日本農村医学会学術総会抄録集
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第58回日本農村医学会学術総会
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  • 西池 修, 眞島 任史
    セッションID: 17-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉人工膝関節置換術を施行する際,適切な膝蓋骨の トラッキング,靱帯バランスを獲得するために,大腿骨コ ンポーネントの適切な回旋アライメントの獲得は重要な要 素のひとつである。しかし大腿骨遠位回旋アライメントを 決定するための解剖学的指標には,大腿骨前後軸(APA), 上顆軸(TEA),後顆軸(PCA)があり,TEA にはCEA とSEA があるが,その指標については様々な報告があ り,統一した見解はない。 本研究では,大腿骨遠位回旋アライメントをより正確に 同定できるよう,骨の輪郭を透かして撮像したReconstructed see-through 3D-CT(以下RS―3DCT)を用い て,どのくらい参考軸が同定出来たかを比較し,正常膝に おける大腿骨遠位回旋アライメントを詳細に検討したので 報告する。
    〈対象と検討項目〉対象は現在まで膝の外傷および膝痛な どの愁訴がなく,X 線にて関節症変化のない100人100膝と した。男性20人,女性80人,平均年齢24.8歳である。RS― 3DCT とAxial-CT,VR-CT を10人の整形外科医が評価 し,APA,CEA,SEA,PCA がどのくらい同定できたか を検討した。また現在までの様々な報告と比較するための 検討項目として1)SEA,CEA はT―3DCT 上で,どのく らい同定できたか,2)APA はTEA と直交するのか,そ れはSEA なのかCEA なのか,3)TEA はPCA に対し て,3°外旋なのか,4)∠CEA/SEA は3°なのか,につ いて検討した。
    〈結果と考察〉RS-3DCT はAxial-CT やVR-CT と比べ, 大腿骨参考軸を優位に同定でき,その有用性は証明でき た。1)SEA とCEA の同定では,SEA が86膝,CEA が 97膝で同定が可能であった。2)APA と直交するTEA は CEA であった。3)正常膝でのSEA はPCA に対して約 4.5°外旋,CEA はPCA に対して約7.5°外旋であった。 4)CEA とSEA のなす角は約3°であった。 以上の結果から,今までの報告と日本人の大腿骨遠位回 旋アライメントには若干の違いがあり,日本人の正常膝に おける正確なアライメントの解明が出来たと考えられた。
  • 原 龍哉, 浦田 士郎, 鈴木 和広, 田中 健司, 小口 武, 杉浦 文昭
    セッションID: 17-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉我が国において,老年人口が増加するにつれ,
    大腿骨頸部骨折の数は年々増加している。今回我々は
    大腿骨頸部骨折に対し,cannulated cancellous screw を
    用いてmultiple pinning 法を行った54例の術後合併症を
    検討したので報告する。
    〈対象および方法〉2003年11月~2008年11月までにmultiple
    pinning 法を施行した86例のうち,術後6ヵ月以上追
    跡可能であった54例(男性11例,女性43例)を検討の対象
    とした。手術時平均年齢71.6歳(17~95歳)。手術平均待
    機期間3.8日(0~8日)。骨折型はGarden stage(1)
    3例,(2) 34例,(3) 15例,(4) 2例であった。これらを対象に,
    癒合率,術後合併症と再手術の内容,Garden stage
    別での合併症の頻度,手術待機期間による合併症の比較の
    4つの項目に対して検討を行った。
    〈結果〉骨癒合率は85%で54例中46例に骨癒合を認めた。
    合併症は54例中17例に生じ,17例中12例に再手術を要し
    た。stage 別での合併症はstageI 0例,
    stageII 7例,
    III8例,IV2例であった。2007年10月より,来院日当日
    の緊急手術を原則としたため,それ以降待機期間は短縮し
    たが,術後合併症に関して有意差は認められなかった。
    〈考察〉骨癒合率は自験例において非転位例92%,転位例
    71%と諸家の報告と同等,大腿骨頭壊死率は自験例におい
    て非転位例8%,転位例29%と諸家の報告と同等であった。
    来院日,当日緊急手術を原則としたが,合併症発生の
    危険因子として待機期間に関しては有意な差を認めなかっ
    た。ロジャーズらは,手術を入院後72時間以降に行うと,
    死亡率,入院期間,合併症,費用を増加させたと報告して
    おり,受傷後早期の手術は機能回復面で利点があり,当科
    では当日緊急手術を継続している。
    〈結語〉大腿骨頸部骨折に対しmultiple pinning 法を施行し,
    骨癒合率は85%であった。合併症は54例中17例に生じ,
    そのうち12例に再手術を要した。stage 分類が上がる
    と共に術後合併症の発生率は増加したが,待機期間による
    比較では有意な差は認めなかった。
  • 王子 嘉人, 谷川 浩隆, 最上 祐二, 森岡 進, 柴田 俊一, 二木 俊匡
    セッションID: 17-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    〈目的〉農村部において高齢化が進み大腿骨頸部骨折を受 傷する患者も90歳以上の高齢者が多くなっている。高齢者 の中には潜在的に下肢血行不良の症例があり術後合併症を 生じる可能性がある。高齢者の右大腿骨頸部骨折の手術直 後から患側の急性動脈閉塞を来たしたまれな1例を経験し たので報告する。
    〈症例〉97歳男性。既往歴は高血圧症及び胃癌術後。糖尿 病やASO などの既往はなかった。転倒し右大腿骨頸部を 骨折した。CR では股関節近傍の大腿動脈の石灰化が顕著 であった。入院翌日PFN-A による観血的整復固定術を 行った。術後3日目,突然右足背の疼痛を訴えた。足背と 足趾は暗紫色に変色し足背動脈は触知不能であり,エコー 上血流を認めず強い石灰化を認めた。ABI は右0.77,左 0.64であった。急性の前脛骨動脈閉塞と診断し,直ちに PGE1製剤の点滴を開始したところ,点滴3日目に足背 動脈は触知可能となった。下腿から足部に掛けて広範に血 流障害が生じ,特に足趾は血流の途絶による壊死が生じ た。両下肢MRA 及び下肢血管造影CT では膝窩動脈が前 後脛骨動脈に分枝する直前で閉塞が生じていた。PG 点 滴,血管拡張作用薬及び抗凝固薬を投与した。壊死部位は 前足部から右第2~4趾であり,足背の一部皮膚も欠損を 生じた。低栄養に肺炎を合併し入院180日目に死亡の転帰 に至った。
    〈考察〉高齢者の大腿骨頸部骨折の術後は,様々な合併症 が生じると考えられる。しかし,糖尿病やASO などの既 往歴がないにもかかわらず術後早期に急性動脈閉塞を来た し足部の壊死にまで陥った症例は検索したところない。急 性動脈閉塞の原因は,塞栓症,血栓症,外傷,動脈解離等 が挙げられているが,今回の症例については手術時の牽引 によって元々硬化した動脈が破裂したとも考えうる。超高 齢者の外傷では急性動脈閉塞を想定した注意深い観察が必 要である。
  • 佐々木 聡, 松浦 裕史, 斉藤 英知
    セッションID: 17-08
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    〈目的〉股関節骨折手術(HFS)後に生じる静脈血栓塞 栓症(VTE)に対するフォンダパリヌクス(FPX)の効 果についてランダム化比較試験を行い検証すること。
    〈方法〉2008年1月から12月までにHFS を行った98例 中,除外基準に該当しなかった76例をFPX 投与群,FPX 非投与群に手術の順番に割り付けた。投与群の内訳は,頸 部骨折15例,転子部骨折23例で,男性8例,女性30例,平 均年齢79.2歳であった。非投与群は頸部骨折11例,転子部 骨折25例,転子下骨折2例で男性9例,女性29例,平均年 齢80.2歳であった。両群間の年齢,性別,術式などに有意 な差はなかった。投与群では手術翌日からFPX2.5mg を 術後14日目まで1日1回皮下注とした。両群でD-dimer を入院時,術後7日目,14日目に測定し,術後7日目のcut -off 値を20μg/ml に設定した。この値を超えた例は下肢造 影CT を行い,深部静脈血栓症(DVT)の有無を検索し た。さらに投与群における有害事象の有無を調査した。
    〈成績〉D-dimer は,入院時には有意差は無かった。術 後7日目には投与群7.50±5.46μg/ml,非投与群16.36± 9.40μg/ml,14日目には投与群5.22±3.47μg/ml,非投与 群10.07±7.80μg/ml と投与群で有意に低値であった。 Cut-off 値を超えた例は投与群では1例で,非投与群で12 例であった。この内投与群の1例と非投与群の5例で造影 CT にてDVT が認められた。FPX 投与群での有害事象と して,創部の壊死が1例,手術部の血腫が1例,Hb が2 g/dl 以上低下したものが2例あった。
    〈結論〉FPX は股関節骨折手術後のVTE の予防に有用と 思われた。有害事象発症の可能性があり投与中の慎重な経 過観察を要する。
  • 谷川 浩隆, 最上 祐二, 柴田 俊一, 王子 嘉人
    セッションID: 17-09
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    〈目的〉農村部の高齢化が進むとともに運動器疾患が激増 し,高齢者に対する整形外科分野の機能回復手術が積極的 に行われている。人工膝関節置換術(以下TKA)は整形 外科の運動器機能再建手術の代表的なものであり全国農村 部の病院において最も多く行われている手術の一つであ る。この手術では高血圧や糖尿病などの既往歴を有する高 齢者が対象となることが多い。このような症例では術後の 循環動態の変化などにより,時として重篤な脳血管障害を 合併症として発症することがある。術前に脳血管に対する 精査を行いその異常の頻度と術後の合併症の内容について 検討した。
    〈対象〉2003年1月から2008年10月までの5年10カ月間に 実施した人工関節置換術の患者268例について既往歴を調 査し全例に脳MRI/A を実施して,術前に対策をとられた ものについて検討し,術後脳血管障害の合併症を呈した症 例を調査した。
    〈結果〉TKA を行った症例は268例311関節であり,女性 231例,男性37例であった。平均年齢は73.8歳であった。 中枢神経系疾患の既往歴は15例(5.7%)であり,内訳は 脳出血3例,脳梗塞8例,脳動脈瘤2例,硬膜外血腫1 例,脳腫瘍1例であった。うち3例(1.1%)に原疾患に 対する手術歴があった。脳MRI/A でTKA 前の治療が必 要な異常がみつかった症例は3例(1.1%)であった。新 鮮脳出血1例と新鮮脳梗塞1例は内科的に治療したのちに 手術を行った。未破裂動脈瘤は1例であり手術を行ってか らTKA を実施した。これ以外に3例の未破裂脳動脈瘤が みつかり,TKA をとりやめて保存的に経過観察とした。 またTKA 術直後に脳血管障害をきたしたものは3例 (1.1%)であり,1例は脳梗塞を発症して片麻痺が生じ た。また2例は意識障害が遷延したが後遺症なく回復し た。
    〈考察〉術前に発見された無症状の新鮮脳梗塞脳出血に対 して術前精査を行わずに手術を行った場合術後に重篤な合 併症をきたしていた可能性があった。また治療の必要な未 破裂動脈瘤も3例みつかり術前の脳血管に対するスクリー ニングは重要であった。農村部で高齢者のADL 改善に整 形外科の機能再建手術は重要であり,術後の良好な経過を 得るためにも術前の脳血管に対する注意が必要である。
  • 尾崎 智史, 磯部 真一郎, 平石 孝
    セッションID: 17-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉鎖骨近位端骨折は比較的稀で骨折型によっては後 の治療に難渋する外傷である。今回初期治療における認識 の甘さから偽関節手術治療を行った本骨折例を経験したの で報告する。
    〈症例提示〉患者は69歳,男性。現病歴:2008年6月3日, 軽トラックの荷台より右肩から転落して当院受診。右肩甲 帯から胸部に至る疼痛と腫脹,四肢軽外傷を認め入院。画 像所見で右鎖骨近位端骨折と診断。1週間三角巾固定を行 い局所症状が軽快した為上肢の自動運動を開始した。骨折 部の転位を認めたが,主訴が右肩甲帯の疼痛のみであり受 傷後27日目で退院した。退院後経過:肩甲帯の疼痛は残存 し,骨折端による皮膚の突出が徐々に目立ち始めた。局所 の疼痛も加わり,受傷から3.5か月後に偽関節に対する手 術を行った。整復は困難であり,骨折部を短縮新鮮化して シンセス社の手関節用ロッキングT プレートで固定し, さらに胸骨と鎖骨に骨孔を作成してテフロンテープで締結 補強した。術後経過:術後は4週間のみ上肢挙上制限を行 い,術後7か月の終診時に骨癒合を確認,上肢も150°挙上 可能で本人の満足度は高かった。
