1. 精白高粱は炭水化物の全量に於て糯米よりは少ないが粳米と略同等であつて,粟よりは多い.水溶性糖類が米及粟より少ない.殊に糊精に乏しいのは其成分上の一特異である.
2. 精白高粱は米及粟よりも一定容量の重量が幾分大である.
3. 精白高粱の淘洗程度並に損失量は精白度により異り,高度精白品に於ては米と大差ないが,精白度低き場合は淘洗の程度は煩雜となり損失量は増大す.水淘洗に於ては溶解損失量よりも機械的損失量が多い.アルカリ淘洗に於ては蛋白質は機械的損失によるよりも溶解による損失の方が多く,反之全糖は溶解損失よりも機械的損失に於て多い.アルカリ淘洗は水淘洗よりも全損失量が多い.
4. 吸水能力は各原料を通して糯は粳よりも約1.1倍大である.粳精白高粱の吸水能力は粟と略同等で,粳米より約1.3~1.5倍大である.
5. 精白高粱の浸水膨潤能力は高粱の種類,新古により異り,古高粱は新高粱よりも幾分該能力が大であり,貯藏により之を増大す.該能力も亦各原料を通して糯は粳より大,粳高粱は粟及粳米より大である.
6. 蒸炊による膨潤能力(釜殖)は添加水量により異り,水量多きは少きよりも膨潤大である.添加水量同一の場合は高粱の種類及新古により異り,同一高粱にありては貯藏により膨潤能力を増大す.又子實稔實程度により異り稔實不良なるものは該能力小である.精白高粱の該能力は米よりも小であり,各原料を通して糯は粳よりも大である.
7. 稔實不良なる精白高梁は蒸炊後水中に投じて攪拌する場合塊團の粘結強く,各粒を離解し難い場合あるが,一般には極めて容易に各粒に離解し得る.且つ蒸炊高粱は之を水中に投ずる場合“緊る”性質あり攪拌するも米飯の如く粒の崩壌が甚しく無い.此性質は精白高粱を製飴に供する場合其蒸熱工程に於て利用すべき一特性と考へる.(昭和10年12月25日)
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