日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
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一般講演
  • 中島 正俊, 長岡 学, 小俣 正, 上條 謙, 岡本 英明, 佐伯 光明
    セッションID: 2J254
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    〈緒言〉現在、肝臓造影MRI検査では、形態と血流を評価するガドリ二ウム製剤(Gd-DTPAなど)造影剤と、形態と機能を評価する超常磁性酸化鉄製剤(SPIO)造影剤が使用されている。2008年2月に発売となった肝特異性造影剤ガドキセト酸ナトリウム(以下、Gd-EOB-DTPA)は、血流と肝細胞機能の評価が可能となり、臨床でも使用可能となった。今回我々は、Gd-EOB-DTPAを使用した10症例の描出能を検討したので報告する。 〈対象と方法〉対象はGd-EOB-DTPAを使用した肝細胞癌4症例、肝血管腫2症例、転移性肝癌3症例、その他1症例の10症例とした。ダイナミックMRIとダイナミックCTで得られた画像を、放射線科医3名と診療放射線技師2名で描出能を比較検討した。使用装置はGE社製Signa Horizon LX1.5T MRI装置とGE社製LightSpeed ulrta16CT装置。根本杏林堂社製の自動注入装置を使用した。造影MRI検査では、造影剤投与前にT1強調画像とT2強調画像を撮像後に、Gd-EOB-DTPAを注入量0.1ml/kg、注入速度1ml/secで静注した。造影直後30・80・240秒後のダイナミック撮像を行い、注入後20~40分後に肝細胞造影相を撮像した。 造影CT検査では、単純撮影後に造影剤を4ml/secで急速静注し、動脈相・門脈相・平衡相のダイナミック撮影を行った。 〈結果〉Gd-EOB-DTPAを用いたダイナミックMRI画像とダイナミック CT画像を比較すると、血流評価において肝細胞癌の症例では、動脈相を見るとCT画像の方が描出が良かった。肝血管腫の症例では、MRI画像の造影後期での濃染が不十分であった。又、同じ症例でも造影剤の濃染にバラツキがある結果となった。肝細胞造影相では、どの症例においてもCT画像よりも描出能が良い結果となった。 〈考察〉今回の検討ではGd-EOB-DTPAを使用したダイナミック MRIでは、一部では造影剤の濃染が不十分である症例があったが、多くの症例では診断に有用であった。スライス厚等の撮像条件や撮像タイミングの検討が必要である。しかし、肝細胞造影相では病変の描出が非常に良いため、ダイナミックMRIで得られる情報がもう少し確立することができれば、肝腫瘍の診断能がさらに向上すると思われる。今後も肝臓検査において、ダイナミックCT検査と共に、Gd-EOB-DTPAを用いた造影MRI検査との併用が望まれる。これからも多くの症例を重ねていきGd-EOB-DTPAを用いた肝臓造影MRI検査の最適化が必要と思われた。
  • 塞栓術前後のCT during arterial portographyが、門脈血流のdynamicな変化を証明できた一例
    嶋田 謙, 天野 大介, 岡澤 かおり, 岩田 賢, 服部 光治, 湊 志仁
    セッションID: 2J255
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    Arterioportal shunt(以下、AP shunt)は、肝内の血流異常であり、Itai らによって、以下の5つに分類されている。 (a) arterioportal fistula, (b) transvasal shunt, (c) transtumoral shunt, (d) wedge-shaped transsinusoidal shunt, (e) fan-shaped transsinusoidal shunt。 これらのうち、transtumoral shunt (以下、腫瘍を介したAP shunt) は、門脈が腫瘍の導出静脈として機能し、腫瘍を含む区域において、本来は求肝性であるはずの門脈血流が遠肝性となるものである。
    腫瘍を介したAP shuntは、理論的には、腫瘍が適切に塞栓されれば消失し、その領域の門脈血流は、ただちに正常の求肝性にもどる、と期待される。しかし、これを適切に証明できたという報告はない。
    我々は、腫瘍を介した強烈なAP shuntを有する肝細胞癌患者に対して、腫瘍をスポンゼル細片のみで塞栓し、その前後にCT during arterial portographyを行うことで、遠肝性から求肝性への門脈血流のdynamicな変化を証明できた一例を経験したので、報告する。
  • 平松 達, 丹羽 政美, 高木 理光, 日比 英彰, 野田 秀樹, 安部 威彦, 藤野 明俊, 齋藤 公志郎
    セッションID: 2J256
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    【はじめに】従来肝臓の腫瘍性病変に対し、MR検査ではGd造影剤による血流評価とSPIOによるクッパーイメージングが使用されてきた。今年になり、1剤でダイナミック撮像による血流評価と肝細胞への取り込みに基づく肝機能評価が可能なGd-EOB-DTPA(以下EOB)が発売され、使用可能となった。今回、EOBを使用するにあたり、添付文書に記載されている撮像タイミングで撮像可能か確認し、検査全体の撮像時間などを初期検討した。<BR>  今回は、血流情報は造影CTなど他のモダリティーにて確認できるため、肝細胞造影相に重点をおき報告する。<BR> 【使用機器】GE Healthcare社製 SIGNA MRi/Echospeed 1.5T<BR> 【撮像条件】FastSPGR法 TE:1.4msec TR:130msec FA:75°  Bandwidth:62.5kHz Slice thikness:8_mm_ spacing:2_mm_ FOV:35_cm_×35_cm_ マトリックス:512×192 ASSET(+) 撮像時間 13S<BR> 【方法】EOBを静脈注入し(EOB:注入量0.1ml/kg 注入速度1.0ml/s+生食2.0ml/sを20ml)ダイナミック撮像(20秒.33秒.60秒.90秒.180秒.300秒)を行い、その後10分、20分、1時間、3時間と肝細胞造影相を撮像した。<BR> _丸1_肝臓と信号強度の変化の少ない部位に関心領域(ROI)をとり、信号強度を計測した。_丸2_放射線技師10名にて視覚的に評価した。<BR> 【結果】肝臓の信号強度は、1時間で最大となり、その後緩やかに減弱した。脾臓などの臓器は1時間後に急激に信号が低下しその後、あまり変化しなかった。3時間後においても肝臓への取り込みは診断には問題ない信号強度を維持していた。<BR> 【考察】添付文書には、造影剤投与後1~2分後より肝実質の信号上昇がみられ2時間後まで上昇は続くとされている。<BR>  20分以降から肝細胞造影相が撮像可能とされているが、肝機能が悪い場合など造影剤の取り込みが遅い場合があるので1時間後に撮像するのがよいと考えられる。<BR> 【まとめ】ダイナミック撮像を平衡相の5分まで撮像し、その後肝細胞造影相の20分まで15分間の時間が存在する。この15分は、検査のスループット、検査時間を考えるとムダな時間となることが考えられる。よって1~2時間後に肝細胞造影相を撮像することがよいと思われる。<BR>  今後、撮像条件(3D撮像を含め)なども検討していく必要があると考える
  • (4D-TRAK,CE-MRAの抽出能の検討)
    住田 知隆, 松田 盛功, 川合 信也, 越川 和博, 小林 望, 水谷 弘二
    セッションID: 2J257
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    【はじめに】
     頭部のMRA(Magnetic Resonance Angiography)はTOF-MRA(Time of flight-MRA)などで撮影されている。この撮影は時間分解能を持たない画像である。そのため、脳腫瘍や動静脈奇形などの造影剤による抽出状況や支配血管を経時的に抽出することを要求される時には使用できない撮影法である。そこで今回、時間軸分解能と高速イメージングを利用した血管造影法、4D-TRAK(4D Time-Resolved Angiography using Keyhole),CE-MRAについて検討したので報告する。
    【撮影方法】
     臨床において頭部造影検査およびMR-DSAの依頼を受けている心疾患を持たない患者様にカニューラ針を肘静脈内側に確保し、急速注入できるようにした。
     撮影装置 Philips Achieva 1.5T
     基本シーケンスは、3D-T1FFE撮影法でTE=1.3msec(最短),TR=3.7msec(最短),Flip angle=25°,FOV=230mm,slice数=85slice,phase数=25,Keyhole=20%とした。撮影方向は頚動脈~前大脳動脈・中大脳動脈が観察できるように冠状断像(coronal views)を撮影する。造影剤はGd造影剤をMEDRAD社製のダブルシリンジを用いて造影剤注入後に生理食塩水30mlを後押しする。また、造影剤注入5秒後から撮影を開始する。
    【造影剤注入量の検討】
     造影剤注入量を求めるために、注入速度を3ml/sec一定とし、注入量を7~12mlまで変化させ視覚的評価した。
    【造影剤注入速度の検討】
     造影剤注入速度求めるために、注入量を10ml一定とし、注入速度を2~4ml/secを変化させ視覚的評価した。
    【考察】
     注入量が少ないと抹消血管の抽出能が低下する。抽出能をある程度の得るためには、8ml以上が必要かと思われる。注入量が12mlの場合、3ml/sec一定なので4秒かかるため、静脈からのwash outに時間が必要となる。造影剤が多くなると脳内に造影剤が存在する時間が長くなり、動静脈が同時に抽出されるようになるので経時的変化が得られなくためと考える。
     注入速度が速くなるとボーラス性が高くなり、画像コントラストが向上すると考えるが脳血管の抽出能は3ml/sec以上でほとんど同等と思われる。それは、1画面あたりの造影剤量がプラトーになるためと考えられる。また、注入速度を上げると脳内の循環時間が早くなり、静脈相が早い時間で抽出されることになる。したがって注入速度を上げると経時的変化を観察しているため、時間的な分解能を上げる必要がある。
    【結論】
     上記の考察から動脈および静脈の抽出を考慮した結果で注入量8~12ml(10ml基準)、注入速度は2.5~3.5ml/sec(3ml/sec基準)が良いと思われる。
  • 仲山 剛史, 柳原  利行, 田中 史朗, 高橋 治海, 竹内 賢, 山本 悟
    セッションID: 2J258
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    【はじめに】
     日本人女性で最も罹患率の高い癌である乳癌は診断法も治療法も比較的多彩な疾患である。乳房の画像診断法として有用性が確立されているものはX線マンモグラフィ(MMG)と超音波(US)検査が挙げられるが近年乳房疾患に伴いMRIによる検査が増加している。  MRマンモグラフィでの検査目的は乳癌の良悪性の鑑別もさることながら乳房温存療法の適用を判断し、癌による進展範囲の診断に用いられる事が多くなってきている。 また、最近ではハードやソフト面の進歩により質的診断や両側乳腺の撮影、化学療法の効果判定にも利用されるようになってきている。  当院では昨年11月よりGEYM社製SignaHDx(1.5T)が導入され乳腺領域の活用が期待されている。そこで今回、当院のMRマンモグラフィの検査方法を症例も加えて報告する。

    【使用機器】
    装置:GEYM社製 SignaHDx 1.5T(Ver.14)
    使用コイル:8channel breast array coil
    MR造影剤注入装置:根本杏林堂社製 ソニックショットGX

    【MRマンモグラフィの対象】
    ・MMG・USにてカテゴリー3以上の症例(嚢胞性病変を除く)
    ・MMG・USの所見より乳房温存療法の適用判定
    ・MMG・USの結果が一致しないなどの良悪性の判定が困難な症例
    ・化学療法効果判定
    ・血性乳頭分泌やリンパ節を触知するが、MMG・USでの異常を検出できない症 例
    ・ハイリスク患者

    【撮像方法】
    1、前室にてルートを確保する
    2、腹臥位にてポジショニングを行う
    3、単純撮像(両側DWI、患側T2Sag、患側非脂肪抑制T1Sag)
    4、Dynamic撮像(Pre、90,180,300Sの3相とする)
    5、Dynamic後期撮像(両側Axi、患側Cor)
    6、MRS(1cm以上の腫瘤を認めたときのみ)

    【まとめ】
     装置の進歩による空間分解能の向上により以前では描出困難であった乳管内進展などの微細な病変も描出可能となった。腫瘤の辺縁の構造や内部の造影パターンの描出により組織型の鑑別も可能となってきた。また、両側それぞれにある局所シミング(バイブラントシム)を使用することにより乳腺MRIでは欠かせない脂肪抑制のかかりも向上した。以上のような撮像技術の進歩による画質の向上により診断能が格段に向上したと思われる。

    【今後の展望】
    乳房診療におけるMRマンモグラフィの役割は、近年著しい変移をとげてきた。これは撮影技術の進歩により高分解能な画像の取得が可能になったこと、温存手術の増加による乳癌の広がり診断の必要性、早期発見への意識の高まりなどによるものと考える。少なくとも乳房温存術前のMRI撮像は標準的なモダリティーの選択肢となりつつある。今後は現在のシーケンスの改良などによりさらなる空間分解能の向上を目指し、また形態的な診断だけではなく拡散強調像やMRSといった機能的診断の方向からもアプローチしていけることが予想される。これら撮像技術のさらなる進歩により診断能がよりいっそう向上していくことを今後も期待したい。
  • 八木 志茂, 高村 伸二, 小俣 正, 上條 謙, 岡本 英明, 佐伯 光明, 金井 信恭
    セッションID: 2J259
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    〈緒言〉MDCTの出現により肝細胞癌(HCC)に対する造影CT三相撮影は広く一般的に行われている検査だが、その検査方法の詳細は施設によって様々である。従来、本院ではHCCに対する三相撮影ではイオパミロン370 100ccシリンジを使用し、注入速度3ml/sec、全量注入として検査を行ってきた。ところが近年、ANGIO部門に於いてマイクロカテーテルの性能向上に伴い最高耐圧が上がった事から、CT三相撮影では発見されなかったHCCが、腹部血管造影で発見される例が少数ながら出現し、HCCスクリーニング検査としての造影CT三相撮影の存在意義を問われ、それまで行ってきた3ml/secの注入速度を4ml/secに変更する事で、この事態の一応の収束を図った。しかし、注入レートを上げることで造影能を向上させる事ができるのは、学会等の報告より周知の事実だが、身体への侵襲性の増大、副作用リスク増大が危惧されるところである。そこで、オムニパーク300 150ccシリンジ造影剤を使用し、注入レートを上げずに、注入量を増やす事で造影能を向上する事が可能になるであろうか、使用経験をここに報告する。
    〈方法〉過去にイオパミロン370 100ccシリンジ造影剤を使用し、注入レート、3ml/secまたは4ml/secで造影CT肝臓三相撮影を行った事のある患者のうち、肝細胞癌の診断を受け、TAE前精査、またはTAE後フォロー検査、OP前精査、OP後フォロー検査、経過観察検査の者を対象として、オムニパーク300 150ccシリンジ造影剤を使用し、注入レートを3ml/secまたは4ml/sec、全量投与で肝臓三相撮影を行った。従来のイオパミロン370 100ccシリンジ造影剤を使用した三相撮影の撮影タイミングはGE横河製CTプログラムのsmart prepを使用し、テストインジェクション10ml注入後の大動脈到達時間を計測し、それをPとした時、動脈優位相をP+5秒、門脈優位相をP+27秒、平衡相を140秒としていたが、オムニパーク300 150シリンジ使用の際には門脈優位相のみを全量注入後+10秒の60秒後とした。撮影はGE横河社製 LIGHT SPEED ULTLA16、評価はGE横河社製ADVANTAGE WORKSTATION 4.0を使用し、右肝、左肝、膵、脾、大動脈、門脈の各部位の、各相に於ける視覚的評価とROI測定を行った。〈結果〉視覚的評価における100ml群と150ml郡の比較では、右肝、左肝、膵では門脈相、平衡相で150ml群が有意に優れ、脾、門脈では門脈相のみ有意に優れた。一方、動脈相については何れの部位についても優位差は認められなかった。ROI測定によるCT値の100ml群と150ml群の比較では右肝、左肝、膵、脾、大動脈、門脈の全部位において動脈相での2郡間の差は認められず、門脈相、平衡相では150ml群が100ml郡に対して有意に優れた結果となった。
    〈考察〉多血性肝癌の描出に関しては、注入レートを上げる事で描出能を上げる事ができる。つまり造影剤の総量より単位時間当たりの造影剤の量に依存するが、今回の検討により、門脈相、平衡相について、総量を多くすることで、その観察を明瞭にする可能性を明確にできた。今後の検査において、撮影タイミング、注入レートの最適化をする事で検査の精度向上を図る事ができると考える。
  • 椿原 隆寿, 石川 晃則, 松永 紗代子, 鈴木 昌弘, 石川 陽子, 平松 拓也
    セッションID: 2J260
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    〈目的〉2008年3月のシステム更新に伴い, PACSモニタとして従来使用してきたモノクロ高精細CRT(Cathode ray tube)モニタから高精細液晶ディスプレイ(LCD)に更新された.従来使用していたCRTモニタは解像特性に個体差がみられた.そこで,更新されたLCDの初期における解像特性の個体差を把握するため,MTF(Modulation Transfer Function)を測定し,個体差を評価した.
    〈方法〉モニタの画面の中央に,矩形波バーパターンを表示し,市販の一眼レフ・ディジタルカメラで撮影,コンピュータに取り込んだ画像データを周波数解析することでMTFを求めた.CRTモニタの最大輝度は5MCRTでは490cd/m2,2MCRTでは230cd/m2,最低輝度は5MCRT,2MCRTともに0.1 cd/m2に設定し,GSDFに準拠したキャリブレーションを行った.評価したCRTは,BARCO社製5M(MGD521)23台,BARCO社製2M(MGD221)21台である.また,LCDの最大輝度は450cd/m2,最低輝度は0.85 cd/m2に設定し,GSDFに準拠したキャリブレーションを行った.評価したLCDは,ナナオ社製5MLCD(RadiForce GS510)4台,ナナオ社製3MLCD(RadiForce GS320)10台,ナナオ社製2MLCD(RadiForce GS220)9台である.
    〈結果〉CRTモニタでは5MCRT,2MCRT(図1)ともに個体差がみられたが,LCDでは5M,3M,2M(図2)それぞれに個体差はみられなかった.
    〈考察〉CRTの個体差は,電子ビームスッポト径の拡大・歪み,蛍光体による光の散乱などが要因ではないかと考える.それに対し, LCDではバックライトの透過光により表示を行なうため個体差が少ないと考える.