    〈考察〉鎖骨骨折は通常遠位端,骨幹部,近位端の3型に 大別される。しかし近位端骨折の頻度は数パーセントで比 較的稀である。本例はRobinson 分類Type1B に相当し 文献上も観血的治療が行われている。骨幹部や遠位端の骨 折においては転位を認めても時に保存的治療が選択され, その結果偽関節になっても無症状で機能的に問題のない例 も少なくない。近位端骨折も初期治療段階で同様な認識が 持たれがちである。我々も本例の自然経過により初めて骨 折の転位増強を認識した。本例は偽関節であり手術治療に 望み文献的準備が可能であった。様々な術式の中から手関 節用T 型ロッキングplate を用い,骨孔を作成してテフロ ンテープによる独自の補強締結を考案し比較的強固な固定 が得られ,骨癒合も獲得できて良好な結果を得た。本骨折 は新鮮例でも解剖学的に神経大血管が後方に存在するため 内固定を行うのが困難な部位である。これが陳旧化すれば 瘢痕形成などで致死的合併症も起こしかねない。よって, 本骨折転位例は早期に内固定を行った方無難であり,その ためには何よりも本骨折に対する日頃からの治療戦略の認 識が必要である。
  • 兼子 隆次, 岩本 哲也, 岡部 一登, 小澤 亮太郎
    セッションID: 17-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    ビスフォスフォネート系薬剤(以下BP 製剤)は悪性腫 瘍の高カルシウム血症や固形腫瘍の骨転移に関連する治療 に使用され有効である。また,その経口薬は骨粗鬆症の治 療薬として頻用されている。一方,BP 製剤による顎骨壊 死が2003年にアメリカで報告されて以来にわかに注目され つつある。わが国においても最近,BP 製剤によると思わ れる顎骨骨髄炎・骨髄壊死症例が散見されるようになって きた。今回,当科にてBP 製剤の副作用と思われる顎骨骨 髄炎・骨髄壊死症例について臨床的検討を行ったので報告 する。 症例は6例で,すべて女性であった。診断時の平均年齢 は69.7歳であった。当科における診断は顎骨骨髄炎4例, 顎骨骨壊死2例であった。疾患の発症契機は抜歯4例,義 歯性潰瘍1例,自然発症1例であった。BP 製剤を服用す るに至った原疾患は全例が骨粗鬆症であった。投与された BP 製剤はボナロン4例,アクトネル1例,ベネット1例 であった。BP 製剤の服用期間は9ヶ月~5年であった。 治療は全例でBP 製剤を中止するに至った。加えて,抗 生物質の内服と局所の洗浄1例,抗生物質の点滴投与と局 所の洗浄が3例,高気圧酸素療法の下に抗生物質の点滴投 与に加えて腐骨除去したものが2例であった。治療の経過 は1例を除いて治癒をみた。この1例は1年半後に症状の 再燃が確認され,現在も加療中である。 BP 製剤による顎骨の炎症は抜歯など口腔領域の観血処 置に起因するとされる。しかし今回のように自然発生的に 発症したものも確認され,必ずしも因果関係が一様ではな い。本剤は内科,整形外科,婦人科などさまざまな科から 処方されるため関連する担当医が充分に連携して情報を共 有する必要があると思われた。
  • -止血痛にダブルカフは有効か-
    長谷川 勝紀
    セッションID: 17-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当手術室のターニケット使用状況としてはシ
    ングルカフのみである。ダブルカフを使用することで圧の
    入れ替えを行うことにより,ターニケットによる疼痛の緩
    和が図れるのではないかと考えた。医師の監視の下,シン
    グルカフ,ダブルカフの効果の検証に取り組んだのでここ
    に報告する。
    〈研究目的〉シングルカフとダブルカフを比較しダブルカ
    フの疼痛緩和の効果を見出す。
    〈研究方法〉
    1.研究対象:手術室スタッフ9名
    2.測定方法:シングルカフ標準測定―1回(以下シング
    ルカフ(1)),ダブルカフ標準測定(近位から遠位)―1
    回(以下ダブルカフ(2)),メインカフとサブカフの入れ
    替え測定(遠位から近位)―1回(以下ダブルカフ(2))。
    〈データ収集方法〉シングルカフとダブルカフの測定結果
    を比較
    〈結果〉シングルカフ(1)・ダブルカフ(1)比較結果。ダブル
    カフ(1)が良い2名,シングルカフ(1)が良い5名,どちらと
    もいえない2名。シングルカフ(1)・ダブルカフ(2)比較結
    果。ダブルカフ(2)が良い5名,シングルカフ(1)が良い2
    名,どちらともいえない2名。
    〈考察〉ダブルカフ(1)測定結果の切り替え前と切り替え後
    を比較すると,切り替え前のペインスケールは「4」が5
    名と多く,切り替え直後のペインスケールが「4」が4
    名,「5」が3名と,少しではあるが苦痛に傾いている。
    対象人数が少なく,妥当ではないがダブルカフ(1)の有効性
    は低いと考える。次に,ダブルカフ(2)測定結果の切り替え
    前と切り替え後を比較すると切り替え前のペインスケール
    は「4」が4名,「3」が4名と多く,切り替え後のペイ
    ンスケールが「2」が3名,「1」が3名と苦痛の緩和に
    傾いた事がわかる。対象人数が少なく妥当ではないがダブ
    ルカフ(2)の切り替えの有効性は高いと考える。
    〈結論〉1.ターニケットによる疼痛は開始直後から出現
    し,10分から20分にかけて耐え難い症状が生じる。2.ダ
    ブルカフ(2)の使用方法は一時的な疼痛緩和に有効性があ
    る。3.スタッフがターニケットを経験し今まで以上に患
    者に対する配慮ができる。
  • 水野 功, 清水 良太
    セッションID: 17-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉手の外傷患者における複数回受傷の要因につ いて注意機能に要因があるのでは無いかと考え,初回受傷 者と複数回受傷者の注意機能を調査し,考察を交え報告す る。
    〈対象〉受傷機転が,就労中による機械の巻き込み・挟み 込みによる手の外傷患者を対象とした。対象者は初回受傷 者6名,複数回受傷者4名の計10名であった。平均年齢は 初回受傷者51.9±7.9歳,複数回受傷者は51.2±6.2歳で あった。
    〈方法〉今回の調査では注意機能を評価する検査バッテ リーを二つ用い評価を行い,初回受傷者と複数回受傷者と の成績を比較した。検査バッテリーは年齢別標準値が設定 されている標準注意検査法の中のVisual Cancellation Task(以下VCT)とSymbol Digit Modalities Test(以 下SDMT)を用いた。
    〈結果〉VCT の平均達成時間は,第1課題初回40.3± 12.6秒,複数回51.8±11.7秒。第2課題初回46±11.8秒, 複数回63.1±13秒。第3課題初回71.9±12.7秒,複数回 98.7±21.3秒。第4課題初回87.5±12.1秒,複数回123.8 ±16.5秒。SDMT の平均達成率は初回47.2±6.9%,複数 回42.5±8.2%。全ての課題において複数回受傷者の成績 は劣っている結果となった。統計処理はt 検定によって行 いVCT 第2課題,VCT 第3課題,VCT 第4課題は平均 達成時間において有意に差が認められた(p<0.05)。 VCT 第1課題,SDMT では複数回群と初回群との間に有 意な差は認められなかった(p>0.05)。
    〈考察〉選択性注意機能は注意機能の基盤であり,特定の 刺激に対し反応する能力である。加藤らは選択性注意機能 の低下が起こっていることにより,行動の一貫性が損なわ れると述べている。複数回受傷者は,VCT にて評価した 選択性注意機能が低下していることにより,就労中,行動 の一貫性が損なわれ,2度以上の受傷をしてしまったので はないかと考える。今回の結果を受け,選択性注意機能は 就労中の複数回受傷に関し,影響を及ぼしており,より基 本的な注意機能である選択性注意機能の低下が受傷原因の 一つであると考えられた。
  • ~フォースプレートによる歩行分析~
    中澤 美保, 松井 克明, 中曽祢 博史, 山崎 郁哉, 堀内 博志, 瀧澤 勉, 秋月 章
    セッションID: 17-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉変形性膝関節症にて両人工膝関節全置換術 (以下TKA)または両人工膝単顆置換術(以下UKA)を 施行した患者にフォースプレートを用いて歩行分析を行 い,術前と退院時の床反力を比較検討した。
    〈対象および方法〉2003年から2006年までの3年間の両 TKA 施行例56例112膝(男性4例,女性52例),及び両 UKA 施行例37例74膝(男性13例,女性24例)を対象とし た。歩行分析にはフォースプレートMG―100アニマ製(調 布市)を使用した。検討項目は垂直方向第一ピーク荷重 (以下Fz1)・谷荷重(以下Fz2)・第二ピーク荷重(以 下Fz3),前後方向制動力ピーク荷重(以下Fx1)・駆動 力ピーク荷重(以下Fx2),左右方向第一ピーク荷重(以 下Fy1)とし,個体差の影響をなくすため体重比(%) で表した。
    〈結果〉1.TKA 術前と退院時の床反力荷重量:垂直方 向ではFz1とFz3は差が見られず,Fz2は退院時が高い 値を示した。前後方向はFx1・Fx2ともに差が認められ なかった。左右方向Fy1は退院時が高い値を示した。2. UKA 術前と退院時の床反力荷重量:垂直方向ではFz1と Fz3は差が見られず,Fz2は退院時が高い値を示した。 前後方向はFx1・Fx2ともに差が認められなかった.左 右方向Fy1は退院時が高い値を示した。
    〈考察〉退院時はまだ術後早期のため疼痛などの影響によ り歩行時のスムーズな膝屈伸が不十分で荷重による膝への 衝撃が十分に吸収されないため,Fz2の増加を認めたと 考えられた。また,Fy1が増加したことから重心の左右 動揺も大きいことが示唆された。
  • 牛山 直子, 百瀬 公人
    セッションID: 17-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    高齢者の生活能力の維持のためには,起居・移乗動作能 力を維持していくことが必要である。起居・移乗動作に影 響を与える因子として下肢筋力があげられ,特に膝伸展筋 力の影響が強いとされている。また,入院中で比較的低活 動の高齢者では,膝伸展筋力と歩行能力の関連が強いと報 告されているが,ある程度筋力があり活動性の高い地域在 住の高齢者については明らかではない。そこで今回の研究 では,屋外独歩自立している地域住民を対象に,膝伸展筋 力と歩行能力の関連について明らかにすることを目的とし た。 対象は,富士見町一般高齢者運動教室の体力測定の参加 者110名(平均年齢72±5.2歳,男性10名,女性100名)で, 全ての対象者は日常生活が自立しており,屋外独歩可能で あった。測定項目は,最大等尺性膝伸展筋力,10m 歩行 時間,6分間歩行距離とした。最大等尺性膝伸展筋力は, OG 技研製筋力測定器(GT-330)を用いて左右2回ずつ 測定し,それぞれの最大値を平均した。10m 歩行時間は, 10m をできるだけ早く歩いた時の歩行時間を計測し,最 大歩行速度を算出した。6分間歩行距離は,6分間に最大 努力で歩いた距離を計測した。統計処理は,ピアソンの相 関分析を用いて,膝伸展筋力と歩行速度,膝伸展筋力と歩 行距離の相関をみた。有意水準は5%未満とした。 最大膝伸展筋力と最大歩行速度の間には,r=0.63(p< 0.01)で有意な相関がみられた。また,最大膝伸展筋力と 6分間歩行距離に間には,r=0.58(p<0.01)で有意な相 関がみられた。 この結果より,膝伸展筋力と歩行速度,歩行距離の間に は相関がみられ,地域在住の高齢者でも,諸家の報告にみ られるような,低体力者の歩行と下肢筋力の関係と同様な 傾向がみられた。地域住民の歩行能力維持のために,膝伸 展筋力維持が必要と思われる。
  • ~フォースプレートを用いて~
    小林 武雅, 松井 克明, 中曽祢  博史, 丸山 和彦, 山崎 郁哉, 堀内 博志, 瀧澤 勉, 秋月 章
    セッションID: 17-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉変形性膝関節症(以下膝OA)によって生ず る関節変形,運動痛や可動域制限は,人間の起立歩行動作 に大きく影響し生活の質(QOL)の低下に直結する。 opening wedge 法による高位脛骨骨切り術(以下
    〈対象および方法〉膝OA 症例は全例女性で34例34膝,年 齢は61.1±5.9歳,体重は63.6±11.9kg であった。対照群 は18例36膝,年齢24±2.3歳,体重55.9±7.9kg であった。 歩行分析には一歩型のフォースプレートを使用した。統計 にはTukey-Kramer 法を用い危険率5%未満を有意とし た。
    〈結果〉両群の床反力波形を比較すると膝OA 患者の垂直 波形は緩やかな2峰性を示した。荷重量は垂直成分の第1 ピーク荷重量・第2ピーク荷重量が減少し,谷荷重量の増 加が認められた。また,第1ピーク荷重と谷荷重の差,第 2ピーク荷重と谷荷重の差がともに減少していた。前後成 分の駆動力・制動力はともに減少が認められたが,左右成 分の荷重量に差は認めなかった。健常者と比べ膝OA 患者 の立脚時間は116%と延長が認められた。
    〈考察〉膝OA の変形が比較的軽度と考えられる膝OA 症 例において,第1ピーク荷重と谷荷重の差,第2ピーク荷 重と谷荷重の差がともに減少していたことから,床反力波 形は不明瞭な2峰性を示したと考えられた。時間では立脚 時間の延長を認めた。一方,荷重量の左右成分では差が認 められなかった。これは対象が比較的軽度と考えられる膝 OA 症例で大腿脛骨角の悪化が少ない可能性がるためと考 えられた。また,立脚時間の延長が認められたことから, 歩行速度が健常者よりも遅いことが推察された。荷重量で 垂直成分の第1ピーク荷重量・第2ピーク荷重量が減少 し,谷荷重量の増加が認められたことから,膝OA 患者の 歩行は下肢への衝撃となる荷重量を抑制し,疼痛を逃避し た歩行となっていることが考えられた。
