは対照群の誤差が明らかに大きかった。
    〈考察〉SMBGにおいて測定誤差が大きい場合、適正な血糖管理に影響を与える可能性がある。そのため、センサーが空気中の湿度の影響を受けないよう付属の容器で密閉して保管することが極めて重要であり、日常診療の服薬指導業務ではセンサーの保管についても充分な説明と指導が必要と考えられた。
    *R(変化率)をグラフに示す。(横軸が日数、縦軸がR、 赤線が対照群、青線が検体群)
  • 本田 浩一, 大河内 昌弘, 安田 康紀, 馬場 卓也, 近藤 好博, 加藤 幸正, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: 1J118
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈諸言〉水中毒とは、体内が水過剰な状態になり、水分が細胞内まで広がり、浸透圧の低下や細胞の膨化を生じた状態である。水中毒の症状としては、頭痛、嘔吐、痙攣、意識障害、精神症状、麻痺性イレウスなどがあり、発見が遅れれば死に至ることもある。これらの症状の原因は、低ナトリウム血症による脳浮腫、腸管の障害であると考えられている。水中毒は精神病患者に多いことが知られており、詳しいことは不明だが、抗精神病薬の副作用とバソプレッシンの持続的分泌が関係するという説がある。つまり、抗精神病薬の長期投与によって視床下部の口渇中枢およびバソプレッシン分泌細胞のドーパミン受容体感受性が亢進する。このため口渇とバソプレッシン促進によって腎臓からの水分再吸収が盛んになり血漿浸透圧が減少するが、ナトリウムの再吸収は行われないため低ナトリウム血症を引き起こすとされる。今回我々は、脳浮腫あるいは、麻痺性イレウスおよび重症横紋筋融解症をきたした重症水中毒の2例を経験したので報告する。〈症例〉症例1は、55歳女性。身長160cm, 体重55kg, BMI 21.5。統合失調症で近医精神科病院に入院していた処、意識レベル低下III-300、全身痙攣、嘔吐と状態悪化し、当院に搬送された。検査上、血清Na108mEq/l, K3.3 mEq/l,Cl 77 mEq/l, BUN6.8mg/dl, Cre 0.2mg/dl, CPK518 IU/Lと重度の低Na血症を認めた。さらに、血清浸透圧254mOsm/kg/H2O, 尿浸透圧139mOsm/kg/H2O, ADH 2.9pg/ml, 尿中Na4 mEq/lおよび、頭部CT上、重度の脳浮腫、腹部X線上、麻痺性イレウスを認めた。これらの結果より、脳浮腫および麻痺性イレウスをきたした重症水中毒と診断した。治療としては、高張食塩水の点滴、マンニトール製剤の投与、水制限を行ったところ、序々に低Na血症は改善し、脳浮腫、麻痺性イレウスも消失し、中心性橋脱髄症候群等の後遺症も無く回復した。症例2は、54歳男性。身長165cm, 体重58kg, BMI 21.2。統合失調症で近医精神科病院に入院していた処、意識レベル低下I-3、腹満、肉眼的血尿を認め、当院に搬送された。検査上、血清Na112mEq/l, K3.5 mEq/l,Cl 82 mEq/l, BUN10.5mg/dl, Cre 0.8mg/dl, CPK 226181 IU/L (MM型99%), GOT1362IU/L,GPT333IU/L, LDH6308IU/Lと重度の低Na血症および高CPK血症、肝機能異常を認めた。さらに、血清浸透圧265mOsm/kg/H2O, 尿浸透圧152mOsm/kg/H2O, ADH 2.7pg/ml, 尿中Na10 mEq/l,血中ミオグロビン>3000ng/ml, 尿中ミオグロビン>3000ng/mlおよび、腹部X線上、麻痺性イレウスを認めた。これらの結果より、重症横紋筋融解症および麻痺性イレウスをきたした重症水中毒と診断した。治療としては、高張食塩水の点滴、水制限を行ったところ、序々に低Na血症は改善し、横紋筋融解症、麻痺性イレウスも消失し、腎不全等の後遺症も無く回復した。〈考察〉当症例のように、水中毒は、精神病患者に多いことが知られているが、抗精神病薬を服用していなくとも、極端な水分の摂取をすれば誰にでも水中毒は起こり得る。実際、健常人でも大量の水を飲むことを競うイベントにて、水中毒による死者を出してしまった過去の事例が報告されている。水中毒は、発見が遅れれば、命取りになる病気であること。また、重度の水中毒に対して、急激なNaの補正治療は、中心性橋脱髄症候群を発症させ命取りになることから、慎重なNaの補正および低Na血症に併存する合併症を考慮した治療が必要であると考えられた。
  • 片野 成子, 大類 由実子, 永瀬 絵美, 佐藤 順子, 佐藤 ひろみ
    セッションID: 1J119
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉高次脳機能障害は、障害が重複して現われることが多い。そのため、患者は意欲や活動性が低下し、運動・作業訓練以外の時間はヘ゛ット゛上で過ごしている事が多い。平松1)は、背面開放座位訓練が寝たきり状態の患者の身体面、精神面・心理面・生活諸行動に効果的な変化を与えると報告している。今回、私達は、運動・作業訓練以外はほとんどヘ゛ット゛上で過ごしている高次脳機能障害患者に、ヘ゛ット゛サイト゛での背面開放座位訓練を施行したところ、患者のADLの拡大につながる効果が得られたので報告する。
    〈方法〉 
    1.方法 事例研究
    2.期間 平成19年7月1日~10月10日
    3.場所 平鹿総合病院 脳神経外科病棟
    4.対象 回復期にある高次脳機能障害患者
    訓練実施群 被殻出血 A氏(62歳) B氏(77歳)、視床出血 C氏(86歳)、 皮質下出血D氏(79歳)
    訓練非実施群 被殻出血 E氏(77歳)、視床出血 F氏(87歳)、皮質下出血 G氏(77歳)
    5.内容
    1)背面開放座位訓練のフ゜ロク゛ラムを作成(大久保ら2)の背面開放座位の定義を参考)した。
    2)背面開放座位訓練(以下訓練)を患者の病室で17時から30分、3週間実施した。
    6.分析方法
    1)訓練中の患者の状況(端座位レヘ゛ル、体幹・頚部の傾き、表情、言動)とADL(Barthel Indexの食事・トイレ動作・移乗・移動の項目)の変化を訓練実施前、及び実施後は1週間毎に評価した。
    2)訓練実施群と非実施群(障害部位が類似した患者をカルテから検索)のADLの変化と表情、言動の変化を1ヶ月毎に比較した。
    〈結果〉患者に訓練実施時の安全の確保について説明し書面で承諾を得た。背面開放座位訓練を行った患者の状況とADLの変化をみると、A氏は、訓練開始時から端座位は自立していた。ADLは3週目で全て自立した。B氏は、訓練開始2週目から端座位が安定し、食事・移動動作が全介助から一部介助となった。C氏は、訓練開始2週目頃から、支えると座れるようになった。3週目では食事動作が全介助から一部介助となった。D氏は、訓練中の端座位レヘ゛ルとADLに変化は認められなかった。次に、訓練実施群と非実施群のADLの変化と表情・言動の変化を比較した。被殻が障害されたケースでは、実施群A氏は、発症1ヶ月で食事・トイレ動作は自立し、日常会話が成立した。発症2ヶ月ではADLは全て自立した。B氏は発症2ヶ月で食事・移動動作は一部介助となった。一方、非実施群F氏は、発症2ヶ月で食事動作のみ全介助から一部介助となった。視床が障害されたケースでは、実施群C氏の発症1ヶ月のADLは全介助を要した。発症2ヶ月では、食事動作は一部介助となった。非実施群F氏の発症1ヶ月のADLは全介助を要した。発症2ヶ月では、食事動作が一部介助となった。皮質下が障害されたケースでは、実施群D氏のADLに変化はみられなかったが、発症1ヶ月では追視がみられた。非実施群G氏のADLも変化はみられなかったが、追視は発症2ヶ月でみられた。
  • ーバリデーション療法と照らし合わせた事例ー
    横田 真美
    セッションID: 1J120
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】認知症高齢者に見られる不穏や興奮、暴力などの行動は環境の変化やコミュニケーションが十分に取れない事に対する不安や苛立ちが背景にあると言われる。認知症ケアに対するコミュニケーション方法において、ナオミ・フェイル1)が開発したバリデーション療法は、認知症高齢者の問題行動には理由があると捉え共感して接するセラピーで、わが国でも介護の現場で注目され始めている。一方、A病院療養病床では、これまで認知症高齢者とのコミュニケーション方法について試行錯誤しながら援助を行ってきた。その結果、徐々に不穏行動が落ち着いたり、発語の無かった患者が話し出したりする等の変化が見られるようになったが、これらは必ずしも意識的に実践してきた結果ではなかった。その折バリデーション療法について学ぶ機会を得たところ、これまでの試行錯誤による実践との共通点があることに気づいた。そこで過去の事例の中で問題行動に変化が見られた認知症高齢者との関わりを振り返り、バリデーション療法の技法と照らし合わせ、分析したので報告する。 【研究方法】 1)調査期間:平成19年5月~8月 2)研究対象:上記入所中の会話可能な認知症高齢者のうち言動に変化が見られた3名の看護記録 3)方法:_丸1_関わった時の言動や動作を看護記録より収集_丸2_対象と看護師の言動・行動をバリデーション療法のコミュニケーション技法と照合し分析する。 4)倫理的手続き:対象となる記録類の使用について、研究主旨や匿名性の保障について説明し、施設責任者、看護部門責任者の許可を得た。 【バリデーション療法のテクニック】 解決ステージを4段階に分類し以下の テクニックを用いて関る_丸1_センタリング_丸2_事実に基づいた言葉を使う_丸3_リフレージング_丸4_極端な表現を使う_丸5_アイコンタクト_丸6_曖昧な表現を使う_丸7_反対の想像をする_丸8_思い出話しをする_丸9_はっきりした低い声で話す_丸10_ミラーリング_丸11_満たされていない欲求を行動に結びつける_丸12_好きな感覚を用いる_丸13_タッチング_丸14_音楽を使う 【結果と考察】 普段、殆ど自分から発語が無かったA氏が昼夜問わず大声で呼んでいた。これに対し要求内容を問うだけの関りから、目線を合わせ、背部をさすりながら問う関りを行った結果落ち着かれ静かになった。B氏に対しては、朝早くから家族に電話をしてほしいと要求があった。それに対しB氏と向かい合い、手を握りながらゆっくり聞いているうちに電話要求しなくなった。両氏の関りをバリデーションテクニックに照合すると_丸5_・_丸9_・_丸13_に当たる。これは対象の状況や性格を把握し問題行動に焦点をあて対応した事が良い結果に結びついたと考える。C氏は車椅子乗車中の不穏動作がみられた。世話好きで母親的な役割意識が強いC氏に対し食事後のタオルの洗濯や、朝食の準備等役割を与え、次への期待に繋げる声賭けを行った結果心身共に落ち着いた。これは、_丸11_のテクニックである、満たされない欲求を役割という行動に結びつける事により落ち着きを取り戻したと言える。 【結論】 認知症患者への関わり方を振り返った結果バリデーション療法のテクニックと多くの共通点がある事がわかった。今後は意識的・系統的かつ適切に同方法を用い、コミュニケーションの改善を図るように務めていきたい。
  • 北升 美帆, 西丸 照美, 金原 亜子
    セッションID: 1J121
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉恐怖心や不安のある患者に対し、安心してケアを受け入れる為の援助を見出し、スタッフ全員で継続してかかわった。その結果、不安を軽減し、体を動かすことへの援助へとつなげることが出来たケースを報告する。 〈事例紹介〉A氏 80歳代 女性 自宅にて転倒受傷し右大腿骨頸部骨折にて入院後、γネイル術施行となった。既往に高血圧あり 術後、体に触れただけでも疼痛の訴えがあり介助困難な状態。認知症・見当識障害があり、大声を出したりベッド柵を揺らしたりする。体に触れると体を硬直させる。体位変換の際「落ちる」と大声で恐怖感を訴える。 〈看護の実際〉[看護診断]#1安楽障害 [患者目標]疼痛が軽減し、ケアや動くことに対しての恐怖感が軽減できる。[看護計画] 1)体に触れる前、ケア・処置をする前には説明をして、理解できているか返事を聞いて確認し、了承を得てから体に触れるようにする。 2)体を動かす時、体位変換する時には、大腿部を支えて固定し2人以上で行う。 3)日頃から声かけとタッチング(手を握る、肩をさするなど)を行い、コミュニケーションをとる。 4)疼痛があることを受容し、共感する態度で接する。 5)体位変換時は左の耳元で説明してから、1人は体を近づけ密着させて、腕でA氏の体を包み込むように抱きかかえるようにして、もう1人は肢位を支持する。 6)家族がいる時には、家族と一緒に体位変換やオムツ交換をする。 7)痛みのないようにゆっくり動かすことを、都度聞こえやすく大きな声で説明する。 〈結果〉―術後1日目― 何を聞いても「ちょっと来てーや」と繰り返しケアに対しても拒否的。「痛いよ」と健側の足の疼痛を訴える。体に触れる前から疼痛を訴える為、リハビリでも「体に触れることができない」という。 ―術後10日~11日目― 「落ちるよー!」とベッド柵を強くつかんで恐怖感を訴える。計画を実施し「これから動きますよ。痛くないようにするので大丈夫ですよ。」とタッチングを行いながら耳元ではっきり説明すると大声はなかった。しかし体に触れると体を硬直させ動きがスムーズにならない。「寂しいよ~」と寂しさや不安がある様子。 ―術後12日目― 声かけとタッチングを継続して行う。カンファレンスでスタッフの関わり方を統一する。体を密着させて看護師の腕でA氏の体を包み込み、抱きかかえるようにして声をかけながら体位変換すると大声がなく穏やかである。 ―術後14日目― 声かけをしながら介助で車椅子へ移乗すると、疼痛の訴えがなく笑顔がみられた。左耳から声をかけると右耳よりも疎通がよい様子。 ―術後20~22日目― 左耳から声をかければ自力でベッド柵を持って側臥位になったり腰を上げたりすることができ、協力を得ることができる。自宅退院に向けて、キーパーソンである長男の嫁に寝衣交換、陰部洗浄、オムツ交換の指導を行った。声をかけずに体を動かしたり腕を引っ張ったりされるため、実施前に声をかけて了承を得ながらすると協力が得られて行いやすいと注意点を伝えた。 ―術後28日目― 自宅へ退院。 〈結語〉不安軽減に向けての援助を行う中で以下の3点の重要性を学ぶことができた。1)認知症の理解 2)その人に合った最も受け入れやすく安心できる方法を見出す 3)ケアを統一し、継続する  認知症患者が増えている中、今回の学びを生かしコミュニケーション技術を向上させていきたい。