  • 小野江 雅之, 山田 佳未, 中西 茂樹, 鷹津 久登, 田中 孜
    セッションID: 2J261
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    【目的】 FPD方式デジタルX線TVを使用した消化管検査における画像出力フォーマットについて検討した。                【使用機器】 TOSHIBA Winscope6000/FUJIFILM DRYPIX4000 HITACHI medix230X/FUJIFILM CEPROS M2 TOSHIBAファントームPX17-51934B                       マイクロデンシトメータ:阿部設計2405型 【方法】 1.解像力チャートをII-FSにて撮影した。2.解像力チャートをFPD-DRにて 14″/ 11″/ 9″/ 7″で撮影し、それぞれ出力フォーマットを(1X1)/(1X2)/( 2X2)/(2X3)にて出力した。 3.得られたフィルムをマイクロデンシトメータで読み取りCTFを求めた。 【結果】 (1X1):7″/9″/11″/14″と全てにおいてII-FSより高いCTFが得られた。 (1X2):7″/9″にてII-FSより高いCTFが得られた。 ( 2X2):7″/9″にてII-FSと同等のCTFが得られた。 (2X3):7″/9″/11″/14″と全てにおいてII-FSより低いCTFが得られた。 【考察】 1.7″/9″にてII-FSと同等以上のCTFが得られた出力フォーマットは(2X2) 以下であった。 2.コスト面では四切が73円、半切が292円と1:4であり、出力フォーマットを(2X2)とするのはコスト面でもII-FSと同等である。 3.空間周波数が1.0LP/mm以下にてCTFが低い結果が出たのはDCF機能がより強く働いた事が示唆された。            【まとめ】 FPD方式デジタルX線TVを使用した消化管検査での画像出力フォーマットは解像度およびコスト面から(2X2)とするのが望ましいと考えられた。           
  • 直井 一仁, 砂田 博文, 風見 ひろみ, 渡辺 史夫
    セッションID: 2J262
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    [背景〕 BLADE法とは動きの補正を行うことのできる撮像法であり、Turbo spin echo(以下TSE)とradialスキャンを応用したk空間へのデータ充填を行うという特徴を有する。 我々は、以前BLADE法のパラメータであるBLADE coverage、Base resolution、Turbo factor(以下Tf)を変化させ、自作ファントムの撮像・評価を行なった。その結果、BLADE coverage100%、Base resolution256、Tf29以下      が適当であると結論付け、臨床応用を試みた。当院で従来行われてきた息止めのできない患者の上腹部でのPACE併用TSE法と、PACE併用BLADE法のT2強調画像を比較すると、病巣描出能は、PACE併用BLADE法の方が優れていたが、病巣鑑別においてコントラストの相違が問題となった。 [目的] BLADE法T2強調画像(PACE併用)では実効TE、BWが画像コントラストに大きく寄与するといわれている。今回、ファントムデータよりTSE法とBLADE法のCNR差を把握し、実効TE、BWを最適化するための基礎検討を行う。 [使用機器] ・SIEMENS社製 MAGNETOM Avanto 1.5T ・Body Array coil ・自作ファントム [方法] ・TSE法T2強調画像(FOV350、FS、TR1500、TE124、concatenation4、Tf29、BW260)より得られた自作試料(_丸1_~_丸4_)のCNR値を基準にして、BLADE法T2強調画像を各撮像条件(_i_、_ii_)における各資料のCNR値について検討した。また同一条件のSNRを測定した。 (試料) _丸1_1.0mmol/ml Gd溶液、_丸2_0.1mmol/ml Gd溶液、_丸3_生理食塩水_丸4_食用油 (撮像条件) BLADE法T2強調画像 _i_、FOV350、FS、TR1500、BW362固定、 TE87ms(Tf29)~TE52ms(Tf17) _ii_、FOV350、FS、TR1500、TE75ms(Tf25)固定、 BW501(TE65ms)~BW150(TE126ms) [結果] TSE法T2強調画像とBLADE法T2強調画像のCNR値に差が生じていたが、TEを変化させても相関があった。同様に、BWを変化させても全てのBW値において相関があった。 [考察] TEやBWを変化させても相関があったことから、臨床で使用する範囲内では、TEが画像コントラストに大きく寄与するとは言い難い。つまり、病巣鑑別にBLADE法を用いることは妥当であると考える。 [結語] 上腹部の主要な病変では、撮像法の違いによる組織間のコントラストの把握が重要となる。今後は、今回の基礎検討から得られた撮像条件を臨床で用い、病巣鑑別における病変境界の分解能を評価しなければならない。
  • 赤羽 優夏, 丸山 麻希, 小林 修司, 小松 俊雄, 唐澤 忠宏, 小松 修, 矢澤 正信, 井上 憲昭
    セッションID: 2J263
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
     亜鉛は必須微量金属のひとつであり、その欠乏症として味覚・臭覚障害が広く知られているが、この他に褥瘡等の皮膚障害、成長発育障害などにも関与している。これまでの測定方法は原子吸光法が主流であり、その特殊性から、入院患者の一般検査項目に入れられることは少なかった。しかし自動分析用試薬が開発され、当院内においても簡便に測定することが可能となった。今回、入院患者の褥瘡発生と亜鉛濃度との関連性について検討したので報告する。
    <対象>
     当院に入院中の寝たきり患者33名を対象とした。このうち、褥瘡のある患者(以下、褥瘡(+))は18名(年齢47~109歳 平均83.5歳 男10名 女8名)、褥瘡のない患者(以下、褥瘡(-))は15名(年齢57~102歳 平均86.7歳 男4名 女11名)であった。比較対照として、非寝たきり患者16名(年齢60~89歳 平均79.1歳 男9名 女7名)についても調査した。
    <方法>
    1.栄養摂取状況の調査
    2.血清中亜鉛、総蛋白、アルブミンの測定
    測定機器:日立7170S形自動分析装置
    使用試薬:アキュラスオートZn(シノテスト社)
    自動分析用試薬「生研」 TP (Biuret法) (デンカ生研)
    エクディアXL‘栄研’ALB-BCG
    (栄研化学)
    <結果>
     血清亜鉛平均値は褥瘡(+)患者47.0μg/dl、褥瘡(-)患者55.8μg/dlで、褥瘡(+)と褥瘡(-)の患者間に有意差(t検定)を認めた。総蛋白平均値は褥瘡(+)患者6.21g/dl、褥瘡(-)患者5.97g/dlで、有意差は認めなかった。アルブミン平均値は褥瘡(+)患者2.99g/dl、褥瘡(-)患者平均3.22g/dlで、有意差は認めなかった。なお非寝たきり患者の平均値は、亜鉛61.0μg/dl、総蛋白6.89g/dl、アルブミン3.78g/dlであった。
    <考察>
     今回、血清亜鉛、総蛋白、アルブミンのうち、褥瘡(+)と褥瘡(-)の患者間において有意差が観察されたのは、血清亜鉛のみであった。また、褥瘡(+)患者の亜鉛平均値は基準値(65~110μg/dl)を大きく下回っていた。以上のことから、寝たきり患者においては、血清亜鉛濃度を測定することにより褥瘡発生を予測できる可能性があると考えられた。
     褥瘡の予防において栄養状態の良否は大きく影響する。通常、栄養状態を評価する検査項目として総蛋白、アルブミン値が利用されているが、本研究結果によれば両者の値から褥瘡の発生を予測することは困難であると考えられた。
     亜鉛濃度が院内で簡便・迅速に測定できるようになったことで、亜鉛の褥瘡マーカーとしての有用性が今後高まっていくであろうと思われる。
  • 相原 乃理子, 佐藤 嘉洋, 林 聖子, 内藤 早苗, 小俣 芳彦, 菅沼 徹, 関 れいし, 飯尾 宏, 別所 隆
    セッションID: 2J264
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 近年、画像診断の進歩により、乳腺が細胞診検査の対象となる機会が増加してきている。当院においても乳腺穿刺吸引細胞診検査は増加傾向にある。しかし、診断の際には、画像診断の進歩による微小な結節性病変からの穿刺吸引細胞診例である場合や細胞診の欠点でもある「病変の一部の細胞像しか反映できない点」などにより、診断が難しい症例も少なくない。今回われわれは穿刺吸引細胞診にて細胞像がアポクリン化生を示し、診断に苦慮した乳腺腫瘍2症例について組織診断と対比し、細胞像の再検討を行ったので報告する。 【症例1】 57歳 女性 左BD領域 0.9×0.11×0.8cmの腫瘤 <細胞所見> 採取されている細胞は比較的多く診断可能と考えた。核腫大、クロマチン増量したDuct cellが、シート状~重積を示すclusterでみられた。さらに、核腫大、核大小不同、クロマチン増量し、大型の核小体をもち、比較的大きな胞体に好酸性顆粒を持つ細胞の大型clusterが散見された。また同様の所見を持つ孤立細胞も認められた。 以上の所見からアポクリン癌が疑われた。 <組織所見> 肉眼的には不整形な1cm大の白色病変で、組織学的には軽度腫大した核を持つ乳管上皮細胞の乳管内増殖からなっており、部分的にアポクリン化生様の細胞がみられた。また紡錘形の筋上皮様細胞の増生と血管間質を伴っていた。アポクリン化生様細胞の核は腫大し、核小体も明瞭に認められ、泡沫細胞も部分的に認められた。 以上からDuctal adenomaと診断された。 【症例2】 41歳 女性 左AC領域 0.17cm長Nippleから放射状に広がる不規則な低エコー腫瘤 <細胞所見> 採取されている細胞は比較的多く診断可能と考えた。核腫大、大型の核小体を持ち、胞体が泡沫状の広い細胞がシート状のclusterでみられた。 以上の所見から『鑑別困難』悪性も否定できないとされた。 <組織所見> 円柱状の腫瘍細胞が乳管内に篩状構造、面疱状あるいは充実性に増殖していた。腫瘍細胞は細胞質に豊富な好酸性顆粒を持ち、核腫大し、明瞭な核小体が認められた。間質への浸潤は認められなかった。 以上からDuctal carcinoma in situ with apocrine featureと診断された。 【まとめ】 症例1の乳管腺腫では異型の強いアポクリン化生細胞や上皮のシート状cluster、腺管状clusterなど比較的多彩な像を呈するとされている。本症例でもアポクリン化生細胞の異型が強く、それに目を奪われてしまい、その他の乳管上皮細胞clusterの所見を軽視したことがoverdiagnosisの原因であったと考えられた。 症例2では採取された細胞はアポクリン化生を起こした腫瘍細胞であった。泡沫状の比較的広い胞体に核腫大、明瞭な核小体が認められ、細胞像からはアポクリン癌を考えたものの悪性と診断するには乏しい所見であった。今回われわれが経験した症例はアポクリン化生の異型が高度であった良性腫瘍例、腫瘍細胞がアポクリン化生を起こした非浸潤性乳管癌であった。今後、核腫大、明瞭な核小体を持ち、豊富な細胞質に好酸性の顆粒が見られた場合にはアポクリン癌の可能性も考えられるが、今回経験したような症例も念頭においた診断が必要と考えられた。
  • -当院における10年間の検討-
    木田 秀幸, 今野 武津子, 高橋 美智子, 近藤 敬三, 飯田 健一, 佐藤 繁樹, 須賀 俊博
    セッションID: 2J265
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    〈緒言〉Helicobacter.pyloriH.pylori)は、グラム陰性の螺旋様桿菌で胃内に感染し胃炎、消化性潰瘍、胃癌、胃MALTリンパ腫などの上部消化管疾患の病態に関与していることが明らかになっている。H.pyloriの診断方法としては、血清及び尿中抗体測定(抗体)、便中抗原測定(HpSA)、尿素呼気試験(UBT)、迅速ウレアーゼ試験、病理組織学的検査、細菌培養などがある。唯一の直接的証明法であるH.pyloriの分離培養は、特異性に優れ菌株保存が可能なため抗菌薬の感受性検査や遺伝子学的解析を行うためには不可欠である。培養に用いる検体は胃粘膜生検が一般的であるが、我々は胃粘膜生検の他に胃液を検体としたH.pylori培養を1997年より行なっている。この10年間の培養経験と成績を報告する。
    〈対象と方法〉1997年3月から2008年3月までに腹痛を主訴に、当院小児科を受診し上部消化管内視鏡検査を施行した小児を対象とした。また、血清H.pylori IgG抗体(血清抗体)あるいは便中H.pylori抗原(HpSA)陽性患児とその家族も対象とした。
    患児95例は内視鏡検査と胃粘膜生検を施行し、その家族でH.pylori陽性の有症状者(既往も含む)にはインフォームドコンセント(I.C.)を得た後、82例に対し内視鏡下生検あるいは胃液を採取し培養を施行した。除菌後の検体を含む延べ培養総数は、289例(胃液培養111例、胃粘膜培養178例)であった。培地はH.pyloriの選択分離培地である「ニッスイプレート・ヘリコバクター寒天培地」(日水製薬株式会社)を用い、微好気条件下で35℃(2005年10月までは37℃)ふらん器にて最大1週間の培養を行なった。結果の判定は、発育したコロニーのグラム染色を行い、グラム陰性螺旋菌であることを確認、ウレアーゼ試験、オキシダーゼ試験、カタラーゼ試験陽性となったものをH.pylori培養陽性とした。
    〈結果〉HpSA又は血清抗体陽性群78例の胃液培養では、68例が陽性で10例が陰性となり、感度87%であった。HpSA又は抗体陽性群118例の胃粘膜培養では、103例が陽性で15例が陰性となり、感度87%であった。HpSA又は血清抗体陰性群では胃液培養、胃粘膜培養共に全例が培養陰性であり特異度は100%であった。培養結果とHpSA及び血清抗体が不一致となった25例中9例に雑菌発育が認められ培養不可能であった。胃液と胃粘膜の雑菌発育に大きな有意差は認められなかった。1998年までは、HpSA又は血清抗体やウレアーゼ試験との不一致例が検体56例中18例(32%)、雑菌発育8例(14%)と培養成績に良好な結果が得られなかった。不一致18例中7例(39%)の原因は雑菌発育によるものであった。しかし、1999年以降の不一致は、検体233例中7例(3%)、雑菌発育2例(1%未満)と培養成績が明らかに向上した。
    〈結語〉我々は、胃液を検体としたH.pyloriの培養を1997年から試行錯誤の中行なってきた。1998年以前の培養成績と他の検査方法との不一致や雑菌発育は、培地の使用方法や培養条件、検体処理方法等、様々な要因が示唆された。
    胃液検体は胃粘膜検体と比較しても十分な培養成績を得ることができた。また、胃液採取は、内視鏡を用いた胃粘膜採取と比較し患者への侵襲性が小さく、採取部位による影響も受けないことからも有用性が高いと考えられる。
  • 岡田 真由美, 村上 孝人, 似内 幸枝, 佐藤 圭司, 亀井 香織, 内田 多久實, 藤永 明
    セッションID: 2J266
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    【はじめに】
     small dense-LDL(小粒子LDL:以下sd-LDL)は脂質代謝・インスリン抵抗性・動脈硬化に密接に関連することが知られており、”超悪玉コレスレロール”と呼ばれている。脂質項目で異常値の出現がなくても、これらの疾患が発症するのはsd-LDLの増加のためと考えられている。
     今回我々は、検診におけるsd-LDLと他の脂質関連項目・糖関連項目との関連性について検討を行ったので報告する。

    【対象及び方法】
     対象は当院人間ドックを受診した180名(男性113名、女性67名)。検討項目は、当院人間ドック検査項目T-CHO、TG、HDL、LDL、FBS、HbA1c及び腹囲。小粒子LDL関連検査として、sd-LDL(カットオフ値42mg/dl)とLDL/アポBの比(1.2以下で小粒子LDLを推測)にて、比較検討を実施した。

    【結果及び考察】
    1 相関性:sd-LDLと各種検討項目間の相関性として、T-CHO、LDL、HDL、TG、アポB(r=0.549~0.823)と脂質関連項目には概ね相関が認められたが、糖関連項目及び腹囲には相関が認められなかった。
    2 sd-LDLと相関が検診項目で一番高い結果となったLDLとの関係について詳しく検証:sd-LDLカットオフ値42mg/dlとして、sd-LDL42mg/dl以下でLDL140mg/dl未満の基準値内(以下A群)は92名51%(男性37名、女性55名)・両項目高値(以下D群)は30名17%(男性25名、女性5名)・sd-LDL正常でLDL高値(以下C群)は3名2%(男性0名、女性3名)・sd-LDL高値でLDL正常(以下B群)は55名31%(男性51名、女性4名)であった。
    3 sd-LDL正常・LDL高値のC群は全て女性(3名)で平均LDL直径を推定出来るLDLとアポBの比は1.33以上と比較的大きい粒子のLDLサイズと考えられた。
    4 sd-LDL高値でLDL正常のB群男性51名の各検討項目との有意差の検定:LDLとアポBの比と各検討項目とのt検定(p<0.05)を実施し有意差について検討した。LDL/アポBの比1.2をカットオフ値と設定し、低値群・高値群と分類した。内訳は低値群38名、高値群13名であった。各群に分け検診項目との有意差を検定(p<0.05)したところ、TG(p<0.001・低値群平均198mg/dl、高値群TG平均111mg/dl)、腹囲(p<0.001・低値群平均92cm、高値群平均87cm)の有意差を認めたが、T-CHO、HDL、FBS、HbA1cでは認めなかった。
    5 特定検診の検査項目として注目されている腹囲と各検討項目との有意差の検討:男性85cm女性90cm以上群を高値群、それ以下を低値群と分類して、その他検討項目間との有意差の有無を検定した。その結果、男性のsd-LDL、TG、FBS、HbA1cとの間には有意差を認めたが、それ以外の項目とは認めず、女性では全項目で認められなかった。

    【まとめ】
     sd-LDLの粒子は小さく血管内皮を通過しやすい機序を持つ。これが多い故にDM・虚血性心疾患の罹患ファクターが増大すると考えられている。今回の検討では、sd-LDLと他の脂質関連項目では相関を認めた。又、メタボリックシンドロームと深い関連性があることが示唆される結果となった。
  • 若松 祐三, 中村 雄一, 重信 隆彰, 石山 重行, 草野 健, 前之原 茂穂
    セッションID: 2J267
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉昨今の食事の欧米化、運動不足に伴い肥満人口が増加している。体脂肪率、BMIは肥満の判定に有効な手段だが、メタボリックシンドロームの病態基盤である内臓脂肪量評価との関係性を調べることにより、当センター検診CTにおける内臓脂肪量評価の基準(内臓脂肪の面積をcm2で表したものを「内臓脂肪量」と定義し内臓脂肪量100cm2未満 正常、100cm2以上150cm2未満 多い、150cm2以上 非常に多い)の妥当性を確認する。なお当センターでは平成19年1月よりMS診断の補助としてCTによる内臓脂肪測定を開始している。今回平成19年4月より1年間おける受診者の測定結果と体脂肪率、BMI、との関係について検討した。
    対象及び方法)平成19度人間ドック受診者11712名中 CTによる内臓脂肪測定を行った1631名(男性:1042名 女性:589名)を対象とした。使用機器は東芝製Asteion4、内蔵脂肪解析ソフトはN2システム Fat Scan、TANITA 身長体重計を使用した。臍の高さ、呼気時のCT撮影、Fat Scanで処理したCT断面図により腹壁の筋肉を境にして外側を皮下脂肪、内側を内臓脂肪とした。内臓脂肪の面積をcm2で表したものを「内臓脂肪量」と定義し内臓脂肪量が100cm2未満を_I_群、100cm2以上150cm2未満を_II_群、150cm2以上を_III_群とし、その3つの群と、体脂肪率、BMIとの関係を調べ、内臓脂肪量の至適基準を検討する。