  • 本多  成史, 堀部 秀樹, 子安 正純, 川村 正太郎, 児玉 宣子, 上山 力, 中川 香, 伊藤 唯宏, 竹本 憲二, 度会 正人
    セッションID: 17-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈背景〉心疾患における心臓リハビリテーション(心リ ハ)による予後の改善には長期的な継続が必要である。本 邦での心リハは開始後開始後150日の保険適応が認可され ているが,150日以降は特定の疾患,算定できる単位に制 限が設けられ,長期的な外来心リハの継続は困難な状況に ある。
    〈目的〉当院の外来心リハプログラム終了後の運動療法の 継続,生活習慣について調査する。
    〈方法〉2004年9月より2008年10月の間に2ヶ月以上継続 して当院の外来心リハに参加し,保険適応期間の終了や職 場復帰などにより心リハを終了した連続180例(男性124 例,年齢68.8±8.8歳,虚血性心疾患134例,開心術後30 例,慢性心不全16例)を対象として,郵送によるアンケー トを用いて遠隔期(終了後24.0±12.3ヶ月)の運動療法の 継続状況,生活習慣,心疾患による入院について調査し た。
    〈結果〉138例(77%)で有効回答を得た。103例(75%) で自宅での運動療法の継続を認め,そのうち47例(45%) で自覚的な運動耐容能の改善を認めた。飲酒習慣を43例 (32%),喫煙習慣を8例(6%),食事での脂肪分の制限 を94例(68%),塩分の制限を85例(62%)を認めた。ま たリハビリ終了後の心疾患による入院を19例(16%)に認 めた。
    〈結語〉当院の外来心リハ参加者の多くはプログラム終了 後,自宅で運動療法を継続していた。また喫煙,食事に関 しても生活習慣に対する意識の改善が認められた。
  • 正山 薫, 後藤 英子, 岡村 秀人, 前田 晃男
    セッションID: 17-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉国民生活基礎調査によると,65歳以上の死亡 原因の中で,肺炎は三大生活習慣病に続く死亡原因の第4 位となっている。慢性期脳梗塞患者は嚥下障害を有するこ とが多く,誤嚥性肺炎を高頻度で合併する。シロスタゾー ルが慢性期脳梗塞患者において肺炎発症率を低下させるこ とが報告されており,簡易嚥下誘発試験を用いた検討では シロスタゾールが嚥下反射を改善することが報告されてい る。今回我々は,肺炎を繰り返す慢性期脳梗塞患者に対す るシロスタゾールの嚥下機能改善効果をVF(嚥下造影 法)を用いて検討したので報告する。
    〈対象・方法〉2年間に1回以上肺炎を合併した慢性期脳 梗塞患者でシロスタゾール未使用の7例に対してVF 再検 を行った。嚥下機能は,日本摂食・嚥下リハビリテーショ ン学会による「嚥下造影の標準的検査法」に記載された評 価項目に基づいて評価を行った。
    〈結果〉嚥下時間はシロスタゾール投与前(6.71±2.62 秒)に比べて投与後(3.51±1.18秒)で有意に短縮してい た。嚥下機能評価では咽頭期を中心に,嚥下の各相で改善 傾向がみられた。
    〈結論〉1.慢性期脳梗塞患者においてシロスタゾール投 与によって,嚥下時間の短縮が得られた。2.シロスタ ゾールの投与に加え,リハビリ併用群において,より高い 嚥下機能改善がみられた。3.当院の検討では,シロスタ ゾールは嚥下時の咽頭期のみならず口腔期,食道期におい ても機能改善をもたらす可能性が示唆された。
  • キネステティクス概念を用いた動きの支援とFIM評価
    鈴木 とみ子
    セッションID: 17-19
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉介護を必要とする高齢者の長期入院において
    は,治療・処置が優先されるため患者の力を引き出せず看
    護者のペースで介助するケースが増える。これにより
    ADL の低下を招き介護量も増え悪循環となる。入院時の
    ADL を維持し介助者の負担も増大しない為に,キネステ
    ティクス概念を用いた動きの支援を導入,FIM による評
    価を行ったのでその結果を報告する。
    〈方法〉
    (1)研究期間:平成20年8月6日~平成21年2月10日。
    (2)研究対象:障害老人の日常生活自立度(ランクB―1)簡
    単な意思疎通・指示動作が可能であるが,起き上がり・端
    座位・移乗に介助を要する高齢者3名。
    (3)研究方法:看護師・看護助手全員を対象にDVD 鑑賞お
    よび技術演習を導入準備とし,対象者に動作支援を実
    践,2週間ごとにFIM で評価し前後のADL を比較する。
    〈倫理的配慮〉本人・家族には,得られたデータは当研究
    以外の目的に使用されることはなく,プライバシーが守ら
    れることを文書で説明し同意を得た。
    〈結果・考察〉A 氏は,移乗の2項目と移動の1項目にお
    いて5点上昇。全介助から最大介助で起居動作が可能とな
    り起立も中等度介助となった。B 氏は,研究途中で感染症
    に罹患のため各項目で1点ずつ低下したが,回復と共に中
    等度介助で研究前の起居・移乗動作に近づくことが出来
    た。C 氏は,起居・移乗動作では得点に変化はなかった
    が,2人介助から1人介助となり車椅子自走が1点から3
    点に上昇した。
    今回の動きの支援をきっかけに,患者の残存能力を生か
    す事が出来,その過程を経験することで看護職員の意識改
    革ができた。また,FIM 評価によりできるADL からして
    いるADL につなげるための看護計画を効果的に展開できた。
  • -Pay for Performance(P4P)を踏まえて-
    高松 道生, 北野 浩二, 前田 道宣, 中村 淳子, 柳澤 貴恵, 栗木 淳子, 久保田 裕一, 宮沢 正樹, 田村 治子, 西島 博
    セッションID: 17-20
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
     回復期リハビリテーション(以下,回復期リハ)病床の 増床に伴う,質向上に向けた取り組みの経験について報告 する。2008年10月からセンターの回復期リハ病床を44床増 床し,全体で267床,鹿教湯病院で233床の回復期リハ病床 を運営している。同時に質向上にも取り組み,1)療法士 の病棟専任化,2)「経過記録」への多職種経時記載によ る診療情報の一元化,3)多職種による合同入診とリハカ ンファレンスの実施,4)365日のリハ,を実現した。 昨今,急性期医療機関の機能確保という観点から当院に 紹介される回復期リハ対象患者の発症から入院までの期間 が短縮されつつあり,循環や呼吸などに問題を有する重症 例が増加している。その事は回復期リハ病院に亜急性期医 療機関としての機能を求めており,当院では神経・呼吸 器・消化器・循環器内科,整形外科,脳外科の臨床各科が 対応している。また,急性期医療機関と連携協定を結び, 連携パスに基づいた回復期リハを行うと同時に必要に応じ て重症化例の逆転院を行っている。 2008年度診療報酬改定において,わが国で初めて医療の 質的評価であるP4P(Pay for Performance)が回復期リ ハに導入された。在宅復帰率や身体機能の回復度などの結 果に基づいて診療報酬を区別する事は,Structure(施設, スタッフなど)やProcess(パスやガイドラインなど)の みでなく,Outcome(結果)が評価される時代の到来を 意味している。結果が全てではないが,患者にとって最も 重要な「転帰」を評価する試みは今後医療全体に関わる基 本的視点として重要である。また,急性期医療機関と亜急 性期医療機関としての機能を備えた回復期リハ病院の連携 は今後さらに緊密さが要求されるようになり,その事が急 性期医療機関での急性期リハビリテーションのあり方にも 影響を与えてゆくものと考えられる。
  • 軽体操導入を試みて
    岩崎 理香
    セッションID: 17-21
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    当病棟では高齢者が多く長期入院のため,入院中にリハ ビリ期間が終了してしまうことが多い。そのため残存機能 の維持・向上を図るにはリハビリの継続性を持たせ,患者 が前向きに生活できるように援助していくことが必要であ る。 患者は,リハビリ室で行うリハビリだけがリハビリだと 思っている場合が多い。そのためリハビリ期間が終了して しまうと,もっとリハビリを続けて欲しいという要望が聞 かれる。しかし国の政策ではリハビリ算定期間が決められ ており,理学療法士などによるリハビリの継続は困難であ る。 療養型病棟で定期的に軽体操を実施することが高齢者の 呼吸機能の維持・向上に効果があり表情に変化が見られた と報告されている。そこで当病棟でも生活リハビリの意識 づけを試みた。 その結果,軽体操を行うことで生活リハビリの意識づけ と拘縮予防ができ,リハビリへの意識づけにつながった。 今後楽しみながら継続していくために音楽を取り入れたり 対象の個々の病状や性格,生活歴などを考慮した軽体操の プログラムを検討しADL の維持ができるよう努力してい きたい。
  • 近藤 俊貴, 寺社下 裕樹, 中村 訓之, 杉浦 千江子, 仲川 賢, 鈴木 康友
    セッションID: 17-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉退院時リハビリテーション指導(以下退院指 導)とは,患者様の退院時に当該患者様又はその家族に対 して,退院後の在宅での基本的動作能力,若しくは応用的 動作能力,又は社会的適応能力の回復を図るための訓練等 について必要な指導を行った場合に算定することができ る。 この退院指導について,当院における実施形態を,平成 19年度で調査した。 結果,患者様本人に口頭で説明し,要点をカルテに記載 していたこと。また,退院指導率(退院指導を行った患者 数/理学療法を行って退院した患者数×100)は,約36% であったことが確認された。 結果より,平成19年度の退院指導における問題点を考察 し,平成20年度の目標を,退院指導用紙を作成すること, 退院指導率を平成19年度以上に引き上げることの2点とし た。
    〈方法〉退院指導用紙は,表面には退院後の注意点,裏面 には患者様が自宅で行う運動を,患者様ごとに自由に選択 できるようにした。また,調査期間は平成20年8月から12 月までの5ヶ月間とし,1ヶ月ごとに集計を行った。項目 は,全体における退院指導率,また,各診療科での退院指 導率とした。
    〈結果〉5ヶ月間の平均では,全体における退院指導率は 約57%であった。また,各診療科での退院指導率は,整形 外科64%,内科42%,脳外科41%,外科57%であった。
    〈考察〉退院指導を行えなかった患者様は,急に退院した 場合,意思疎通困難な場合,死亡退院となった場合が大半 を占めていた。
    〈おわりに〉今後は退院指導の内容を随時変更すること で,より質の高い退院指導ができるように努めていく。そ れによって,退院した患者様の生活が,よりよいものにな るよう,退院指導率の維持・向上に努めていくことが必要 である。
  • 本田 浩一, 大河内 昌弘, 鴨下 友彦, 長縄 博和, 梅枝 直裕, 藤原 周一, 加地 謙太, 山本 陽一, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: 23-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈症例〉76歳女性。うつ病治療,糖尿病コントロール目的 を主訴に,平成20年8月28日に当院精神科に入院。糖尿病 については,入院時,ノボラピッド30mix 朝20,夕8単位 (計28単位)で,HbA1c6.9%であった。我々は,JA 愛 知厚生連病院で協同して,2型糖尿病患者を対象として, 発芽玄米食摂取による糖代謝の影響を継続的に検討してお り,その治験に同意が得られたため,平成20年10月16日か ら,インスリン・内服治療は変更せず,食事のみを白米か ら,白米・発芽玄米混合食に変更し,食事カロリー数は同 カロリーとする発芽玄米食による食事療法を開始した。開 始後から,血糖コントロールは改善し,平成20年11月11日 には,HbA1c5.6%と改善し,次第に低血糖を頻回に起 こすようになり,インスリン単位数の継続的な減量を余儀 なくされた。最終的に,ノボラピッド30mix 朝14,夕4単 位(計18単位)まで減量したところ,低血糖は消失し, HbA1c5.2%と安定した。血糖日内変動の推移を見てみ ると,発芽玄米食施行前,終了後と比べて,発芽玄米食中 は,食後血糖が有意に改善していた。一方,発芽玄米食施 行前,中,終了後で,有意な内因性インスリン分泌の回復 は認めておらず,発芽玄米食摂取による血糖コントロール の改善は,内因性インスリン分泌の回復によるものではな いと考えられた。
    〈考察〉当症例は,発芽玄米摂取後,低血糖を起こす要因 となる体重減少・栄養状態の悪化,腎機能の悪化も無く, インスリン抗体産生も認めず,他のバイアスが入らない厳 格な条件下で行われており,純粋に,発芽玄米食摂取が, 血糖コントロールを改善したと考えられた。その機序とし て,発芽玄米食摂取が,食後血糖の改善を促すことによっ て,糖毒性を解除し,インスリンの効きを良くすることに よって,結果的に,インスリン注射単位数の著明な節減効 果をもたらしたと推測された。
