日本農村医学会学術総会抄録集
Online ISSN : 1880-1730
Print ISSN : 1880-1749
ISSN-L : 1880-1730
第59回日本農村医学会学術総会
選択された号の論文の464件中51~100を表示しています
  • 前田 宗伯, 神谷 泰隆, 加地 謙太, 郷治 滋希, 田村 泰弘, 浅田 馨, 大河内 昌弘, 服部 孝平, 後藤 章友, 大野 恒夫
    セッションID: R-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は74歳男性。主訴は食欲不振。家族歴、既往歴に特記すべき事なし。現病歴:平成15年12月から高血圧で当院通院中、平成18年4月食欲不振が出現。血液検査をしたところ、T.Bil4.8、ALT880と異常を認め、入院となった。胸腹部CTにて大量の胸水、腹水を認めた。日本酒換算で3~5合を約30~40年の飲酒歴があり、アルコール性肝障害に伴う胸腹水と診断した。また、胸部CTにて食道壁の肥厚が疑われたため、上部消化管内視鏡検査を施行したところ、切歯より約30cmの部位に約1/5周を占める中心陥凹を伴う1型隆起を認め、食道癌と診断した。病理組織検査でも、扁平上皮癌であった。胸腹水を伴う肝不全症例であり、手術適応はないと考え、完全治癒は難しいが、内視鏡的な治療法もある旨をお話し、納得の上でマイクロターゼ焼灼を施行した。1回目は30W、5~10秒の焼灼を40回施行。施行直後に39.0℃の発熱を認めたが、すぐに解熱した。終了時に明らかな隆起が残存したため、3日後に30W、5~10秒の焼灼を20回追加した。この日も施行直後に39.2℃の発熱を認めたが、すぐに解熱した。2週間後の内視鏡検査で、隆起性病変は消失したため、経過観察とした。 入院前までは独居であったが、退院後は家族と同居するようになり、アルコール摂取量が減少した。その後、胸腹水の貯留もなく、平成22年3月の内視鏡検査でも再発所見を認めていない。
  • 村松 伸之介, 杉浦 元紀, 山岸 庸太, 石川 雅一, 水野 章
    セッションID: R-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は78歳男性。2009年3月、当院内科にてスクリーニング目的で上部消化管内視鏡を施行した。胃前庭部に2箇所の0-_II_a病変、胃体下部に1箇所の0-_II_a病変、胃体中部に1箇所の0-_II_c病変を認めた。生検では胃前庭部のうち1病変が腺腫で、それ以外の3病変は高分化型腺癌であった。胃粘膜は腸上皮化生を伴う慢性胃炎の所見であり、腺窩上皮内にピロリ菌を認めた。また、病巣間には悪性所見を認めず、連続性はなかった。明らかな他臓器及びリンパ節への転移を認めなかった。 以上より、cStage_I_Aの多発早期胃癌の診断にて、胃全摘(D1+β)、胆嚢摘出、Roux-en-Y再建術を施行した。術後病理組織学的検査では、前述の4病変に加え、胃体中部に1病変の存在を認め、いずれもtub1,m,ly0,v0であった。背景胃粘膜に再生上皮や上皮の過形成性変化を認めた。経過良好であり、術後16病日にて退院となった。 同時性多発早期胃癌は胃癌全体の約10%程度と決して珍しいものではないが、2病巣症例が大半であり、本症例のように5病巣を認めるものは極めてまれである。若干の文献的考察を加え報告する。
  • 塚田 朗, 中野 詩朗, 赤羽 弘充, 稲垣 光裕, 柳田 尚之, 正村 裕紀, 工藤 岳秋, 折茂 達也, 及川 太, 米谷 理沙
    セッションID: R-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈緒言〉PET-CTを用いてイマチニブの効果判定を行なった直腸原発再発GISTの1例を報告する。
    〈症例提示〉症例は60歳代女性。平成X年直腸平滑筋肉腫の診断で腹会陰式直腸切断術を施行し、その後9年間再発なく外来通院していた。平成X+9年右臀部の突出を認め、腹部造影CT 及びPET-CT、右臀部腫瘤へのcore needle biopsyを施行。GISTの骨盤内再発、肝転移、左大腿筋肉内転移の診断となった。イマチニブ400mg/dayを開始し、外来でPET-CTを定期的に施行、効果判定を行なった。治療開始1ヵ月後に病変のFDG集積はほぼ消失し、4ヶ月後には骨盤内腫瘤は残存していたものの全病変でFDG集積の陰性化を認め、CRと考えられた。その後PET-CT上再燃を認めなかった。イマチニブ開始2年6ヵ月後に骨盤内腫瘤内部に局所集積が出現し、その後腫瘍の増大を認めた。イマチニブからスニチニブへの変更を考慮したが、PSが悪く適応とはならなかった。
    〈考察〉GISTは消化管及び腸間膜に発生する10万人に1~2人の比較的稀な腫瘍で、外科的完全切除が行なわれる例を除けば完治は困難である。近年分子標的薬イマチニブによる治療で切除不能及び再発GIST症例の生存期間延長が示されているが、腫瘍の2次耐性獲得が問題となっている。治療効果判定にPETを用いる方法は全例に有効ではないが、症例によっては鋭敏に治療効果を反映する。平成21年6月にイマチニブ耐性GIST症例にスニチニブが使用可能となり、更なる生存期間の延長が期待されている。
  • 村松 愛
    セッションID: R-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【症例】61歳 女性 【主訴】腹痛、嘔吐 【既往歴】以前より内臓逆位を指摘されていた。 【現病歴】数日前より便秘になり、突然の腹痛と嘔吐を認めて当院救急外来を受診した。来院時、腹部全体の圧痛、鼓音を認め、腹部CTにて上腸間膜動静脈を中心とした捻転による広範な小腸の虚血と腹水が認められたため、緊急手術となった。 【手術所見】腹腔内は、右側に結腸、左側に小腸がある無回転型の腸回転異常と内臓逆位が認められた。各臓器は後腹膜と固定されておらず、十二指腸、腎臓等は腹腔内に遊離した状態となっていた。小腸は上腸間膜動静脈を中心に360度回転しており、発生学的には大網になるであろう膜様組織も捻転部に関与していた。幽門部より約60cmの部位から回腸末端10cmまで小腸が壊死していたため、同部を切除した。 【術後経過】広汎な小腸切除により短腸症候群になったため、中心静脈栄養管理を行った。経過は比較的良好であり、30病日目に退院され、現在は外来通院中である。 【まとめ】今回我々は成人では比較的稀な、腸回転異常症に内臓逆位症を伴い絞扼性イレウスを発症した一例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告します。
  • 藤田 牧子, 田岡 大樹, 松崎 晋平, 村田 哲也, 浜田 正行
    セッションID: R-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【症例】72才男性。 【主訴】黄疸。 【現病歴】2年前より食欲不振と腹部膨満感があり,アルコール摂取量が増加していた。1ヶ月前より褐色尿を自覚,近医を受診し閉塞性黄疸の診断で当院紹介となった。家族歴に特記事項なく, 20~25本/日X50年の喫煙歴と,ウイスキー2~5杯/日X50年の飲酒歴がある。 【入院後経過】血清検査では胆道系優位の肝機能障害と黄疸が見られ,腫瘍マーカーではCA19-9が158U/mlと上昇していた。画像検査では上部消化管造影検査で十二指腸下行脚の狭窄が見られ,腹部CT検査では輪状膵とその腹側膵に腫瘤性病変が指摘された。MRCP検査では腹側膵膵管の途絶が見られた。上部消化管内視鏡超音波検査では腹側膵に30X22mm大の低エコー腫瘤性病変が指摘された。下部胆管の擦過細胞診は陰性であった。以上の所見より,輪状膵とその腹側膵から発生した膵癌が疑われ,膵頭十二指腸切除術が施行された。 【術後経過】術前画像検査で指摘した部位に浸潤性膵管癌が認められた。膵癌取扱い規約pStage III(T3N1Mo),UICC-TNM分類pT3pN1pMXG2 Stage IIBであった。術後合併症なく,術後17日で独歩退院となり,外来で経過観察されている。 【考察】輪状膵に発生した膵癌の一例を経験した。輪状膵の発生機序や,輪状膵合併膵癌の過去の報告例について報告する。
  • 杉本 侑孝, 和田 勲, 渡部 博之, 星野 孝男, 藤井 公生, 稲葉 宏次, 米山 和夫, 木下 展克
    セッションID: R-07
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】小児に対して施行した大腸内視鏡検査について検討する 【対象・方法】平成18年3月から平成21年4月までに当院で施行した12例。年齢:1歳9ヶ月~12歳3ヶ月。男児6例、女児6例。身長83.2~142.0cm。体重12.7~38.9Kg。前処置は、全症例前日は低残渣食を摂取。また、前日sodium picosulfate内服や、当日のsodium potassium combined内服は体重、年齢を考慮し投与。排便状態により適宜浣腸を追加して対応した。また、術前投与薬としてatropin sulfate、pentazocineを体重、年齢を考慮し適宜使用。検査中鎮静剤はthiopantal sodiumを適宜投与。使用内視鏡機種はOLYMPUS社製、PCF240AI、PCFQ260AI、Q260AIを使用。 【結果】主訴は全例が血便。大腸ポリープ8例、潰瘍性大腸炎2例、内痔核1例、異常なし1例であった。すべての大腸ポリープは出血減と考えられ、ポリペクトミーを行った。病理はすべてjuvenile polypであった。術中合併症は認められなかった。 【結語】小児の大腸内視鏡検査は大腸が成長発育の過程であること。小児大腸専用の内視鏡がないこと。患児それぞれで前処置が違うため、それぞれに対応が必要であること。検査中の鎮静剤が必要であることなど、検査、前処置に手間がかかることが多い。今回我々は、小児科医や小児外科医との協力により、小児に対し大腸内視鏡検査が問題なく安全に行うことができたので報告する。
  • 山 さとみ, 田戸 雅宏, 石原 隆太郎, 梅沢 武彦, 渋谷 肇, 杉谷 雅人
    セッションID: R-08
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】現在の医療水準でもクモ膜下出血はGlasgow outcome scaleで重度障害以上の予後不良例が40%存在しており、その予防及び治療は重要な問題である。特に脳動脈瘤の再破裂は直接予後に関わるため迅速で的確な診断と治療が必要とされる。再破裂予防処置は破裂後72時間以内に行う事が推奨されている。72時間以降の脳血管攣縮期の手術は成績が悪いことが指摘されているため、この時期に診断された場合、待機手術や血管内手術が行われることが多い。我々は脳動脈瘤破裂の数日後に診断され、脳血管攣縮期に開頭クリッピング術を選択し良好な結果を得られた症例を経験したため文献的考察を加え報告する。 【症例】36歳男性。家族歴・既往歴:特記事項なし。喫煙歴:2~3箱/日(20歳から)。1週間前から突然の激しい頭痛を2回認めるも鎮痛剤で様子をみていた。入院当日に嘔吐・失禁を伴う激しい頭痛を再び認めたため当院に救急搬送された。 【経過】搬送時、JCS1-2、Hunt & Kosnik Grade_III_であり、頭部CTにてFisher分類Group3のクモ膜下出血を認めたため、入院加療となった。翌日に脳血管造影を施行したところ、右中大脳動脈M1M2移行部にblebを伴う脳動脈瘤を認めた。動脈瘤の形状を考慮し血管内手術を選択せず、同日に開頭クリッピング術を施行した。術後経過は良好であり、神経学的障害を認めず独歩にて退院となった。 【考察】本症例では破裂を繰り返す度に症状が悪化していたため、早急な再破裂予防を計画した。脳血管造影の結果、血管内手術は困難と考えられたため、脳血管攣縮期に開頭クリッピング術を施行した。手術は頭蓋内圧亢進・術中再破裂を認め難渋したが、本症例では良好な結果を得ることができた。このように再破裂を繰り返した後に診断された症例では、脳血管攣縮期の開頭クリッピング術も治療手段になりえると考えられた。
  • 高尾 茉希, 稲垣 雅春, 加藤 昭紀, 小貫 琢哉, 尾形 朋之, 山下 高明, 斉藤 和人, 若井 陽子, 高部 和彦, 篠原 陽子
