(1) 國内にて生産せられたる9種のButter,3種のCheese,3種の生乳,2種の粉乳及び1種の酸乳計18種の試料より72株の乳酸生成菌を分離し其の分類的諸性質を研究せり.
(2) 分類はGram染色,形状,Catalase反應,醗酵形式,醗酵性糖類の順位に從ひたり.
(3) 第一群Streptococcusは38株にしてSc. cremoris 3株, Sc. thermopilus 9株, Sc. lactis 9株, Sc. faecalis 13株, Sc. glycerinaceus 2株及びSc. liquefaciens 2株に分類し得たり.
(4) 第二群Leuconostocは8株を得これをLeuc.dextranicum 5株とLeuc. mesenteroides 3株とに分類し更に後者は果糖の醗酵生産物として主としてMannitolを造るもの2株と主としてEthyl alcoholを造るもの1株とを區別し夫々α-type及びβ-typeとせん事を提案せり.
(5) 第三群Tetracoccusは9株あり.総てTetracoccus liquefaciensの1種とせり.
(6) 第四群Lactobacillus (Streptobacterium)は10株にして之れをL. casei 6株, L. acidophylus 3株及びL. bulgaricus 1株に分類せり.
(7) 第五群Lactobacillus (Betabacterium)は2株にしてLeuconostocに於けると同様L. brevis α-type1株とL. brevisβ-type1株に分ち得る事を指摘せり.
(8) 第六群に分類せる3株の桿菌は形状以外の一般的性質良く第三群に一致し乳酸菌としては異常なるものなるも蛋白分解作用旺盛にして牛乳中にCheese特有の香を生産する未だ文獻に見ざる菌種なるを以てこれにBacterium caseolyticumと命名せり.
(9) 第七群Escherichiaに屬するもの2株はEsch. coli.なるべきを推論せり.
(10) 嚢に著者等が生〓より分離せるLeuconostoc mesenteroides var. Sake及7びLactobacillus Sakeを夫々同群なる今囘分離せるLeuonostoc及びLactobacillusと比較し生育條件の差違が乳酸菌の淘汰作用を行ふ事實を確認せり.
(11) 各菌種に就きて其の乳及び乳製品中に於ける分布及び利用方面に關し若干の考察を加へたり.
終に臨み本研究は恩師片桐教授の乳酸醗酵に關する研究の一部として行ひたるものにして同教授には終始御懇篤なる御指導を賜りたり.茲に謹みて御禮申上ぐ.
尚試料蒐集に助力を與へられし北海道並に岩手縣の畜産組合聯合會,栗太農學校松下教諭,盛岡高農山岸教授,實験に協力せられし林田,青山兩君等に謝意を表す.
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