  • 鈴木 康子
    セッションID: 23-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉2008年4月の診療報酬の改定に伴い「糖尿病 合併症管理料」が新設された。看護師が足潰瘍や壊疽など のリスクの高い糖尿病患者へ専門的な知識・技術を提供す る事が,患者のQOL 向上に効果があると評価されたと受 け止めている。糖尿病足病変は,医療者と患者が継続して フットケアに取り組むことで,予防は可能であると言われ ているが,3分診療といわれる現在の外来診療状況では, 足を診るまでの余裕はない。当院における糖尿病通院患者 数は約1,100人で,下肢切断に至った患者数は過去5年間 でのべ16人である。私は「フットケア外来」の必要性を強 く感じ,準備を進めた結果本年4月より「フットケア外 来」を開設する事ができたので報告する。
    〈経緯及び現状〉2005年糖尿病専門医,糖尿病療養指導士 がチームで療養指導を行える体制が整い,8月「糖尿病合 併症予防専門外来」を開設した。看護師はフットケア,生 活指導を担当し外来通院患者への知識提供や共に生活改善 を考える場としたが,ケアに携わる者の移動で専門外来は 1回/週から随時となりやがて立ち消えとなってしまっ た。私は下肢切断患者を出したくない,糖尿病患者にとっ てフットケアは大切なものであると感じながらも,知識・ 技術の未熟さから手が出せず行動に移せずにいた。診療報 酬の改定をきっかけに研修やセミナーに参加する機会が増 え,2009年4月より1回/週フットケア外来を再度開設す る事ができた。
    〈課題と今後の活動〉フットケア外来を多くの糖尿病患者 に知ってもらうために,外部への広報誌に載せることや外 来の待合室にポスターを貼っている。2009年8月には新診 療棟が完成するため設備を整え現在午後から行っているケ アを,午前中から行えるような体制にしていきたい。フッ トケアに関わる看護師の役割,責任は大きい。患者と共に 足に関心を持ち続け,向き合うことの重要性を伝え,多く の糖尿病患者と信頼関係を築きQOL 向上に努めていきた い。
  • 吉武 美奈, 清水 純子, 吉澤 久美子, 兼子 隆次, 加藤 大也, 澤井 喜邦, 松本 早苗, 片桐 泰子
    セッションID: 23-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    当院では以前より糖尿病患者のいわゆる糖尿病教育入院 が実施されてきた。これは,医師,看護師,薬剤師,栄養 士らがチームを組み,生活習慣病としての疾患の理解と, 投薬や食生活などをクリニカルパスに基づいて指導ならび に治療を進めている。さらに教育のモチベーションをより 高める一環として約3年前より同じく生活習慣病である歯 周病を取り上げ,本プログラムに導入することとなった。 これにより歯科衛生士として口腔衛生管理および指導をす るようになった。今回は歯科衛生士の立場より糖尿病教育 入院における口腔衛生指導の意義について検討したので報 告する。 2006年3月から2008年5月までに当院において糖尿病教 育入院した2型糖尿病患者152名を調査の対象とした。調 査項目は問診(食事回数や口腔衛生の関心度など),口腔 内診査と歯周病関連検査(残存歯数,歯周ポケットの深 さ,プロービング時の出血歯率,プラーク付着状況など) および,口腔衛生指導後にアンケート調査(満足度や関心 度)である。 結果は血糖コントロールが不良な群はプラークスコア, 歯周ポケットの深さが共に不良であった。実施したアン ケートより,これを裏付けるように血糖コントロールが不 良な群ほど,口腔衛生の関心度が低い傾向がみられた。指 導を行うことによって食生活や口腔衛生への関心ある一定 の割合で高めることができたと思われた。 一方,反省としては食事の事情に基づいた口腔衛生指導 が充分に行うことができなかった。今後は栄養士とより連 携を密に指導にあたるように努めたい。
  • 稲葉 直人, 宇野 智美, 吉田 顕子, 高橋 暁子, 前田 益孝, 椎貝 達夫
    セッションID: 23-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉慢性腎不全進行因子の探索は,比較的短期間の研 究から見出されている。今回CKD stage3以上の非糖尿 病性腎症患者350例を対象に10年間のレトロスペクティブ な観察研究を行い,慢性腎不全進行因子の探索を行った。
    〈方法〉「取手CKD 治療ガイドライン」に添って観察 し,透析導入をend point として,調整因子を特定するた めにCOX 比例ハザードモデルによる多変量解析を行っ た。
    〈結果〉男性(vs 女性)[ハザード比2.018,95%信頼区 間1.167-3.489,p=0.012],尿酸6.7mg/dl 以上(vs 6.7mg/dl 未満)[ハザード比1.672,95%信頼区間1.087 -2.574,p=0.019],血清CO220mmol/l 以下(vs20mm ol/l 未満)[ハザード比2.815,95%信頼区間1.405- 5.642,p=0.004],血清IP4.8mg/dl 以上(vs4.8mg/dl 未満)[ハザード比3.002,95%信頼区間1.597-5.642, p<0.001],尿蛋白排泄量1g/day 以上(vs0.5g/day 以 下)[ハザード比3.775,95%信頼区間1.379-10.332, p=0.01],Hb11g/dl 以上(vs11g/dl 未満)[ハザード比 1.732,95%信頼区間1.030-2.934,p=0.038],収縮期 圧137.6mmHg 以上(vs137.6mmHg 未満)[ハザード 比1.752,95%信頼区間1.095-2.804,p=0.019]が有 意であった。
    〈結論〉慢性腎不全の治療では,血圧,尿蛋白のみなら ず,血清尿酸,血清CO2,血清IP,貧血の積極的な管 理が必要である。
  • 山田 勝己, 横山 敏之, 飯島 也万, 長瀬 裕平, 杉山 和久, 横崎 正一, 横山 有見子, 横畑 幸司, 松浦 弘尚, 伊佐治 亮平
    セッションID: 23-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉acyclovir(ACV)は,ヘルペスウイルスの 感染細胞内のみで,活性化し作用する抗ウイルス薬で,一 方,valacyclovir(VACA)は,ACV のプロドラッグであ る。ACV の血中半減期は,腎機能正常者は数時間だが, 腎不全患者では,約20時間にまで延長する。ACV の神経 毒性としては,頭痛,眩暈,不穏,異常行動,幻覚,錯乱 など多彩な精神神経症状が報告されている。今回,われわ れは,ACV 脳症による精神神経症状を来たした3例の血 液透析患者を経験したので,若干の文献的考察を加えて報 告する。
    〈症例〉1:74歳,男性。左腋窩を中心とした疼痛と発疹 を訴え,皮膚科を受診,帯状疱疹に対し,バルトレックス (VACA500mg)4錠/日を処方された。2日後,歩行 が覚束なくなり,突然,泣いたり笑ったりと感情失禁が出 現,同日,当院内科を受診。2:67歳,女性。右こめかみ の疼痛と発疹を訴え,近医皮膚科を受診,帯状疱疹と診断 され,ゾビラックス(ACV250mg)1V×2/日の点滴 静注を受けた。2日後より,軽度の呂律困難,その後,興 奮状態を認め,当院救急外来を受診。3:59歳,女性。左 胸~背部の疼痛と発疹を訴え,近医皮膚科を受診,帯状疱 疹に対し,バルトレックス(VACA500mg)6錠/日お よび,ゾビラックス(ACV250mg)1V×1/日の点滴 静注を受けた。翌日より,頭痛,その後,意味不明な事を 泣き叫び,多弁となり,当院救急外来を受診。
    〈経過〉3症例とも,項部硬直,四肢麻痺,その他の神経 学的異常所見は認めず,ACV 脳症の発現と考え,緊急透 析を実施,症状は改善し後遺症も残らず,退院となった。
    〈考察〉ACV は,75~80%が腎臓で排泄が行なわれ,腎 不全患者では,200mg1日2回までの投与が薦められてい る。また,VACA においても,500mg/日で開始する事 を推奨されている。ACV,VACA は,一般的には安全か つ有効性の高い薬であるが,治療域と中毒域が接近してお り中枢神経に中毒症状をおこしうるため,高齢者や透析患 者においては,抗ウイルス薬の有効性と安全性の評価を行 ない,慎重な用量設定の配慮が必要と思われた。
  • (第4報)B細胞リンパ腫(DLBCL&FL)に対するrituximab使用の臨床的意義と問題点
    森山 美昭, 漆山 勝, 藤原 正博, 小林 勲
    セッションID: 23-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉高齢化が進む地域医療では,悪性リンパ腫 (NHL)の発症率は増加傾向にあり,かつ70歳以上の高 齢者が急増し(第1報),その対策は深刻である。NHL, 特にB 細胞リンパ腫の分子標的療法としてrituximab(R) が導入されて7年が経過するが,日本での長期観察の報告 は少ない。今回,高齢者の多い地域医療においても,R の 導入によってB 細胞リンパ腫(DLBCL とFL を中心)の 予後が改善したか否か,過去のCHOP 療法のみの症例と 比較検討した。
    〈方法〉過去約6年間に経験したB 細胞リンパ腫31例 (DLBCL:23例とFL:8例)を解析の対象とした。そ の内訳はF:13例,M:18例で平均年齢:71.9歳(43~87 歳)であった。寛解導入はR+CHOP 療法(6クール) を目標とした。予後因子(IPI)のhigh risk 群と再発例 の10例には,自己造血幹細胞移植(PBSCT)をBEAM 変 法+in vivo purging で実施した。治療別の予後は全て Kaplan-Meier 法で求め,過去のCHOP のみの症例33例 と比較した。
    〈成績〉B 細胞リンパ腫:31例の年齢分布では,70代に ピークを認め,65歳以上の高齢者は18例(58%)であっ た。R+CHOP 群のIPI 別の予後では,DLBCL およびFL 共も有意の差はなく,有効で,5年以上の生存も4例に達 した。更に,高齢者65歳以上の予後とそれ以下の症例間に も有意の差はなかった。 一方,R+CHOP 群と過去のCHOP 群の予後の比較で は,FL 例は差がなかったが,DLBCL 例では,R+CHOP 群の予後がCHOP のみ群を凌駕(P<0.05)した。しか し,R+CHOP 群で,リンパ球の減少や免疫グロブリン (IgG)の低下を認め,しばしばB 型肝炎の再燃や感染症 を併発し,高齢者には免疫グロブリン製剤の補充など注意 が必要であった。
    〈結論〉高齢化が進む地域医療では,NHL も高齢化して いるが,rituximab(R)の導入によってB 細胞リンパ腫 (DLBCL およびFL)の予後は,高齢者を含め,明らか に改善されている。しかし,R の使用にはその有害事象に も熟知する必要がある。
  • 盛山 吉弘
    セッションID: 23-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    近年,創傷治癒過程に関しての知見が増え,創傷管理に ついてもEBM の時代となった。創傷管理の基本理論のひ とつとしてmoist wound healing というキーワードがあ げられるが,その理論をもとに,いわゆる“ラップ療法” が広く行われるようになっている。 創傷管理の歴史として,かつては創を乾燥させることに より,細菌感染から創を守ることが最重要であった。しか し,今日,抗生剤をはじめとする感染症治療が発展し,ま た創を乾かすことは創治癒を遅延させるということが周知 の事実となった。湿潤環境で創傷管理を行う時代へと変化 したのである。 いわゆる“ラップ療法”は,医療材料でないものを使用 するという問題は残るが,創傷管理の知識をきちんともっ た医療従事者が施行すれば,安価で有用な治療法であろ う。しかし,どんな傷も簡単に治る“魔法の治療法”と考 えている医療従事者も多く,そこに多くの被害者が生まれ ていることも忘れてはならない事実である。今一度,なぜ かつては創を乾燥することが良しとされていたか,振り 返ってみるべきであろう。創傷治癒のために必要な表皮細 胞や線維芽細胞の増殖には湿潤環境が理想であるが,この 環境は細菌の増殖についても好都合なのである。 湿潤療法を行う上では,壊死組織の除去や洗浄をきちん と行い,細菌増殖のリスクを最低限に抑えることが不可欠 である。また,糖尿病を始めとする易感染患者に対して は,湿潤療法はさらに慎重である必要があるだろう。 今回,“ラップ療法”を施行され,救急外来に敗血症性 ショックや足壊疽などで運ばれてきた多くの症例を供覧 し,安易なラップ療法の施行に警鐘を鳴らしたい。
  • 高橋 博之, 加賀谷 真起子
    セッションID: 23-08
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    陰部外傷2例の治療経験につき報告する。
    症例1:64歳,男。糖尿病あり。公園にて喧嘩となり陰 部を蹴られた。自己治療するも疼痛を伴い患部の腫脹が増 悪したため,受傷5日目に当科を受診した。陰茎包皮の著 明な壊死とMRSA による創部の二次感染を認めた。
