日本農村医学会学術総会抄録集
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第58回日本農村医学会学術総会
選択された号の論文の445件中1~50を表示しています
  • 別所 隆
    セッションID: gakkaichou
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    外科が現在抱えている問題を提示しながら,外科の面白さを伝えられたらと思ってい
    ます。大きな課題としては外科医不足があります。医師不足,特に小児科医,産婦人科医
    の不足がマスコミ等をにぎわせていますが,外科医の減少も深刻です。外科系(一般外
    科,心臓外科,呼吸器外科,小児外科)はこの8年間で約2.1%,一般外科だけみると
    6%と大幅な減少です。(ちなみに産婦人科は1.1%の減少,小児科は6.5%の増加です)
    外科学の進歩は周辺技術,科学の進歩に支えられているといっても過言ではありませ
    ん。麻酔学,周術期の管理,消毒法を含めた微生物学,画像診断学,薬学,工学技術等の
    進歩が手術術式そのものの発展,術後成績の改善を促しました。そして術式も時代ととも
    に変わってきました。1960年代から1970年代にかけては拡大手術の時代でした。乳癌を例
    にとりますと大胸筋,小胸筋までも切除してしまう胸筋合併乳房切除,拡大乳房切除術が
    大勢を占めていました。しかし1980年代に入りますと胸筋温存そして乳房温存手術という
    ように,機能,美容にも考慮する術式が大勢を占めてきました。この流れは現在も続いて
    います。リンパ節郭清も同じ傾向です。また乳癌の例になりますが,闇雲な腋窩リンパ節
    を郭清する時代から,ナヴィゲイションサージェリーといいわれる癌細胞が最初に到着す
    るであろうリンパ節をアイソトープ等を利用して同定し,そのリンパ節への癌の転移の有
    無を見極めて,リンパ節郭清の要否を決める時代となりました。この技術は最近では乳癌
    ばかりではなく,消化管癌の手術にも応用されるようになりました。
    そしてこの20年間で外科手術は革命といってよいほどの劇的な変化をとげました。開腹
    または開胸して実際に肉眼で見,観察し,臓器を触れながら行うという手術の常識を覆し
    た鏡視下手術の導入です。1987年Mouret によって腹腔鏡下胆嚢切除術が行われました。
    術後の痛みの少なさ,回復の早さ,早期の社会復帰が可能である等の低浸襲性が受け入れ
    られ,世界中にひろまりました。これには医療機器の進歩も貢献しました。細くて視野が
    広くて明るい光学視管,光源装置,モニターの発達,超音波凝固切開装置の開発などをう
    けて鏡視下手術の適応は拡大していき,現在では一般外科手術のほぼあらゆる分野で導入
    されてきています。そけいヘルニア,虫垂切除,噴門形成術,脾臓切除術,胃切除術,大
    腸切除術,食道癌切除術,肝切除術等です。今後未来に向けては,遠隔手術の導入,ロ
    ボットの導入等が考えられます。また遺伝子学の進歩も外科治療に大きく貢献しています。
    1例を挙げますと甲状腺髄様癌はC 細胞由来の癌ですが,1965年以降,
    常染色体優性遺伝,多発性内分泌腫瘍2A,2B,家族性甲状腺髄様癌などに分類さ
    れることが明らかになりました。この腫瘍はDNA 検査による保因者診断が可能とな
    り,1994年にはDNA 診断による保因者に対する予防的甲状腺手術が提唱されました。
    外科学の将来を時代を担う人材の育成が急務であり,そのための教育システム,手技の
    訓練設備と施設の整備等が急がれます。外科学に対する私の思いを伝えることがで
    きるような講演にしたいと思います。
  • 松沢 成文
    セッションID: tokubetsu
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    神奈川県では,2009年(平成21年)3月に,受動喫煙から県民の健康を守るために,
    社会全体の新たなルールとして「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」を制定
    し,2010年(平成22年)4月に施行します。屋内空間での受動喫煙防止を目的とした条例
    としては,全国初の条例です。
    日本を含む160カ国以上が批准している「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条
    約」では,屋内の公共の場における受動喫煙を防止する措置を積極的に促進することを求
    めています。これを受け,多くの国々では,レストランやホテル,劇場などの屋内の公共
    の場を禁煙にするなど,受動喫煙防止対策が進められており,このような動きは世界の潮
    流となっています。
    一方,日本では,2003年(平成15年)に施行された「健康増進法」で,大勢の方が利用
    する施設において,管理者に受動喫煙を防止することが努力義務として課されました。法
    施行後6年が経過し,官公庁施設や学校,病院などの公共施設では建物内の禁煙が進みま
    したが,飲食店や娯楽施設での取組みはなかなか進まない状態にあります。
    このため,神奈川県では,現行の健康増進法の枠組みや喫煙者のマナーに期待するだけ
    では,受動喫煙を防止する環境整備の促進は困難と考え,先の条例を制定することとしま
    した。多くの方に影響を与える条例であることから,制定に際しては,広くご意見を伺う
    ために,県議会での議論を重ねるとともに,県民の方から直接ご意見を伺うパブリックコ
    メントやタウンミーティング,事業者や関係団体の方との意見交換,現場訪問を実施する
    など,丁寧できめ細やかな対応に努めました。
    条例は,受動喫煙が健康に悪影響を与えることが明らかであることから,(1)受動喫煙を
    防止するための県民,保護者,事業者及び県の責務を定めること,(2)県民自らの意思で受
    動喫煙を避けることができる環境の整備を促進すること,(3)未成年者を受動喫煙による健
    康への悪影響から保護することによって,受動喫煙による健康への悪影響から県民の健康
    を守ること,を目的としています。不特定又は多数の人が出入りすることがで
    きる室内又はこれに準ずる環境を有する施設を公共的施設とし,これを2種類に区分し規
    制を定めています。条例の対象となる施設管理者には,(1)学校,病院などの第1種施設は
    禁煙とし,飲食店,宿泊施設などの第2種施設は,禁煙又は分煙とすること,(2)喫煙禁止
    区域へのたばこの煙の流出を防止すること,(3)喫煙禁止区域に灰皿などの喫煙器具や設備
    を置かないこと,(4)未成年者を喫煙区域及び喫煙所に立ち入らせないこと,(5)喫煙禁止区
    域で喫煙者を発見した場合,喫煙中止等を求めること,(6)「禁煙」や「分煙」などの表示
    を掲示すること,を義務付けています。
    受動喫煙防止への取組みは,大きな社会変革の取組みであると同時に,県民一人ひとり
    の意識改革を求める取組みでもあります。条例の制定を契機に,今後は,多くの志を同じ
    くする方たちと手を携え,日本社会の変革と国民全体の意識改革を目指すための国民運動
    を進め,誰もが実感できる「健康で空気がきれいな国」,他人のたばこの煙にさらされる
    ことのない「スモークフリーの社会」を実現していきたいと考えています。
  • 鈴木 雅之
    セッションID: kanaijyusyou
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    JA いせはら地場野菜出荷グループは,平成14年に「地元の新鮮野菜をスーパーにも出
    してほしい」という量販店からの要望に応えて集まった農家の仲間たちです。
    “地場野菜出荷グループ”のメンバーは神奈川県農業経営士会の会員や神奈川県エコ
    ファーマーの認定者など有機農業に積極的に取り組んでいる農業が大好きな人たちです。
    伊勢原市は,東京や横浜など消費地に近く農協の直売所は昭和40年代から展開されてい
    ます。今回,伊勢原協同病院との関わりは「地場野菜を使っていきたい」という病院か
    らの申し出によるものでした。当初,グループとしては,出荷会議にはかり「できること
    からやってみよう」ということで意見がまとまり,私の気持ちとしては,「農家として,
    大変名誉なことであるし,責任重大である」と思ったことが,今でも印象に残っていま
    す。なぜなら「医食同源」に関わることだからです。
    野菜は患者さんに食べてもらうので,低農薬で有機の肥料を多く使うなど気をつけて栽
    培しています。病院側から「患者さんも喜んで食べているよ」という意見や「病院広報誌
    “すこやか”の記事を見たよ」などと聞くとメンバーのモチベーションも上がってきます。
    現在は,旬の野菜,新しい野菜などの要望も多く,また職員用の「野菜頒布会」のセッ
    ト野菜の注文もあり,地場野菜出荷グループと伊勢原協同病院は大変濃い関係を構築して
    います。病院以外の取り組みとしては,“食育”の一環として小学校の学校給食にも地元
    野菜の供給を始めています。これも「できることからやってみよう」と行動しています。
    今後の課題は,地場野菜出荷グループのメンバーを増やすことです。若い世代の人たち
    やこだわり農業をやっている人たちを仲間にし,地元のニーズに応えられるグループにし
    ていきたいと考えています。安全で安心,顔の見える高品質の地場の野菜を更に供給でき
    るように努力し,地元農業の活性化を図っていきたいと考えています。
  • 戸山 芳昭
    セッションID: kyouiku
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    我が国は,豊かさとともに世界一の長寿を享受できる国となった一方で,都市化,核家
    族化,少子高齢化等の社会的背景が表面化し,中高年齢層では生活習慣病の増加,要支
    援・要介護者の増大等の課題にも直面している。国民はQOL の向上,豊かな老後を強く
    求めているが,同時に,特に高齢者では自分の健康について不安や多くの問題を抱えてい
    るのが現状である。
    この高齢化社会の現状と将来の人口推移推計を見てみると,現在の日本の総人口は約1
    億2,700万人強,高齢者(65歳以上)比率は22%強と世界一の高齢化社会となっている。
    75歳以上も約10%強であり,この比率も多分世界一であろう。反対に15歳以下の小児比率
    は13%程であり,まさに少子高齢化の最たる国となっている。そして,2005年時の調査に
    よれば一人暮らしの高齢者は405万人と報告されており,近い将来高齢者は3,300万人を
    越え,その比率は25%になると予想されている。さらに,2050年頃までには高齢者比率は
    何と40%程度にまで上昇すると推計されている。つまり高齢化ではなく,超高齢社会が直
    ぐそこまで来ているのが我が国の将来像である。当然,特に高齢者では誰でも健康な状態
    で老後を過ごしたいという強い願望がある。
    このため国は今後の方向性として,単なる長寿ではなく国民一人ひとりが生涯にわたって
    元気で活動的に生活できる「明るい活力ある社会」の構築を目指している。そのためには国民
    の健康寿命を伸ばすことが基本戦略となる。
    その柱として国は,「生活習慣病対策の推進」と「介護予防の推進」を基本政策とし
    て展開する方針を打ち出した。この方針,つまり“生涯にわたって元気で活動的に生活で
    きる社会”を構築し,その目標を達成するためには運動器(骨や関節,脊椎,神経など)
    疾患への対応とその予防が不可欠となっている。癌や生活習慣病である糖尿病,高血圧,
    心疾患等が何とか目標とする改善値まで到達できたとしても,運動器が障害されていれば
    元気で活動的な生活が送れない状態にあると言っても過言ではない。また,癌に対しては
    運動療法等の効果はないが,心疾患や高血圧,糖尿病,メタボリックシンドロームなど
    の生活習慣病には大きな効果をもたらすことも周知の事実である。つまり,高齢社会が進
    む我が国において,要支援・要介護者や生活習慣病を減少させるためには骨粗鬆症の予防
    や運動器の機能,特に下肢機能を維持させることが重要であり,各論では罹患率の高い腰
    痛・膝痛や骨折等への対応が急務である。そこで,国民の健康寿命延伸に向けた健康作り
    政策として2000年から「健康日本21」,2004年から「健康フロンテイア戦略」,2007年か
    らは「新健康フロンテイア戦略」が行政主導でスタートした。この「新健康フロンテイア
    戦略」では「介護予防」なる項目の中に運動器疾患対策が重要課題として取り上げられて
    いる。
    本講演では高齢化が抱える健康問題,特にその問題点の一つとして重要視されてきた運
    動器疾患を取り上げ,その病態から診断と治療までを最新知見を含めて概説する。
  • 江指 隆年
    セッションID: S1-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    日本の食と健康を考える場合,「食」と「健康」の内容
    に関する深い理解に基づいた検討が必要である。健康の定
    義は,世界保健機関(WHO)の憲章前文に明記されてい
    る。すなわち,「健康とは病弱とか疾病でないだけでな
    く,肉体的にも精神的にもそして社会的にも完全に良好な
    状態である。」と。

    1.体の健康と「食」
    現代の健康障害は,食生活の不適切さを背景として発症
    していることが明らかにされている。この不適切さの原因
    は,個人,家庭などと同時に,食料の生産,加工,流通,
    消費体系,食環境に多く指摘できる。「食」の価値観を左
    右する社会のしくみにも目を向けなければならない。食生
    活構造を変革する国民的運動が必要である。

    2.心の健康と「食」
    心の健康を障害させるような「食」は見直されなければ
    ならない。筆者は,「ものごとに対して創造性を働かせ,
    科学的,芸術的,文化的,歴史的に深く認識し,行動でき
    る精神状態」を,健康な心の判断基準にしたいと考えてい
    る。この視点は,わが国の文化の深部の力となっている食
    文化をどう捉え,どう発展させるべきかということとも深
    く結びついている。

    3.社会の健康と「食」
    「個人としても,集団としての人間としても,一人一人
    が限りない可能性を持つ者として,その存在を大切にさ
    れ,お互いが力を合わせながら,その可能性が十分に発揮
    できる社会の実現をめざしている社会の状態」。この視点
    は,食糧を他国に依存することの危険性,独立国として自
    国の尊厳を守る重要性などを認識するうえでの,市民の視
    点としても重視したい。食糧の生産者が,その可能性を否
    定され,誇りを失わさせられるような社会,消費者が,身
    の危険を感ずるような食糧を摂取しなけらばならないよう