    セッションID: R-09
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    空洞切開菌球除去術を選択したアスペルギローマについて症例提示する。 66歳男性。右肺扁平上皮癌に対し右中下葉切除術施行。糖尿病、アルコール性肝障害などの基礎疾患を持つ。術後6年目に肺炎を発症し、胸部CT検査で右残存肺に真菌球を伴う空洞性病変を認め、アスペルギローマと診断された。イトリコナゾールを開始したが、血痰や喀血が持続。β-D グルカン76.7pg/mlと上昇し、胸部CTで真菌球の増大を認めたためボリコナゾールへ変更。BAEを施行した後も数回の喀血入院を繰り返したが、β-D グルカンは30-50pg/ml程度で推移していた。その後β-Dグルカンが107.1pg/mlとなったため入院しミカファンギンを開始したが168.3pg/mlまで上昇したため内科的治療抵抗性と判断し、病勢コントロールのため空洞切開術施行。空洞内容物をドレナージし菌球を除去、開窓とした。術後は血痰は消失し、β-Dグルカンも低下した。 アスペルギローマは喀血を呈することもあり、時に致命的となる。外科的治療の根治性は高いが、肺結核後の空洞や肺気腫の嚢胞に発生することが多く、患者の呼吸機能や栄養状態など全身状態が不良であることもある。また胸壁、葉間、肺門への浸潤傾向が強いため、術中出血や術後肺炎、呼吸不全などの合併症のリスクが高く、周囲にも随伴病変を伴う複雑菌球型はさらにハイリスクである。術式は根治性の面では肺葉切除や区域・部分切除が優れるが、耐術能がしばしば問題になり、適応決定に難渋する。本症例の場合、右残存肺全摘術の方が根治性が高いと考えられたが、肺癌術後で高度な癒着が予想されること、基礎疾患が多くるいそうが著明であることから耐術能なしと判断し、空洞切開術を選択した。それにより感染コントロールを得たので報告する。
  • 渡辺 恵莉, 日山 鐘浩, 松倉 遊, 能瀬 宏行, 鈴木 康司, 南家 秀樹, 河内 貞臣
    セッションID: R-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     症例は67歳女性。10年来の腰痛が2009年10月頃から誘因なく増強し、同時に右臀部から大腿部の疼痛が出現したため、近医から当院へ紹介受診となった。もともと腰椎すべり症、腰部神経根症、骨粗鬆症に対してビタミンD投薬・エルカトニン筋注により加療されていたが、その他には特記すべき既往歴はなかった。初診時、active SLR testは不可であり、腸腰筋及び大腿四頭筋の筋力評価は疼痛のため困難であったが下腿以下の筋はMMT4-5レベルであった。単純X線写真ではTh12-L2に陳旧性圧迫骨折があり、L5の前方すべりを認めた。また腰椎MRIでは多椎間で硬膜及び神経根の圧排を認めた。骨密度は腰椎でYAM 62%、股関節で55%、血液検査ではALP 315U/L、BAP 23.8U/L、ucOC 3.37ng/ml、尿中NTx(Cre換算)64.3であった。
     神経根ブロック及び仙骨ブロックにて一時は疼痛軽減し、伝い歩き可能となり外来で経過観察していたが、除痛効果が漸減傾向となりはじめた2010年3月、股関節の単純X線写真にて陳旧性の右大腿骨頸部骨折を認めた。同月に右人工骨頭置換術を施行し、術後は右臀部から大腿部の疼痛は軽減して、術後6週間でpick-up walkerにて自宅退院となった。現在外来にて経過観察中である。
     閉経後骨粗鬆症のある女性では腰椎疾患を疑う場合、大腿骨近位部脆弱性骨折も念頭に入れる必要がある。
  • 鴨下 友彦, 加藤 哲司, 石田 智裕, 市川 義明, 山岸 逸郎, 大野 恒夫
    セッションID: R-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は30歳、女性。既往歴は統合失調症。スーパーマーケットの3階より転落し、近医へ救急搬送された。搬送時、右非開放性Pilon骨折を認め、骨折型はAO分類43-C3であった。また両踵骨骨折、胸腰椎圧迫骨折も認めた。受傷後3日目に当院紹介搬送された。
    受傷後10日目、全身麻酔下に手術施行した。TSFを脛骨近位はフルリングをハーフピン2本とワイヤー2本を用いて装着。フットリングを利用して踵骨と中足骨にワイヤーをそれぞれ2本ずつ挿入し固定した。TSFを利用して牽引をかけ、脛骨と腓骨のアライメントが整復位にあることをイメージ下に確認した。脛骨前方の骨片直上に皮切を加え骨片を展開し、その骨折部より骨片打ち込み器を利用してイメージ下に関節面を整復、βTCPを挿入した。骨片はCannulated screwを用いて固定した。内果の骨片はオリーブワイヤーで整復した後、足関節の関節面やや近位にワイヤーを4本挿入した。
    術後10週で、フットリングを抜去し足関節可動域訓練を開始した。術後13週で部分荷重を開始し、術後19週でTSFを抜去し、術後20週で全荷重を開始した。術後半年、関節面のアライメントは比較的良好で、底屈に軽度制限認めるが独歩にて歩行可能となった。
    Pilon骨折の治療にはplate固定、創外固定などがあるが、骨折型や軟部の状態など考慮し選択する必要がある。足関節の機能回復には腓骨も正しい長さに保つ事が重要で本症例では腓骨の粉砕が強くplateでの固定では、腓骨の整復位を保つことが困難と判断し、少なくとも創外固定による牽引は必要と考えた。脛骨の固定にはplateを用いて創外固定とのhybridとする方法もあると思われるが、牽引とオリーブワイヤーでの整復にて良好な整復位が得られたので本症例ではTSF創外固定のみでの固定とした。
    本症例に対して若干の考察を加えて報告する。 
  • 津久井 理絵, 森 雄太郎, 筧 咲紀, 田中 啓之, 藤井 徹郎, 戸田 孝之, 松井 則明, 藤原 秀臣
    セッションID: R-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <背景>
    急性腎不全は、様々な原因により腎機能が急激に低下し、生体の恒常性が維持できなくなった病態である。急性腎不全の概念が普及するとともに、早期の診断と治療が可能になり、その治療法である血液浄化療法が進歩を遂げている。
    <症例>
    患者は81歳の女性。高血圧以外、特に既往はない。2010年5月初旬から2週間ほど全身倦怠感を自覚し、その後発熱・腹痛が出現したために近医を受診した。原因検索のために前医に入院となり、入院翌日に嘔吐、黄疸を認めた。腹痛、発熱、黄疸とCharcot三徴を呈しており、採血では炎症反応上昇、肝胆道系酵素の上昇を認めた。腹部CTで胆嚢壁の肥厚、肝膿瘍を認め、重症急性胆嚢炎と診断した。PTGBD挿入し、SBT/CPZ 2g/日を開始したが、徐々に尿量が低下し無尿となった。その後意識レベルの低下を認め、敗血症性ショックの状態となり、緊急透析の適応として当院に転院となった。転院時、CRP 41 mg/dl, WBC 25000 /μl, BUN 97 mg/dl, Cr 5.37 mg/dl, プロカルシトニン≧10 ng/mlであった。MEPM 0.5g/日、FOY 500mg/日投与を開始し、エンドトキシン吸着療法および血液濾過透析療法を施行した。徐々に全身状態改善し、敗血症性ショックの状態から離脱し、胆嚢炎・肝膿瘍の改善を認めた。入院15日目より自尿を認め、腎機能は徐々に改善し、経過は順調である。
    <考察>
    近年の報告によると、ICUにおけるAKI(acute kidney injury)患者の90%以上に血液浄化療法が施行されている。血液浄化療法の導入により、救命不可能な患者の管理が可能になったが、これらの患者の死亡率は50%と高値である。
    <結語>
    急性胆嚢炎から敗血症に至り、急性腎不全を発症した高齢患者に血液浄化療法を施行し、救命し得た一例を経験した。
  • 荒木 雄也, 稲葉 直人, 西垣 啓介, 宇野 智美, 前田 益孝
    セッションID: R-13
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     症例は66歳男性。63歳で気管支喘息・細気管支炎を発症し治療されていたが、増悪による入院退院を繰り返していた。痰よりはMRSAが検出され、保菌状態と診断されていた。2008年8月より腎機能が悪化し、2008年11月にS-Cre:1.79mg/dlとなっており、2009年11月27日に7.16mg/dlまで上昇し、腎臓内科へコンサルトあり緊急入院となった。<BR> 肺炎を発症していたため、肺炎に対する治療を優先し行った。12月1日には突発性難聴を併発しmPSL投与を開始し、12月4日に腎生検を施行した。12月15日よりPSL30mgの投与開始し、透析導入とした。しかし、当初反応に乏しくカリニ肺炎を併発しPSLを漸減中止とした。S-Cre:10.8mg/dlまで上昇していたが腎機能は徐々に改善し、1回2時間の週2回透析で前値がS-Cre:4-5mg/dl程度まで低下し水分量もコントロールできるようになった。腎生検の所見としては、間質への炎症細胞の浸潤と多彩な糸球体病変を認め、infectious glomerulonephritisと診断した。<BR>  infectious glomerulonephritisとしては溶連菌感染後急性糸球体腎炎が有名だが、近年の報告ではその原因として多くの菌が挙げられており、責任病変も多岐にわたることが指摘されている。また、infectious glomerulonephritisの腎予後が必ずしも良好ではないこともわかってきた。今回、細気管支炎の経過中にinfectious glomerulonephritisを発症し末期腎不全に至った一例を経験したので報告する。
  • 鈴木  麻弥, 牧 伸樹, 朝倉 健一, 西成 民夫, 黒木 淳, 杉田 暁大, 山内 美佐
    セッションID: R-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は87歳,男性.既往歴として関節リウマチがあり寝たきりの状態であった.平成21年12月心肺停止状態で発見され,当院にて心肺蘇生を行い心拍再開し入院となった.胸‐腹部CTにて右腎盂内に腎実質と等濃度の占拠性病変が発見され,腫瘤は腎実質・肝下極にまで浸潤していた.腎門部リンパ節・傍下大静脈リンパ節の腫大,左鎖骨下の腫瘤(約4×5cm)も認めた.血液検査所見では白血球84200/μlと上昇し,血清G‐CSF値は1220.0 pg/ml (基準値:39.0 pg/ml以下)と著明に高値を示した.他はRBC 325万/μl,Hb 9.5g/dl,Plt 9.3万/μl,AST 634IU/l,ALT 283IU/l,LDH 1854IU/l,BUN 21.5mg/dl,Cre 0.58mg/dl,CRP 7.63 mg/dlであった.その後ドパミンの持続投与行うも,同日永眠された.直接死因の究明目的に病理解剖が行われ,組織学的に腎盂癌であり,組織型は未分化癌と診断された.腫瘍は肝および腎実質に直接浸潤しており,肺・肝・副腎・所属リンパ節・左鎖骨下リンパ節に遠隔転移していた.原発部にて免疫組織化学染色を行ったが,G-CSF陽性像は得られなかった.また肝脾では類洞・脾洞が拡張し成熟段階の顆粒球の増殖を認め,髄外造血の所見がみられた.骨髄は過形成であり,腫瘍性増殖はなく顆粒球の増加が認められた.本症例は,明らかな重症感染症を伴わない白血球増多,血清G‐CSF値の異常高値,骨髄における顆粒球造血の増加より,G‐CSF産生腫瘍であることが強く示唆された.肝脾における髄外造血もG‐CSFの過剰産生が原因と考えられるが,G‐CSF産生腫瘍に伴う髄外造血に関して言及している報告例は稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 山本 陽一, 大河内 昌弘, 加地 謙太, 郷治 滋希, 田村 泰弘, 浅田 馨, 服部 孝平, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: R-15