    症例2:80歳,男。深部静脈血栓症のためワーファリン 内服中。腰痛のリハビリのため自転車漕ぎを通常の2倍程 施行後,陰茎から陰嚢にかけて赤黒くなったが放置してい た。自己治療するも疼痛が出現したため,受傷7日目に当 科を受診した。陰茎包皮の著明な壊死を認めた。2例とも 保存的治療では治癒しなかったため,全身麻酔下にデブリ ドマンと1.5倍メッシュによる分層植皮術を施行した。治 療後,1年以上経過するも植皮部の拘縮はなく排尿におけ る支障もない。基本的に陰茎部の植皮はメッシュよりも シートによる全層植皮が望ましいが,今回の治療は糖尿病 や抗凝固剤内服中など手術条件としては好ましくないもの であったが良好な結果が得られ
  • 野崎 紗香, 飯塚 美穂子, 黄 威翔, 豊嶋 直子
    セッションID: 23-09
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    〈目的〉遠視性屈折異常弱視および遠視性不同視弱視に対 する年齢・屈折度・視力・屈折度差・健眼遮蔽の関与につ いて。
    〈対象〉1988年から2008年までに当院眼科を受診した遠視 性屈折異常弱視12名,遠視性不同視弱視10名である。屈折 異常弱視の訓練開始時屈折度差は2D 未満,不同視弱視 は2D 以上とした。
    〈方法〉治療方針は,屈折異常弱視および不同視弱視に対 し調節麻痺剤点眼後他覚的屈折検査を行い,得られた屈折 度から約0.5D 引いた値で眼鏡処方し,常用を指示した。 その後1~6ヶ月視力,屈折検査を行い,視力に2段階 (小数視力)以上の左右差が見られた場合は健眼遮蔽を1 日3時間~5時間を指示した。
    〈結果〉屈折異常弱視は訓練開始時年齢平均3歳7ヶ月 (2歳10ヶ月~6歳5ヶ月),訓練開始時視力平均0.4,訓 練開始時等価球面屈折度(強い遠視眼の屈折度)平均5.43 D(+3~+10D)。不同視弱視は訓練開始時年齢平均5 歳11ヶ月(3歳0ヶ月~8歳10ヶ月),訓練開始時視力平 均0.4,訓練開始時等価球面屈折度(強い遠視眼の屈折 度)平均4.94D(+3.5~+7.625D)そして訓練開始時不 同視差の平均3.63D(2~7.125D)であった。 治療中健眼遮蔽の適応となったのは,屈折異常弱視3 名,不同視弱視8名。健眼遮蔽を行った症例で,健眼遮蔽 を完全終了後に弱視の再発を認めた。再発は,屈折異常弱 視はなく不同視弱視2名。再発は,遮蔽治療後1年以内に 矯正視力が2段階(logMAR)以上低下した場合と定義し た。 治療成績は,屈折異常弱視は,12名中治癒10名,視力向 上2名であった。不同視弱視は,10名中治癒6名,視力向 上3名,視力不良1名であった。弱視の治癒は訓練後視力 1.0を獲得した場合とした。視力向上は1.0未満だが,初診 時視力より2段階以上向上したもの,視力不良は2段階以 下のものとした。
  • 飯塚 美穂子, 黄 威翔, 野崎 紗香, 豊嶋 直子
    セッションID: 23-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    〈目的〉眼内レンズ挿入後の後発白内障発生率の眼内レン ズによる違いを検討するため。
    〈対象と方法〉2003年1月から2008年3月に白内障手術し 眼内レンズが嚢内固定された眼790眼(男性305名,女性298 名,合計603名,平均年齢:73.13歳)が対象。 後嚢切開術施行についての適応基準は設定していないた め,臨床所見より個々に決定し施行していた。 診療記録より調査した後ろ向き調査。
    〈結果〉使用された眼内レンズは7種類あり,シングル ピースSA60AT(166眼,平均年齢72.9歳),SN60AT(150 眼,平均年齢72.6歳),VA60CB(134眼,平均年齢74.8 歳),VA60BB(190眼,平均年齢73.9歳),スリーピース レンズはMA60BM(99眼,平均年齢72.7歳),ZA9003(46 眼,平均年齢69.5歳),AN6K(5眼,平均年齢73歳)。 後嚢切開術施行率は以下の通りであった。SA60AT は 1.2%(眼内レンズ挿入後経過月数17~73か月,後嚢切開 施行時期平均16.5か月),SN60AT は2%(経過月数12~ 24か月,施行時期平均7か月),VA60CB59.7%(経過月 数62~74か月,施行時期平均20.4か月),VA60BB は 37.3%(経過月数37~68か月,施行時期平均19.3か月), MA60BM は14.1%(経過月数15~74か月,施行時期平均 16.4か月),ZA9003は2.2%(経過月数12~24か月,施行 時期3か月),AN6K は0%(経過月数12か月)。 後嚢切開術施行後視力が2段階以上改善した割合は以下 の通りであった。SA60AT は50%,SN60AT は0%,VA 60CB は40%,VA60BB は55.7%,MA60BM は42.9%, ZA9003は0%。
    〈結論〉眼内レンズの種類によって後発白内障発生率は違 うことが考えられる。
  • 村藤 大樹, 木村 和弘
    セッションID: 23-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
     アトピー性皮膚炎の治療は,一時期ステロイドバッシン グや民間療法の喧伝などにより混乱をきたしていたが, 2000年に日本皮膚科学会によるアトピー性皮膚炎診療ガイ ドラインが作成されてからは徐々に治療の統一がなされ, ステロイド外用剤の適正使用と保湿剤によるスキンケアの 重要性が強調されている。しかし,スキンケアの重要性に 対する認識は個々の医師によって差があり,その方法もま ちまちなのが実状である。 我々は2003年に小児科の専門外来として「アトピー外 来」を開設し,2009年4月現在の患者総数は1,135人であ る。そのうち重症と判断した319人(うち小児193人)を対 象に,ウェットラッピング法を用いて治療を行った。 ウェットラッピング法とは,保湿剤(炎症の強い個所には ステロイド外用剤を併用)を塗布した後に水で濡らした下 着やクッキングペーパーで体を覆い,さらにその上から調 理用ラップで被覆して2~3時間過ごすという手技で,通 常のスキンケアで対応困難な重度の乾燥肌に対し,初期治 療として行うものである。 治療の標準化を図るために,クリニカルパスを用いて4 日間の入院治療を行った。入院中に計6~8回のウェット ラッピングを行い,退院後も含めて計10回行った後通常の 外用療法のみへ移行した。患者は早ければ治療2日目の朝 には皮膚状態の改善を実感し,退院時にはほぼ全例で乾燥 肌の明らかな改善がみられた。短期間に皮膚の状態が劇的 に改善することで退院後の外用療法に対する治療コンプラ イアンスが向上し,ひいては治療期間の短縮とステロイド 外用剤使用総量の減量を達成することが可能となった。 アトピー性皮膚炎治療ガイドラインに準拠した外用療法 にウェットラッピング法を併用することは,重症アトピー 性皮膚炎の高度な乾燥肌に対する初期治療として非常に有 用であると考えられた。
  • 松井 照明, 小川 昭正, 宮島 雄二, 加藤 有一, 久保田 哲夫, 竹本 康二, 城所 博之, 大江 英之, 松沢 要, 久野 邦義
    セッションID: 23-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
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    〈はじめに〉川崎病急性期治療における初回免疫グロブリ ン(IVIG)投与量は2g/kg が標準治療であるが,投与し ない,あるいは少量投与で改善する例も存在する。当院で は初回IVIG1g/kg 投与を行っており,成績について川崎 病全国調査と比較検討した。
    〈方法〉対象は2004年1月1日から2008年12月31日の間に 川崎病と診断し治療を行った169例。初回IVIG は原則1g /kg×2日とし,開始24時間後に解熱している場合は1g/ kg のみとした。不応例は初回IVIG1~2g/kg 終了後24 時間経過後も発熱を認める場合とした。不応例の予測因子 として様々な検査値の報告があり,併せて検討を行った。
    〈結果〉IVIG 施行例は全例の88.8%であった。IVIG 初 期投与量に関しては,1g/kg が65.6%,1g/kg×2日が 34.4%であった。不応例は,7.6%であった。冠動脈瘤合 併率は,0.94%(2例ともにIVIG1g/kg×2日施行。内 1例は初診day11で既に巨大冠動脈瘤を合併)であった。 初回IVIG1g/kg×2日例と1g/kg 例との比較では,初 診日については差を認めなかったが,初回IVIG 施行日は 1g/kg×2日例では1g/kg 例とと比較して有意に早かっ た。検査値では,IVIG1g/kg×2日例でTbil,ALT,CRP, 好中球は有意に高く,逆にNa,Plt は有意に低かった。 不応例とそれ以外の例との比較では,初診日,IVIG 投与 日については差を認めなかったが,検査値では,不応例で Tbil,AST,ALT,CRP,好中球は有意に高く,逆にNa は有意に低かった。
    〈考察〉反応良好例では初回IVIG を1g/kg としても,不 応例や冠動脈病変の増加を認めず,費用対効果に優れた治 療と考えられた。検査値等から不応例等を予測し,適切な 初回治療を選択できる可能性があり今後さらに検討の必要 がある。
  • 伊藤 忠彦, 松田 武文, 稲見 育大, 千葉 剛史
    セッションID: 23-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉在宅呼吸療法など在宅医療を要する重症児(者)
    を対象に臨床的検討を行い,小児在宅医療の医学的社会的
    問題点を明らかとし,今後の課題について考察する。
    〈対象,方法〉対象は当科で在宅医療を施行中の33例(男
    14例,女19例)で3年以内に死亡した4例を含む。診療
    録,看護記録,家族からの聞き取りなどから,診断,在宅
    治療,リハビリテーション,入院治療,訪問診療,訪問看
    護,介護状況等の調査を行った。
    〈結果〉(1)年齢:0歳から27歳と幅広く,8例(24%)は
    20歳以上の成人である。(2)疾患は神経疾患が22例(67%)
    と多く,循環器疾患5例,代謝疾患3例,筋疾患2例であ
    り,先天異常あるいは新生児期発症例が30例と大半を占め
    た。ねたきり状態は25例(76%)。(3)在宅医療:訪問診療
    は3例(9%)のみで他は外来通院管理。気管切開6例。
    在宅人工呼吸管理3例。在宅酸素療法11例。経管栄養は9例。
    胃ろう管理4例。リハは通院で施行13例。リハ必要も
    通院不可にて未施行が14例。(4)介護:主な介護者は全例母
    親。(5)入院:2008年に入院した例は生存30例中20例
    (67%)。年間5回以上の頻回入院5例。全入院60回中30
    日以上の長期例は8回,200日以上2回。入院理由の75%
    は呼吸器感染,呼吸不全。
    〈考察〉在宅人工呼吸管理等の導入により超重症児も在宅
    管理が可能となった。しかし,以下のような問題点が明ら
    かとなった。ほとんどが先天性か新生児期発症にて,療養
    期間は長期に及ぶ。呼吸器感染による入院回数も多く入院
    期間も長期化する。今後,20歳以上の成人となる例はさら
    に増加する。訪問診療を受けている患者はごく少数で,リ
    ハも十分に行われていない。介護者は全例母を中心とした
    親であり高齢化も進んでいる。
    〈結論〉医療の進歩により超重症児も在宅管理が可能と
    なっており,今後も増加すると思われる。しかし,訪問診
    療や在宅リハの充実,介護者である親に対する援助等が今
    後の課題である。
  • 星野 有
    セッションID: 23-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉過去6年間に当院で経験した小児脳動静脈奇形の 出血症例3例について報告する。
    〈方法〉2003年4月から2009年3月までに当院救急外来を 介して脳神経外科に入院した脳動静脈奇形の初発出血例は 7例であった。このうち15歳未満の小児は3例であり全症 例のほぼ半数を占め,何れも当地区での小児2次救急医療 集約後の紹介患児であった。これら小児3症例を検討し た。
    〈結果〉年齢は1例で9歳,2例で10歳,男児が2例,女 児が1例であった。初発症状は,頭痛とその後の意識障害 が2例,左片麻痺が1例であった。頭部CT 所見では,脳 内出血が1例で,脳内出血に脳室内穿破を伴ったものは2 例であった。脳動静脈奇形の診断に,緊急脳血管撮影が1 例,脳MRA が2例に施行された。治療は,2例に局所麻 酔下での緊急脳室ドレナージ術を施行,1例で翌日に麻酔 科による全身麻酔下での開頭・脳動静脈奇形摘出術を施行 した。開頭摘出術を施行した症例では術後経過は順調で, 左片麻痺は徐々に改善し,現在学校生活において運動競技 以外に支障はない。ドレナージ術を施行した2例では,術 後意識障害は改善したが,さらなる集学的治療が必要と判 断し,三重大学医学部附属病院脳神経外科に転院した。
    〈結論〉比較的稀である小児脳動静脈奇形の出血症例を小 児救急医療の集約化後に3例経験することができ,可能な 限りの初期治療を施行し,高度医療機関への転院も円滑に 行われたと考える。当地区でも勤務医が減少し,救急医療 全般はもちろんのこと,特に小児外科救急医療の窮状は深 刻で,今後も医師の充足の望みは薄い。このような状況で も,当院では三重大学医学部と連携し小児脳神経外科疾患 に対する2次救急施設の役割を果して行くことが重要と思 われる。
  • 細野 浩史, 五十嵐 崇浩, 太田 隆, 渋谷 肇, 杉谷 雅人
    セッションID: 23-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈症例〉15歳女性,突然の意識障害,右上下肢の脱力感を