    結果)内臓脂肪量をGold standardとしてBMI、体脂肪率を検討した。BMI正常者の内臓脂肪量の平均は82.148cm2標準偏差43.007、またBMI異常者では平均136.168cm2標準偏差55.560となった。体脂肪率正常者の内臓脂肪量の平均は男性102.871cm2標準偏差47.771、女性は54.377cm2 標準偏差29.894となった。体脂肪率異常者の男性の平均は144.199cm2 標準偏差57.423、女性は平均97.978cm2 標準偏差43.576となった。さらに男性の体脂肪率25%未満、女性の体脂肪率30%未満を体脂肪率正常者、それ以上を体脂肪率異常者とした場合、男性の体脂肪率正常者は_I_、_II_、_III_群それぞれ82.7%、61.4%、43.7%となり、女性の体脂肪率正常者はそれぞれ63.4%、16.3%、13.5%となっている。_I_群の場合でも体脂肪率異常者が存在し、また男性の内臓脂肪量100cm2以上の_II_,_III_群にも体脂肪率正常者が存在している。次に内臓脂肪量各群とBMIとの関係について検討した。BMI25未満を正常者、25以上を異常者とした場合、正常者は_I_群では79.7%で_II_群、_III_群になるとそれぞれ48.7%、26.3%と減少傾向にある。これは皮下脂肪などの全構成要素か含まれた為だと考えられる。 BMI、体脂肪率は、肥満の度合いを知る為の簡便な方法ではあるが、必ずしも内臓脂肪量を正確に反映してるとは言えない。内臓脂肪量の正確な測定法としては、CTがもっとも適していると思われる。さらにメタボリックシンドロームとの関連も検討して報告する。
  • ~遺された家族と心の通うエンゼルケアを目指して~
    高木 朋子, 松井 愛, 勝野 美加子, 小板 昌子, 水野 紀代美, 古田 里江子, 矢島 廣美
    セッションID: 2J268
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    当病棟におけるエンゼルケアの検討 ~遺された家族と心の通うエンゼルケアを目指して~ 高木朋子(たかぎともこ) 松井愛・勝野美加子・小板昌子 水野紀代美・古田里江子・矢島廣美 東濃厚生病院・混合病棟 エンゼルケア・エンゼルメイク・家族 〈はじめに〉エンゼルケア(以後ケアとする)は死亡確認をされた患者に対する最後の看護であると考え、患者・家族へ誠意をもって提供している。しかし、遺された家族の悲しみを感じつつ、できる限り配慮しながらも、多忙な看護業務の中で時間に追われ、手早く行われているのが現状であった。そのため、これまで行われてきたケアは正しかったのか。看護師はどんな気持ちを抱きながら行っているのかなどの疑問があった。そこで、当病棟における現状の把握とケアを見直し、方法・物品の充実化を図ることで、遺された家族と気持ちの通い合うケアの実施につなげたいと考えた。 〈研究目的〉現状のエンゼルケアに関する問題点を明確にし、ケア改善方法の実施と効果を知る。 〈研究方法〉対象:当病棟看護師21名・死亡確認をされた患者とその家族・死亡退院時に依頼された葬儀社 研究期間:平成19年3月~11月 方法:ケア方法改善前後でのアンケート調査・改善方法にてケアの実施・葬儀社への聞き取り調査 調査内容:看護師はケア実施時に何を思うか。方法に満足しているか。を方法改善前後で比較。ケアに対する家族の反応を確認。葬儀社に対し、自宅でのメイクの変化・看護師への要望等を調査。 〈結果〉方法改善前後のアンケート結果:方法に満足していないとの回答は前80%・後7%であった。方法改善前において、ケア中に困ることは化粧品が最も多かった。 家族の反応:「元気な頃の顔に戻った」「一緒に処置をできて良かった」等の反応が得られた。 エンゼルメイク物品の検討結果:「保湿力が高い」「カバー力がある」「安価である」ことに加え、家族と一緒に処置を行った場合でも「見栄えの良い化粧品」として、必要最低限の物品を揃えた。 〈考察〉アンケート調査により、現状のエンゼルメイク物品に問題があることが明確となった。このことから、その人らしい表情づくりや死体現象に対応するためには、従来の道具や方法では不可能であると考えられた。 情報を得るまでは、「手を組む」「口を閉じる」ことが当然として、縛る行為をやむをえないと感じていた。 しかし生前の患者をよく知る家族が、それに対しどんな思いを抱いているかを意識することで、必然的に家族に対しかける言葉も変わった。 また、家族と共にケアをすることの大切さも感じつつ、家族と関わるようになれたのではないかと考える。 ケアを家族と一緒に行うことで、そのコミュニケーションを通して患者の「らしさ」を取り戻し、家族にとっては身内の死を実感する場となる。家族が患者の体を拭きながら、または化粧をしながら患者の楽になった表情を見て、語りかける時間が家族にとって慰めとなるのではないかと考える。 エンゼルケアは多くの学びを与えてくださった患者に対する感謝の気持ちも込めて、大切にしていきたい看護ケアのひとつであると再認識した。 〈結論〉1.死後の身体的変化に対応するにあたり、知識不足と物品の不備があった。 2.エンゼルケア方法と物品の確立により、改善効果が得られた。3.エンゼルケアの意味を理解することで、家族へのケアも心がけ るようになり、家族と共にケアをすることは、患者の「らしさ」を目指すケアに繋がると考えられる。
  • 江口 善美, 吉田 麻衣子, 入江  良之, 秋本 法人, 小林 早苗, 石井 茂
    セッションID: 2J269
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉現在、国内では3種類の強オピオイド製剤が使用可能になっており、当院でも患者の既往歴や状態によって、これらのいずれかを選択し処方している。しかし強オピオイド製剤には患者のQOLを下げる副作用があり、その中でも投与初期から出現する嘔気・嘔吐や便秘は疼痛治療を行う上で妨げになっている。その対策として、制吐剤や緩下剤を強オピオイド製剤開始時に併用することが推奨されている。そこで今回、強オピオイド製剤が導入された患者の嘔気・嘔吐や便秘に対する支持療法の処方状況を調査した。

    〈方法〉平成19年10月から平成20年3月までに強オピオイド製剤が導入となった患者のうちオキシコンチン錠と徐放性モルヒネ製剤を対象とした。

    〈結果〉調査期間でのオキシコンチン錠と徐放性モルヒネ製剤が導入となった患者はそれぞれ70人、11人であった。詳しい内訳は下記の通りであった。
    1オキシコンチン錠の導入患者
     1)緩下剤のみ処方   17例
     2)制吐剤のみ処方    5例
     3)両方処方なし    18例
     4)両方処方あり    30例
    1)のうちその後、制吐剤処方あり   4例
    2)のうちその後、緩下剤処方あり   4例
    3)のうちその後、制吐剤処方あり   0例
             緩下剤処方あり   10例
             両方処方なし    7例
             両方処方あり    1例
    2徐放性モルヒネ製剤の導入患者
     1)緩下剤のみ処方    3例
     2)制吐剤のみ処方    0例
     3)両方処方なし     7例
     4)両方処方あり     1例
    1)のうちその後、制吐剤処方あり   2例
    3)のうちその後、制吐剤処方あり   0例
             緩下剤処方あり   3例
             両方処方なし    3例
             両方処方あり    1例

    〈考察〉今回オキシコンチン錠(以下A群)、徐放性モルヒネ製剤(以下B群)が処方された患者において、制吐剤と緩下剤が併用で処方された割合はA群43%、B群9%であり、全体の割合では38%であった。また、制吐剤が処方されなかった中で、その後に処方された割合はA群14%、B群30%であり、また緩下剤が処方されなかった中で、その後に処方された割合はA群65%、B群57%であった。
    今年4月より当院でも緩和ケア科と精神科の医師を招聘して、2名の薬剤師が参加した緩和ケアチームが本格的に活動を始めた。このチーム活動を通じて、今後は強オピオイド製剤使用時の院内全体への注意喚起や支持療法の標準化を行うことにより患者のQOL向上に役立てていきたい。
  • 今野 隼人, 橋本 正治, 福島 啓介, 平宇 健治, 菅原 浩, 平野 裕, 戸沢 香澄, 海法 恒男
    セッションID: 2J270
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    近年、癌性腸閉塞症例に対して薬物療法が第一選択として推奨されている。今回当科では癌性腸閉塞症例にサンドスタチンを使用し比較的有効な結果を得た。よって投与時期など若干の知見を得られたので文献的考察を加えて報告する。
    [方法と結果]2006年4月から2007年12月まで当科で入院した癌性腸閉塞症例7症例について検討した。その内訳は男性5例、女性2例。年齢は50歳から79歳、平均64.9歳。大腸癌4例、胃癌2例、食道癌1例であった。投与期間は2日以内3例、10日1例、20以上3例であった。結果は著効が3例、有効が2例、評価不能が2例であった。なお、著効とは投与により経口摂取が可能になったこと、有効とは投与によりチューブドレナージ量の減量もしくは抜去可能となったこととした。以下に著効であった1例を呈示する。
    [症例]52歳女性。診断は上行結腸癌、卵巣転移、癌性腹膜炎の患者である。病歴:平成15年8月15日下血にて発症。平成15年9月5日、右半結腸切除術施行。病理組織診断ではwell diff.adeno.ca,Se,ly1,v2,,n0,Stage_II_の診断であった。術後は順調に回復し退院。その後RPMI療法を2コース施行した。平成17年1月CEAの上昇とCT,MRIにて両側卵巣転認めたため、平成17年4月5日手術施行。術中腹水細胞診にて癌性腹膜炎の診断であった。右卵巣は手拳大で子宮・後腹膜と一塊となり切除不能であった。左卵巣は切除したが、病理組織にて上行結腸癌の卵巣転移の診断であった。退院後、FOLFOX4を計10回、FOLFILIを計12回施行した。その後、平成18年12月よりTS-1内服にて外来通院していたが、平成19年8月29日、癌性腸閉塞のため入院となった。同年9月3日からサンドスタチン持続投与開始した。サンドスタチン開始後は嘔気嘔吐の訴えもなく経過し、在宅の方向で準備を進めた。10月10日在宅に向けてサンドスタチンは中止し、外出など行い、11月23日より外泊することができた。12月13日嘔吐認め、嘔気の訴えもあったためサンドスタチン再開した。12月17日頃より傾眠傾向となり全身状態も悪化、12月30日永眠された。平成17年の癌性腹膜炎の診断からおよそ2年の経過であった。
    [考案]今回我々の使用例について検討を加えた。結果は著効有効例あわせて7例中5例であった(有効率70%)。評価不能の2例については投与直後に吐血などによる癌死であり評価しえる期間の投与ができなかった。さらに今回呈示した著効例を検討するとFOLFIRI,FOLFOXを主体とした長期抗癌剤療法からサンドスタチンへのスムーズな移行により2年という癌性腹膜炎の外来および在宅を含めた治療が可能であった。以上から抗癌剤からの移行、早期からの投与によりQOLの改善が可能であろうと考えられた。
  • 緩和ケア委員会の活動を通して
    渡邊 沙耶花, 桜井 理恵, 鈴木 三栄子, 雨谷 なを江
    セッションID: 2J271
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    《はじめに》
    がん患者とその家族の看護ケアの向上を目指して、当院では平成12年より緩和ケア委員会が月1回委員会を開催している。委員会ではおもに実態調査用紙をもとにその月ごとに12項目の内容を検討しカンファレンスを行っている。その中でがんの告知率が上がらないことが問題であった。そこで市民開放の病院まつりにて一般市民にがんの告知についてアンケート調査を行った。その結果をもとに平成19年の前半と後半の告知率の比較を行った。がん告知の実態調査とアンケート結果によって患者自身の意思に反して告知がされていない現状が明らかになった。今後患者自身の意思決定で告知が受けられるように今後の方向性が見出せたので報告する。
    《研究期間・対象》
    (1)平成19年1月~6月(前期)7月~12月(後期)
      がん患者1664名(のべ人数)
     ・緩和ケア実態調査用紙にて各病棟、訪問看護におけるがん患者の告知の有無の集計
    (2)病院まつり:平成19年10月
      アンケート回答者46名(回収率100%)うち聞き取り調査19名(41.3%)
     ・一般市民に対してがん告知に関してのアンケート用紙と聞き取り調査
    《方法》
    (1)(2)から緩和ケア委員会においてがん患者の告知についての内容を明確にする。
    《結果》
    前期の告知率は平均値81.6%。未告知率16.2%、不明4.0%であった。後期の告知率91.3%未告知率7.0%、不明1.7%であり、告知率は前期81.6%から後期91.3%に上昇した。未告知の理由は90%以上が家族の希望であった。病院まつりのアンケートの結果では、告知を受けたい人95.7%、あまり受けたくない人4.3%だった。また、聞き取り調査での告知を希望する理由は、事実を受け止めたい。自分のことはきちんと理解したい。良くても悪くても知りたい、病気の状態、予後など詳しいことがわかれば生活設計が立てられるなど14名であった。これらのことから悪性疾患であっても充分な説明と情報のもと自己決定をしたいという希望が強かった。
    《考察》
    委員会内のカンファレンスで未告知や不明患者に焦点を当て、その原因を検討し告知ができるような働きかけを行ったことが告知の上昇につながったと考えられる。患者にとって希望の告知がされるように、看護師は日常ケアの中から思いを汲み取り心理、社会的背景に対する情報収集を行い、医師に対して積極的に還元する必要がある。また、患者自身で自己決定ができるように外来初診時に問診表に告知の項目を追加し意思の確認をする必要があると考える。患者が希望する告知・意思決定ができるよう、告知方法を改善していく必要性がある。
    《まとめ》
    1.平成19年のがん告知率は前半より後半が上昇した。
    2.がん告知を受けたい一般市民は95.7%であった。
    3.がん患者は告知を受けたいと望んでいることが示唆された。
  • 大下 麻子, 小野 明美, 森川 洋子
    セッションID: 2J272
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉近年、病院で最期を迎えるケースが多く、看護師が死後の処置を行うことが一般的な傾向となっており、当院においても同様の現状がある。そこで今回、死後の処置が家族に対する援助に繋がるのではないかと考え、死後の処置への家族参加に対する看護師の思いと、その現状を明らかにすることを目的として、調査を行った。 〈方法〉194名の看護師を対象に独自に作成したアンケート調査を実施。調査項目は死後の処置への家族参加に対しての賛否とその理由、家族へ参加を促した経験の有無、家族と死後の処置を行った経験の有無、当院での死後の処置への家族参加に関する情報について質問した。 〈結果及び考察〉回収率86.1%(167名)、有効回答率100%であり、テーマに対する関心の高さがうかがえた。家族参加について賛成138名(82.6%)、反対19名(11.4%)、無回答及びどちらでもないが10名(6.0%)であった。賛成の理由として、「家族の参加希望を考慮したいから」が最も多く、「最期は家族が一緒にいるべきと思うから」 「家族ケアにつながると考えるから」などがあった。反対の理由としては、「家族が負担を感じるから」が最も多く、その内容は「処置を見てショックを受けるのでは」、「動揺している家族に負担をかけることになる」であった。これらのことから賛成、反対ともに家族の思いを尊重し、家族のためのケアとして捉えていることが明らかになった。他に「お化粧や、整髪など一部を一緒にしてもらうのは良い、肛門や口腔の処置、創部の処置は看護師のみで行いたい」という意見があった。 経験年数別に見ると、1~5年目では賛成が40名(90.9%)と全ての経験年数者の中で一番賛成が多い。しかし、どちらともいえないは、全くいなかった。6~15年目では賛成42名(79.3%)、反対8名(15.1%)、どちらともいえないが3名(5.6%)であった。16年目以上では賛成51名(79.7%)、反対5名(7.8%)、どちらともいえないが8名(12.5%)であり、どちらともいえない者が全ての経験年数者の中で一番多かった。部署別に比較すると一般病棟(95.3%)と最も高く、次に精神科病棟(82.6%)、外来(75.0%)であった。 家族へ死後の処置への参加を促した経験については、あり65名(39%)、なし79名(47%)、となっており、平均経験年数で比較すると、促した経験有が15.4年、無しが13.2年であった。経験を重ねることにより、家族を気遣う声かけや細かい配慮ができるといえる。家族と処置を行ったことがあるかという質問に対しては、あり82名(49%)、なし55名(33%)となっており、約半数の看護師が家族と死後の処置を行ったことがあることがわかった。 院内で死後の処置の家族参加に関する話題を聞いたことがあるかという質問に対して、はい16名(10%)、いいえ150名(89%)となっており、ほとんど院内で話題にのぼっていないことがわかり、看護師の意識を高める必要性があると考える。今後の取り組みとして、家族の参加を含めた死後の処置の標準化などが課題として挙げられる。 〈結論〉1.多くの看護師が死後の処置の家族参加に対して肯定的であった。 2.死後の処置は、家族のためのケアにつながると看護師はとらえていた。 3.経験のある看護師は、家族を気遣う声かけや細かい配慮ができていた。 4.死後の処置に関する看護師の意識を高める必要がある。
  • 横山 茂, 丸山 之子, 村田 志保, 中山 敦子, 山口 大輔
    セッションID: 2J273
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    〈緒言〉精神科医療において厚生労働省は平成15年、退院促進、社会復帰に向けた施策を示し、従来の入院医療中心から地域生活中心へと大きな変革を示した。こうした中、当院においては、デイケア、グループワーク、心理カウンセリング、ECT等をますます充実させ、患者さんの利益のために、多くの職種が関わり、総合的サービスの提供ができる体制を地域とともに作り上げてきた。
    薬剤師による薬剤管理指導においても、患者さんの病状はもとより、その生活背景や服薬に対する意識をもふまえて、患者さん個々のニーズにあったサービスの提供が必要となり、アドヒアランスを向上させることにより再発・再入院の防止へと繋がる内容が要求され、従来の型にはまった服薬指導から、急性期や退院後を視野に入れた指導へと変化してきた。
    平成18年、デイケア参加者から、「病気や薬のことをみんなで勉強したい」、「専門家の話を聞きたい」等の声があがり、デイケアプログラムの中に生活エンジョイ倶楽部(心理教育的生活サポートプログラム)が誕生した。薬剤師も生活エンジョイ倶楽部に関わることにより、参加者が、薬に関する理解と知識を深めること。アドヒアランスの向上を計ること。等を目的とし、活動した結果を報告する。
    〈方法〉薬剤師による講義を月に1回開催した。講義内容は、参加者の希望や前回のアンケート結果を基にスタッフ間で決めた。毎回終了時に、講義内容や薬に対する自己評価のアンケート調査を実施した。なお、アンケート調査等においては、参加者から同意を得るとともに個人情報の慎重な取り扱いおよび十分な倫理的配慮を行った。
    平成18年11月からの2ヶ月間は、医師と薬剤師により病気の症状や原因、治療法と治療効果などの疾患教育を中心に実施した。平成19年1月からの講義は、月に1回薬剤師が担当した。平成18年12月、平成19年4月、8月に参加者による振り返りを実施した。平成19年12月からは、薬に対する構えの調査票・修正版(DAI-10)による評価を加えた。