    な社会のあり方も改められるべきである。

    4.おわりに
    体と心と社会の健康を同時に求める食は,自国に根ざ
    し,季節と地域,生産者と消費者の関係を重視した中から
    築かれるのではなかろうか。その実現に取り組んでいるグ
    ループがすでに生まれている。そのような人々が多くなる
    ように連帯して進みたい。
  • 塩飽 邦憲
    セッションID: S1-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    生活習慣の変化に伴い糖尿病の増加が大きな社会問題と
    なっている。さらに,壮年男性での肥満やメタボリックシ
    ンドロームの急増,また,老年での廃用症候群に対して予
    防の重要性が広く認識されてきた。このような生活習慣と
    生活習慣病の都市化は,農村にも大都市から約10年の遅れ
    で広がってきた1,2)。それでも,農村は食,住,ソーシャル
    キャピタルに恵まれているが,生活習慣病が増加してい
    る。我々は,農村での生活習慣病,特に壮年の肥満関連疾
    患および老年の廃用症候群・社会的引きこもりに対し
    て,3カ月間の行動学的介入試験(個別保健指導プログラ
    ム)を行ってきた。農村の生活習慣・生活習慣病の特徴と
    生活習慣変容のための行動学的な方法について得られた知
    見を述べる。

    〈対象と方法〉介入の対象は,壮年は2000年から出雲市と
    共催してきた肥満改善プログラムを修了した358人(男性
    91人,女性267人)3~7),75歳以上の後期高齢者は島根県後
    期高齢者医療広域連合と共催した生活習慣予防プログラム
    を修了した20人(男性7人,女性13人)である。摂食量,
    身体活動量,体重,BMI,脂質・糖代謝パラメータにつ
    いて解析を行った。

    〈結果と考察〉
    1)壮年
    3カ月間で参加者平均で体重1.7kg,腹囲2.4cm を減少
    させた。体重減少には,炭水化物摂取減少,身体活動(主
    に有酸素運動)の増加が最も寄与していた。体重減少量の
    最も多い第4分位群(体重減少4.4±1.5kg)では,総コ
    レステロール,HDL コレステロール,中性脂肪,血糖,
    インスリン,HOMA-IR が有意に改善した。このことか
    ら,壮年では3カ月間に体重3~7%の減少で,肥満関連
    代謝異常に顕著な改善が認められることが明らかになっ
    た6)。介入での課題としては,1)食事制限ならびに有酸
    素運動に加えて,インスリン感受性を改善するために筋力
    強化を取り入れること,2)1年後にはかなりの参加者で
    リバウンドが認められたことから,健康行動の自動化,同
    窓会等の組織化などによる行動変容継続が考えられる。

    2)後期高齢者
    対象者の1日平均歩数は国民栄養調査と比較して少な
    く,米と菓子の摂取が多かった。介入により炭水化物摂取
    量が有意に減少し,女性の歩数が有意に増加し,体重は
    0.6kg 減少し,歩行速度が有意に改善した。農村地域で
    は,特に女性で自動車利用による身体活動低下と「お茶
    事」などの社交的な飲食が行動変容を妨げていた。社会活
    動を維持しながら,過食と身体活動低下を改善させる方策
    が求められている。

    〈結論〉農村地域住民は,都市住民に比較して糖尿病やメ
    タボリックシンドロームはまだ低率であった。しかし,貧
    弱な公共交通機関により自動車利用による身体活動低下が
    顕在化しつつある。また,農村社会特有の「お茶事」など
    の社交的な飲食に代表されるソーシャルキャピタルは豊か
    であるが,energy dense food の制限が重要と考えられ
    る8)。年齢を問わず,行動変容をめざした地域での教育介
    入は生活習慣病予防に有効であることが示された。

  • 金子 哲夫
    セッションID: S1-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    日本人の平均寿命は女性で85歳,男性で78歳を上回って
    おり,65歳以上の人口が全人口に占める老年人口の比率は
    平成18年に21.0%となった。これは世界のどの国も達成し
    ていない。老年人口比率は更に,2015年には25%台に達
    し,その後も低出生率の影響を受けて上昇を続け,2050年
    には32%に達すると推測される。その一方で,将来の老齢
    者となる中高年世代はというと,30~60歳代男性の3割以
    上に肥満が見られ,高血圧,糖尿病,脂質異常症(高脂血
    症)などのメタボリックシンドローム患者数は1,700万人
    を超えている。活動度の高い豊かな高齢者生活を実現する
    ためには,いかに肥満にならずに活動度高く中高年時代を
    過ごすかということが重要といえる。その必須要素は,
    「運動」と「栄養」である。「運動」と「栄養」の両者に
    よって高齢化に伴う筋肉と骨の老化を抑制し,活動の基本
    要素を確保することが重要である。
    乳・乳製品が栄養価の高い食品であって,とりわけ骨格
    形成に役立つ食品であることは周知の通りである。牛乳タ
    ンパク質は消化性やアミノ酸バランスに優れ,豊富に含ま
    れるカルシウムは吸収性に優れている。乳・乳製品の価値
    を高める科学は,こうしたこれまでの栄養から更に一歩踏
    み込んで,栄養的特徴がもたらす生理的な価値を明らかにしつつある。
    今回のシンポジウムでは,文献情報を含む最近の乳・乳
    製品の栄養生理学的研究の中から,中高年のQOL 管理に
    役立ちそうな話題として,次の3点をご紹介したい。
    1.牛乳タンパク質はカゼインと乳清タンパク質とに大
    別される。酸性環境ではカゼインは固い凝集物を形成する
    が,乳清タンパク質は可溶化している。このため,両者は
    胃からの排出速度が異なり,消化吸収速度が異なる。高齢
    者のタンパク質代謝の特性から,窒素蓄積にとって乳清タ
    ンパク質が有利ではないかとの考えがある。
    2.プロトンポンプインヒビター投与により胃酸分泌低
    下ラットモデルを作成し,乳酸菌発酵乳のタンパク質富画
    分配合飼料を給餌した。胃酸低下処置により低下したカル
    シウムの吸収および骨の特性は乳酸菌発酵物投与により抑制された。
    3.カルシウム摂取量が多い人には肥満者が少ないこと
    が報告されている。脂肪の吸収抑制ばかりでなく,血中ビ
    タミンD レベルの低値が脂肪細胞に作用していると考察
    されている。乳清にはカルシウムの吸収促進に有利に働く
    作用があり,抗肥満効果が期待される。
  • 鈴木 祥子
    セッションID: S1-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    ここ数年めざましい発展を遂げている,NST(Nutrition
    Support Team)は主に入院治療の現場で,重要な役割を
    果たしている。当院はへき地中山間部に位置する200床規
    模のケアミックス型の病院で,平成17年7月よりNST を
    発足させ,外来栄養指導を併せ,外来・入院患者の栄養管
    理に積極的に携わってきた。日本人の平均寿命が男性76
    歳,女性86歳といわれるなか,入院患者の約4割が80歳を
    超え,病気のみならず加齢に伴う体調の不良を管理して安
    寧に生きる年代層の多いのが当院の特徴である。このよう
    な現状からも我々のNST 活動は,院内の治療に貢献する
    ための活動から,地域での食育啓発活動へ幅広く展開する
    活動に発展・転換してきた。具体的に勘案すると,栄養管
    理上,医療機器・手技に頼らない栄養補給方法の選択が最
    善である。とくに高齢入院患者では栄養補給方法の選択が
    退院後の日常生活を左右する。最も生理的な経口栄養法は
    施設,グループホーム,在宅など退院後の生活の場の選択
    肢が広がるが,経腸栄養・静脈栄養等の医療手技に頼ると
    受け入れ施設が限定されてくる。そのため,当院では高齢
    者における摂食・嚥下障害や誤嚥性肺炎,窒息の危険を考
    慮しながら,栄養補給の第一選択肢を経口摂取としてき
    た。その中で,必要な栄養を十分に摂ることが基礎体力を
    向上させ,経口摂取を可能にし,維持するにつながると実
    感するにいたった。更に,治療から疾病予防の観点に立
    ち,在宅での栄養管理・食育の重要性について認識するよ
    うになった。在宅における栄養の摂取は家族構成をはじめ
    多様であり,普段は意識しないことではあるが,必要な栄
    養量を各自が把握することが大変重要である。そのため
    我々は地域のコミュニティーや院内での住民に対する講演
    活動を通じて,在宅におけるオーダーメイドの栄養管理を
    啓発し,住み慣れた土地で健やかな日常生活を送るために
    必要な栄養サポートを患者・家族に提供し始めている。
  • 石井 洋子
    セッションID: S1-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉伊勢原協同病院では,患者さんに安心して食
    べられる給食を提供することを目的に,地元産野菜を「地
    産地消」の一環として平成17年1月から開始した。JA 病
    院として「地産地消」に取り組むということは,自給率向
    上に寄与し地域とより良い関係を作っていくために,大変
    重要なことと考えている。「地産地消」の利点として,生
    産者の顔が見える事により,食品の安心・安全につながる
    ことが挙げられる。また,経済的効果も図られている。
    〈現在の取り組み〉現在,JA いせはら野菜部会の部会員
    10人によって構成される「地場野菜出荷グループ」から,
    病院への野菜の納入が行われている。平成17年の取り組み
    開始時から,毎週水曜日の夜に生産者,JA 職員,当院管
    理栄養士で打ち合わせ会を開催,翌週分の野菜の納入者と
    量の確認をする。野菜の作付けについては,半年に1回作
    付け状況を聞き,出荷できる2週間前に生産者に成育のよ
    うすを確認している。入荷を予定していても,気候により
    成育が変わってしまうことがあり,常に野菜の納品時期は
    確認する必要がある。
    現在,野菜25種類,果物4種類,そして梅干が地場のも
    のとして時季に使用している。平成18年8月からは,地場
    野菜の消費拡大と職員に安全でおいしい野菜の供給のため
    に“地場野菜頒布会”も開始,「地産地消」の取り組みは
    病院中に拡がっている。
    〈今後の課題と方向性〉地場野菜の野菜全体に占める割合
    は,金額ベースで約30%,地場野菜の供給量が増えてくる
    と,野菜代金が下がり食材料費に反映している。今後,さ
    らに地場野菜の使用量を増やしていくことが求められてい
    る状況である。現在,当院では4週間のサイクルメニュー
    で献立を使用している。旬の野菜を積極的に使用していく
    ためには,四季に応じて野菜を変更し,きめ細かい対応が
    求められる。また生産者に対して,作付けについての要望
    を積極的に出していくことが必要と考えられる。
    スタートから5年が経過し,当院スタッフも地場野菜出
    荷グループと一体になって,これから5年について考え,
    この取り組みを繁栄させていきたいと考えている。<br
  • 山本 修一
    セッションID: S2-0
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    病院医療の崩壊は,平成14,16年の2期連続のマイナス
    改定に加え,病院の現状を無視した平成18年の診療報酬改
    定,史上最大のマイナス3.16%の改定により,一気に顕在
    化してきた。医療費抑制政策に加え,病院における医師,
    看護師不足,臨床研修制度,学会専門医制度,7対1看護
    体制,医師の逮捕など多くの要因が影響し合って,病院は
    機能不全を起こしていった。具体的には,病院からの医師
    の撤退,70%以上の病院が赤字という経営難により,病院
    の廃院等が生じた。この現象は特に地方の病院に多くみら
    れた。医療の機能分化と連携で成り立つ近代の医療は,地
    域完結型が基本となるので,地域医療の再生は必須の課題
    となっている。

    医療再生への途は決して簡単ではないが,過去における
    失敗を教訓とすることが重要である。しかし,単純に上記
    の要素をそれぞれ見直せばよいという考えで,同じ過ちを
    繰り返してはならない。必要な医療を地域で恒常的に提供
    できる仕組みをどう作ってゆくのかという視点で,何が重
    要かを考えなければならない。国民皆保険という世界に類
    をみない仕組みを持ちながら,なぜ地域医療は崩壊したの
    か,先進国に比べわが国に足りなかったものは何かなど真
    剣に検討されなければならない。そして大事な要素をしっ
    かりと押さえ,医療者のモチベーションが上がるような仕
    組みを構築してゆく必要がある。

    第1は,必要な医療費の確保である。これは絶対的な要
    素である。医療費の負担と給付の問題は,医療政策の基本
    として国民が納得できる形で解決されなければならない。
    第2は,医療を提供する側の問題として,医療の質と安全
    を確保するために,他の先進国に見られるような専門医制
    度の確立と地域医療ニーズに見合った医療資源の配置の仕
    組みを構築してゆく必要があろう。このような視点から私
    見を述べてみたい。
  • 古川 俊治
    セッションID: S2-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    「医療崩壊」と呼ばれる現象は,(1)国民医療費の在り
    方,(2)医師数の適正化,(3)勤務医の報酬の在り方,(4)医療
    紛争処理の在り方,(5)臨床研修医制度の在り方,(5)専門医
    制度の意義,(7)職域団体(医師会,学会等)の役割などの
    多様な問題点が複合的に関連した結果として起こったもの
    である。その解決に向けた議論では,それぞれの問題点へ
    の政策的対応が他の問題点の前提に少なからぬ影響を与え
    ることを考慮し,各種の問題点を総合的に扱う必要がある。

    諸問題のうち,医療紛争処理の問題については,医療事
    故調査委員会制度を早急に制度化しなければならない。臨
    床研修医制度については,大学病院との連携等に関する運
    用の弾力性を高める改正を行ったが,根本的な制度の検証
    を早急に進めることが必要であろう。
    ただ,中でも,最も重要な問題は,医療費の問題であ
    る。現在の先進国で世界最低レベルの医療費の水準を,先
    進諸国並み(対GDP で現在の1.5倍程度)の水準に引き