    主訴に救急要請,当院救急外来搬送となる。既往歴は特記
    すべき事項なし。家族歴は姉が血小板減少性紫斑病の診断
    を受けている。頭部MRI 拡散強調画像にて左中大脳動脈
    領域に梗塞を認め,MRA にて同動脈が描出されなかった。
    脳梗塞の診断で当院脳神経センター入院となった。
    入院時生命徴候:体温37.8℃,血圧124/78mmHg,意識障
    害:JCSII―10,GCS E4V1M4,神経学的所見:右不
    全麻痺(右上下肢MMT1/5),運動性失語を認め,
    NIHSS16/42であった。血液生化学検査にてHb9.7g/dl,
    Plt11.5万/μl,PT-INR1.17,APTT91.5sec であった。
    特殊検査にて抗核抗体の上昇,抗ループス抗体の上昇,抗
    DNA 抗体の上昇,血清補体価活性の低下を認めた。生理
    検査にて心電図,心臓エコー,下肢静脈エコー検査では明
    らかな異常所見は認めなかった。以上の検査結果より
    SLE をともなう抗リン脂質抗体症候群の診断となった。
    治療は入院1日目から14日目までフリーラジカルスカベン
    ジャーの点滴,入院1日目から3日目までヘパリン1万単
    位点滴にて加療した。入院1日目より7日目までワーファ
    リン2mg を内服,入院8日目よりシロスタゾールの内服
    とした。加療およびリハビリテーションによりNIHSS16
    /42から9/42に改善した。
    〈考察〉抗リン脂質抗体症候群は動脈・静脈の両方に血栓
    を引き起こし,それに伴い習慣性流産や血小板減少を認め
    る。治療は抗血小板療法・抗凝固療法・ステロイドなどが
    あるが,現在のところ脳卒中の二次予防において,抗血小
    板療法と抗凝固療法の効果に有意な差はなかったという報
    告があり,治療においての明確なEBM は存在しない。
    しかし我々は頭蓋内筋性動脈病変では白色血栓であることが
    多く,抗血小板薬であるシロスタゾールを選択した。
  • 長谷川 浩一, 川口 健司, 田代 晴彦, 森川 篤憲, 高木 幹郎
    セッションID: 23-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    鈴鹿市内で人工透析可能で脳神経外科を診療科にもつ病 院は当院のみであるが,鈴鹿市内の透析病院だけでなく近 隣の透析病院から当科への紹介もみられるのが現状であ る。今回,我々は血液透析中に急性硬膜下血腫をきたした 2例を経験したので報告する。 2例とも外傷は軽微であるが,透析患者は血管が脆弱で あるため頭部を打撲した際に血管損傷を生じ,透析中に抗 凝固剤を使用するために出血が助長され,急性硬膜下血腫 をきたしたと考えられる。術中所見からも脳損傷を合併し ていなかったため,意識障害が徐々に出現し,血腫の増大 とともに症状が悪化している。脳損傷を伴わない急性硬膜 下血腫の場合,脳ヘルニアが完成する前であれば手術治療 で比較的良好な予後を期待できることから,診断の早さと 脳神経外科医との迅速な連携が不可欠であると考えられ る。 2例のうち1例は近隣市の病院からの紹介であったが, 同市内の2病院で受け入れを断られた後の紹介であったた め当院搬送時にはすでに脳ヘルニアの状態であり,手術後 も意識障害が残存した。意識障害遷延例では入院透析で栄 養管理が必要となり,維持透析患者はさまざまな代謝異 常,電解質異常,低栄養,免疫能低下などの病態が存在す るため,意識障害が長く続くと,その間に合併症をきたし 致命的となる事が多い。 また透析患者の場合,患者の出血傾向と血液透析に用い られる抗凝固薬の出血に対する影響により,術中の出血コ ントロールが困難であることから可能であれば,保存的治 療が望ましい。しかしながら,保存的治療に必要な抗脳浮 腫剤であるマンニトールやグリセオールが十分に使用でき ないというジレンマがある。除水量等の透析管理だけでな く,使用可能な薬剤や点滴の種類と量に関しても制約があ るため,手術の有無に関わらず腎臓内科医と緊密に協力す る事が必要であると思われる。
  • ~退院時接遇アンケート1年間のまとめから~
    大場 玲, 齋藤 仁, 伊藤 郁子, 阿部 百子, 渡邊 良子, 佐藤 田鶴子
    セッションID: 24-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当院看護部接遇委員会では,地域の中核病院 として「患者さんを尊び敬い思いやりのある看護を行う」 という看護理念のもと接遇の向上に努めている。入院生活 における患者・家族の満足度の状況を把握するために,平 成19年9月から看護師の接遇に関してのご意見を退院時接 遇アンケート調査という形で行ってきたが,アンケート調 査の実施から1年が経過し,全体の傾向をまとめたので報 告する。
    〈研究目的〉看護師の接遇に関しての患者・家族の満足度 を知る。
    〈研究方法〉入院時または,退院間近の患者にアンケート 用紙を配布し,毎月病棟毎に所定の回収箱にて回収する。 アンケート内容は,看護師の挨拶・服装・言葉遣い・話 しやすい雰囲気・わかりやすい説明・尋ね易さ・病棟の静 けさの7項目について,「大変良い」「良い」「普通」「悪 い」「大変悪い」の5段階評価をしてもらい自由記述部分 も設け単純集計した。
    〈結果〉看護師の服装では,「大変良い」「良い」が96%と 7項目の中で一番満足度が高かった。 病棟・病室の静けさでは「大変良い」「良い」が82%で 最も低い評価であった。
    〈考察〉満足度が最も高かった看護師の服装については毎 月の委員会の中で気になる服装や身だしなみについて意見 交換を行い,各部署のスタッフに身だしなみの大切さが伝 わっているのではないかと言える。 病棟・病室の静けさの項目で「大変悪い」「悪い」の評 価があった部署はいずれも急性期病棟であった。これは, 夜間の緊急入院,機器類のアラーム音などにより静かな環 境を保てなかったのではないかと考えられたが,防ぐこと の出来ない音として捉えず対策を検討していく必要があ る。
    〈結語〉 1.退院時接遇アンケート全体の集計では,「大変良い」 「良い」を合計した7項目の平均は90.8%であった。 2.看護師の服装・挨拶での満足度が高かった。 3.静けさに関しては満足度が低く,具体的な項目を調査 するなどの対策を講じる必要がある。
  • 長友 真由美, 岡田 春美, 静田 早苗, 神保 京美, 粥川 美枝子
    セッションID: 24-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉待ち時間に対する患者,医療スタッフの意識調査 を行う事で,患者の待時間に対する苦痛,医療スタッフの 認識や関わりを明らかにする。待ち時間に対する患者の苦 痛の軽減を図る為のアプローチ法を見出す。
    〈方法〉研究者3名が患者に3枚の待ち時間に対するアン ケート用紙(待ち時間調査)を配布し受付で回収。看護 師,クラークにも2枚のアンケート用紙(待ち時間調査) を配布し,専用袋へ回収。アンケートより得られた数値で 表すことの出来る情報をグラフ化し,その他意見をカテゴ リー別に分類し,待ち時間における問題点を抽出し,患者 の苦痛の軽減を図る為のアプローチ法について検討した。 倫理的配慮については研究対象者に文書と口頭で,研究の 目的,個人情報の保護,研究協力の自由,研究不参加によ る不利益はない事について説明し,同意を得た。
    〈結果・考察〉対象者は平成20年7月28日から8月4日の 外来予約患者710人,看護師123人,クラーク17人。患者ア ンケート配布数763部,回収710部,回収率93%。スタッフ アンケート配布数140部,回収140部(看護師123名クラー ク17名),回収率100%。 待ち時間に対する意見として,待つのは仕方がないが, 自分が何番目に呼ばれるのか,どのくらい待つのか目安を 知りたい,分かるような表示方法をしてほしい,という事 が多くあげられていた。待ち時間に対し患者とスタッフ側 の認識の違いがあり,スタッフ側は患者の苦痛は待ち時間 が長いことであると思っていた。患者とスタッフの意見 で,必要なサービスは待ち時間のアナウンスが一番多く, 患者は待てないのではなく,待ち時間の目安が分かれば待 てるのである。具体的に説明していくことで患者の待ち時 間に対する苦痛を軽減することが出来ると考える。その事 をスタッフ全員が認識し,患者の対応をしていけるよう意 識改革をしていくことが重要であると考える。
  • 赤平 薫, 田澤 英子, 伊藤 朱美, 藤田 佐代子, 齋藤 由利子
    セッションID: 24-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉日本の医療機関において,患者の不満の原因 として外来患者診療待ち時間は大きな割合を占めている。 当院の「外来患者満足度調査」の結果でも,待ち時間の苦 情があがっている。毎年対策は試みるものの,待ち時間短 縮には繋がらない。そこで,待ち時間の改善策を患者サー ビスの観点で視点を変えて検討・実施したことで,患者の 「待たされ感」が減少し不満の軽減に繋がったのでここに 報告する。
    〈方法〉 1.調査研究:改善策実施の前後に,研究以外には使用し ないことで同意を得られた内科予約患者90名,86名を対 象に待ち時間と待ち時間に対する思いをアンケート調査 する。 2.方法:上記患者アンケートにより待ち時間に対する不 満を調査し,「いつ呼ばれるかわからない」という内容 に着目して改善策を検討,患者に診察時間がわかるよう に掲示した。
    〈結果〉改善策実施前の待ち時間は平均74分,後の待ち時 間は平均63分であり,待ち時間が長いと思う患者もほとん ど変化がなかったにもかかわらず,改善策後のアンケート では68.7%の患者が「気持が変わった」と答えている。気 持ちの変化した理由として,「診療時間の予測がつく」「診 療時間がわかる」が21%であった。これにより,診療時間 掲示による時間利用で「買い物ができるようになった」 「知人の見舞いに行ける」など,待合室を離れて時間を有 効に活用していた。
    〈考察〉待ち時間の対策は,患者サービスの視点から重要 であり,その解決は永遠の課題である。当院では電光掲示 板はあるものの,診察医師の複雑さより活用されていな い。今回の対策で,待ち時間は同じであっても診察時間の 目安がわかるようにしたことは,待たされ感の減少に繋が ると言える。
    〈結論〉「時間」は限られたものであり,貴重な資源であ ることから患者サービスのためには待ち時間短縮への努力 が必要である。同時に,待ち時間を有効に活用できるよう 支援することもサービスの一環になると考える。
  • 森田 美幸, 小瀧 浩
    セッションID: 24-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉当院では,平成16年4月にアドボカシー担当とし て専任看護師を配属し6年目を迎える。アドボカシーの活 動状況を院内掲示するなど,患者・家族からの提言や相談 に対応してきた。しかし,アドボカシー担当看護師の存在 が周知されていないことで,提言や相談ができない患者・ 家族がおり,患者の人権・権利を擁護するという本来のア ドボカシーの目的が達成できていないのではないかと考え 新たな取り組みを行った。
    〈方法〉平成20年8月から積極的な関わりとして,入院患 者の病室を訪問する活動を開始した。この活動では,アド ボカシー担当看護師の存在とその役割を伝え,そこで得ら れた提言や相談に迅速に対応するようにした。
    〈結果〉入院患者の病室訪問を開始し,アドボカシー担当 看護師の周知が意外にも不十分であることが明らかになっ た。この活動で患者・家族とコミュニケーションを図り, 提言や相談に即時に対応する一方で,患者・家族のセルフ ケア能力向上のサポートを行うことができたのではない か。
    〈考察〉アドボカシーとは,当然守られるべき患者の権利 を擁護・支援するという考え方やその取り組みを意味し, 医療サービス向上や患者満足度を高めることに目的があ る。今回の病室訪問という新たな取り組みは,看護師とし ての経験からの発想であった。入院患者・家族に積極的に 関わることでコミュニケーションも深まり,大きなクレー ムに繋がることを防ぎ,安心して治療に専念できる環境を 整えるなどのサポートも行えたのではないかと考える。今 後も病室訪問という日々の積み重ねを継続し,当院におけ るアドボカシー担当看護師としての役割を構築していきた い。
  • 佐藤 美奈子, 市川 美奈子, 高橋 竹子
    セッションID: 24-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    医療現場における看護師への暴力が増加している。暴力 行為は患者,家族によるものだけでなく職員の間にも存在 し,職場の安全性の低下から職務満足の低下をきたすなど 見過ごすことのできない問題である。2003年の看護協会の 調査を基に,院内における暴力の現状把握と看護職員の暴 力に対する考えを知るためアンケート調査を実施した。
    〈研究目的〉1.院内における「患者・家族から」と「職 員から」の暴力の実態を知る。2.暴力を受けたときの感 情や対処方法を知る。
    〈方法〉全看護師215名を対象に無記名留め置き式アン ケート調査を平成20年8月に実施した。「保健医療福祉関 係職員の暴力被害に関する調査」を基に作成した独自の調 査票を用いて,過去1年間に「暴力を受けたことがある か」,ある場合は「その行為を暴力ととらえたか」,「その 理由は何か」,「暴力を受けたときの気持ちや対処方法」に ついて調査した。