  • 飯田 亜紀子, 松田 絵里, 吉田 裕美, 笹倉 友美, 森本 さき子, 伊川 順子
    セッションID: 1J122
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     大腿骨骨折患者のリハビリテーション(以下、リハと略す)は手術翌日から開始され、理学療法が中心である。当科では術前からのリハビリテーション(以下、術前リハと略す)の重要性を認識しているが、実施は出来ていないのが現状である。今回は筋力低下を防止し、入院時のADLの維持・拡大をめざした継続リハビリテーション(以下、継続リハと略す)を実施するとともにリハビリテーションの質(以下、リハの質と略す)の効果を評価した。
    【研究時期】
     平成19年7月17日~平成20年1月17日
    【研究目的】
     大腿骨骨折患者の入院時よりリハを実施し、ADLの変化をリハの質で評価する
    【研究方法】
     1.大腿骨骨折患者への術前リハの依頼
     2.パンフレットを用いての病棟看護師による床上リハの実施
      1)期間…入院翌日より退院まで
      2)時間…10時、15時  2回/日
      3)部位…両上肢・下肢 (健肢) 疼痛に応じ可能であれば患肢も実施
      4)回数…両上肢の屈曲伸展運動3~5回 下肢(健肢)の伸展・挙上運動3~5回
       ※看護師は理学療法士による事前指導を受ける
      5)入院翌日からの理学・作業療法士による上・下肢のリハの実施
    【結果及び考察】
     1. 継続リハの効果
      大腿骨骨折患者の継続リハを実施し、リハの質を過去と比較したが、急性期病床入院対象者のリハの
     質は0.4点/日上がった。これにより、継続リハの実施は効果があったと考える。作製したパンレットを看
     護師が共通理解したことや、実施前に理学療法士による指導を設けたことで、継続リハの目的が明確と
     なり、手技の統一が図れ、計画的に実施できたこともリハの質が上がったことに関係していると考える。
     認知症のある対象者は、継続リハを実施してもリハ開始時FIMと退院時FIMとの差は認められず、継続リ
     ハの実施が効果的であったとは言い難い結果であった。
     2.継続リハの実施と在院日数
      急性期病床入院対象者の平均在院は、過去と比較すると、3.7日の短縮が認められた。これは、リハの
     質が上がったことが影響していると考える。
     3.認識の変化
      継続リハ説明前は「痛みのあるうちは動きたくない」「骨折により安静にしていなければいけない」という
     認識があったが、パンフレットによる説明や継続リハの実施により「少しでも動かさなければいけない」な
     ど、必要性を理解する発言へと変わった。また「リハビリをやって歩いて帰りたい」という目標をもち、自主
     的に継続リハを実施できた対象者もいた。このことより、継続リハの説明・実施は対象者の認識を変化さ
     せたと考える。
    【結論】
     1.継続リハの実施により、リハの質があがった
     2.リハの質があがったことより、急性期病床の在院日数が短縮した
     3.対象者の継続リハに対する認識の変化があった
  • 竹之下 秀雄, 藤山 幹子, 橋本 公二
    セッションID: 1J123
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    Drug-induced hypersensitivity syndrome (以下DIHS)は、通常の薬疹と比べ発熱と臓器障害を伴うためにStevens-Johnson syndromeやToxic epidermal necrolysisと共に重症薬疹の1型に数えられている。DIHSは、次のようにして発症すると考えられている。まず、投与された薬剤によって薬剤アレルギーが生じ、そのため皮疹、発熱や臓器障害がもたらされる。この薬剤アレルギーが引き金になり、何らかの原因でヒトヘルペスウイルス6型(以下HHV-6)やサイトメガロウイルス等のウイルスの再活性化が生じ、このため再度、皮疹、発熱および臓器障害が発症し、経過が長引くこととなる。しかも症例によっては重傷化し、死亡例も報告されている。興味深いことに、DIHSをもたらす原因薬剤は限られており、抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、ゾニサミド)、アロプリノール、メキシレチン、サラゾスルファピリジン、ジアフェニルスルホン、ミノサイクリン等が報告されているにすぎない。このようなことから、上記に示した薬剤が原因で生じた薬疹であれば、DIHSに移行する可能性があることを予想することは難しいことではない。当科では、最近10例程のDIHSを経験したため、その中の典型的な1例を報告する。患者さんは59歳、女性。2004年6月2日当科初診。同年4月21日より、非定型精神病のため、近医精神科よりカルバマゼピンとリスベリドンが処方されていた。5月25日頃より全身性の皮疹と発熱が出現したため、近医内科を受診し、当科紹介された。初診時全身性に浮腫性の紅斑丘疹型の中毒疹様皮疹がみられ、一部には水疱形成もあった。顔面はかなり腫脹し、38℃台の発熱と肝機能障害も存在していた。右前腕部の紅斑より生検したところ、真皮には高度の浮腫がみられ、表皮下水疱も形成していた。真皮上層の血管周囲にはリンパ球を中心とした浸潤がみられ、表皮には浮腫と個細胞壊死も散見された。以上の臨床症状と検査結果より、本例はDIHSである可能性が強く示唆された。DIHSでは、HHV-6等のウイルスの再活性化による生体への直接障害よりも、むしろウイルスの再活性化によって生じる免疫アレルギー反応が生体に及ぼす影響の方が強いことから、DIHSの治療においては後者の反応を抑える目的でステロイド剤を十分に投与することが必要と考えられている。このため6月3日より、プレドニゾロン(以下PSL)50mg/dayの全身投与を開始するとともに、DIHS関連検査を開始した。皮疹は6月15日までにかなり消退したが、6月16日より再燃し、7月19日にほぼ消退した。発熱は6月5日に一旦解熱したが、6月9日より再燃し、6月13日に解熱した。肝機能は6月3日より改善傾向を示したが、6月11日より悪化し、6月13日にはAST215IU/l、ALT196IU/l、γ-GTP768IU/lに達したが、以後改善傾向に転じた。全血中のHHV-6のDNA量の検出を試みたところ、6月9日から6月24日まで(HHV-6の再活性化)と7月15日から8月19日まで(HHV-6の再々活性化)検出された。HHV-6の再活性化に伴って皮疹、発熱、肝機能障害、さらに血清アミラーゼとリパーゼの軽度上昇がみられたが、HHV-6の再々活性化に伴っては血清アミラーゼとリパーゼの軽度上昇が生じたのみであった。DIHSは一般にまだ十分に周知されておらず、今後、啓蒙と症例の蓄積が期待される。
  • 仙波 静, 石田 有希恵, 齊藤 文恵, 亀田 俊夫, 谷田部 淳一, 斉藤 尚子
    セッションID: 1J124
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    高齢の患者は慢性的疾患を抱え加齢と共に重症化していく。今回、中心静脈栄養(TPN)や胃瘻(PEG)が使えない中で栄養サポートチーム(NST)が関わり、褥瘡が完治した症例を経験し、生かしているので報告する。
    症例:86歳女性、20年前、脳幹梗塞後右片麻痺、昭和62年胃癌手術時に、糖尿病と高血圧を指摘された。平成11年大腿骨頚部骨折、18年3月腎不全・心不全。同年4月に胸部打撲と食欲不振のために入院した。
    入院1年後、発熱、チアノーゼ、浮腫が出現。肺炎から心不全、腎不全を併発し重篤な状態に陥った。気管挿管、TPN,PEGなどの治療を提案したが、家族は拒否。その時の検査値はCRP30.2mg/dl,BUN153.7 mg/dlCr2.9 mg/dlであった。投薬、クーリング、抹消静脈栄養(PPN)で2週間後には解熱。回復後、食事を開始したが口を閉じて拒否。また家族がTPNやPEGを希望しないため、NSTに栄養管理を依頼された。
    初めに好物の補助食の「京花あん」を提供したが、補助食のみでは、200Cal/日、蛋白9.9g/日と栄養不足となり、背部と踵に褥瘡が発生。NSTではハリスベネジェクトと2005年日本人の栄養摂取基準を勘案し、補助食と嚥下食を合わせて1500Cal/日、蛋白65g /日の食事開始を依頼した。尚、当厚生連が使用中の給食管理システムは、食札に患者個々の嗜好に変換したメニューが、また喫食量を入力すると自動で喫食栄養量が表示される。その後実際にシステムで計算した結果、この患者の摂取量は580Cal/日蛋白20.5g /日にすぎないことが判った。それに褥瘡は、黒褐色化し浸出液があり、褥瘡III度と悪化した。
    NSTでは「むら食い」の中に工夫の余地があると考え、患者の食事状況を観察した。患者は左足を常時動かし座位保持が困難だったので、ベットを壁面に設置し5つの枕を使って安定化させた。また食べ物に興味を示さず手で着衣等の皺を触っていたので、背ぬきやリネンの皺を伸ばした。さらに、食事のセッティングを工夫し、お膳は視界に入る場所に置き、汁は水飲みに入れ、深めの丼にお粥を盛り上に副菜をトッピングすると、自力で左手にスプーンを持ち時間をかけて食べることが判明した。その後、食事摂取量が増加し11月には、喫食量は100%近くになった。その結果、Alb値は2.9mg/dlから3.7mg/dlに改善。褥瘡は5月にIII度の褥瘡が7月には完治した。
    この症例を通して(1)患者は食欲不振の時でも好きな食べ物には興味を示す、(2)片麻痺や認知症などで上手く食事を食べられなくても自分で食事をしたい方がいる、(3)食事が出来ない患者の栄養確保はPEGからという固定観念を持つが当てはまらないケースがある、ということを学び得た。
    この症例で良い結果が得られたことは貴重な経験となり、その後、NSTが介入する時、自分で食事を食べることは、患者のQOLの維持に繋がることから、食事の内容・食事の方法・食事の体位などは必須点検項目となり、患者個々に工夫を試みることになって生かされている。
  • 染谷 麻矢, 鴻巣 美佐子, 板倉 紀子, 竹之内 美樹, 福山 國太郎
    セッションID: 1J125
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当病棟は神経内科・呼吸器内科であり、介護保険障害老人の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準のB,Cランク患者が多い。当院の院内発生褥瘡有病率は0.85%で全国平均の2.3%の半分以下である。しかし、当病棟の発生褥瘡有病率は2.03%と全国平均以下ではあったものの、当院の中では高かった。そこで褥瘡発生の原因について調査・分析し、今後の改善策について検討したので報告する。
    〈期間〉2007年1月~2007年12月
    〈方法〉1.日常生活自立度B,Cランク患者人数、褥瘡が発生した患者22名、25部位の年齢・基礎疾患・日常生活自立度・Alb値・BMI・褥瘡発生部位・深達度・体圧分散寝具の適切な使用率・体位変換の頻度を調査。
    2.病棟スタッフ25名に褥瘡予防ケアの実情・知識・意識に関するアンケートを実施。
    〈結果〉1.当院の日常生活自立度B、Cランク患者は入院全体の19%,当病棟では52%を占めていた。褥瘡発生者の22名については平均年齢71歳で主な基礎疾患は脳梗塞26%、肺炎17%、悪性腫瘍17%、パーキンソン病13%、日常生活自立度はBランク26%・Cランク74%・Alb値2.7g/dl以下が61%、BMI18.5以下の痩せが69%を占めていた。褥瘡の深達度(NPUAP分類)はステージ_I_が26%、ステージ_II_が57%、ステージ_III_が17%となっていた。主な発生部位は仙骨部40%、踵部28%であった。全例で体圧分散寝具を使用していたが、適切に使用できていたのは68%であった。体位変換は3時間で必ず施行していた。
    2.病棟スタッフへのアンケートの中で褥瘡ケアの実情に関する質問では全体の96%が、マンパワー不足により1人で体位変換を行うことがあると回答していた。知識に関する質問では、体圧分散寝具を正しく理解していた看護師は72%であった。一方意識に対する質問では、全員この病棟で褥瘡発生を減少させることが可能だと回答しており、殆どの看護師が発生原因は褥瘡予防対策が不十分で、知識、認識の不足があることと回答していた。
    〈考察〉当病棟は日常生活自立度B,Cランクの患者が他病棟と比較し多い。褥瘡発生した患者の背景は、脳梗塞、肺炎、パーキンソン病などの神経内科、呼吸器内科特有の疾患で、寝たきりで低栄養の患者であった。深達度に関してみると83%が浅い褥瘡であり、早期発見出来ていたが、体位変換を1人で行わざるを得ない状況があったり、経験的に個人の判断で体圧分散寝具を使用していたりした。踵部に深い_III_度の褥瘡が発生していたなど部分的に対策が不十分であった。この褥瘡に関しては完全除圧が可能な場所であり、踵の除圧の徹底で今後減らすことが出来ると考えられた。さらに、全員が知識不足を認識しており、知識の向上で褥瘡発生を減らすことが出来ると実感していることがうかがえた。これらのことより、患者のADLに合わせた体圧分散寝具選択基準に添った適切な使用の再検討と褥瘡予防ケアとして体位変換や背抜きの実技指導、踵部の除圧の徹底、病棟内での勉強会の定期的な実施や、褥瘡委員が中心となり、正しいケア方法を実施、指導していくことが今後の課題であることが明らかになった。
    〈まとめ〉今回の調査分析の結果、当病棟は褥瘡発生ハイリスクの患者が多いが、看護師に十分な知識の行き届かないまま日常のケアが行われている可能性が示唆された。今後は具体的な実技指導をふまえた知識の向上により当病棟の褥瘡発生が減少出来ると思われた。
  • 高部 和彦, 尾形 朋之, 林 ゆり, 斎藤 和人, 若井 陽子, 篠原 陽子
    セッションID: 1J126
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉家族性地中海熱は発熱と腹膜炎、胸膜炎などの全身の漿膜炎、関節痛を繰り返す常染色体劣性の遺伝性疾患で地中海地方に祖先を持つ民族に認められる。本邦ではまれな疾患と考えられ、また、特異的な臨床検査がないため確定診断が困難であった。しかし、近年原因遺伝子(MEFV遺伝子)が同定されことから、本邦でも遺伝子検査により確定診断された症例が増加している。地中海地方では主に5つの遺伝子変異(M694V、M694I、M680I、V726A、E148Q)が認められるが、遺伝子変異を検索された本邦の家族性地中海熱34例では、M694Iを含む複合ヘテロ接合体の頻度が最も高く、他に、L110P、E148Q、R202Q、P369S、R408Qが報告されている。当院では、2005年に最初の症例を経験して以来、周期的発熱など本症が疑われる症例ではこれらの遺伝子変異のスクリーニングを行っている。今回、我々は当院で遺伝子検査を施行した家族性地中海熱11例の臨床所見、遺伝子検査の結果とこれらの遺伝子変異の本邦健常人における頻度について報告する。