    上げる必要性は,既に与野党の一致した認識となってい
    る。その実現のためには,安定財源の確保が必要であり,
    早期に消費税を含めた税制の抜本改正を行うことが不可欠
    であろう。

    一方,医師の養成数増加の問題は,慎重に対応するべき
    である。既に2009年度から医学部の入学定員は10%程度増
    加している。今後人口減少社会を迎える日本では,徐々に
    医療需要は減少していき,2020年代半ば以後は医師過剰に
    転ずると試算されている。また,今後医学部入学定員を増
    やしても,卒前・卒後の教育期間が必要であり2030年頃ま
    では,地域医療で活躍できる医師の実質数は増えてこな
    い。すなわち,医学部の更なる定員増加は得策ではなく,
    必要なのは,現在から2020年代半ばまでの医療スタッフの
    マンパワー不足をどうやって補っていくかの問題である。
    それには,医療秘書を増員したり,一定の研修を経た看護
    師等に,安全性の確保できる範囲で,より積極的な診療行
    為の補助を認めたりするスキルミックスが必要であろう。
    同時に,女性医師の就業支援も重要であり,女性医師が,
    出産・育児を経ても臨床業務を続けられるよう,多様な働
    き方を可能とする制度改革を行っていく必要がある。
    また,仮に今後医師数が充足していっても,労働環境が
    厳しくて報酬が少ない診療科の医師増には繋がらない。第
    一の改善策として,基幹病院の勤務医が一般外来患者の対
    応に忙殺される現状を合理化し,軽症患者は救急患者も含
    めて診療所等の中小医療機関が対応していく役割分担体制
    の構築が必要である。
  • 濱田 正行
    セッションID: S2-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    われわれ厚生連病院は,「地域に根ざした医療」,「地域
    を支える医療」,「地域で求められる医療」の三つの柱を
    もって地域住民の生命と健康を守るという共通理念のも
    と,地域医療の遂行に取り組んでいる。しかし大都市では
    なく,地域に大方の病院が立地する厚生連では,医師,看
    護師等医療スタッフが大都市に集中し地方に大幅に不足す
    る地域偏在の波に曝されながら,地域を問わず高度で安全
    な医療を求める住民のニーズに応えている。
    三重県は南北に長く,大都市名古屋を擁する愛知県に隣
    接する「北勢医療圏」から南,南西に伸びて「中勢・伊
    賀」,「南勢・志摩」,「東紀州」の4つの二次医療圏に分か
    れるが,本州の幹線(新幹線,東名・名神高速道)から離
    れるにつれ人口の過疎化,高齢化が目立つ。しかし本県の
    特徴は伊勢湾に面して温暖な気候に恵まれ,農林水産業と
    製造業が程ほどにマッチして食と住の環境は高いレベルに
    維持されており,極めて生活しやすい地域である。このよ
    うな環境で世帯別貯蓄高は東京都に次いで2位であるが,
    平均寿命は男20位,女34位,県民一人に要する医療費は31
    位と,すべて全国レベルのおおよそ中庸に位置する。しか
    しながら平成20年の厚労省統計では,人口10万対医師数は
    186人で47都道府県中38位,看護師数は636人で全国平均
    687人を大きく下回るなど医療スタッフの数においては下
    位にあるのが現状である。
    平成16年度から始まった初期臨床研修制度の下,三重県
    全体で初年度の募集定員125名に対しマッチ者数は56名で
    あった。その後毎年増加を示し20年度は154名の定員枠に
    90名のマッチ者が決定し,マッチ率は依然として低いもの
    の絶対数で確実に増加している。これは三重大学医学部と
    歩調を合わせ初期研修医,後期研修医を一人でも多く三重
    県に確保しようとすべての研修病院が努力している結果で
    あるが,この中で「NPO 法人MMC(Mie Medical Complex)
    卒後臨床研修センター」の活動も大きく寄与している。
    MMC 設立の歴史と経緯について述べ,研修医獲得に
    向けての活動を紹介する。最後に当院の医師確保と地域医
    療提供の現状を報告する。
  • 若林 剛
    セッションID: S2-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    地域医療崩壊という言葉がマスメディアに頻繁に取り上
    げられるようになったのは,2006年頃からであろうか。
    私は2005年の秋に慶應義塾大学外科の講師から岩手
    医科大学外科の教授になるために,岩手県盛岡市に赴任した。
    岩手県は人口10万人あたりの医師数が179.1人で全国
    8番目の少なさであるが,1平方キロあたりの医師数は北海道に
    次ぎ全国で2番目の少なさである。赴任後に最初に気づいた
    ことは盛岡市内の開業医の多さであり,街を歩くと1ブ
    ロック毎に何らかの科の開業医を見つける。次に県内の関
    連病院を視察し知ったことは,盛岡市内から車で平均2時
    間位かかる人口過疎地に地域中核病院が点在しており,麻
    酔常勤医がいない病院や外科常勤医が3人未満の病院が存
    在することであった。2004年に導入された初期臨床研修制
    度の負の効果として,若い医師の偏在が挙げられる。つま
    り,地方から都会へ,大学病院から市中病院へ,つらい診
    療科から楽な診療科へと若い医師が流れた。幸い岩手医科
    大学外科にはこの4年間で31名の若い医師が加わったが,
    若い医師に魅力を提示できない多くの地方大学の診療科で
    は教室員は減少している。以下に私見を述べる。過疎地に
    は雇用が無いから人口が減り,医師が子息を学ばせたい進
    学校がなく,過疎地中核病院勤務への心理的抵抗が生ず
    る。若い医師の偏在により,地方大学のつらい診療科は過
    疎地の病院から大学へ医師を引き上げざるを得なく,忙し
    くなった地域中核病院勤務医はいわゆる「立ち去り型サボ
    タージュ」により開業を選択する。この負の連鎖を断ち切
    るためには,早急に3つを提言する。1)初期臨床研修医
    募集数と医学部卒業生の数を同程度にし,都道府県人口あ
    たり必要な初期研修医数を決め,初期臨床研修マッチング
    に過度な競争と地域偏在をなくす,2)医師は公共性が高
    い職業であり,ある程度は行政が介入し開業への制限と各
    診療科医師数の調整を行う,3)医療費抑制政策の撤回に
    より,地域医療崩壊の現場にインセンティブを与える診療
    報酬を設定する。本質的には,地域医療の崩壊は地域社会
    の崩壊と同義である。地域社会に産業の活性化と雇用の確
    保を行えば,大都市への人口集中は防げるので地域社会の
    教育や医療も充実できるはずである。
  • 鈴木 宏昌
    セッションID: S2-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    我々の地域では,唯一の救命救急センターを核としたメ
    ディカルコントロール協議会(BANDO メディカルコン
    トロール協議会)が中心になって毎年『救急患者の搬送困
    難(たらい回し)事例』を集計している。集計結果を見る
    と,救急患者を受け入れられる医療機関が減少し,残った
    救急医療機関に救急患者が集中している様や救急医療の崩
    壊を来している原因が何であるのかを垣間見ることができる。
    管内で年間44,598件ある救急搬送のうち8,360件
    (19%)が少なくとも1回は医療機関に受け入れを断られ
    ており,712件は5回以上断られている。最多問合せ回数
    は20回を超え,2007年には34回に達した例もある。多くの
    救急医療機関が年間100回以上救急車受け入れを断り,あ
    る施設では年間1,500回を越している。医療機関が救急搬
    送を断る理由の30%は『専門外』であり『処置不能』と合
    せると43%を占める。一方,『満床』を理由に断っている
    のは11%に過ぎず,『多忙』や『処置中』が30%を占めて
    おり,救急医療機関の疲弊が見て取れる。
    『専門外』が多いのだから医師を増やして専門医を増や
    せばよいと考えるのはあまりにも早計である。専門医が何
    人いても『専門外の患者は見られない』専門医が増えたの
    では救急医療は成り立たない。救急医療は,どんな救急患
    者に対しても根本治療ができることを求めているわけでは
    ない。むしろそうあるべきではないだろう。しかし,どん
    な救急患者に対しても生命の危機を防ぎ,その患者の必要
    としている医療を判断し専門治療に導くことが求められ
    る。もはや一部の献身的な医師の使命感や努力と犠牲だけ
    で地域救急医療は支えることができない。
    『搬送困難』事例の増加は,地域救急医療の破綻を示す
    ものであるが,その原因は救急搬送システムにあるのでは
    なく,医療機関の,あるいは医師の救急医療に対する認識
    の相違とそれを取り巻く社会環境にあると思われる。この
    根底には,過度の専門医志向により専門外の診療ができな
    い医師を増やし,それを許容してきた医療界や行政,そし
    て主権者たる国民の責任がある。こうした過度の専門医志
    向を残したままでは,医師を増産しても専門外の診療がで
    きない医師を増やすだけで救急医療崩壊の解決にはならな
    い。地域救急医療の崩壊を蘇生し,社会復帰させることが
    できるのは,即効薬や専門医ではなく,蘇生のために何が
    重要なのか共通の認識をもった上でのチーム医療であろ
    う。もし,国民が本当に『命は何ものにも代え難い』と考
    えるなら,国民の命を守るための『救急医療基本法』など
    の法的整備を求めるべきだろう。
  • 武田 康久
    セッションID: S2-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    我が国の医療は,これまで国民皆保険制度の下で平均寿
    命や乳児死亡率をはじめとして,世界的にも非常に高い保
    健医療水準を達成し,国民の安心を支えてきた。しかし,
    その一方で,産科,小児科や外科をはじめとした医師不足
    の問題,医療の地域格差の問題,厳しい勤務環境にある勤
    務医の負担軽減,救急患者の受入体制の確保など,喫緊の
    課題に直面している。
    こうした状況の改善を図るため,特に医師確保を中心と
    した医療の確保への取り組みにあたっては関係省庁が連携
    の下,制度や予算面を含めた各般の対策を進めているとこ
    ろであり,その一環として平成21年度大学医学部定員を大
    幅に増員したほか,本年度予算においては,産科,救急,
    へき地などの現場で働く医師の手当への財政支援,医師事
    務作業補助者の配置など医師の勤務環境の改善や,都道府
    県における医療機能強化,医師確保等の取組に対する財政
    支援等に取り組んでいるところである。
    地域における適切な医療の確保については,それぞれの
    地域における状況,意見等をよく踏まえた上で種々の側面
    や立場からの多様な対策を立案,実行していかなければな
    らない。それぞれの地域ごとに医療に係る背景,資源その
    他固有の状況が異なるのは言うまでもないが,それらの諸
    要因を十分に踏まえるとともに,客観的なデータ等に基づ
    いた系統的,恒常的な現況分析を行うことによって当該地
    域における医療に係る諸課題を抽出し,その地域に必要な
    医療の確保に向かってそれらの課題を一つ一つ解決するた
    めの対策群を有機的に展開していく必要がある。こうした
    医療確保に向けた対策の基本的方向性を含め,地域におけ
    る医療提供体制づくりのマスタープランとして各都道府県
    は医療計画を策定することとされている。量的視点から質
    的視点の重視へと大きくシフトし,また,医療を提供する
    側のみならず受容する側等を含めた幅広い視点の重要性を
    あらためて位置づけた新しい医療計画について,当該計画
    が目指す地域医療の姿という観点から概説させて頂きたい。
  • 神保 京美, 飯尾 宏, 山内 格
    セッションID: WS1-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    近年,有害反応の少ない抗がん剤の開発,有害反応に対
    する支持療法の進歩,DPC による在院日数の短縮化があ
    いまって,急速に外来化学療法が広まった。当院では2006
    年8月より外来化学療法センターを開設し,外来化学療法
    を行っている。
    患者が安全かつ確実にそして快適に外来化学療法を受け
    る事ができるよう,限られた医療スタッフの中で多職種の
    スタッフ同士が連携して外来化学療法に取り組んでいる。
    その実際について述べたい。
    1.外来各科との連携
    各主治医と各科外来看護師との連携を密にするため,毎
    朝外来化学療法センターの看護師が外来に赴き,ミーティ
    ングを行っている。
    2.病棟との連携
    入院中に外来での化学療法が決定した場合は,外来化学
    療法センターの看護師が患者訪問しオリエンテーションを
    行っている。その際担当看護師から得られた情報を活かし
    て患者と関わることが出来ている。
    3.薬剤師との連携
    当院では抗がん剤ミキシングを外来化学療法センターで
    行っており,薬剤師とのコミュニケーションが容易に取れ
    る環境にある。
    4.多職種との連携
    センター開設当初より多職種のスタッフを交えてのカン
    ファレンスを定期的に実施してきた。現在はがん化学療法
    委員会に形を変えて意見交換を行っている。委員会では新
    規レジメンの登録承認の他,院内の化学療法実施に際する
    諸問題の解決に取り組んでいる。
    開設当初に比べ,患者数は増加し新規抗がん剤の登場で
    レジメンも多様化してきている。それに伴い予約管理や点
    滴管理は複雑化し,新たな有害反応も出現するようになり
    外来化学療法センターの業務は困難を極めている。こうし
    た中で,患者が安全で快適に化学療法を受ける事ができる
    ような環境を整えるためには,多職種間の連携が非常に重
    要であると考える。
  • 宮崎 嘉英, 山下 智子, 豊田 妙子, 九鬼 大作, 森 章哉, 矢納 研二, 川上 恵基, 浜田 正行
    セッションID: WS1-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    1990年以降のがん化学療法における有効な支持療法薬の
    開発や分子標的治療薬の出現に伴い,外来で実施可能なレ
    ジメンの開発が進み治療は病棟から外来へと移行し始め
    た。また,2002年の医療保険制度改正で,外来がん化学療
    法に診療報酬上加算・無菌製剤処理加算が認められたこと
