(1) 發芽中給肥しない場合に於て生成せられるVitamin Cの量は光線に依つて影響せられる事比較的少ないことは實驗した所であるが,これも發芽期間を長くして試驗すれば光線下のもの漸次優り其の差も明瞭となつた.
(2) 發芽中給肥した場合(圃場に播種)は光線の影響極めて明瞭であつて,暗所のものは光線下のものに比し約1/4の含量に過ぎなかつた.
(3) 1尺5寸位に成長した大麥が4尺位に伸張し開花し始めるに至るまで覆を作つて光線を遮斷した試驗に依れば,光線下のものは暗所のものより優り約4倍の含量であつた.
(4) 成長中の大根を覆つた場合に於ても光線下のもの優り,暗所のものの4乃至5倍の含量であり,光線下のものは暗所のものに比し總重量遙に多いので該期間中生成せられたVitamin Cの總量は光線下のものが激十倍であつた.
(5) 温州蜜柑に於で結實後15日に至り果實のみを光線から遮斷した結果によれば,兩者の差は比較的僅少であつて太陽光線下のものは,被覆したものに比して約2倍含量であつた.
(6) 植物の生活中生成せられるVitamin Cの量には光線は明瞭に影響を與へ,試驗期間の長い場合に於て影響が一層明瞭であつて,特に植物體全體を長く覆つた場合はVitamin Cの生成は極めて少いものであつた.
(7) 以上の實驗結果より推斷すれば植物の生活中Vitamin Cが生成せられる爲めには,必ずしも光線を必要とせずして暗所に於ても尚ほCが生成せられる事は確かの樣である.
然し乍ら共の際,生成せられるVitamin Cの量は光線の存在により著るしく影響せられ,暗所に長く生活せる植物體中にては漸次其の含量を減するのである.
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