日本農村医学会学術総会抄録集
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第59回日本農村医学会学術総会
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  • 立身 政信
    セッションID: A-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈畜産・酪農〉平安時代末期に、奥州藤原氏による黄金の都平泉が栄えた歴史はあるものの、岩手はおしなべて冷害に苦しむ貧しい地方であった。しかし平泉時代には黄金と並んで駿馬を名産とし、その後も軍馬の産地として名を馳せた岩手は、今も小岩井農場に代表される畜産・酪農の県として知られている。
     岩手の畜産・酪農は北海道のような広大な平地や丘陵地ではなく、大部分が大型機械の導入が困難な山間で営まれている。
     著者は、恩師角田文男先生の下で農村医学研究の端緒として1970年代後半に岩手県北上山系の酪農について、その労働や環境と健康の問題に関する衛生学的検討を開始した。
     山地酪農に特徴的な生活と労働の実態を把握するために、最初に用いた方法は直接時間観測法によるタイムスタデイである。牛舎の管理や搾乳等は年間を通して4~5時間行われるが6月以降は牧草処理に要する時間が増加して、総労働時間は倍増する。牧草の刈り取りや集草に要する労働負担は時間だけではなく、エネルギー消費量の面でも著しく増加する。正味13時間にも及ぶ酪農労働の中で牧草刈り作業は2時間を超えていた。この間最大45度を超える急傾斜地で刈り払い機を用いた作業が続くのだが、傾斜度が増すとともに労働強度が増し、平地ではエネルギー代謝率(RMR)3.0であるのに45度の急傾斜地ではRMR6.0と倍増していた。
     刈り取った牧草をサイロに詰めるには、動力カッターで粉砕した牧草をサイロの上に吹き上げるのだが、カッターによる指の切断事故やサイロ内に入る際に起こる二酸化窒素による急性肺水腫(サイロ病)などの危険がある。しかし、酪農地帯の象徴的存在であったサイロはその後バンカー型、ロール型と変化して、サイロ詰め作業は現在ほとんど行われなくなった。
     飼養牛頭数の少ない小規模経営酪農家で労働負担が大きく、健康状態にも問題がある例が多かったため、当時平均飼養牛頭数4頭だった調査地区に飼養牛頭数20頭を推奨した。北上山系大規模畜産開発事業の影響もあって草地が開墾され大規模化が図られたが、続いて起こった乳価の暴落によって先進的酪農家が巨額な借金を抱えることになったことは、衛生学の知見に社会経済的な視点を加味することの重要性を考えさせられた。
    〈高原野菜〉地域農政のもと、冷涼高地の北上山系ではレタス、ダイコン、イチゴ、ホウレンソウ、ピーマン等の野菜やリンドウ等の花卉栽培が奨励され、産地化された。圃場面積が拡大され、耕耘や播種には機械が導入されたが、機械化の困難な間引きや収穫作業は人手で行われることが多く、さらに収穫後の選果・調整作業のために、労働負担が増加して腰痛などの多発が見られた。タイムスタデイとともに心拍数の連続測定による作業負担の測定を行ないながら、作業負担の軽減を試み、イチゴ収穫作業における収穫車の導入などで、一定の改善を見ることができた。
    〈ワカメ養殖〉沿岸漁業に属する作目であるが、岩手県の陸中海岸地域ではタマネギ等の野菜栽培と同時にワカメ養殖を行う半農半漁の農家が多い。ワカメの収穫は早春に集中し、ほぼ1ヶ月間、早朝からの作業が行われる。集中的にタイムスタデイを行う中で、作業負担の分析と早朝作業の改善などを提言し得た。
    〈まとめ〉農業労働が社会の変貌とともに変化し、新たな健康問題を惹起することを衛生学的視点から報告したい。
  • 望月 善次
    セッションID: A-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     先ず、伝統ある「第59回日本農村医学会学術総会」において、「特別講演」の場を与えられたことを感謝致します。
     講演テーマに掲げた「<われらはいっしょにこれから何を論ずるか>」は、いうまでもなく宮澤賢治「農民芸術概論綱要」の「序論」冒頭の文言です。
     「農民芸術概論綱要」は、この文言の後、「おれたちはみな農民である ずゐぶん忙がしく仕事もつらい/もっと明るく生き生きと生活をする道を見付けたい/われらの古い師父たちの中にはさういふ人も応々あった/近代科学の実証と求道者たちの実験とわれらの直観の一致に於て論じたい」と続き、あの有名な一節「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない。」に至ることは御承知の通りであります。
     ところで、宮澤賢治は、通常の意味での「文学者」であったのではありません。「文学者でもあった生涯」だというのが私の考えです。〔望月善次「文学者でもあった生涯~ 「挫折からの甦り」が織り成す未完の人生 ~」、福島泰樹・立松和平責任編集『月光』第二号(勉誠出版、2010)pp.93~99.〕
     また、その生涯は決して順調なものではなく、「挫折と甦り」を繰り返した生涯でもありました。
     典型的なものを列挙してみても次のようなものを挙げることができます。
    現在的に言えば「落ちこぼれ」であった(旧制)中学校時代とその後の浪人時代〔明治42年~大正3年=13歳~18歳〕、盛岡高等農林学校を優秀な成績で得業(卒業)して、「研究生」として残ったのに、死因となった結核の徴候と考えられる体調の異変を感じ、花巻の家に帰り悶々とした頃〔大正7年=22歳〕、家出して上京し、宗教団体国柱会に賭けようとするが結局は故郷、花巻に帰った頃〔大正10年=25歳〕、「この四ケ年が/わたくしにとってどんなに楽しかったか」というほど充実していた「花巻(稗貫)農学校」の教師をやめ、「本統の百姓」になろうとしたのに〔★「農民芸術概論綱要」は、この時期に相当します。〕、農民と自分との間にある越えられない溝を徹底的に思い知らされる羅須地人協会時代〔大正15年=30歳〕、東北砕石工場技師としての再起と体調の異変〔昭和5年=35歳〕等々です。しかも最後の体調異変は、結局回復することなくこの世を去らなければならなかったのです。
     しかし、こうした賢治の生涯は、多くの人の心を揺さぶっています。それは、賢治が精一杯の生を生きたからでありましょう。
     当日は、賢治の写真や作品なども紹介しながら、その生涯を辿り、その生涯の意味を共に考えることができればと考えております。
  • 張 自寛
    セッションID: A-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに 中国は総人口のうち8億人が農民で占め、改革開放以来30年間、一貫して「三農(農民、農村、農業)」問題を最も重視し、農村の改革と発展を推進し、農村地域に大きな変化をもたらしてきた。 1)人民公社を廃止し、農家が農業経営を請負う体制を確立した。2)二千年以上存続してきた農業税を廃止し、農家に食糧生産補助金を支給し、農民の負担を大きく軽減した。3)食糧生産は順調に伸び、農産物の供給が豊かになり、13億人口の食糧問題を中国独自の力で解決した。4)農村地域(郷鎮)に企業が続出し、農村の労働力は都市へ大規模に移動・就業し、億単位の農民が産業労働力の重要な構成部分となった。5)農民の生活は改善し、貧困から抜け出して小康状態までに転換しつつある。

    中国農村経済社会の発展 改革開放以来30年間、中国農村経済の発展は速かったが、2003年におけるSARSとの闘いの過程で多くの啓発を得た。その中で最も重要なことは、経済社会の発展が一方に偏ることなく全般にわたって計画し、経済社会の発展に見られるアンバランスの問題解決を早めなければならない。ここ数年、中国は農村経済を発展させると同時に、社会事業の発展および国民の生活改善をより一層重視し、以下のような民意が得られた幾つかの重要な事業を実施してきた。
    1)2005年から9年制義務教育は全て無料とし、9年制義務教育に対する経費保障システムを国の財政によって賄い、授業料や雑費の免除と教科書の無料提供、同時に貧困家庭の寄宿生に対する生活補助政策を実施した。また経済社会発展に伴う技術者の需要に適応するため、中・高度の技術教育を大いに発展し、農村の貧困家庭出身者および農業を専門とする学生については無料化を図る。これらの事業は中国の教育体制において歴史的変革である。
    2)2003年から新型農村合作医療制度が創設された。先ず一人当たりの保険料が年間30元からスタートし、現在は120元になった。保険料の内訳は、国と地方政府の財政補助が2/3を占め、個人は1/3を納める。2009年末現在、加入者総数は8.15億人で、基本的には農村人口の全てをカバーすることができた。この制度は重病への保障を主とし、特に非感染性疾患、例えば、悪性腫瘍、心疾患、脳血管疾患等に対して重点的に保障する。農業税の廃止と9年制義務教育の無料、また新型農村合作医療の実施等により、「農業税を納めなくてよいこと、無料で学校へ行けること、受診料が高くないこと」といった8億の農民が待ち望んでいた夢を、いまや実現することができた。
    3)2007年から全国の農村において最低生活保障制度が創立された。現在、約5千万の農村人口がこの制度に組み入れられ、一人当たり月80元の政府補助金が交付されている。衣食不足の農民にとっては、まさに「雪中に炭を送る」こととなった。
    4)経済が発展した沿海部の幾つかの省・市において、農民基本養老保険制度を先ず試行し、その上で2009年から新型農村養老保険制度の試行を全国的に展開した。昔から中国農民の間では、「子を養って老を防ぐ」という考えを持っていた。現在、養老保険制度の試行県では60歳以上の農民全員が、国の財政による最低標準の基礎養老年金を全額享受し、農民も社会保障を受けられて老後への不安が取り除かれた。従って、前述した「農業税を納めなくてよいこと、無料で学校へ行けること、受診料が高くないこと」に、「老後への不安がないこと」を加えるべきであろう。
    これらの制度は、いずれも農民に大きな利益を与え、現実的、歴史的意義が深い。しかし、現段階では国の財政に限りがあり、中国における社会保障水準は比較的低いが、今後、経済の発展に伴い、社会保障水準も更なる向上が期待されよう。

    農村医療の新しい進展 最近の中国における農村衛生事業は著しい進展をみせた。2003年のSARS発生後、政府は農村事業を重要な議事に位置づけ、国務院は常務会議を毎年開き、農村衛生事業について討議を重ねてきた。中央政府および地方政府は、ともに農村衛生への財政投入を年々増大することによって、農村医療ネットワークの建設、医療衛生サービスに、以下のような新たな進展がみられた。
  • 大塚 耕太郎
    セッションID: A-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     岩手県は全国都道府県では自殺率が高く、全県的に対策を行っている。岩手県は自殺対策を行う上で、県土が広く、また社会資源が乏しいという現状を克服していくことが重要である。岩手県の保健医療圏ごとにみた県内の自殺率では、特に沿岸北部の久慈地域の自殺死亡率は2002年時点で、過去20年間を通じて著しく高かった(野原ら,2003)。 そして、岩手県の自殺集積性に過疎化、医療資源の乏しさ、失業という経済問題と関連していた(高谷,2005)。
     こうした現状を踏まえた上で自殺対策を立てていく際には、これら自殺の危険因子を現実的に除去できるのか、またはそれが無理で防御因子を高める方略を採用すべきなのかを判断しなければならない。前者の場合、例えば、医師数を増やすことや失業率を減らすなど、社会問題に真正面から取り組む必要がある。しかし、こうした社会的問題を直ちに解決することには非常に多く困難が伴う。したがって早急な自殺対策は望めない。そのため対策としては、医療資源・社会資源の乏しさを補うことである。第一に数少ない地域の関連機関が連携をとる体制が必要である。自殺対策のネットワークを構築することで、それぞれが独立して対策をとるのではなく、協力して対策をする体制が作られる。
     体制づくりとして、関連機関の従事者が自殺対策に協力するように人材養成を行うことが重要である。これまで自殺対策と関連のなかった機関が関与するようにしていくことで、対策のバリエーションが拡大し、総合的な対策につながる。自殺対策を目的とする介入にあたっては,地元の地域資源を活用し,分散化した対策を実施するという方法論を確立する必要がある。
     久慈地域の自殺対策は包括的なプログラムの実践、地域の自殺率や社会的指標の検討、事業の進め方、自殺対策の対象領域の拡大などを重要視し、以下の4つを基本としている;1)6つの骨子(ネットワーク,一次・二次・三次予防,精神疾患・職域への支援)に基づく対策、2)既存の事業と新規の事業(ネットワークと人材養成)による事業構成 、3)さまざまな人、組織、場を活用した地域づくりの視点に基づく対策、4)地域診断を反映し、時間軸に沿った活動計画と計画修正。
      地域における総合的な自殺対策は、こころの健康に関する地域づくりともいえる。こうした地域づくりという観点からは、地域住民参加型の活動が根付いていくことが重要と考えられる。住民組織、ボランティア等民間団体、行政、専門家など自殺対策に関わる社会資源が包括的に自殺対策事業に参画していくことは、地域で支えあうこころの健康づくりにつながる。このような試みは住民参加型のこころの健康づくりモデルの一つであり、今後様々な地域でこのような取り組みが実践されていくことが期待される。講演では、久慈地域の自殺対策活動の実際について紹介させていただきたい。
  • 佐藤 元美
    セッションID: A-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    医療で一番大切なことは人の役にたつことです.私は自治医科大学を卒業後岩手県沿岸の二つの県立病院で内科医として仕事をしました.
      卒後10年を過ぎ,人の役にたっている実感が得られないことに焦りのような気持ちを持つようになりました.そんな頃に岩手県藤沢町から保健医療福祉を統合したサービス提供を目指して新に病院をつくりたいので来て欲しいと誘われました.予防と連携して防げる病気は予防し,診断と治療が終わっても更に生活を支える施設や在宅での介護も一体的に運営できたら自分の知識や能力が人の役たっているという実感が得られるのではないかという期待に負けて承諾しました.
      ただでさえ医師不足の岩手県で北上高地にある過疎の町でスタッフを集め,病院を開設するのは絶望的なほど困難な仕事になりました.しかし,母校や近隣の県立病院,医師会の先生方の支援を受けどうにか平成5年7月に国保藤沢町民病院は診療を開始しました.5年ほど前からは地方公営企業法全部適応を受けて病院と介護保険に関連する施設を名実ともに一体的な公営企業として運営を行っています.
      様々な医療の質改善のための試みを行ってきましたが,藤沢町で適していると思われた方法は,住民と医療者が話し合うことでした.病院開設から1年後,病院へのクレームが増大しました.無診察投薬を認めて欲しいということでした.町民病院ではそれを認めない方針としていました.無診察投薬について診察室で議論をすることは不毛でした.診察室は不安な患者とそれを解決することが仕事の医師で構成される密室です.医療の在り方について相談する場所ではないからです.そこで,診察室を飛び出し,患者としてではなく住民として医療を考えてもらおうと企画したのが地域ナイトスクールです.農閑期に町内を3から10カ所に分け,夜に病院から大勢のスタッフをひきつれて地域の集会所にでかけて住民と医療の在り方について議論をしました.無診察投薬は危険で違法で病院にとっては利益にならない医療であることを説明し,病院が健全に発展していくためには排除すべきと主張しました.また,病院がなくなれば一番困るのは住民であり,住民こそが医療を育てて守っていく当事者であると話しました.住民の理解は驚くほど早く,無診察投薬を求める患者はほとんどいなくなりました.それに気をよくして,時間外診療の利用について適正化や,増大する自己負担金の未収などモラルに関連することも翌年のナイトスクールで議論しました.それらも大きな成果が得られました.これまで15年間継続してきたナイトスクールの議論から,住民の自発的な活動として「町民病院を守る会」がつくられました.また,若い研修医と住民の交流の場として,研修医の研修報告会を町民に公開して,研修医と町民が意見交換を行う意見交換会も定期的に行うようになりました.
      当初は診察室で解決できない問題を地域で解決したいという思いで始めたナイトスクールですが,ふり返ってみると町民病院の仕事を地域と時代に適合させていくためのダイナミックな改善運動でもありました.誰かの役にたっている,誰かの幸せのためになっていると実感できる医療は,地域で住民と議論して毎日の仕事の中に組み込んでいくことで実現できました.
  • 増田 進
    セッションID: A-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    かつて農村の保健医療活動を行政主導型とか病院主導型とかに類別されたことがあった。
    沢内村は行政主導型といわれ、病院主導型の典型は長野の佐久病院であった。その目指す ところは同じであってもその方法には違いがあり興味深い。
    奥羽山脈の山ひだの中にある当時人口6000人の小山村は豪雪で知られ、無医村の悲劇 の村であったが、一人の卓越した村長の出現によって新しい歴史を開いた。彼、深沢晟雄 は盛岡までの冬季交通の確保、乳児・老人の医療費無料化、乳児死亡ゼロ達成で知られて いる。
    昭和38年沢内村は保健文化賞を受賞し、それを期に全国ではじめて行政の中に健康管理 課が設置された。
    それからは健康管理課と村の病院が中心となった村独自とも言うべき体制と保健活動が始 まった。
    その仕事は、全住民の健康台帳の整備、集団検診と人間ドック(全成人)、栄養改善、生活 改善、住宅改善、レクリエーション・スポーツ・・・と多岐にわたった。
    しかし、油断すると健康管理はデータによる人間管理に陥りやすいし、健康教育は健康命 令と化してしまう(今のわが国はその状況といえる)。それを防ぐためには住民からのフィ ードバックが必要である。
    そのために、沢内村には諮問委員会型の地域保健調査会と地域代表からなる保健委員会が 置かれた。
    例えば人間ドックの料金は地域保健調査会で議論され、行政・病院・住民の負担額が決め られた。また地域活動の内容や日程は保健委員会の対話の中できめられていった。少々の んびりした面もあったが、これも住民参加のかたちと言えるのだろう地域が変わっていく のを実感した。
    以前は豪雪・貧困・多病・早死といわれ、40歳代50歳代での脳卒中・ガンが多かった が、それらによる死亡も減少し、県一の長寿者をみるまでになった。
    しかし行政主導型の活動は行政の施策の方向が変わることで終焉する。
      村独自の施策は、「ふるさと創生一億円事業」や医療と福祉を切り離す「ゴールドプラン」 などの国の施策の中で維持が難しくなり存続できなかった。
    しかし、それはやがて来る地域医療の衰退を示しているし、また再生の道筋を示すもので もある。
                   