    〈結果〉平均参加者数は9.7人、内4.9人は統合失調症者であった。振り返りの中では、自分や他者の、病気のことや薬のことを知ることができてよかった。薬を中断すると再発率が高くなるということがわかった。等の感想が多く出されたとともに、現在困っていること、不安に思っていること、また、睡眠に関する内容の質問が多く出された。
    アンケート結果からは、講義内容のわかりやすさを質問したところ、わかりやすかった。むずかしかった。と回答が分かれることがあった。また、自分の薬についての質問で、薬は必要だと思うが正しく飲めていないとの回答もあった。DAI-10による評価は、改善・不変が多かったが、悪化する例も見られた。
    (考察)日頃から抱えていた薬への不安や飲み方など、現実的な質問が多く出されたのも、学習による気づきの現われと思われる。また、顔なじみの薬剤師が参加することで、質問や相談が多く出されたとも思われる。しかし、理解度や興味の対象の個人差もあるため、今後個別指導の組み込みも必要であろう。それには、入院から地域生活への移行がスムーズに行え、またそれを維持していけるように、アドヒアランスの向上とQOLの向上につながるプログラムを実践していくことが必要である。
  • 横山 聡, 福岡 達仁, 碓井 裕史, 森田 保司
    セッションID: 2J274
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉塩酸イリノテカン(CPT-11)は様々な癌腫に用いられる抗がん剤であり,高い抗腫瘍効果を有する一方で,時に好中球減少などの重篤な副作用を引き起こすケースがある。その原因としてグルクロン酸転移酵素であるUDP-glucuronosyltransferase(UGT)1A1の遺伝子多型UGT1A1*6(*6),UGT1A1*28 (*28)が関与することが報告されている。したがってCPT-11投与前に多型解析を行うことで重篤な副作用を予測することが可能となる。そこで我々はリアルタイムPolymerase Chain Reaction(PCR)装置であるSmart Cycler II Systemを用いて,臨床現場で簡便に行える多型解析法の検討を行った。この装置はDNAを増幅させると共に蛍光測定できるのが特徴であり,市販されている蛍光標式プローブを用いて*6*28を解析することとした。

    〈方法〉当院において書面による同意を得られた37人の血液からDNAを抽出して多型解析に用いた。*6は一塩基多型(211G>A)であるためTaqMan法を用いて通常のリアルタイムPCRで解析した。一方,*28はTAの2塩基挿入型多型である。すなわちTATAボックスのTA繰り返しが野生型では6回であるのに対し,*28は7回である。この2塩基の違いをTaqMan法では検出することが出来ないため,*28はInvader法を用いて解析を行った。その際,リアルタイムPCR装置は蛍光リーダーとして利用した。本法の正確性を検証するため,従来法であるダイレクトシークエンス法で塩基配列を確認した。

    〈結果〉Smart Cycler II Systemを用いた場合でもInvader法による多型解析を行うことが出来たため,1台の装置で*6*28の両多型を解析することが可能であった。TaqMan法で*6を解析した結果は,ホモ型1人,ヘテロ型12人であり,Invader法で*28を解析した結果は,ホモ型4人,ヘテロ型10人であった。ダイレクトシークエンス法では,今回の方法で判定した*6のホモ型はピーク波形がAを示しており,ヘテロ型はGとAの波形が重なっていた。また*28のホモ型はTAの繰り返しが7回であり,ヘテロ型は波形が2塩基ずつずれていた。今回検討した方法とダイレクトシークエンス法の結果は100%一致した。

    〈考察〉Smart Cycler II Systemを用いて*6*28を解析する手法を確立した。解析に要する時間は5時間であるが,実際の作業時間は1時間であり,薬剤師が通常の業務を行いながらでも解析が可能であった。一方,本邦では多型解析の保険適応が認められていないために,解析費用の負担が問題となる。しかし本法で要する費用は2,000円/サンプルであり,これは重篤な副作用が起きることを想定したときの経済的損失や患者のQuality of Lifeを考えると十分な費用対効果が得られると考える。実地臨床の多くは医師が経験的にCPT-11の投与量を調節しているのが現状であり,多型解析に基づいた投与量設定が行われるケースは少ない。このような背景の中,自施設で簡便,迅速,安価に多型解析を行うことが出来るようになった意義は大きい。
  • 熊田 克幸, 桑原 清人, 柴田 由美, 白川 舞, 堀田 宏, 近澤 豊
    セッションID: 2J275
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉近年、オーダリングシステムや電子カルテシステムの導入によってコンピュータ端末がより身近な存在となり、院内ネットワークを利用することで医薬品情報をはじめ様々な情報を共有することが可能になった。しかし、最新の情報を提供するためには、医薬品情報の頻回にわたる更新、膨大な労力と時間、コストの問題からも難しい状況にある。  その配信方法においても医療従事者が必要とする際にはいつでも最新情報を見慣れた形式で閲覧できるシステムを構築し運用することは非常に有用であると思われる。そこで、今回市販データベースソフトウエアのMicrosoft Access 2003を用い、オーダリングシステム端末上で利用可能な院内電子医薬品集とそれにリンクした添付文書参照システムの構築と運用について検討を試みたので報告する。
    〈方法〉1.医薬品集の機能・項目の検討
    簡便な操作性、必要最小限な機能、シンプルな表示とし薬品検索は医薬品の商品名または一般名の一部を入力することで可能にした。   検索薬品表示後にはワンクリックで情報の印刷や同効薬品の表示および各製薬会社から提供される医薬品添付文書のPDFファイルを表示する。
    2.利用可能な端末の検討
    医事ネットワーク上のデスクトップ端末103台(オーダリング端末62台、レセプト端末28台、看護システム端末7台、事務用端末6台)。OSはすべてMicrosoft Windows XP Professional SP2である。
    3.利用端末における更新方法の検討
    各端末における更新は、メンテナンスフリーにするために端末起動時または24時間毎に操作の必要なしで自動に更新されたファイルをダウンロードしサーバーと同期する。
    4.医薬品情報の更新・チェック機能の検討
    情報更新はサーバー上で随時行い、医薬品添付文書のPDFファイルは、各製薬会社の提供または医薬品医療機器情報提供ホームページよりダウンロードしサーバー上のファイルを更新する。添付文書改訂情報はインフォコム社の医薬品データベースDICSを利用し更新をチェックする。
    〈結果〉日常業務の中で検索したい医薬品情報は医薬品集に掲載されている薬品の効能・効果や用法・用量であることが多い為、その内容を短時間で検索し充分理解できることが重要である。また、その内容では不十分な際、より根拠に基づく詳細情報である添付文書の参照が出来るように、電子医薬品集は紙媒体の医薬品集をデータベース化した基本の医薬品情報と医薬品添付文書PDFファイルの2段階とした。また、薬効分類は実務に使用できる分類がないため、当院で細分化し同効薬品の検索および表示に利用した。
     医薬品情報の更新や添付文書の改訂は不定期に案内があるうえ、随時行う必要があり平成19年度は当院採用1,362品目のうち815品目の添付文書改訂があったがチェック機能により更新時期を容易に把握することができた。また、各端末はサーバー上のファイルを参照するのではなく任意にファイルをダウンロードして使用できるため、常時ネットワークに接続していないモバイル端末でも使用可能であり、複数の端末での同時使用やメンテナンス中にも制約を受けることなく使用できる。今後、電子医薬品集の需要も高まることが予想され、電子医薬品集の機能向上を図ることが重要である。
  • 百瀬 羽津子, 倉林 誠, 車塚 千穂, 上村 怜奈, 後藤 美幸, 佐藤 弘康, 佐藤 公人, 田村 広志, 下山 光一
    セッションID: 2J276
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    緒言
    近年、入院患者の持参薬の取扱いはリスクマネジメント、薬剤の有効活用などの面から重要な課題である。薬剤師が入院時に持参薬の識別を行うことは誤薬の防止、相互作用回避などの点でリスクマネジメントの向上につながると考えられる。
    従来、当院では薬剤師の人員不足並びに持参薬に関する業務手順の未確立から、看護師主導で識別業務が行われていた。実際、入院患者の多くは複数の診療科及び複数の医療機関の薬剤を服用しており、ジェネリック医薬品の普及もあり、識別業務は複雑さを増してきていた。このことが識別業務の主体であった看護師の負担増加になり、その結果、医療安全上の弊害となっていた。当院では平成19年初めより、持参薬に関わる問題解決のために医療安全推進委員会において小委員会を設置し、持参薬に関する院内統一ルールの作成、運用に向け活動を始め、同年8月から運用を開始した。 現在の持参薬に関する当院薬剤科の業務実態を調査した結果と、薬剤師が関与することによる成果について報告する。
    方法
    調査期間中に持参薬識別を依頼された全件を対象として「持参薬識別業務 実態調査票」を記入した。主な記入内容は以下の通りである。
    「内容情報」・・・識別総剤数、処方元情報、添付情報の有無、外部への照会の有無など。
    「処理情報」・・・受理時刻、識別開始時刻、識別完了時刻、識別者など。
    「リスクマネジメント貢献情報」・・・識別業務により発覚した問題点を具体的に記入。
    調査期間は平成19年8月~平成20年3月である。ただし、「リスクマネジメント貢献情報」の記入は平成19年11月からである。
    結果
    持参薬識別業務開始前は識別依頼が月平均5.3件であったが開始後は月平均80.5件となり、依頼日、依頼病棟に偏りがみられた。識別所要時間は1件あたり約30分であったが、実際には1分から2時間を超えるものまで様々であり、剤数や添付情報の有無などにより差がみられた。1件あたりの識別剤数は平均7.6剤であった。また、73.8%が持参薬に対する何らかの情報が記載された紙を持参していたが、10.7%に外部施設へ照会する必要が生じた。入院時持参薬を薬剤師が識別することによる成果として、持参薬識別実態調査票の「リスクマネジメント貢献情報」には36件(全識別依頼件数の約9%)の記載があり、そのうちの11件について日本病院薬剤師会にプレアボイド報告を行った。
    考察
    入院時持参薬識別業務の有用性を判断する指標としてリスク回避事例が挙げられる。当院でも実際に様々なリスク回避がなされ、一応の成果をあげられていると考えられる。 長期投与原則解禁並びにジェネリック医薬品導入促進などの医療環境の変化によって、入院時持参薬は以前に比べて多種多様となっている。専門職である薬剤師の持参薬識別は相互作用や重複投与の回避、持参薬の服用終了予定日提示による服薬中断の回避などチーム医療としての質を高めるとともに持参薬の有効活用にもつながっていくものと推察される。
  • 久我 貴之, 菅 淳, 原田 栄二郎, 山下 晃正, 藤井 康宏, 須田 博喜
    セッションID: 2J277
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    胃癌患者の治療方針決定には従来より内視鏡検査、上部消化管透視検査およびCT検査が行われている。内視鏡検査では組織学的検査が行われ必須である。透視検査は癌、特にスキルス癌の浸潤範囲など術式決定に有用である。しかしながら透視検査ではバリウムなどの造影剤の飲用もしくはチューブからの注入が必要である。CT検査では主に転移、浸潤等の診断が行われている。今回我々は64列MDCTの性能の向上により2例の脳疾患合併胃癌患者において透視検査の代役としてCT検査(CT gastrography (以下CTG))を用いたのでその結果を報告する。[手技]_丸1_患者に経鼻胃管を挿入し胃内容を十分吸引する。_丸2_禁忌でなければブスコパン注を施行する。_丸3_胃管より空気を注入しクランプ状態でCTを撮影する[症例1]70歳代女性。両側脳梗塞で寝たきりでEDチューブよりの経腸栄養状態であった。EDチューブからの注入不良のため胃内視鏡検査施行され胃癌と診断。透視検査の代わりにCTG施行。幽門狭窄を伴う前庭部腫瘤と診断。幽門側胃切除術(Roux-en Y再建)および残胃胃ろう造設術施行。T3N1P1CY1H0, StageIV。術後S-1化学療法を施行するも術後5ヶ月で癌死。[症例2]80歳代女性。脳腫瘍術後近医より上腹部痛で紹介され貧血を認めた。胃内視鏡検査で胃癌と診断。CTG施行。幽門狭窄を伴う胃前庭部腫瘤と診断。LADG施行。T2N1H0P0CY0, StageII。補助療法なく術後再発なく1年以上生存中。[まとめ]農村地域では高齢化が進み脳疾患合併患者が多い。近年、MDCTの進歩によりCT colonographyが普及しつつある。一方、CTによる胃透視の報告は少ない。検査の意義として_丸1_拾い上げ診断検査と_丸2_精密検査としての側面がある。前者では進行癌の描出率は高く、4型癌でも優れている。早期癌では多少低いものの75%陽性率との報告もある。後者としては早期診断の精度は低いが、多臓器への浸潤やリンパ節腫大の情報も得られ正確なstage診断能を得られる。本方法はチューブ留置下空気注入のみで良い為、_丸1_前処置が絶食のみでよい、_丸2_誤嚥性肺炎が少ない、_丸3_外観、内腔面、周囲組織との関係が同時にわかる、_丸4_特に幽門狭窄例など前庭部病変に有用、_丸5_poor risk症例でも可能などの利点がある。欠点としては_丸1_CTによる被爆の問題、_丸2_早期癌における微細な描出困難、_丸3_組織診断は不可能などである。今後器機・ソフトの開発や症例の蓄積による手技等の向上により発展の可能性がある。今回症例を呈示しその有用性について報告する。
  • 水草  貴久, 鈴木 荘太郎, 渡邊 一弘, 清水 靖子, 大野 泰良, 川崎 浩伸, 高橋 日出美, 右納 隆, 塚本 達夫
    セッションID: 2J278
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    C型慢性肝炎に対するPEG-IFNα-2a単独長期投与についての検討
      キーワード:C型慢性肝炎, PEG-IFNα-2a, 長期投与
    <はじめに>
    ペグ-インターフェロン(PEG-IFN)製剤の登場以来、リバビリンとの併用療法によってC型慢性肝炎に対する治療成績は飛躍的にアップしてきているが、高齢者や腎不全などの患者はこの併用療法を施行できなかったり、併用療法を開始したとしても溶血性貧血などの副作用によって途中でリタイアせざるを得なかったりする症例が少なからず存在する。
    近年、難治性C型慢性肝炎患者に対してIFN単独でも長期投与することによってALT値をできるだけ低くコントロールし続けると、ウイルスの完全排除(Suは出来なくとも肝硬変や肝がんへの移行を抑制できることが報告されてきている。
    そこで当院ではPEG-IFNとリバビリン併用療法が施行できない症例に対して、PEG-IFNα-2a単独にて2年間以上の長期継続投与を施行し、良好な成績が得られたのでここに報告する。
    <対象と方法>
    PEG-IFNとリバビリンの併用療法不可と判定された43~73歳の高ウイルス量C型慢性肝炎患者10名(男4名、女6名)に対して、PEG-IFNα-2aを90または180μg単独で毎週(2名は隔週)にて継続投与した。
    <結 果>
    2008年4月現在までに、無効(NR)1名、HCV-RNA は陽性のままだがALT正常化(BVR)しているもの2名、投与開始12週までにHCV-RNA陰性化(EVR)したもの1名、あとの6名は投与開始12週以降にHCV-RNA陰性化(LVR)している。EVRの症例は2年間で投与終了したが、その後の再燃なく6ヶ月経過(SVR)している。LVRのうち1名は希望により投与終了したが、1か月で再燃したため再投与を開始している。NRの1名とSVRの1名を除いた8名は投与継続中である。投与期間中すべての症例で好中球や血小板の低下などの副作用による中止例はなく、180μg⇒90μgへの減量にて対応し継続している。全身倦怠感やうつなどの症状を訴える例もほとんどなく、これにより中止した症例もなかった。また投与中にALTが50~200 IU/Lと上昇をきたす例があったが、黄疸はなく持続的なものでもないため投与量を減量することなく継続した。これらの症例ではHCV-RNAは陰性のままであった。
    <考 察>
    高齢者のIb高ウイルス症例では、リバビリンとの併用療法が施行できない例も多く、グリチルリチン配合剤の注射は週2回~連日と頻回な投与が必要となる為、定期的な来院を継続するのが困難となる場合もある。その点 PEG-IFNα2a単独によるIFN療法は週1回の来院で済み、従来のIFN製剤と比べ副作用も少ないため長期投与に適した治療法であり、肝硬変への進展や肝がん発生を抑制する意味で非常に有用性の高い治療法といえよう。
  • 直腸内反転による検討
    安達 亙, 小松  修, 岸本 恭, 塩澤 秀樹
    セッションID: 2J279
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉
    見落としのない大腸内視鏡検査は重要であり、下部直腸・肛門管の正確な観察には直腸内反転が必要である。しかし、多数の健常者で直腸内反転を行って同部位を観察した報告は少ない。健常人における下部直腸・肛門管病変の頻度および特徴を明らかにする目的で、ほぼ健常人と思われる人間ドック受診者で直腸内反転を行い検討した。
    〈対象および方法〉
    2006年5月から2007年4月までの1年間に当院の1泊人間ドックで大腸内視鏡検査(CF)を行った925例中、直腸内でCFを反転した885例を対象とした。男性674例、女性211例、平均年齢57.2±10.7歳であった。
    CF時に直腸内反転を行い下部直腸・肛門管を観察して写真撮影を行い、撮影された写真を再検討して病変を評価した。直腸の上皮性小隆起性病変を直腸ポリープ、十分な送気でも確認される歯状線口側の隆起性病変で暗紫色~赤色~白色を呈し拡張した血管を認める場合が多いものを内痔核、肛門柱下端の肛門乳頭が突出し白色調を呈するものを肥大乳頭と定義した。問診表にて症例の既往歴、症状、排便状況を調査した。
    統計解析にはt検定およびカイ二乗検定を用いた。
    〈結果〉
    1. 下部直腸病変の検討 直腸の反転観察で885例中14例(1.6%)に直腸ポリープを認めた。ポリープ以外の病変は認められなかった。ポリープの大きさは2-3mm 10例、4-6mm 4例、形態は山田2型11例、3型3例であった。内視鏡的には過形成性ポリープ6例、腺腫8例と考えられた。
    2. 肛門管病変の検討 十分に肛門管の観察が可能であった757例中、48例(6.3%)に内痔核を認めた。内痔核陽性例と内痔核陰性例を比較すると、内痔核陽性例は有意に高齢で、男性に多く、症状として出血・脱出が多かった。排便状況を比較したが、排便回数、便の硬さにおいて両症例間で有意差を認めなかった。
    757例中153例(20.2%)に肥大乳頭を認めた。肥大乳頭の数は1個52例、2個38例、3個以上63例、大きさは3mm以下が98例、3-6mmが28例、6mm以上が27例であった。肥大乳頭陽性例と肥大乳頭陰性例を比較すると、肥大乳頭陽性例では疼痛、出血の症状が有意に高頻度であった。排便状況を比較したが、排便回数、便の硬さにおいて両症例間で有意差を認めなかった。
    〈結論〉
    健常人においてCFの反転で観察される下部直腸・肛門管病変の頻度は、直腸ポリープ1.6%、内痔核6.3%、肥大乳頭20.2%であった。直腸ポリープは6mm以下と小さく、内痔核は高齢の男性に多く、出血、脱出を訴える症例が多く、肥大乳頭は多発することが多く、出血、疼痛を訴える症例が多いという特徴を有していた。病変と排便状況との関係は認められなかった。
