以上論述した事柄を要約すれば次のやうである
A. S. P. L. Sörensen氏の卵アルブーミン溶液の滲透壓に關する研究及びJ. Loeb氏が蛋白質溶液に就て其の滲透壓及び膜ポテンシヤルを測定したることを引例してDonnan氏のThe Theory of Membrane Equilibriumが蛋白質物理化學の進歩上極めて有用であることを示した然しこのTheoryも近來のThe activity theoryから解釋すればThe electric Potential difference E
Mは次式によつて示さるべきである
E
M=RT/F ln a'/a'' ………………………………………(1)
但しa'及びa''は膜の兩側に於ける一價の瀰散性イオンの一つが平衡状態に達した時の活度を示すのである
B. 膜ポテンシヤルを測定する爲めには次のElementを用ゐた
Hg, HgCl, 0.1nKCl|3.5nKCl|蛋白質溶液∥膜∥外液|3.5n KCl,|0.1n KCl, HgCl, Hg,勿論蛋白質溶液内の瀰散性イオンは外液のうちにあるものと共に(1)式によつて律せられるのである
そして本節に於ては著者が考案した膜ポテンシヤル測定用の裝置並に其の運用法を詳細に記述しなほ併せて此の種の實驗に於てはAll the Systemを裝置してから少くとも36-48時間後にMembrane Equilibriumに達することを實驗的に示した
C. J. A. Christiansen氏が主として考案した裝置と方法とによればCasein chloride及びNa-caseinateの溶液の一定滲透壓を合理的に求め得らるヽことを實驗證明した
D. 第B節及び第C節にて説明した方法によつてCasein Chloride solutionの膜ポテンシヤルと滲透壓とを測定して得た結果によれば此等の二つの實驗値は溶液内の水素イオンの活度が高まるに從つて減少するのである著者は此の現象の主なる原因を鹽酸の二疊の作用に期したのである即ち鹽酸の水素イオンはカゼインのイオン化に對して働き鹽素イオンはカゼイン溶液のSalting outに對して働くものである
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