    や患者のQOL 改善の目的で外来化学療法室を設置する施
    設が増加した。また現在は,DPC 導入やFOLFOX など
    の在宅でのレジメン増加により,さらに外来で治療する患
    者が増加している。その一方で,殺細胞性である従来の抗
    がん剤や,細胞増殖抑制作用のある分子標的治療薬の投与
    には,緊急の対応を必要とする危険が常に伴っていること
    から患者に安心して外来治療を受けてもらうには,帰宅後
    の有害事象への対応が重要になってくる。
    がん化学療法に伴う緊急の対応を要する代表的な症状と
    しては,過敏症によるアナフィラキシーショック,腫瘍崩
    壊症候群,血管外漏出による皮膚の炎症や壊死,敗血症に
    よるショック,播種性血管内凝固,またFOLFOX レジメ
    ン時に使用するインフューザーポンプのトラブルへの対応
    などがあると考える。これらの症状は早期に発見し,適切
    な対応をしなければ重篤な状況に陥る可能性が高いので,
    緊急時に適切な対応ができる環境作りを行なっていく必要
    性がある。そのためには,救急受け入れ体制の整備と患者
    が早期に気づき連絡できるように十分な情報提供が必要で
    ある。しかし,当院の現在の問題点として外来化学療法中
    である患者の救急受け入れ体制の整備が不十分であり,対
    処方法は主治医により異なり明記していないことも多く,
    緊急時の対応に苦慮することが多かった。今回当院では,
    医療スタッフが周知し迅速かつ適切な対応ができるように
    「化学療法室使用中患者有害事象出現時対応指示票」を用
    いて取り組み,外来化学療法室と救急外来の連携をはかる
    ことができたのでここに報告する。
  • 中島 恵子, 礒貝 明彦, 井向 幹栄, 小川 智恵子, 只佐 正嗣, 藤堂 未来, 横山 聡, 大田 博子, 福田  康彦
    セッションID: WS1-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉当院は2006年に地域がん診療連携拠点病院に認可
    され,2008年4月に外来化学療法室を4床から10床に増
    床,本格的に稼働を開始した。薬剤部は2007年がん化学療
    法業務に参画以降,抗がん剤調製・レジメンの整備・薬歴
    管理のみならず,院内の全がん化学療法業務における安全
    管理システムを構築してきた。今回,インシデントレポー
    トならびにプレアボイド報告を分析し当システムを検証す
    る。
    〈方法〉当院にて2006~2008の3年間に集積した全薬学的
    インシデントレポートよりがん化学療法業務を抽出,5項
    目に分類した。プレアボイド報告も同様にがん化学療法分
    野のみ抽出,分析を行った。
    〈結果〉抗がん剤調製時のインシデントは2006,2007,
    2008年度で33,33,11%,薬剤部の全抗がん剤調製開始以
    降,激減した。レジメン整備に伴い,2008年9月以降,医
    師指示時のインシデントを0件,指示伝達時1件のみの発
    生に抑えている。プレアボイドは,2009年度4月の遷延・
    重篤化防止報告が1件,未然回避報告が8件,5月はそれ
    ぞれ1件と6件,6月は0件と3件である。
    〈考察〉2008年4月より薬剤部主導にて,月1回レジメン
    審査,また,隔月に1回がん化学療法の運用についての会
    議を開催している。診療科毎,医師毎に作成され全く管理
    されていなかった全レジメンを臓器別に統一し,前投薬,
    嘔吐リスク,プラチナ製剤投与時の水分負荷について院内
    基準を取り決めた。加えて,がん化学療法データベースの
    構築も開始,日常のがん化学療法業務全過程でのダブル
    チェックを遂行している。当院の化学療法安全管理システ
    ムは十二分に機能していると考える。
    〈結語〉薬剤部は,日常業務において外来化学療法室看護
    師とのミーティングを行い,外来化学療法月平均約250
    件,入院化学療法約150件全てについてのきめ細かい薬歴
    管理を行い,更に抗がん剤調製,文献検索,レジメン作
    成・登録,データベース管理と多岐にわたる業務を通じ,
    がん化学療法業務の事務局として安全管理の責任を担って
    いる。現在,多職種での情報共有の実現に向け,院内イン
    トラネットでの情報管理システムを更に構築中である。
  • 福原 昇
    セッションID: WS1-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    患者取り間違えは最も注意すべき問題である。従来,医 療従事者は患者を顔で認識していたが,DPC の導入後は 入院期間の短縮化,患者数の増加があり患者の顔を覚えら れない事が増えている。また入院前に検査を行うため外来 での検査件数も増加している。このため取り扱い患者数は 増加し取り間違えの危険性は以前よりも高くなっている。 患者識別として外来では名前を読んでの確認,入院ではリ ストバンドを使用する方法が行われているがこれらでは不 十分である。呼称のみでは聴力や認知能力の低下者や高齢 者には適当な対応方法とは言えない。リストバンドの使用 は費用,使用感,文字のかすれ等の問題がある。そこで生 体情報を利用した新しい患者認証方法を考案した。
    〈従来の生体情報を利用した識別法〉現在,生体情報を利 用した個人認証には指紋認証,静脈認証,虹彩認証,顔認 証などが使用可能である。一部の指紋認証法以外は使用す る機器が大型,高価であり設置場所および費用面で問題が ある。また従来の方法では院内に生体情報を保管する必要 がある。さらに接触型センサの不特定多数患者での共有は 院内感染の問題もある。その上患者の状態の変化による検 出困難な情況も考えられ適当とは言えなかった。
    〈新方式での個人識別〉診察券をIC カードとしカード内 に特殊な小型指紋認証センサを付けた。本カード表面には 写真を付けることも可能であり名札としての使用も可能で ある。本カード情報の読み取り機器は安価で小型であり設 置も容易である。個人専用のため院内感染の問題もない。 指紋情報を病院が保管する必要もない。本カード内には既 往症,禁忌薬剤などの医療情報を記録する事も可能であ る。本カードでの個人認証は院内のみならず院外施設にて も共有可能であり最適の認証システムと考える。
  • 畠山 幸子
    セッションID: WS2-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】認知症は、脳の気質的な要因により記憶、判断、思考の知的機能に支障をきたし、社会性が営めなくなった状態をいい、その認知症の維持、改善、予防のひとつに学習療法がある。学習療法とは「音読を中心とする教材を用いた学習を学習者と支援者がコミュニケーションを取りながら行うことにより、学習者の認知機能やコミュニケーション機能、身辺自立機能などの前頭前野機能の維持・改善を図るものである。」といわれている。今回学習療法を実施し認知機能、コミュニケーション機能、身辺自立機能の改善がみられたので報告する。【方法】入院患者3名に週3回簡単な読み書き、1桁の計算、数字並べの学習療法を実施した。学習療法実施前、3ヵ月後、6ヵ月後、9ヶ月後、1年後に前頭葉機能検査(FAB)、全般的認知機能検査(MMSE)、老年者用精神状態尺度(NMスケール)、老年者用日常生活動作能力尺度(N-ADL)を用いて評価した。学習療法で使用した問題シートは、FABとMMSEの検査結果に合わせ、患者が必ず100点を取れる内容を実施した。【結果】学習療法実施後、3名全員にFAB、MMSE、NMスケールの点数が上昇し、前頭葉機能、認知機能に改善がみられた。特にNMスケールにおいては、関心・意欲・交流に関しての点数が大きく上昇し、患者自ら他の患者、職員に話しかけ笑顔が多くみられるようになった。N-ADLは、1名に摂食、排泄の点数上昇がみられ、排泄はほぼ自立するまでになった。他の2名は変化なかったが、ADLの維持には繋がった。その後A氏は施設に入所したが、A氏と家族は学習療法を継続したいという希望があり、現在も訪問看護師が介入し学習療法を継続している。
  • 米澤 絵美, 真乗坊 弘子
    セッションID: WS2-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    認知症患者の中には,家族や介護者に対する暴言や暴力
    といった易怒性や攻撃性が顕著で,結果としてその要因に
    より入院せざるを得ないケースも多々存在する。
    認知症患者を対象とした笑いやユーモアに対する先行研
    究では,情動安定と日常生活動作の拡大への効果があると
    すでに報告されている。そこで,特に易怒性・攻撃性が顕
    著な2事例の認知症患者に五感に対する快のアプローチか
    ら,情動の安定を図ることを目的として,【笑い微笑み体
    操】と【笑いに関するビデオ鑑賞】を試みた。データとし
    て,期間前・中・後における周辺症状の有無,出現時の時
    間帯および状況などの比較検討とプログラム実施中の参加
    観察によって得た。
    プログラム実施中は,易怒性,攻撃性は明らかな低下を
    示し,同時に穏やかな他者への興味や関心を引き出し,笑
    いを共有しようとする表情や言動を互いに導くことが可能
    となった。このことから,他者とのコミュニケーションを
    円滑にする効果も得られると考えられた。しかしながら,
    プログラムが終了すると,再び易怒性・攻撃性や大声など
    が開始前と同様な回数もしくは増加する結果となった。
    認知症患者に対する“笑い”を媒介にしたプログラム
    は,情動や周辺症状などの改善を期待するものだけではな
    く,副次的に他者への興味,親近感や連帯感,心地よさも
    生じさせ,結果として心理面や対人関係に影響を与えるこ
    とが可能であると考えられた。これは,プログラム実施期
    間が終了後に開始前と同様な状況に陥ったことからも推測
    される。しかし,対象患者2名に影響したものが,“笑い”
    だけによるものであるとは断定出来ない。プログラムの中
    で,スタッフが密に関わる時間を持つことが影響したの
    か,もしくは少人数のグループでの関わりが影響したのか
    など多角的な再検討と継続するための手立ての構築などの
    課題を得ることができた。
  • 松尾 千代
    セッションID: WS2-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    当院の回復期リハビリ病棟は,脳血管障害の患者が大半
    を占める。後遺症の中で認知症は,その後の生活に大きな
    影響を及ぼし,アルツハイマー型認知症に比べて障害部位
    由来のBPSD(行動,心理症状)が多彩で発症後間もな
    く症状が現れるため,家族は強い衝撃を受ける。スタッフ
    が対応に苦慮し,「困った人」という見方に陥ると,患者
    の自尊心は低下し,家族関係にまで弊害が及ぶ。これを防
    ぐための取り組みの報告と提言をしたい。
    1.家族に困ったことばかり報告しない。
    苦労は強調したくなるものだが,それを聞いた家族は
    「迷惑をかけている」「プロが困るのだから自分たちには
    世話ができない」などの思いを抱きやすい。実際以上に悪
    い状態と捉え,患者の前で「情けない」等,尊厳を低下さ
    せる言葉を吐いてしまう。
    2.当たり前の説明を忘れない。
    認知症に対しては未だに,何を言っても分からないしど
    うせ忘れてしまう,といった偏見が存在する。ただでさえ
    混乱している時期に,説明もなしにケアをすると,何をさ
    れるのだ,という恐怖感から強い拒否行動がおこる。
    3.残された能力とその人らしさを発見し,伝える。
    認知機能がどれだけ障害されても,話し方,身のこな
    し,気遣い等,その人の人となりは必ず残っている。人は
    誰でも短所ばかり指摘されると傷つくし,逆に長所を伝え
    ることで良い方向に伸びるものである。認知症の方も同じ
    である。残されている健全な力を発見することは,その人
    の尊厳を維持し,スタッフの喜びにもつながる。
    4.有効な治療方法の確立,地域社会における理解と支援
    体制の確立
    前頭葉症状が強い患者には,自制したくてもできない脱
    抑制や保続による苦痛があり,周囲から奇異な目で見ら
    れ,社会資源を利用しづらいという現実がある。救われた
    命が真に生かされるために,医療,福祉,社会は理解と協
    力を強化する必要がある。
  • 横山 剛義, 田中 真之, 柏木 浩暢, 西岡 道人, 玉川 英史, 飯尾 宏, 篠田 政幸, 別所 隆
    セッションID: WS2-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    高齢者の疾患を診療する際は,認知症の問題が入院中,
    外来を問わず対応に注意を要する場合が少なくない。今回
    は医師の視点からの問題点を取り上げ,対応への注意点や
    工夫について述べたい。
    わが国の認知症患者はごく軽度のものを入れると約200
    万人といわれているが最近ではこれらの認知症も早期発
    見・早期診断が重視されるようになってきている。早期に
    発見し早期に介入することにより患者やその介護者の
    QOL を高めることが重要であるという考え方が優勢に
    なってきているからである。さらに一歩進めて予防ができ
    ればもっとよいことはいうまでもない。
    われわれの職務領域(外科)では手術を予定する高齢者
    が患者となることが多く,年齢的に当初より認知症を診
    断・治療されている例もまれではない。体力的に比較的余
    裕のある,より年齢層の低い患者層でも,悪性疾患など高
    度の肉体的・精神的ストレスのかかる環境におかれた場合
    はせん妄症状が起こりうる。
    手術等に伴うせん妄は肉体的ストレスの軽快により時間
    とともに回復することも多いが,その奥には認知症の早期
    症状がかくれていることも少なくなく,その鑑別は困難である。
    認知症の中核症状である認知機能の障害への対応はもち
    ろん重要であるが,実際の医療や介護の現場ではそれより
    も周辺症状といわれる,いわゆるBPSD(behavioral and
    psychological symptoms of dementia)への対応に苦慮
    し,それらが患者や介護者のQOL を障害していることが多い。
    他疾患治療を契機に認知およびその周辺症状が発現,増
    悪する可能性を減らすことがこれからの課題であり,それ
    らの解決策について討議していきたい。
  • 五艘 香, 小瀧 浩, 別所 隆
    セッションID: WS3-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉ストレスを自覚する労働者の増加,仕事上のスト
    レスにより精神障害を生じたとする労災認定件数や過労自
    殺の増加など,職場のストレス問題がクローズアップされ