  • 赤羽 弘充, 高橋 昌宏, 中野 詩朗, 柳田 尚之, 正村 裕紀, 花本 尊之, 久慈 麻里子, 北 健吾, 及川 太, 宮城 久之
    セッションID: 2J280
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】腹水細胞診陽性は胃癌取扱い規約上Stage IVに規定されているが、大腸癌取扱い規約では、腹水細胞診を予後規定因子として評価していない。しかし、腹水細胞診陽性の症例は、いずれ腹膜再発をきたす惧れがあり、腹膜再発症例の予後は不良であることから、予後に影響することが懸念される。
     初回手術時に腹膜転移(P)を認めず、腹水細胞診陽性(Cy1)であった直腸癌の1例を報告し、検討を加えた。
    【症例と経過】初回手術時44歳、女性。
    H14.12月 直腸低位前方切除術を施行。
       病理診断)RS, circ, 65×57mm, tub1, ss, n1, H0, P0, Cy1, M0, Stage IIIa 
        術後、5FU+lLVを施行。
    H15.12月 卵巣腫瘍の診断にて、両側付属器切除術を施行。
       病理診断)転移性腫瘍。直腸癌の転移。
        術後、5’DFUR+PSKの内服。
    H17.12月 右水腎症。PET-CTにて総腸骨動脈周囲リンパ節転移再発。
        mFOLFOX6施行。(計13回)
    H18.12月 子宮癌検診にて細胞診陽性。子宮体癌疑いにて子宮全摘術。開腹時、回腸末端に播種による狭窄を認め、回腸部分切除術を併施。
        病理診断)子宮・回腸とも大腸癌の播種浸潤による。
    H19. 1月 総腸骨動脈周囲リンパ節転移に対して放射線(50Gy)照射。
    H19. 5月 多発肝転移出現。肝動注療法。
    H19. 6月 多発肺転移出現。FOLFIRI開始。
    H19.10月 Oxycodon処方。
    H20. 2月 全身状態悪化し、入院。
    H20. 3月 永眠。(術後5年3ヶ月生存)
    【考察】腹水中の癌細胞が根付いて、腹膜播種を惹起する事は想像に難くない。即ち、Cy1/P0→P1→P2→P3という経過を辿ると仮定すれば、Cy1は重要な予後規定因子になりうる。
    当科における1997年から2006年の大腸癌初回手術症例1093例中、腹水細胞診を提出した251例中24例がCy1であった。このうち腹膜播種のない9例中5例(55.6%)が腹膜再発に至った。
    また、腹膜播種を認めた65例の3年生存率は、P1:40.9%、P2:20.0%、P3:4.2%であり、P3で有意に予後不良であった。P2およびP3には5年生存を認めなかった。
    本症例では、腹膜再発の結果、卵巣転移、子宮および小腸への浸潤を経て、肝転移及び肺転移をきたして、術後5年余りで不幸の転帰を辿った。Cy1が腹膜再発の起点となったことが推測され、結果的には標準的な化学療法によっても阻止できなかった。
    胃癌取扱い規約の改定作業が進んでおり、胃癌においても腹水細胞診の意義の見直しが検討されている。もともとStage IVとされるCy1の胃癌でも予後の良い症例が散見されることから、細胞数や細胞集塊を判定基準に組み込むかどうか検討されている。大腸癌は胃癌に比し、Cy1の予後が良いことから予後規定因子としての評価がなされてこなかったが、大腸癌Cy1症例が腹膜再発に進展する可能性がある以上、症例の蓄積と評価は重要であると考えられる。
    【結語】ここ数年の進行再発大腸癌における化学療法の進歩は著しく、新規抗癌剤や分子標的治療が予後の延長に寄与しているが、標準的な化学療法によって腹膜再発を阻止できなかった腹水細胞診陽性大腸癌の1例を報告した。
  • -21年間の成績をもとに-
    緒方 敬子, 三原 修一, 木場 博幸, 田中 信次, 平尾 真一, 長野 勝広, 本藤 和子, 丸林 徹
    セッションID: 2J281
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    腹部超音波検診のがん検診としての評価 ―21年間の成績をもとにー 緒方敬子(おがたけいこ)・三原修一・木場博幸・ 田中信次・平尾真一・長野勝広・本藤和子・丸林徹 日本赤十字社熊本健康管理センター 腹部超音波検診、がん検診、生存率 我々は、1983年8月から、人間ドックおよび地域・職域集検において肝胆膵腎脾を対象臓器とした上腹部超音波検診を行ってきた。1992年度からは、下腹部検診も行っている。今回、21年間の検診成績を分析し、超音波検診のがん検診としての有用性について報告する。 【方法】現在、施設内では装置8台、集団検診では専用の超音波検診車9台(装置10台)を用いている。スクリーニングは全て技師が行い、全員が本学会の超音波検査士取得をノルマとしている(現在消化器31名、体表17名、泌尿器15名)。画像記録はすべて独自のファイリングシステムで行っており、前回の比較読影も可能なシステムを構築している。装置1台あたりの処理人数は、1時間当たり10名程度を基本としている。 【成績】1)上腹部検診成績:1983年8月から2004年3月までの受診者数は延べ1,391,565名(実質331,899名)で、発見された悪性疾患は肝細胞癌347例(対延べ受診者発見率0.02%)、胆嚢癌146例(0.01%)、膵臓癌122例(0.01%)、腎細胞癌337例(0.02%)、胆管癌43例、膀胱癌123例、腎盂尿管癌18例、前立腺癌62例、転移性肝癌76例など、1,403例(0.1%)であった。肝嚢胞腺癌、肝芽腫、肝血管肉腫、腎カルチノイド、腎悪性リンパ腫、副腎癌など稀有な悪性疾患も発見されている。切除例は肝細胞癌77例(切除率22.2%)、胆嚢癌131例(89.7%)、膵臓癌62例(50.8%)、腎細胞癌332例(98.5%)など、転移性癌および白血病を除く1,313例中858例(65.3%)であった。また、切除例の10年累積生存率は肝細胞癌38.5%(TAE・PEI・MCT・RFA治療例は13.3%)、胆嚢癌83%、膵臓癌37.9%、腎細胞癌96.8%、全悪性疾患88.5%(20年生存率も88.5%)であった。特に腎細胞癌や胆嚢癌は早期発見例が多く、超音波検診が極めて有用な癌と思われた。 2)下腹部検診成績:1992年4月から2004年3月までの下腹部検診受診者数は延べ243,024名(男性132,411名、女性110,613名)で、膀胱癌116例(発見率0.05%)、前立腺癌69例(0.05%)、卵巣癌14例(0.01%)、子宮癌3例、卵管癌1例、計203例(0.08%)の悪性疾患が発見された。特に膀胱癌は、腫瘍径20mm以下の症例が94例(83.1%)を占め、全例が経内視鏡的(TUR-Bt)に切除された。尿潜血陽性例は15%(14/92)、尿細胞診陽性例は8.5%(5/59)であり、膀胱癌早期発見における超音波検診の有用性が示唆された。 【まとめ】腹部超音波検診は、がん検診として極めて有用と思われるが、精度の高い検診を普及していくためには、THI(ティッシュハーモニックイメージング)法やカラードプラ法が可能な高精度機器の整備、検診方法の標準化(記録法、比較読影など)、撮影・読影の精度管理(技師・医師の養成)、適切な医療機関との連携、事後管理システムの整備(精検受診勧奨、精検結果の把握、予後調査など)、検診の評価(がん発見率、早期がん比率、生存率、費用効果分析など)などの課題を克服していくことが重要である。我々は、現在、腹部・乳腺・甲状腺あわせて年間120万人の超音波検診を行っており、今後もその普及にむけて貢献していきたいと考えている。
  • 井平 圭, 新 智文, 松本 隆祐, 菊池 英明
    セッションID: 2J282
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    症例:53歳、男性。 主訴:肝機能異常精査 現病歴: 2007年12月 健康診断で肝胆道系酵素は基準値内であったが、便潜血陽性を指摘され、2008年1月9日 大腸精査目的に当科初診となった。1月29日 大腸ポリペクトミーのために入院となった。初診時にAST 238 IU/l、ALT 162 IU/l、ALP 595 IU/l、γ-GTP 525 IU/l、 T-bil 1.4mg/dlと肝胆道系酵素が上昇していたが、 1月29日にはAST 125 IU/l、ALT 77 IU/l、 ALP 530 IU/l、γ-GTP 412 IU/l、T-bil 0.6mg/dlと改善傾向であったため予定通りポリペクトミーを施行した。2月の外来受診時AST 851 IU/l、ALT 589 IU/l、ALP 504 IU/l、γ-GTP 551 IU/l、T-bil 1.4mg/dlと再増悪したため、原因精査加療目的に当科入院となった。 既往歴:出血性胃潰瘍(43歳)、大腸ポリペクトミー(50歳) 飲酒歴:焼酎2合/日、喫煙歴:50本/日×37年 家族歴:特記すべきことなし 入院後経過:HBs抗原陽性であったがHBV-DNA(PCR)<2.6 logcopy/mlであり、その他各種肝炎ウイルスマーカーも陰性であった。また自己免疫性肝疾患も否定的であり、画像検査にても肝腫大や腫瘍性病変はみられなかった。入院後薬剤の内服歴を詳細に聴取したところ、2007年12月頃から秋ウコン、青汁(ケール)を服用していたことが判明した。健康診断時には肝胆道系酵素は基準値内であり、1月には肝機能異常がみられたことより秋ウコン、青汁による肝障害が強く疑われ、これらの服用を中止させた。入院第4病日に施行した肝生検では、グリソン鞘にリンパ球浸潤と多核白血球浸潤があり、また軽度にpiecemeal necrosisを認めた。さらに小葉内にはfocalな肝細胞壊死とリンパ球・多核白血球浸潤が散見し、肝細胞内や毛細胆管内に胆汁色素の貯留が認められた。これらの所見は薬物性肝障害としても矛盾しないと考えられた。またこれらに対するDLST(薬剤リンパ球刺激試験)を行い、青汁で陽性反応を認めた。以上より、青汁による薬物性肝障害と診断した。青汁の服用中止後も胆道系酵素が遷延したため、入院第9病日よりUDCA 600mgを開始した。その後は改善傾向がみられた、入院第13病日に退院とし外来経過観察としている。 考察:近年多くの健康食品が販売され、テレビ、インターネット等を通じて容易に入手できるようになったが、それに伴って健康被害も多数報告されるようになった。肝機能異常をもたらす健康食品としては、ウコン、アガリクス、プロポリス、クロレラ等多数知られているが、青汁(ケール)による報告は少ない。健康食品は、患者本人や家族が「薬物」と認識していないケースが多いため、その服用歴は見落とされがちである。原因不明の肝機能異常においては、青汁を含めた健康食品の服用歴を詳細に聴取することが重要である。
  • 北瀬 悠磨, 坂本 昌彦, 城所 博之, 久保田 哲夫, 加藤 有一, 宮島 雄二, 小川 昭正, 久野 邦義, 棚野 晃秀, 堀澤 稔
    セッションID: 2J283
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    1例目は2ヵ月男児。朝から嘔吐と哺乳不良が出現し、近隣の総合病院を受診。胃腸炎及び脱水症の診断で入院治療を開始したが所見改善せず。入院当日深夜に緑色嘔吐と意識障害、痙攣を認めたため当院紹介入院となった。診察上腹部膨満あり、レントゲンでは局所的に拡張した腸管を認めたが、他疾患と比べ特徴的な画像所見であった。超音波検査では腹水を認めた。血液検査ではHb 5.8g/dlの高度貧血と126mEq/Lの低Na血症あり、腹部造影CTでは腸管の拡張および腸管内容物の沈殿を認めた。絞扼性イレウスと判断し緊急手術を施行した。回盲部から約80cmでの腸間膜欠損と欠損部への回腸嵌頓・捻転による腸管壊死を認めた。同部の絞扼腸管切除を施行した。術後経過良好にて術後14日目に退院となった。
    2例目は1カ月男児。朝から突然の嘔吐、活気不良あり当院を受診した。血液検査を施行したところHb 7.5g/dlと貧血を認め、腹部レントゲンでは1例目と同様にやや特徴的な腸管拡張所見を認めた。超音波検査では腸管拡張所見以外特記すべき所見を認めず、上部消化管造影検査では中腸軸捻転は否定的であった。全身状態不良で絞扼性イレウスによるプレショックの可能性を考慮し緊急手術を施行した。開腹したところ回盲部から110cmでの腸間膜部分欠損と同部への小腸嵌入、絞扼を認めた。同疾患による絞扼イレウスと診断し、同部切除を施行した。術後経過は順調で術後13日目に退院となった。
    内ヘルニアはイレウス全体の0.01~5%で、そのうち腸間膜裂孔ヘルニアは50%である。小児が約1/3で、多くは1歳未満の発症である。男女差はないが、発症年齢が若いほど診断が遅れて重症化しやすく、多くは腸管切除を要する。本症例も2例とも比較的早期に手術に踏み切ることができたが、いずれも腸管切除を要した。当疾患は頻度は少ないながらも緊急を要する疾患であり、小児では死亡例も報告されている。一方で最近の画像診断の進歩にもかかわらず特徴的な所見に乏しく、急性の経過をたどることから依然として術前診断が困難とされている。急速に増悪する急性腹症では本症を念頭に置いた迅速な対応が必要であり、今回若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 高木 理光, 橋本 英久, 日比 英彰, 平松 達, 野田 秀樹, 藤野 明俊, 齋藤 公志郎
    セッションID: 2J284
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    〈緒言〉 従来より、急性腹症における超音波検査の有用性が多数報告されている。中でも消化管疾患における超音波検査の有用性についての報告は近年よく目にするところである。当院においても近年3年間の急性腹症の超音波検査時における消化管疾患の割合は約77%にのぼる。また消化管症状の無い腹部超音波検査において偶発的に消化管疾患が見つかった症例が全消化管疾患件数のうち23%を占める。  消化管エコーにおいて理論的には、その周囲に全く音響陰影の無い胸部食道以外の消化管は描出可能である。そのうち空腸と回腸を除く部位では、その同定も含めた系統的走査を行うようにしている。これは川崎医科大学の畠二郎氏が推奨する消化管系統的走査法であり、消化管の固定点を意識して通常のルーチン検査では腹部食道から胃・十二指腸を、さらに回腸末端部から直腸を連続的に走査し、最後に小腸を中心に観察するものである。スクリーニングを目的とする場合これらに要する時間は手技の習熟により3分前後であり、実質臓器の観察に追加して行なう事で種々の疾患が検出されることも多く、是非試みられるべきと考える。  今回我々は腹部超音波検査において、十二指腸潰瘍時に呈するエコーパターンの検討を試みたので報告する。 〈症例〉 1)十二指腸球部に潰瘍底および白苔エコーを認め、潰瘍周囲から十二指腸下行部の壁肥厚を認めた。GIFの結果、エコー所見と同様に十二指腸潰瘍を認めた。 2)十二指腸下行部に壁肥厚を認めた。潰瘍の存在は描出できなかった。GIFの結果、十二指腸球部に潰瘍を認めた。 3)十二指腸下行部に壁肥厚を認めた。GIFの結果、異常なしであった。 4)十二指腸下行部に壁肥厚を認めた。GIFの結果、十二指腸潰瘍瘢痕であった。 〈考察〉 十二指腸潰瘍のエコーパターンは、潰瘍部の壁肥厚および白苔エコー(潰瘍自体の存在)とその周囲の炎症を反映する浮腫性壁肥厚とされている。正常例において十二指腸壁は非常に薄い壁として描出される。検査時の条件が悪く潰瘍自体の描出が困難であった場合でも壁肥厚像を拾い上げることで潰瘍の存在を疑う所見に成り得ると考えられた。 〈結語〉 今回我々は腹部超音波検査において、十二指腸潰瘍時の十二指腸壁のエコーパターンの検討を試みた。 超音波検査において潰瘍そのものの存在を指摘できれば診断は容易であるが、潰瘍時の2次的所見としての十二指腸壁肥厚の所見を拾い上げることにより潰瘍の存在を強く疑うことが出来るのではないかと思われた。また、十二指腸壁肥厚を認めた場合でも、潰瘍が存在しないこともあり、壁肥厚のエコーパターンをよく観察し判断することが重要であると思われた。 十二指腸潰瘍のエコーパターンの検討を今後も続けていき
  • 安田 康紀, 大河内 昌弘, 本田 浩一, 馬場 卓也, 近藤 好博, 加藤 幸正, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: 2J285
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    糖尿病患者の究極の治療目標は、糖尿病細小血管合併症・大血管合併症の発症・進展を阻止し、健常人と変わらない日常生活の質の維持・寿命の確保であるが、その目標を達成するためには、薬物・運動療法に加えて、食事療法が重要であることは言うまでもない。最近、糖尿病患者の食後高血糖が、糖尿病性心血管合併症と密接に関連し、食後血糖が高いほど、糖尿病性心血管合併症を発症しやすいことが示されてきている。食後血糖値の上昇幅を表す指標として、Glycemic Index(GI)が知られており、GI値が高い食品ほど食後高血糖が上昇しやすい。多くの日本人が主食としている白米は、GI値が高いのに対し、玄米や発芽玄米はGI値が低く、食後の血糖上昇が低いことが知られている。また、発芽玄米の更なる利点は、発芽玄米が、白米、玄米に比べて、糖尿病ラットの神経伝導速度および尿蛋白漏出量を著明に改善するとの最近の報告から、糖尿病患者の神経症・腎症を予防できる可能性が示されてきていることにある。発芽玄米は、玄米を水に浸してほんの少し発芽させたお米であり、発芽によって眠っていた酵素が活性化し、新芽の成長に必要な栄養素が増加する特徴があり、-アミノ酪酸や抗酸化成分などが、白米、玄米に比べて豊富に含まれる。 そこで、我々は、発芽玄米食に注目し、入院中の糖尿病患者の食事療法に発芽玄米食を取り入れた処、糖尿病コントロールが劇的に改善し、著明なインスリン注射単位数の節減効果をもたらすことが出来た症例を経験したので報告する。症例は、54歳女性、身長157cm、体重58kg、BMI 21.6kg/m2。うつ病で、当院精神科にH19年4/19に入院となった。糖尿病は、10年程前から指摘されており、入院前は、ノボラピッド朝10, 昼10, 夕8単位+ペンフィルN眠前12単位 の4回注(計40単位)でHbA1c8.6%と糖尿病コントロール不良であった。尿中C-peptide3.6μg/dayと内因性インスリン分泌は低値であった。糖尿病性網膜症・腎症・神経症は認めず、肝臓にも異常を認めなかった。糖尿病コントロール不良のため、入院時H19年4/19より、ヒューマログ朝14, 昼14, 夕14単位+ペンフィルN朝16, 眠前16単位 の5回注(計74単位)に変更したところ、毎食前血糖値100-130mg/dl, HbA1c5.6%と安定し、その後3ヶ月間血糖コントロールは安定して経過した。その後、注射回数が少ない方がよいとの患者の希望があり、H19年7/4より、ヒューマログ50mix朝16, 昼16, 夕14単位の3回注(計46単位)に変更したが、食前血糖値100-130mg/dl, HbA1c5.3%と、半年間、安定して経過した。その後も本人の血糖コントロールに対する意欲が高かったため、H20年1/11より、食事療法として、白米から発芽玄米食に変更したが、食事カロリー(1520kcal)はそのままとした。また、その他の治療方法は、精神科薬も含めて、全く変更しなかった。そうした処、発芽玄米食に変更以降、毎食前血糖値が急激に下がり始め、インスリンの減量を頻回に必要とするようになり、H20年2/5には、ヒューマログ50mix朝12, 昼6, 夕8単位の3回注(計26単位)で、食前血糖値70-110mg/dl, HbA1c4.9%、4/23には、ヒューマログ50mix朝10, 昼2, 夕6単位の3回注(計18単位)で、食前血糖値80-110mg/dl, HbA1c4.7%と、インスリンの必要単位数の激減に加えて、血糖コントロールの更なる改善が得られた。インスリン抗体等の低血糖を起こす要因は認めず、発芽玄米食摂取が、血糖コンロールの著明な改善を促し、インスリン注射単位数の劇的な節減効果をもたらした貴重な一例と考えられた。
  • 荻原 毅, 佐々木 宏子, 菊池 重忠, 佐藤 アイコ, 上原 信吾, 高見沢 将, 井出 晴子, 中田 未和子, 畠山 敏雄
    セッションID: 2J286