    〈方法〉Tel-Hashomerの診断基準(Livnehら、1997)を満たす家族性地中海熱11例(4例は他施設から遺伝子検査を依頼された)と本邦健常人54例を対象とした。遺伝子検査は、L110P、E148Q、R202Q、P369S、R408Q、M694Iの変異を制限酵素分析、amplification refractory mutation screening system(ARMS)法により検索した。
    〈結果〉家族性地中海熱11例は男性7例、女性4例、遺伝子検査施行時(診断時)の年齢は29.4±16.5歳(7~73歳)であった。発症は21.1±16.4歳(7~67歳)で、10歳以下の発症は2例(18.2%)、20歳以下が7例(63.6%)であった。診断の遅れは8.3±7.4年(0~27年)であった。発作の頻度は2週に1回から6ヶ月に1回で、発作時には全例発熱を認め、9例は腹痛を伴った。本疾患の診断前に2例ではリウマチ性多発筋痛、回帰リウマチとして治療を受けていた。診断後9例でコルヒチンが開始され(0.25mg~1mg/日)、いずれも症状は軽快した。遺伝子検査では、10例がE148Q/M694I(1例はL110P/E148Q/M694I)、1例がR202Q/M694Iの複合ヘテロ接合体であった。健常人54例のL110P、E148Q、R202Q、P369S、R408Q、M694Iのアレル頻度はそれぞれ5.6%、24.1%、1.9%、2.8%、2.8%、0.0%であった。また、9例(16.7%)はホモ接合体、あるいは複合ヘテロ接合体であった(L110P/E148Q; 4例、L110P/E148Q/E148Q; 1例、E148Q/R202Q; 1例、E148Q/P369S/R408Q; 2例、L110P/E148Q/E148Q/P369S/R408Q; 1例)。
    (考察とまとめ)家族性地中海熱の本邦報告例34例の遺伝子変異はM694Iを含む例がほとんどを占め(29例、85.3%)、そのうち5例はホモ接合体、14例がM694Iを含む複合ヘテロ接合体であった。自験例も全例M694Iを含む複合ヘテロ接合体であったが、L110P、E148Q、P369S、R408Qのみの組み合わせでも典型的な症状を示す症例が報告されている。これらの変異は健常人においてもかなりの頻度(16.7%)で認められるため、本邦には未診断の症例が多数存在する可能性がある。また、MEFV遺伝子の変異は炎症反応を非特異的に亢進させ、種々の炎症疾患(関節リウマチ、クローン病など)の病状を修飾する可能性が示唆されており、本邦においても注目すべきであると考えられた。
  • - T字帯に代わる下着の検討を行って -
    夏目 沙織, 小林 亜有未, 樅山 涼香, 杉山 澄子
    セッションID: 1J127
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】整形外科の手術においては、穿刺部の清潔確保・着脱が簡易な事から手術時の下着として恒常的にT字帯が使用されてきた。また、術式によっては創が腸骨後面に及ぶため、処置時にT字帯や下着を脱ぐ必要がある。そんな中患者からT字帯は「恥かしい」という声が聞かれ、看護師からも「T字帯がよれて陰部が露出するケースもあり、下着としての機能が十分に果たされておらず見た目が恥かしい」という意見が多く聞かれた。そこでT字帯に代わる独自のパンツを作成し、使用したところ効果がみられたのでその経過を報告する。
    【研究目的】独自に作成したらくらくパンツ(パンツ)を使用する事により、患者の羞恥心軽減を図って、安心した術中・術後の経過を過ごして頂く事を目的とした。作成に当たってはT字帯と同程度のケアが可能とすることを心がけた。
    【研究方法】1)認知症がなく意思伝達ができる患者で下腿手術を受けた患者:T字帯使用者7名・パンツ使用者7名の計14名。当病棟看護師20名・対象患者の手術に関わった手術室看護師7名の計27名にアンケートを実施した。2)方法 対象者全員に、T字帯・パンツに対する羞恥心、使用感のアンケートを実施した。
    【結果】<T字帯の調査結果>患者は「恥かしいと思ったか」に対し、「思った」3名「どちらでもない」3名であった。使い心地は「良かった」3名「どちらでもない」4名であった。「横から見えてしまうのが恥かしい」「手術後で自分の事で精一杯だった」などの意見があった。看護師からは「恥かしいと感じていると思う時はあるか」に対して、「ある」病棟看護師18名、手術室看護師6名の計24名であった。「陰部が露出した場面の遭遇」は「ある」病棟看護師15名、手術室看護師7名の計22名であった。「露出を少なくする気遣いが大切だ」という思いが聞かれた。
    <パンツの調査結果>患者は「パンツを使用して恥かしいと思ったか」は「思わない」6名であった。「下着っぽく見えてよかった」「年をとっても恥かしさは若い人と同じ」との意見があった。看護師では患者が恥かしいと感じていると思うことは「ない」病棟看護師20名、手術室看護師4名計24名であった。
    【考察】T字帯に対し、調査実施前は患者の多くが羞恥心を感じていると思ったが、予測に反しあまり抵抗がない事が判った。しかし、看護師の結果からは羞恥心への関心は高かった。この差は、看護師は見たままの感想を率直な意見としており、患者側は手術後という特殊な状況のため、羞恥心よりも痛みに気をとられたためと考える。一方パンツは両者共に好評であり、恥かしさに対する度合いにも差はみられなかった。今回対象とした患者は、偶然にも全員がT字帯を使用したことがあったため、T字帯とパンツを比較した意見を聞くことができ、良い結果が得られたと考える。
    【まとめ】1)患者と看護師では、T字帯に関して羞恥心に差がある。2)パンツは、T字帯を使用経験者にとっては羞恥心の軽減につながる。3)T字帯を今回作成したパンツに変更する事は、看護師の視点からも羞恥心の軽減につながるが、体型によっては皮膚が露出してしまう事もあり改善の余地がある。術中・術後の患者において羞恥心の軽減は安心した療養に欠かせないことであり、今後もこのような取り組みを続けていけるよう努めたい。
  • 患者・家族・スタッフアンケートを通して
    大平 美香, 板井 きみ, 菊地 誠
    セッションID: 1J128
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー

    〈緒言〉
    入院患者は安静や治療のし易さを目的に、24時間寝衣のまま過ごすことを余儀なくされている。在宅療養へ向けた援助を必要としている当病棟においても、24時間寝衣を着用して過ごしている現状がある。日常生活を送るうえで着替える行為は重要であると考える。
    そこで、生活にメリハリをつけることを目的に日中は私服に着替え、更衣をすることがどのように患者様へ影響を及ぼすかを検証し、心理面・活動面の変化が明らかになったのでここに報告する。
    〈方法〉
    (研究方法)
    1.研究期間 平成19年7月~10月15日まで
    2. 対象 当病棟入院患者及びショートステイ利用者のうち日常生活自立度Bランク以上の13名のうち同意を得られた者8名
    3. 実施方法 
    1)対象者の更衣を実施し、その様子を日々の記録に残す。
    2)実施後、患者及び家族にアンケートを実施(アンケート回収率100%)
    3)スタッフ全員にもアンケート調査を実施(アンケート回収率100%)
    4. 分析方法
     1)独自のスケールを作成し、日々の記録を得点化し変化をみる。
    2)患者と家族アンケートの結果より、行動及び心理的変化を分析する。
    3)スタッフアンケートの結果を分析する。
    〈結果〉
    表情・言葉の表現・昼夜逆転の有無・更衣の認識・協力動作及び自発的行動の5項目について、全ての患者様において合計点の向上が見られた。患者アンケートの結果、実際に更衣を行い「うれしかった」「動きやすいと思った」と更衣をしたことでプラスの感情を持った。また自分自身の変化について、変化を感じた患者様は77%を示した。今後の『更衣の継続』については「続けたい」と「続けても良い」を含め75%の患者様が希望され、25%は「どちらでも良い」との回答であった。
    家族アンケートの結果、「わずかだが変化はあった」を含め62%の家族が変化を感じ、「生活にメリハリがついた」との意見が多かった。
    〈考察〉
    規則的な活動や休息を自力ではうまくできない高齢者に対しては、周囲がそれを支援する必要がある。今回、老年期の患者様のQOLを守るために、患者様・家族・スタッフの三者が一体となって相互に働きかける事が重要であると再認識した。「更衣動作は全身運動である。身体各部を動かし,脳を活性化させ,筋肉活動・精神活動を活発にする効果がある。」と言われるように、更衣は作業療法のうちのひとつであり、日常生活の中でのリハビリテーションとして今後も更衣の継続を行い、患者様のより良いQOLを目指して取り組む必要がある。
    〈結論〉
    1・独自スケールにおいて患者様全員に得点の向上が見られ、患者アンケートでは患者様自らが自分の変化に気付き、家族アンケートからも患者様に変化があったと感じた
    2・患者様・家族・スタッフの三者が一体となることが患者様のQOLをより向上させる事につながる
  • 関 知子, 平山 薫 , 小野 尚美
    セッションID: 1J129
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉
     土浦協同病院看護部健康管理委員会では、慢性疾患や手術後患者が抱いている様々な不安や戸惑いを自由に出し合い、それを共に話し解決出来るような場を提供することを目標に8つの健康教室を設けている。その中のひとつに、乳がん患者を対象に開催している「マンマ教室」がある。その実際を振り返るとともに今後の展望を報告する。
    〈平成19年度の活動報告〉
     土浦協同病院看護部健康管理委員会に属するメンバー6名(乳がん看護認定看護師1名、皮膚・排泄ケア認定看護師2名、一般外科病棟看護師1名、がんセンター病棟看護師2名)が「マンマ教室」を担当した。月に1回(30分)の会議でメンバーが集合し「マンマ教室」の内容や方法を計画した。
     患者や家族から乳がんに関する情報のニーズが高まり「マンマ教室」の開催回数を増やしてほしいと望む意見があった。それに対して平成19年度より「マンマ教室」の開催回数を1回から3回に増やした。開催日時は平日の午後1時又は1時半から3時とした。
     内容は1回目が「日常生活の過ごし方」、2回目が「リンパ浮腫について」、3回目が「リラクゼーション&座談会」であった。乳がん看護認定看護師が中心となりテーマに沿った講義を行い、加えて質疑・応答、患者会のお知らせの時間を設けた。2回目の「マンマ教室」では乳癌認定医の参加を得て「乳がんと治療」というテーマで、最新の乳がんの考え方と治療法などの講義を行った。3回目には、治療中の患者(ヨガインストラクター)の協力を得て「呼吸法」を参加者全員で体験した。その他、新しい商品の展示や紹介をするなどの工夫をしている。
     広報手段は、外来受診時に直接口頭で伝えるほか、ポスターの掲示と配布、開催1週間前から院内TVテロップを活用した。また当院の乳がん患者で構成する患者会「たんぽぽ会」のメンバーの協力によりポスターの配布と電話連絡を行った。
     参加人数は1回目が21名、2回目が35名、3回目が23名であった。参加者のほとんどが、当院で手術を受けた患者であったが、他病院で手術を受けた患者や他県で治療通院している患者の参加も徐々に増えている。「普段なかなか聞けないことを聞くことができてよかった」「術後4年経つのでもう参加しなくてもよいかと思ったが、新しい発見があったので今後も参加したい」「自分が通っている病院ではこのような教室がないため羨ましい」などの感想が聞かれた。
    〈考察〉
     乳がんを体験した患者は常に再発や転移の不安を抱いていると考える。「マンマ教室」を定期的に行うことは、患者への情報発信となり不安の軽減に繋がると考えられる。乳がん患者にとって「マンマ教室」が、日常生活を安心して送るための知識の確認や新しい発見のある場となるように、内容や開催形式を工夫していくことが必要である。また、乳がん患者が「マンマ教室」に参加することで、同じ体験をした仲間と繋がり、不安や悩みを表出しあうことで、お互いの支えになれるように支援を続けていくことが大切である。
     平成20年度は「ダイエットについてー乳がん患者にどうしてダイエットが必要なの?-」「乳がん&ボディイメージについて」「リンパ浮腫について」の内容で3回の開催を予定している。
  • ~2%ホウ酸水コットンを使用して~
    小森 佑美, 笹井 由利子, 須原 伸子
    セッションID: 1J130
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    現在、当院では、顔の清拭を朝と夕方に蒸しタオルにて行っているが、眼脂が残っていることがあり、眼の清拭が不十分だった。布団を掛け臥床している患者にとって、顔は第一印象となる。しかし、長期臥床患者は自己にてケアすることができず、眼脂の多い患者は、点眼薬を使用し続け悪循環となる。また、点眼薬に関する研究は数多くされているが、眼清拭に関する研究はほとんど見あたらず、関心の低さが伺えた。そこで、2%ホウ酸水コットンにて眼清拭を取り入れた結果、洗浄や点眼を使用しなくても眼脂が減少し、効果が得られたので、ここに報告する。
    【研究方法】
    1.研究期間:2007年7月~9月 2.研究対象:当院長期療養型病棟入院中65歳以上の寝たきり患者 3.方法:_丸1_2%ホウ酸水コットンを作り、朝・昼・夕方に眼清拭をする。_丸2_点眼薬使用者は、医師の許可を得て、ケア期間中点眼薬の使用を中止し、すべての患者を同じ条件にて行う。_丸3_手洗い後、又は手袋を使用し眼脂の少ない側から拭く。拭く時は、まず初めに目頭部分の眼脂を拭き取り、コットンの面を変えて目頭から目尻にむかって拭く。 評価方法:スケール表を個別に作成し、両眼計30点で1週間ごとに3回評価する。
    【研究結果および考察】