  • 熊谷 富民子
    セッションID: A-7
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     わたしたちJAいわて中央女性部は、「JA女性 気づこう一人ひとり 行動しよう 仲間とともに」をスローガンとして結束して活動を展開しています。
     JAの「食農立国」のブランド宣言を受けて、食を生産し食を基軸とした活動(地産地食)により消費者へ「食の安心・安全」を発信しています。また、食育・食農教育をはじめ、自分と家族の健康増進や認知症サポーター養成による地域高齢者の支援活動など地域貢献活動を展開しているJA女性部です。
     特に、JA女性部員、一人ひとりが自分と家族の健康管理に留意していますが、「ダイエットは明日から」「取り組みは3日坊主」と一人ではなかなか継続が難しい健康づくりの取り組みを管内地域女性部のお母さん方が実践しています。
     地域・仲間で健康づくりを実践する「JAいわて中央いきいきチャレンジの会」は、紫波町(しわちょう)の志和(しわ)地域女性部の仲間が集まり、JAが推奨する一日人間ドックを活用した生活習慣改善グループ(代表:鷹觜恵子 会員22名)です。
     この会は、「個々の心身の健康づくり」と「グループ活動で仲間づくりと各家庭や地域などへ健康づくりの輪を広げる」ことを目的に結成し、息の長い活動としてチャレンジしています。
     会員は、1)自らの健診結果や生活をふり返り、現在の身体状態(良い点・悪い点)を知る。2)により健康になるため、自分に必要な生活習慣の改善点に気づき、「やりたいことを楽しみ」ながら、将来の自分を創造する.3)そのために、自分にあった生活習慣の改善方法を「見つける・工夫する・試す」4)自分にあった方法を継続する.5)ご健康づくりを支えあえる仲間ができる(増やす)。 ひいては、家族や地域を巻き込んだ取り組みに拡大することが地域貢献につながると日々前進している仲間たちです。
     では、会の活動を具体的に紹介しましょう。会員が揃ってJAの一日人間ドックを受診するとことから始まりますが、会のリーダーが受診日の調整・問診表などの配布も行い、会員が同時期に受診をすませます。受診後は、当日の医師の判定と指導をふまえた結果説明会(1か月後)でJA厚生連の保健師と会員個々に生活改善点を話し合い、個々に合った「改善方法」と目標(5~10年後の私)を設定して、まずは6か月間実践します。
     この6か月間、厚生連からは長続きできるようなヒントや情報を「いきいき通信」として会員に提供します。また、グループ活動(お楽しみ会)で健康講座やストレッチに取り組み、仲間との結束をはかり、継続を誓っています。
    6か月後には、中間相談会を行います。会員は、地域の顔見知りの方々なので、「寝る前に体操しているよ」とか「野菜の種類を増やそうと努力しているよ」とか交流しながら個々の実践を反省し、改善方法を修正してまた6か月間の取り組みを確認します。1年後には、一日人間ドックでメディカルチェックをして5~10年後の自分を想像します。
     この活動は、JA女性部(お母さん)として継続することとしていますが、お父さんたちグループやJAの他の地域にも広がりを見せています。「できることから」「みんなで元気に」を合言葉に農業と地域を元気にするために、JA女性部の代表的な活動として、さらに取り組みを拡大したいものと考えております。
  • 上田 厚, 角田 文男
    セッションID: S1-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    ○みんなで、同じ目線で歩くことの意味を共有しよう!

     農村医学は、農業従事者や農家世帯構成員、農村を、過酷で危険な労働環境や衛生学的に劣悪な生活環境にさらされ、それを改善する能力や社会資源を持たない存在と位置づけ、それを改善、救済することを目的として生まれた研究と実践活動の体系である。それを受けて始められた農協 (JA)/厚生連を核とした健康活動は農作業負担の低減や貧血の解消など目に見える結果を出してきた。また保健・医療・福祉・環境の面からそのような社会的対応の中心として関わってきた農村医学の役割と研究・実践活動の技術と実績も賞賛に値する。
     しかしながら、農村社会が直面している問題は、健康および環境側面からも社会経済的側面からもきわめて厳しく、大きい。 このような状況に、これからの農村医学はどのように対応してゆけば良いのだろうか。私たちは、その答えは、農業従事者や農村を見る眼を転換することではないかと考えている。すなわち、この50年間の農協や農村医学のなしえた成果は、農協や農政や農村医学といった専門家の献身的な努力があったことだけでなく、それを可能にした潜在的な力を持った農村社会や農業従事者がそこにあった、あるいは、いたことだという視点である。
     これは、現在のわが国における地域保健活動のよりどころとしているヘルスプロモーションにつながる視点である。ヘルスプロモーションは、地域ぐるみで、一人ひとりの健康の局面に対する自己決定力/対処能力を向上させることによって健康な人をつくるプロセスであると定義されている(WHOオタワ会議、1986年)。ヘルスプロモーションを基盤とした地域活動においては、保健医療の専門家や行政の専門家の牽引車としての働きも重要であるが、それらについて素人である住民の生活者としての目線と行動が、最も有効な資源であると考えられている。その意味で、これからの農村医学の専門家には、自分の持っている知識と技術を住民の背中を無理に押し上げるために使うのではなく、とくに、そこにいる人々と手をたずさえて同じ目線、同じ歩幅で歩いてゆくことが求められる。私たちは、そのような専門家のあり方が、住民ひとり一人が本来持っている潜在的な力を、まちづくりの資源として引き出す最も有効な手段であり、専門家としての知識と技術をさらに深める要点であると考えている。
     このような視点から、私たちは、本シンポジウム(I、_II_)の趣旨は、これまでの農村医学/農村保健・医療・福祉の領域でやられてきた実践・研究活動の過去と現在について上記の視点から総括し、これからの農村医学/農村保健・医療・福祉の領域における実践と研究活動の理念と展開について、共通の認識を確認し、これからの新しい展開につながる学会の在り方に対する検討の場を提供することであろうと考えている。
     シンポジウムIでは、農業従事者の安全と健康を直接規定する危険要素である「農業災害」と「農薬中毒」について、今回のシンポジストのこれまでの継続的な調査、研究の知見に基づいて、その実態と要因が解析、整理され、問題点の所在が明らかにされている。私たちは、それに基づき、上記の視点を基盤にして、効果的で現実的な対策と今後の研究者/農村医学会としての活動について、新たな方向性を提起したいと考えている。
  • 大浦 栄次
    セッションID: S1-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     富山県農村医学研究会では、農作業と健康のテーマで、農作業従事による健康障害に関する調査研究を行ってきた。
     以下に、農作業事故と農薬の生体影響に関する主な研究課題の概要を紹介する。

    1. 農作業事故に関する研究
    (1)事故調査方法
     昭和45年以来、県内の全ての外科、整形外科、皮膚科、眼科、ICUを標榜する診療科、および接骨院約900カ所に、毎年、前期・後期の2度にわたり、往復葉書で農作業事故の臨床例の「有無」を問い、「有り」と回答のあった医療機関に、詳細調査用紙を送付し、臨床例の収集を行ってきた。さらに、併せて、全共連富山県本部の協力にて、生命共済・傷害共済証書の中から事故事案を抽出し事故情報の収集に努めている。
     また、実際の事故事例について、受傷者及び事故死された方の遺族に事故時の様子などを事故現場でのケーススタディについても過去40件あまり実施してきた。

    (2)富山県における農機事故の実態と対策について
     最も、農業機械事故が最も多かったのは昭和50年の年間399件であった。その後、国の農業機械の安全鑑定制度が出来、むき出しのベルトやチェーンなどにカバーが掛けられるようになり機械事故は減少し、昨年度は65件であった。
     機種では、草刈機、トラクター、耕耘機、コンバインが多く、これらの事故対策を集中的に行う事により、多くの事故の予防に繋がると考えられる。
     ところで、年々受傷者の年齢は上昇しており、昭和45年の男の受傷者の平均年齢は、45.8歳、女が40.4歳であつたが、昨年度は、男63.7歳、女64.7歳と約20~25歳上昇しており、今後の農機事故対策は高齢者を中心に行う事が求められる。
     流布されているマニュアルは、極めて詳細であるが、高齢者が読みこなすには余りにも煩雑であり、今後、ポイントを絞ったマニュアルが必要と考えられる。

    (3)農業機械以外の農作業事故
     農機事故と同様の方法で、昭和56年より農機以外の農作業事故調査を実施してきた。
     平成21年度は、171件であり、農業機械事故より多い。そのうち用手具が関わった事故は55件であり、はしご20件、脚立11件であり、用手具関係の56%を占めている。
     このはしごや脚立の事故は、転落など中心であり、重大事故や死亡事故が多い。今後、これら用手具の科学的な問題点の把握や改善が必要と考えられる。

    2.農薬の生体影響に関する調査研究
     富山県農村医学研究会では、農薬中毒臨床例調査を農業災害と同様に県内の関係する医療機関700カ所を対象に昭和56年から平成14年まで実施してきた。
     同様の方法で、1990年代に中国河南省の2つの県で実施し、中国の農薬中毒が日本の約20倍、中国全土では約100万人の中毒が発生している可能性を指摘してきた。
     また、農薬の生体内残留が単に農薬散布のみならず、食品由来の可能性があることを農薬の尿中代謝物の測定で明らかにし、ポストハーベスト農薬の問題についても、今後注視する必要性があることを示しつつある。
        
  • 浅沼 信治
    セッションID: S1-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    1.農薬の使用と中毒発症の現状
    1)農薬使用状況の推移
     わが国で農薬が本格的に使用されるようになったのは、第二次世界大戦後である。戦後、農薬は農作物の生産性向上、労力の軽減など農業には重要な資材としての役割を果たしてきた。生産量の推移をみると、戦後30年の間に急増し、1974年に過去最高の75万トンに達し、その後は暫時減少し、90年代後半からは60年代の水準(30万トン台)になっている。殺虫剤の使用が最も多いが、兼業化など人手不足による省力化のため、除草剤の使用も多くなっている。
    2)急性中毒および障害
     かつてはホリドールやテップなどの毒性の強い農薬による中毒が多かったが、1971年に強毒性農薬が禁止になり、中毒事故は減少した。しかし、その後パラコート系除草剤による死亡事故(主として自殺)が相次いだ。1976年にパラコート系除草剤のうちグラモキソンが製造中止になり、代わってプリグリックスLが使われるようになり、死亡事故はやや減少した。
     農村病院を受診した者の統計からみると、急性中毒と皮膚障害が多い。「健康カレンダーによる調査」によると、4人に1人が中毒症状の経験がある。