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    [はじめに]  当院脳ドックでは、1992年の開始当初より検査項目のひとつとして頸動脈超音波検査を実施しており、そのさい同時に甲状腺スクリーニングも行っている。今回、我々は脳ドックでの甲状腺超音波スクリーニングの有用性について検討したので報告する。
    [対象および方法]  対象は1992年12月から2007年3月までの間に当院脳ドックを受診した延べ5642名、複数回受診者を除いた実質4338名(男性 2657名・女性 1681名)である。使用した超音波診断装置は東芝メディカル社製SSA-550S Nemio、SSA-770A Aplio、PV-6000、およびGE横川社製 RT-Fino、Logic 500MDで探触子は7MHz~12MHzのリニア型を使用し、頸動脈検査時に甲状腺スクリーニングもおこなった。要精密検査所見としては (1)腫瘤性病変としては3cm以上の充実性腫瘤、および3cm未満でも日本超音波医学会の甲状腺結節超音波診断基準を参考に悪性が疑われる腫瘤とした。 (2)び慢性疾患を疑う所見としては甲状腺の腫大・委縮、内部エコーレベルの低下・不均一とした。
    [結果]  (1) 悪性を疑わせる腫瘤像にて要精検となったのは101例(要精検率 2.33%)で、このうち79例が精検を受診した(精検受診率 78.2%)。精検として穿刺吸引細胞診が施行されたものは47例で、この中から17例の甲状腺癌が発見された(発見率 0.39%、男性 6例・女性 11例)。治療としては、全例に甲状腺切除術が施行された。当院で精査・治療された13例について検討すると腫瘤の大きさは5~18mm、組織学的には高分化型乳頭癌が10例、中分化型乳頭癌が2例、濾胞型乳頭癌が1例であった。TNM分類ではT1:8例、T2:2例、T3:1例、T4:2例、N0:8例、N1:5例、M0:13例であり、全例無再発生存中(最長 17年)である。(2)び慢性甲状腺疾患が疑われ要精検となったのは101例 (要精検率2.33%)で、うち45例が精検を受診した(精検受診率 44.6%)。この中からバセドー病 5例(発見率 0.12%)、慢性甲状腺炎15例(発見率 0.35%)が発見され治療・経過観察等がなされている。
    [考察]  一般に腹部超音波検診における悪性疾患の発見率は0.047~0.23%といわれており、当院人間ドックでの発見率も0.092%である。これに比べ甲状腺超音波スクリーニングでの癌発見率は0.39%と高く有用と考えられた。また、癌のみでなくバセドー病等のび慢性甲状腺疾患も発見され治療・経過観察等がなされている。甲状腺腫瘤の精検は、一般的には穿刺吸引細胞診によって行われる。今回の検討では穿刺吸引細胞診が施行されたものは47例(59.5%)と少なかった。これは腫瘤が小さいことなどが要因として考えられ、超音波による経過観察が行われた。しかし、甲状腺癌の多くは、比較的発育が遅く、長期間大きさが変化しない可能性もある。精検での穿刺吸引細胞診の施行率をあげることにより甲状腺癌の発見率もさらに増える可能性も考えら、今後の課題と思われた。
    [結語]  脳ドックでの超音波による甲状腺スクリーニングで甲状腺乳頭癌17例(0.39%)バセドー病5例、慢性甲状腺炎15例が発見された。脳ドックでの甲状腺スクリーニングは有用であると考えられた。
  • -人間ドックを対象とした血圧、空腹時血糖と脈波伝播速度の関連-
    浅野 善文, 菊地 孝哉, 佐藤 義昭, 杉田 暁大, 中西 徹
    セッションID: 2J287
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    (緒言)
    血圧、空腹時血糖は、動脈硬化性疾患のハイリスクグループとされているメタボリックシンドロームの診断基準にも組み込まれ、医療現場はもとより予防医学を目的とした健診活動においても重要視されている。年齢階級別に見ると、高年齢になるにしたがい高血圧、糖尿病、及びその予備軍の割合が増加傾向にある。一方比較的若い年代層の急性冠疾患などは、高率に糖尿病者が占めている。そこで今回我々は壮・中年層における血圧、空腹時血糖の動脈硬化への影響を脈波伝播速度との関連で検討したので報告する。
    (対象及び方法)
    対象:平成17年6月から平成20年3月の期間に、人間ドックにて血圧、空腹時血糖(以下FBS)と脈波伝播速度測定を同時に行うことが出来た35才から64才までの1001名(男性563名、女性438名、平均年齢51.8±6.7才)を対象とした。
    方法:脈波伝播速度測定は、上腕と足首から算出(以下baPWV)し、血圧、空腹時血糖(以下FBS)のパラメーターを用い、1.baPWVを目的変数とした重回帰分析、2.収縮期血圧(以下SBP)、FBSとbaPWVの相関、3.正常耐糖能(以下NGT)群、空腹時血糖異常(以下IFG)群、糖尿病型(以下DM)群の正常血圧(以下NT)群と高血圧(以下NT)群のbaPWVの比較を行った。
    (結果)
    1.baPWVを目的変数とした重回帰分析では、SBP、年齢が最も影響力が大きく、FBS、体容量指数、尿酸値も説明変数として採択された。2.baPWVとSBP、FBSとはそれぞれr=0.643(p<0.0001)、r=0.201(p<0.0001)と有意な正の直線性の相関が見られた。3.baPWVはNGT群のNT群では平均1352±157cm/sec.、HT群では平均1601±244cm/sec.であった。同様にIFGのNTは1465±208、HTは1680±204、DMのNTは1443±161、HTは1744±289であった。また、いずれもNT群とHT群では有意の差が見られた。
    (考察)
    今回、動脈硬化への断面成績を用いたアプローチではあるが、壮・中年層の血圧、空腹時血糖とbaPWVの関連を見た。baPWVは血圧と強い相関性があり、動脈壁硬化に加え血管のコンプライアンスの影響も否定できなかった。また、FBSとは弱いものの相関が見られ、インスリン抵抗性とbaPWVの関連が想定された。baPWVはIFGの段階より高くなり、HT合併によりさらに高値になる事より、血圧が動脈硬化進展を助長しているものと思われた。40才代の心筋梗塞例には30~45%に糖尿病が合併すると言う報告もあり、心血管イベント発症前に、より早期に診断し、その危険因子を管理することが必要と思われた。
    (結語)
    壮・中年期の血圧、空腹時血糖値は、年齢、肥満、尿酸などの危険因子とともに動脈硬化の一指標になり得ると考えられた。
  • 第3報:年度別血清TSH異常者の変動
    佐藤 繁樹, 佐々木 沙耶, 西井 由貴, 飯田 健一, 紅粉 睦男, 真尾 泰夫
    セッションID: 2J288
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉 当院人間ドックでは2005年度よりドック受診者全員に甲状腺刺激ホルモン(TSH)測定を実施し甲状腺機能障害を早期に発見し、専門医による的確な治療を行うよう勤めてきた。 我々は、第55回本学会において2005年度の当院人間ドック受診者について、男女別血清TSH分布、男女別基準値の算出、血清TSH異常者の年齢分布及び男女比較の検討を行い報告した。また、昨年の第56回本学会では2005年度の当院人間ドック受診者におけるTSH異常者の頻度および精密検査受診者の解析を行い報告した。そこで今回は、2005年4月~2008年1月までの年度別血清TSH基準値及びTSH異常者の頻度・変動について検討したので報告する。 〈方法〉 調査対象は、当院人間ドック受診者で、2005年度16,664名(男10,330名、女6,334名、平均年齢:男52.3、女51.5歳)、2006年度16,693名(男10,339名、女6,354名、平均年齢:男52.5、女51.8歳)、 2007年4月~2008年1月13,894名(男8,736名、女5,158名、平均年齢:男52.6、女52.5歳)。について以下の検討を行った。 1.血清TSH基準値の年度別、男女別の比較 2.年度別血清TSH高値および低値者の頻度 血清TSHの測定は、CLIA法(化学発光免疫測定法)である、アボット社ARCHITECTアナライザー専用試薬「アーキテクト・TSH」を使用した。 血清TSH基準値の算出は、測定値を対数変換し正規分布とした後、±3SDを越える測定値を反復切断し95%(±1.96SD)の範囲を基準値とした。 〈結果〉 1.年度別人間ドック受信者の男女別の年齢分布に差はなかった。 2.年度別基準値:全体で2005年度0.36~3.67、2006年度0.41~3.81、2007年度0.38~4.00μU/ml。男性:0.35~3.31 、0.39~3.45、0.37~3.48 、女性0.41~4.16 、0.46~4.27、0.46~4.25μU/mlで全ての年度で女性が有意(P<0.01)に高かった。 3.TSH低値者(0.10μU/ml未満)の頻度:男性2005年度0.54%、2006年度0.38%、2007年度0.45%、女性1.03、0.88、0.89%で女性が男性の約2倍であった。TSH高値者で5.0μU/ml以上:男性1.26、1.39、1.32%、女性1.74、1.79、1.69%で女性がやや多かった。10.0μU/ml以上:男性0.34、0.22、0.27%、女性0.28、0.24、0.21%で男女差は少なかった。 4.TSH異常者の年度変動:2005年度で40歳以下女性の0.10μU/ml未満が高頻度(1.8%)を示した以外は大きな変化は無かった。 〈考察〉 血清TSH基準値は男性より女性が高い性差を認めた。TSH 0.10μU/ml未満の低値者は、女性が男性の約2倍であった。TSH高値者は年齢が高くなるにしたがって増加し、特に男性の71歳以上が多かった。 甲状腺機能異常の頻度は比較的高く、経年的にみても同様の傾向であった。甲状腺機能障害を早期に発見し、的確な診断と治療を行うことで患者様のQOLを高める事が可能で、人間ドックに血清TSH測定を導入する意義は高いと思われる。また、血清TSH異常者の精検受診率を上げ早期に治療を促すことが必要と考える。
  • 深澤 洋, 黒田 裕久, 佐藤 匡美, 山田 信博
    セッションID: 2J289
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
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    (緒言)原発性アルドステロン症(PA)は稀な疾患とされてきたが、近年、高血圧患者の5-10%がPAとする報告が多い。副腎偶発腫瘍のうち、腫瘍からのコルチゾール自立性分泌を有するにも関わらず、クッシング症候群に特徴的な症候を欠如する病態を、プレクリニカルクッシング症候群(PreCS)と呼び、その頻度は副腎偶発腫瘍の約8-10%を占めるとされている。今回、われわれはPAとPreCSとの合併例を経験したので報告する。
    (症例)61歳、男性。主訴:腹痛。既往歴:大腸ポリープ、大腸憩室、前立腺癌(ホルモン療法中)。現病歴:50歳からの高血圧にて某医にて加療中。H19 腹痛を主訴に近医を受診し、腹部CTにて、左副腎腫大を認めたが、症状はなく経過観察されていた。徐々に腹痛が増強にて、H19/10 腹部CTが再検され、左副腎腫瘍は22mm大とやや増大傾向あり、H19/12 内分泌学的精査の目的に当科に紹介。入院時現症:BP 169/113mmHg,脈拍 90/m。明らかなクッシング徴候を認めなかった。検査所見にて、血清Kは3.3-3.4mEq/lと軽度低下。尿中アルドステロン濃度(6μg/日), 血漿アルドステロン濃度(PAC)は高値(86.2pg/ml), 血漿レニン活性(PRA)は0.1 ng/ml/hr以下、ARR 862と高値、立位フロセミド負荷試験では、PRAは120分値が1.0以下、カプトリル負荷試験では、PACは負荷後60分値が負荷前に比較し、20%以上の減少を認めなかった。血中および尿中カテコールアミンはいずれも正常範囲内。腹部エコーにて、10-12mmの左副腎腫瘍を認め、腹部CTにて、径22mmの左副腎腫瘍を認めた。以上にて、PAが疑われ、副腎静脈サンプリング検査など更なる精査が必要にて、筑波大学 代謝内科に転院となった。75gOGTTでは、境界型糖尿病も認めた。
    (経過および結果)副腎静脈サンプリング施行にて、左副腎から有意のアルドステロン高値を認めた。血清コルチゾールおよびACTHの日内変動は喪失しており、血清ACTHは抑制されていた。1mgおよび8mgのデキサメサゾン抑制試験でも、血清コルチゾールはそれぞれ0.1および0.3μg/dlと抑制を認めなかった。以上より、PreCSも合併のPAと診断された。現在、血清Kは3.9-5.1mEq/lと正常範囲内、血圧は降圧剤の服用にて、BP 136-91/79-63正常範囲を維持されており、また腹痛も認めていない。PAの薬物療法も手術に並んで有効である可能性があると報告もあり、本例においても、今後保存療法にて、慎重な経過観察となった。
  • 安全・安楽なシャワー浴を目指して
    村田 朋恵, 菅野 昌子, 杉本 美樹子
    セッションID: 2J290
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    _I_.序論 当病棟の肩腱板断裂手術件数は年間45~60件ほどであり、術後4~6週は再断裂防止の為、患肢の装具固定が必要となる。H17年度18年度に浴用装具の作成・改良を行った。しかし、従来の台を使用した方法が主流であり定着まで至っていなかった。そこで現状を調査・考察し、改善策を実施することで装具の定着を図った。その結果、患者様がより安全・安楽にシャワー浴を行なえるようになったのでここに報告する。 _II_.研究方法 1.研究期間:H19年4月~12月BR 対象:7階東病棟看護師25名 肩腱板断裂術後の患者11名 2.研究方法 1)現状調査2)浴用装具の改良・使用手順の作成3)講習会の開催4)講習会後のスタッフへのアンケート調査、患者聞き取り調査 _III_.結果・考察 現状調査の結果、装具使用を勧めていると答えている看護師が多かったが、実際に使用している患者は少なかった。これは台を使用するシャワーに慣れていた事と、装具装着の手順や方法が曖昧であった為、看護師が自信を持って患者に説明できなかった事が原因と考えた。また、患者も看護師の説明と手順が統一していなかった事で不安を感じていたことも考えられた。装具の点検では、装具の異臭・破損を発見され、留め金が小さく堅いため、取り外しする事が難しいことがわかった。  以上のことから装具を装着しやすいように改良し、説明内容や手順を統一する事でスタッフも自信を持って患者に勧める事ができ、患者も安心して装具装着が受け入れられるのではないかと考えた。また,術前チェックリストに入院時装具合わせを行うように組み入れる事で初回シャワー時から装具を使用でき、定着化につながると考えた。 装具の改良後、手順を明文化して講習会を行い、その後実際に患者に使用した。患者の聞き取り調査からは、初回シャワー浴時には患肢の負担動作についての説明も受け、更に装着方法が統一できていたという評価が得られた。装具についてもスタッフのアンケートで前装具より装着しやすいという意見が8名おり、改良した装具は装着が容易であり、安全性が高まったと考える。また講習会後のスタッフへのアンケート調査では、以前よりも装具を患者様に自主的に使用できていると20名が回答しており、現在も継続して装具使用によるシャワー浴が実施されている。 しかし、前装具は使用開始後半年で破損が見つかり、修理されていなかったため使用できる装具が少なくなっていた。破損し個数が少なくなることで、再び台使用の頻度が多くなる事が考えられる。台と装具を併用することで患者が不安に思う可能性もあり、装具の保守点検と定期的な作成が必要であると考える。また、経験が少ないスタッフには事前に装着練習を行ない、安全に実施できるよう教育が必要と考える。 _VII_結論 ・ 装具装着手順・使用方法を統一化した事でスタッフが自信を持って装具を使用出来るようになった。 ・ 装具が装着しやすくなり安全性が高まり、患者様にとって安全・安楽なシャワー浴方法が確立できた。 ・ 経験が少ないスタッフには定期的な指導や確認が必要である。 ・ 定期的な装具の保守点検が必要である            
  • 万本 健生, 田嶋 雅美, 中山 知樹, 田中 健太, 馬見塚 尚孝, 平野 篤
    セッションID: 2J291
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉
    当院では2003年よりスポーツ外来を開設し、診療を行っている。このうち、膝前十字靭帯(ACL)損傷と診断された症例を対象とし、その傾向を分析した。
    〈方法〉
    2003年1月より2008年3月までに当院スポーツ外来を受診したもののうち、ACL損傷と診断された183例183膝を対象とした。これらの症例に対し、受傷年齢、スポーツ種目および治療方法について分析を行った。
    〈結果〉
    受傷年齢は11歳から65歳であり、平均年齢24.4±11.4歳(中央値20歳)であった。性別では男性88例、女性95例、左右別では右膝84例、左膝99例であった。スポーツ種目では、バスケットボールが55例(30%)と最も多く、次いでサッカー40例(22%)、バレーボール19例(10%)、ハンドボール8例、ラグビーとスキーが各6例であった。このうち、手術加療を行ったものが134例(73%)、保存加療を行ったものが32例(17%)、その他は通院中止や転院などであった。
    年齢別では16歳が最も多く24例(14%)であり、このうち21例(88%)に手術が行われていた。手術例のうち17例(81%)が女性であり、保存療法の3例はすべて男性であった。ついで17歳が19例(11%)で、保存療法は4例に行われていた。14歳以下は15例(9%)であり、骨端線閉鎖もしくはほぼ閉鎖していた8例(75%)に手術療法が行われ、うち6例が女性であった。保存療法は7例(47%)に行われていた。うち4例は膝不安定性を繰り返しているが、骨端線閉鎖前であり、膝硬性装具、筋力訓練およびスポーツ活動制限による保存療法を行っている。残り3例はACL部分断裂例であり、保存療法によく反応し、膝くずれを認めず、全例受傷前スポーツに復帰していた。
    〈考察〉
    当院を受診したACL損傷のピーク年齢は16歳で、15―20歳で全体の45%を占めていた。その多くはバスケットボール、サッカーでなどジャンプやカッティング動作の多い競技であった。
    骨端線閉鎖前のACL損傷に対する治療方針については、いまだ一定の結論には至っていない。当院では骨端線閉鎖前のACL損傷例で、保存療法で膝くずれを繰り返す症例に対しては、骨端線の閉鎖が近いと判断される時期までは待機したのち、靭帯再建術を考慮している。保存療法により膝安定性を再獲得し、受傷前と同じスポーツレベルに復帰できた例では、MRI上ACL部分断裂、とくに前内側線維の部分断裂であり、経過観察中MRIにてACLの緊張は回復してきていた。骨端線閉鎖前のACL損傷の治療方法は慎重に検討されるべきであるが、保存療法によく反応する例もあり、今後更なる検討が必要であると考える。
  • —低侵襲手術を目指して—
    石突 正文, 古俣 正人
    セッションID: 2J292
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】エンダー釘はAO プレートのrigid な固定法に対してelastic な内固定材料として大腿骨や下腿骨の骨幹部骨折、大腿骨頚部骨折などに用いられてきた。しかし、近年大腿骨頚部骨折や転子部骨折にはγ-type nail が多く用いられるようになり、下腿骨や大腿骨の骨幹部骨折には髄内釘やプレートを用いた小侵襲手術(MIPO)が普及するにつれ、エンダー釘が使用される頻度が減っている。エンダー釘の利点は小侵襲で骨膜などの血行を温存し、elastic fixation により豊富な仮骨形成能を有しているところにある。新しい術式としてエンダー釘とプレートやスクリューを併用し、小侵襲による骨接合術を開発した。この術式を10症例に適応し、手術手技・手術適応・手術成績について報告する。