    眼脂は、眼清拭実施前も眼清拭実施後も朝に多くみられた。また、眼脂は目頭側に一番多くみられ、続いて目尻側に多くみられた。点眼薬未使用者だけでなく眼清拭実施前点眼者(以後点眼者とする)も、眼清拭実施後どの時間帯にも眼脂の量は減少した。分析の結果、有意差があり(p<0.00)眼清拭が効果的だったと言える。また、点眼者に対しても有意差があり(p<0.05)、眼清拭は効果的だったと言える。そのため、現在も点眼薬を使用せず経過している。しかし、眼清拭実施後、眼脂の量はある一定量まで減少したが、分析の結果、有意差はなく眼脂量が減少しつづけているとは言えなかった。眼脂は夜間閉眼していることや、ケアをしない時間が長いことで朝に多くみられたと考えられる。そのため、夜間のケアを導入すれば、もっと眼脂の減少につながると思われるが、患者の睡眠を配慮すれば、必須とは言えない。評価方法に関しても、個別のスケール表を使用したが、有る無は分かっても、量的な評価に関しては難しさを感じた。眼脂が目頭側に多く見られたのは、目頭には鼻涙管があることが考えられ、一般的な拭き方では、眼脂を広げることになる。そこで、初めに目頭側の眼脂を拭き取ってから、コットンの面を変え目頭から目尻に向かって拭くことが眼脂の減少につながったのではないかと考えられる。また、結果から目尻側を最後にもう一度拭き取る清拭方法を見直すことが、より効果的だったと考えられる。
    【結論】
    高齢で長期臥床患者の眼脂は、2%ホウ酸水コットンにて眼清拭をすることで減少した。しかし、消失することはなかった。
  • 北原 美竹, 半谷 亜希子
    セッションID: 1J131
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    入院加療のため転院の必要な患児と家族への外来での関わりの検討 JA福島厚生連 双葉厚生病院 小児科外来  ○北原 美竹 半谷 亜希子 【はじめに】 当院の小児科は、平成18年4月より常勤から非常勤体制となり当院への小児科入院は出来なくなった。郡内の患児と家族は入院が必要と判断されると車で30分から1時間程度かかる2病院のどちらかに転院しなければならない。 当院では、入院のため転院をする患児と家族にパンフレットを用いたオリエンテーションを実施しているが、家族の思いに十分対応が出来ていないのではないかと感じた。患児の家族がこのような現状にどのような思いを抱き医療・医療者に何を期待しているのかを把握し今後の看護師の役割を明確にしようと考えた。 【方法】 平成19年7月から12月の期間内に同意を得られた家族へ研究者が独自に作成した質問紙による無記名のアンケート調査を行った。質問紙は退院後郵送し、自己投函とした。質問内容は対象者の背景、入院、転院についての思い、入院時のオリエンテーションなど26項目とし、各項目ごとに集計し分析した。 【結果】 転院患児は0から3歳児が多く、転院経験者は少なかった。核家族や両親の共働き、同胞のいる家族が多かったが、入院の協力はほとんどのケースで得られていた。転院については移動距離が長く、負担に感じているが、入院・転院については理解を示している。また、移動中の患児の状態を気にしていた。看護者のオリエンテーションや説明には理解を示していたが、情報や説明に不足を感じていた。 家族らはより近い生活圏内での入院や救急診療が可能になることを強く望んでいた。 【考察】 初めての転院による入院という状況の中でわからないことによってひき起こされる不安や先行きに対する不安は大きいと考える。さらに、看護師側の情報のあいまいさや、転院先の病院についての把握が不十分であったために家族へ十分な情報提供が行えておらず、転院・入院に対する不安の軽減へ結びつくかかわりが行えていなかった。今後、入院可能な施設との定期的な情報交換や、情報の共有を行うことでより具体的な情報提供や、正確に伝えるということが不安の軽減につながるものと考える。 現在の医療情勢の中で郡内での入院加療の実現は困難な状況であり、転院が必要となる現状が続くものと思われる。看護者は家族らの訴えに傾聴し、受容的な態度で接するとともに外来という限られた時間の中で効果的な関わりを行い、患児と家族が安心して治療を継続できるよう支援する必要があると考える。  
  • 山本 悟, 高橋 治海, 竹内 賢, 石原 和浩, 西尾 公利, 森川 あけみ, 堀 明洋, 平石 孝, 齋藤 公志郎
    セッションID: 1J132
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    近年乳がんの増加は著しく、現在年に約40,000人が罹患し10,000人以上が死亡する状況にある。
  • -病院と診療所の機能分担と連携-
    井坂 茂夫, 湯浅 譲治, 大貫 新太郎, 志潟 紀子, 内田 栄美, 吉村 南
    セッションID: 1J133
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉本邦における医療の質の向上と効率化の両面を実現するために、病院と診療所の機能分化と連携は必須の課題である。病院が入院機能を特徴として重症と救急の患者に特化し、診療所は軽症と慢性期患者を主たる対象とするのが基本戦略である。われわれの施設では地域の泌尿器科開業医が少ないため、前立腺肥大症や過活動膀胱で当院を初診し、治療により安定しても長期に外来通院することが常態となっていた。慢性期外来患者の増加により新患、救急患者をじっくり診察する余裕が失われてきたことが実感されたので、これらの患者を地域開業医に紹介することとし、泌尿器科と医療相談課が協力して逆紹介を実現したので、その過程と成果を報告する。
    〈対象と方法〉対象患者は前立腺肥大症または過活動膀胱で薬物治療により症状の安定した患者。逆紹介の準備として平成19年10月地域医療機関(内科、外科、泌尿器科開業医)へ以下の内容のアンケート調査を行った。_丸1_患者受け入れが可能かどうか。_丸2_処方可能な薬はどれか。_丸3_見込まれる通院頻度はどの程度か。返信結果に基づき対応可能医療機関の一覧表及びプロット地図を作製した。平成20年1月対象となる患者に、慢性期通院は他院を紹介する旨の通知を院内掲示し、個々の患者には担当医から直接事情説明を行った。了承の得られた患者から順次地元の医療機関を紹介した。紹介状には、病状の悪化があった場合救急を含め必ず対応する旨明記した。
    〈結果〉開業医アンケートは101件に発送し49件(48.5%)の回答を得た。内容は対応可能43件、現在は困難1件、今後とも不可能5件であった。対応可能な43件のうち処方内容に制約なしが25件(58.1%)であった。通院頻度はすべての施設で2週に一度または月1回との回答であった。逆紹介を納得し、施設を選び、場合によって薬を変更して効果を確認し、地元のかかりつけ医に紹介できたのは平成20年4月時点で28人であった。対象となる病状でありながら逆紹介が困難な事例の理由のほとんどは、院内他科受診の事情であった。内科その他の科が日頃からかかりつけであり、開業のかかりつけ医を持っていない患者にとって、逆紹介を受け入れてもらえなかった。逆紹介に要した担当医の労力としては、事情説明と紹介先探しに20分程度、紹介状作成に10分程度であり、1例30分程度の手間を要した。再来慢性期患者の減少により、新患患者を余裕を持って診察することができるようになってきた。
    〈考察〉地域医療連携の中で病院に通院する慢性期外来患者を診療所に紹介していくことは、病院勤務医の負担を軽減しやりがいを高めることの意義が大きい。診療所にとっては専門分野外でも受け入れることでかかりつけ医としての機能が向上し収益の増加につながる。病院好みの患者にとっては自由な選択を許されなくなる不利があるが、日頃から身近なかかりつけ医に些細なことでも相談でき、重要な問題が発生した場合は病院への優先的紹介が得られるという利点がある。逆紹介の過程で発生する一時的な医師の作業量の増加に対しては、コメデイカルの積極的な支援がこれを軽減できる。病院経営者は外来収入の減少を恐れることなく、本来機能の発揮と医師のやりがいの向上のために慢性期外来患者を診療所に移すべきと考えられた。
  • -転院調整における連携室の役割-
    山田 明美, 春原 秀利, 小出 理佐, 西澤 延宏, 夏川 周介
    セッションID: 1J134
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
    近年の医療崩壊の波は当病院の診療圏である東信地域も例外ではなく、医師不足から閉院の危機や、実際に病床を縮小せざるを得ない病院もあり大病院に患者が集中している。このような状況の下、転院に伴う地域連携を、3年前に立ち上げた東信地区看護連携協議会で統一した申し送り用紙や転院窓口などを活用し行ってきた。この看護連携により転院数は年々増加している。しかし、昨年末から病床稼動率が上昇、100%を越す日が続き物理的に入院ができない状況が発生した。この状況を汲み、東信地域の保健所が合同で東信地域救急医療情報交換会を開催する事態となった。転院に焦点を当てた地域医療連携の現状を報告する。
    <当院の現状>
    当院は1次から3次救急を担う。診療圏は長野県の約4分の1で、神奈川県全域と同じ面積の範囲を受け持っている。平成18年からDPCの導入を行い、平均在院日数の削減を図った。
    東信地域には、はっきりとした後方病院はなくそれぞれの病院が2次救急を 行っている。
    <転院調整の現状>
     このような環境の中当院で診療を行った患者の転機先を調整する時、在宅調整は遠方のため困難である。そこで一旦自宅近隣の医療機関に転院し、その病院で調整を行っていただくための転院を勧めている。
    <転院調整の対象>
     機能障害や廃用などでリハビリが必要、または在 宅への調整が必要な患者。
     ターミナル期にあり家族の通院が可能な医療機関への転院。
     血液疾患で、専門医はいないが定期的なフォローや輸血などが必要な患者。
     手術後の定期的な通院まで含めた転院。など
    <転院調整の方法>
     連携室では病床管理を行いながら、前方連携を行う一方、退院調整部門として退院調整、転院調整を行っている。転院調整としては、病棟から提出される退院調整プロフィールから転院候補者を抽出。転院の時期を医師と相談後、家族本人と面談し転院先医療機関に交渉し転院先を決める。この時、転院依頼の窓口は、東信地区看護連携協議会で作成した一覧表を活用する。申し送り状も統一されたものを転院より前に送り受け入れの準備をすることになっている。また、一昨年前から地域医療連携パスも導入し連携のツールとして活用している。
      <今後の課題>
    住民が安心して医療を受けられ、安心して暮らせるために地域の医療機関が連携を深めていく必要がある。今回の緊急事態に際し、保健所が合同で開催した東信地域緊急医療情報交換会は、その後東信地区連携実務者連絡会となり定例化された。この会議でお互いの病院の情報を知り、助け合える会議となっていくことを期待したい。
  • ~具体的行動計画の立案と定期的評価・面談による効果~
    小林 順子, 遠藤 友利栄, 成田 由美子
    セッションID: 1J135
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉個人の能力開発と専門職業人としての成長を図り、質の高い看護サービスを提供することを目的に卒後年次毎の研修を行っている。研修後の課題達成には現場での継続した支援が必要であると考え、数年前より具体的行動計画の立案と定期的評価・面談を取り入れた。改定を繰り返し、仕組みを確立したものの、これにより受講者が行動化できているかを明らかにしたいと考え、評価表をもとに調査・検討したので報告する。
    〈方法〉1.期間:2007年4月から12月。2.対象:3ヵ月後評価を終えた5研修の受講者。3.方法 1)本仕組み(1)研修受講2週間以内に研修3ヵ月後(研修14週後)の目標と具体策を立案。(2)研修6週後・10週後・14週後は具体策毎の自己及び支援者による他者評価を行った後、面談を行い、評価を最終決定。具体策の平均点を目標に対する評価とした。2)評価表は統一したものを使用し、評価は4段階に点数化(4:できる,3:半分できる,2:あまりできない,1:できない)した。
    4.分析方法:研修毎の6週・10週後間、10週・14週後間の平均値の差をt検定した。Excel統計ソフトを使用しP<0.05を有意差ありとした。5.倫理的配慮:評価表を研究データに使用すること、個人を特定できないよう処理しプライバシーを保護することを説明し同意を得た。
    〈結果〉1.受講者は88名で有効評価は82名。2.受講者が立案した具体策数と標準偏差(SD)は8.37(SD=5.44)。3.検定結果1)卒後1年目研修a:6週・10週後間はP=5.09E-07<0.05で有意差あり。10週・14週後間はP=6.54E-07<0.05で有意差あり。2)卒後1年目研修b:6週・10週後間はP=1.36E-8<0.05で有意差あり。10週・14週後間はP=9.48E―08<0.05で有意差あり。3)卒後5年目研修:6週・10週後間はP=0.0015<0.05で有意差あり。10週・14週後間はP=0.001<0.05で有意差あり。4)卒後5年目以降研修:研修6週・10週後間はP=0.3835>0.05で有意差なし。10週・14週後間はP=6.38E-05<0.05で有意差あり。5)准看護師研修:6週・10週後間はP=0.0027<0.05で有意差あり。10週・14週後間はP=0.0119<0.05で有意差あり。
    〈考察〉具体策数は平均8.37立案されており、研修後の具体的行動を明確にするといった目標志向に近づいているといえよう。森らは「やる気の持続期間は年齢による差はなく、どの年代もおおむね1ヵ月という実態が把握できた」1)と述べている。我々が設定した4週間毎という評価期間は、やる気の持続期間とも一致している。やる気の低下する前に評価を繰り返したことが動機付けの強化となり、6週・10週後間では5研修のうち4研修で、10週・14週後間では全ての研修で評価が有意に上昇しており、行動化に繋がったと考える。また、評価時の面談を取り入れることによって周囲が定期的に支援していくことを仕組みの一部としたが、1つの研修で6週・10週後間に有意な上昇がなく、受講者のやる気の継続が困難であったことが示唆された。日常の積極的な介入が必要と考える。
    〈結論〉研修後、研修3ヵ月後の目標と具体策を立案し、4週毎に自己・他者評価と面談を行う仕組みは、受講者の課題達成に向けた行動化におおむね効果があった。
    〈引用文献〉1)森則子ほか:看護職の院内研修に関する実態調査,第21回看護学会論文集(看護管理),P215~217,1990.