    てきている。使用者の労働者に対する安全配慮義務も厳し
    く問われる時代に変化してきており,職場として職員のメ
    ンタルヘルスに取り組んでいくことが非常に重要であると
    考える。
    伊勢原協同病院では,まず職員の相談窓口を開設しメン
    タルヘルス支援体制を構築してきた。本ワークショップで
    は,特に心の健康問題による休業者に対する復職支援に焦
    点をあてて報告したい。
    〈復職支援の必要性〉心の健康問題は,他の疾患と比較し
    休業期間が長期化傾向にある。また完治での復職は少な
    く,服薬しながらの寛解や軽快による職場復帰になること
    も少なくないと言われている。しかし職場が安全・安心な
    医療提供が第一となる医療現場であり,復職する事は生命
    と健康を背負う重責の下,過度な緊張を求められ業務を遂
    行しなければならないという現状もある。そのためにも職
    員自身が安全・安心して仕事に取組めると実感できるサ
    ポートが必要になってくるであろう。当院でも心の健康問
    題による休業者の増加が見られており,早い段階からサ
    ポートを行っていくことが有効なのではないかと考えてい
    る。
    〈復職支援マニュアルの作成〉厚生労働省から平成16年に
    「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手
    引き」が公表された。ケースごとに柔軟に対応していく事
    が重要であるが,上記手引きを基に今までの対応ケースを
    振り返りながら,当院の実態に即した復職支援マニュアル
    の作成を試みたので報告する。また実際に復職支援をして
    いく中での難しさ,また今後の課題などについても触れら
    れればと思う。
  • 甲斐 寿美子, 吉川 初江, 佐々木 良枝
    セッションID: WS3-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    族に対し,多くの職種との連携によって医療・看護サービ
    スを提供するため,ストレスの多い職場であるといわれて
    いる。当院においても,2006年度より病院職員のための心
    の健康相談窓口,『友の部屋』を設けて職員のメンタルヘ
    ルスケアに取り組んできた。今回はその活動内容を紹介す
    る。
    『友の部屋』は,看護部組織から発足し,発足当初は看
    護職への教育サポートとメンタルサポート双方の役割を兼
    ねたものであった。経験豊かな看護師が,主に新入職看護
    師の技術教育や臨床現場への適応をサポートする活動を
    行っていた。しかし忙しい臨床現場に適応できず深刻に悩
    んでいたり,多くの専門職の中で複雑な人間関係に悩んで
    いる人も少なくなく,一看護職が教育サポートとメンタル
    サポートの双方を実施することは,負担が大きく困難な状
    況が見られてきた。また単に相談やサポートのレベルでは
    対応できず,専門機関への受診につなげなければならない
    事例もあり,メンタル相談に応じるシステムの構築の必要
    性が高まっていった。
    2006年からは看護師で産業カウンセラーの資格をもつ専
    任の相談員を配置し,2008年に助産師の資格をもつ相談
    員,さらには臨床心理士を配置し,3人で相談業務を行っ
    ている。
    『友の部屋』では,看護職のみでなく全病院職員が,「仕
    事に疲れた」,「人間関係がうまくいかない」,「相談したい
    が職場の上司や同僚には話しににくい」,など悩みを抱え
    ている時に,いつでも気軽に相談できるような体制を整え
    てきた。相談員が職場訪問をして個別相談や,間接的な相
    談に応じたり,希望者には継続的な個別相談を実施し,必
    要児には専門機関を紹介することも行い,相談者がより安
    定し状態で継続して勤務が出来るようにサポートしてい
    る。また月に1回は3人でカンファレンスを行い,必要な
    情報交換や状況報告を行っている。
    今後は職種の違う3人の特徴を活かし,連携を図りなが
    らさまざまな相談に応じていけるようにしていきたいと考
    えている。
  • 城戸 滋里
    セッションID: WS3-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    看護職は感情労働の職種ともいわれ,離職率や職務スト
    レスの高い職種として広く認知されている。しかし,その
    具体的なストレス内容は,経験年数,勤務部署,役職に
    よっても多少異なる。そこで,主なストレスの現状と望ま
    しい対処策について列挙する。
    1.1)新人看護師:新しい環境への戸惑い,リアリ
    ティショック,思うように仕事ができない辛さ,看護技術
    の未熟さ,理想とする看護との乖離等を感じやすく,睡眠
    不足,体調不良を訴え,早期に離職願望を抱きやすい傾向
    がある。2)2年目以上の看護師:未熟な新人看護師への
    イライラ,対人関係への葛藤,役割の曖昧さへの悩み,職
    場の人的環境,医師との関係(指示受け・連絡・調整
    等),ベッドコントロール,退院患者の手続き業務,師長
    不在時の対応等で感じやすく,判断を求められる役割にス
    トレスを感じる傾向がある。
    2.部署:精神科での疲弊感,シニシズム,救急外来で
    の患者からの威圧的言動,泥酔状態への対応,ターミナル
    病棟での医師の治療方針,患者家族間の葛藤への対応,小
    児科での保護者への対応等がある。
    3.主任,師長:職場の人的環境の調整,役割意識,
    リーダーシップを期待されることにストレスを感じる傾向
    がある。その他:共通して挙げられる内容としては,言語
    的・身体的な暴力やセクシャルハラスメントを受けること
    もストレスに通じる。また,男性看護師の,休憩場所・ト
    イレなどの設備の少なさ,相談できる男性上司や同僚の少
    なさ,女性患者への対応時の葛藤からくるストレスなども
    重要な課題である。
    4.対処策:師長の理解力と支援が重要であり,その他
    に,意見交換できる雰囲気,個々の能力を発揮できる環
    境,良好な人間関係,アサーション・トレーニング等によ
    り個々が多様な価値観を理解し,人を受け入れ成長できる
    能力を養うことが必要といえる。
  • 松本 千穂
    セッションID: WS3-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    最近,医師不足という言葉を耳にする事が多くなってきた。
    2004年の新臨床研修医制度の導入に伴い大学からの医
    師派遣に頼っていた地方の病院は,勤務医の労働環境が悪
    化してきている。医師のストレス,疲労が以前より増加し
    メンタルヘルスの不調を示す医師が増加してきている。
    メンタルヘルスに対しての関心が高くなり産業医を中心
    に環境の改善や早期の不調者への対応,職場復帰へのサ
    ポートなどに取り組む機関が増えてきているが,産業医は
    同じ職種である医師に対して専門医への紹介が紹介先を含
    め難しい点が多い。また,医師は他の職種より職場での
    個々の責任が要求される事が多く復職のタイミングや周囲
    の関わり方など産業医の判断だけでは困難な事も実際はあ
    り,メンタルヘルスの専門医と産業医を中心とした職場の
    協力関係をいかに作るか,ご本人の許可を頂いた上での細
    やかな情報交換が大切であると考える。
  • 石崎 淳子, 松下 理恵, 本山 敏恵, 田島 由貴, 上野 潤子, 田地 由紀乃, 岡田 佳奈子, 古川 尚子, 藤本 七津美, 徳毛 宏 ...
    セッションID: WS4-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当院において経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下
    PEG と略す)の件数は年々増加し,他施設からの造設依
    頼やカテーテル交換も多くなっている。しかし現状は,各
    病棟での対応がまちまちであること,転院時の対応が統一
    されていないなど,問題点も多かった。そこで院内の知識
    や技術の統一,スムーズな地域連携を目指して活動を開始
    した。
    〈経過〉
    平成19年院内PEG コーディネーターチームの立ち上げ
    (消化器内科医師1名,内視鏡技師3名)
    ・ケアや知識の統一のため院内研修会の開催
    ・毎月1回の病棟ラウンド開始
    院内ネットワークを利用したPEG 管理
    ツール“PEGJAK”開設
    平成20年周辺施設へのアンケートをおこない,現状の把
    握と問題点の抽出と対策
    ・周辺地域医療従事者対象の研修会開催
    ・PEG 造設,交換依頼専用用紙の作成
    ・情報提供紙“PEG 通信”発行開始
    〈考察〉PEG 造設適応患者の拡大に伴い,院内でも複数
    の病棟でバラバラであったPEG ケアが,院内コーディ
    ネーターチームを立ち上げたことで,統一することができ
    た。またスタッフが関心を持ち,相談しながらPEG ケア
    を実施することができるようになった。管理ツール開設に
    より,情報の共有が可能となり,内視鏡部門と外来や病棟
    との継続した看護が可能となった。
    胃瘻は造設後の長期ケアが必要になることが多い。当院
    は地域支援病院として周辺施設との関わりが欠かせない。
    4名で立ち上げたPEG コーディネーターチームも現在は
    外来スタッフも加わり9名で活動している。今後も院内の
    みでなく周辺施設の抱える問題にも目を向け,適切な援助
    を提供できる体制を整えていきたい。
  • 新谷 周三, 沼澤 祥行, 三木 一徳, 石原 正一郎
    セッションID: WS4-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈背景〉在宅訪問看護の神経疾患患者に対する栄養管理
    は,主として経口摂取・在宅IVH・胃瘻PEG が考えられ
    るが,その適応,有用性,倫理性,QOL について一定の
    結論はでていない。
    〈対象と方法〉対象は,当院神経内科を1992年~2002年に
    退院後,在宅訪問看護に移行し,その後死亡した神経疾患
    80例(脳血管障害50例,老年性認知症9例,パーキンソン
    病11例,ALS など10例)である。この80例の在宅での栄
    養方法は,経口摂取群23例,在宅IVH 群21例,PEG 群36
    例に分けられ,3群間の年齢,生存期間,血清アルブミン
    値,嚥下障害度/ADL/認知症度は,軽症(1レベル)
    ~重症(5レベル)で比較検討した。
    〈結果〉在宅開始時の年齢は,経口群76.9±8.7歳,IVH
    群78.7±7.7歳,PEG 群77.3±8.0歳と有意差なし。生存
    期間はKaplan-Meier 法のLog-rank テストでは有意差を
    認めなかったが,t 検定で経口群:399±257日に比べ,
    IVH 群:725±616日(P=0.02),PEG 群:736±765日
    (P=0.04)と有意に延長。嚥下障害度は,経口群:1.9
    レベルに比べ,IVH 群:3.7レベル(P<0.001),PEG
    群:4.4レベル(P<0.001)と有意に重度。血清アルブミ
    ン値は,PEG 群:3.0±0.5g/dl で,経口群:3.4±0.5g/
    dl(P<0.01),IVH 群:3.4±0.6g/dl(P<0.01)に比べ
    有意に低下。ADL は,経口群:3.3レベルに比べ,IVH
    群:4.4レベル(P<0.001),PEG 群:4.5レベル(P<
    0.001)と有意に重度。認知症は,経口群:2.4レベルに比
    べ,IVH 群:3.6レベル(P<0.01),PEG 群:3.9レベル
    (P<0.001)と有意に重度であった。
    〈結論〉IVH 群・PEG 群は,経口群に比べ,在宅開始時
    の嚥下レベル・血清アルブミン値・ADL・認知レベルが
    全て有意に低下しているにもかかわらず,より長い生存期
    間を得た。Kaplan-Meier 法でも,少なくとも生存期間の
    短縮は認めなかった。
  • 和田 勲, 渡部 博之, 星野 孝男, 稲葉 宏次, 藤井 公生, 米山 和夫, 金沢 憲由
    セッションID: WS4-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉経皮的内視鏡的胃瘻増設術(Percutaneous
    Endoscopic Gastrostomy : PEG)は,従来Pull/Push 法,
    Introducer 法が行われてきた。最近,それぞれの欠点を
    補いつつ様々な工夫がなされている。一方,安全かつ苦痛
    の少ない経鼻内視鏡検査が注目されている。経口内視鏡に
    比して嘔吐反射が起こりにくく,検査中会話が可能であ
    り,リピーターの増加も期待できる。下咽頭癌や食道癌の
    狭窄例,開口障害などの症例にも挿入可能である。今回
    我々はIntroducer 法を改良発展させたDirect 法と経鼻内
    視鏡を併用し,従来の経口内視鏡Pull 法と比較検討した
    ので報告する。
    〈対象〉2007年1月~2008年12月にPEG 造設を施行した
    140例,男:女57:83,経口内視鏡+pull 法(OP 群)40
    例,経口内視鏡+Direct 法(OD 群)34例,経鼻内視鏡+
    Direct 法(ND 群)66例に分類した。
    〈結果〉背景疾患は,脳血管障害,認知症,誤嚥性肺炎,
    神経筋疾患など。術中循環動態はOP 群,OD 群に比し
    ND 群では安定しており,OP 群10%(4/40),OD 群
    14.7%(5/34),ND 群4.5%(3/66)に酸素飽和度の
    低下を認めた。すべての群で術中出血などは認めなかっ
    た。術後早期の肺炎はOP 群5.0%(2/40),OD 群5.9%
    (2/34),ND 群0.0%(0/66),刺入部感染症はOP
    群に5.0%(2/40)認めるのみであった。刺入部出血は
    OD 群に1.5%(1/66)認めた。他の合併症はOD 群に
    1.5%(1/66)認めた。7日以内の早期死亡例は認めず,
    30日以内の死亡例はOP 群2.5%(1/40),OD 群11.8%
    (4/34),ND 群4.5%(3/66)であった。誤嚥性肺炎,
    基礎疾患の悪化などが死亡原因であった。
    〈考察〉経鼻内視鏡は経口内視鏡に比べ患者の循環動態の
    変化も少なく,施行者の負担も少ない。一方Direct 法に
    よるPEG 造設はpull / push 法に比べ咽頭を通過しないた
    め刺入部感染が少なく,Introducer 法に比べサイズの太