    2.農薬使用の問題点
    1)2006年5月の「ポジティブリスト制度」の施行による問題点
     「ポジティブリスト制」は、基準が設定されていない農薬が一定量以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度である。以前の「ネガティブリスト制」は、農薬の残留基準値がない場合、規制の対象にならなかったが、新制度により一律基準0.01ppmが適用、規制される。消費者にとっては残留農薬の減少など好ましいことではあるが、生産者にとってはドリフトなど問題が多い。これは農薬の登録制度にも問題がある。
    2)ネオニコチノイド系農薬の使用
     最近、有機リン農薬に代わって新農薬「ネオニコチノイド」(新しいニコチン様物質)が大量に、しかも広範囲に使用されている。今、ミツバチが忽然と姿を消す怪奇現象が多発し、その原因の究明が急がれているが、ネオニコチノイド系の農薬もその一つに挙げられている。
    3)農薬の表示についての問題点
     日本では、「農薬」と表現されているように危険なイメージは少ない。  農薬には、その中毒を防止する観点から「毒物・危険」の表示が必要である。アメリカはドラム缶に「ドクロマークとPOIZON」表示がされている。フィリピンでは、その毒性により分類し、農薬のビンの下に幅広のテープを貼ったように色を付けている。色分けされ、一見してこれがどのランクの毒性を持つ農薬なのかが分かる。しかも毒性の強い農薬は、一般の店では販売されていない。日本は赤地に白文字で「毒物」、白地に赤文字で「劇物」と小さく書かれているだけである。
    4)農薬による皮膚炎
     農薬による中毒・皮膚炎などにはその種類により特徴があり、注意する点も多い。とくに石灰硫黄合剤による皮膚傷害は深刻である。中毒を防ぐためにマスクの使用や、通気性がよく防水性のある防除衣の使用などについても考えてみたい。       
  • 垰田 和史
    セッションID: S1-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    1 農作業の危険性は、年々、高まっている?
     農作業による死亡災害者数は過去40年間を振り返って減少しておらず、毎年400人近くが命を失っている。この間に、交通事故死は1/3以下となり、最も危険な職種と言われていた建設業では死亡者数を1/4以下に減少させた。農業従事者数が大きく減少していく中で、農作業により命を失う農民の人数が「減らない」ことは、農業の危険性が、年々、高まっていることを示している。農作業で使用される農器具類の改良や圃場環境の整備が進んでいるとすれば、どうして農作業の危険性が、年々、高まり続けるのか検討する必要がある。

    2 農作業災害の発生実態は不明
     死亡災害は災害ピラミッドの頂点に観察される事象であり、底辺は多くの「死に至らなかった」災害が構成する。その構造は医療事故と同様で、重大事故の底辺に多くの軽い事故があり、その底辺により多くの「ヒヤリ・ハット」ケースが位置する。仕事に起因して生じる災害を防ぐためには、発生実態の把握と発生に結びついた要因を明らかにする必要があるが、我が国の農作業災害には、その実態を示す資料がない。災害の発生実態を把握するために農業傷害共済保険加入者を対象とした調査が行われたり、富山県のように地域の医療機関と協力して実態把握を蓄積している地域がある。しかし、それらは我が国全体から見れば、例外的な情報に止まっている。農業を除く他産業では、死亡事故はもとより休業災害や不休業災害についても国によって毎年調査され、災害防止の諸政策に反映されている。

    3 農作業災害につながる農民と作業、農器具、農作業環境の関係性
     農作業災害の発生要因を分析する際には、次の3つの関係性、すなわち1)農民と農作業、2)農民と農器具、3)農民と農作業環境に注目する必要がある。例えば「55歳の女性が、草刈り中に脚を滑らせて転倒しそうになり刈払い機の歯で脚を切った」事例では、「夕食の準備があるため休憩を取らないで連続作業をして疲れ、身体のバランスを崩した。しかも、保護具を装着していなかった。」ことは、1)農民と農作業に関わる要因としてあげることができる。刈払い機に安全装置が無く、女性にとっては重く、「歯」の種類が「丸鋸歯」だったことは、2)農民と農器具に関わる問題となる。草を刈っていた場所が急傾斜の法面で、炎天下の作業であったために「熱中症」気味だったとすれば3)農民と農作業環境との関係が問題になる。予防のための教訓が、それぞれの視点から導き出せる。

    4 個々の農民に応じたリスクアセスメントが必要
     農作業による心身の負担の大きさにしても、操作者の安全性や快適性を保証する農業器具の性能にしても、農作業環境にしても、農民の特性に応じて異なる。高齢者や女性が農業の主な担い手となりつつある現状では、農民の心身の特性に応じた農作業や器具の設計、また、リスクアセスメントが農作業災害の予防対策として不可欠となる。高齢になれば様々な疾患を持ちながら働き続けることになる。他産業の事業主は、労働者に対する責任として労働者に高血圧があれば夜勤作業を免除したり、心疾患があれば労働負担を軽減することがある。農民は、自分の健康状態と安全に遂行できる農作業負担との関係について「自己責任」で判断することになり、「無理」な働き方が災害につながる可能性がある。農民の主治医が、他産業での「産業医」のように、農民の快適で安全なはたき方について指導助言できればと願っている。
  • 末永 隆次郎
    セッションID: S1-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】日本全国における農作業事故の実態は不明のままである。唯一、死亡事故については毎年農水省からの発表で、その実態が明らかにされているが、その発生件数に殆ど変化がないのが現状である。そして、農業従事者が減少していっている中で死亡事故発生率は、年々上昇していることが伺われる。負傷事故を含めた農作業事故調査で、全国的な規模で実施されたものとしては、平成13年~14年の全共連の委託研究「農機具による事故災害の実態とその予防対策についての研究」(主任研究者;清水茂文 日本農村医学研究所所長)があるだけである。これまでにも、この研究の共同研究者の一人として研究内容の一部について当学会をはじめ、産業衛生学会のジンポジウムなどで発表してきている。今回、この調査資料の事故事例を見直し、農業従事者の農業機械使用時のヒヤリハット経験や安全意識との関連などについて検討した。
    【調査方法】全共連の委託研究のデータ集(全国9道県における農作業事故災害例10,636件)の中から、死亡や事故件数の多い農業機械(主に乗用トラクター、草刈機、コンハ゛イン)について事故発生時のエンシ゛ンの回転の有無別に発症年齢、作業内容、事故状況などについて解析した(但し、誌面の都合上、乗用トラクターのみについて記載する)。また農業機械使用時における安全使用への配慮やヒヤリハット経験などに関しては、福岡県南部のN農協管内(正組合員約12,000名)の組合員を対象に実施した調査結果を用いた。
    【結果】1.乗用トラクターによる事故災害:事故例528件中、220件(41.7%)がエンシ゛ンの回転(+)であり、308件(58.3%)がエンシ゛ンの回転(-)で起きたものであった。年代別に見ると、若い世代ではエンシ゛ンの回転(-)で起きたものが多いのに対して、高齢世代ではエンシ゛ンの回転(+)で起きたものが多くなっていた。エンシ゛ン回転(+)では、事故当時の作業内容はトラクターの移動時が73件で最も多く、次いで耕耘作業中が61件、点検整備中が8件、植付け・播種中が8件などであった。事故状況はトラクターと一緒に転落が47件で最も多く、次いでトラクターに轢かれる(下敷き)が29件、他車に追突される(交通事故)が26件、トラクターに挟まれが21件、トラクターに巻き込まれが19件などであった。これを年代別で見ると、作業内容では40歳代まではトラクターの移動時、50歳代では耕耘作業中、60歳代では移動時、70歳代以上では移動時と耕耘作業中が最も多くなっていた。事故状況としては、40歳未満ではトラクターと転落および轢かれる、40歳代ではトラクターと転落および挟まれ、50歳代ではトラクターに轢かれると熱源(ラシ゛エター)に接触、60歳代以上ではトラクターと一緒に転落が多かった。次にエンシ゛ン(-)では、トラクターへの付属機の取付け中が74件で最も多く、次いで耕耘作業中が32件、付属機の取外し中が23件、点検整備中が13件などであった。事故状況としては、挟まれが75件で最も多く、次いで機械にぶつかるが56件、機械から転落が53件、物・機械が落ちてくるが28件などであった。これを年代別で見ると、作業内容では60歳代までは付属機の取付け中、70歳代以上では耕耘作業中が最も多くなっていた。事故状況としては、50歳代までは挟まれ、60歳代では機械にぶつかる、70歳代以上では挟まれが多かった。
     2.ヒヤリハット経験:乗用トラクター使用者2,088名中、ヒヤリハット経験者は875名(41.9%)であった。具体的な内容としては、田畑の昇降路を上がる時が31.6%と最も多く、次いで田畑の昇降路を下りる時が22.0%、傾斜地での作業中が5.0%、路上走行中、カーフ゛でが4.0%、坂道を走行中が2.9%、直線の路上を走行中が1.8%、作業付属機の取り替え時が1.5%、平らな田畑内での作業中が1.1%、機械の点検整備中が1.0%、機械の清掃中が0.7%などであった。
    【まとめ】乗用トラクターについては、高齢になるほどエンシ゛ンの回転時、具体的には機械の移動時や耕耘作業中に事故災害を起こしており、トラクターの運転操作において問題があることが伺われた。また従来より事故を起こす背景には、ヒヤリハット経験があり、農作業事故防止のためにはこの経験を追求することが大事であると言われている。しかし、乗用トラクターについては、ヒヤリハット経験の延長上に農作業事故災害があるとは必ずしも言えないことが明らかとなった。エンシ゛ン回転(+)では、事故状況としてトラクターと一緒に転落やトラクターの下敷きが多く、予防対策としてシートベルトの装着の有効性が示唆される。
  • 永美 大志 
    セッションID: S1-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 農薬中毒は、農村医学の主たる課題になって久しい。日本農村医学会は、若月俊一佐久総合病院長のもと、1966年に農薬中毒研究班を発足させ、精力的に取り組んできた。この活動は、2003年まで継続されたが、2004年、日本農村医学会・特別研究プロジェクトの農薬中毒部会に改組され、椎貝達夫取手協同病院長を初代統括責任者として再スタートし、2008年に夏川周介佐久総合病院長に引き継がれ、今日に至っている1)。ここでは、部会活動を紹介し、今後のあり方を探ってみたい。
    <農薬中毒臨床例調査>
    日本農村医学会には120余の関連施設があり、これらの診療規模は日本全体の2~2.5%程度と推計される。このネットワークを用いた農薬中毒臨床例の収集は、数々の成果をあげてきた。1985年10月25日パラコート剤に関する学会決議2)が、この製剤の日本における低濃度化をもたらしたこと、1996年の殺菌剤フルアジナム散布中の曝露による皮膚障害の集団発生の迅速な捕捉3)などが挙げられる。また、西垣ら4)は、1998-2003年の6年間の傾向を解析した。2005年再開された本調査は年間70-80例の症例を収集している。
    <職業曝露の人体影響>
    しかし、散布作業中または環境曝露による中毒は、1)中毒を発症しても病院まで来ない、2)診察医が農薬中毒と診断できないなど、上記調査に報告されていない事例の方が多いと推察され、職業曝露による障害については、労働衛生の向上を目的とした現地調査が必要であると考え、2009年より、花卉栽培作業者の農薬曝露実態調査を開始した。
    また、職業曝露の場合、皮膚障害も重要である。例えば永美ら5)は、石灰硫黄合剤による化学熱傷が深達性のアルカリ腐食であり、その治療にはデブリドマンと植皮術を必要とする場合があることを指摘し、障害防止のためのパンフレットを策定した。
    <環境曝露による健康被害>
    本部会は、環境曝露による健康被害についても情報を収集・検討した。例えば、中学校の生徒が集団有機リン中毒を呈した事例6)、松枯れ対策の農薬空中散布と同時期に発生した健康被害7)が挙げられる。前者は、学校関係者がアリの巣穴に、有機リン殺虫剤の原液を撒き、付近の教室の生徒が集団中毒を起こしたものであり、後者は、松枯れ対策のための殺虫剤の空中散布により、小児が多動傾向、描画能力の低下を来たしたものである。
    このような事例を調査・報告し、蓄積することは、農薬中毒防止に貢献してゆくものと期待される。
    <アジア地域への貢献>
    第17回国際農村医学会議は、国際労働衛生委員会との共催で2009年10月に開かれ、発展途上国における労働、とくに女性・子供の労働の実態が報告され、その改善を求めたカルタヘナ宣言が採択された。農薬も主たる危険因子として明記された。
    日本農村医学会・農薬中毒部会は、上記のような活動を継続しながら、アジア地域への貢献を視野に入れるべきであろう。
    <文献>
    1)日本農村医医学会[農薬中毒部会]夏川周介 (2010)、2) 日本農村医学会. 日農医誌1985;34(4):868、3) 松下敏夫. ibid 2000;49(2):111-27、4) 西垣良夫 他. ibid 2005;54(2):107-117、5) 永美大志 他. ibid 2010;59(1):43-48、6) id. ibid 2009;58(3):208、7) id. ibid 2009;58(3):209
  • 中川 秀昭, 坂田 清美
    セッションID: S2-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     我が国は生活習慣病予防を「健康日本21」、「健康増進法」、「健康フロンティア戦略」に基づいて実施し、平成26年までの目標として心疾患死亡率を25%改善、脳血管死亡率を25%改善、糖尿病発生率を20%改善、がんの5年生存率を20%改善を目指している。このために生活習慣病の要因となる、栄養・食生活、身体活動・運動、休養・こころの健康づくり、たばこ、アルコール等の生活習慣の改善(行動変容)や生活習慣病危険因子の減少に取り組んでいる。とりわけ循環器系生活習慣病予防としてメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の概念の導入、健診・保健指導の重点化・効率、化科学的に根拠に基づく方策の実施を取り入れ、特定健診・特定保健指導が展開されている。この制度が開始された平成20年では特定健診実施率38%、特定保健指導実施率8%、メタボリックシンドローム該当者は15%、予備軍を含めると27%と報告されている。
     しかし、循環器疾患の危険因子に関して言えば、これまで久山町研究、端野・壮瞥町研究を始め各地域で展開され、多くの研究成果が報告されており、これらの結果を基にして施策が進められているが、これらの研究はいずれも規模が大きくなく、日本人を代表する大集団での検証はできていない。
     危険因子の出現は都市部と農村部での違いが報告されているが、系統的に検証されていない。また生活習慣は地域や世代によって大きな違いがあり、これらを考慮したきめ細かな対応が必要となっているが、十分な検討がなされていない。現在進行している国の施策を効果的に実施するためにはこれらのことが明らかにされる必要があろう。
    本学会では、平成18年度から日本農村医学会特別研究プロジェクト「農村地域における生活習慣と生活習慣病に関する疫学研究」(農村の生活習慣病部会)が実施され、農村地域を対象とした大規模コホート研究が始まり、生活習慣病と危険因子の関連の詳細な検討が計画されている。また、平成20年度から日本農村医学会特別研究プロジェクト研究「農村地域における食と生活と健康に関する研究」(食と健康部会)が開始され、「食」に焦点を絞った検討が行われている。本シンポジウムではこの2つのプロジェクト研究のこれまでの成果を検討する中で農村各地域・各世代におけるテーラーメイドの対策を考える礎とした。
    まず、足助病院早川富博先生、取手共同病院岩崎二郎先生、千葉大学羽田明先生の3人の先生方から「農村地域における食と生活と健康に関する研究」でまず実態把握のために実施されたアンケート調査の結果について報告をいただく。次いで土浦共同病院今井泰平先生から「農村地域における生活習慣と生活習慣病に関する疫学研究」の進捗状況とベースラインデータの解析結果を報告していただく。最後に島根大学塩飽邦憲先生から同研究グループコホート研究の一環として実施されている特色あるコホート研究として多次元多目的生活習慣病コホートを紹介していただく。
     2つのプロジェクト研究からの各先生方の報告はいずれも研究途中段階でのものではあるが、大変興味深いものと思われ、今後の生活習慣病予防の活動に資するものとなるであろう。また、シンポジウムでの討論は各プロジェクト研究の一層の発展につながることを希望する。
                               