    〈結果・考察〉院内に種々の暴力が存在し,それに対する 対策が不十分であることが明らかになった。過去1年間に 暴力を受けたことがあると答えたのは「患者・家族から」 37%,「職員から」30%であった。患者・家族からは身体 的暴力が多く,行為に対しストレスや恐怖を感じていた。 職員からは医師による言葉の暴力が最多であった。様々な 行為を受けてもそれを暴力ととらえるかどうかは相手の状 態や本人の感情によるものが大きく,すべてを暴力と捉え ているとは限らないことがわかった。 暴力を受けたときの気持ちは「関わりを持ちたくない」 「嫌悪感」「恐怖感」が多かった。対処法として「話を聞 いてもらう」,「相談する」が多いが,個人でできる対処法 には限りがあるため問題の解決には結びついていない。ま た,院内の暴力対策についても十分でないという意見が挙 げられた。 院内暴力は身近にありながら取り上げにくい問題であ る。しかし,職場の安全を守り職務満足を向上させるため には報告のシステム作りや職員の意識の向上など組織全体 での取り組みを進めていくことが必要である。インシデン トレポートで情報を共有化し安全対策に取り組んでいるよ うに,暴力についても報告,情報共有のシステムを作るこ とが必要である。同時に,暴力防止プログラムの導入など 組織的な教育を進め,職員間の意識を高めることも重要な 課題といえる。
  • 神山 奈津季, 小林 みつ子, 奥谷 弘子, 前嶋 由起子, 沼尻 千恵子
    セッションID: 24-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉保険医療の現場に勤務する職員に対する暴力
    の増加が問題となっている。当院でも,患者からの暴力で
    離職やケアの提供を出来なくなったケースがあった。そこ
    で,患者からの暴力に限定した調査を行い,被害実態が明
    らかになったので報告する。
    〈研究期間及び方法〉病院職員211名に,2007年9月~2008
    年8月間で受けた暴力に対する独自のアンケート調査を行い,
    単純・クロス集計した。
    〈結果〉回収率94.8%(200名)。暴力を受けた人は81名
    (40.5%),うち看護師70名,医師4名,事務5名,薬剤
    部1名,ME1名。看護師は37名が複数の暴力を受けてい
    た。身体的暴力36名(18%),言葉の暴力64名(32%),セ
    クシャルハラスメント31名(15.5%)だった。
    〈考察〉看護師は暴力を受けやすく,病棟看護師の被害が
    多い。それは日常生活援助による接触が多い為と思われる。
    言葉の暴力は全職種で見られ,小路が「医療費負担の増
    加・サービス受給意識・権利意識の高揚・医療ミスへの懸
    念・家族支援の低下等,患者側の社会的要因の増加」と述
    べている事から,誰もが被害対象になりうることを示して
    いる。全暴力において被害時,「仕方がない」「適切な対応
    だった」と答えた人が多い。仁木は「看護教育では,どの
    ような患者であっても“理解・共感・受け入れ”をするよ
    う教育が徹底されている」と述べており「患者だから」
    と,受容してきた結果だと推測され,リスクマネジメント
    から考えると暴力を過小評価している組織風土があると思
    われる。職場の安全のためにヒヤリハット報告書に「暴
    力」という項目を設けていく必要がある。暴力に対する意
    識を高める為に,まず管理者の意思統一を図り,教育して
    いくことが不可欠である。また,患者にも医療を受ける側
    として節度ある態度で臨んでほしいことを,病院の姿勢と
    し示していく必要がある。
    〈結論〉
    (1)全職種が暴力を受ける可能性があり,看護師は複数の
    暴力を受けるリスクが高い。
    (2)暴力に対する各個人への意識を高め,病院として暴力
    対策の推進が必要。
  • 上都賀安全劇場を実施して
    山形 祥子, 松嶋 和子
    セッションID: 24-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉医療安全の基本は,患者の安全を守り安心し て医療を受けられる環境を整備する事である。そのために は,病院全体の組織的な安全対策と,医療従事者個人レベ ルの安全対策の2つの対策を推し進めることが必要であ る。個人レベルの安全対策としてリスクセンス向上のため 職員の医療安全研修は欠かせない。そこで,医療安全週間 の一環として職員研修に演劇を取り入れ実施したので,そ の経過を報告する。
    目的:安全劇場を観劇し,医療事故を自分自身に置き換 え考える事により,医療安全の意識向上を図る。
    方法:安全委員が創作した安全劇場の実施とアンケート による評価。
    内容:ハインリッヒの法則,スイスチーズ理論,チーム
    医療・復唱の重要性,患者誤認防止。
    実施日時:平成20年12月5日 17:30~18:30
    〈結果及び考察〉参加者は,133名で8職種の参加であっ た。演者は医療安全管理委員会の委員であり,内容には, 当院で発生したヒヤリハットも内容に盛り込んだ。それぞ れ劇の後には,診療部長や薬剤部長,看護師長のスピーチ を行い,医療安全を身近に感じられるよう工夫した。 アンケートの結果は,回収112名,回収率は84%であっ た。内容を理解出来たかどうかについては,理解出来たが 112名(100%),感想には,ハインリッヒの法則や理論が わかり,報告することの大切さが理解出来た。今後も続け てほしいなど多数の記載があった。また,演じた委員にお いては,劇のプロセスを通してチームワークの向上が図 れ,医療安全について理解を深めることが出来勉強になっ たという意見が聞かれた。以上のことから演劇は,医療安 全について理解されやすく意識向上に役立つ研修であると 考えられる。
  • 三浦 貞子, 齋藤 仁, 佐々木 あや子, 阿部 百子, 鈴木 良子, 三浦 由美子, 佐藤 多恵子, 佐々木 雅子, 新妻 美貴子, 佐藤 ...
    セッションID: 24-08
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉最近,医療環境が変化している状況の中,看
    護師(准看護師を含む)は日常業務において,多くの倫理
    的問題に直面し悩んでいることが考えられる。看護倫理委
    員会が発足したのを機会に,当院の看護師が遭遇し,悩ん
    でいる倫理的問題についてアンケート調査し現状を把握で
    きたので報告する。
    〈研究目的〉期間:平成20年10月23日~30日。対象:看護
    師・准看護師429名(有効回答数406名)。方法:質問紙調
    査(留め置き法)。1997年日本看護協会が実施した「看護
    職が日常業務上悩んだり直面したこと」の質問項目を活用
    した。
    〈結果・考察〉倫理的問題として全体で「患者・家族の理
    不尽な言動に憤りを感じる時」が74%と高かった。
    患者・家族が医療情報を容易に得られ,報道などの影響
    で権利意識が高まるなど患者側が変化し,主張するように
    なった為と考える。年代別で,20代は「自分の能力を超え
    る仕事をしなければならない時」58%と高かった。現場で
    は,一人前として自分の実践能力を超えると思われる業務
    を担わなければならないことが多い為と考える。又,「人
    手がない為,不必要な抑制をしなくてはならない時」が
    39%と低かった。これは,倫理的問題に気付く力,感受性
    が低い為と考える。
    40代,50代は「医師の指示が対象者にとって適切でない
    と感じるが黙認しなくてはならない時」67%と高かった。
    社会的及び看護師としての経験の積み重ねにより,広い視
    野で物事を捉え,考える力が備わり感受性が高い為と考える
    。 「看護者の倫理綱領」を知っている看護師は64%と低かった。
    看護師の行動指針である「倫理綱領」を全看護師が
    周知しておく必要があり,看護倫理を考え対応すること
    は看護の質に繋がると考える。
    〈結論〉
    (1)倫理的問題として看護師の74%が「患者・家族の理不
    尽な言動に憤りを感じる時」であった。
    (2)看護師の行動指針である「看護者の倫理綱領」を知っ
    ている看護師は64%と低かった。
    (3)倫理的感受性を高め,行動力を向上させる為には事例
    検討を積み重ねていく必要がある。
  • 小柳 ルミ子, 板垣 円, 土橋 祐子, 渡辺 式, 浜田 美幸
    セッションID: 24-09
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    当病棟では4月~6月の3ヶ月間で36件のインシデント が発生し,その中で確認不足によるインシデントが15件を 占めた。従来当病棟では発生したインシデントを情報共有 し対策を立て事故防止に努めてきた。しかし時間が経過す ると意識がだんだん薄れ同じミスを繰り返してしまうとこ とから,事故防止に対する意識を維持できるような働きか けが必要であると感じた。そこで確認不足によるインシデ ントに着目し,インシデント発生後に対策をとって取り組 むだけでなく,朝の申し送り10分間の時間を活用して患者 認証,注射確認,与薬確認,針の取り扱いなどの対策方法 を,スタッフによるロールプレイや質問形式で繰り返し再 学習していった。 事故防止の振り返り実施前・後3ヶ月のインシデント件 数を単純集計し比較した結果,実施後7月~9月の3ヶ月 間の確認不足によるインシデントは7件と減少した。また 事故防止振り返り4ヶ月経過後スタッフへ半構成アンケー トを実施した結果,再学習による事故防止の振り返りは, 事故防止に対する意識を高めると全員が答えていた。 事故防止の振り返りが事故防止に対する意識を高めると 全員が答えていることから,ロールプレイによる実践はス タッフ間で共有できる機会となり,確認作業を確実に行な おうとする意識改革にもつながっていると考える。また朝 の10分間の時間を活用して取り組んだことで,記憶がしっ かり残ったまま業務に入ることができたからではないかと 考える。さらに実際の場面で緊張感をもって取り組んでい ると答えていることから,事故防止の振り返りは実践に即 した内容であり真剣に取り組んでいる結果といえる。同時 にスタッフが重荷に感じずに出来る学習方法の工夫や雰囲 気作りが今後も必要である。 インシデント発生の要因は1つではなく様々な背後要因 が絡み合って発生しているため,繰り返しの再学習のみな らずよりよい対策や方法を検討し今後も継続して取り組ん でいきたい。
  • 村瀬 美直子
    セッションID: 24-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    2008年度の診療報酬改訂に伴い,急性期等手厚い看護を 必要とする患者の「看護必要度」を測定する基準が導入さ れ,7対1入院基本料を算定するすべての病棟においては 毎日「一般病棟用の重症度・看護必要度に関わる評価」を 用いた患者評価を行うことが義務付けられた。この改訂に 先立ち様々な施設で看護必要度導入に向けての取り組みが なされてきてきた。 看護必要度の指標開発研究に携わった筒井氏は,看護必 要度の考え方は全国的に統一した指標として診療報酬に導 入された物であり,誤った評価はそれ自体が無意味となる ため,正しい評価がなされるような評価者の育成の重要性 を強調している。 そこで当院看護部では,スタッフが看護必要度を正しく 理解し,正確に評価できることを導入期の課題とし取り組 みを行った。そして,看護必要度の評価入力のためのシス テムの構築と,院内スタッフを対象にした集合教育を実施 した後に導入に踏み切った。 日々収集される評価データを追うなかで,一般的に基準 越えといわれる患者が予想以上に多く発生していることに 気づき,現場で正しい評価がなされていないのではという 問題意識を持ち監査を実施した。その結果病棟間で評価の 正確さに大きく差があることが分かった。その差を生んだ 原因は何かを調査したところ,正確な評価ができている病 棟内では,部署内での自主的な勉強会が開催されているこ とがわかった。 筒井氏は評価の信頼性を維持するためには,最低年1回 以上の評価者研修の必要性を説いているが,今回の取り組 みの結果から,特に導入期においては繰り返し教育の機会 を設けることが評価の正確さを保つ鍵になることが示唆さ れた。
  • 鈴木 真由美, 杉浦 仁美, 鈴木 菜生, 神谷 須磨子
    セッションID: 24-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉危険予知トレーニング(以下KYT と略す)は,
    産業界で開発された事故防止活動である。目に見えない職
    場の危険を事前に予知・発見することで,危険に巻き込ま
    れないよう未然に事故を防ごうとする行動である。今日の
    医療界においても,医療安全教育の一環として多く取り入
    れられている。A 病院は600床以上の急性期病院で,生命
    危機状態にある患者から軽症患者,多岐にわたる病期と多
    くの診療科がひしめく現状の中,安全な看護を提供しなけ
    ればならない。医療者のミスの先には,患者の生命や健康
    が関わってくることを意識するため,今回KYT を取り入
    れ,危険予知に対する意識向上の取り組みを行ったので,
    その結果を報告する。
    〈方法〉期間:平成20年6月から平成21年1月。対象:当
    病棟看護師22名。症例:紙上患者のモデルケースを4症