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    近年、BOT(OSBIT)といった1日1回注射の基礎インスリン注射と経口糖尿病薬を組み合わせた治療が盛んに行われているが、我々は、強化インスリン療法、混合型インスリン2回注射から、BOT(OSBIT)に移行し、良好な血糖コントロールが得られ、糖尿病性壊疽の発症・進展抑制に効果的であった症例を経験したので報告する。症例は、67才 男性。5年程前より、糖尿病を指摘され、内服治療を開始したが、自覚症状認めず、通院を中断されていた。H21年3/9に、右母趾の壊疽を認め、整形外科を受診され、同日入院となった。保存的治療で壊疽の改善乏しく、4月に右母趾切断術を施行した。その後、左3趾の壊疽が出現するようになり、保存的に改善せず、8/19に左3趾切断術を施行した。糖尿病合併症としては、神経障害および、腎症2期を認めた。糖尿病コントロールについては、初回入院時HbA1c8.0%とコントロール不良であったため、強化インスリン治療を開始し、リスプロ 6-14-6単位+ ヒューマリンN6単位(計32単位)で、毎食前血糖値は、100-150mg/dl前後に改善した。その後、リスプロ25mix12-6単位の2回注に変更し、血糖コントロールは安定した。退院前に患者様より、家では朝食はほとんど食べず、昼食は外食ばかりで不規則で、入院中の様には出来ない。インスリン注射もやめたいと訴えられた。そのため、患者様 と相談し 、合併症進行防止のためには、インスリン注射継続が必要なこと、より患者さまのライフスタイルの合わせたBOT(OSBIT)があることをお話し了解を頂いた。最終的に、glimepiride 1mg + glargine 4単位のOSBITで、毎食前血糖値は安定し、HbA1cは5.6%とさらに改善し、以降、糖尿病壊疽の新規の発症なく順調に経過している。
  • 櫻井 綾子, 大河内 昌弘, 山本 陽一, 加地 謙太, 田村 泰弘, 浅田 馨, 服部 孝平, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: R-16
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は、70才男性。20年前より、糖尿病(2型)、高血圧、胃潰瘍を指摘され、内服治療を継続され、glimepiride 2mg、pioglitazone 15mg, Voglibose0.9mg最近1年のHbA1cは、6.1~6.8%で推移していた。H21年6/14に、急に、複視を認めるようになり、救急外来を受診された。来院時、意識清明で、瞳孔・対光反射に異常なく、右方視による複視(右眼内転障害)を認めた(pupillary sparing)。眼瞼下垂、舌偏位、顔面神経麻痺、四肢の麻痺は全て認めず、Barre sig、Finger-nose testに異常を認めなかった。頭部CT&MRI&MRAでは、lacunar infarctionを認めるのみで、内頸動脈・後交通動脈分岐郡脳動脈瘤や海綿静脈洞血栓症は認めなかった。加えて、両下肢の感覚神経障害を認め、アキレス腱、膝蓋腱反射の低下を認めた。眼科的にも眼球運動異常を認めるのみで、眼底異常、視野異常は認めなかった。以上より、脳の器質的な疾患による動眼神経麻痺は考えにくく、糖尿病性動眼神経麻痺と診断した。治療としては、リハビリ治療に加え、血糖コントロールの強化、血小板凝集抑制薬、血管拡張薬、アルドース還元酵素阻害薬、ビタミンB12製剤を併用したところ、1ヶ月程度で右眼内転障害および、複視は消失し、以後症状の再発は認めなかった。糖尿病性合併症としての動眼神経、外転神経麻痺は比較的まれな疾患であるため、脳梗塞の一症状と間違われやすいと考えられる。しかし、急性発症し、高齢者に多く、糖尿病の罹病期間・コントロール状態・眼底所見とは無関係に発症すること、一側の動眼神経、外転神経麻痺が多く、 瞳孔機能は保たれる(pupillary sparing)特徴的な所見から、比較的鑑別は容易であること、加えて、多くは数か月以内に回復する予後の良さから、その疾患を知ることは、疾患の迅速な鑑別・治療および患者指導に役立つと考えられ、典型的な自験例をここに報告する。
  • 加地 謙太, 大河内 昌弘, 山本 陽一, 郷治 滋希, 田村 泰弘, 浅田 馨, 服部 孝平, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: R-17
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例1は、69歳男性。数年前より、慢性関節リウマチのため、近医に通院していたが、関節痛の増悪が続くため、H21年7月より、MTX(リウマトレックス)の内服治療が開始となった。その後、徐々に、息切れ、呼吸困難が出現するようになり、当院に8/10に紹介された。紹介時に、SpO2 76%(room air)、聴診上、fine crackleを認め、胸部X線&CT上、両肺野全体のスリガラス状陰影、CRP19.4と異常を認め、重症間質性肺炎が疑われた。人工呼吸器による呼吸器管理の下、ステロイドパルス+漸減維持療法、抗生剤を含めた点滴治療を施した処、順調に呼吸状態の改善、両肺野の陰影も消失した。急性期には、KL6 1800U/ml, SP-D 1340 ng/mlは、異常高値を示していたが、回復期には、KL6 999U/ml, SP-D 184 ng/mlと改善したため、臨床経過、画像所見とあわせ、MTXによる重症薬剤性間質性肺炎と診断した。症例2は、69歳男性。H14年に、直腸癌(Ra, stage IIIa)で低位前方切除術を施行。H19年1月に、右肺に転移再発を認め、肺部分切除術を施行。4月に脳転移再発を認め、手術、サイバーナイフ治療を受けた。12月に多発性肺転移再発を認めたため、抗癌剤治療(FOLFOLI 13クール、mFOLFOX6 15クール、FOLFOLI 6クール)を施行したところ、乾性咳嗽に加え、胸部X線&CT上、両下肺野の間質性陰影を認め、KL6 1590U/ml, SP-A 180 ng/ml SP-D 844 ng/mlと異常高値を示したため、抗癌剤による薬剤性間質性肺炎が疑われた。ステロイドパルス+漸減維持療法を施したところ、自覚症状、および、間質性陰影の改善が得られた。DLSTでは、5-FU陽性、レボホリナート陰性、イリノテカン陰性であり、5-FUによる薬剤性間質性肺炎と診断した。
  • 林 敬章, 大河内 昌弘, 山本 陽一, 加地 謙太, 郷治 滋希, 浅田 馨, 服部 孝平, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: R-18
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例1は、69歳男性。近医精神科病院で、統合失調症の診断で、リスペリドン、スルトプリド、トリヘキシフェニジル、プロメタジン、ジアゼパム、フルニトラゼパム、セルマニールを服用していた。H21年1/14より、高熱、発汗、振戦、その後、意識障害を認めるようになり、1/21に、当院に紹介搬送された。紹介時、意識レベルIII-300, pH 7.475, PaO2 52.7, PaCO2 60.7, BE17.3, SaO2 85%、CPK1324IU/ml、MM型94%、BUN42.1mg/dl, Cre1.4mg/dl, ミオグロビン尿、AST61IU/L, ALT57IU/Lと、胸部CT上、下肺野の肺炎像を認め、誤嚥性肺炎、呼吸不全、横紋筋融解症、腎不全、肝障害を認めた。そのため、呼吸不全を伴う悪性症候群と診断し、人工呼吸器による呼吸管理を開始しながら、ダントロレンナトリウム、抗生物質を含めた点滴治療を継続した処、意識は清明となり、血液データの改善、肺炎像の消失も得られ、後遺症なく軽快した。症例2は、48歳男性。当院精神科で、統合失調症の診断で、リスペリドン、ニトラザパム、フルニトラゼパム、トリアゾラム、ゾテピン、フェノバルビタール、バルプロ酸ナトリウムを服用していた。H22年1/12より、高熱、痙攣、意識障害、呼吸不全を認めるようになり、1/14に、当科紹介された。紹介時、意識レベルIII-300, 強直性痙攣、CPK29258IU/ml、BU31.2mg/dl, Cre1.5mg/dl, 尿中ミオグロビン>3000ng/ml, AST296IU/L, ALT249IU/Lと異常値を認めたが、髄液検査では、細胞数の上昇は認めなかった。そのため、悪性症候群と診断し、人工呼吸器による呼吸管理を開始しながら、ダントロレンナトリウムを含めた点滴治療を継続した処、意識は清明となり、血液データは改善し、後遺症なく軽快した。2症例は、抗精神病薬で誘発された重症悪性症候群と考えられ、文献的考察を含めて、悪性症候群の病態・治療について詳細に報告する。
  • 玉井 康将, 浦出  伸治, 鈴木 圭, 星野 有, 小林 一彦
    セッションID: R-19
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    今回我々は脱力、構音障害で発症したアルコール性ケトアシドーシスの1例を経験したので報告する。症例は61歳,男性。食事は不規則であまり食べず、飲酒は55歳頃から増え日本酒5合/日、休日は朝から飲酒する生活を続けていた。平成22年4月22日午前8時ころ、アルコール摂取後、力がはいらないとのことで、当院に救急搬送された。初診時,意識清明,血圧110/60 mmHg,脈拍84回/分,呼吸回数18回/分。ろれつが回っておらず、軽度振戦がみられた。全身の筋力は軽度低下していた。動脈血液ガス分析ではpH 7.063、PaCO2 27mmHg、PaO2 108.7mmHg、HCO3 8.5mEq/l、BE –20.6と著しくアニオンギャップ(AG)の開大した代謝性アシドーシスが認められた。また、尿検査にて尿中ケトン体2+であり、血液検査にて血中総ケトン 4887μmol/、アセト酢酸 244μmol/、βーヒドロキシ酪酸 4643μmol/とβーヒドロキシ酪酸優位のケトン体の上昇がみられたことからケトアシドーシスであった。血糖は38mg/dlと低血糖であった。血液検査にて肝酵素の上昇を認め、腹部超音波検査で脂肪肝が認められた。著明な代謝性ケトアシドーシスで、高血糖でないこと、アルコール多飲歴から、アルコール性ケトアシドーシスと診断した。輸液と糖質、ビタミンB1の投与による治療で、速やかに代謝性アシドーシスの改善がみられた。入院翌日にはアシドーシスは消失し、症状も軽快した。 アルコール性ケトアシドーシスは毎日多量のアルコールを摂取する、栄養状態の悪い人に多くみられる。来院時に悪心や嘔吐、腹痛を訴えることが多く、著明な脱水とAGの開大を伴う代謝性アシドーシス、β―ヒドロキシ酪酸優位のケトン体の上昇を特徴とする。著しいアシドーシスを認める場合には、意識障害やショックを呈することがある。アルコール性ケトアシドーシスでは低血糖を示すことが多いとあるが、本症例も同様であった。アルコール性ケトアシドーシスは生命に危機的な病態を呈する疾患である。本邦でもアルコール摂取量が急激に増加しており、食事摂取不良な大酒家にAG開大を伴う代謝性アシドーシスを認めた場合には,本疾患を念頭に置く必要があると思われる。
  • 長縄 博和, 神谷 泰隆, 山本 陽一, 郷治 滋希, 田村 泰弘, 浅田 馨, 大河内 昌弘, 服部 孝平, 後藤 章友, 大野 恒夫