  • 早川 富博
    セッションID: S2-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <1>はじめに
    「食」と「運動」は人が健康に生きるための基本であり,より良い「食」は,提供される食物の安全性と栄養学や医学に根ざした食育によって成り立つ.生活習慣病の予防・治療対策は,これからの医療が取り組むべき課題のひとつであり,その根幹は「食と生活」の改善である.食を提供する農業と健康を担当する医療との連携・協働は農村医学の根源的な課題であるとの認識のもとに,平成20年10月から「農村の食と生活と健康に関する研究」のプロジェクト(PT)が立ち上げられた.今回は,PTのワーキンググループが中心となって行った「食と生活と健康に関する」アンケートの結果を報告する.アンケート内容は多岐であるので,まずアンケート結果の「全体像」,「食糧自作の意欲」,「地域による差異」について述べる.
    <2>アンケート結果
    1.対象者の背景
                        19のアンケート協力施設から得られた総数は5397名(男2588, 女2809)で女性がやや多かった.平均年齢は男53.4,女53.8,80歳以上の方が3.2%であった.
     職業は60歳以上の人では農業が多かった.学歴は高卒が多く,70歳以上では男女とも中卒が多かった.
     疾病保有は全体で約5割,加齢によってその頻度は増加し,70歳以上では8割を占めた.高血圧症,高脂血症,糖尿病などの生活習慣病と整形外科疾患が多かった.癌の既往・有病率は,全体で胃癌(1.8%),大腸癌(1.2%),男で前立腺癌(1.4%),女で子宮癌(2.7%)が多かった.
     住居は85%の人が一戸建てであり,「田舎度」を徒歩圏内にコンビニ,スーパーの有無でみると,どちらも無しが50%であり,田畑があるが55%であった.中学生までの住所は郡部が7割を占めて,都市とその近郊は3割以下であった.農業経験者は60%以上で,社会参加は半数以上であった.
     「健康感」は男女とも80%が肯定,逆に運動不足を80%が感じていた.「不安感」,「やりがいがない」,は50%であったが,加齢により低下した.しかし80歳代の男性では40%と増加した.
    2.食に関する問題
     『食の不安』に関する設問の回答は3つまで選択とし,「安全性」,「食生活」,「供給」,「費用」などの回答が多かった.食材購入の留意点は「鮮度」,「値段」,「賞味期限」の順であり,購入場所は「スーパー」,「八百屋」,「生協」の順であった.食べる食品に関しては,高齢になるに従って肉類の減少が顕著であったが,乳製品の摂取頻度が増えていた. 『食の豊かさ』,『満足度』は90%の人が感じていたが,今後の「食の供給に対する強い不安」は40%にみられた.
                    『地産地消』については,「知っている」が70%,「協力実践している」が60%で,その頻度は年齢とともに増え,男性より女性が常に高かった.
    『将来,食糧を自作したいか』に関しては,是非してみたいが全体で40%あり,60歳以上では5割を越えていた.食糧自作の意志は,年齢,性別,職業,学歴によって明らかな影響が認められた.これら項目を除いてロジスティック回帰分析を行うと,『将来,食糧を自作したい』の要因として,「中学生までに農業体験をしている人」,「社会参加をしている人」,「食生活は自然の営みによって成り立つと考えている人」,「精神的な豊かさを感じている人」,「地産地消を実践している人」,などが挙げられた.逆に,年齢が70歳以上では食糧を自作したくない人が多かった.
     地域による差異に関しては,『食の供給に対する不安』,『地産地消』,『将来,食糧を自作したい』を中心に施設別の結果を示し,また年齢・性別がマッチする地域を選んで検討した結果を報告する予定である.
  • 羽田 明, 藤田 美鈴
    セッションID: S2-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <1>.方法
    調査項目のうち,1)健康感,精神的な健康状態に関与する要因と2)地産地消の実践に関与する要因をロジスティック回帰分析により解析した.総数 5397人(男2588,女2809)のうち欠損値のあるデータを除き,1)で4838人(男2331,女2507),2)では4793人(男2342,女2451)を解析対象とした.1)では「現在,健康だと思うか」と「最近12ヶ月間の精神的な健康状態6項目」に関する「思う」あるいは「あり」,「思わない」あるいは「なし」の要因を,性別,年齢,学歴,既往疾患の有無,喫煙習慣,飲酒習慣を補正し,家族構成および地域活動の参加の有無の関連を検討した.2)では地産地消の実践の有無に関与する要因を,対象の属性,農作業体験,住居形態と住居の場所(都市,都市近郊,郡部),食に対する考え方,食事の状況,食生活に関する不安,食材購入時に重視している要素,主な食材の購入場所の質問項目を説明する変数候補として,変数増加法により解析した.
    <2>.結果
    1)健康感,精神的健康状態に関与する要因
    ・ひとり暮らしの男性は夫婦のみに比べて自覚的健康感が低く,物事のやり がいがない,何となく不安,何事もうまく行かない,などの割合が高かっ た.一方,ひとり暮らしの女性ではこの様な関連は見られなかった.
    ・女性では夫婦のみに比べ,親子などの同居ではいらいらするなど緊張が高 かった.
    ・地域活動への参加は,男女とも自覚的健康感が高く,精神的健康状態も良 好であった.
    ・家族構成と地域活動の参加の有無には相関が見出せなかった.
    2)地産地消の実践に関与する要因
    上昇させる要因として以下が明らかとなった.
    ・自身や家族が食べ物を生産
    ・料理をする
    ・家族と食事をする
    ・自然の営みの実感
    ・食を通じたコミュニケーションの重要性の認識
    ・将来の食糧供給の不安
    ・食材購入時の産地,生産元の重視
    ・食材購入先として農協,生協,産地直送を利用
    一方,低下させる要因として以下があった.
    ・家計や食費に不安がある
    ・食材購入に値段を重視
    ・食に関する情報に不安がある
    ・食生活の問題への不安がある
    ・食材購入時に賞味期限を重視
    ・食材購入先としてコンビニ利用
    <3>.考察
    男性のひとり暮らしでみられた,自覚的健康感が低く,精神的健康度も低い事は,既に過去の研究からも生命予後の重要な指標となる事が明らかになっている.地域活動への参加者の健康度が高いこと,地域活動の効果に家族構成の影響は見られなかった事から,ひとり暮らしの男性に対する社会的ネットワークの構築が有用であると思われる.
    中学生までの農作業の経験,食生活が自然の営みであることの実感,食を通じたコミュニケーションの重要性認識,将来の食糧供給の不安,食材の産地・生産基の重視,食材購入先の選択などはいずれも子ども時代からの適切な食育で達成できるものであり,その重要性が再確認された.
  • 岩崎 二郎
    セッションID: S2-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    1.はじめに
      日本農村医学会の特別研究プロジェクト「農村地域における食と生活と健康に関する研究」として全国19施設で食に関するアンケートを行った。調査対象者は、男2597名、女2830名、計5427名である。
    2.疾病内容について
    調査の中で、疾病の既往と現在の病気について質問したが、これに基づいて、対象者を「病気なし」と「病気あり」の2群に分け、男女別に検討した。病気有無について記載のない例は対象から除外した。
    病気有無の年代別相違をみると、年代と共に漸増性に病気有が増加しており、50歳代で、病気無と病気有が同程度だった。
    病気有の例について、男女別に疾病内容(5位まで)をみると、男で、高血圧20.0%、高脂血症6.0%、整形外科疾患5.3%、糖尿病4.9%、眼科疾4.5%、女で、高血圧17.8%、整形外科疾患9.4%、高脂血症8.4%、糖尿病3.9%、耳鼻科疾患3.3%の順であった。
    癌の頻度をみると、男5.4%、女7.0%で、年代による上昇傾向が顕著であった。癌の部位別事例数(5位まで)をみると、男で、胃56例、前立腺36例、大腸34例、肺13例、肝臓8例、女で、子宮75例、胃43例、乳房38例、大腸26例、卵巣16例の順であった。
    3.病気有無別の検討
    上記調査対象者中、病気の有無について
    記載のない例を除いて、性・病気有無別に、各質問項目の調査結果について検討した。
    男で、病気無1378名、有1146名、女で、病気無1407名、有1327名である。病気有無別の年令分布をみると、明らかに、高齢者程、病気有が多いので、以下の結果を解釈するに際しては、年代による相違を反映していることを十分考慮する必要がある。
    自覚的健康度についてみると、「健康だと思う」の率は、病気無で、男30.2%女37.1%、病気有で、男16.0%女16.6%で、予想通り病気無で高かった。運動不足感は病気無で、男24.0%女30.8%、病気有、男19.1%女23.6 %より高く、運動習慣でも、病気有が、男50.1%女48.2%と、病気無、男42.1%女36.2%より明らかに高く、疾病を持っている人程、運動を心がけている傾向がみられた。
    食事回数では、食事2回が、病気無で、男12.3%女7.1%と、病気有、男6.6%女3.4%より高かった。外食しない率は、病気有で、男23.8%女30.9%で、病気無、男14.0%女17.2%より明らかに高値だった。レトルト食品を利用しない率は、病気有で、男22.8%女26.9%、病気無で、男15.8%女15.3%で、病気有で高値だった。病気有の人の方が、食生活への留意がされている様子だった。食の不安に関し最も感じることでは、「食品の安全性」が、病気有で、男44.5%女58.2%で、病気無、男36.9%、女51.5%よりかなり高かった。現在の食生活への満足度については、「満足している」が、病気有、男42.1%女33.9%、病気無、男37.9%女30.4%で、病気有で高かった。地産地消の実践についても、「協力実践している」が、病気有、男63.9%女72.5%、病気無、男50.6%女60.5%で、病気有で有意に高かった。農業実践についても、「是非食べ物を作ってみたい」が、病気有で、男44.1%女41.1%、病気無で、男36.4%女31.3%で、病気有で有意に高かった。
    4.まとめ
    今回の食に関するアンケートで、性・病気有無別に各調査項目について検討すると、病気有の人が、病気無の人より明らかに食生活改善の意識が高く、現在の食生活に満足している様子がみられた。地産地消についても、病気有で、実践度が高かった。病気有の人は、高齢者が多いとはいえ、この事実は注目すべきものがあると思われた。
  • 今井 泰平
    セッションID: S2-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    日本農村医学会では農村地域および地方都市における生活習慣病の現状を把握し、生活習慣病の予知・予防と関連疾患の発症予防を推進する目的で、その危険因子や代謝症候群因子について地域あるいは検診・ドックでの生活・健康データを収集し、解析・評価するコホート研究を全国多施設において展開している。本研究は2006年より特別研究プロジェクト「農村地域における生活習慣と生活習慣病について」の疫学調査研究として企画し、日本農村医学会所属の医療機関に参加協力を呼びかけて、健康診断受診者らを中心としたコホート研究(当初10年間)として計画した。当初参加協力機関は全国より35施設が予定されていたが、プロジェクト開始が「特定検診・特定保健指導」の準備時期と重なり、人材不足などにより参加施設が減少したため、初期登録期間を3年間に延長して追跡調査を7年間に短縮して2007年より開始した。大都市を中心とした研究とは別の視点から、日本の大多数をしめる中小都市を中心として広がる農村地域における成人を対象に、初期登録データとして詳細な生活習慣の調査、身体計測ならびに血液生化学的データの収集を行った。また本研究のユニークな点は、初期データ収集時に血液検体を採取・長期間凍結保存して、将来後ろ向きに測定して新たな解析データを得ることを可能とした。現在初期ベースラインとして全国9施設が参加して約1万名が登録され、疾病発症に関する追跡調査が進行中である。追跡調査においては糖尿病・高血圧症・脂質異常症などの生活習慣病の発症ならびに動脈硬化疾患(心筋梗塞・脳卒中)・癌の発症および死亡について詳細に調査し、これら疾患の発症進展にかかわる危険因子についての解明とその対策を検討する。
     本研究における初期登録データを解析した結果を中心に、現時点での追跡調査の経過について報告する。                     
  • 塩飽 邦憲
    セッションID: S2-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    農村危機と大学の役割
     中山間農村地域は、国土保全、食糧の供給などに大きな役割を果たしているが、急激な過疎化や少子・高齢化により、耕作放棄と農地の荒廃、限界集落、地域医療等の生活基盤の崩壊が進んでいる。島根県では、全人口の47%が過疎化の進行する中山間地域に属しており、中山間地域の持続可能で自立的な地域を構築することが最重要課題となっている。  島根大学は、大学憲章で「地域に根ざし,地域社会から世界に発信する個性輝く大学」を唱い、第2期中期目標で「地域の知の拠点」を目標とし、自然災害などの地域課題解決、地域産業や地域医療を牽引する先駆的技術に関する研究を推進している。

    多次元・多目的生活習慣病コホート研究
     島根大学重点研究(他に汽水域保全、ナノテク)として中山間地域研究に学際的に取り組み、農村医学会特別研究プロジェクト「農村の生活習慣病部会」と協力し、平成17年度から生活習慣病コホート・ベースライン調査を行ってきた。中山間地域の雲南市、出雲市佐田町、邑南町、隠岐の島町の住民約5,000名から研究承諾を得、個人情報保護を担保した世帯、職業、ソーシャルキャピタルなどの社会、生活習慣、健康福祉、遺伝子多型などの多次元情報のデータベースを構築した。

    ベースラインデータの活用
    農村地域でも、年代と地域によって大きな健康状態の差が認められる。中年の健康状態は均一化しつつあるが、老年は地方都市に比べて農山村の農業や家事による運動量が多く、食事では炭水化物が多く、たんぱく質と脂肪の摂取が少ない。このため、糖尿病有病率は地方都市に比べて農山村は低率であり、その差は女性で特に顕著であった(図1)。こうした地域健康・生活診断結果を住民や自治体に提示し、対策を議論している。  また、コホート参加者から希望を募り、平成21年度「経済産業省地域総合健康サービス産業発展基盤実証事業」、平成22年度「総務省情報通信技術地域人材育成・活用事業」でICT (Information Communication Technology)や地理空間情報を活用した健康福祉サービス創造に取り組んでいる(図2)。