    例。6月:症例1:ベッドから車椅子への移動。8月:症
    例2:点滴交換。10月:症例3:挿管患者の検査室への移
    送。12月:症例4:脳外ドレーン挿入患者の移送。
    上記,4症例のKYT シートを作成し,現状把握・本質
    追及・対策樹立・目標設定の4ラウンド法に沿って実施。
    (1)テスト形式で記入,どのような危険が潜んでいるか意見交換
    (2)重要な危険ポイントの絞込み
    (3)解決策の検討・立案
    (4)具体的行動目標の実技・実演・指差し呼称を行う
    その後,KYT 導入前後の意識調査のアンケートを実
    施,効果の調査をする。
    〈結果〉アンケート回収率は91%であった。KYT を取り
    入れてから指差し呼称をしている人は「確実に行う」
    「時々行う」が全体で81%であった。見えないリスクに対
    し意識をして職務にあたるようになったと感じる人は「と
    ても感じる」「時々感じる」が90%であった。KYT がリス
    ク感性を身につけることに有効と感じる人は「とても思
    う」「まあまあ思う」が94.5%であった。
    〈考察〉KYT を取り入れ,部署で意見交換できた事で今
    まで気づかなかった危険を明確にすることができた。
    また,指差し呼称などの危険を回避する行動をとるスタッフ
    が増えた事は,意識が高まったと言える。
    〈まとめ〉KYT を取り入れたことで,安全確認行動をす
    るための意識向上につながったと考える。
  • 坂口 亜由美, 安孫子 ルミ, 宮本 さとみ, 南 亜子, 近藤 奈津子, 佐藤 真理子, 林 久美子
    セッションID: 24-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉当院では看護部門を中心に手指衛生の改善に向け
    て取り組んでいる。手洗いチェックを年間3回実施し,ス
    コアが低い項目の改善を目指し,各部署で具体策を提示,
    ポスター掲示や院内広報誌に掲載など啓発活動を実施。昨
    年度から医師,臨床検査部門,放射線部門その他,計9部
    門へグリッターバグを用いた洗い残し調査,アンケート調
    査,新採用職員に手洗い講習を実施した。手指衛生遵守率
    の改善に向け取り組んだ結果と今後の課題を報告する。
    〈方法〉(1)看護部門に手洗いチェックを年3回実施,各部
    署で遵守率の低い項目の具体策を立てる。(2)新採用者対象
    に手洗い講習を実施。(3)他部門9ヶ所にてグリッターバグ
    による洗い残し調査とアンケート調査実施。
    〈結果〉手指衛生チェックでは,抜き打ちではなく評価す
    る部署もあり評価方法が異なり,結果にばらつきがあっ
    た。「同一患者でも複数のケアをする時は,ケア毎に手指
    衛生手技を実践している」は52.2%と前年度と変わらな
    かった。「患者毎に手指衛生手技を実践しているか」は遵
    守率が上昇,擦式消毒剤の手指衛生は前年度89.9%から
    92.9%と上昇。グリッターバグでの調査結果,洗い残しの
    多い箇所を各部門に報告。アンケート結果は,年1回位手
    洗いチェックの機会があるとよいとの意見があった。医師
    部門は年2回洗い残しチェックを実施したが参加率は前年
    度より低く前期41%,後期15%であった。
    〈考察〉看護職員対象の手指衛生チェックは,チェック方
    法を統一する等評価の検討が必要である。遵守率が改善し
    ていない項目は,必要性を具体的に提示し実施・評価を行
    う必要がある。他部門9ヶ所で洗い残しチェックを実施し
    た事は,今年度改善している項目もある事から,洗い残し
    部分を視覚的に気付く事ができる手段として効果的な手指
    衛生教育であったといえる。意識して実践できるために繰
    り返しの取り組みが必要である。医師部門は参加率が低く
    参加を積極的に呼びかける等対策の検討が必要である。
    〈結論〉遵守率の低い項目に対し,具体的ケア内容と手指
    衛生の必要性を提示し実践・評価する。他部門への手指衛
    生教育を定期的に継続する。
  • 寺田 浩史
    セッションID: 24-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当院においてICT 活動がより活発になって から3年が経過し,その一環として「院内感染対策研修会 (全職員対象)」が年に3回に分けて開催されている。細 菌検査室もICT の一員として担当技師が研修会にて講義 を行っている。今回は当院研修会での細菌検査室の役割及 び講義内容の1例について大変簡単ではあるが報告させて いただく。
    〈研修会について〉各年度5月下旬「院内感染総論(針刺 し事故も含む):医師部門」,6月下旬「手洗い・環境整備 等(標準予防策を中心に):看護部門」,7月下旬「院内 サーベイランス(検査担当),TDM 業務:パラ部門」
    〈研修会開催の目的とは〉1:院内感染についての基礎知 識を持つこと。2:院内感染防止の切り札となること は?。3:標準予防策の周知徹底(全職員)…自分を守る には?患者を守るには?。
    〈問題点について〉1:細菌検査室の担当は7月下旬のた め5月・6月の内容について忘れがちであること。2:院 内サーベイランスという言葉の意味が分からないため拒絶 感を持たれること。3:主に発生状況や薬剤感受性試験に ついての報告のために楽しくないこと。
    〈解決への糸口〉1:総論・標準予防策等について簡潔に 復習できる内容を盛り込むこと。2:細菌検査室の役割や 仕事内容について簡潔に述べるようにしたこと。3:講義 内容について各項目毎に少しずつまとめを入れながら講義 を進めるようにしたこと。4:研修会最終日ということを 考慮して『まとめ』として締めくくるようにしたこと。 5:上記4つについて挿絵や画像等を積極的に利用し「視 覚」で訴える方式を取り入れたこと。
    〈効果について〉1:各項目毎にポイントを押さえながら 簡潔にすることで内容への拒絶感を減らすことができた。 2:研修会の総括を行うことで「院内感染予防」に対する 意識の向上,関心が高まった。3:ICT の実態をより明 らかにすることで活動が活発化され,理解されるように なった。
    〈今後の在り方について〉1:ICT の一員であることを 自覚して積極的に活動に参加すること。2:細菌検査室の 仕事や役割について,さらにアピールを行うこと。3:役 割分担という見えない壁を乗り越えて相互理解をさらに深 めていくこと。
  • 高村 秀彰
    セッションID: 24-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    1.研究の背景
    診療放射線技師の日常検査における患者とのコミニュ
    ケーションの中でインフォームド・コンセントのあり方に
    ついて調査研究が必要と考えた。
    2.研究方法
    (1)質問紙は4種類(A 群,B 群,C 群,D 群)として
    場面設定法により独自に作成し,患者の立場としての
    回答を求める。場面設定に際しては,医療検査情報の
    量について2種類,診療検査態度の質について2種
    類,これを組み合わせて合計4種類の場面設定を行った。
    (2)4群(A 群,B 群,C 群,D 群)の分類の妥当性を
    確認しておくために,情報量と検査態度という2要因
    に対する評価を求めた。
    (3)情緒的側面の各指標に対する評価を求める。
    (4)意思決定の各指標について,いずれか1項目の選択を求める。
    (5)HLC 尺度の中の2因子について回答を求め,意思
    決定の各指標との関連性を調べる。
    3.分析結果および考察
    (1)検査情報量と検査態度の評価について
    情報量についてはA,B,C,D の各群の順に高い
    評価点であった。
    検査態度についてはA,C,B,D の各群の順に高
    い評価点であった。
    (2)2要因(情報量,検査態度)と情緒的側面の指標と
    の関係について
    検査情報の説明が詳しく検査態度が良いほど,検査
    に対する情緒的側面が高められる。また,検査情報の
    説明が詳しいほど検査に対して満足しやすくなること
    が考えられた。そしてまた,検査態度が良いと検査に
    対する意欲が高められ,検査情報の説明が詳しいほど
    および検査態度が良いほど,検査に対する不安から解
    放されやすくなることが考えられた。
    (3)2要因(情報量,検査態度)と意思決定との関係について
    患者の検査に対する自発的行動を促すのは,診療放
    射線技師が検査に対して説明するだけではなく,患者
    に対しての接し方に影響を受けることが考えられた。
    (4)意思決定の各指標と人の行動に影響を及ぼす認知ス
    タイルとの関係について
    超音波検査の場面において,患者の意思決定は患者
    の認知スタイルにも影響を受けることが考えられた。
  • 吉貞 千苗, 中野 直美, 佐藤 伸夫
    セッションID: 24-15
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉就職を考える看護学生にとって就職活動において 自分の能力や適性を考え,やりがいの持てる仕事として働 く場である病院を選択することは重要である。新卒看護師 の9割が病院に就職を希望し,その中でも実習先の病院を 選ぶ傾向があるといわれている。A 病院では看護専門学校 からの実習を受け入れ,その学校へ毎年就職説明会を行っ ているが,就職希望者は少ない。そこで学生の病院選びの 要因を明らかにし,学生が就職したいと思える病院として A 病院の魅力を探り,魅力ある看護科づくりの基礎資料と するため調査を行った。
    〈研究方法〉2008年11月から12月にかけてA 病院で実習 を受け入れている看護専門学校2校の最終学年に在籍する 学生110人を対象に,質問紙による調査を依頼した。本研 究の趣旨を研究協力依頼書で説明し,質問紙の回答をもっ て同意が得られたとみなした。結果の分析は項目ごとに記 述統計を行った。
    〈倫理的配慮〉A 病院の看護科倫理委員会の承認を得て 行った。
    〈結果・結論〉対象者110人に対して回収人数88人(回収 率80%),有効回答100%であった。学生の就職先の病院選 びについて,就職活動に必要な情報収集の方法は「病院見 学」や「病院説明会への参加」が最も多く,就職先の病院 を決定するうえでは「病院の雰囲気」を最も重視してい た。A 病院における魅力についても「病院の雰囲気」が最 も多かったが,A 病院に就職を決めるための決定的な魅力 にはつながっていなかった。看護師個々が自覚を持って好 感の持てる看護師を目指し,地域看護への取り組みや後輩 を大事に育てる環境づくりにさらに取り組んでいく必要性 が示唆された。
  • 嘉屋 祥昭
    セッションID: 24-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/03/19
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉病院を取り巻く情勢は,マイナス要因につな がる多くの状況下にある。コンプライアンスに抵触する事 案,セクハラ,パワハラ等不祥事はメディアを通じて広が り,また病院・医師のランク等も一方的に報じられてい る。このように周辺環境がめまぐるしく変化する中,組合 員・地域住民の要望に応えるためにも厚生連4病院(尾 道・吉田・広島・府中)に働く全職員が仕事の基本やマ ナーを身に付けて,一層の信頼を高めなければならない。 患者や家族が何に不満を抱くのかを検証するのではな く,私たちは何を期待されているのかという観点からもう 一度自院・所属職場の接遇を見直す必要がある。広島県厚 生連人事部教育課を中心に,4病院教育担当看護副部長と 共に作成したマナーガイドブックを活用しながら接遇指導 者を育成し,委託職員を含め多職種を対象とする接遇教育 に取り組み成果が得られたので報告する。
    〈マナーガイドブックのねらい〉
    ・4病院の対応の違いや手法の違いをなくし,マナーのレ ベルアップに努める。
    ・職場の実情に精通した職員が職場の仲間としてマナーを 直接指導することでよりきめ細かなマナーが定着する。 そのためにも組織内に「質の高い指導・論評」ができる 人材を広く育てていくことが必要である。
    〈接遇指導者養成〉まず各病院より各々の職種から指導者 として活動できる人材を選出し,現状と課題を持ち寄っ た。次にどのように自院で接遇研修に取り組むかをビジョ ンとゴールを設定し,講義やグループワーク・ロールプレ イ等をしながら指導者養成に取り組んだ。 終了後は認定証を発行し,接遇指導者としての意識付け とした。現在接遇指導者を28名養成した段階である。
    〈厚生連4病院での成果〉接遇指導者はこの研修の必要性 を説き,ガイドブックを使用し,ロールプレイを取り入れ 各病院で研修を実施した。参加者は多職種(医師・研修 医・薬剤師・放射線技師・理学療法士・事務・委託業者 等)であり,職種間の理解も深まり,協力しながら自部署 で自ら実践者として活動できると評価している。
    〈これからの取り組み〉・ロールプレイ事例集の作成 ・広島県厚生連として接遇指導者100名を養成する ・マナーブック活用の拡大(抄読会など) ・患者満足度調査と患者さまの声を用いた評価
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