    【手術手技・結果・考察】プレートやスクリューとエンダー釘を併用する症例は大きく3つのグループに分けられる。1つのグループは、大腿骨や脛骨の二ヶ所以上の骨折である。大腿骨では遠位顆部の骨折と骨幹部骨折の合併で、遠位をプレートまたはスクリューで固定し、大転子部からエンダー釘を打ち込む。脛骨では高原骨折と骨幹部骨折の合併例、または、遠位骨幹端部骨折と骨幹部骨折の合併例で、近位または遠位をプレートやスクリューで固定し、エンダーで釘を遠位または近位から打ち込み、低侵襲手術を可能にした。2番目のグループは既にプレートやピン・スクリューを使って観血的整復固定術が行われ骨癒合した後に、新たな外傷により固定材料の近傍で骨折した症例である。このような症例に対しては内固定材料を抜去して再度、観血的整復固定術をおこなった治療報告が多い。われわれは今回報告したように内固定材料は抜去せず、エンダー釘を小皮切から打ち込むことで骨折部を固定し小侵襲手術を可能にした。エンダー釘の打ち込みに際しては、ネイルがflexibleであるため先端がスクリューに触れても衝突することなく、スクリューの横を滑り抜ける。われわれの経験した症例で打ち込みに難渋した症例はない。ただ、ネイルの先端の方向がやや変化し、骨皮質を貫くことがあるが、ネイルの長さを考慮すれば問題とならない。もう1つのグループは大腿骨に広範囲の粉砕骨折または螺旋骨折が認められる骨折で粉砕骨折にはMennen プレートで粉砕部をまとめ、心棒としてエンダー釘を使用した症例で、螺旋骨折には一部をスクリューで固定しエンダー釘を追加固定した症例である。このような症例は選択肢として他の方法もありうるが、試みて良い方法だと考えている。今回報告した10例全例に骨癒合が得られ、豊富な仮骨形成が認められた。骨癒合の時期を正確に判定するのは困難であるが、少なくとも術後3ヶ月で良好な仮骨形成を認めた。この手技により、侵襲を可及的に小さくすることによって、感染などの手術合併症を減らすことができると考えた。
    【結語】われわれは大腿骨または下腿骨の複数ヶ所骨折の治療に対してプレートやスクリューにエンダー釘を併用することによって、低侵襲手技を可能にした。また、ピンやプレートを使った大腿骨骨折の治療後に内固定材料近傍で骨折をきたした症例に対し、内固定材料を抜去することなくエンダー釘を打ち込むことによって小侵襲で良好な骨癒合を得た。この新しい手術手技は有用と考えられた。
  • 武馬 麻里子, 塗木 恵, 鈴木 愛, 鈴木 貴士, 平尾 重樹, 今井 智香江
    セッションID: 2J293
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】造血幹細胞移植を受ける患者は無菌室という一般病床から隔離された生活空間のなかで2~3週間過ごすこととなる。長期間一定範囲の生活環境下での生活が強いられる。2週間ほど室内で自立した生活を送っていても室外可となると、立ち上がれない・足がふらつく、手が震えるなど訴えることが多い。室内安静がどのくらいの筋力低下を起こすかについて明確にするため、今回無菌室入室前後の筋力低下の実際について調査研究した。
    【目的】造血幹細胞移植を受ける患者が、無菌室入室中にどれだけ筋力低下を起こすかを調査し、筋力アップについて今後の患者指導の参考としていく。
    【対象】平成18年7月から平成19年12月までに当科にて造血幹細胞移植をうけた患者のうち、無菌室入室前にADLが自立している患者5名(自家移植2名、同種移植3名)を対象とした。
    【方法】一般状態(Performance Status:PS)の評価はECOGの基準を用いた。筋力評価のために、徒手筋力測定器(オージー製GT-300)を用いて、腸腰筋・大腿四頭筋・三角筋・上腕二頭筋の筋力測定を行い、握力計(SMEDLEY’S HAND DYNAMO METER)を用いて、握力測定を行った。筋肉量の評価のため、大腿、下腿、上腕の周囲長の測定を行った。無菌室内での運動量の評価のため、万歩計 (オムロン HJ-113-W)を用いて、午前6時~翌日午前6時までの24時間の歩数測定を行った。測定時期は、_丸1_無菌室入室前、_丸2_無菌室内安静期、_丸3_廊下歩行可期の3ポイントとした。
    【結果】測定期間内におけるPSは、5名とも1~2であった。無菌室内安静期における腸腰筋・大腿四頭筋・三角筋・上腕二頭筋の筋力は、平均でそれぞれ入室前の76%、75%、98%、80%に低下した。握力については86%に低下した。しかし、測定期間中に筋力低下をほとんど認めない症例もあった。
    無菌室内安静期間に測定した大腿、下腿、上腕の周囲長は、無菌室入室前のそれぞれ95%、99%、95%であった。
    室内安静期間の歩数は全例で減少しており、平均で入室前の26%であった。
    【考察】一般的に床上安静による筋力低下は、7日間で20%、14日間で40%、21日間で60%といわれている。一方今回の研究では、3週間の室内安静で腸腰筋で平均24%、大腿四頭筋で平均25%、三角筋で平均2%、上腕二頭筋で平均20%の低下であった。今回の研究では日常生活動作がある程度自立しており、完全な床上安静ではなかったため上記のような減少がみられなかったと考える。しかし、5例中2例では、特に下肢において40~50%前後の筋力低下を認めており、移植後の経過によっては大きな筋力低下をきたすことがあると思われる。
    一般的には、24時間の安静によって生じた筋力低下を回復させるためには一週間かかり、一週間の安静により生じた筋力低下を回復するには一ヶ月かかると言われている。そのため、無菌室内での筋力低下を防ぎ、より早期の回復を得るためには、早期のリハビリテーションの導入により筋力を維持することが有効であると考える。しかし、移植後合併症のために一般状態の低下している患者にとっては、リハビリテーションが精神的な負担になることも考えられる。移植前のオリエンテーションにおいて、移植後の筋力低下について説明し、リハビリテーションの必要性につき十分な理解を得ておくことが必要と思われる。
    【おわりに】無菌室入室前後で、上肢・下肢ともに筋力低下が認められた。筋力低下の防止には、早期のリハビリテーション導入が有効と思われる。今後は移植前からの計画的なリハビリテーションを導入し、その効果につき客観的な評価を行いたい。
  • 浅井 信之, 浦田 士郎, 鈴木 和広, 田中 健司, 小口 武, 稲生 秀文, 杉浦 文昭, 新井 哲也, 倉橋 俊和, 原 龍哉
    セッションID: 2J294
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉我々は大腿骨転子部骨折に対し2006年2月より固定材料をDYAX-A nailからPFNAに変更しており,その治療成績を比較検討した。
    〈対象および方法〉当院にて大腿骨転子部骨折に対し,2003年7月から2006年1月までにDYAX-A nailで治療した103例(以下D群)と,2006年2月から2008年1月までにPFNAで治療した105例(以下P群)を対象とした。内訳はD群で女性78例,男性25例,手術時年齢は平均80.9歳(42~99歳),P群で女性80例,男性25例,手術時年齢は平均80.6歳(53~97歳)であった。骨折型はD群でJensen type1 12例,type2 20例,type3 1例,type4 13例,type5 6例,P群でtype1 30例,type2 39例,type3 4例,type4 27例,type5 5例であった。手術待機期間はD群で平均5.9日(0~31日),P群で平均4.6日(0~15日)であった。後療法は両群とも全例術後翌日から可及的に全荷重歩行を許可した。経過観察期間はD群で平均7.2ヶ月(6~12ヶ月),P群で平均5.6ヶ月(1~12ヶ月)であった。検討項目は,1)術後6ヶ月での歩行能力,2)術後合併症とした。歩行能力はランクJ:屋外レベル(独歩,杖歩行),ランクA:屋内レベル(歩行器歩行,伝い歩き),ランクB:車椅子生活,ランクC:寝たきりの4ランクに分類した。
    〈結果〉
     1)P群においては6ヶ月以上の経過観察が可能であった56例を対象とした。D群で術後6ヶ月の時点で受傷前歩行能力を維持できたのは64例(62%),1ランク低下は28例(27%),2ランク低下は11例(11%)であり,3ランク低下した症例はなかった。P群で受傷前歩行能力を維持できたのは36例(64%),1ランク低下は18例(32例),2ランク低下は2例(4%)であり,3ランク低下した症例はなかった。両群とも全例骨癒合を認め,受傷前と術後6ヶ月での歩行能力の変化は同様の傾向であった。
     2)術後合併症はD群で7例,P群で1例に生じ,P群の方が有意に少なかった。内訳はD群でカットアウト2例(1.9%),骨頭穿孔1例(1.0%),二次的骨折4例(3.9%),P群で骨頭回旋転位1例(1.0%)であった。両群ともに深部感染は認めなかった。D群における二次的骨折はいずれも骨癒合前に転倒して発症した。
    〈考察〉
     諸家の報告では,DYAX-A nailにおける合併症発生頻度は,カットアウトは坂田らの5.7%から塩見らの7.2%,二次的骨折は渡部らの1.7%から坂田らの9.6%であった。自験例でのDYAX-A nailにおける合併症発生頻度も諸家の報告とほぼ同程度であった。
     DYAX-A nailとPFNAでは骨頭に向けて挿入されるインプラントの形状が異なり,DYAX-A nailではスクリューであるのに対し,PFNAではブレードである。PFNAの特徴であるブレードは回転する仕組みになっており,スクリューと比較して骨を削らず圧縮しながら挿入されるため強固な固定力が期待でき,PFNAではカットアウトが起きにくいと考えられた。
     ブレードを特徴とするPFNAにおいても骨頭回旋転位が生じる要因としては,頚基部骨折であることや骨粗鬆症が高度であることが考えられる。対策として,歩行訓練中に疼痛が持続する症例では,頻回にX線確認を行う等,注意深い経過観察が必要である。
  • 斎藤 みどり, 矢口 春木, 平山 薫, 盛山 吉弘
    セッションID: 2J295
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当院の褥瘡対策委員会は、2007年4月から、新たに理学療法士・作業療法士(以下PT・OT)が参加し、褥瘡予防対策に関わって1年が経過した。PT・OTの褥瘡対策委員会での1年間の活動状況から今後の課題を検討したので報告する。
    【目的】
    褥瘡対策委員会でのPT・OTの活動状況から、問題点と今後の課題を検討する。
    【現状及び問題点】
    当院は1,018床の総合病院である。2007年度の院内褥瘡発生率は平均1.1%であったが、院外発生褥瘡いわゆる持込み患者の入院が多いため褥瘡保有率は平均4.4%であった。現在、褥瘡対策委員会は皮膚科医師、皮膚・排泄ケア認定看護師、看護師、管理栄養士、薬剤師、PT・OT、ソーシャルワーカー等の多職種から構成され、褥瘡対策の活動を実施している。褥瘡対策委員会の主な活動内容は、定期的な勉強会開催による教育活動や体圧分散寝具の管理、週1回の褥瘡回診などである。その中でPT・OTの主な役割は、週1回1時間の褥瘡回診に同行し褥瘡保有患者に対するポジショニング等を中心に介入し、褥瘡予防や褥瘡悪化の予防に携わることである。回診前には患者情報を担当PT・OTから収集し介入しているが、回診は創処置やケア・治療方針の検討が主となっているため、限られた時間のなかで身体機能の評価やOTによる食事動作・姿勢の評価・介入なども十分に行えていない状況である。また、病棟スタッフとの連携体制が不十分なため、患者の活動状況の情報を得られにくい事などが問題点としてあげられる。
    【考察】回診時に褥瘡を有する患者の身体機能の評価が十分に行えていない要因には、1時間という限られた回診時間のなかで、身体機能評価が容易にできるようなシステムが十分整っていない事や、病棟スタッフとの連携が不十分なために患者の活動状況の情報を得にくい事などが考えられる。今後は回診の限られた時間のなかで、患者の問題点を的確に情報収集・評価し、適切に介入していけるように検討することが必要である。具体的には、創処置や食事形態・栄養状態、活動状況等、褥瘡を有する患者の情報がひとつのシートで把握するためのチェックシートを作成するとともに、病棟スタッフとも連携が十分図れるように体制を見直すことが必要である。今後、作成したチェックシートを基に患者の情報を共有し、PT・OTの立場から問題点を考察し積極的に介入し役割を果たすことが求められていると考える。さらに、現在回診時に十分行えていない食事動作・姿勢の評価・介入に関しては、事前に情報収集して回診時に行うようにしていく必要がある。
    現在、褥瘡発生の原因として、院内発生・院外発生共に摩擦やずれが関与しているケースも少なくない。2008年度は褥瘡対策委員会主催の勉強会を通してPT・OTの立場からポジショニングの重要性について教育することを検討している。
    褥瘡対策委員会で活動するPT・OTとして、これらの課題に今後も積極的に取り組んでいきたい。
  • 渡邊 宜典, 山口 智恵子, 松原 功典, 山本 悟
    セッションID: 2J296
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    <緒言> M蛋白を呈する代表的疾患として、多発性骨髄腫(以下Multiple Myeloma:MM)や原発性マクログロブリン血症(以下MG)などが知られている。今回我々は肺炎を契機に来院し、高タンパク血症を認め、診断に苦慮したIgGのM蛋白を呈した低悪性度B細胞性腫瘍の1例を経験したので報告する。
    <症例>74歳男性。肺炎にて来院。検査所見WBC 11600、Hb 10.1g/dl、Plt 24.6×104、Lym 57%、連銭形成(+)、TP 9.2g/dl、Alb 3.5g/dl、GOT 29IU/L、GPT 20IU/L、LD 175IU/l、Ca 8.5mg/dl、CRP 20.3mg/dl、IgG 3329mg/dl、IgA 18mg/dl、IgM 33mg/dl、尿中B-J蛋白(+)。
    以上の検査所見より、MMを疑い骨髄穿刺施行。骨髄検査所見NCC 7.0×104、Megakaryo 0(-)、Dry tap傾向あり。表面マーカーCD19、20 、22 、45、κchain(+)、CD5、10、23、56(-)、染色体分析45、X、-Y。鏡検上、末梢血像同様の胞体は広いものの異染性はなく、核偏在のない異型なリンパ球を88%認めた。表面マーカーにてB細胞の抗原を有するものの、MM細胞で通常陽性であるCD38、138が陰性であり、鏡検上形態的にもMMは否定的であった。PDG-PET上、肺門・縦隔に集積を認めた以外に所見はなく、末梢血と骨髄を主座とする病態が考えられ、次にFISH検査IgH-BCL1、IgH-BCL2を実施するも共に陰性であったことから、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫(以下MCL、FL)も否定的となった。またCD5、23(-)であったことからB細胞性慢性リンパ性白血病(以下B-CLL)も否定的であった。一方でM蛋白増生を伴うとされるhairy cell leukemia(以下HCL)も考慮に入れたが、CD103(-)、末梢血標本上特有なリンパ球表面の樹状突起の確認を行うも認められなかったため、HCLも否定的となった。本症例は患者が比較的高齢で経過が緩慢であることや、肺門・縦隔の病変部が採取困難な場所にあったことから生検は施行できていないが、細胞形態や各種表面マーカーよりIgGのM蛋白を呈した低悪性度B細胞性腫瘍と思われた。また本症例をレトロスペクティブに見ると、3年前に既にM蛋白を呈していたが、その後貧血の進行や明らかな病勢の進行はなく、化学療法なしで経過観察となった。
    <考察>今回経験した症例は典型的なMM・MG・MCL・FL・B-CLL・HCLの所見に合致せず、診断には難渋した。幸い本症例は病勢悪化もなく経過観察にて対応できているが、症例によっては迅速な診断が要求される。しかしながら昨今の検査技術の発展は目覚しいものがあり、本症例においても各種検査が有用であったことは言うまでもない。また、本症例のようなIgGのM蛋白血症を呈し、Bリンパ球のモノクローナルな増殖を認める症例をIgG産生型のLPL(リンパ形質細胞性リンパ腫)やMGの範疇に入れてもよいものと思われたが、既存のカテゴリーには当てはまるものはなかった。従って今後更なる症例蓄積により、このような症例の疾患概念や分類が確立されることが望まれる。
    <まとめ>IgGのM蛋白を呈した低悪性度B細胞性腫瘍を経験したので報告した。
  • 清水  誠一, 蘆澤 正弘, 勝岡 優奈, 鴨下 昌晴, 川田 健一
    セッションID: 2J297
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(CML)に対する、イマチニブ400mg/日投与は世界標準的治療となっており、血液学的完全寛解率は98%と報告されている。わが国でも400mg/日投与が行われているが、浮腫や消化器症状などの有害事象で休薬あるいは減量を余儀なくされることが少なくない。当院でのイマチニブ投与の現状を検証し、安全性、至適投与量、有効性の検討を行ったので報告する。
    【CMLの治療方針】当院血液内科におけるCML治療方針は以下のとおりである。
    1.原則 Imatinib 400mg/日 投与から開始する。
    2.Grade2以下の有害事象であれば、対症療法の上で、 400mg/日投与を可能な限り継続する。
    3.Grade3以上の有害事象であれば、対症療法の上で減量もしくは一時休薬する。 可及的に400mg/日投与再開を目指すが、患者PS状態には最大限配慮し、200~300mg/日も可能とする。
    4.BCR/ABLモニタリングは、初診時と投与後6ヶ月毎に骨髄定量PCRを、それ以外は末梢血でAmp-PCRによる定量PCRを可能な限り施行する。
    5.原則的に同種造血幹細胞移植を行わない限り、Imatinib投与を中断しない。
    【方法】当院血液内科における、2002年2月から2007年4月までの間のCMLに対するイマチニブ治療症例21例(男性15例、女性6例)を後方視的に解析した。有害事象はNCI-CTCAE ver.3に基づいて分類した。治療効果は、血液学的完全寛解(CHR)、細胞遺伝学的完全寛解(CCR)、分子生物学的大寛解(MMR)について達成状況を評価した。
    【結果】
    1.解析した21例の病期は慢性期17例、移行期4例であった。年齢中央値は62歳(20~87歳)。
    2.初期投与量は400mgで開始する例が圧倒的であるが、1年以内に約半数例(47.6%)は用量変更を余儀なくされ、300mgへの減量が大半であった。
    3.主な有害事象は浮腫・血小板減少・胃腸障害であるが、投与量変更の理由は血液毒性Grade1-4が60%と圧倒的であった。非血液毒性は対症療法で軽快する例が多かった。
    4.投与18ヶ月時点での治療成績は、慢性期/移行期症例でそれぞれ血液学的完全寛解CHR(100%/100%)、細胞遺伝学的完全寛解CCR(92.9%/ 75.0%)、分子生物学的大寛解MMR(78.6%/ 75.0%)であり、慢性期/移行期間で有意差を認めなかった。
    5.投与18ヶ月時点でのPCR陰性達成率は49.5%であるが、その後の投与継続により全体の90.4%が最終的に達成となることが予想された。
    6.維持量としては400mgまたは300mgが多い。
    【考察】当院においては有害事象の発現により、イマチニブ400mg/日投与で維持することが困難な症例が多く、300mg/日での維持可能な症例が約半数であった。一方で、海外の臨床試験成績と同等の細胞遺伝学的効果を達成したことから、日本人においては300mg/日維持投与であっても有効である可能性が示唆された。またPCR陰性率の推計から、イマチニブ長期投与により質の高い寛解が維持できるものと考えられた。
  • 山内 理香
    セッションID: 2J298
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    院内発生褥瘡・持ち込み褥瘡
    〈緒言〉当院は、精神、療養病床を含む323床の病院であり、褥瘡に対しては平成8年から委員会を発足し活動を開始した。委員会では、褥瘡発生危険因子の評価、褥瘡に関する学習会を行い褥瘡予防の啓蒙を行っている。また、褥瘡有症者に対しては週に1回の褥瘡回診を行っているが、年間140名ほどの褥瘡有症者がおり、その数は減少していない。当院の褥瘡有症者の特徴や傾向を知るため、褥瘡有症者の評価用紙を用いて過去5年間に院内で発症した褥瘡と入院時既に褥瘡を有していた持ち込みの褥瘡について比較検討した。