    持続可能な地域づくり支援
     患者情報の地理空間での提示は、疾病モニタリングや医療評価の基礎的な研究手法であり、住民・産官学連携による疫学において問題提示、解決法探査、合意形成に強力なツールである。
     地理空間情報の活用については、衛星測位、地理情報システム、ICTネットワーク、地理空間情報活用推進基本法などによる社会的な基盤は整ってきた。
     しかし、日本では個人認証のための社会保障カード導入が諸外国に比べて遅れているため健康医療福祉分野での個人情報の一元化や健康・医療情報の活用が遅れている。また、個人情報保護を担保した健康医療分野での地理空間情報の活用は少ない。
     大学の保有する研究承諾の得られた個人生活健康情報を地理情報システム (GIS)と結合し、地理空間情報プラットフォームを構築することを平成22年度の課題とした。平成23年度からは、活用ルールや健康生活基盤診断の方法論を確立し、健康マネジメント(環境と調和した地域医療、生活・産業基盤の再生)における問題提示、解決法探査、合意形成に活用する取り組みを行う予定である。

    結語
     コホート研究は、生活習慣や遺伝子多型の疾病危険因子を確認するためには必須である。しかし、大きな人口規模、追跡の時間と費用を要するため、地方大学や学会として特色を持って継続することが重要である。このため、農村の人間関係を測定するソーシャル・キャピタル、アウトカムとしてのメンタルヘルスを加えた研究デザインをとった。
     また、追跡率を上げるためには長年にわたる参加者の協力も重要であるため、多様な地域健康サービスや地域づくりへの協力を行う学際的研究チームや産官学の連携体制を構築している。研究と実践のよいバランスを図り、住民や自治体から評価される研究体制を作ることが肝要と考えている。
  • 田沢 潤一, 草野 史彦, 酒井 義法, 藤原 秀臣
    セッションID: W1-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    目的) わが国ではC型肝炎ウイルス(HCV)感染が原因の肝がん死亡が増えている。国は、HCVキャリア発見と抗ウイルス療法の推進に取り組んでいるが、肝臓専門医(専門医)が少ないことが問題となっている。われわれは、C型慢性肝炎(CHC)に対するインターフェロン治療を病診連携で行ってきたので結果を報告する。 対象と方法) 1)2005年5月より2009年11月まで専門医と非専門医(診療所医師19名)の連携でCHC 52例にインターフェロン治療を行った。病型は難治例(HCV1型かつ高ウイルス量)が28例、それ以外(易治例)が24例であった。2)これらの中で、現在の標準的治療であるペグインターフェロンα2b(PEG)・リバビリン併用療法を行い、治療効果を判定できた19例について検討した。難治例には48週、易治例には24週の治療を行った。専門医は治療の導入を行った後、4週に1回の診察と血算に基づいた薬剤投与量の調節(添付文書に従う)や中止の判断等を行った。非専門医は原則として採血することなく、週1回のPEGの注射を行った。 結果) 1)治療効果が明らかになった40例のSVR(治療終了後6ヶ月以内に血中HCV-RNAが検出されない)率(ITT)は難治例で26%(5/19)、易治例で67%(14/21)であった。 2)難治例は12例で、倦怠感による中止1例、SVR5例、再燃4例、無効2例でありSVR率はITT 42%、PP 46%であった。易治例は7例で、脱落1例、SVR5例、再燃1例でありSVR率はITT 71%、PP 83%であった。これらのSVR率は、専門医により行われた国内治験の成績と同等であった。 結論) CHCに対する抗ウイルス療法を専門医と非専門医の病診連携で行うことが可能で、専門医により行われた国内治験の成績と同等の効果が得られることが示唆された。
  • 井出 政芳, 早川 富博, 渡口 賢隆, 鈴木 宣則, 小林 真哉, 都築 瑞夫, 江崎 洋江
    セッションID: W1-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】三河中山間地域を診療圏とする足助病院(以下当院)には交通の不便を押して通院せざるを得ない高齢者が多い。この中山間地域という地理学的・社会学的状況に根ざした通院困難性を、地域医療機関と連携して解消して行く為には、地理情報学的視点からこれを定式化しその内実を明らかにして行く必要がある。そこで、通院患者の医療上の緒属性と地理情報学的背景を<近隣>の数学的表現であるボロノイ図を用いて分析した。【対象・方法】平成22年2月から3月にかけて筆頭演者の外来を受診した患者190名(平均年齢74.5±10.0才)の住所地・年齢・罹患疾患数・通院介助の有無・通院に要する時間と、病院・診療所との空間配置についてボロノイ図による地理情報学的分析を行った。【結果】通院患者の住所地は通院時間が車で20分以内の当院近隣とその周辺地域、および通院に車で30分以上を要する遠方の二つの地域に大別され、より高齢者ほど(1)当院から遠方に在住し、(2)罹患疾患数は多く、(3)介助に頼らず自力で通院せざるを得ない者が多かった。また、当院の診療圏には7診療所が在り、このうち2診療所のみが当院から遠方在住の患者をその診療圏内に含み、ボロノイ図上の領域のこの患者密度は当院近隣の診療所のそれに比し低かった。【考案】ボロノイ図を用いた地理情報学的分析により、医療を必要とする高齢者ほど当院から遠方に在住し、困難を押して自力で通院している有り様が明瞭に示された。こうした受診・通院に係わる困難を解消する為には、共同通院、出張診療(往診・訪問リハビリ)などの方策を講じる必要があるが、その為の基礎資料を得る為に<近隣>の数学的表現であるボロノイ図による分析は往診の経路探索など診療効率の改善に有用であると考えられた。また、遠方の地にある2診療所での当院通院の患者密度が低く、予め病状急変に備えた強い連携を要することも同図より確認できた。
  • 渡辺 徳, 金城 恒道, 神吉 雄一, 林 悠紀子, 田中 千恵子, 神戸 かね子
    セッションID: W1-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     北信総合病院は長野県最北部の地域医療を担う基幹病院である。20年以上前より救急から専門医療まで総合的に地域医療に貢献してきた。2007年から循環器センターを掲げ、心血管疾患を専門的に診ると同時に地域により密着した医療を提供する努力を始めた。この背景には病院専門医と地域診療所の医師の両者が不足する中で、高齢化した患者が増加する医療情勢がある。また、家庭・社会からは安全・安心な医療を提供するだけでなく、保健・福祉から介護まで包括的かつ持続的な連携が求められている。従来の病院医療はいわゆる急性期医療に重点を置いてきたが、もう一つ大切な点は慢性期まで長期間の安定した治療をする体制である。これには基幹病院と地域のメディカル・スタッフ全ての連携協力が必要とされる。当院は最も問題の多い心不全を対象に2009年6月から“北信州心不全地域連携パス”を周辺の医師会・連携病院とともに開始した。これは心不全の急性期治療を当院で行った後、近隣の診療所に移行し、安心して治療が続けられる相方向連携パスである。専門治療で安定した心臓病の診療情報を提供してかかりつけ医師にこまめに診てもらうだけでなく、退院時に患者・家族に病院のコメディカル・スタッフと地域の保健・介護スタッフを交えたミーティングを行い、薬局や地域の保健施設からのサポートも継続して受けられるように情報交換をする。半年に1回は当院を受診し、かかりつけ医や地元薬局、保健師からの情報を得て専門的に必要な診療を再検・追加する。また、急性悪化の場合にはいつでも当院を受診して入院など急性期医療を受けられ、十分な情報が連携している場所から届けられるので安定・持続的な医療を受けられる。地域連携パスの導入経緯から約1年間で得られた数十例からの経験を報告する。
  • 山本 泰三, 須藤 聡, 井上 桂輔, 新谷 周三, 塚田 昌明
    セッションID: W1-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに
    当院では近郊の17病院と広域千葉茨城脳卒中連携協議会を創設し、脳卒中連携パスを導入した。当院から回復期リハビリテーション病院を経由した患者の基礎データや日常生活活動の変化を縦断的に検討する。
    対象および方法
    平成22年2月までに脳卒中連携パスが当院へ返却された88名を対象とした。Barthel Index(以下、BI)、在院日数、回復期リハ病院の転帰を調査した。BIは当院入院時(以下、入院時)、当院転院時(以下、転院時)、回復期リハ病院退院時(以下、回復期退院時)を比較し、在院日数は、当院入院期間と回復期リハ病院入院期間と全入院期間を比較した。回復期退院時の転帰が自宅となる傾向を検討するために、死亡と当院への転院を除き、自宅退院となった自宅群と療養型病院や介護老人保健施設へ転院した非自宅群との比較を行った。統計処理は各時期の自宅群と非自宅群の比較をWelchのt検定(p<0.05)にて行った。
    結果
    回復期退院時の転帰は、自宅退院が55名、療養型病院が8名、介護老人保健施設が9名、当院への転院が14名、死亡が2名であった。回復期退院時の自宅群の年齢は69.9±9.4歳で、非自宅群は17名で75.8±11.1歳であった。自宅群と非自宅群のBIは、入院時が20.9±24.5と8.5±18.8、転院時が60.8±29.5と23.5±24.4、回復期退院時が89.0±17.9と37.9±30.5であった。各時期における自宅群と非自宅のBIの差が有意であった。自宅群と非自宅群の当院在院日数は41.1±12.4日と46.9±13.4日で、回復期リハ病院在院日数は97.4±46.9日と157.5±55.3日であった。回復期リハ病院入院期間と全入院期間で自宅群と非自宅群の入院期間の差が有意であった。
    考察
    回復期退院時の転帰の自宅群は非自宅群より入院時、転院時、回復期退院時ともにBIが高得点であった。BIの細項目も検討する。急性期病院の在院日数はBIの程度に関係なく、回復期リハ病院在院日数は非自宅群が長くBIが低かった。脳卒中連携パスの導入により縦断的な調査が可能となったので、さらに症例数を増加させて、より早期からの方向性を示唆できるように検討したい。
  • 片山 千栄, 山下 仁, 唐崎 卓也, 石田 憲治
    セッションID: W1-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【背景と目的】病気や障がいの有無に拘らず、住み慣れた地域での自立生活の継続には就労が不可欠であり、就労機会の少ない農村部では農業への期待がある。しかし農業分野での障がい者の就労受入れの広がりは緩やかで、背景には関係者間の相互理解の不足などが考えられる。一方、厚生労働省の‘施設外就労’支援は農家との連携も想定しているが、農業分野での報告事例はほとんどみられない。そこで、農業分野での障がい者就労受入れの推進を視野に、医療福祉関係者と農業関係者の連携への示唆を得ることを目的に、農業法人による‘施設外就労’の受入れ事例について検討した。
    【方法】2009年9月より島根県I市の障害福祉サービス事業所(就労継続支援B型)A園利用者の農作業訓練を、農業法人B農場(施設野菜や果樹を生産)で開始した。A園・B農場担当者への聞き取りや観察等を行い、接点と相互理解に注目して考察した。
    【結果と考察】A園とB農場の接触の契機は、B農場の経営する直売所へのA園の授産活動による製品の出品にあった。またB農場には看護職経験者が在籍し、就労受入れに対する農場職員への意識啓発などソフト・ハード両面での働きやすい環境づくりに、キャリアを活かして寄与していた。両者は月例会をもち課題の共有や問題点の解消に務めると共に、A園側は農作業の、B農場側は障がい者受入れの経験をそれぞれ蓄積した。本研究を通して、地域での関係者の接点となる場の設定の必要性や、医療福祉関係者による農業者側への関わりの意義などが示唆された。
    ※本報告は、当研究所が代表実施機関となり共同実施機関とともに実施した、農林水産省経営局の補助事業「平成21年度障害者アグリ雇用推進事業」の成果の一部である。
  • 今井 靖, 征矢野 文恵, 輿水 さと子, 朔 哲洋, 佐藤 ひろみ, 東川 房子, 富澤 恵利子, 篠原 晴美, 出浦 美穂子
    セッションID: W1-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    「やちほの家」は、人口は4777人、高齢化率26、4%(平成12年国政調査)の旧八千穂村に平成16年12月に開所した。現在定員12名、一般型の通所サービス事業所である。開設の経過は当時大型の通所サービスでは馴染めず、家族の介護負担が深刻化していた若年性認知症の6例に対し、新たに小規模施設の構築が行政施策として展開され佐久病院に運営委託された。今回5年間の「やちほの家」の活動を通し、行政施策面と運営面から「やちほの家」の開設の意義と効果について検証した。旧八千穂村の福祉施策は介護予防に加え在宅支援に重点を置いてきた。その結果、要介護認定率は県平均より低く、在宅給付率は平成16年以降50%を超えている。また宅老所の開設によって介護保険給付率が上昇したが、平成15年の第二次介護保険計画と実績の比較は適正であった。一方「やちほの家」では、6例の若年性認知症者と畑づくりや食事づくりといった生活労働を基盤にしたケアをスタートし、徹底した生活ケアにより認知症者の在宅期間の延長と入院予防に効果があり、柔軟的なサービスの提供は家族の安心感に繋がった。また、地域の中の一軒家という住民の身近な場所でケアを実践したことで、地元の関心と協力が得られ延べ4万人が訪れた。その結果、利用希望者は開所時から順調に伸び、1日平均利用者は現在10人で、開設年度を除き毎年黒字経営となっている。また、母体の24時間の医療体制もあり、医療依存度の高い要介護者が増加している。一方要介護度の重度化に伴い、短期入所の利用率も増加傾向である。「やちほの家」として認知症者の安定した生活と、柔軟的な家族支援に対応するためには、「通って泊まれる」本来の宅老所の活動への期待は大きいと考えられる。また、地域住民が住み慣れた場所で生活を守るためには、地域住民のニーズを把握し「介護は身近な出来事」として住民意識の啓発が必要であり、住民、行政、病院が共同体としてシステムの構築をしていく視点が重要であり今後の課題となる。
  • 増田 香奈, 児玉 美鈴, 杉山 薫, 加藤 亜希, 松永 勇人, 玉内 登志雄
    セッションID: W2-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 本研究は、特定保健指導実施者のうち翌年の特定健診結果にてメタボリックシンドローム判定・特定保健指導判定が改善した者(以下判定改善者とする)を対象に、改善した生活習慣を継続できた要因を明らかにすることである。 【方法】 2008年度に当院で特定保健指導を実施し、翌年の特定健診の結果において、判定改善および特定健診の質問票にて行動変容ステージ維持期と回答した者2名を対象に半構成的面接を実施した。改善した生活習慣を継続できた要因について抽出し、カテゴリー化した。 【結果及び考察】 分析した結果、両者には改善した生活習慣を継続できた要因において、多くの共通点が見られた。その要因の程度は両者異なるが、以下のようなことが考えられた。  両者ともに個人的な要因が多くを占めていたが、〔身体・健康に対する認識〕や〔病気への危険性〕を自覚しており、何らかのきっかけにより行動を起こした。きっかけは、それぞれ異なるが〔健診や保健指導を受けること〕も1つには含まれると考えられる。生活習慣を改善したことにより〔生活習慣改善による身体的変化〕を感じ、同時に行動を継続する中で〔生活習慣の改善による楽しみ〕や〔自己コントロール意識〕を身に付けることで、〔取り組みへの前向きな姿勢〕を獲得し継続へと結びついていったのではないかと考えられる。このようなプラスの循環が生まれることで継続が可能となったと考える。 同時に、対象者は家族の支援や社会的な要因である保健師、公的機関での運動教室など〔周囲のサポート〕を得ることによって、改善した生活習慣を継続することを強化できたのだと考えられる。