    セッションID: R-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は62歳男性。主訴:全身倦怠感。家族歴、既往歴に特記すべきことなし。現病歴:平成21年8月から背部痛、食欲不振が出現したため他院で精査を受け、すべて異常なしと言われた。精神科受診を勧められ、同年11月当院精神科を受診。入院治療するも全身状態の改善が見られないため、平成21年12月内科を紹介された。8月からの4ヶ月で体重が70Kg→50Kgに減少した。内科受診後、諸検査をしたが異常を指摘できなかった。平成22年3月貧血が進行したため、小腸造影目的で、朝食を中止したところ、意識消失が出現したため救急車で来院した。低血糖発作(Glu13)、電解質異常(Na120 、Cl 88)を認め、副腎機能不全を疑い、精査目的で同日入院となった。ACTH 3.0以下、コルチソ゛ール血清1.5と低値であり、他の下垂体ホルモンはGH 3.12、TSH7.79、LH 8.21、FSH 14.56、フ゜ロラクチン58.21とすべて高値であった。ACTH単独欠損症と診断し、コートリル60mg/日の内服を開始したところ、全身状態は改善し、食欲も出てきた。抄録作成時点で、コートリルを20mg/日まで減量しているが、全身状態は安定している。 本症は男性にやや多く、発症平均年齢50歳代と比較的高い。病因は未だ不明であるが、リンパ球性下垂体炎、自己免疫疾患、ACTH前駆体蛋白の後天的なプロセシング障害などが疑われている。副腎不全症状(全身倦怠感、食欲不振、意識障害、低血糖症状などが)が主体であり、一般的に色素沈着は伴わない。本例でも見られたように、精神疾患と誤診される症例があり、注意を要する。また、基礎分泌がある程度保たれており、ストレスなどの誘因で症状が出現する症例にも注意を要する。治療はホルモンの補充療法であるが、発熱、感染などのストレス時には補充量を増量する必要があることを指導しておく。
  • 長嶋 一樹, 田戸 雅宏, 石原 隆太郎, 梅沢 武彦, 渋谷 肇, 杉谷 雅人
    セッションID: R-21
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    若年性脳内出血を契機に診断された内分泌性高血圧の一例 長嶋一樹(ながしまかずき) 田戸雅宏、石原隆太郎、梅沢武彦、渋谷肇 、杉谷雅人 相模原協同病院相模原協同病院 脳神経外科 キーワード:若年性脳卒中・内分泌性高血圧 【背景】若年性脳卒中の全脳卒中に占める割合は2.2%と報告されており、その頻度は決して多いとは言えない。その成因として脳動静脈奇形・もやもや病・凝固異常・白血病等が挙げられるが、約80%は高血圧性であると言われている。その中でも内分泌性高血圧は、頻度的には少ないものの的確な診断と治療により治癒が可能であり、臨床的に重要な病態だと言える。今回我々は内分泌性高血圧が一因と考えられた若年性脳卒中の症例を経験したため、その病態につき若干の文献的考察を加え報告する。 【症例】生来健康な34歳女性。仕事中に突然左上下肢脱力としびれ感を自覚し、第二病日に当院救急外来を受診した。頭部CT上右被殻出血(約18cc)を認めたため、加療目的に入院となった。 【経過】入院後、降圧剤と止血剤による保存的治療を開始した。出血の拡大は認められず、自覚症状は改善、神経学的にも経過良好であった。しかし入院時より低K血症(2.5mEq/l)、治療抵抗性の高血圧を認めたため、内分泌性高血圧を疑いスクリーニング検査を行った。ホルモン基礎値はACTH:31.1pg/ml、血中コルチゾール: 18.7μg/dl、レニン活性:0.3ng/ml、血中アルドステロン:649pg/mlであり、腹部CT上左副腎に径24mmの腫瘍を認めたため、機能性副腎腫瘍疑いにて代謝内分泌内科にコンサルテーションとなった。 【考察】本症例では脳卒中発症前の診断は困難であったが、若年性脳内出血の患者を診察する際、低K血症合併例・治療抵抗性高血圧・副腎偶発腫瘍合併例・若年性の臓器障害合併が疑われる症例に対しては積極的に内分泌性高血圧を疑いスクリーニングを行う必要があると考えられた。
  • 水野 佳奈, 大河内 昌弘, 山本 陽一, 加地 謙太, 田村 泰弘, 浅田 馨, 服部 孝平, 後藤 章友, 神谷 泰隆, 大野 恒夫
    セッションID: R-22
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    今回我々は、重度の白血球低下を伴い、伝染性単核球症との鑑別を要した亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病)の1例を経験したので報告する。症例は、24歳男性。H21年10/20より、38℃前後の発熱が長期間続き、近医での内服治療にても改善しないとのことで、10/27に当院来院された。初診時、38℃の発熱、有通性、弾性軟の頚部リンパ節の多発性腫大、嘔吐、下痢を認め、経口摂取はほとんどできない状態であった。血液検査上、WBC2000/μlと低値、好中球50%、リンパ球41.4%とリンパ球増多を認めたが、異型リンパ球は認めなかった。AST25IU/L、ALT13 IU/L、LDH326 IU/LとLDH高値であった。腹部CTで、肝脾腫を認めた。入院後3日目には、WBC1300/μl まで低下し、さらに、体幹、下肢に発赤疹を認めるようになった。EB, サイトメガロウィルスの抗体値の上昇は認めなかった。入院後、ニューキノロン系、テトラサイクリン系抗生物質点滴に加え、G-CSF注を行ったが、WBCの改善はみられるも、解熱せず、頚部リンパ節の腫大は持続し、肝脾腫の悪化を認めた。鑑別診断として、亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病)の可能性を考え、非ステロイド系抗炎症薬を使用したところ、その後、順調に解熱、頚部リンパ節腫大および肝脾腫の軽快・消失、血液データの正常化が得られた。近年、長期間の発熱とリンパ節腫脹が続き、伝染性単核球症と類似した症状で発症する亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病)が報告されているが、まだ認知度は低い。抗生物質や抗ウィルス薬の効果は期待できず、対症療法が主体であること、また、難治例には、非ステロイド系抗炎症薬やステロイド薬が効果的であることが知られており、当疾患の臨床的な特徴、治療法を知ることは、疾患の迅速な鑑別・治療に役立つと考えられ、典型的な自験例をここに報告する。
  • 竹下 奨
    セッションID: R-23
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【症例】40歳 女性。持続する右下腹部痛、発熱を主訴に近医受診。虫垂炎の疑いにて抗生剤投与にて様子観察されていたが,改善しないため,約一週間後に当院外来受診。精査の結果、炎症反応高値、腹部CTにて虫垂腫大、両側卵巣腫大認めた。16年前に子宮内にIUD挿入歴あり。虫垂炎の疑い、右卵巣膿瘍の疑い、左卵巣奇形腫の疑いにて外科,産婦人科医にて緊急手術を施行した。 開腹所見では、虫垂腫大あり。虫垂切除術施行し,虫垂を観察,腫大はあるものの炎症所見に乏しく,感染源は右卵巣と考えた。右卵巣は膿瘍形成しており周囲と癒着していた。右卵巣摘出術施行。病理結果にて膿瘍より放線菌が検出、虫垂は慢性炎症の所見であった。術後経過は良好。退院後、IUD抜去し外来にて抗生剤投与中、左卵巣についても経過観察中である。 【考察】腹部放線菌症(Actinomyces infection) は比較的まれな疾患である。放線菌は口腔内に存在し,通常は無害であるが,感染や損傷がある場合に日和見感染的に病原性を発揮し,慢性の病巣を形成する。臨床症状は、腹痛・発熱・体重減少・悪臭帯下などある。 骨盤内に腫瘤を形成する場合,水腎症・腸管狭窄を伴う症例も有り悪性疾患との鑑別困難である。 IUDの使用歴の有無が大変重要である。 確定診断は病理組織学的な菌塊の証明であり,放線菌の培養はきわめて困難とされる。 治療はペニシリンが有効で,半年から一年間の投薬が必要である。 IUD挿入中の腹痛は放線菌症を疑うことが必要である。
  • 片山 泰輔, 尾形 朋之, 山下 高明, 若井 陽子, 斉藤 和人, 高部 和彦, 篠原 陽子
    セッションID: R-24
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は49歳女性。2009年7月下旬より左顎下部の腫瘤を自覚。近医で切開排膿を行い抗生剤内服で経過をみていたが腫瘤は縮小せず,左頸部リンパ節の腫脹もみられるようになった。9月初旬に当院を紹介受診。胸部X線で全肺野びまん性に粒状影を認め,リンパ節針吸引で結核菌PCR陽性となり粟粒結核と診断,抗結核薬(INH+RFP+PZA+EB)の内服を開始した。治療開始時には明らかな神経所見を認めていなかったが,開始2週間後より左上下肢の痺れ,軽度の脱力症状を自覚,治療開始6週間後の時点で歩行困難となり緊急入院となった。造影CTで脳実質右側優位に1cm大の結節影を散在性に認め,右前頭葉から頭頂葉周囲に強い浮腫を伴い左方への軽度midline shiftを呈していた。脳浮腫に対してグリセオールを投与,抗結核薬の内服は継続とした。1週間前後で神経症状および画像所見に改善がみられたことから入院後12日目に退院。現在も外来で治療を継続中,後遺症はなく神経症状の改善を認めている。 本症例では各薬剤に対する感受性が証明されたこと,入院時点で胸部陰影はむしろ改善傾向にあったことなどから脳の結節影はparadoxical response(初期悪化)によるものと考える。本症例は治療2週間後と比較的早い段階でみられ,また脳病変の出現により半身麻痺として顕在化,その後後遺症なく改善した点においても貴重な症例と考え文献的考察を加えて報告する。                                                                                                                                       
  • 津田 歩美, 河村 洋太, 伊藤 大起, 松崎 淳, 干場 泰成, 井関 治和
    セッションID: R-25
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    背景】 神奈川県相模原市では2008年4月より休日や夜間帯は循環器2.5次救急担当病院が日ごとに決められ、急性期治療を要する心血管疾患症例の診療についてはその日の当番病院が当たる。当院は地域中核病院としてその循環器2.5次の多くを担当し、特に急性冠症候群の診療態勢を整えている。急性冠症候群のうち特にSTEMIでは早期の再灌流療法(プライマリーPCI)が予後の改善につながるが、当院のST上昇型心筋梗塞症例の診療実績については不明である。 【方法】 相模原協同病院で循環器2.5次制度が開始した2008年4月から2010年3月までに来院したSTEMI症例についての患者背景、受診から再灌流までに要した時間(Door to Balloon Time)、入院日数、急性期転帰等を調査した。血管造影室入室前に緊急処置を要した症例や、PCI不成功・未施行症例については外来受診から血管造影室入室までの時間、Door to Balloon Timeの解析から除外した。 【結果】 急性冠症候群にて緊急心臓カテーテル検査、治療を行った症例は 症例で、そのうちSTEMIと診断し緊急で冠動脈検査・カテーテル治療を行った症例は98症例で、平均年齢は67±13歳、79%が男性であった。 外来受診してから血管造影室搬送までの時間は75±45分であり、Door to Balloon Timeは107±52分であった。大動脈内バルーンパンピングは23症例(23%)に使用し、PCI成功症例は93症例(95%)で生存退院が88症例(90%)、平均の在院日数は15±12日であった。 【結語】 当院で診療したSTEMI症例の臨床的短期予後については遜色ない結果であった。 しかしアメリカ心臓病学会で推奨されるDoor to Balloom Timeは90分以内であり、この短縮と患者outcome改善に向けてSTEMI症例の診療態勢の更なる見直しが必要である。
  • ~高圧酸素療法の効果と臨床経過、頭部MRIの経時的変化~
    伊藤 愛, 牧 聡樹, 大達 清美, 川田  憲一
    セッションID: R-26
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【症例1】65歳女性、調理中の不完全燃焼によるCO暴露4週間後より見当識障害、健忘が出現し、受診した。MMSE16点(発症前はMMSE27点)と低下しており、頭部MRIにて深部白質にT2強調像、FLAIRで高信号を認め間欠型CO中毒と診断した。高圧酸素療法を開始したが、一時はMMSE0点、食事をするのも困難な状況となり、MRI上も白質病変の悪化を認めた。52回の高圧酸素療法とリハビリテーションを行い、食事は自立、トイレも自分で行けるようになり、徐々に神経症状は改善した。【症例2】30歳男性、練炭によるCO暴露3週間後に、動作緩慢、見当識障害が出現し、受診した。両上肢の筋強剛、記銘力障害が見られ、頭部MRIで脳梁、大脳白質にT2強調像、FLAIRで高信号を認め間欠型CO中毒と診断した。30回の高圧酸素療法により、運動障害、高次脳機能障害が改善した。【考察】高圧酸素療法が有効であった間欠型一酸化炭素中毒の2例を経験した。頭部MRIを経時的に行えたので、臨床症状と合わせ報告する。急性CO中毒の軽快後も間欠型CO中毒を念頭に置き、慎重な経過観察を行うことが重要である。また間欠型CO中毒で高圧酸素療法が有効な例が報告されており、試す価値はあると思われる。