  • 相馬  真理, 片倉  幸子, 栗山  加津江
    セッションID: 1J136
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉当院では、平成18年から看護支援システム(以下システムという)の運用を開始した。当初は運用基準に沿って稼動することが精一杯で、本来のシステムとして看護実践が有効に実施できていない状態であった。看護部では、看護診断はNANDA(以下看護診断という)を導入しシステム稼動開始以前から看護診断の学習会を幾度か実施し、スムーズにシステムに移行できるよう準備を行った。また、病棟においてもスムーズにシステム運用ができるよう病棟内でも勉強会を実施した。しかし、実際の運用が開始すると、看護診断の立案に整合性がないことが判明した。そこで当病棟内で実施したシステム運用と患者主体の看護実践のための教育方法を報告する。
    〈方法〉まず、看護診断の立案率と看護診断ラベルの整合性について検索を行った。立案率については、1週間以上入院している患者について、看護診断が患者の状態にあった看護診断数を平均化した。また、疾患別・到達目標レベルも参考に評価した。看護診断の整合性については、看護診断ラベルを、脊椎疾患・THA・TKAまた、その他として大腿骨頚部骨折の4パターンに分類した。その結果を踏まえ患者主体の看護診断が立案されているかどうかについて検討し教育方針を計画した。
    〈結果〉看護診断の立案率は平均3.6診断であった。疾患別では、脊椎疾患では平均看護診断立案率は4.2看護診断レベルであった。THAでは、看護診断立案率は2.1であり、TKAでは、4.1であった。また、大腿骨頚部骨折においての立案率は3.7であった。
    看護診断の整合性についてのオーディットは師長が行った。オーディットの結果整合性を認められた看護診断名は43_パーセント_であり、エビデンスで証明できないものがほとんどであった。特に脊椎疾患においては、患者が「死にたい」「死にたいのに自分で死ぬこともできない」と訴えていることをSOAPしているにもかかわらず、心理的診断ラベルを立案していない患者が100_パーセント_であった。本来であれば霊的安寧促進準備状態の看護診断ラベルが立案されるべきである。また、THA・TKA術前患者のすべてに【不安】看護診断が92_パーセント_立案されていた。大腿部頚部骨折の患者には、96%で末梢性神経血管性機能障害リスク状態が立案されている。これについては、整合性にあった看護診断である。手術後の患者には前例に皮膚統合性障害が立案されている。転倒の危険性がある患者は不隠行動予測スクアで判断し、転倒リスク状態が該当する患者には前例看護診断が立案されていた。以上のことを踏まえ、教育計画を立案し実施した。まず、看護診断プロセスを2回実施し、POSも含めた看護実践論を3回実施した。その後入院患者で実際に症例検討と看護診断の妥当性と整合性について勉強会を5症例実施し、その後のペーパーペーシェントでは、100点中80点以上が88%になった。2年の教育と患者カンファレンスでの師長の助言で、患者主体の看護診断が徐々に理解されてきた。平成20年3月のオーディットでは、脊椎損傷の患者で「死にたい」と言語化された患者には、霊的安寧準備状態が立案された。また、家族への介入に必要な家族介護者役割緊張などの看護診断も立案されるようになった。
    <まとめ>勉強会が看護診断がなぜ必要なのか、看護診断と看護実践がリンクする必要性が根拠から成立される事が看護師に認知できてきた事が示唆された。
  • 志水 貴之, 見田 真紀, 諸戸 昭代, 古市 千奈里, 樋口 昌哉, 柴田 真紀子, 山森 章, 三島 信彦
    セッションID: 1J137
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉初期臨床研修において、超音波検査(以下エコー)は、研修医にとって習得したいスキルの1つである。近年、エコー技能習得希望の研修医が増加傾向にある。当院では研修医指導に臨床検査技術科が参画し、毎年度研修の方法を見直してきている。受講者のアンケート結果から、今後の方向性が見えてきたので報告する。 〈方法〉今までに実施してきた研修医エコ ー講習会記録を振り返ると共に、19年度受 講者14名にアンケートを実施し、講習会 に対しての評価もおこなった。 〈結果〉【講習開催記録】   16年度 17年度 18年度 19年度 受講者数 8名 24名 14名 14名 技師数 1名 1名 3名 4名 使用機器 2台 3台 3台 3台 開催時期 5月 1、2月 1、2月 1、2月 開催時間 4時間 4時間 4時間 4時間 テキスト なし 配布 配布 配布 事前学習 なし 各自 各自 3ヶ月 16年度は腹部エコー・心臓エコーを実施した。 機器の操作中心の講習であった。 17年度以降は腹部エコー・心臓エコー・頚動脈エコーを実施した。 機器操作、基本的エコー走査をおこなった。 17~18年度はインストラクターを固定し、受講者が各ブースに移動した。インストラクションは同じ臓器に関して実施した。 19年度はインストラクターも受講者とともに移動し、インストラクションは全ての臓器に関して実施した。 インストラクターは作成したコンセンサスにもとづきインストラクションのレベル統一をはかった。 講習の最後に実技の評価時間を設け、受講者へのフィードバックをおこなった。 【アンケート集計結果】 1)開催の時期はどうですか?    良い 6名  早い時期の開催が良い 8名  (6~8月 5名:12月 1名) 遅い時期が良い(2年目以降) 0名 2)講習会の時間はどうですか?    良い   13名    長すぎる  0名   短すぎる  1名  (どのくらいがよいですか?:5時間) 3)この講習が役に立つと思われますか?    腹部  はい 14名     心臓  はい 14名     頚動脈 はい 11名 わからない3名  〈考察及び今後の課題〉 1)1年次研修医が早期(5月~6月頃)から臨床の現場で、超音波検査ができるように研修カリキュラムへの組み込みをおこない、9月までに1回、翌年3月までに1回を開催目標とする。  2)2年次研修医による、1年次研修医への実技講習を開催する。 (1年次研修医をインストラクションすることを最終の講習目的とする) 3)事前準備によりインストラクターのスキルレベルを一定に保つ。   4)受講者の事前座学期間を短くする。   5)講習後に検査科で日常実践できるように人材、器材、時間の確保をしていく。
  • 柴田 純子, 津谷 浩子, 山城 洋子, 浪岡 佳奈子, 岩川 正子, 簾内 陽子, 久保 達彦
    セッションID: 1J138
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    I.はじめに
    昨年、全職員(臨時職員・委託業者を含む240名)に対し、救急担当医師によって一次救命処置(以下、BLS)の講習が開催され、積極的な学習の必要性を感じると同時に救急への意識が高まってきた。さらに、二次救命処置(以下、ACLS)の講習会が行われるなど救急対応が確実に行える事が求められてきた。今回、BLSからACLSと一貫した講習会を受けて看護師の意識の変化・知識の向上など講習会の効果にについて知り、継続的支援の方向性を見いだす事が出来たので報告する。
    II.研究方法
    1.研究対象:当院でBLS・ACLS講習会を1回受けた看護師121名(アシスタントは除く)
    2.研究期間:2007年4月~10月
    3.研究方法
    1)講習会受講した看護師121名に対し質問紙調査
      2)質問紙調査はAHA心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2005に準じBLSとACLSに関して各13項目とした
    4.データ分析 統計処理(エクセル)
       III.結果
     BLSについての質問紙調査結果、「急変時の意識・呼吸の確認ができると思う」「急変時の応援要請ができると思う」に対しては、「はい」と答えた人は100%という結果であった。「効果的な」心臓マッサージができると思う」に対しては、「はい」と答えた人は89%「AED取扱いができると思う」に対しては、「はい」と答えた人は72%であった。ACLSについての質問紙調査結果、「心電図が取れると思う」「薬剤投与が正確にできると思う」「フラットライン・プロトコル適応基準が理解できたと思う」の4項目は「はい」と答えた人は、平均57%と不安の残る結果がでた。
    IV.考察
     心肺蘇生はチーム医療で行われ看護師は役割を分担し、医師と共に救命行為を円滑に行う事が大切である。そのため、医師・看護師が統一されたプロトコルを理解しなければならない。看護師は急変の第一発見者となる機会が多くBLS習得は必然であると考えられる。調査結果よりBLSは、意識・知識を高める事が出来たと考えられるが、ACLSは4項目で出来ると答えた人は約50%であった事から、1回の講習会では習得は困難であったと考えられる。しかし、自分の弱点を明確にする事ができた良い機会であったと思われる。今後は各部署で実技訓練実施・講習会など、継続的に学習する事が重要である。河本らは「救急処置は反復訓練が重要であり、今後も患者急変時に自信を持って行動できるよう定期的に知識・技術の確認が行える場の支援が必要」と述べている。全体を通して講師・アシスタントの緊張させない和やかな雰囲気とわかりやすい指導が大きな成果を挙げたと考える。
    V.結論
    1.救急への意識が高まり院外の講習会参加が増えた
    2.各部署での実技訓練の実施が必要
    3.定期的な講習会の開催が必要
      
  • 村林 惠子, 森田 眞知子, 濵口 早弓, 阪倉 紀代美
    セッションID: 1J139
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】当院では毎年20数名の新卒看護師を採用している。新卒看護師の看護基礎教育は様々であり、看護技術の到達度に差異が大きい。また、リアリティショックに悩む者や配属部署によって生じる看護技術経験の差に悩む者などがおり、指導者は対応に苦慮していた。そこで、2004年より基本的な看護技術の習得を目的にローテーション研修を開始した。試行錯誤のうえ、今年度で5年目となったローテーション研修の実際とその成果を報告する。
    【新卒看護師ローテーション研修の実際】 1.目的・目標 基本的看護技術を実践の場で習得し、臨床実践看護能力の向上を図ることを目的とし、目標は、1.患者の安全・安楽を考え、基本的看護技術が実践できる。2.基礎教育における知識と技術の統合を図ることができる。3.必要な報告、連絡、相談ができるとした。 2.研修期間  4月採用オリエンテーション終了後6週間。9病棟を各3日間ローテーション。 3.研修内容   2~3人を1グループとし全病棟(9病棟)をローテーションする。  厚生労働省の「新人看護職員研修到達目標」を基に作成した新卒看護師基本的看護技術131項目をローテーション研修中に経験し、その習得状況を評価する。 4.指導方法  当院の看護手順に沿った指導マニュアルを作成。主任又は臨床指導者を指導者とし、指導方法の統一を図った。
    【新卒看護師ローテーション研修の成果】 1.基本的看護技術の習得  ローテーション研修終了後の自己評価での看護技術習得状況は、131項目中、研修前が34項目(26%)であったが、研修後には74項目(56%)であった。 2.新卒看護師の連帯感の向上  6週間同じメンバーで研修することで、学びを共有し、悩みを相談し合える関係が築け、連帯感が高まった。 3.教育に対する意識の変化  ローテーション研修を取り入れたことにより教育に対する意識の変化や各部署の教育内容が改善された。
    【考察】「臨床研修制度は、看護実践の経験を積んで優先順位や看護判断を経験学習することにより、臨床実践能力の向上に役立つ。」1)と言われているように、看護実践の場である病棟のローテーション研修は、幅広く看護技術を経験することができ、新人看護師の不安を軽減しリアリティショックの軽減につながったと考える。 また、看護技術到達度を個別に評価することで、基礎教育での差異を減少させることができた。  また、連帯感の強化により学習効果の向上や精神的な安定につながった。  ローテーション研修を取り入れたことは、自部署の教育内容や方法を客観的に評価する機会となった。看護職員の意識が新卒看護師を全員で育てていこうという意識に変化した。職員全員の理解と協力が得られたことがローテーション研修成功の一番の要因であると考える。
    【まとめ】新卒看護師ローテーション研修は、実践の場で看護技術を経験できることで、新人看護師の不安を軽減し、リアリティショックの軽減につながる。今後も研修内容や指導方法の検討を続け、より魅力的な研修としていきたい。
  • - 離職率ゼロを目指して -
    加藤 美樹, 鈴木 千加子, 大山 三雪
    セッションID: 1J140
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉
    医療を取り巻く環境が著しく変化する中、看護教育は1990年1997年の2度にわたり、看護基礎教育のカリキュラム改正が行われている。より専門性を追求、さらに新たな領域として在宅看護論、精神看護学が新設されている。これにより学ぶべき時間が増加、臨床実習時間が減少し、新卒看護師の臨床能力低下が問題になってきている。卒業直後の新人の技術力と臨床現場で期待される能力とのギャップが年々大きくなってきている。日本看護協会の調査では新人看護職員の一年以内の離職率が8,8%に達し、就業時点での看護実践能力の不足がその理由と指摘されている。ヒヤリハット事例での新人の占める割合も高くなっている。こうした現状から新人看護職員研修の充実を求める声が急速に高ってきている。当院においても臨床での教育に限界を感じていたため、平成16年から新人教育制度化を目指し教育体制を変更(以後足助病院方式とする)、4年経過している。