    いPEG を挿入できる。これらを併用することで速やかに
    PEG 造設を安全に行えることが示唆された。
  • 矢野 貴史, 龍 貴裕, 前澤 寧, 小野 弘二, 大野 隆
    セッションID: WS4-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    当院における胃瘻カテーテル交換は,開始当時簡便に行
    えると考えられたバルーンタイプ胃瘻カテーテル(BT カ
    テ)を選択した。狙いは在宅では開業医に,また施設では
    施設の医師に交換してもらうことで我々の負担を軽くする
    ことであった。しかしながらカテーテル交換時の偶発症が
    マスコミでクローズアップされ,胃瘻にアマチュアの医師
    には敬遠されて,結局多くは我々が病院外来にて交換する
    こととなってしまった。我々は確実に胃内腔にカテーテル
    が挿入でき,その証拠を残し,かつ収益も上げることを目
    標とした。方法は交換時に腹壁と胃壁の瘻孔が壊れないよ
    うにするため,交換前のBT カテにガイドワイヤー
    (GW)を挿入しカテーテルの軸(挿入角度)を意識しな
    がらGW を胃内に残して抜去する。次に新しいBT カテ
    を先ほどの軸を意識してGW に沿わせて挿入し(セルディ
    ンガー法),その後ウログラフィン20mL と生理的食塩水
    20mL を混ぜたものを交換したBT カテより注入して腹部
    XP を撮る。ウログラフィンを使用するのは腹膜刺激性が
    無いためで,たとえ腹腔内に誤挿入しても腹膜炎の危険が
    減るからある。またXP 撮影は万が一の裁判に備えて確実
    に胃内腔にBT カテが入っていることの証拠を残すためで
    ある。さらにコストに関しては2008年3月まではBT カテ
    交換では手技料も取れず材料の償還点数901点だが,この
    方法を用いれば1,226点請求できた。現在2008年4月以降
    は手技料200点が認められたがBT カテの償還点数が下が
    り874点となりトータル1,074点となっている。さらにBT
    カテで推奨される1ヶ月に一度交換するとやはり忙しいの
    で3~4ヶ月で交換している。この方法で現在約60人の患
    者に対して対応しているが,特別問題は生じておらず,現
    在まで偶発症の発生はない。しかしながら交換の煩雑さよ
    り,最近ではGW 有りのバンパータイプに移行してきている。
  • 江戸 雅孝
    セッションID: WS5-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉当院は秋田県北部の2次医療圏,地域の中核病院
    である。平成20年2月にがん診療連携拠点病院の指定を受
    けた。当院での緩和ケアへの取り組みは平成18年9月にさ
    かのぼる。過去に病院として緩和ケアに取り組むことはな
    かった。
    〈緩和ケアチーム立ち上げの経緯〉院内に緩和医療委員会
    を発足させ,最初に行ったことは,病院職員に対する緩和
    ケアに関する意識調査であった。がん患者にかかわる多く
    の職員が日常の診療や業務の中で,緩和ケアの知識は必要
    と考えてはいるものの,自分自身の緩和ケアやがん性疼痛
    の治療法(WHO 方式など)に関する知識は不十分と答え
    ていた。また院内に,緩和ケアチームがあれば相談したい
    という,期待する意見もみられた。当初の委員会活動は緩
    和ケアの教育,啓発とし,同時に緩和ケアチーム設立の準
    備をすすめた。
    〈緩和ケアチームの活動〉平成19年6月に緩和ケアチーム
    を結成,同年9月より活動を開始した。メンバーは医師,
    看護師,薬剤師,MSW の構成であったが,全員兼任であ
    る。皆,過去に緩和ケアの専門的な教育や研修を受けたこ
    とはなく,自己学習と研修会や学会への積極的な参加と日
    常業務の多忙な中での活動であった。当初から多くの問題
    点や課題を抱えた状態であり,現在も同様である。地方病
    院の医師不足,看護師不足は深刻であり,限られた条件の
    中で,地域がん診療連携拠点病院の緩和ケアチームの果た
    す役割は非常に大きく,スタッフの負担は増す一方であ
    る。
    〈今後の課題〉マンパワー不足や時間的な制限の中であっ
    ても,緩和ケアの理念の理解,実践は必要である。院内,
    院外を問わず,一般市民への緩和ケアの普及,啓発を進め
    るとともに,緩和ケアを通じて地域の医療従事者との交
    流,連携も進めなくてはならない。がん診療連携拠点病院
    の理念として緩和ケアに取り組む意思表示,姿勢を示し,
    その役割を果たすための現在の取り組み,活動について報
    告する。
  • 高原 さおり, 小松 弘尚, 正畠 忠貴, 藤田 寿賀, 福田 康彦
    セッションID: WS5-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    2002年のがん対策基本法により緩和ケアチームの活動
    は,地域がん診療連携拠点病院の認定の必須条件と位置づ
    けられてきた。当院は,平成19年4月より緩和ケアチーム
    の活動を開始し,がん診療連携拠点病院としてとしての役
    割を果たしている。チームメンバーは,消化器内科,呼吸
    器内科,放射線治療科,麻酔科,精神科の各医師,薬剤師,
    MSW,看護師(緩和ケア認定看護師を含む)で構成され
    ている。その活動内容は,院内対象の緩和ケアコンサル
    テーションを中心に,院内・地域への研修会を開催し,緩
    和ケアに関する啓発を行っている。
    今回,緩和ケアチーム活動の現状を把握し,今後の展
    望・改善策を検討することを目的に他者評価(当院医師95
    名,看護師467名,薬剤師28名,計590名)による「チーム
    活動のアンケート調査」を行った。
    アンケート内容は,
    _丸1_認知度:依頼方法・活用経験・チーム介入以外で緩和ケ
    アの提供ができているか・相談したい内容
    _丸2_満足度:痛み,痛み以外の身体症状・精神症状の各々の
    マネジメント・患者,家族・医療者間のコミュニケー
    ションの調整・スッタフへのケア・倫理的問題への対応
    _丸3_望ましい活動体制:メンバー構成・依頼システム・ラウ
    ンド回数・記録・情報提供の方法・方針の共有
    _丸4_今後開設予定である緩和ケア外来の期待と要望
    などである。
    アンケート回収率は,当院医師45.2%,看護師75.8%,
    薬剤64.3%で合計68.6%であった。_丸1_~_丸3_のアンケート集
    計結果を分析し,現況の当院における緩和ケアチームの活
    動内容と今後の活動課題につき報告する。
  • 千田 明子, 柏木 浩暢
    セッションID: WS5-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉2002年緩和ケア診療加算の新設を機に,わが
    国の緩和ケアチームの活動は本格的に始まり,全国の緩和
    ケアチームの量的拡充は図られてきた。しかし活動の質は
    現在も大きな課題になっている。当院緩和ケアチームは発
    足して2年でコンサルテーション型のチーム医療を構築中
    である。将来的に緩和ケア病棟を作っていく構想もあり,
    今考える当院緩和ケアチームの課題と展望を述べる。
    〈緩和ケアチーム活動〉
    1)現状
    緩和ケアチームのラウンドは1回/週行っているが緩和
    ケア認定看護師のみのラウンドになりがちでチームとして
    機能していない。しかし疼痛コントロールが困難な症例の
    ケア,リンパ浮腫のケア等改善した例も多い。また,終末
    期患者のリハビリテーション介入も数例あった。多職種の
    介入の必要性が明確に評価されず,限られた職種(医師,
    看護師,薬剤師)の介入にとどまる傾向があるので今後の
    課題である。
    2)取り組み
    _丸1_多職種チームでのラウンド方法
    _丸2_緩和ケア委員会主催の勉強会計画
    _丸3_体制の整備(委員会活動等)
    3)展望
    _丸1_多職種が1人の患者さんを支える本来のチーム医療の実
    現を目標にしていく。緩和ケア病棟もビジョンに入れる
    と,将来的にソフト面の充実がさらに要求されるので,
    実践をしながら人材育成につなげていきたい。
    _丸2_困難な症例も当院だけでなく地域の緩和ケアに携わる医
    療者と情報交換し,より良い疼痛緩和,症状コントロー
    ルを行っていきたい。
    _丸3_現在在宅に移行する際の調整を行っているが,将来的に
    は地域の先生や訪問看護師と在宅移行システムを構築し
    ていきたい。
    〈まとめ〉当院の緩和ケアチームの課題は活動状況を明確
    にし,院内で活用しやすくすることである。そのために効
    果的なラウンド,知識,技術の向上,チームとしての体制
    の整備が必要である。そして院内でのチーム医療の構築を
    充実させ,将来的には地域へ拡げていきたい。
  • 福原 昇, 松本 好正, 笹本 孝広, 長沼  敏彦, 熊本 隆司, 伊藤 和正, 飯村 高行, 水上 律子, 平林 文子
    セッションID: WS5-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉具体的症例を通じて放射線治療の適応と有用性を
    理解してもらう。
    〈症例1〉70歳女性。十二指腸ファーター乳頭癌術後,腹
    壁再発。主訴は腹痛と上腹部腫瘤。疼痛が増強するため仰
    向けの姿勢は長時間とれない状態。電子線1門照射で40
    Gy/20回/14日間の治療を実施。疼痛は治療の途中から
    軽減し以後は仰向けで寝ることが可能となった。この後に
    追加放射線治療を実施。生存中に疼痛の再燃は無かった。
    〈症例2〉74歳男性。肺癌,cT4N2M0。病理:低分化
    型扁平上皮癌。当科受診時には気管内挿管されていた主治
    医は余命2ヶ月以内と家族に説明していた(PS4)。30Gy
    /15回/10日間の放射線治療を実施。治療開始後2週間程
    度で呼吸状態は改善。この後に抜管可能となり追加放射線
    治療を実施。治療終了2ヶ月で自宅に退院。以後4年以上
    生存。
    〈症例3〉65歳男性。胃癌術後,単発性肝転移。本人の強
    い希望にて受診。肝S7/8に直径35mm の腫瘤を認め
    た。初診時CA19―96,500U/ml。外来通院で定位放射線治
    療(1回10Gy として50Gy/5回)を実施。終了3ヶ月,
    9ヶ月でCA19―9は65および11.5U/ml と低下。一般状態
    は良好,有害事象なし。以後4年間で3回肝転移を生じた
    がいずれの病巣も外来通院での4,5回の定位放射線照射
    にて制御されている。
    〈考察〉適切な緩和医療は必要である。しかし認識不足で
    積極的治療無しと判断して緩和医療のみを行っているなら
    問題である。上記の症例以外にも骨転移症例で疼痛管理主
    体の治療のみが行われ病的骨折を生じてから放射線治療の
    依頼となった症例もあった。骨転移に対しては適切な時期
    に放射線治療を実施すれば疼痛軽減効果のみでなく病的骨
    折も回避可能である。積極的治療にも緩和治療にも使用可
    能である放射線治療の適応を正確に理解していないと本来
    なら改善が可能な患者さんに不利益を被らせる可能性があ
    る。放射線治療の適応を正確に知っておくことはすべての
    医療従事者に必要と考える。
  • 今本 紀生, 福田 康彦
    セッションID: WS6-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉感染管理認定看護師には,医療関連感染サー
    ベイランスの実施や職員教育,他職種との共働と調整など
    の能力を身につけ,施設の中心となって医療関連感染の予
    防・管理システムを構築し,予防と管理が実践できる能力
    が期待される。また,チーム医療における感染管理認定看
    護師の役割は,施設内だけでなく関連組織や地域におよぶ
    幅広い管理活動も含まれると考えている。主な活動内容と
    自身が担う役割を以下にまとめた。
    〈活動報告〉
    1.自施設における活動と役割
    主な活動として施設内の職員教育があげられ,新採用者
    研修や医療安全研修,看護科研修会などで標準的な感染予
    防策を中心とした教育の講師または支援を担当する。ま
    た,感染対策チームと共働し,医療関連感染サーベイラン
    スや院内感染の発生動向調査を実施している。職員や患者
    への直接的な関与以外に,事務部門と連携を図り,感染管
    理の視点から資材の選定や施設整備にも参画する。
    全病院的な対応を必要とする感染症の発生時は,感染対
    策チーム,医療安全管理室,管理部門,その他関係部署と
    の調整・牽引役を担う。
    2.関連組織・地域における活動と役割
    病院だけでなく,訪問看護やデイサービスセンター職員
    への感染対策指導,一般住民への健康指導,近隣医療施設
    の関係職員への指導,他の医療機関への訪問指導などを行
    い,病院や組織の枠を超えた感染管理活動の役割を担って
    いる。また,肺結核や新型インフルエンザなど,特異的な
    感染症への対応時は病院職員と連携して事象の解決に努め
    ると共に,保健所や行政との連絡窓口の役割を担う。
    〈まとめ〉感染管理認定看護師は,実践・指導・相談とい
    う認定看護師の3つの役割に加え,「管理や調整」という
    役割を担って活動している。
  • 神保 京美
    セッションID: WS6-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    高度化・専門分化が進む医療現場における看護ケアの広
    がりと看護の質向上を目的に,日本看護協会で資格認定制
    度が発足した。その1つである認定看護師制度は1997年に
    発足し,当院では2005年に緩和ケア,2007年にがん化学療
    法看護と集中ケアの3領域の認定看護師が活動している。
    しかし,院内における認定看護師の認知度はあまり高く
    なく,リソースとしての活用は十分ではない。そこで,自
    らの役割を発信していくためのいくつかの取り組みについ
    て述べたい。
    〈認定看護師委員会設立〉認定看護師は所属部署だけでな
    く,病院組織内を横断的に活動する必要がある。そこで横
    断的活動を円滑に行うために委員会設立に向けて,他施設
    の委員会運営などについて情報収集し委員会の運営基準を
    作成した。また,これまで認定看護師の活動について特に
    規定を作っていなかったが,認定看護師の活動基準とそれ
    ぞれの領域の職務記述書を作成し役割の明確化を図った。
    〈研修会の開催〉委員会設立までは,教育委員会の研修計