  • 西垣 良夫, 前島 文夫, 吉川 千代子, 中澤 あけみ, 高橋 知子
    セッションID: W2-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    目的:JA長野厚生連の取り組みから特定健診・特定保健指導の今後の課題を明確にし、住民の健康づくりのための提言をおこなう。
    方法:JA長野厚生連で実施した特定健診、特定保健指導に関する調査、まとめ、研究結果等から検討をおこない、今後の課題をまとめた。
    結果:受診率では、受託国保の中で計画実施率よりかなり低いところもある。A町の未受診者調査によると、受療中が約4割をしめ、自覚症状なしが18%等であった。検査項目では、眼底、心電図検査が詳細健診となり、今まで全員に実施できていた状況から、町村では、詳細検査の対象になる方は、2.5%となり、緑内障有病率5.0%(日本緑内障学会多治見スタディ)等からみても問題がある。自己負担であっても個人が検査項目を選択できる体制づくりが重要である。特定保健指導については、2つの問題がある。1つは、対象者がMetSにかぎられたことで、循環器疾患の予防効果からみると循環器疾患発症の寄与危険割合等の報告からも問題があり、MetS以外のリスク保有者への対応が必要である。2つ目は、効果的な生活習慣改善のための若い人達へのアプローチである。佐久総合病院の39歳以下の保健指導の介入研究(西垣ら、津下班)の結果では、早期保健指導の効果がみとめられた。いずれにせよ健康的な生活習慣づくりには、「地域ぐるみの健康づくり」という想いが住民、各組織、専門職、行政になければ「特定健診、特定保健指導」の目指す医療費の適正化にはならない。住民主体の健康な地域づくりの組織的な活動への支援が急務である。
  • 小森 有紀子, 田辺 敬子, 田中井 清美, 久保田 妙子, 岩崎 二郎
    セッションID: W2-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】平成20年4月より特定健診・特定保健指導が開始された。初年度における特定保健指導の実施状況を振り返り、支援の効果と今後の課題を検討した。
    【研究方法】
    研究期間:平成20年8月~平成22年5月
    対象:平成20年8月~平成21年10月までに特定保健指導積極的支援を個別担当制で実施した37名中、6ヶ月後の最終評価を終了した27名。
    方法:(1)プログラム実施状況より、プログラム継続率、体重・生活習慣改善状況を評価
    。 (2)終了時アンケートにて、プログラムの満足度・感想・要望を調査。 (3)プログラム終了約1年後に体重・生活習慣について電話による聞き取り調査を実施。
    倫理的配慮:個人が特定されないよう配慮。
    【結果】(1)プログラム継続率73.0%、3_kg_以上の減量達成率63.0%、食生活改善率92.6%、運動習慣改善率77.8%であった。(2)終了時アンケートの回収率70.4%。「習慣にしていける・まあまあ続けていける」と79.0%が回答した。(3)プログラム終了約1年後の調査は92.6%に実施。56.0%が終了時点の体重を維持していたが、16%はプログラム終了時点から3_kg_以上増加していた。食生活は56.0%、運動習慣では64.0%が「意識した生活を継続している」と回答しているが、食生活で28.0%、運動習慣で24.0%が「意識しているが継続は難しい」と答えた。
    【考察】個別担当制で行った6カ月間のプログラムは、参加者自身が生活習慣を振り返り、健康への意識を高めることができ、有効であったと考える。1年後の追跡調査で、減量維持の難しさが挙げられた。今後の課題として、減量達成率とプログラム終了後の減量維持率を高めるため、プログラム内容の工夫と、プログラム終了後の追跡が重要と考える。
    【まとめ】個別担当制で行った特定保健指導は有効であった。
  • 江口 夏美, 東谷 麻美, 河合 知恵美, 中村 知恵子, 佐野 貴子, 守屋 律子, 竹内 正人, 依田 芳起
    セッションID: W2-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】平成20年度の特定保健指導の対象者の、H20からH21の健診データの推移を報告し、特定保健指導の効果を検討する。
    【対象】平成20年度、当センターの人間ドックおよび巡回健診で特定保健指導の実施を受託した12団体の受診者の内、特定保健指導の対象となり、翌年度にも特定健診を受診した1306名。
    【方法】平成20年度の特定保健指導対象者を、特定保健指導の実施状況により、終了者(1007名)・中断者(178名)・未受診者(118名)に分類し、H20年度と、H21年度の健診データをそれぞれ比較した。
    【結果】終了者では、体重・腹囲とも改善傾向にあった。中断者は、終了者に次いで改善傾向がみられた。未受診者では、腹囲データには改善が見られず、体重がわずかに減少するにとどまった。なお、中断者のうち、初回面談での中断者と、継続支援中の中断者とでは改善状況に差は見られなかった。終了者(督促終了者を除く)では、半年後評価からH21年度健診の間(継続支援が行われない間)に、体重・腹囲とも継続して改善がみられた。
    H21年度にも、特定保健指導の対象者に該当した人は、終了者・中断者・未受診者であまり差は見られなかったが、H21年度の健診受診状況は、終了者は73.2%、中断者は60.5%、未受診者では56.7%だった。
    【考察】H20→H21では、終了者>中断者>未受診者の順で、改善傾向に差がみられた。半年後評価を終了させることが、メタボリックシンドロームを減らすことに繋がるのではないか。中断者においては、継続支援期間の長短による改善状況の差は見られなかった。初回面談の影響が大きく、その後の継続支援の影響力は少ないことが推察された。リバウンドが予想された継続支援終了後から次年度健診間の体重・腹囲は、むしろ改善傾向であった。一方、未受診者と終了者では次年度の健診受診率に差がみられ、特定保健指導の実施状況が翌年の健診受診に影響していた。
  • 平谷 恵, 中村 繁美, 中西 早百合, 木平 悦子
    セッションID: W2-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    <緒言> 平成20年度に実施した人間ドック受診者中、239名に特定保健指導を実施し、1年後の人間ドックの結果よりその効果について検討した。<BR>  <対象及び結果>保健指導実施者239名中、中断者28名・拒否者3名を除く208名(男性160名・女性48名 平均年齢51.2歳)の6ケ月後の結果では、平均値で体重の減少・腹囲の減少・血圧の低下がみられた。体重は1.2kg、腹囲は2.4_cm_(P<0.01)減少した。<BR>  1年後の人間ドックの結果を保健指導介入者208名中、未受診者18名を除く190名・積極的支援者112名(男性99名・女性13名) 動機付け支援者78名(男性50名・女性28名)について検討したところ、全体の平均値ではHbA1cのみ0.07%高値となった以外すべて減少していた。有意差をもって減少(改善)していた項目は、体重-1.52_kg_(P<0.01)、腹囲-2.0_cm_(P<0.01)、HDL-Ch1.4mg/dl、空腹時血糖-1.6mg/dl(P<0.01)、肝機能検査では、AST-1.57IU/l(P<0.01)、ALT-3.59IU/l(P<0.001)であった。<BR>  また、支援レベル及び男女別により有意差に違いが認められた。(女性:BMI 0.74(P<0.01)・男性HbA1c0.87%(P<0.01))<BR>  <考察>介入開始時の「無関心期」が女性では4.6%男性では27.3%であったが、次年度での指導階層化レベルの改善が81名 42.6%(男性 40.3%・女性48.8%)にみられ、介入の効果は得られたと考える。<BR>今後は、無関心レベルの方への介入の方法の検討を含め、保健指導のスキルアップをはかり、継続的改善に効果の上がる介入をめざしたい。                               
  • 南部 美由紀, 今野谷 美名子, 長澤 邦雄, 佐々木 司郎, 高橋 俊明, 林 雅人
    セッションID: W2-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    〈はじめに〉昨年度に特定健康診査の質問紙法における身体活動量と検査値、および生活習慣との関連を報告したが、同様に2年目の結果を集計した。 〈目的〉身体活動量の変化が検査値に与える影響を明らかにする。 〈対象および方法〉対象は平成20年度、21年度当院の特定健康診査2年連続受診者で現在服薬がない男女40~69歳、1,588名。2年間で身体活動量が高くなった群(週23Ex以上)と低くなった群(週23Ex未満)、また、身体活動量が変わらない群の、検査値(BMI、腹囲、血圧、中性脂肪、HDL-C、LDL-C、空腹時血糖、HbA1c)、および喫煙、飲酒、食行動、睡眠との関連性について検討した。 〈結果〉平成21年度の問診で身体活動が高くなった群は18.4%、反対に低くなった群は14.6%であった。男女別で身体活動を目的変数とし検査値を説明変数として多変量解析をおこなったが有意の関連はみられなかった。また身体活動とその他の生活習慣との関連をみたところ、有意の関連がみられたのは男女ともに運動習慣と歩行速度であった。さらに男性で体重減少が弱い関連を認めた。 〈まとめ〉特定保健指導における運動指導マニュアルでは週23Ex以上で生活習慣病発症予防に効果的とされているが、当初の期待に反し、検査値に有意の変化はみられなかった。運動習慣と身体活動の問診内容がおおまかであり、回答に多少のバラツキが予想されることも検査値の差がみられなかった要因と思われた。
  • 山本 昌幸, 堀 明洋
    セッションID: W3-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    ISO9001の目的は、業務を継続的に改善し、医療の質と患者満足度を向上させることにある。当院は平成16年にISO9001を認証取得し現在も更新継続している。今回、当院が行っている業務改善とISO9001の意義について報告する。 業務改善:_丸1_業務の文書化と文書管理の手順を確立することによって、業務の標準化と業務手順の管理が可能となり、業務改善の作業が容易になった。各部署長には定期的な業務の見直しが義務付けられており、絶えず不備な点が改善されている。_丸2_各部署は業務改善をテーマにした医療サービス目標を設定し取り組んでいる。6ヶ月間のスケジュールを設定して活動し、結果を病院長に文書で報告する。結果が未達成の部署は、さらに対策を検討し、次期に取り組みを継続する必要がある。_丸3_新規の医療サービスを企画することによって、随時新しいサービスが導入されている。企画の起案から運用開始までの手順が明確にされ、起案企画が容易になっている。_丸4_是正処置、予防処置を実施している。これらの活動は、インシデントレポートや外部からの情報、患者からの意見、データ分析の結果や病院長の指示などを契機として随時実施され、結果は文書で報告されている。_丸5_年2回実施される内部監査は部署単位で実施され、職員同士が互いの業務内容をチェックし改善につなげている。_丸6_年2回各部署長は、半年間の活動内容を取りまとめて病院長に報告している。病院長はこの報告を基に業務全般の点検を行い、次期に向けた改善点を指示している。 考察:ISO9001を認証取得するためには、以上の業務改善の手順を文書化し明確にする必要がある。そして更新の審査では、これらの実施状況が重点的に審査され、更新を継続するためには、毎年実施される審査に合格する必要がある。当院はISO9001を更新継続する目標をモチベーションとして、業務改善を継続的に推進している。
  • 福田 康彦
    セッションID: W3-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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     院長にとって決算書の理解は困難な仕事の一つであるが、院長としては医師、看護師の労働モチベーションと保つための読み方を身につけることが大切と考え、以下の検討を行った。   (方法)  全国厚生連病院経営分析報告書から、黒字病院と赤字病院の損益計算書において、医師の至適経営指標を検討した。  (結果)  医業収益から人件費と診療材料費を差し引いた収益を「医業粗利益」とし、それを医業収益で除した値を「医業粗利益率」と名付けた。黒字病院においては、「医業粗利益率」が病床数にかかわらず多くは20%を超えており、平均は21%であった(表)。赤字病院のそれは20%以下の病院が多く、平均17.1%であった。経営からみた現場医師の働きを判断するためには、「医業粗利益率」が有用であることが判明した。  (考察)  病院経営において経営組織、事務長、院長、現場医師の役割、責務を決算書の中である程度明確にできれば、経営の問題点把握に役立つばかりでなく、職員のモチベーション維持にも意義がある。例えば病院が歴史的に抱える負債を、現場医師にその返済を求めて過大な期待をかけることは、医師の勤労モチベーションを著しく阻害する結果となる。今回指摘した「医業粗利益率」が20%を超えていれば医師の経営における貢献は十分と判断しされるが、給与と診療材料費は病院経営においては決して費用ではなく、原価であるとの認識の重要性を示唆していると考える。
  • 村上 穣, 萩原 正大, 伊藤 健太, 降籏 俊一, 山崎 諭, 池添 正哉
    セッションID: W3-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
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    【背景】
     地域の基幹病院である当院では多くの科で中心静脈カテーテルが挿入されている。リアルタイム超音波ガイド下での挿入により挿入時の安全性は向上したが、重篤な合併症であるカテーテル関連血流感染症(以下CRBSI)の治療は全て担当医に委ねられている。CRBSIの死亡率は約30%と高く、転移性感染症の合併にも注意を払わなければならない。
    【目的】
     中心静脈カテーテル留置に合併した転移性感染症の現状と課題について検討した。
    【対象と方法】
     2007年1月から2009年12月までの3年間にCRBSIに転移性感染症を合併し、当科介入により確定診断がついた全4例について後ろ向きに調査した。
    【結果】
     紹介理由は腎障害が3例、β-D-グルカン高値が1例で、いずれも当科での精査により転移性感染症の確定診断がついた。その内訳として化膿性脊椎炎3例(1例は脊髄損傷合併)、感染性心内膜炎1例、眼内炎1例(化膿性脊椎炎との合併例)を認めた。血液培養が陽性になりCRBSIの確定診断がついた日から転移性感染症の診断までに要した日数は平均95日であった。転移性感染症を合併した要因は、診断および治療開始の遅れが2例、不適正な抗菌薬の選択が2例であった。死亡率は75%であった。
    【考察】