                     研修後のアンケート結果では研修制度として新人、スタッフに受け入れられ、よい評価を得ているので報告する。
    〈研修方法〉
    1、 期間:3ヶ月間
    2、 方法
    1) 教育担当
     専任新人担当マネージャー配置(院内・院外)
    新人教育担当(教育委員)
    2) 1ヶ月間集合研修(基礎看護技術)
    3) 2ヶ月間院内ローテーション研修
    (病棟・外来・在宅・地域)
    4)研修終了後 7月 配属
    (結果・考察)
     新人看護師一年以内の離職0%、3年以内の離職率0%と離職については効果があったと評価している。そればかりか3年経過して退職を申し出るスタッフにも変化が見られる。新人研修が終了し、配属になるまで退職を延期し時期をずらして新人研修に協力をするようになった。新人研修システムを構築するときの考え方「病院として、先輩として私たちには新人を育てる義務がある」ということを理解していると考える。研修に対する意識調査では、新人研修は今後も必要かとの問いかけには、76%のスタッフが必要と答えている。専任新人担当マネージャーについて、2年間は外部より採用、その後2年間は内部で担当したが60%以上が院内マネージャーでもよいと回答している。技術に不安のある新人にとっては安心して臨床に出ることが出来離職防止になっている実感している。せっかくのシステムだから大事にしたい。忙しいと新人に関わっていられないので現場にとっても良システムである。という意見がある反面、少数であるが早く配属してそこで覚えたほうがよいという意見もある。新人担当マネージャーについて、院内マネージャーは、臨床がよく分かるのでよいと答えている。外部採用のマネージャーのほうがゆとりを持って関われる。相談しやすいという意見もある。
    〈結論〉
    新人研修システムは技術に不安のある新入職員にとっては安心して臨床に出ることが出来るシステムといえる。今後看護の質確保のためにも新人看護師研修についてそれぞれの病院任せでなく、何らかの制度化する必要がある。
  • 評価表を使用して
    永澤 幸江, 森川 顕子, 小林 香, 奥山 加奈子, 諸星 浩美, 玉内 登志雄, 牧野 典子
    セッションID: 1J141
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    手術室新人看護師の器械出し修得に関する研究 ~評価表を使用して~ 永澤幸江1)(ながさわ さちえ)森川顕子1)小林香1)奥山加奈子1) 諸星浩美1) 玉内登志雄2) 牧野典子3) 静岡厚生病院手術室1)医局2)中部大学生命健康科学部保健看護学科3) キーワード 手術室・右半結腸切除術・評価表 〈緒言〉手術室新人看護師(プリセプティ)の器械出しの教育については、従来から指導担当看護師(プリセプター)が、難易度別に作成したプログラムに基づき対応してきたが、プリセプティとプリセプターとの間に、評価基準について認識の相違が生じるという問題が発生していた。そこで、新たに「右半結腸切除術器械出し」についての評価表を作成し、それの修得状況の評価を行った。その結果、プリセプティの修得状況及び評価表の課題が明らかになったので報告する。 〈方法〉1:従来の右半結腸切除術の手技書に基づき、器械出し看護師の評価表を作成した。大項目は、1)「消毒の介助」2)「被覆の介助」3)「皮切から開腹までの介助」4)「解剖の理解」5)「回腸切離、横行結腸切離の方法」6)「術野の清潔、不潔操作の理解」7)「回腸-横行結腸端々吻合の介助」8)「腹腔内洗浄の介助」9)「ドレーン挿入の介助」10)「閉腹の介助」11)「後片付け」の11項目を、到達目標として設定した。大項目に従って中項目を1~7設定し、中項目に従って必要な器械・機材や手順を小項目として作成し、到達基準として設定した。従って、チェック項目は、大項目11、中項目36、小項目114で合計161とした。2:評価の対象は、新人看護師A(手術室経験2年目)、新人看護師B(手術室経験1年目)とした。3:評価の時期は、手術前にプリセプターがプリセプティと面接し、口頭試問を行った。手術中は、プリセプターが器械出しプリセプティの評価を行った。手術後に面接を行い、プリセプティが自己評価を行った。4:評価基準は、小項目に対し、実施可能の可否とした。結果は大項目の中で実施可能であった小項目の割合(達成率)で示した。 〈結果〉A及びB看護師の大項目についての達成率は、以下の図1、図2に示す。 〈考察〉大項目1)~2)、8)、10)、11)は、A・B看護師共に1~3回までに、100%に到達している(。これらの大項目については、経験を重ねたり、練習を積むことにより、一定の知識と技術の修得が可能であることが明らかとなった。大項目4)、5)、7)は、該当手術で充分評価できなかったため、達成率が100%に至らなかった。到達目標(大項目)と到達基準(中・小項目)が、実際の手術に即しておらず、具体的に評価不可能な状況であり、段階的な達成率向上がみられなかったと考えられる。現状に即した適切な到達目標と到達基準の設定が必要であることが判明した。今後は、到達目標を細分化し、多岐に亘る業務内容に対応でき、達成率の段階的な推移を正確に検出可能な評価表の考案が必要と考えられた。
  • 正國 明美, 豊田 眞子, 森川 洋子, 高上 千鶴, 井場 ヒロ子
    セッションID: 1J142
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉看護に対する社会的な期待や要請は高まる一方で看護の現場においては新人看護師の離職や医療安全の面でも厳しい現状がある。さらに臨床と基礎教育のギャップが問題視され、卒後臨床研修制度の導入も検討課題となっている。このような状況をふまえ広島県厚生連4病院の看護職の質向上とキャリアアップのための継続教育の構築に向け平成18年より本所看護継続教育担当部長と教育担当看護副部長を中心に取り組み、今年度より4病院でキャリア開発ラダーを運用する運びとなった。その間の経過と当院の研修成果を報告する。
    (取り組みの経過)
    <キャリア開発ラダーについて>
    平成18年広島県厚生連本所に看護教育担当部長が配属され、県下4病院教育担当看護副部長との会議をスタートさせた。4病院各々で運用していたキャリア開発ラダーを持ち寄り、現状把握・分析・検討を重ねた。
    会の看護継続教育は、看護者に魅力ある研修を実施し4病院の看護の格差を是正し看護職員に等しくその能力を開発する機会を提供する。また看護者の確保定着を促進し看護サービスの質向上に伴い健全な病院経営に貢献できる人材を育成することを教育目標とした。
    1.看護継続教育の教育目標達成に向け、キャリア開発ラダーのレベルを7段階とマネジメントキャリアI・_II_で構成する
      (看護実務年数でレベルを決定)
    2.ラダー別に目標達成度表作成
    <達成基準>
      1)1項目につき評価点1については不可(継続して取り組む)
      2)総点数が項目数×3点=合計点以上
      3)必須項目は3点以上取得の義務付け
       3.特にレベル_I_の看護技術教育については主任全員が看護技術研修に参加し技 術の獲得をする。主任を中心に獲得した技術をプリセプター・アソシエート ナースに伝達し、新採用者の指導にあたる。
    4.4病院看護継続教育担当者はコア研修について内部講師として実務に当たる
    5.ラダー別コア研修について事前アンケートを基に研修内容を検討し講師選択
    看護技術研修について平成18年静脈注射の技術研修を始めに4病院の主任を対象として19年もフィジカルアセスメント研修を実施した。これらを各病院の新採用者研修に取り入れレベル_I_-1のコア研修として位置付けた。
    <当院での取り組みの成果>
    1.新採用者研修について
    入会前研修:静脈注射を中心に看護技術研修
    入会後研修:静脈注射等の技術研修の復習・フィジカルアセスメント
      いずれも主任と共にプリセプター・アソシエートナースが指導 にあたった。(配属予定のグループで実施)
    配属部署の看護師とのコミュニケーションも図ることができたこと、配属していきなり患者さんに実施するのではなく自ら実体験をしていることで「こころのゆとり」が得られ自信に繋がったと評価しておりリアリティショックの軽減が図られた。
    2.キャリア開発ラダーについて
    目標達成度表と共に全員に配布8月~9月評価予定
    (今後の課題)
    1.キャリア開発ラダーレベル別目標達成度表の使用評価と検討
    2.安全・頻度・未経験等優先順位の高い技術研修の実施
  • -ロールプレイングを用いた訓練から-
    小林 亜希子, 田口 聖子, 冨樫 涼子, 三浦 幸子
    セッションID: 1J143
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当呼吸器内科病棟の新人看護師は2ヶ月目より夜勤業務に入る。新人教育の中でBLSやAED講習が組み込まれているが、それだけでは病棟で実際の急変場面に対応できるとはいえない。そこで、夜間急変患者発見から医師が到着するまでの対応についてマニュアルを作成後、ロールプレイング訓練を実施した。そして、救命処置における新人看護師の役割行動と不安を明らかにし、サポートのあり方を検討した。
    <方法>期間:2007年6月~9月
     対象:新人看護師 3名、以下新人とする。
    《ロールプレイング訓練の実際》
    1.看護師Aが心肺停止患者を発見。
    2.状態観察後、応援要請し、用手的気道確保、吸引、心臓マッサージを開始する。
    3.連絡をうけた看護師Bは、看護師Cへ連絡、救急カートを運ぶ。
    4.看護師CはAEDを持っていく。
    5.病室到着後、発見者、リーダー、応援看護師の役割を決め、医師へ連絡など行う。
    新人は、デモンストレーション見学後に発見者、応援看護師、見学者に分かれ役割を交代しながら体験する。リーダー役は研究メンバーが行う。
    <評価・分析>習得レベルチェック用紙を独自で作成し、習得状況や役割行動を12項目について自己評価、他者評価した。救命処置場面における不安は、6項目について「ある」「なし」と、内容は自由記載とした。
    <結果>習得レベルの自己評価で、「できる」と回答した3人の平均は1回目が78%で、2回目は70%だった。他者評価は、1回目が66%で2回目が77%だった。項目別にみると「心電図モニター」が、自己評価、他者評価共に低く、その他「報告、連絡、相談」が自己評価のみ低かった。救命処置場面においては、訓練2回実施後も医師、同僚とのコミュニケーション、病棟環境、とほぼ全ての項目に不安があると回答していた。アンケートからは「医師とのコミュニケーションをとる機会が少なく、救急場面に限らず不安」「医師にどう伝えていいのか常に不安」「自己学習が足りない」「救急カートの中の物品把握がもっと必要だと思った」といった回答があった。
    <考察・結論>新人看護師の習得レベルが他者評価において2回の訓練で3名共に同レベルに達したのは、ロールプレイング訓練を繰り返し行ったことによる経験が影響していると推測できる。一方、自己評価においては評価が低下する傾向にあった。これは、訓練により物事の客観性が高まり、1回目の経験時には気付かなかった何を苦手とするのか、不足なのかといった自己への課題を明確にできたためと考える。自己評価、他者評価ともに習得レベルが低かった「心電図モニター」は、入職して以降改まった学習の場がなく、知識、経験不足が大きく影響している。そのため、日々の業務からモニター装着患者との関わりを多く持たせる体制づくりと、学習会参加などの機会の提供をしていく必要がある。また、不安に関しても個々の経験不足の影響が大きく、スタッフにも新人の能力や背景を把握し、落ち着いて対応できるような関わりが必要となる。そのためには、スタッフにも新人と同様、病棟内急変時マニュアルに沿った行動と、各スタッフが新人の持つ不安を考慮したリーダーシップを発揮できることが今後の課題といえる。    
  • 田内川 明美, 草間 由香理, 林田 彩子, 工藤 香, 倉益 直子
    セッションID: 1J144
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    「新卒看護職員の早期離職等実態調査」の結果で「看護基礎教育終了時点の能力と看護現場で求める能力のギャップ」が挙げられており、新卒看護師が現場で看護技術を実践するときに不安や戸惑いがあると考えられる。そこで、現場で実施する時の不安の軽減と現場で求められる技術習得を目的として、集合教育で技術演習を行った。結果、殆どの新卒看護師に技術演習の効果があったので報告する。
    【方法】 
    1、対象   新人看護師28名(新卒者) 
    2、評価時期 2007年6月
    3、技術演習の実際
    (1) 注射・点滴・採血・血糖チェック・インシュリン注射の演習を安全管理マニュアルに従い実施した。
    (2) 清潔、衣生活援助技術・排泄援助技術
      (体位交換・寝衣交換・移乗・排泄介助)
       例)尿道カテーテル留置し右手に点滴をしている患者の寝衣交換し車椅子に乗せる
    (3) 清潔操作技術(創部消毒、ガーゼ交換時の介助、滅菌物の取り扱い)の演習。
    (4) (1)・(2)・(3)の演習を新人看護師に行い技術演習の効果をアンケート調査により評価した。
    【結果】アンケート調査の回収率は93%。