  • 堀越 佑一, 田戸 雅宏, 石原 隆太郎, 梅沢 武彦, 渋谷 肇, 杉谷 雅人
    セッションID: R-27
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】悪性神経膠腫は浸潤性を持ち、正常脳組織との境界が不明瞭であるため、全摘出が困難な脳腫瘍である。近年、5-ALA(5-aminolevulinic acid)を用いた術中蛍光診断が悪性神経膠腫の摘出に対して用いられるようになってきた。5-ALAは悪性神経膠腫に選択的に取り込まれ、ヘム代謝を介しporphyrin_IX_へと合成され、集積する。porphyrin_IX_は405nmの紫色の励起光を照射すると、635~706nmの赤色の蛍光を発する。そのため5-ALAを術前に投与し、励起光を照射する事で正常脳組織との境界が明瞭となり術中診断に用いる事が可能とされている。今回私どもは5-ALAを用いた術中蛍光診断が悪性神経膠腫の摘出率向上に有益であるか病理組織結果をふまえ検討した。 【方法】悪性神経膠腫が疑われる脳腫瘍患者に対し、手術3時間前に20mg/kgの5-ALAを経口投与した。全身麻酔下に開頭を行い、硬膜を切開し腫瘍を全周性に露出した。励起光を照射し、赤色に蛍光される組織を全摘出した。
    【結果】術中腫瘍組織から強い赤色蛍光が得られ、正常脳組織との境界は明瞭であった。腫瘍摘出後肉眼的には正常脳組織と思われる部位からも蛍光が得られたため、追加切除を行った。術後MRIで造影される腫瘍組織の全摘出が確認された。蛍光が得られた摘出標本のMIB-1(doubling index)はいずれも30%前後と非常に高く、悪性度の高い組織であることが確認された。
    【考察】正常脳と思われる組織からも赤色蛍光が得られ、同部位が悪性度の高い組織であった事から、肉眼的所見のみでの全摘出は困難であったと考えられる。また、過剰な摘出を避ける意味でも5-ALAを用いた術中蛍光診断は有益であると考えられた。
    【結語】悪性神経膠腫摘出に際しては5-ALAによる蛍光標識が非常に有用であり、標準的に利用されるべき方法である。
  • 山田 裕樹, 梶川 博之, 橘 径, 高島 慎吾, 伊藤 伸朗
    セッションID: R-28
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例】25歳 女性 【主訴】筋力低下 【現病歴】受診の6日前より下痢があり、4日前より両下肢の筋力低下と痛みを訴えた。近医整形外科を受診して経過観察となった。以後、上肢の筋力低下、舌の感覚異常が出現したため当院神経内科に紹介となった。 【既往歴】特記事項なし。 【身体診察】上下肢の筋力低下、舌・左手掌・両足底の感覚異常、右上下肢の深部腱反射低下が認められた。 【血液検査・髄液検査・画像検査】異常なし。 【電気生理学検査】運動神経伝導検査:振幅低下(+) F波導出(-) 【診断】軸索型ギランバレー症候群 【入院後経過】免疫グロブリン大量静注・ステロイド併用療法を5日間行った。入院第4日目頃に症状のピークを認め、以後、上肢遠位筋から徐々に回復した。上肢近位筋にわずかな筋力低下を残して入院第17日目に退院となった。 【考察】軸索型ギランバレー症候群の1例を経験した。脱髄型と比べて予後不良な軸索型ギランバレー症候群に対して、免疫グロブリン大量静注・ステロイド併用療法は検討すべき治療法と思われる。   
  • 宇田川 勝, 山浦 千春, 小林 紀子, 銘苅 摂, 廣瀬 博美, 高谷 澄夫, 稲留 征典, 臺 勇一, 玄 東吉
    セッションID: P1-A1-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    日本住血吸虫症は、宮入貝を介して経皮感染したセルカリア幼生が、門脈で成体となって産卵し、この虫卵が消化管や肝組織の細血管を塞栓して、虫卵内のミラシジュウムの代謝産物により周囲に肉芽腫を形成し、数年から数十年で肝硬変に至る人畜共通感染症である。古くから山梨県甲府盆地、福岡県筑後川流域、広島県片山地区などの風土病として知られるが、利根川流域もかつてはその流行地の一つとされていた。そのため、利根川やその支流に近い当院でも、摘出標本内に同症の虫卵を有する症例が散見されている。2000年1月から2010年3月までに当科にて手術を施行した消化器癌症例の病理組織学的検討から、8症例に同症の虫卵が存在した。年齢は68歳から88歳、男女比は7:1で、調査可能な限りいずれの症例も幼少期から利根川流域を居住区とし、2人が稲作業を営んでいた。疾患別では1例が胃癌で、No.3転移リンパ節内に石灰化した虫卵が認められた。残りは全て大腸癌で、そのうち1例は盲腸癌と横行結腸癌との同時性多発癌であり、もう1例は左肝内胆管癌との重複癌で肝左葉組織内のみに虫卵が認められた。多発癌1例を含む大腸癌症例6例は健常組織内に虫卵が認められた。超音波検査上、典型的な亀甲様パターンを2例に認め、そのうち1例が術後2年以内に原因不明の肝不全で逝去された。日本住血吸虫症は水田の側溝のU字溝化や殺貝剤の使用、堰の建設などの徹底した宮入貝の駆除により、最大感染地域であった山梨県においても1996年に同症流行の終息宣言がなされている。しかしその一方で現在も継続的に同貝の生息が確認されている地域もあるため、当地区でも定期的な調査が必要と考えられる。また、原因不明の肝機能障害症例や手術摘出標本で虫卵を有する症例は厳重なフォローアップが必要であり、特に同症罹患患者の化学療法などの際は肝機能の推移に留意する必要があると思われた。
  • 佐藤 秀昭
    セッションID: P1-A1-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    都市近郊における農業従事者のH.pylori感染症の検討 佐藤秀昭 刑部優美 刑部東治 永見明生 岩堀公基 JA東京厚生連健康管理センター 【目的】H.pylori(Hp)感染は、昭和30年代までの衛生状態が良くなかった世代では感染が容易に起こったと推測されている。全人口のやく50%がHpの感染を受けていると考えられている。感染経路が不明なことが多く、環境要因により、幼少時に経口感染するといわれている。Hpは長期間持続感染により、胃癌を含めた多くの疾患の原因となることが明らかにされてきている。農業従事者と環境の異なる職種におけるHp感染を比較検討した。 【対象と方法】2009年4月から2010年2月までに当センターにて健診を受け、上部消化管内視鏡検査時に迅速ウレアーゼ試験法を用いて検査を行った1159名、平均年齢55歳 (男性701名,女性458名)のうち、農業(B群)264名、事務職(W群)347名、主婦(S群)212名に群分けし各年代等で調査した。 【成績】各群の陽性率(%)はB群39%,W群28%,S群32%、各年代の陽性率(%)は、40歳未満B25%,W20%,S7.7%、40歳代B34.3%,W18.5%,S26.8%、50歳代B35%.2,W34.7%,S25%、60歳代B49.4%,W47.4%,S45.6%であった。 【結語】我が国のHP感染率は若年者で10~40%程度と低率といわれているが、50歳以上の成人では80%以上と高い感染率を示すといはれている。HP感染率は他の職種に比べ30~40歳代の農業従事者に多い傾向を認め、60歳以降では陽性率が変わらないことより環境要因との関連が示唆された。
  • 小澤 範高, 三原 昌弘, 杉山 智彦, 華井 頼子, 尾辻 健太郎, 山崎 健路, 勝村 直樹, 森 良雄
    セッションID: P1-A1-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     47歳、女性。約2ヶ月間続く心窩部痛、嘔気・嘔吐を主訴に当院内科受診。PPI内服にて症状改善なく、上部消化管内視鏡検査施行。前庭部から胃角部にかけてびまん性にびらん、易出血性粘膜を認め、前庭部の伸展は不良であった。胃透視では前庭部の漏斗状の全周性狭窄と伸展不良認めた。胃粘膜生検の初回病理結果はびらんを伴なう炎症の目立つ肉芽様粘膜でありgroup_IV_、adenocarcinomaが疑われるという結果。スキルス胃癌を疑い入院。入院時の血液検査にてRPR定量256倍、TPHA定量20480倍と高値、診察上、前胸部に小豆大の紅斑を数個認め、第2期梅毒疹が疑われた。紅斑より皮膚生検施行したところ真皮上層の血管周囲に形質細胞を混じるリンパ球主体の炎症細胞浸潤を認め、梅毒疹と診断された。胃粘膜の生検標本をTreponema pallidum抗体による免疫染色を行ったところ陽性像が得られた。以上より第2期梅毒に伴なう胃梅毒と診断。アンピシリン1500mg/日点滴静注開始。治療開始数日後には嘔気・嘔吐は消失、1週間後には皮疹は色素沈着化、2週間後の胃透視では狭窄部の拡張を認め、血液検査ではRPR定量126倍、TPHA定量10240倍であった。 胃梅毒は幽門前庭部に好発するが、画像上、幽門部のスキルス胃癌との鑑別が問題となることがあり、生検陰性のスキルス胃癌として手術(胃切除)となった胃梅毒の症例も報告されている。幽門前庭部のスキルス胃癌が疑われた場合には、鑑別診断として胃梅毒も念頭に置き、梅毒血清反応をチェックする必要がある。
  • ~横行結腸介在症例に対して~
    小林 聖幸, 松岡 裕士, 藤田 浩二, 横内 桂子, 山下 拓磨, 佐藤 賢, 須崎 規之, 丸岡 敬幸, 阿河 直子, 合田 吉徳
    セッションID: P1-A1-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】近年、嚥下機能低下患者を中心に経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)が広く普及している。しかし様々な理由で造設が困難な症例も散見される。今回、胃腹壁間に横行結腸が介在するPEG困難2症例に対し、CF併用下の胃瘻造設術を施行し、良好な結果が得られたので報告する。【方法】横行結腸介在型のPEG困難症例に対して、CFを併用しPEGを施行した。CFを肝弯曲部付近まで挿入し、横行結腸を下方に押し下げることで胃と腹壁を近接させ造設する方法(以下、CF併用下PEG)で行った。【症例1】80歳台、男性。脳梗塞後遺症による嚥下障害があり、PEG目的で紹介となった。術前の胃内視鏡で光サインは陰性、指サインも不確定であった。CTでも胃と腹壁の間にはかなりの距離があり、横行結腸を中心とした腸管の介在がみられた。CF併用下PEGの適応と考えられた。横行結腸を下方に押し下げることにより、光及び指サインの確認が可能となった。透視下で確認した上で、ダイレクト変法(3点固定)で造設した。経過良好で早期退院が可能であった。【症例2】70歳台、男性。脳梗塞後遺症による嚥下障害があり、PEG目的で紹介となった。CTにて胃・腹壁間に横行結腸の介在がみられた。胃内視鏡でも指及び光サインは不確定であった。CF併用下PEGの適応と考えられた。CF挿入により剣上突起直下の限局された一部位ではあるが、指及び光サインが陽性となった。透視で確認した後、pull法で造設した。経過良好で早期退院が可能であった。【まとめ】胃瘻の普及により様々な合併症に対する対策法が確立されてきた。しかし現在でも横行結腸誤穿刺の報告は少なからずみられている。横行結腸介在症例に対しても上記の方法で造設可能な症例も多いものと思われ、造設に際しては十分な適応の検討が必要であると考えられた。
  • 新 智文, 吉田 晃, 菊池 英明