     当院ではCRBSIに対する治療が不十分で、様々な転移性感染症を合併していることが明らかになった。しかし、実際には診断に至らなかった転移性感染症が数多くあるものと考えられる。その要因として、当院では感染症科がないためCRBSIに対する正しい知識が共有されておらず、担当医のみによる不適正な診療が行われていることが考えられた。
    【結語】
     CRBSIに対する適正な治療が行われる体制を病院全体で構築し、中心静脈カテーテル留置中の安全管理を向上させることが急務である。
  • 星野 幸枝
    セッションID: W3-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【 主旨 】看護師確保が困難な状況下において、患者の重症化、看護者の急な欠員などの対応策として部署内・部署間の応援体制を実施している。応援体制の充実は、安全で質の高い看護の提供と看護業務量の均等化を図る目的から重要であり、また、応援によって他部署を経験することにより、その部署の理解と自己の学びや成長を促す機会となる。
     今回、愛知県厚生連看護部内で組織する職場環境マネジメントチーム(定着・離職防止グループ)において、部署間応援の実態を把握し、円滑な部署間応援のためにどのような体制整備が必要か示唆を得るために実態調査を行った。その結果、応援における工夫点では、_1_業務調整、_2_人員調整、_3_支援体制、_4_教育、_5_準備、_6_その他、問題点では、_1_業務調整、_2_人員調整、_3_支援体制、_4_教育、_5_準備、_6_環境・人間関係、_7_その他にカテゴリー化され、問題点にのみ_6_環境・人間関係が抽出され、工夫点との差が見られた。また、マニュアルの有・無による比較では、マニュアル無の方がマニュアル有の2倍以上の問題点が存在し、逆に工夫点では、マニュアル有の方が_5_準備に対する意見が多く応援者が一人でも実施できるよう事前準備、支援体制、教育が整備されていた。
     結果から、円滑な部署間応援のためには抽出されたカテゴリーについて、マニュアルなどの体制整備の必要性が示唆された。
  • 柴田 律子, 谷山 元, 水野 正広, 福留 友子, 小林 朋子
    セッションID: W3-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】当院はクックチル調理へと移行して8年が経過している。安全管理のため細菌検査室と連携した従業員の手指、厨房機器、料理等、定期的な菌培養検査の実施、医療安全課とも連携しグリッターパグを用いた手洗い講習など、従業員への実践的な安全教育にも力を入れてきた。本発表では、安全管理の基本である「手洗い」の重要性を認識させる重点的取り組みの一つとして、従業員による手洗い効果の検証実験より得た結果を報告する。
    【目的】給食従事者が、食中毒を防止するための手洗いを正しく理解する。
    【方法】当日勤務の下処理(肉・魚及び野菜担当各1名)、特殊調理1名、和物1名、盛付1名の計5名の担当者に、手洗い前での手指の一般細菌数(A)に対し _丸1_20秒間の石鹸手洗い(以下、手洗い)のみ _丸2_手洗い後、手指が濡れた状態でアルコール消毒をする _丸2_手洗い後手指が十分に乾燥した状態でアルコール消毒をする の3条件にて手指に残存した細菌数を比較した。
    【結果】_丸1_では効果は見られなかった。_丸2_は減少が見られたが、逆に増加する場合もあった。_丸3_では残存する菌数は低値で安定し、効果が高かった
    【考察】手洗いで除去できる細菌数は限られ、洗い方によっては危険度が増す可能性も考えられたことから、「手洗い」はアルコール消毒効果を重視することが重要である。今回、従業員自らが検証した事による意識効果は計り知れない。今後も衛生意識を共有できるように進めていく。
  • 酒井 和也
    セッションID: W3-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     近年看護基礎教育の卒業時点で身についてる実践能力と、臨床で求められる実践能力の間に乖離が大きいと云われており、双方においてもその点が大きな課題となっている。又、専任の臨地実習指導者(以下指導者)の重要性が問われている。  当校は実習病院(以下病院)との連携で昭和42年より病棟課長による学生指導を開始した。更なる実習指導の強化として、昭和51年に病院と検討を重ね、学生指導は後輩育成に重要である事を認識し、12名の指導者を確立し教員と協同の基に学生指導に取り組みを開始した。  その後更なる指導者の体制の確立を図るため、指導者としての役割,業務規定,研修・出張を含めた教育支援の明確化,個人ごとの机の配置等の環境面での処遇の強化を行なってきた。  現在は実習区分ごとに1名とし、成人4名,老年2名,小児1名,母性1名を配置している。実習期間中は夜勤要因とせず学生指導のみとし、任期は3~5年を目途としている。毎週水曜日(学生の帰校日)と第1,3土曜日の午前を学校への出校日として設けている。  これまでの33年間の経過をまとめるにあたり、専任実習指導体制であることの有効性として、学生指導に関する内容や教員との協同に関する内容、指導者自身に関する内容等の実習指導におけるよい効果としてのまとめができた。また、今後における学校側と指導者側の課題の明確化を図ることができた。
  • 池田  聡, 高部 和彦, 稲垣 雅春, 鈴木 恵子
    セッションID: W4-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】分子標的肺がん治療薬であるイレッサやタルセバに関しては、標的であるEGFRの変異を調べることがこの薬の適応を調べるために必須な検査となっている。肺がん患者では初診時すでに手術不能の進行肺がんであるケースも多く、この場合早期治療開始のために抗がん剤の選択は速やかに行われなければならない。ところが一般病院の検査室では検査は外注であり時間がかかっている。さらに、この検査では事前に検査同意書を取り交わす必要があるが、ケースによってはこの検査に同意が得られないこともある。これらのことは治療に対して好ましいことではない。これらの現状の中で最近、EGFR変異特異的な抗体が開発された。一般病院の病理検査室でも免疫染色はいまや日常検査として行われつつあり、これらの抗体を用いて免疫染色法で変異を検出できれば、検査を外注することもなく、同意書の必要もなく、検査のコストも患者の負担も抑えることが出来る。われわれは今回これらの免疫染色による検出が遺伝子検査と比較してどの程度実用性があるのか検討を行った。【対象と方法】対象は当院でEGFR遺伝子検査が行われた43例の組織切片で、代表的変異であるex19(E746-A750del以下15bp Del)とex21(L858R)に対応する2つの抗体を使用して免疫染色法で変異を検出した。【結果】遺伝子検査では43例中ex19変異は14例あり、そのうち15bp Delは8例あった。ex21は全例L858Rで15例あった。免疫染色ではこれらの変異を15bp Delでは感度88%特異度93%で検出し、ex21は感度100%特異度93%で検出した。2つの抗体を用いて総合判定すると遺伝子検査との一致率は98%であった。15bp Del以外のex19変異例6例中4例でも陽性反応が得られた。これらより免疫染色を用いたEGFR遺伝子変異検出は有用性が高いことがわかった。
  • 依田 芳起, 山田 和子, 宮沢 泰彦, 高山 一郎, 渡辺 一晃, 今村 直樹, 北橋 敦子, 小林 美有貴, 大野 泰司, 高相 和彦
    セッションID: W4-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】施設間の判定基準を統一することは、超音波検診の精度を高めるうえで重要な要素と思われる。山梨県内の要精検率を検討し、当センターでの取り組みについて提示する。 【方法】山梨県内で人間ドック、巡回検診を行っている施設の超音波検査の要精検率、受診率などを比較検討の上、現状を把握し、精度向上を図る。 【結果】平成17年度山梨県内7施設における超音波検診の要精検率は 巡回検診5.9-1.1%平均1.8%、人間ドック7.1-0.9% 平均2.0%であった。要精検率には機関により差があり判定基準の不確定な現状も一因と思われる。 要精密検査の基準として_丸1_腫瘤性病変 肝(血管腫典型例除く)膵 腎(血管筋脂肪腫典型例除く)脾 _丸2_嚢胞では 肝・腎(隔壁内部エコー異常あり)膵(壁内部エコーに異常ないもので比較読影があれば除外)_丸3_その他 肝では肝硬変、肝内胆管拡張、血管異常など、膵では腫大、膵石など、腎では萎縮、輪郭不整、水腎症、腎盂拡張、脾臓では脾腫 脾門部血管異常、他大動脈瘤、リンパ節腫大、腹水などの項目について判定基準、注意点を基準案として検討していく必要がある。  乳腺のカテゴリーで使用されている基準に合わせ、要精検者715名をカテゴリー分類し、61名の癌が発見された。カテゴリー4,5であっても癌症例でなかった症例は13例認めた。 【結論】超音波所見の判定基準を明確にすることにより、施設間の要精検率の差を減少させることができると思われる。カテゴリー分類を検討することで、さらに精度の高い超音波検査が実施できると思われる。
  • 磯貝 征寛, 松原 利幸, 本多 正樹, 堀尾 亮介, 高橋 佳嗣, 井澤 晋也, 藤田 恭明, 宮良 幸子
    セッションID: W4-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    H.C.C(肝細胞癌)描出を目的とした肝臓ダイナミックCTにおける至適投与ヨード量については様々な議論がなされており、概ね500~600mgI/kgが推奨される結論に至っている。当院では450mgI/kgで検査を行なっており、投与ヨード量を増加させることでより良い診断画像が得られるか検討した。
    当院では64列MSCTを使用しており、肝臓ダイナミックCTでは後期動脈相、肝実質相、平衡相の3相撮影を基本としている。
    肝臓ダイナミックCTを施工した36例を対象とし、そのうち12例ずつを450mgI/kg,540mgI/kg,630mgI/kgに設定した。各症例の時相ごとに大動脈,肝内門脈,肝実質の造影効果によるCT値の変化量を計測した。また、診断能の良悪について視覚評価を行い、4名の内科医師による4段階のスコア評価を行った。
    大動脈と肝内門脈の濃染強度は投与ヨード量に比例して高くなり、630mgI/kgでは450mgI/kgの約120%の造影効果となった。肝実質の濃染強度は肝実質相でのみ投与ヨード量に比例し、630mgI/kgでは450mgI/kgの約130%の造影効果となり、動脈相および平衡相では投与ヨード量による差が少なかった。
    一方、視覚評価は動脈相および肝実質相では540mgI/kgで最も評価が高く、450mgI/kgで最も評価が低くなった。平衡相では540mgI/kgで最も評価が高く、630mgI/kgで最も評価が低くなった。平衡相で630mgI/kgの視覚評価が低くなった理由は、高容量になるほどH.C.Cのような動脈優位で造影される病変のWASH OUTが不十分になる可能性が考えられた。
    造影効果は投与ヨード量が多いほど高くなるが、視覚評価を考慮すると450mgI/kgから540mgI/kgに変更することでより良い診断画像が得られると考えられた。
  • 長川 達哉, 松永 隆裕, 宮川 宏之, 平山 敦, 岡村 圭也
    セッションID: W4-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】施設検診時の腹部超音波スクリーニングにて発見された膵癌の特徴ならびに予後を検討し,超音波スクリーニングの有用性をretrospectiveに検討すると共に,当科にて膵癌に対して施行されている化学療法の現況につき報告する.【対象】2006年3月までに当院施設検診を受診したのべ300000名(検診群)と同時期に当科にて精査,加療を行った膵癌280例(病院受診群)を対象とした.【検討項目】1) 検診群にて発見された膵癌18例の背景,2)超音波所見,3)臨床像,4)検診群の予後(病院受診群との比較),5)病院受診群における治療法とその予後【結果】1)平均年齢61.0歳,男女比13:5,自覚症状は腹痛3例,体重減少1例,症状なし13例,2)発見時の異常所見は腫瘤像13例,膵管拡張6例,膵嚢胞2例(重複あり),占拠部位は頭部7例,体尾部11例,腫瘍径はTS2 9例,TS3 4例,不明5例,3)腫瘍進行度(cStage)は0 1,_II_ 1,_III_ 2,_IV_a 10,_IV_b 1,不明3例,組織型は腺癌11例,上皮内癌1例,内分泌細胞癌2例,不明4例,治療方針は切除11例(61.1%),化学療法3例,放射線化学療法1例,4)予後追跡可能であった16例の生存期間は4~119ヶ月(中央値33ヶ月),1年生存率73.7%,5年生存率40.0%であり,腺癌12症例に限定しても生存期間中央値31ヶ月,1年生存率69.6%,5年生存率31.3%と病院受診群と比較して有意に予後は良好であった(kaplan-Meier法,p=0.018),5)初回治療法は腫瘍切除術16%,Bypass手術4%,全身化学療法44%,放射線化学療法6%,動注放射線化学療法8%,BSC22%であり,1年生存率は腫瘍切除術71.2%,全身化学療法48.5%,放射線化学療法60.2%,動注放射線化学療法68.8%,BSC11.4%であった.3年生存率は腫瘍切除術33.4%,他の化学療法では8%以下であった.【まとめ】超音波スクリーニングにて発見された膵癌の72%は無症状にて発見されており,Early stageの症例も含まれていた.検診群の腫瘍進行度はStage_IV_aが半数以上を占めていたが,腫瘍切除率は61.1%と高く,5年生存率は40.0%と病院受診群に比べて生命予後は良好であった.化学療法は全身投与に加え放射線治療併用,動脈内注入などの工夫により短期予後は向上したが,今後は長期予後の改善のため更なる新展開が必要と考えられる。
  • 草野 史彦, 酒井 義法, 田沢 潤一, 藤原 秀臣
    セッションID: W4-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    胃腫瘍に対する内視鏡的焼灼術は、種々の合併症や社会的事情等により内視鏡的粘膜切除術(EMR)や手術療法が困難な場合、あるいは不完全切除例等に対する姑息的、補助的な治療として施行されてきた。当科でも肝硬変症例や維持透析症例に対して、その有用性を1994年から2002年にかけて報告してきた。肝硬変合併の胃癌7症例では合併症なく焼灼術を施行し、4例は胃癌以外の死因で死亡した。透析例では5例に焼灼術を施行した。4例は胃癌以外の死因で死亡した。1例では3年以上の生存が追跡できた。焼灼術は安全性が高いが、治療深度が不明で治癒が確認できないことが欠点で、頻回の再発チェックが必要となり不安を伴う心理的負担も小さくない。
    一方、EMRは組織学的治癒が得られ、治療は基本的に1回でよい。近年は処置具、技術が進歩し、内視鏡的粘膜剥離術(ESD)を始めとした新たな治療手技が普及しつつあり、高リスク例にも治療可能となってきている。当科でも現在では粘膜内癌については高リスク例でも内視鏡的切除を選択している。
    こうした背景の変化に伴い、以前に焼灼術を選択したが再治療として内視鏡的切除を施行した3例を経験した。症例1は総胆管結石、胆管炎の手術直前に見つかった早期胃癌で、EMRと焼灼術が選択されたが7年後に再発。瘢痕と線維化があり難渋したがESDを完遂した。症例2は、骨髄異形成症候合併の早期胃癌で焼灼術を2年半に渡り繰り返していたが、透明キャップを用いたEMR法を行ない治癒切除が得られた。症例3は、胃腺腫に対しEMRと焼灼術が施行されたが6年後に再発。瘢痕と線維化があり難渋したがESDを完遂した。
    焼灼術後でも再治療できる可能性を検討する必要があると考えられた。