    〈方法〉平成15年1月から平成19年12月の期間に入院した褥瘡有症者で褥瘡評価用紙に記入されている全ての患者の年齢、疾患、褥瘡の深さ、褥瘡部位について比較した。
    〈結果〉当院の過去5年間の褥瘡有症者は、計705名で院内発生群が454名(64%)、持ち込み群は251名(36%)であった。平成15年は141名、うち院内発生群が90名、持ち込み群は51名であった。平成16年は褥瘡有症者が146名で、院内発生群が95名、持ち込み群が51名であった。平成17年は、褥瘡有症者が120名で、院内発生群が73名、持ち込み群が47名であった。平成18年は褥瘡有症者が138名で、院内発生群は100名、持ち込み群が38名であった。平成19年は褥瘡有症者が160名で、院内発生群が96名、持ち込み群が64名であった。両群の平均年齢は院内発生群が75.6歳、持ち込み群が77歳で両群に有意差はみられない。 院内発生群は仙骨部が最も多く29.0%で、次いで踵部が17.2%、2箇所以上の複数発生は14.8%となった。褥瘡の深達度はIEATの分類で_I_・_II_度の軽度の褥瘡が88.2%、_III_度以上の重度褥瘡が11.8%であった。基礎疾患は精神疾患が21%と最も多く、骨・関節疾患、感染症の順で多い。 一方、持ち込み群では仙骨部が多く39.0%を占め、次いで2箇所以上の複数発生が33.4%であった。_I_・_II_度の軽度の褥瘡が61.5%で_III_度以上の深い褥瘡が38.5%を占めた。基礎疾患は感染症が最も多く23.8%、精神科疾患19.8%であった。
    〈考察〉院内発生群は、精神疾患患者が最も多く、生活が自立していても精神状態により褥瘡が悪化する傾向があった。ガイドラインと比べ、骨・関節疾患が18.4%と高いのは大腿骨頸部骨折だけを見ても平均年齢83歳と高齢であることが要因の一つである。下肢牽引患者の減圧の対策が必要である。_III_度以上の重度褥瘡の61%が踵部や足趾間に発生しており発見の遅れが重度に至る原因である。また重度褥瘡の24%で不適切なマットを使用しており、適切な体圧分散寝具の使用と足部の減圧が必要である。院内発生群は61%の褥瘡が治癒し、死亡した患者が30%であった。 持ち込み群は、_III_度以上の深い褥瘡が3割を占め複数個所褥瘡が発症している。持ち込み群では、日常生活動作に全介助が必要な患者が76%で、肺炎などの感染症が原因で入院に至っており高齢、ベッド上での生活に加え、発熱など更に褥瘡発生のリスクが高まったと考えられる。次いで精神疾患患者が多く、他院から合併症治療で転院して来る患者が褥瘡を併発している。持ち込み群は、治癒・死亡患者がともに36%であり、褥瘡が治癒しないまま退院となった患者が26%であった。 今後は地域ぐるみで褥瘡予防ができるよう専門性の高い看護師の育成やNSTとの連携で入院後に発症する褥瘡を減少させることが課題である。
  • 平山  薫
    セッションID: 2J299
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉平成18年の診療報酬改定で、「褥瘡ハイリスク患者ケア加算」(以下、ケア加算とする)が新設され、当院は同年4月から算定を開始し2年が経過した。この2年間で褥瘡予防や治療計画への介入方法が変化し、院内褥瘡発生率の低下へとつながった。ケア加算導入後2年間の効果と今後の課題を報告する。
    〈ケア加算の算定要件〉このケア加算は、褥瘡ケアを実施するための適切な知識・技術を有する専従の褥瘡管理者が、急性期入院医療において褥瘡予防・管理が難しく重点的な褥瘡ケアが必要な患者に対し、適切な褥瘡予防・治療のための予防治療計画に基づく総合的な褥瘡対策を継続して実施した場合、当該入院期間中1回に限り500点を算定することができる。この際、厚生労働省は褥瘡管理者を「皮膚・排泄ケア認定看護師」とすることを算定要件と定めている。
    〈当院の褥瘡対策の現状〉当院は1,018床の総合病院であり、2名の皮膚・排泄ケア認定看護師が勤務しており、うち1名が平成18年4月から褥瘡管理者として専従で活動している。また、院内には褥瘡対策委員会があり、毎月の定例会議のほか、褥瘡管理者と共に週1回の褥瘡回診、患者ケアカンファレンス、定期的な院内勉強会の開催、体圧分散寝具の管理やさらなる充足にむけて活動をおこなっている。平成17年度に充足率49%であった体圧分散寝具はケア加算導入時に追加購入され、平成18年度は充足率91%まで向上した。
    〈ケア加算導入の効果〉導入前は院内褥瘡発生率平均1.6%前後であったが、導入後の平成18年度は平均1.0%、平成19年度は1.1 %であった。また、平成19年度院内発生した患者の多くは_I_度と_II_度の軽度褥瘡であり、_III_度に悪化した症例は4%、_IV_度に及んだ症例は1%にとどまった。ケア加算導入後、褥瘡を発見した場合は、速やかに褥瘡管理者に報告することを義務付けている。また、必要に応じて褥瘡対策委員会と協働して治癒および再発予防に力を注いでいる。一方、院外発生褥瘡いわゆる持込み褥瘡の30%は_III_度・_IV_度の重度褥瘡であった。重度褥瘡の割合は院内発生と比較すると6倍に及んでいた。院外発生褥瘡の場合、適切に体圧分散寝具を使用していない症例が多かった。また、不適切な処置(感染褥瘡に台所用ラップを使用)を継続したことで感染が悪化し入院してきた症例も少なくなかった。このように院内褥瘡発生率は1.0%前後まで低下しているが、重度の院外発生褥瘡患者の入院が多く、褥瘡保有率は高い状況にある。ケア加算導入後の算定件数とそれに伴う金額に関しては平成18年度が1,925件9,625,000円、平成19年度は2,455件12,275,000円であった。
    〈考察〉ケア加算導入後、院内褥瘡発生率が低下し重度褥瘡が減少した要因として、褥瘡管理者がハイリスク患者全員の褥瘡予防治療計画に介入し、速やかに適切なケア指導、局所処置を開始したことがあげられる。しかし、院内褥瘡発生率が低下しても、重度の院外発生褥瘡患者の入院が増加傾向にあり、ケアに従事するスタッフの労力が増加している状況にある。これらの要因として、周辺地域施設における体圧分散寝具の不備やマンパワー不足、正しい褥瘡予防に対する知識不足などが考えられる。今後は訪問看護ステーションや地域施設等と連携して院外発生褥瘡を減少させていくことが課題である。平成20年度は褥瘡対策委員会主催の勉強会を公開講座とし、地域にむけた勉強会開催を計画している。
  • ?アンケート調査を実施してー
    箕輪 友香, 沼崎  菊美, 金井  紀子, 庄司  さとみ, 坂本 喜美子
    セッションID: 2J300
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉泌尿器科に入院している患者の中には、治療上膀胱留置カテーテルを挿入し、閉鎖式導尿バック(以下ウロガードとする)を使用している事が多い。現在、ウロガードに布製のウロガードカバーを使用しているが、患者より「使いにくい」「歩きにくい」「尿が人目に触れて恥ずかしい」等の声が聞かれた。そこで患者に、既存のウロガードカバー使用に関するアンケート調査を行い、問題点を明確化し、改善策を見出し、作成を行った。
    [研究方法]
    期間:2007年8月~2007年12月
    対象:1.泌尿器科に入院し、術後膀胱留置カテーテルを挿入し、ウロガードカバーを使用した歩行可能な患者10名
    2.泌尿器科担当看護師9名
    調査および分析方法:1,対象患者にアンケート調査(回収率100%)
    2.泌尿器科担当看護師に聞き取り調査。
    倫理的配慮:研究の目的、内容,プライバシーの保護及び対象者の権利について説明し、同意を得て実施した。
               [結果]患者に対するアンケート調査の結果、1)ウロガードカバーを使用して不都合なことがありましたかでは、はい8名、いいえ2名であった。不都合な理由(複数回答可)として、(1)尿を他人に見られるのが恥ずかしい1名、(2)尿の溜まった袋が重い2名、(3)袋を下げて歩くのが大変4名、(4)生活行動が制限される(洗面4名・トイレ6名・買い物2名)であった。2)ウロガードカバーを使った感想はどうですかでは、使いやすい4名、使いにくい4名、どちらともいえない1名、無回答1名であった。3)ウロガードカバーを使って困った内容はどんな事ですか(複数回答可)では、(1)ウロガードが入れにくい8名、(2)ベッドに掛けられない5名、(3)立てて置けない2名、(4)片手がふさがってしまう3名であった。看護師の聞き取り調査を行った結果、1)袋式であるため尿の観察や廃棄が面倒である。2)布製であるため汚染しやすい等の意見が聞かれた。以上の問題点を基に検討した結果、改善策を図り、ウロガードカバーを再考案した。
    [考察]患者にアンケート調査を実施したことにより、ウロガードカバーを使用している患者の実態を知る事ができた。患者は片手がふさがる事によって、洗面・トイレ・買い物など、日常生活行動が制限されることで不都合となり、尿が他人の目に触れる事で、羞恥心を感じていることが明らかとなった。今回、再考案したウロガードカバーは、肩紐式にしたことで、歩行しやすく、両手が自由に使えることで、日常生活行動の拡大につなげていけると考える。またウロガードカバーをしたまま、ベッドに固定可能となることで、尿が人目に触れなくなり、羞恥心の軽減が図れると考える。マジックテープを使用しカバー式にした事で、高齢者にも使えるようになった。看護師にとっても、尿の性状、量を簡単に観察でき、尿を破棄しやすい形にした事により、使いやすくなったと考える。今回、作成したウロガードカバーを、今後も使用し、さらに工夫と改善を重ね、患者にとってより使いやすくなるよう考えていきたい。
    〔結論]
    1.ウロガードカバーを使用している患者の羞恥心と、日常生活行動が制限されていることが明らかになった。
    2、ウロガードカバーを工夫・改善することすることで、患者の日常生活行動の拡大につながる事が分かった。
  • ~食前の案内放送と体操、食事中のBGM効果の有効性~
    黒澤 健児, 能海 聡
    セッションID: 2J301
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
    高齢化が進む今日、高齢者の健康促進や生きがい作りが大きな課題となっている。そういった意味でもこれまで以上にレクリエーションを見直していかなければならない。
    当病棟の患者は、そのほとんどが超高齢で何らかの機能障害を持ち家族から離れ単調な入院生活を余儀なくされている。
    そこで余暇を利用し短時間で手軽に行えるレクリエーションを毎日定期的かつ継続的に実施することで患者の日常生活に刺激を与え活性化を図ろうと考えた。その結果、今まで知る事のなかった患者の意欲や表情・言動を観察する事が出来たのでここに報告する。
    <目的>
    食前・食事中の時間を有効活用し日常生活の活性化を図る。
    実施1
    (1)対象:常時デイルームで食事を摂る患者約30名 ADLは様々
    (2)方法:食前体操の実施 毎日朝昼夕食時
    実施2
    (1)対象:病棟入院中の全患者
    (2)方法:食事の案内放送の実施
    実施3
    (1)対象:実施1と同様
    (2)方法:食事中にBGMを流す
    実施4
    (1)対象:病棟スタッフ全24名
    (2)方法:実施1~3導入後、その有効性についてアンケート調査
    <結果>
    アンケート調査の結果、体操・放送・BGM全てにスタッフ全員から効果有りとの回答を得ることができた。また、今までは見られなかった患者の意欲的な言動も報告された。
    <考察>
    3食デイルームへ行こうとする気持ちを引き出す事で社会性や生きる意欲の向上と廃用性症候群をはじめ合併症の予防、ADLの低下予防にも繋がったと考えられる。垣内は「レクリエーションとは、生活を楽しく、明るく、快くするための一切の行為である。~行為とは単に四肢の行為のみでなく、視覚、聴覚、味覚、臭覚、触覚などと関連する行為をも含む~」と定義しているが、そういった意味でも今回の取り組みは有効であったと考えられる。また障害の違いはあっても残存する能力や五感を最大限に発揮しようとする患者の姿 は、我々援助する側にも大きな励みとなり職務に対する意欲向上にも繋がったと思われる。
    <まとめ>
    今までは大規模なレクリエーションばかりに着目しがちであったが、簡易的なものであっても患者の生き生きした声や意欲的な姿を目にした事で改めてレクリエーションが本来持つ意義や有効性を再認識する事ができた。また、アンケート調査の結果ではいくつかの改善点も挙がったため今後も今回実施した内容をスタッフ一丸となって見直し改善しながら継続していく必要がある。そしてその都度患者のニーズを調査する事で、何よりも患者自身が喜び楽しみながら、かつ刺激となり、日々の生活やADLに役立つようなレクリエーションを提供していきたい。
    <引用・参考文献>
    1)垣内芳子 廣池利邦 柏木美和子:「アクティビティ実践ガイド」日総研
    2)繁昌康代 著:「遊びでリハビリ~高齢者施設でアレンジした遊び112~」日本レクリエーション協会
  • 三ツ木 愛美, 角山 智美 , 深谷  悠子, 小林  美幸, 大野 美津江
    セッションID: 2J302
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>
     近年、育児環境の変化に伴い父親の役割が重要視され、NICUでは父親の愛着形成に向け、カンガルーケアや育児練習参加などを実施している。しかし、父親のケアへの参加は母親に比べ少ないのが原状である。そのため、より良い父性育成に向け父親の対児感情の変化を知り、児の関わりやケアの内容が父性発達にどのような影響を与えているか明らかにすることで課題を見出し、今後の援助の充実を図る必要があると考え研究に取り組んだ。
    <研究目的>1.父親の対児感情を知りケアが父性発達に与える影響を明らかにしケアに対する課題を見出す。
    2.研究対象および方法:対象 平成19年6月~8月に入院した低出生体重児の父親8名。(ただし心疾患や重症仮死、奇形のある児の父親を除く) 方法:入院1週間以内と退院決定後の2回、花沢の対児感情得点を測定し変化を評価した初回のアンケートは自由記載で児への現在の感情を記入した。退院決定後は児の入院期間・入院中の面会状況・行なったケアの内容・父親の実感について、自由記載欄には児への現在の感情と入院中印象に残ったこと、スタッフの対応について記入した。
    3.倫理的配慮:両親に研究の目的と個人のプライバシーの保護を口頭で説明し同意を得た。
    <結果>父親の面会は週に1~2日が6名、3~4日が2名で1日の平均面会時間は67.5分であった。接近項目は全ての症例で得点が増加した。父親実感について、「とても実感している」20.5%「実感している」62.5%「少し実感している」12.5%であった。そのきっかけとしては抱っこが一番多かった。回避項目得点は4例が減少し、4例が増加していた。回避項目が増加した内容のうち「こわい」がもっとも多かった。入院1週間以内の児への気持ちには、「保育器の中から早く出てきて欲しい」「小さいけれど安心した」など、退院前では、「無事に退院できて嬉しい」「安心した」などの意見があった。スタッフに対しては、NICUで作成している面会ノートについて「毎日来ることが出来ないので非常に良かった」という意見もあった。
    <考察>接近項目得点の増加は父親の児に対しての愛情や受容が反映されていると考えられる。また、全ての父親が抱っこをきっかけに父親の実感を感じており、児の状態が安定していれば毎日行なえる抱っこは父親実感を得る上で重要な役割を果たしていると考えられる。また、面会ノートは会えない時間の児を知る手がかりに効果的であった。回避項目得点が増えていた症例があったことは、低出生体重児の父親にとって当然の感情であると思われる。斉藤は「男性は自分の個人的経験を通して父親役割を自覚し自分なりの仕方で父親役割をはたしていくことによって父親になっていく」と述べている。NICUという環境の中で、仕事をしている父親は児と関われる時間は制限されることが多い。ケアの量や面会を頻度で愛着形成を計るのではなく、個々の父親に合ったケアを取り入れ、父親と児が心地よいと感じる環境を整えていくことが、愛着形成、父親育成につながっていくと考えられる。
    <まとめ>父親育成に向けて個々の父親に合ったケアを取り入れ父親と児が心地よいと感じる環境を整えていくことが必要である。
  • 改定クリティカルパスを使用して
    飯田 友紀, 広住 一恵, 圓崎 京子, 板倉 紀子, 菊地 幸代
    セッションID: 2J303
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/02/04
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     当病棟では、自己管理を目的とした保存期慢性腎不全患者(CKD分類ステージ2までが対象)の教育入院を行っている。平成18年6月のDPC導入に伴い、入院期間の短縮・患者指導内容の充実を図るため、クリティカルパス(以下CP)の改正を行った。従来のCPでは、患者指導は主に看護師が行っていたが、改正CPでは、食事指導は栄養士、服薬指導は薬剤師、検査値の見方は検査技師、日常生活指導は看護師として、コメディカルによる患者指導の分担化を図った。前回の看護研究において、改定CPは在院日数が短縮され、診療報酬が維持できた事が明らかになった。しかし、指導を受ける患者への効果は調査していなかった。今回、患者に教育指導の内容についてアンケート調査を実施し、良い結果が得られたので報告する。
    【研究方法】
    期間 2006年6月~2007年12月 
    対象 教育入院患者67名 平均年齢 69才 
    方法 1.教育内容の改善 他職種との連携を図り、患者指導をシステム化する。
    2.患者にアンケート調査を行い、指導内容の有効性を明らかにする。
    【結果・考察】
    1.教育内容の改善 DPC導入前は検査項目が多く予約が入らない、看護師が行う指導の時間が取れない、内シャント造設や患者の希望による退院日の延長などが原因で、在院日数が長期化していた。そこで、コメディカルの専門分野に指導を委託し、教育内容の充実を図った。入院日は可能な限り木曜日に設定し、集団栄養指導を行っている。月曜日は集団検査指導、火曜日と金曜日は看護師による日常生活指導を行っている。改定したCPでは、他職種との連携を図り、患者指導をシステム化したことで、患者・家族に納得した知識の提供ができると考える。また、患者はそれぞれの専門職から直接指導を受けることで理解が深まり、不安も軽減して安心感が得られ、今後の自己管理に役立つと言える。
    2.回収率は71%であった。
     (1)「栄養士による集団指導はわかりやすかったか」については、はい47名・いいえ1名 
     (2)「栄養士による個別指導はわかりやすかったか」については、はい47名・いいえ1名 栄養指導は集団と個別に2回行うことにより、集団での疑問を個別時に再確認することができたと考える。
     (3)「薬剤師による服薬指導は分かりやすかったか」については、はい41名・いいえ2・無回答5名 
     (4)「検査技師による説明は分かりやすかったか」については、はい38名・いいえ3名・無回答7名 療養手帳に記入された自分の検査値を見ながら指導を受けることにより、自分の病期が認識できたと考える。
     (5)「看護師による日常生活の指導の説明は分かりやすかったか」については、はい45名・いいえ3名 
     (6)「教育入院による患者指導は今後の療養に役立つか」については、はい47名・いいえ1名であった。
    【まとめ】
     (1)他部門と連携を図り、専門性を取り入れた患者指導を行う事は、指導内容の充実が図れ、有効だったと言える。
     (2)保存期慢性腎不全教育入院した患者は、集団教育指導の相互作用により共通理解でき、今後の自己管理に意欲が持てると考える。
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