    セッションID: P1-A1-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は40歳代男性。養豚業。2009年9月発熱、右季肋部痛があり、その後黄疸が出現し、当院受診。特に豚、鹿、猪の生肉摂取はなかった。AST 1018 IU/l、ALT 1470 IU/l、PT 100%であり急性肝炎と診断し同日入院となった。HAV、HBV、HCVの感染がないことが確認された段階で、厚生労働省/E型肝炎の感染経路・宿主域・遺伝的多様性・感染予防・診断・治療に関する研究班/北海道E型肝炎研究会のシステムに則り、HEVについて検索した。HEV-IgM、HEV-RNAが陽性でE型急性肝炎と診断した。HEV-Genotypeは4型であり、経過中に意識障害は出現しなかったもののALTは4890IU/lまで上昇、PTは60%まで低下した。第8病日のHGFは1.05ng/mlと高値で劇症化が危惧され、ステロイドパルスも考慮されたが、その後自然経過で回復した。
    北海道ではHEV感染が他都府県に比べ多く発生しており、北見、網走での集団感染や、札幌圏での小流行も報告されている。しかし北海道の中でも十勝地方でのE型急性肝炎発症例は本症例が初めてであり、また、本症例は養豚業に従事していることもあり、感染経路など示唆に富むものと考え報告する。
  • 水草 貴久
    セッションID: P1-A1-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    [はじめに]
     元来、肝硬変患者は低タンパク(低アルブミン)血症を合併し低栄養状態であることが多く、例えば腹水を伴う場合の細菌性特発性腹膜炎など様々な感染症を発症する。今回我々はC型肝硬変患者に発症し、治療に難渋したガス産生性後腹膜膿瘍の1例を経験したので、文献的考察を加えてここに報告する。
    [症  例]
    症 例:72歳,女性
    主 訴:発熱,腰痛
    現病歴:以前よりC型肝硬変の診断にて当院内科外来通院中であった。本年3月下旬頃より腰痛が強くなり腰椎(L1)圧迫骨折の診断にて当院整形外科入院。入院後から38~39℃前後の発熱が続いたため、原因精査目的にて4/7内科転科となった。
    入院時現症:身長151cm,体重36.5kg,体温38.8℃,脈拍124/分・整,血圧112/58mmHg,意識清明,眼瞼結膜に貧血・黄疸なし,心音,呼吸音は正常,神経学的所見に異常なし。
    入院時検査所見:血液検査にてWBC 17800/mm3,CRP21.2mg/dlと著明な高値を呈し、プロカルシトニン陽性。尿検査は異常なし。
    [入院後経過]
     CTにて圧迫骨折した腰椎(L1)内のガス像とその周囲に内部にガスを伴う膿瘍形成を認めた。ここが発熱の原発巣と考えられガス産生性後腹膜膿瘍を伴う化膿性脊椎炎と診断した。入院直後より抗生剤投与が施行されていたが反応は乏しく、内科転科後の血液培養にて黄色ブドウ球菌が検出された。敗血症として免疫グロブリン製剤を併用し、2回目の血液培養では陰性となったが、その後も発熱と激しい腰痛が続きNSAID投与にても軽快しないため、やむを得ずステロイドを抗生剤と併用したところようやく発熱及び腰痛コントロールが可能となった。しかしステロイドを中止するとすぐに上記症状は増悪し、画像上も膿瘍の縮小傾向は全く認められないため病巣のドレナージあるいは掻爬が必要と考えられ大学病院へ転院となった。
    [考 察]
     化膿性脊椎炎は、早期には単なる腰痛症や圧迫骨折として診断されてしまうことが多く、治療が遅れると敗血症からDICなどに進展する重篤な感染症である。一般的には内科的治療の治癒率が高いと言われているが、早期に診断でき適切な抗生剤による治療が行われたとしても反応性に乏しく、病巣のドレナージや掻爬といった外科的な治療が必要となることがある。またガス産生性膿瘍の症例で肝膿瘍の報告は多いが、本症例のように後腹膜膿瘍や化膿性脊椎炎の報告は極めて稀である。
     肝硬変患者が発熱を伴う腰痛を訴えた場合、尿路感染症以外に化膿性脊椎炎を念頭において早期にCT、MRIによる鑑別診断を行う必要があると考えられた。
  • 大原 徳彦, 清水  馨, 神山 隆治 , 今井 泰平
    セッションID: P1-A1-7
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は53歳男性。慢性C型肝炎に対して2009年12月よりペグインターフェロン(IFN)・リバビリン併用療法が開始された。投与19週目、2010年4月上旬より口渇・多飲・多尿・体重減少が出現。全身倦怠感・嘔気が増悪したため、同月13日消化器内科受診。血糖 463mg/dl、HbA1c 7.6%、尿中ケトン強陽性、代謝性アシドーシス(pH7.203、HCO3- 7.9mmol/l)より糖尿病性ケトアシドーシスと診断し、当科緊急入院となった。入院後、輸液及びインスリン持続点滴により速やかに症状は改善、強化インスリン療法導入し退院となった。血清アミラーゼ41IU/l、抗GAD抗体など膵関連抗体は陰性。糖尿病症状発現後1週間以内にケトアシドーシスに陥っており、尿中Cペプチド 6.8μg/day、グルカゴン負荷試験にて血中Cペプチド 0.08→0.10ng/mlとインスリン分泌能は著明に低下していたため、劇症1型糖尿病と診断した。腹部MRIでは膵臓の萎縮や腫瘤等の器質的な異常は認めなかった。IFN治療中にインスリン抵抗性が増大しインスリン治療が必要となる例や、自己免疫が誘導され1型糖尿病を発症する例が報告されているが、劇症1型糖尿病の合併は極めて稀であり、1型糖尿病の発症機序を考える上で示唆に富む症例と考えられた。
  • 渡辺 庄治, 佐藤 明人, 福原 康夫, 佐藤 知巳, 富所 隆, 吉川 明
    セッションID: P1-A2-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
     本邦においては、食生活から魚骨片に接する機会は比較的多いと思われるが、魚骨による食道穿孔は比較的まれな疾患である。ただし、合併症によっては食道穿孔は重篤となり時期を逸すれば予後不良となりうる。鯛の骨による食道穿孔により食道周囲膿瘍を合併したが、保存的に治癒し得た1例を経験した。 症例は77歳男性。平成20年3月の夕食に魚を摂食した。食直後より食物のつかえるような感じがあった。翌日は粥食としたが、心窩部痛が出現、しだいに増悪したため、翌々日近医受診。上部消化管造影にて造影剤(バリウム)の縦隔内への漏出を確認され、直ちに紹介受診となった。胸部CTにて胸部下部食道壁に刺入した魚骨と周囲に径30mm大の膿瘍を認め、大動脈には異常所見を認めなかった。上部消化管内視鏡にて切歯より35cmの食道壁に刺入した魚骨を認めたためオーバーチューブを挿入し、鰐口型把持鉗子を用いて直視下で抜去した。中心静脈栄養管理と抗生剤投与による治療を開始した。入院3日後に症状は軽快、2週後のCTで膿瘍はほぼ消失していた。食事開始後も経過良好にて退院。 食道穿孔では発症早期の時点で的確に診断することが重要である。本症例のように保存的に対応できる症例もあり、内視鏡的手技を駆使した保存的治療も行われている。しかし、胸腔内穿破や診断が遅れ縦隔炎や膿胸を併発した症例では、救命を第一に、外科手術を選択することが必要と思われる。
  • 高田 淳, 林 基志, 浅野 貴彦, 岩下 雅秀, 田上 真, 畠山 啓朗, 林 隆夫, 前田 晃男, 西脇 伸二, 齋藤 公志郎
    セッションID: P1-A2-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    急性胆嚢炎に対する診療ガイドラインは、早期の胆嚢摘出術を推奨しているが、重篤な全身状態などによる手術の高リスク群にはまず胆嚢ドレナージ術を行うのが望ましいとしている。持続的胆嚢ドレナージには、経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)と内視鏡的経鼻胆嚢ドレナージ(ENGBD)があるが、多くの施設ではPTGBDが選択されている。しかし、PTGBDにはチューブの逸脱や瘻孔完成まで抜去できないという問題がある他、抗凝固・抗血小板剤を服用中又は出血傾向を有する患者、大量腹水の患者には禁忌となる。それに対してENGBDは、PTGBDにおける問題点を考慮する必要がなく、効果的で安全な手技であるとも報告されている。我々は2007年8月から2010年3月までに12例の急性胆嚢炎に対しENGBDを試みた。平均年齢は69.4歳(42-89歳)。診断は胆石性胆嚢炎が7例、胆石性胆嚢炎+総胆管結石が2例、無石性胆嚢炎が3例であった。結果として、胆嚢内にドレナージチューブ留置できたのは8例(66.7%)、カニュレーション不可が3例(25%)、ドレナージチューブが胆嚢管を通過できず、断念した例が1例(8.3%)であった。カニュレーション不可であった3例うち、2例は胆石嵌頓なかったため胆管ドレナージ(ENBD)留置、1例は胆嚢管に結石嵌頓しており、PTGBDへ移行した。処置に伴う合併症として、膵癌の胆管浸潤を伴う1例にて、ガイドワーヤーによる胆管穿孔をきたした。ENGBD可能であった症例は全例で自覚症状の改善、laboratory dataの改善が得られた。急性胆嚢炎に対するENGBDの利点として、上記のようにPTGBDで問題となる点を考慮する必要がない点以外に、処置時に総胆管の評価・治療も同時に出来る点が挙げられ、総胆管結石合併例は良い適応であると思われた。問題点としては、処置の難度が高く、手技成功率や手技時間でPTGBDに劣ることや胆嚢管損傷の合併症が挙げられた。
  • 立花 進, 土屋 十次, 熊沢 伊和生, 西尾 公利, 小森 充嗣, 福田 賢也, 八幡 和憲
    セッションID: P1-A2-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    要旨: 症例は66歳男性.以前より慢性膵炎と膵頭部に発生した仮性膵嚢胞にて当院内科に通院していた。平成20年1月,上腹部痛と吐血にて来院,腹部CTにて膵頭部に約8cmの嚢胞性病変を認め,当院入院となった。入院時胃カメラにて異常なく、ERCPにて膵管と膵頭部の嚢胞との交通が認められ、また発症直後の腹部CTにて嚢胞内に高濃度陰影を認めたため、Vatter乳頭から出血した出血性膵嚢胞と診断し手術を勧めるも拒否され退院となった。平成21年8月6日に再び吐血し救急車にて当院に搬入される。胃カメラにて異常認めずも腹部CTにて膵嚢胞内に高濃度陰影を認めたため、8月27日に膵頭十二指腸切除術を施行した。膵頭部嚢胞は8×7cmで内部には結石を伴う血腫が認められた。術後経過は良好で第40病日に退院となった。嚢胞内出血を伴う仮性膵嚢胞は手術適応となりうるが、Vatter乳頭からの出血として発症することはまれであり、若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 杉本 琢哉, 杉本 舞子, 岡田 将直, 水谷 憲威, 飯田 辰美
    セッションID: P1-A2-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【症例】45歳、男性。昼食後に急激な腹痛と嘔吐をきたし、救急外来を受診した。臍部から右側腹部にかけて圧痛、反跳痛を認めた。腹部CTでは,右側腹部に盲嚢状構造物を認め、その中に集簇した小腸を認めた。また、上腸間膜静脈が左方に偏位していた。以上から,腸回転異常症に起因した内ヘルニアによる腸閉塞の疑いで手術を行った。開腹所見では、骨盤内にやや色調不良な小腸を認め、その口側小腸が右結腸間膜と後腹膜の間に嵌入していた。同部位は結腸間膜と後腹膜が癒合しておらず、約3cmのヘルニア門を形成していた。今回の腹痛は色調不良な小腸がこのヘルニア門から嵌入したことによる腹痛であったが、手術時には嵌入が解除されていたものと推察した。さらに検索するとTreitz靭帯は認められず、十二指腸は下行脚から尾側に走行して空腸に移行していた。以上から腸回転異常症に起因した内ヘルニアと診断した。色調不良であった小腸は色調軽快したため切除は行わず、ヘルニア門を大きく開放して手術を終了とした。現在までのところ再発徴候を認めていない。
  • 赤羽 弘充, 中野 詩朗, 稲垣 光裕, 柳田 尚之, 正村 裕紀, 工藤 岳秋, 折茂 達也, 及川 太, 江本 慎, 米谷 理沙