    胃腫瘍性病変に対する焼灼術は有用ではあるが欠点もあり、特に後治療が困難になることから治療法選択は慎重に検討することが必要と考えられた。
  • 井坂 茂夫, 安田 弥子, 湯浅 譲治, 野首 光弘
    セッションID: W4-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    早期前立腺癌の治療に手術(前立腺全摘除術)は根治性が高く、有用な方法として確立された評価を得ているが、術後尿失禁と男性機能障害という合併症が解決すべき課題とされている。近年の前立腺に関する外科的解剖学の進歩から、前立腺を覆う前立腺筋膜は前立腺側面から全面にかけて広く分布する神経のネットワークを含み、勃起機能及び尿禁制に深く関与していることが明らかとなってきた。我々は、前立腺筋膜を温存するいわゆるVeil of Aphrodite法が、術後の尿禁制を改善するかについて検討した。対象と方法:限局性前立腺癌患者29例に対し片側(15例)、両側(14例)のVeil of Aphrodite法恥骨後式前立腺全摘除術を施行した。病理組織学的には、前立腺前面から側面のMargin clearance(標本断端から正常前立腺組織または癌組織までの距離)と、S100免疫染色を用いた前立腺被膜外の神経束数を測定した。尿失禁の改善度は尿道カテーテル抜去1週間後の24時間pad testで評価した。結果:片側と両側との間に神経温存と尿失禁に有意な関係は認められなかった。Margin clearance はVeil側で平均0.35mm、神経非温存側では平均1.84mmであった。断端陽性は5例(17.2%)に認められた。神経束数はそれぞれ平均1.7、平均11.2であった。カテーテル抜去後1週間の24時間尿失禁量は平均59.6gであり、神経束数と尿失禁量は有意に相関した。結論:前立腺筋膜温存法は、実質に切り込まないように慎重に行うことで断端陽性率が高くなることは避けることができ、術後の尿失禁は早期に改善されると考えられた。尿失禁及び男性機能について長期的な視点から検討を進めてゆきたい。
  • 長崎 寿夫, 関 夏恵, 柳沢 啓介, 岡沢 香津子, 宮本 亮子, 中山 よし江, 梅松 幸栄, 中山 佳典, 湯本 英幸, 南 茂
    セッションID: W5-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】当院では医師不在により糖尿病外来が一時中断された。2年前に新たに医師を迎え、医師、コメテ゛ィカル、事務等協力して運営し、地域に対して糖尿病の予防、外来、入院システムを再構築している。地域の現状、当院の糖尿病診療・療養指導の状況と問題点、課題を含め報告する。
    【現状】2000年~2009年の当院健康管理部による健診事業の結果からデータを抽出した。HbA1cについては年々上昇傾向がみられ平均5.2%を超えていたが、糖尿病の治療者数は減少傾向にあった。
    【再構築の内容】様々な患者のタイプを踏まえた上で、システム再構築を検討した。
    入院:1週間の教育入院とクリニカルパスの導入、外来:血糖コントロール不良への対応(病診連携)、糖尿病教室の開催、医師・L-CDE・CDEJを中心とした糖尿病対策チームによるスタッフ会議の開催、地域住民への啓蒙・啓発活動。
    【結果及び考察】外来患者が急増したが入院システムへのスムースな移行が可能となった。重症例が多くインスリン新規導入者は50%を超えた。個別対応(重症患者、妊婦への対応、精神疾患の合併、外国人など)、テーラーメード対応の必要性や、スタッフ間のコミュニケーション連携強化がみられより効果的な診療体制作りや患者への気配りが可能となった。 結果として血糖値・HbA1cの改善につながった。今後、患者ニーズや社会情勢を配慮した短期入院システムの構築が課題である。糖尿病教室開催により、地域住民との関係や広がりが出来た。糖尿病診療・療養指導をより戦略的に、特に1次予防や地域の保健活動を重視し、CDEJやL-CDEが機能的に活動し発症の予防に努めること、地域連携パスの構築に向け努力していきたいと考える。
  • 木村 麻希, 高橋 幸, 青木 理奈, 白坂 育美, 夏掘 恵, 王生 志津
    セッションID: W5-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに> 当病棟では平成20年度、糖尿病で入院した患者のうち、11.2%に治療を有する糖尿病性足病変があった。今回、アンケートにより入院前後のセルフケア行動の比較調査を行なった。フットケアを継続していくため、定期的に指導を行い、セルフケアの意識を高める関わりが必要だと分かった。
    <研究方法> 平成21年8~12月の入院患者で、研究の趣旨を理解し同意が得られた12名を対象とした。大徳ら1)の「日本版セルフケア行動評価尺度J-SDSCA」(以下J-SDSCAと略記する)のフットケアの項目を用いアンケートを作成し、入院前後で施行した。
    <結果> J-SDSCAのフットケアの各項目、全項目のトータル(全日数と略記する)で有意差はみられなかったが平均日数は上昇した。背景別では、HbA1c 10%以上・合併症あり・足変形なし・足病変なし群の全日数・足変形なし群で靴の中のチェックを行った日の5項目に有意差を認めた。他の項目は有意差が認められなかった。平均日数でみると足変形がある群の全日数を除いて全て上昇していた。
    <考察> 今回の調査では年齢、HbA1cや血糖値などのデータや合併症の有無ではなく、患者自身の理解や意識が大きく関わるということが分かった。患者は自らの意思で行動変容できる存在であり、その為には正しい知識を持ち、日常生活の中にセルフケア行動を取り入れ、継続していけるように支援していくことが必要である。患者の外的要因・内的要因・強化要因を総合的に判断し、それぞれの要因が相互に影響することを念頭に、個別性にあわせた指導をしていく必要があると考える。         
  • 内田 みさ子
    セッションID: W5-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>糖尿病は、医学的管理に加え患者自身による主体的な取り組みが必要とされ、生涯にわたり継続したセルフコントロールが望まれる。農業従事者は会社員と違い季節によって活動量に差があるため、特にインスリン療法に依存している患者の血糖コントロールは難しいが、当院の療養支援外来で20年来 HbA1c10%台だった患者が、約1年後、6.8%まで改善した症例を経験した。患者を単に糖尿病患者というだけではなく、生活者として捉え全人的に支援する事が療養支援では重要であるという事を再認識した事例を報告する。
    <療養支援の実際>
    _I_.糖尿病患者としての問題点
    患者は60歳代男性、罹病歴20年の1型糖尿病であった。発症以来、低血糖発作で緊急搬送と高血糖を繰り返し、インスリンは増量傾向。医師は、原因を自己流の食事療法と飲酒によるものと判断し、禁酒の指導と栄養指導の目的で療養支援の依頼をうけた。
    _II_.生活上の問題点
    自己管理の背景を聴取すると、農繁期に起こす低血糖を防ぐための過食や間食を行う事で高血糖となっている事が明らかになった。農業面積は2丁5反部(250R=25,000_m2_)と広範囲であり、活動量の不安定な農繁期に低血糖を頻繁に起こしている事が分かった。
    _III_.医師と認定看護師との連携の重要性
    医師にコントロール不良の真の要因をフィードバックし、インスリン量の減量を提案した。その後、療養支援を継続し、コントロールは改善した。患者なりの療養行動を尊重しつつ、個人の生活に沿いながら専門的なアドバイスをしていく事は重要であり、医師と専門的知識を習得した看護師による連携は重要である。
    <まとめ>糖尿病の治療の成否は、患者自身の理解と生活の中で常に血糖をコントロールできることにある。医学的側面と、生活者としての側面も重要視した全人的な支援をするためには医師と糖尿病看護認定看護師がリーダーシップをとり、他職者とも情報を共有化し、患者をサポートする事が必要である。
  • 野崎 琴美, 柏崎 達也
    セッションID: W5-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     糖尿病患者数は増加の一途をたどっており、今後もさらに増加していくことが予想される。糖尿病治療において運動療法は、食事療法・薬物療法と並んで、有力な治療手段の1つである。しかし、生活習慣の変更を伴うことが多い運動療法はセルフケア行動の中で最も継続率が低いといわれる。
     当院では2週間のプログラムで糖尿病教育入院を実施している。また、糖尿病患者の療養生活を支援する目的で、糖尿病療養支援チーム及び、糖尿病患者会が設置されている。それらは医師・コメディカルが連携し、取り組みを行っており、糖尿病療養指導士の資格を有する理学療法士も院内外の活動に参加している。
     院内の活動としては、糖尿病教室での指導、運動療法の実施、糖尿病患者会の活動やウォークラリーの企画・参加、院内ウォーキングマップの作成等である。それらの活動で中心となるのが、糖尿病教室と運動療法への関わりである。対象者としては高齢糖尿病患者が多く、身体的に不安要素があるという患者、運動に積極的でない患者も多い。また、仕事を有する患者においては、時間的な余裕がないという訴えも聞かれる。
     院外の活動としては、他院と共同して開催している栃木糖尿病ウォークラリーや、糖尿病医療相談会への参加等である。
     今後の課題としては、1.糖尿病教室の効果判定を明らかにしていくこと、2.より細かなひとりひとりの身体機能及び、ライフスタイルに合った運動プログラムを提供すること、3.運動に対するモチベーションを維持するための手段を検討していくことである。
  • 八幡 和明, 丸山 順子, 目黒 理恵子, 濱崎 真沙子
    セッションID: W5-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】糖尿病治療をしてゆく中で患者同士がお互いの体験を語り合い、療養生活の手がかりにしていることは多々ある。しかし間違った知識に影響されてしまうことも少なくない。今回、新しい指導ツールとして糖尿病カンバセーションマップを糖尿病患者指導に携わる医療スタッフが体験することができた。このマップは糖尿病に関する知識、治療への考え方を語り合う中から気づきを得て、様々な問題を自ら解決をしてゆくためのツールである。その使用感、教材への印象、患者指導への有用性、問題点ついて検討した。
    【結果】糖尿病カンバセーションマップを使用しての感想は、楽しみながら知識を学ぶことができる、進める中で自分の考えや気持ちを自然に話しているなどの回答があった反面、難しかった、時間がかかり大変という回答もあった。教材についてはビジュアル的に興味がわいてくる、クイズ形式で楽しく答えられ、知識の詰め込みといった感じがないという回答のほか、一見わかりやすいように見えるが複雑という回答もあった。小グループで行うことに関しては、参加型であり、意見交換ができる、コミュニケーションがとりやすいと回答。実施時間については60分から90分が適当と回答しており、行うにあたっての問題点として、ファシリテーターの力量やマップ使用時の使用対象者の絞り込みなどをあげていた。
      【考察】糖尿病カンバセーションマップは今までにない新鮮な教育資材であり、医療者も楽しみながら患者の知識を確認でき、患者の考えや心理を知ることができる患者指導ツールと考える。またコミュケーションツールとしても有効と考える。しかしファシリテーターの能力や経験によって患者の効果に影響を及ぼすことが考えられ、スタッフの育成が今後の課題である。
  • 上條 広高, 黒田 理紗, 岡崎 弘子, 石川 知子
    セッションID: W5-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】当院では、年間1318件の外来個人栄養指導を実施し、うち599件45.4%が糖尿病の患者である。今回、我々は、栄養指導を通じ糖尿病患者の職業、食生活、生活習慣等社会的環境と糖尿病発症との関わりをBMI別に分析し、血糖管理を阻む環境因子がどのようなものなのかを明らかにし効果的な栄養指導を目指す。 【方法】2009年4月~2010年3月までに外来栄養指導を行った2型糖尿病患者115名(男54名、女61名、平均年齢59.4歳)について問診調査を行う。分析はBMI別5群分け(22以下:正常_I_、22.1~24.9:正常_II_、25~27.9:肥満_I_、28~29.9:肥満_II_、30以上:肥満_III_)とした。調査内容は、_丸1_職業、_丸2_合併症、_丸3_家族数と家族構成、_丸4_食事摂取時間、_丸5_間食、_丸6_飲酒、_丸7_外食、_丸8_運動。また、栄養指導初回時と2回目、3回目指導時に身長、体重、BMI、血糖値、HbA1cを調査し生活習慣の変化も追跡した。 【結果】平均BMI26.1、平均血糖185.3mg/dl、平均HbA1c8.1%。職業は56%が無職と主婦であり肥満_III_群の53%が主婦であった。間食有りは71%で肥満_I_群の92%が間食有り。飲酒有り32%。外食有りは64%で肥満_III_群35%が週1~2回。運動なしは64%で肥満_I_群が77%と最高。初回と継続指導後のHbA1cを比較すると0.5以上の改善群が57%、0.5以上の増悪群が9%、中間域の変化無群が34%。改善群は飲酒、運動、欠食、間食などの行動変化がみられた。 【考察】今調査の結果より、高血圧・脂質異常症等合併症の発症は肥満_I_群から始まり、肥満_II_群で最高となるため発症後早期からの体重管理が重要と考える。糖尿病発症には夕食時間の遅延、間食、運動の環境因子が重なって影響し、BMI25が発症分割線と思われる。また、栄養指導実施後の改善を阻む因子は、夕食時間、飲酒、運動の生活習慣の行動変容がないことであり、間食をしていてもそれらの行動変容により改善が見込まれる。食事と運動の重要性が示唆された。
  • 高橋 周子, 中野 詩朗, 赤羽 弘充, 稲垣 光裕, 柳田 尚之, 正村 裕紀, 工藤 岳秋, 折茂 達也, 及川 太, 米谷 理沙
    セッションID: R-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    Barrett食道癌とは、食道胃接合部の扁平上皮が円柱上皮に置き換わったBarrett食道から発生する腺癌である。その発生原因として、胃酸や胆汁酸の逆流による食道粘膜障害が重要視されている。欧米ではBarrett食道癌が食道癌全体の約半数を占めるのに対し、日本では95%以上を扁平上皮癌が占め、腺癌は稀である。胃酸を中和するHelicobacter pyloriの感染率が従来日本では高く、胃酸逆流による食道粘膜障害が欧米に比べて少ないことがその理由としてあげられる。近年はH. pyloriの感染率低下や食の欧米化、逆流性食道炎の増加などに伴い、日本でもBarrett食道癌は増加傾向にある。しかしその報告症例数はまだ少なく、治療法は確立されていない。今回我々はBarrett食道癌の1例を経験したので報告する。症例は70歳代男性。黒色便と背部痛を主訴に受診し、上部消化管内視鏡検査で食道胃接合部に腫瘍が認められた。生検の結果は腺癌であり、Barrett食道癌が疑われた。cT2 cN0 cM0 cStage IIの診断にて右開胸開腹胸部食道亜全摘、胃管・胸腔内吻合再建を施行した。病理組織学的検査の結果は中分化型腺癌、pT3 pN1 cM0 pStage IIIであった。腫瘍表層部に重層扁平上皮の介在があり、Barrett食道由来の腺癌であると診断した。特に合併症なく術後23日目に退院となった。
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