    1、「病棟で、はじめて看護技術を実施するときに不安なくできたか」については、(1)、(2)の演習は、新卒看護師の70%以上が不安なく出来たと答えた。また、インシュリン注射と差込便器使用の技術は7%が「少し不安」と答え、2人が実施していなかった。(3)の演習は、新卒看護師の82%が不安なく、全員が実施していた。
    2、「3ヶ月経って1人で、できるようになったか」については、(1)、(2)の演習は新卒看護師の90%前後、(3)の演習は新卒看護師の76%が「大体1人でできる~1人でできる」と答えた。また(1)、(2)の演習は新卒看護師の10%前後、(3)の演習は新卒看護師の18%が「援助があればできる」と答え、「援助があっても、あまりできない」と(3)の演習では1人が答えていた。
    【考察】 
    1、技術演習は、看護技術の再確認ができ、不安なく実施できたと考えられる。
    2、技術演習の注射、・点滴などは安全管理マニュアルに従い実施したことで、現場に沿った実践方法を学び安全に実践する重要性を学ぶことができたと考える。
    3、基本的な日常生活の援助は、病棟の実践に役だち、効果的であったと考えられる。
    【まとめ】
    1、 集合教育に技術演習を取り入れたことは新卒看護師の不安の軽減に繋がった。
    2、 現場で実践する看護技術の演習は、病棟での技術実践に役立った。 
    引用文献
    1)社団法人日本看護協会:2004年「新卒看護職員の早期離職等の実態調査
    参考文献
    日本看護教育学学会 第17回学術集会(VOL 16、NO2、2007)
     ・三浦弘恵 教育ニード,学習ニードを反映した院内教育の展開
     ・能登紀子他 新人看護師のリアリティショックプリセプターとしてどの様に支援していくか
  • 酒井 義法, 藤原 秀臣, 江幡 恵子, 藤沢 忠光, 船越 尚哉, 田中 茂光, 田綿 利和, 粂井 一幸, 檜山 悟史
    セッションID: 1J146
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    稼働開始後の病院情報システムは病院業務のいわばライフラインである。システム障害による突然の停止は診療を停滞させ病院業務に多大な損害を与える。また情報量が増加してくるとシステムパフォーマンスが低下するため定期的なデータベース再編成が必要となる。定期的なデータベース再編を行う場合にも計画的とはいえ数時間にわたるシステムの停止が必要となり診療業務に影響を与えてしまう。
    耐障害性の向上と計画的システム停止を最小限にするため当院では平成20年2月17日診療系基幹サーバーを更新した。従来DS6100(IBM社製)の1台構成であったサーバーを、現時点で最速のDS8100(IBM社製)の2台構成とし完全に二重化した。それぞれのマシンは三重化されたハードディスク群を内蔵しており優れた耐障害性を有していると考えられるが、さらに障害性を高めるため診療情報はメインシステムに入力されるのと同時にサブシステムにも記録される。万一メインシステムが停止しても瞬時にサブシステムに切り替わる仕様とした。またCPUの高速化とスペックアップおよびメモリの増設によりマシンスペックがアップしており、ディスクへのアクセススピードが大幅に向上した。これにより従来読み込みに時間を要したテーブルやフローシートが短時間で展開できるようになった。バックグランドで使用するOffice系ソフトも高速化した。また新サーバーではデータの入力と同時にテーブルを自動的に再編するため計画的システムの停止が原則的として必要なくなった。
     当院では病院情報システムの稼動開始から6年になるが伝票運用に携わったことのない職員も増加しておりシステム停止は診療業務に多大な影響を与え、停止が長時間に及ぶと病院機能の麻痺にもつながりかねない。またシステム再稼動後にも診療データや会計情報の修復、移行など時間と労力を要する作業が発生してしまう。サーバーの内蔵するハードディスク群は三重化されており同時に二系統のハードディスクに障害が発生しない限りサーバーは停止しないため、サーバー停止は極めてまれにしか生じないとされる。しかしながら当院では過去5年間に、ディスク間の通信ケーブルの障害、ディスク装置のファームウェア障害、落雷に伴う過電流による電源装置の障害など想定外の原因によるサーバー停止を経験している。そこで今回は耐障害性を最大限に高めるためサーバーを完全二重化することにした。さらにサーバー室専用の自家発電装置も設置した。メインシステムが停止してもバックアップシステムが瞬時に稼動することもコンピューター上のシュミレーションではなく、実際にシステムを停止させ動作確認を行った。今まで数ヶ月に1度休日の深夜帯に行っていた数時間におよぶデータベース再編のためのシステム停止は必要なくなった。
       サーバーの性能が大幅にアップしたことにより電子カルテ画面の表示が高速化した。従来表示するのに数十秒かかっていた手術予定患者一覧も1、2秒で表示可能となった。表示するのに時間がかかるため使用されなかった過去の診療費表示、過去の受付患者検索などもりようしやすくなった。看護師用のノートパソコンは無線LANでサーバーと接続しているため患者ケアフローの展開に時間を要していたがこれもストレスなく展開可能となった。
    新サーバーへの移行により情報システムの安定稼動が約束され、さらに診療効率のアップが期待される。
  • 開設時・6ヵ月後・10ヵ月後のアンケート調査より
    相澤 宏実, 鈴木 三栄子, 矢吹 詔子, 川畑 勉代, 柴田 教子
    セッションID: 1J147
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    (はじめに)
    当病棟は消化器、乳腺外科病棟であり外科的手術及びその術前術後管理を始めとして化学療法、終末期ケアと多岐にわたっている。2007年4月より呼吸器外科が開設され5月よりクリニカルパス(以下パスとす)を使用した。開設時、看護師の呼吸器外科経験の該当者はなく、戸惑いや不安があった。パスを使用する事でケアの標準化を図る事ができパスの効果と今後の課題が明らかになったので報告する。
    (方法)
    呼吸器外科開設時、6か月後、10ヵ月後の3回、看護師の不安に関するアンケート調査
    (研究期間)
    2007年4月から2008年2月
    (調査対象)
    病棟看護師22名
    (結果)
     アンケート回収率100%。開設時の調査では「新科開設に不安はある」19名。不安の内容として「新科開設への漠然としたもの」「疾患について」「病棟が多忙であること」「準備不足であること」であった。「観察項目がわからない」15名。「入院から退院までの経過がわからない」20名。開設6か月後は「不安はある」3名。 内容として「看護師経験が少ない」「症例数が少ない」であった。「観察項目がわからない」0名。「入院から退院までの経過がわからない」1名であった。10か月後は「不安はある」11名と経験年数を問わず、半年後と比較して増加しており、内容として「異常時に遭遇していない」「異常時の対応」「退院後の生活について」であった。その他の項目に対しては半年後と変化のない回答であり、パスに沿って観察ができる事で統一された。開設以降、術前・術後の経過、ドレーン管理についての勉強会を2回開催している。今後の勉強会で希望する事として、異常時の対応について、退院後の日常生活について記載があった。
    (考察)
     新科開設に対し大半のスタッフは不安を感じていた。病棟勉強会が2回での稼動となった事、消化器外科で術前・術後のケアやドレーン管理などの経験はしているが、呼吸器外科経験者がいなかった事が不安の一因と考える。それは新しい事への取り組みの際に発生する不安と思われた。開設当初からのパス使用で経過や観察項目が明確となり、ケアの標準化に繋がった。しかし、症例数が増すと共に不安は軽減されると予測したが、不安は増強した。パスは経験を問わず継続看護ができると考えられているが、新科開設による予測できない事への不安はパスだけでは補えない事がわかった。パスの項目に沿って観察は統一されるが、その情報を判断するには経験と知識が影響しアセスメント能力に差が出る事から不安の程度に経験年数で差が出ると考えていた。しかし、通常の経過を辿らない場合や異常時の対応についての不安は経験を問わず生じている事がわかった。これらの事より看護基準・手順の作成、継続的な勉強会や症例検討で他者の経験を共有する事で不安の軽減に繋がると考える。今後は個々にあった退院指導に向けて患者への調査を実施しパスや看護の効果を評価する必要がある。
    (まとめ)
    1. パスを導入する事でケアの標準化に繋がった。
    2.今後の課題として、症例検討・勉強会の実施、患者への調査を行い、パス・看護に対する評価、退院指導などの検討が必要。
  •   ~周手術期に参画型看護計画を取り入れた効果~
    牧野 美幸, 鎌田 理恵子, 安居 宣子, 今別府 瑞恵, 雁部 浩子
    セッションID: 1J148
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉
       近年,□患者が主体的に医療へ参加する傾向におかれているなかで,当病棟の周手術期の患者からは,「まな板の鯉ですから」「すべてお任せします」という声がよく聞かれている。手術後の展開の早さに。看護計画が後追いになっている現状に加えて,ほとんど術後の標準的な計画にとどまり患者家族の意向が反映されたものではなかった。担当看護師が半構成面接を行い,患者,家族が不安と思っていることを
    もとに看護計画を立案し具体策,援助内容を一緒に決定した。計画は患者,家族と追加,修正,評価を行い,看護計画共有用紙には自由欄を設け随時患者が感じたことを記入してもらうようにした。看護展開の早い周手術期に参画型看護計画を取り入れた結果,患者・家族が疾病と向き合い,主体的に治療に参加することができたのでその経過を報告する。

    〈事例紹介〉
     A氏80代前半男性,直腸癌,多発性肝転移があり,2007年11月に低位前方切除術が行わた。家族背景は妻と2人暮らし。長男家族は横浜,長女家族は札幌に在住。術後より長女・孫は倶知安に滞在する。

    〈結果〉
     初回面談時「不安だらけ」,医療者に「お任せする」という言葉が聞かれ,肺合併症と痛みへの不安が強かった。そのため,呼吸訓練・咳嗽法訓練,離床訓練を優先的に目標立案した。A氏から練習時に「モヤモヤと悩んでいたことを忘れそう。心構えができる」と前向きな言動が聞かれるようになった。評価面談時「手術の準備をすることで悩むことがなくなった。」という言葉が聞かれ目標達成された。術後1日目手術侵襲により歩行困難がみられ「ダメだ。歩けなさそう。今日は動けない」と離床への意欲は減退した。『術後3日目に病棟内歩行する』という目標達成は困難なため,『術後6日目には病棟内歩行する』と目標を変更した。目標・具体策変更後,「洗面所で髭剃りしたい」という行動拡大への希望を取り入れ具体策に追加した。術後3日目に車椅子に乗り食堂で過ごし,術後4日目には孫に促され病棟内を散歩した。面談時に「うれしい。午前中は病棟を散歩。午後は孫と一緒に売店に行く」と運動量を増やすことについて積極的に話されるようになった。これらのことより,術後合併症を起こすことなく経過され,目標達成された。

    〈考察〉
     患者と看護師が目標共有をすることで,患者も自分の立てた目標に動機づけられて行動ができ,さらに看護師も目標を達成するためにすぐに計画を追加・修正していく意識が働いたと考える。以上のことから面談を通して,目標共有することは,患者・家族が主体的に医療に参加する行動を導き出すのに,有効であると考える。患者・家族がそれぞれ自分の生活に受け入れやすいよう計画内容について話し合い,一緒に立案・評価していく過程は個別性のある看護計画立案に結びついたと考える。看護展開の早い周手術期に,看護師・患者・家族がそれぞれの役割を意識することは,互いに必要な情報を共有でき異常の早期発見・早期治療につながる。また状態変化時,迅速に対応ができ目標変更・計画を修正していくことで,術後経過が順調に回復に向かうことにつながったと考える。
  • 貞方 隆史, 川澄 明子, 河合 智康, 川本 珠美
    セッションID: 1J149
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当院手術室では、各出版会社からの手術室看護手順書などを参考に各科の手術手順書を作成している。近年手術技法の著しい進歩により、同じ予定術式であっても執刀医により手術手順、使用する鋼製小物や医療材料に違いがあるため手術手順書への追加記載が必要となる。しかし、スタッフ各個人のメモへの追記に止まりがちで、共有の手術手順書の活用は充分とは言えない現状である。そこで術後、器械出し看護師と外回り看護師によるシートに沿ったショートカンファレンスのデータ、スタッフに対する意識調査より、手術手順書の効果を明らかにしようと考えた。 〈方法〉シート記載:平成19年6月~9月、腰椎麻酔・全身麻酔の手術260件を対象に担当した看護師がシートに沿って話し合い記載したものを項目毎に結果を単純集計した。それらから、手術に入る看護師すべてのメンバーが手術手順書を活用した群を1群とし、以下メンバー3人のうち2人の活用を2群、メンバー2人のうち1人の活用を3群、メンバー3人のうち1人の活用を4群、メンバー全員が活用しないを5群とした。手順書活用群別に、『医師から助言・指導を受けた』『手術室外に鋼製小物などを取りに出た』の有無。さらに予定通りの手術・途中術式変更の違い、予定手術・緊急手術の条件の違いによる差を解析した。アンケートによる意識調査:平成19年5月と10月に器械出し看護師担当時・外回り看護師担当時に『手順書の活用』は出来ているか、『医師からの伝達の共有』は出来ているかをそれぞれ5段階のスケール選択方法により意識調査を行い比較した。さらに、10月に自由記載法による意識調査を行った。 <結果>1)手順書活用群別に、『医師から助言・指導を受けた』は、1群32%、2群36%、3群35%、4群24%、5群18%であった。『手術室外に鋼製小物などを取りに出た』では、1群68%、2群52%、3群71%、4群60%、5群66%であり、それぞれに明らかな差はなかった。さらに、予定通りの手術と途中術式変更の違い。予定手術と緊急手術の条件の違いでも、『医師から助言・指導を受けた』『手術室外に鋼製小物などを取りに出た』の有無にそれぞれ明らかな差はなかった。 2)手順書活用に関する意識の5月と10月の比較では、「器械出し担当時の手順書活用」の意識調査は、やや評価を下げてしまったものの「外回り担当時の手順書活用」「医師からの伝達は共有できている」の意識調査は評価を上げた。10月の自由記載による意識調査では、情報の共有ができる。手術に対し振り返りができる。手順書活用、追記の意識が高まった。などの記載が複数あった。