    セッションID: P1-A2-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】消化管間葉系腫瘍(以下GIST)は10万人に1人という稀少疾患であり、画像診断や手術の領域は充分なエビデンスが集積されていない。当院で2000~2009年に病理学的にGISTと診断された47例について、特に手術治療を施行した症例に焦点を当てて検討した。【症例の内訳と治療方針】図に示すとおり、GIST診療ガイドラインに則り治療した。EMRによる内科的治療と外科切除により完全切除できた症例はCTやPETで経過観察している。切除不能や切除後の遺残腫瘍に対してはimatinibが適応となる。切除後の再発症例も再切除が第一選択となるが、切除不能や切除後の遺残腫瘍にはimatinibが適応となる。即ち、手術適応とならず切除不能であった6例、不完全切除(遺残)の1例、再発後切除不能の5例、再切除後の遺残2例がimatinibの適応である。imatinib耐性GISTに対しては切除、インターベンション、imatinibの増量が選択肢となるが、2008年からはsunitinibが使用可能となった。【切除後再発・遺残症例】切除後の再発8例と遺残1例を表に示す。2度の再切除にて完全切除できた1症例は6年間再発なく経過している。再発後完全切除できなかった7例と初回遺残の1例はimatinibを投与し、imatinib耐性症例に対しsunitinibを投与している。【結語】画像診断としてのCTやPETはGISTの活動性を評価する有効な手段であると考えている。手術治療中心であったKIT陽性GISTに対し、治療薬imatinibの出現は劇的な変化をもたらしたが、今後はimatinib耐性GISTに対する治療が課題であり、sunitinibの治療効果に期待している。
  • 釋  亮也, 小林  真, 良田 裕平, 杉谷 鈴子, 宮島  透
    セッションID: P1-A2-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】大腸ESDは長径20mm以上の大腸腫瘍の内視鏡的一括切除を可能とした。しかし、胃や食道に比べ解剖学的、手技的な困難と穿孔の問題もあり、導入初期の偶発症が多いことも問題とされる。そこで当院における大腸、直腸ESDについてretrospectiveに検討し手術成績、偶発症の頻度について検討した。
    【対象】2009年1月から2010年5月までに大腸、直腸腫瘍に対してESDを施行した12例12病変(男女比11:1、年齢49~86歳、LST:11、IIc:1、盲腸:1、上行結腸:4、横行結腸:3、S状結腸:2、直腸:2)を対象とした。スコープは左側結腸では反転が安全容易なOlympusPCF-Q260Jを深部結腸ではCF-H240AIを用い、全例でCO2送気を使用した。デバイスはデュアルナイフ、フラッシュナイフ、フックナイフを状況に応じ適宜使用し、高周波装置はICC200(EndCut Effect2 30W,Forced Coag 30W)、局注液はグリセオールを主とし線維化の強い例などで十分な隆起を必要とする際にムコアップを追加局注とした。
    【成績】腫瘍径は10~45mm(平均 29.5mm)でESD12病変中、10病変(83.3%)は一括切除、断端陰性一括切除は9病変(75%)であった。所要時間は30~210分(中央値107分)で偶発症は術中穿通1例、術中出血1例であったがいずれも保存的に改善した。全例において現在まで局所再発、転移、原病死は認めていない。
  • 葛井  総太郎, 平沼 進, 滝口 典聡, 伊東 浩次, 島袋 剛二, 鈴木 恵子, 高部 和彦
    セッションID: P1-A2-7
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    結核性腹膜炎の頻度は全結核患者中で0.04~0.55%と稀であるが、最近当院で開腹手術を行った際に、腹膜に多数の白色結節が認められ、術中および術後の検索にて結核性腹膜炎であることが判明した2症例を経験したので報告する。【症例1】86歳女性。20代で肺結核を指摘され内服加療、19歳時虫垂炎手術、27歳時子宮外妊娠手術歴あり。2010年1月朝より突然発症した腹痛を主訴に救急外来を受診。理学的所見では腹部に強い圧痛を認め、CT検査で小腸の壁肥厚、腸管膜の炎症所見がみられたため、絞扼性イレウスを疑い同日緊急手術を施行した。開腹してみると大網、腸間膜に多数の数_mm_大の白色結節と、胃の前庭部から幽門部に拇指頭大の白色の瘢痕様の結節がみられ、大網と腹膜の結節の一つの間に形成されたバンドの間に小腸が絞扼されていた。このため胃癌の腹膜播種による癌性腹膜炎を疑ったが、この結節は術後の病理検索で結核結節と診断された。喀痰培養、PCR、Gafkyは陰性。便培養は陰性であった。現在外来にて内服加療継続中である。【症例2】36歳女性。結核の既往は無し。不妊治療、子宮内膜症あり。手術歴無し。2007年8月左上腹部痛出現。翌日卵巣嚢腫、腸閉塞の診断で当院産婦人科紹介された。腹部超音波検査にて10cm大の卵巣嚢腫認め付属器捻転を疑い婦人科にて緊急手術を施行した。開腹所見では左側の卵巣嚢腫と尿膜管嚢腫が認められ、小腸の癒着によると腸閉塞症を合併していたため外科も手術に参加した。また腸管、腸間膜に白色の小結節の播種巣が見られたため、術中迅速病理検査を依頼し結核性腹膜炎と診断された。手術は腸閉塞の癒着解除、左付属器切除術施行と術中認められた尿膜管嚢腫の切除を行った。FT-2G陽性。喀痰、胃液、腹水のGafkyは陰性であった。半年の結核薬内服加療を行った。
  • 華井 頼子, 勝村 直樹, 森野 浩太郎, 三原 昌弘, 山崎 健路, 尾辻 健太郎, 杉山 智彦, 小澤 範高, 森 良雄
    セッションID: P1-A2-8
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    症例は21歳女性、平成20年3月2日より嘔吐、38度台の発熱あり受診。抗生剤等処方されるも改善なく、10日に白血球減少も認め入院となった。WBC2300(metamyero2.0、stab36.0、seg39.0、lymph16.0、mono7.0)、RBC496万、Plt14.4万、ESR(1hr)32.0、CRP4.57、AST41、ALT14、LDH778、Fe97、フェリチン1217.1、RF2.8、sIL-2R973、EBV 抗VCA IgM10未満、IgG20、抗EBNA10、ANA40未満、血清補体価61.6、CD4/CD8比0.65。体幹部CTにて両側腋窩に最大3cmの多数のリンパ節腫大あり、肝脾腫なし。骨髄像では血球貪食像を含め特記すべき異常なし。レボフロキサシン等内服、補液にて加療し、日中37℃台、夜間38℃台の発熱が続くためNSAID投与した。13日より嘔気は改善、CRPも徐々に低下したが、WBC低値が続き17日にはLDH884まで上昇した。24日に解熱、25日にはWBC3000、CRP1.0、LDH511と改善。25日に腋窩リンパ節生検施行し、腫大したリンパ節内に核崩壊産物を混じた壊死巣が不規則に地図状に分布し組織球の混在を認め、類上皮肉芽や膿瘍形成を認めず組織球性壊死性リンパ節炎と診断、経過観察となった。組織球性壊死性リンパ節炎は1972年に菊池らにより報告された疾患である。10~30代の女性に多く、症状は発熱、リンパ節腫大が主体で、腫大リンパ節は頚部に多いが、顎下、腋窩、鼠径リンパ節や扁桃の腫大を認めることもある。多くの症例で数日から数十日にわたり白血球が4000以下に減少し、AST、ALT、LDH、CRP、フェリチンの上昇、赤沈の亢進を認める。伝染性単核球症、悪性リンパ腫、血球貪食症候群等が鑑別の対象となるが、腫大リンパ節の生検で壊死巣と組織球・大型リンパ球の増殖を認め好中球の浸潤は認めないことより診断される。対症的にNSAIDが投与されるが遷延する例にはステロイドが投与される場合もある。1~3ヶ月で自然治癒し予後良好な疾患で再発率は4%程度である。原因不明の白血球減少、リンパ節腫大を伴う発熱では当疾患も念頭に置くべきと考えられた。
  • (心血管疾患患者との比較)
    藤原 美和子, 佐々木 司郎, 高橋 俊明, 林 雅人
    セッションID: P1-A3-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    (はじめに)2007年の動脈硬化性疾患予防ガイドライン改定により、動脈硬化退縮に果たすHDL-C値管理の重要性が認知されるに伴いLDL-C(L)/HDL-C(H)比が重視されるようになった。今回我々は当院の住民健診受診者5415名を対象に、L/H比と生活習慣病関連因子の関係から冠動脈疾患の新指標としてのL/H比の有用性を検討した。また、初診でCAGを施行し、冠動脈に75%以上の狭窄を有する90名を狭窄群として健診群と比較した。
    (結果)健診群において女性はリスク数、L/H比の平均値が加齢により増加したが、男性では50代をピークに加齢で減少した。L/H比>2以上の男性は40、50代で57%と最も高く、女性では70代でも43%と低かった。また、健診群と狭窄群について、L<100_mg_/dl、H<40_mg_/dlをA群、L>100、H>40をB群、L<100、H>40をC群、L>100,H<40をD群とする4群に分け比較したところ低HDL-C値であるA,D群割合は狭窄群で有意に多かった。L/H比高値の要因は、LDL-C値の高値又はHDL-C値の低値であるが、高LDL-C値より低HDL-C値が狭窄の予測判断材料になり得る事が考えられた。しかし、L/H比が最も低いC群にも狭窄有が33.3%存在していた。この事から健診と狭窄における生活習慣病関連因子リスク数を比較したところ、全群で狭窄群のリスク保有率が健診群より高かった。また、多変量解析により狭窄の有無の判別に最も有用であるのは年齢であり、次いでリスク保有数、性別であった。
    (まとめ)冠動脈疾患の新たな指標としてL/H比は重要と思われるが、HDL-C値、リスクファクター保有数についても注意が必要であり、特にリスク数が多い場合は積極的な生活習慣指導が重要と思われた。
  • 坪野 由美, 澁谷 直美, 大浦 栄次
    セッションID: P1-A3-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    〈はじめに〉当センターではH19年のシステム導入時に個人の健診結果の経年変化(トレンド)グラフ作成を自動化した。トレンドをグラフ化し受診者に情報提供することによって問題意識につながり、生活習慣改善意欲向上に効果があるか検討したので報告する。
    〈方法・対象〉対象者は平成22年4月から1ヶ月間に、当センターで日帰りドックを受診し、アンケート調査に同意を得られた健診過去歴が3回以上ある者(男151名・女149名)300名。アンケートはグラフを見た後、7つの健診項目(体重・血圧・中性脂肪・HDL・血糖値・尿酸・γGTP)についての問題意識、生活習慣改善意欲等についての自記式調査用紙である。
    (結果及び考察)アンケート回収率は86.4%。トレンドグラフを見て「初めて問題があると思った」(以下初めてとする)と「以前から問題があると思っていたがさらに強く問題があると思った」(以下さらに強くとする)という問題意識ありの割合は男女とも血糖値の項目で最も高かった。対象者をトレンドで上昇群・変化なし群・減少群にわけて問題意識ありの割合をみると上昇群の血糖値、血圧の項目で割合が最も高く約60%であった。またγGTP、HDL、尿酸の項目について問題意識ありの割合が約30%と低かった。
    生活習慣について「積極的に改善」と「少しは改善しなくては」を合わせた改善意欲の割合は上昇群の体重、血糖値の項目で最も高く約60%であった。しかしγGTP、HDL、尿酸については上昇群でも改善意欲の割合は約30%であった。
    健診結果のトレンドをグラフ化することで生活習慣改善意欲につながる傾向がみられた。しかしHDL等項目によっては理解が乏しい、関心が低い等から他の項目に比べると生活習慣改善意欲は低かった。今後さらに症例を増やし、トレンドグラフの生活習慣改善に関する有効性や活用法について検討していく必要がある。