    画の「達人コース」の講師を担当し,専門領域についての
    理解を深めるために研修会を実施していた。アンケート結
    果では好評を得たが,単発の研修でありその内容が理解さ
    れ現場に活かされているとは言い難かった。また,シリー
    ズ化した研修の機会も設けたが,広報活動が不十分であっ
    たこともあり参加人数が少なく,継続的な学習につなげる
    ことの難しさを感じた。そこで,今年度より認定看護師委
    員会を中心に教育委員会とタイアップし,企画・運営を行
    うこととした。
    〈役割の認知〉資格認定と同時にそれぞれの分野で活動を
    行ってきたが,分野によっては所属に属しながらの活動が
    中心であったため認知度が低かった。そこで,役割を認知
    してもらう活動として,新入職者オリエンテーションと全
    職員対象の研修会で,各領域の認定看護師の役割について
    プレゼンテーションを実施した。
  • 竹之内 美樹, 宮内 幸子, 倉益 直子, 福山 國太郎
    セッションID: WS6-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
     褥瘡の発生要因は複雑で全身状態,スキンケア,栄養,
    体位保持,体圧分散寝具,介護力などさまざまなものがあ
    る。そこで多職種がその専門性を最大限に発揮しながら連
    携することで,質の高いケアを患者に提供することが出来
    る「チーム医療」のアプローチが有効である。当院では
    2006年度より院内褥瘡保有者全員を毎週1回皮膚科医師,
    皮膚・排泄ケア認定看護師(以下WOCN),褥瘡リンク
    ナース,栄養士,訪問看護師長,病棟担当看護師と共に回
    診している。具体的には皮膚科医師は必要時デブリードマ
    ン,創傷被覆材,薬剤の決定を行い,WOCN は看護師と
    共にスキンケアや体位保持が適切であるかの評価,褥瘡の
    重症度評価スケールDESIGN を用いた評価などを行って
    いる。栄養士は嗜好調査や,不足した栄養の補充,訪問看
    護師は自宅へ帰る際に介護力に合わせケアの提案を行って
    いる。WOCN はこれらの多職種間のコラボレーションを
    効率的に行い,そこで推奨されたケアを担当医,リハビリ
    へ連絡している。このようにWOCN は褥瘡の専門家とし
    て最新の知識と技術を提供する以外にも一人の患者を中心
    においたチームのコーディネーター役として,役割を担う
    ことで患者個々に合わせた安楽で安全なケアを提供してい
    る。
    褥瘡のみならず,WOCN の分野である創傷・ストー
    マ・失禁においても担当医師や皮膚科医師と連携しながら
    介入している。この3分野のコンサルテーション延べ介
    入件数は2006年度1,899件,2007年度2,310件,2008
    年度 3,005件と年々増加しており,リソースとしての需要も高
    くなっている。さらに看護部専従として活動しているた
    め,どの病棟にも中立的な立場で関わることが出来るので
    コーディネーター役がしやすい。今後も,多職種間のコー
    ディネーターとしての役割を生かし,医療者の意識,ケア
    技術,アセスメント能力の向上を通じて院内全体の質の向
    上を図っていきたい。
  • 松島 由実, 豊田 妙子, 小泉 正己, 浜田 正行
    セッションID: WS6-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    複雑多様化する医療情勢の中,病院の質評価には「安
    全」が求められている。また,高度化・専門分化の進歩に
    ともない,水準の高い看護を実践する認定看護師の需要が
    大きくなっている。各施設の使命や認定分野の特徴によっ
    て,認定看護師の活動は異なる。今回,当院のICT(Infection
    Control Team:感染対策チーム)における感染管理
    認定看護師の役割について,7年の経験を踏まえて述べた
    い。
    当院では,1999年に院内感染対策委員会の下部組織とし
    てICT が発足し,現在まで病院感染サーベイランスやラ
    ウンドを中心としたチーム活動を継続している。また,栄
    養サポート,医療安全管理,褥瘡対策など,他の医療チー
    ムと合同委員会を開催し,情報の共有や連携体制を整えて
    いる。
    現在私は,病院組織であるICT の専任者として従事し
    ており,主な活動内容は,感染管理システムの構築,病院
    感染サーベイランスや感染対策,指導・教育,地域におけ
    る講演・研究会活動,コンサルテーションである。それぞ
    れの活動において,実践,あるいは報告・連絡・調整・推
    進というマネジメントの役割を果たしている。
    感染管理は,施設内における組織横断的な活動に加え,
    地域や行政との連携が必要であり,他職種と関わる機会も
    多い。情報を集結する,専門的知識を集約する,啓発す
    る,といった一連の行動には,院内外を問わず対人関係能
    力がもとめられる。また,組織的かつ積極的に活動するた
    めには,病院管理者の理解と支援を得られていることが非
    常に大きいと実感している。つまり,チーム医療における
    認定看護師の役割を遂行するためには,感染対策は病院組
    織の活動であるという意識を浸透させていくとともに,活
    動を通じて信頼関係を築いていくことが重要であると考え
    る。
    今後,認定看護師はますます増加するであろう。認定看
    護師に対する認知や理解を求めるべく,管理者や他職種の
    方々と相互理解していくことが大切である。また,認定看
    護師の効果的な人的活用が各施設の課題ではないかと考え
    る。
  • 國井 伸, 荒川 直之, 青木 孝太, 阿知波 宏一, 久保田 稔, 石川 大介, 水谷 哲也, 渡辺 一正, 奥村 明彦
    セッションID: WS7-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    背景:拡大内視鏡検査や超音波内視鏡検査による詳細な病変の検討が可能となり早期胃癌は内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)によって治療される症例が増加している。その一方でESDの適応拡大や高齢者に対する安全性などについては議論のあるところである。今回我々は、最近当院にてESDを施行した症例につき発見に至った背景、安全性、治療効果等について検討した。 対象:2006年4月より2009年3月までの期間において当院で上部消化管ESDを施行した53症例である。 結果:年齢は49歳から85歳(平均67歳)であり、入院日数は7日から最長41日(平均12.3日)であった。発見に至ったきっかけとしては、ドックや他疾患(胃の病変を含む)の経過観察中に発見されたものが43例(81%)を占め、症状を有したものは10例(17%)のみであった。無症状で発見された43例中ドックと胃癌検診がきっかけで発見されたものが18例(42%)存在した。術前診断は拡大内視鏡と超音波内視鏡によってなされ7例が胃腺腫、46例が早期胃癌であった。胃腺腫と診断された7例中2例は摘出標本中に癌が発見された。次に安全性について検討したところ、術中の多量出血にて輸血を施行した症例が2例ありこのうち1例はESD中止となり手術となった。小穿孔が疑われた症例が3例(いずれも保存的治療にて軽快)、誤嚥による低酸素血症(ESD中止、5日後再ESD)、マロリーワイス症候群を発症した症例が各1例あった。治療効果について検討したところ、5例に遺残再発が認められた。切除病変の病理学的検討において組織の変性などで水平断が端判定不能と診断された症例からの再発がほとんどであり、遺残再発までの期間は2か月から2年であった。また、5例において異所性再発あるいは胃の多発癌を認めた。 結論:ESDの適応となる早期癌の発見には任意型あるいは胃癌検診が有用であると考えられた。また、種々の合併症を有する高齢者に対してもESDは比較的安全に施行できると考えられたが、一方で異所性の再発や胃の多発癌症例が比較的多く存在しており、治療施行後も長期間にわたる注意深い経過観察が必要であることを再認識した。
  • 山崎 健路, 勝村 直樹, 森 良雄
    セッションID: WS7-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉当院は岐阜県関市にある病床数383床の一般市中
    病院である。胃腫瘍に対するESD は2006年4月より保険
    収載された。ESD は腫瘍を一括切除でき,治療成績と病
    理学的検索双方の面で優れた治療法であるが,技術と経験
    が十分に必要な手技である。当院ではESD に熟練した医
    師の指導のもとに,2006年4月よりESD を導入した。当
    院での患者背景,治療成績につき検討を行った。
    〈背景〉2006年4月より2009年4月までに胃腫瘍62例(胃
    癌40例(ガイドライン病変34例,適応拡大病変6例),胃
    腺腫22例)に対してESD を施行した。男女比は52:10。
    年齢は50歳から85歳,平均67歳。デバイスは主にFlexknife,
    IT-knife(2)を使用した。患者はESD 施行日前日に
    入院とし,術翌日に内視鏡検査,胸腹部CT を施行し,出
    血の有無,肺炎の有無,穿孔の有無を確認した。
    〈成績〉完全一括治癒切除率は57例(91.9%)であった。
    病変径の平均は13.7mm,切除径の平均は31.6mm。平均
    処置時間は70.2分であった。平均在院日数は8.0日であっ
    た。胃癌40例中,未分化癌の成分が確認された1例及び,
    sm 浸潤,脈管侵襲が認められた3例中2例に外科的追加
    切除を施行した。1例は高齢者のため,追加切除を希望さ
    れず,経過観察となった。経過観察となった症例は現在
    ESD 施行後,約2年経過しているが,再発所見は認めて
    いない。胃腺腫症例では幽門輪近傍の病変のため分割切除
    となった症例を1例認めた。合併症については,術後に輸
    血を要するような出血,重篤な肺炎,開腹術を要する穿孔
    をきたした症例は認められなかった。
    〈結語〉ESD は治療経験が少ないと,治療成績の低下と
    高率な合併症が危惧される。地域のセンター的役割を担う
    ESD の経験豊富な術者の指導のもとであれば,一般市中
    病院でも,ESD により胃腫瘍に対して安全で良好な治療
    成績が得られるものと思われた。しかし一般市中病院で術
    者一人が経験できる症例数には限界があり,ライブ等など
    研究会への積極的な参加,各症例の記録映像の見直し,切
    除標本での病理所見と内視鏡所見の対比などが,安全,確
    実なESD による内視鏡治療につながるものと思われる。
  • 向 克巳, 松崎 晋平, 佐瀬 友博, 岡野 宏, 斉藤 知規, 西村 晃, 浜田 正行, 林 昭伸, 馬場 洋一郎, 村田 哲也
    セッションID: WS7-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当院では早期胃癌に対するESD を2004年8
    月より導入し,現在胃腫瘍性病変259例,食道腫瘍性病変
    18例,大腸腫瘍性病変63例,十二指腸腫瘍性病変2例行っ
    てきた。今回,当科においてESD を施行した早期胃癌症
    例の治療成績を検討し報告する。
    〈方法〉当科においてESD を施行した早期胃癌症例242
    例(ガイドライン病変:2cm 以下UL(-)の分化型M
    癌166病変,適応拡大病変:2cm をこえるUL(-)の分
    化型M 癌50病変,3cm 以下UL(+)の分化型M 癌20
    病変,3cm 以下の分化型SM1癌,5病変,2cm 以下
    UL(-)の未分化型M 癌1病変)を検討した。
    〈成績〉平均年齢78.3歳(47~92歳),一括切除率92.1%,
    治癒切除率86.3%,平均切除標本径36.5mm(14~112
    mm),平均病変長径16.4mm(1~96mm),平均治療時
    間45.4分(9~240分),穿孔4例(1.7%),後出血6例
    (2.7%)であった。治癒切除例のうち2cm をこえるUL
    (-)の分化型M 癌で1例のみ局所再発を後日認め追加
    手術を行ったが,他は現在のところ再発を認めていない。
    非治癒切除例のうち,側方断端陽性で追加内視鏡治療行っ
    た症例が5例,深達度SM2以深,リンパ管浸潤等で追加
    手術を行った症例が12例,基礎疾患等があり経過観察して
    いる症例が16例であった。
    〈結論〉適応拡大病変も含めて,早期胃癌に対するESD
    の治療成績は良好であり,偶発症の発現率も低値であっ
    た。しかし,特に適応拡大病変においては今後も慎重な経
    過観察が必要と考える。
  • 小山 恒男, 宮田 佳典, 友利 彰寿, 堀田 欣一, 夏川 周介
    セッションID: WS7-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    演者らは1999年にHook ナイフを開発,2000年から臨床
    応用し,ESD 開発者の一人として教育,普及に尽力して
    きた。本稿ではESD の指導法に関して報告する。
    1.ESD 指導法。Step1:内視鏡診断技術の習得。ス
    クリーニング内視鏡の時点から拡大内視鏡を用い,鑑別診
    断,範囲診断能を身に付ける。Step2:豚切除胃を用い
    たトレーニング。Step3:15分ルールで指導者の管理下
    にESD を施行。Step4:1時間以内に適応内病変のESD
    を完遂。Step5:適応拡大病変の完遂。Step4に達した
    時点で合格と判定した。対象:2002年から2008年までに当
    院でESD 研修を受けた24名の医師。院内から2名,院外
    から22名。研修開始時の卒業年度は9年(3~20),研修
    期間:6ヶ月1名,9ヶ月4名,1年11名,1年1月以上
    7名であった。当院では年間に胃ESD が約180例,食道
    ESD が約60例施行され,原則として全ての症例を指導者
    の監督下にトレーニング中の術者が施行している。
    結果1.偶発症:止血困難な出血率0%。穿孔率,食道
    0%,胃0.8%(全例保存的に治癒),ESD 関連死亡率
    0%。結果2.1年以内の合格率92%(22/24)であっ
    た。
    2.ライブデモ。ESD の技術を広く普及させるため
    に,ESD を開発した6施設の内視鏡医が当院に集まり,
    内視鏡室と会場を光回線で中継するESD live demonstration
    seminar を2003年から合計10回開催した。参加者は
    全都道府県におよび,延べ3,000名を越える医師,技師が
    受講した。アンケート調査にて複数回受講者が90%を越
    え,受講効果として「戦略を考えるようになった」40%,