    〈考察〉手術室経験年数や個人の手術看護に対してのスキルの違いから手術手順書の活用方法が違ってくると推測される。手術後話し合うことは、手術を振り返りができ、医師からの伝達の共有ができるに繋がったと考えられる。また共有の手術手順書は最新の情報でなければならない。と言う意識が高くなったと考えられる。今回の研究で使用したシートの項目は手術治療の介助に関することが主であったため、今後はチーム自らの看護を振り返るきっかけにしていきたい。
    〈まとめ〉手術手順書を活用した場合と活用しない場合とでは、『医師から助言・指導を受けた』『手術室外に鋼製小物などを取りに出た』の有無のいずれにも関連性はない。
  • 取手協同病院・「診療の質」改善委員会のこれまでの活動についての報告
    嶋田 謙, 日野 太郎, 新谷 周三, 岡本 浩之, 谷畑 英一, 奥野 哲男, 梅木 英紀, 鈴木 奈都子, 江連 とし子, 倉益 直子
    セッションID: 1J150
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    「医療(診療)の質」を評価・改善する試みとしては、1980年代に確立されたEBM(evidence-based medicine)の方法論をベースとした、診療ガイドライン、クリティカルパスなどの手法がある。これらは、診療過程の標準化や最適化を評価・検討する、プロセスアプローチと言われる方法である。
    しかしながら、診療ガイドラインやクリティカルパスは、医療プロセスの標準化・最適化を図る上では、非常に有力な手法ではあるものの、必ずしも最良の結果(アウトカム)を保証するものではない、という構造上の限界が認識されるようになった。
    1990年代後半に入り、一定の臨床指標(クリニカル・インディケーター)を設け、これにより医療の結果を後ろ向きに評価・検証しようとする試みが始まった。これらは、アウトカムアプローチと言われ、近年、大病院・有名病院などを中心に、臨床指標を公表するところが増えている。また、DPCの広まりとともに、近い将来、臨床指標が、病院評価のstandardの一つになる可能性もある。
    こうした流れの中、当院では、2006年3月に、臨床指標を計測し事後的にそのデータを検証することで、「診療の質」を評価・向上させることを目的とした「診療の質改善委員会」が発足し、現在、活動中である。我々は、この「診療の質改善委員会」発足後の、これまでの活動内容、問題点などについて、報告する。
  • 土井 亜美, 塚本 純久, 岡本 伸江, 鈴木 靖子, 河合 初代, 川澄 知穂, 渡辺 純子, 藤城 宏昭, 高橋 朋子
    セッションID: 1J151
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに〉
    当院医事課としては査定・返戻件数減少は毎年の目標としてあげられている課題である。今後電子カルテへ移行していけばさらなる返戻件数の減少は不可避であると考えられる。さらに返戻内容の中でも老人保険等の負担割合間違いと言った保険関係の返戻は直接患者さまへ返金や追加請求をしなければならず迷惑をかけることにも繋がる。以上のことから返戻件数減少への取り組みを今回TQMの手法に添って進めた結果、成果が得られたのでここに報告する。
    〈方法〉
    現状把握として平成19年4月~8月までの当院返戻件数と返戻内容を調査した。返戻内容は「診療内容誤り」、「保険関係誤り」、「事務誤り」の3項目に大別され返戻件数は5ヶ月平均で66件であった。そのうち保険関係誤りは平均38件で返戻件数全体の58%を占めている現状であった。また診療内容、事務誤りの返戻への対応は病棟・外来医事職員とも月1回勉強会を開催している。 以上のことをふまえ、保険関係の返戻減少を中心に取り組み、全体として返戻件数を25%減少すると言う目標値をたて重要要因を4点にしぼった。_丸1_「保険登録のマニュアルが無い」_丸2_「保険制度の複雑化」_丸3_「事務職員のレベルが一定でない」_丸4_「患者さまの保険に対する理解が低い」についてそれぞれ対策を立案し実施した。_丸1_についてはまず自分達で保険登録間違いの多い例をわり出した。それらを中心として保険証・公費資格証のコピーをとり、その保険証ごとに登録の仕方を図示して新人職員が見ても分かりやすいマニュアルを作成し必要部署に配布した。_丸2_については月1回の事務会を利用して事前に保険登録に関する質問を事務職員から集め事務職員全員が正確に保険番号入力できるようにするためにそれらの質問に答えながらマニュアルの解説をして院内周知を行った。_丸3_については事務職員の新人教育体制を構築する_丸4_については保険に関する院内掲示板の設置を対策実施項目としてあげたが今回の活動では時間が無く今後実施していくこととした。
    〈結果〉
    _丸1_から_丸2_の取り組みが一通り終了した後、再度19年12月~20年1月の2ヶ月間の返戻件数と返戻内容を調査した。結果、返戻件数の平均は53件でそのうち保険関係誤りは平均28件で返戻件数全体の約53%であった。さらには病棟・外来医事職員とも月1回の医事勉強会が浸透してきたこともあり結果として返戻件数全体では約20%の減少となった。またマニュアルを基に勉強会をして院内周知したことで事務職員の保険登録に対する苦手意識の改善に繋がった。
    〈まとめ・考察〉
    今後は4月より75歳以上の高齢者においては新しく後期高齢者医療制度が新設されたのでマニュアルの中に早急に盛り込んでいき随時更新していかなければならないと考える。また、毎年中堅医事職員が責任者となり教育計画を策定し教育訓練を継続していくことで新人事務職員への教育体制の構築を目指して行きたいと考える。そして今回の取り組みを継続していき今後もさらなる返戻件数減少を目指していきたいと考えている。
  • 田實 直也, 山田 浩昭, 石川 一博, 伊藤 祐, 鈴木 和広, 近藤 国和
    セッションID: 1J152
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉当院の電子カルテシステムは、効率的で安全な医療提供を追求するために2002年に紙カルテから全面移行した。稼動後6年が経過したが、不慮のトラブルは極めて稀で、半年に1回の保守停止以外はほぼ不眠不休で機能してきた。しかし、今回は更新に伴う停止時間が約27時間と算出された。このような長期停止は当院にとって前代未聞の出来事であり、様々な対策が必要となった。ここでは、今回のような病院機能の停止状態に対し、どのような対策を行ったかを報告する。
    〈方法〉院内では長時間停止が判明して、即管理職を中心に対応策を検討した。当初は三次救急医療を担う病院としての対応を模索したが、システム停止により情報網が寸断された状態では、求められる医療の提供が出来ないのは確実であることや、1日の救急外来患者が350名を越すため、処理が追いつかず飽和状態になることが予想されるなどから、対策として、最低限の患者数へ絞り込みを行い、この急場を乗り切るという苦渋の決断を強いられた。このため受け入れ先の確保や住民周知という難題に直面した。特に、地域住民の周知については短期的ながら患者の受療行動を抑制することになり、市民と近隣病院へ強く協力を働きかける方法を検討した。以下が行った対策である。
    1_県に救急の受診制限が問題ないか確認
    2_他病院への協力を要請
    3_救急隊へ搬送停止協力の依頼
    4_市広報へ掲載依頼
    5_周辺医師会へ連絡
    6_自院のホームページへ掲載
    7_地域の回覧板に依頼
    8_院内掲示・配布
    院内の対応は、停止中の職員を通常より増員し、今回の停止にあわせて臨時運用マニュアルを作成し、職員周知会を開催した。また、不測の事態に備えて定期的に行われているダウン時シミュレーションも運用参考とした。
    〈結果〉当日に電話や窓口でお断りする患者もいたが、対策が功を奏し、停止中の救急外来受診者数は期間中143人(前々週同期間374人、システム停止時間中実患者24人)となり、一定の効果を得ることが出来た。期間中救急の現場に大きな混乱もなく、停止時間も予定より6時間短く終了し、無事乗り切ることが出来た。今回行った対策の結果については、概ね以下の通りである(番号は前述〈方法〉欄記載に対応する)。
    1_医療圏内で十分な協力体制を敷くことができれば問題ないとの回答であった。
    2_近隣病院長会議や救急医療ネットワーク会議にて全面的な協力が得られ、他院の一部では期間中に増員体制で臨む協力が得られた。
    3_他院が救急搬送を受け入れてくれたため、特に問題はなかった。
    4_医療圏内12市町の広報へ掲載を依頼したが、断られる市もあった。
    7_安城市内の回覧板にて回覧協力を得た。
    8_院内数箇所に看板、ポスターを設置し、救急外来では、全患者に1ヶ月間リーフレット配布を行った。
    〈まとめ〉今回の試みは、早期に電子カルテを導入した当院が、更新作業をどのように行い、どのような対応策を検討したかという点以外にも、近年救急外来のコンビニ化が叫ばれる中、短期的ながら受け入れ先を明確化して明示すれば、患者の受療行動はかなりの確立でコントロールできるという二つの結果を導き出すことになった。通常業務における電子カルテの有用性を改めて実感するとともに、病院も行政との連携体制を強化し、地域を巻き込んだ広報周知活動を行うことによって、在るべき医療提供体制の機能分担体制構築に望みを見出す結果となった。
  • 根本 茂子, 中西 京子
    セッションID: 1J153
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉
    近年医療における安全管理と質の保障が強く求められるようになり、安全かつ効率的にシステム化することが大切であると言われている。そこで、衛生材料の一つであるガーゼについて検討した。カスト使用時は、ガーゼが残ったまま中央材料室に返却され、再滅菌が必要になるなどの無駄を生じていた。単包化されたガーゼを使用することで無駄の削減に繋がると考え導入した結果、人材の有効活用などさまざまな経済的効果が得られたので報告する。
    〈目的〉
    ガーゼ単包化導入による経済的効果を明らかにする。
    〈方法〉
    1.A社とB社と院内単包化の質、使いやすさ、コストについて看護職員にアンケートを実施し比較する。
    2.メーカーの製品と院内単包化した場合のコストを比較する。
    3.1日平均使用枚数のカスト使用時と単包化のコスト比較。
    4.保管場所の有効活用を評価する。
    〈結果〉
    1.A社とB社の単包化ガーゼを、6日間使用後にアンケート調査を行った。質は両社とも問題なく、使いやすさと値段でA社の評価が高かった。
    2.A社製品は、4つ折ガーゼ5枚入り35円で、院内単包化は48.3円、8つ折ガーゼ2枚入り25円に対し33.9円、5枚入りは32円に対し48.1円、10枚入りは45円に対し75.1円だった。
    3.1日平均使用枚数は、402枚でカスト使用時は、ランニングコストを含め3037円だった。単包化では、3516円だった。しかし、カスト使用時は、滅菌有効期限切れで285枚が返却された。
    4.病棟で、カスト大2個、中4個を保管すると30cm×120cmのスペースが必要だったが単包化の場合30cm×40cmのスペースで整理できた
    〈考察〉
    各社の製品は共に、ガーゼの種類と枚数ごとにカラーリングはされていたが、A社の製品は、カラーリングが見やすく、使用したい枚数や種類が直ぐ取り出せ、効率的であること、また安価であることから経済性も高まったと考える。さらに院内で単包化時コスト比較の場合は、単価だけでなく、滅菌機の稼動や人件費、作業時間などランニングコストを考慮する必要がある。この点から考えると単価比較では高価であるが、メーカーの製品を使用した方が経済的であると考える。また滅菌有効期限がカストの場合は1週間と短いので使用せず返却されるガーゼがあるため不経済であると考える。単包化の場合は、使用目的に適した種類や枚数を選択できることにより無駄がなく経済的であると考える。
    単包化導入により、滅菌業務の省力化につながり、病棟器械・器具の回収などマンパワーの効率的活用が可能となり人件費コストの削減に繋がったと考える。保管管理は、カラーリングされていることから補充しやすく、適正な在庫管理ができるようになったこと、収納スペースが1/3にできたことでスペースの有効活用に繋がったと考えられる。
    〈まとめ〉
    ガーゼ単包化を導入したことにより、使用枚数が減りコスト削減ができること、滅菌業務の省力化とマンパワーの効率的活用により人件費削減にも繋がること、また適正な在庫管理と収納スペースの有効活用ができることなどの経済的効果があることが明らかになった。
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