  • 片山 香菜子, 坂口 身江子, 布谷 佳子, 鈴木 亜湖, 天野 早紀, 築山 こずえ, 岩田 佳子, 稲垣 弘, 山田 晴生
    セッションID: P1-A3-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 我々は、対象者自らが振り返り健康生活を営めることを目標とし、参加型の保健指導を行ってきた。平成20年度は、対象者間の相乗効果が期待できるグループ指導を積極的に導入した。また対象者自らが記入する過程で生活習慣の振り返りと行動目標の設定が可能な「健康づくりシート」、対象者の体重変化と行動目標の達成状況を毎日記録しセルフモニタリングを習慣付ける「記録つけましょうダイアリー」等の教材を作成し使用してきた。 更に平成21年度は_丸1_指導内容の標準化、_丸2_指導期間中の各段階における対象者の生活習慣改善の取り組み状況を客観的評価する、を目的にクリティカルパスを作成し、これを用いて特定保健指導を実施した。 【対象と方法】 クリティカルパス(以下パス)の構成:パスの時間軸は厚労省指針に準拠し、各指導回を一つの段階とした。各段階に_丸1_ねらい、_丸2_観察項目、_丸3_具体的な指導内容、_丸4_取り組み状況の評価を定めた。取り組み状況の評価については、体重の増減等の具体的数値の他に、遠隔支援中の行動計画の実施状況に基づく対象者の意欲を加味した5段階スコアを考案し、「スコア」に応じた指導上の対応も定めた。 パスを用いた特定保健指導の実施:当センターにおいて特定保健指導を契約した対象者の内の約50名に対し、パスを用いた指導を実施した。 【結果と考察】 パスにより指導内容を統一したことにより、グループ指導を含む参加型・体験型の保健指導を指導者間で標準化し合理的に実施することが可能となった。 各段階の取り組み状況の評価を「スコア」化したことにより、対象者の生活改善の意欲や達成状況を客観化し、指導者間で共有することができた。また取り組み状況に問題のある対象者に早期に共通の対応が可能となった。  今後は症例数を増やし、各段階の評価としての「スコア」の妥当性やパス化による最終達成率の改善につき検討していきたい。
  • ~1年を振り返り~
    東 千穂, 長田 恵美子, 川村 洋子, 米川 直子, 増本 順子, 久保 知子, 碓井 裕史
    セッションID: P1-A3-4
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】健康運動指導士は、個人の心身の状態に応じた、安全で効果的な運動を実施するために運動プログラムの作成および指導を行う。平成21年4月当センターでは保健師がこの資格を取得し、保健師業務と併せ活動している。健康運動指導士としての1年を振り返り、これまでの活動について報告する。
    【活動実態】
    1)特定保健指導における運動指導
    特定保健指導の積極的支援では運動量を増やし減量を希望する人を対象に、「もりもり運動コース」を設けている。平成21年度、男性1名がこのコースを選択した。腰痛改善を兼ねた筋力強化運動を立案し、継続可能な運動を実施してもらった。6ヶ月後、減量目標は達成できなかったが、腰痛は緩和した。
    2)JA組合員対象の健康運動教室
    県内JAグループの依頼により組合員を対象とした健康運動教室を5回実施した。25~30名程度が参加し、65歳以上の高齢者が大半を占めていた。運動の楽しさ、心地よさを体感してもらい、柔軟性・筋力の向上を目的とした運動を行ってもらった。安全配慮のため、年齢に応じた軽い負荷の運動を取り入れた。参加者から「体が軽くなった、自宅で行ってみる。」という反応があり、和やかで笑いの絶えない雰囲気で行った。
    3)JA助けあい組織リーダー対象の運動講習会
    ミニデイサービス・元気高齢者の集会等を行うボランティアリーダーを対象とした運動講習会を実施した。組織で活用できるように、簡単なレクリエーション、パートナーストレッチを紹介した。参加者より「地域に持ち帰り、取り入れられる簡単な運動であった。地域の集いでも早速活用したい。」という反響を頂いた。
      【今後の展開】_丸1_特定保健指導受診者の増加が予想されるため、より効果的な運動指導プログラムの作成を検討している。_丸2_運動指導能力の向上に努め、JA高齢者福祉の発展に貢献していきたい。
  • 百都 健, 鈴木 啓介, 三瓶 一弘, 中村 元, 田辺 直仁
    セッションID: P1-A3-5
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    はじめに】佐渡島において生活習慣と動脈硬化性疾患の関係を明らかにし、その予防に役立てるために佐渡コホートを立ち上げた。現在7年目の追跡を行っている。今回はコホートの概要ならびに平成22年2月までの追跡の結果を報告する。
    対象と方法】平成14年、15年に実施された住民検診の受診者ならびに当院の人間ドック受診者のうち本調査を理解し、これに同意した島民を登録した。登録時に身体計測、血圧・脈拍測定、心電図、血液、尿検査および質問紙を用いた食事、身体活動ならびに病歴調査を行った。登録後毎年、全死亡と脳卒中、心筋梗塞等の発症を追跡している。追跡は毎年佐渡市から住基情報および検診情報の提供を受け、その情報をもとにアンケート調査を行い、必要に応じたカルテ調査により行っている。全死亡、心血管疾患(急性心筋梗塞と全脳卒中)罹患における危険因子(喫煙、飲酒、血圧、血糖、脂質、心房細動など)は性年齢を補正した多変量補正コックス比例ハザードモデルにより分析し、危険率5_%_以下の項目を有意な危険因子とした。
    結果】登録者は男性3526名(平均年齢65.2才)、女性4936名(平均年齢64.3才)、合計8462名だった。
    平成22年2月までに491名が死亡した。このうち273例の死因をカルテ調査から確定した。がん死129例、血管障害による死亡は40例だった。120例の初発脳卒中および34例の初発急性心筋梗塞を観察した。全死亡の危険因子として、喫煙、やせ、高血糖、脳卒中の危険因子として高血圧、高血糖、心房細動、心筋梗塞の危険因子として低HDLコレステロールが抽出された。 結語】佐渡島において8462名からなる、生活習慣と死亡・疾患発症の関連を明らかにすることを目的としたコホートを立ち上げ、追跡を行っている。結果の一部を報告した。
  • 佐々木 司郎, 高橋 俊明, 林 雅人
    セッションID: P1-A4-1
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)喫煙を主な原因とする慢性閉塞性肺疾患(COPD)は日本においても罹患数、死亡率が増加傾向にあり、世界的に啓発活動が行われている。そこで秋田県南部横手地域におけるCOPD実態を見る為、人間ドック受診者のスパイロメトリー結果から肺年齢を算出し、特に喫煙との関連をみるとともに、生活習慣病関連因子との関係をみた。 (対象及び方法) 対象は平鹿総合病院で行った平成20年度の人間ドック受診者30才代~70才代の男女 1,576名である。スパイロメトリー結果から肺年齢を算出し喫煙との関係等をみた。また、同対象者の生活習慣病関連検査やCRP との関連をみた。 (結果)肺年齢から実年齢を差し引いた年齢差の平均値は男性は実年齢より高く、40才代が最も高かった。女性は全年代で実年齢より低値を示した。喫煙歴別にみると喫煙者は非喫煙者に比べ有意に肺年齢が高く、喫煙の影響がはっきりと現れていた。肺年齢評価でCOPD疑いとされた率は男性4.5%、女性1.9%でNICE Study等の全国値より低率であった。また喫煙者でも年齢差がマイナス群はプラス群より生活習慣病関連因子異常保有数およびCRP 値が有意に低かった。 CRP値を目的変数とし、血圧、血糖、脂質、尿酸、年齢差を説明変数とした重回帰分析を行ったところ、年齢差は喫煙歴等に関わらず他の項目より CRP値との関連が高かった。 (結論)COPDは全身疾患であり、肺の生活習慣病であるという多くの論文の意見が CRP値や血圧など他の生活習慣病因子との関連等で今回の集計から裏付けられた。今後、一般健診においてもスパイロメトリー導入を検討する必要があると思われた。
  • 中西 一夫, 板井 きみ, 菊地 誠
    セッションID: P1-A4-2
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    <はじめに>当院ではCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の早期発見、禁煙指導を図ることを目的に平成20年12月より人間ドック受診者に肺年齢とCOPDの評価コメント、説明を印刷してお渡ししている。今回肺年齢と実年齢について比較検討したので報告する。 <方法>人間ドックの呼吸機能検査データ(平成20年12月~平成22年3月の男性642名、女性160名)から喫煙群、非喫煙群、性別、年代で肺年齢を比較検討する。 <結果>_丸1_性別年代の比較で男性の実年齢と肺年齢を比べると40才以下の平均で9.1才肺年齢が高く、41-60才が8.4才、61才以上で7.5才、全体では8.4才肺年齢が高い。 女性は差が見られず全体で1.3才肺年齢が低い。 _丸2_喫煙群と非喫煙群で比較すると男性は喫煙群の肺年齢が実年齢を平均で9才高く、非喫煙群は4.9才高い。 女性は喫煙群の肺年齢が実年齢より平均で2才高く、非喫煙群では2才低い。 _丸3_実年齢より21才以上肺年齢が高い群は人間ドックの判定で46.7%異常となった。 <考察>_丸1_男性では若い世代ほど実年齢に対して肺年齢が高い傾向が見られる。 男性の肺年齢が高いのは一秒量基準が男性に厳しく設定されていることも要因と考えられる。 _丸2_喫煙により肺年齢が高くなることが示唆される。 <まとめ>肺年齢を知ることで肺の健康意識を高め、健康維持や禁煙、呼吸器疾患の早期発見、治療に繋がると考えられる。今後もわかりやすい表現である肺年齢を活用していきたい。
  • 小池  智子, 佐藤 涼子, 安保 まり子, 大谷 雅也, 菊地 孝哉, 佐藤 重雄, 矢崎 憲二, 菊地 顕次
    セッションID: P1-A4-3
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/01
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     日本呼吸器学会では、呼吸機能検査の指標として、肺の状態を年齢で表す肺年齢という概念を提唱している。当院で健診時実施した肺年齢測定の検査成績を検討したので報告する。
    【対象および方法】
     平成21年11月~翌3月までの期間、人間ドック受診者のうちスパイロメトリーを実施した567名(男性318名、女性249名)。  肺年齢から実年齢を差し引いた数値を年齢差としてA・B・Cの3群に分類し比較した。B、C群を要精査とした。
    A群:実年齢との差が5才未満
    B群:実年齢との差が5才以上15才未満
    C群:実年齢との差が15才以上
    【結果】
    1)どの年代も男性に肺年齢が高い傾向がみられた。男女ともC群の割合が最も高いのは30代で男性25.9%、女性18.8%であった。年齢が高くなると徐々に低下傾向を示した。喫煙率は男性31.4%、女性8.8%、30代男性が最も高く53.8%だった。
    2)喫煙者群の実年齢差の平均は+2.5才、喫煙歴のある群-2.3才と正常範囲、非喫煙者群は-7.2才と実年齢より若い肺機能を示した。
    3)B・C群152名(26.8%)を要精査とし、3ケ月以内の受診率は28.9%であった。精査の結果、異常なし群18.2%、異常を認めた群(要観察、要医療)が81.8%で、喘息、COPD、肺気腫、肺腫瘤などの疾患が確認された。
      【まとめ】
     喫煙率が高い男性、特に30代の若年層に肺機能低下の傾向がみられた。実年齢差の平均で喫煙者群が高い数値を示したことからも、喫煙が肺機能に影響を及ぼしていることが伺える。精査の結果、COPDをはじめCOPD以外の疾患も確認されたことから、肺年齢測定は呼吸機能障害を伴う疾患の早期発見に有効であることが示唆された。
feedback
Top