    手技時間が短縮した20%,「複数のナイフを使うように
    なった」20%とESD の普及に有用であった事が伺えた。
    〈結語〉我々の教育法は技術習得率が高く,偶発症が少な
    い有用な教育法と思われた。ESD live demonstration
    seminar はESD 技術の安全な普及に貢献したと思われ
    た。
  • 前澤 寧, 矢野 貴史, 龍 貴裕, 小野 弘二, 大野 隆, 田辺 聡
    セッションID: WS7-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    早期胃癌に対する新しい内視鏡治療に内視鏡的粘膜下層
    切開剥離術(ESD)がある。2006年4月に保険適応(診
    療報酬点数は11,000点)がとおり,日本全国で急速に広
    まってきているが特殊な手技を有しており,通常のポリペ
    クトミーなどと同様に万人ができる手技ではない。それま
    では早期胃癌の内視鏡治療は内視鏡的粘膜切除術
    (EMR)しか保険適応なく診療報酬点数は4,970点であっ
    た。保険を無視してESD を行うにあたり,IT ナイフだけ
    でも35,000円してしまい,施行時間も長く,コストパ
    フォーマンスが低く一般病院では保険適応が得られるまで
    はなかなか手を出せる状況ではなかった。当院では2006年
    4月の保険適応が判明して2005年12月から導入を開始し
    た。導入を開始するに当たりメンバーにESD 経験者は誰
    もおらず,しかも日常の業務が忙しい中研修(ESD の実
    際を見学,ESD の介助,出来れば動物モデルでの練習)
    など行けず,できることはESD のビデオを見てイメージ
    トレーニングぐらいしかなく,これでは無理と判断した。
    たまたまメンバーの出身大学に良い指導者(達人)がお
    り,かつ地理的にも近くであったため出張していただき,
    達人の指導の下,手技を確立した物にしてきている。また
    医師への指導だけでなく内視鏡センターのスタッフへの指
    導もしてもらえる利点もある。導入から3年半経過した
    が,現在までのペースは月1回で1回2症例である。比較
    的難しくない(許可された)部位は監督なく自前で行う
    が,難しい部位のESD には途中で直接手を借りることも
    ある。2005年12月から2009年5月まで67例のESD を行
    なっているが,まだESD のために患者さんが自主的に訪
    れるほどにはなってはいない。今後のESD の普及のため
    にはESD を施行できる医師が何人もいる施設では指導者
    として積極的にレンタルすべきと考える。
  • 稲石 貴弘, 河野 真人, 高橋 佳嗣, 宮本 忠壽, 浅井 俊亘
    セッションID: R-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    初期臨床研修制度も6年目になるが,都市部の病院に研
    修医が集中していることが地域医療の医師不足の原因の一
    つであるとの見方がある。
    都市・急性期型である海南病院においては,地域・保健
    医療研修では訪問診療,訪問看護を中心の研修で,実際に
    へき地・離島医療を経験することが困難である。今年度か
    ら医師が不足している知多厚生病院篠島診療所で関連施設
    として協力頂き,離島医療を経験した。そこでの診療状況
    と,健康増進のための講演会を行ったこと報告する。
    篠島は愛知県の知多半島の先端にある師崎港から海上4
    km に位置し,周囲6km,人口約2,000人で,漁業と観光
    業を中心としている。
    島内唯一の医療機関である診療所では1週間の研修を行
    い,外来および訪問診療と,島民を対象に健康増進のため
    の講演会をした。
    診療所を受診する患者層としては高齢者が中心で,主な
    疾患としては高血圧症,高脂血症,糖尿病といった慢性疾
    患があげられる。診療所においては,知多厚生病院の指導
    医のもとで診療にあたる。限られた資源のなかで診療を行
    うので,問診・身体診察から得られた情報・所見で判断す
    ることの重要性や難しさを感じた。
    診療以外に,地域医療への果たす役割として,健康増進
    のための講演会を診療所で行った。1週間,診療にあたっ
    たなかで,最も多かった疾患は高血圧症であった。初回は
    これをテーマとし,定義,合併症,食生活の改善などにつ
    いて説明し,20人程の島民の方に聞いていただいた。
    1週間という短い間ではあったが,医師の不足している
    状況や,限られた資源の中での診療,地域と密着した医療
    を通して,地域医療に対して果たすべき医師個人としての
    役割や病院としての役割について改めて考えさせられた。
    また愛知県厚生連は都市型から農村型,急性期型から慢性
    期型の多様な病院があり,病院が連携,協力することでよ
    り充実した研修や診療ができる可能性を感じた。
  • 中島 秀明
    セッションID: R-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】当院は神奈川県西部の地域中核病院であり,小児科常勤医は5名,新生児特定集中治療室(以下,NICU)の施設基準は満たしていない.年間の分娩は約500件で, 34週以降,院内出生で入院管理が必要な新生児は産婦人科病棟内新生児室で入院管理を行っている.今回,過去2年間に小児科入院した新生児症例を検討し,地域一般病院小児科における新生児医療の可能性について考察した.
    【方法】入院簿をもとに,過去2年間,入院管理した新生児の入院時診断名を調査した.
    【結果】調査期間中,153例が入院した.入院時診断名は高ビリルビン血症が55例,出生体重2500g未満の低出生体重児,もしくは,在胎37週未満の早産児が52例であり,軽症例,治療を要さない経過観察例が大多数を占めた.一方,水頭症,心疾患といった先天奇形症例や,新生児仮死,呼吸障害により人工呼吸管理を行った7例も含まれていた.尚,期間中,当院から他院NICUへの搬送は4例で,呼吸器疾患,心奇形の症例であった.
    【考察】当院に入院した新生児の診断名,治療内容は多岐にわたり,小児科研修施設の条件を充足していた.地域のNICU保有施設と一般病院が,新生児医療の役割を認識し,機能を分担することが新生児医療の崩壊を防ぐ礎になると考える.
  • 西堀 正洋, 二村 健太, 渡辺 直樹, 安田 一美
    セッションID: R-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈背景〉冬季の救急外来で「発熱」「咳・痰・鼻水」「悪
    寒」を主訴とする多くの患者のうちインフルエンザ患者が
    約半数を占める。インフルエンザ感染症を診断するために
    迅速検査が頻用されるが,その適応は診察した医師の裁量
    に一任されており,自覚症状・身体所見と検査結果との関
    連性は検討されていない。そのような現状を踏まえ,バイ
    タルサイン・問診・診察などから迅速検査の適応を検討
    し,これらの組み合せによるスクリーニングに適したクラ
    イテリアの作成を試みた。
    〈方法〉当院の時間外救急外来を平成21年2月1日~3月
    8日までに受診した,3歳以上,37.5℃以上の発熱で一定
    の基準を満たす患者137名を対象に,鼻腔インフルエンザ
    迅速検査を施行した。この患者群をバイタルサインに加え
    て全10項目の自覚症状・身体所見について検査結果ととも
    にデータを集計し,統計学的解析を行った。
    〈結果〉全患者のうち迅速検査陽性患者は72名,陰性患者
    は63名,記載漏れが2名であった。バイタルサインのう
    ち,脈拍数が少ないと陽性率も低くなる傾向があった。問
    診・診察した10項目のうち診断に寄与する可能性があると
    考えられたものは,呼吸器症状の有無(陰性尤度比0.31,
    P 値<0.05)と周囲のインフルエンザ患者の有無(陰性尤
    度比0.7,P 値<0.05)であった。これら「脈拍数が90以
    下」「呼吸器症状がない」「周囲にインフルエンザ患者がい
    ない」の三項目に対して各項目1点として合計したとこ
    ろ,2点以上の群(N=19)では1点以下の群(N=74)
    に比べて迅速検査陽性になる可能性が有意に低かった(感
    度94.3%,陰性尤度比0.141)。
    〈考察〉今回作成したクライテリアで,迅速検査の適応で
    はない患者を除外することができ,また新型インフルエン
    ザの流行により混雑が予想される外来での省力化につなが
    ると考える。今後は検体数を増やし更に調査していきた
    い。
  • 前川 道隆, 廣瀬 泰彦, 伊藤 唯宏, 北村 暁子
    セッションID: R-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈症例1〉75歳男性。発熱・両下肢痛・下肢紫斑を主訴に
    近医より紹介で救急搬送。既往に糖尿病,慢性C 型肝炎
    あり。当初はバイタル安定していたが,数時間の経過で紫
    斑が拡大し,半日でショック状態に陥り挿管管理となっ
    た。CT では左腸骨動脈瘤があり,腹部大動脈から腸骨動
    脈瘤までの血栓を認めた。血液培養からはA 群β 溶連菌
    が検出され,劇症型溶連菌感染と考え抗菌薬投与を行った
    が奏功せず,多臓器不全のために入院2日目に死亡した。
    紫斑部位の生検では白血球破砕性血管炎およびコレステ
    ロール塞栓の像を認め,血管内感染の存在が推定された。
    〈症例2〉64歳男性。脱水・全身状態悪化を主訴に近医よ
    り紹介で救急搬送。既往に無治療の糖尿病,慢性アルコー
    ル中毒あり。来院時は意識清明で血圧も保たれていたが,
    2時間で意識昏迷,ショック状態となり,陰嚢部の腫脹を
    認めた。局所の穿刺液のグラム染色で混合感染が示され,
    CT で陰嚢から下腹部腹壁にガス像を認め,フルニエ壊疽
    と診断。抗菌薬投与に加え,デブリドマンを施行して全身
    管理を行い,治癒を得られた。治療経過中に直腸癌と診断
    された。
    〈症例3〉80歳男性。下腿腫脹を主訴に救急搬送。前立腺
    癌の既往あり。搬送時からショック状態で意識レベルの低
    下も認めた。下腿には水泡形成を伴う発赤腫脹を認め,劇
    症型軟部組織感染症として抗菌薬投与を開始。血液培養か
    らはA 群β 溶連菌を検出。穿刺液培養は陰性。入院後に
    急速な水泡形成を認め下肢切断術を施行したが,長期間の
    人工呼吸管理を行っている。
    〈考察〉基礎疾患を有する重症軟部組織感染症を経験し
    た。いずれの症例も急激な経過を辿り,また多様な病態を
    示すため,本症を疑う際には慎重な評価と迅速な初期治療
    が重要と考えられた。
  • 橘 径, 村田 哲也, 川上 恵基, 山本 伸仁, 斉藤 知規, 浜田 正行, 松島 由実
    セッションID: R-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    今回我々は体重減少を主訴に来院したAIDS の1例を
    経験したので報告する。〔症例〕63歳男性。〔既往歴〕拡張
    型心筋症,高血圧症,痛風。〔家族歴〕特記事項なし。〔現
    病歴〕9月頃より徐々に体重減少が進み,2ヶ月間で約10
    kg の体重減少を来した。近医にて腹部CT,上部消化管内
    視鏡を施行されるも異常所見なし。1週間前より吃逆が出
    現,持続するようになったため,精査目的にて当科入院と
    なった。特記事項として40~58歳時は仕事のため海外生活
    が中心で,タイなど10カ国程度に滞在していた。〔臨床経
    過〕下部消化管内視鏡では異常所見なく,胸部CT では両
    側上肺野に軽度のスリガラス状陰影を認めた。入院3日目
    より39度台の発熱が出現し,全身倦怠感増悪,食欲低下,
    発汗著明と全身状態不良傾向あり。1ヶ月前に近医にて上
    部消化管内視鏡は施行されていたが,再度施行したところ
    食道全域に高度の食道カンジダ症を認めた。免疫不全状態
    にあると考え,AIDS を疑い抗HIV 抗体を測定した所,
    抗HIV 抗体強陽性にてAIDS と診断。入院8日目に
    AIDS 治療目的に三重大学附属病院血液内科に転院となっ
    た。HIV-RNA 検査陽性,CD4陽性リンパ球2個,C7―
    HRP 強陽性,B-D グルカン高値であり,ガンシクロビル
    の点滴静注,ST 合剤治療量の内服が開始されたが,呼吸
    状態が悪化し転院26日目に挿管。腎不全もありCHDF も
    開始されたが呼吸状態,意識状態は回復せず転院39日目に
    死亡した。〔まとめ〕日本ではHIV 感染症は増加傾向にあ
    り,本症例のようにAIDS 発症によってHIV 感染が判明
    するいわゆる「いきなりエイズ」が極めて多い。本症例を
    通して,患者自身の早期発見,感染拡大の防止の為にも,
    入院時スクリーニング検査の必要性を認識した。
  • 安達 崇之, 伊藤 亜矢子, 河村 洋太, 松崎 淳, 干場 泰成, 井関 治和
    セッションID: R-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    Ca拮抗薬服用下にもかかわらず心室細動に至った冠攣縮性狭心症の一例
    相模原協同病院 循環器センター内科
    伊藤亜矢子 河村洋太 松崎淳 干場泰成 井関治和
    【背景】Ca拮抗薬は冠血管拡張作用により冠攣縮性狭心症に有用とされている。しかし今回Ca拮抗薬内服下にもかかわらず、ストレスを契機とした冠攣縮により心室細動に至った症例を経験したので報告する。
    【症例】67歳女性。骨転移を伴う乳癌に対し当院にて放射線治療目的のため通院中、元来高血圧にてアムロジピン(Ca拮抗薬)を内服中であった。今回主治医より経過観察目的の検査結果の説明を受けるため診察を待っている最中に強い胸痛が出現した。救急外来へ移動し心電図を記録したところ_II_、_III_、aVF誘導にてST上昇を認めた。点滴ルート確保、酸素投与していたところ、突然意識消失、モニター上心室細動を認め直ちに電気的除細動を施行し、洞調律に復した。緊急冠動脈造影検査を施行したところ右冠動脈に完全閉塞病変を認め、硝酸イソソルビトの冠動脈内投与を繰り返したところ閉塞病変は解除され、以上より冠攣縮性狭心症の診断に至った。Ca拮抗薬を二剤に増量し、ニコランジルの内服を追加し第病日に退院となった。しかし、退院後胸痛発作にて再入院となり、Ca拮抗薬のさらなる増量を行い一旦は退院となるも、約3ヵ月後に心肺停止状態で搬送され、死亡確認に至った。
    【考察】過度のストレスによりCa拮抗薬内服下にも関わらず、冠攣縮を惹起したと考えられた。
    【結語】Ca拮抗薬投与下でも心室細動を引き起こした冠攣縮性狭心症を経験した。
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