(1) 著者の一入朝井
(8)は古く
Gluconoacetobacter liquefaciens nov. sp.を使用し, galactoseの醗酵生産物としてgalactonic acid及びcomenic acidを見出し,又前報に於ては
Ps. 33Fを使用しgalactoseよりgalactonic acidの生成に就て報告したが,今回新たに
Pseudomonas fluorescens liq.が振盪培養に於てgalactose及びgalactonateを酸化して2-ketogalactonic acidを生成する事実を見出してこれを確認した.
(2) Galactoseより2-ketogalactonic acidへの酸化の状況を還元力及び溶存Caの状況より観察するに一度急速にgalactoseの還元力が減少し,次に徐々に再び還元力が増大して来る.最初に於ける還元力の減少は同時に溶存Caの増大を伴い,前報に報告する如くこの時期に於てgàlactonateの生成が認められる事実及びこれに続く還元加増大の後に2-ketogalactonateが分解確認された事実よりしてgalactoseがgalactonateに酸化された後,更仁2-ketogalactonateに酸化せられるものである事は容易に想像される所である.
(3) J. J. STUBBS等
(9)はglucoseより2-ketogluconic acid及び5-ketogluconic acidの生成状況を観察し, 2-ketogluconic acid生成の場合には中途にgluconic acidが集積せられず,直ちに2-ketogluconic acidの生成が見られるが, 5-ketogluconic acidの場合には一旦glucoseがgluconateに酸化せられ, glucoseが大部分gluconateになつた後始めて5-ketogluconateへの酸化が行われる事実を認めた.これを著者等の2-ketogalactonateの生成に就て見るに,一応galactoseよりgalactonateへの酸化が行われ,galactopateが集積した後に2-ketogalactonateへの酸化が行われる点,酸化のtypeはJ. J. STUBBS等の5-ketogluconic acidの場合に比せられる.
Ps. fluor. tiqによる2-ketogluconateの生成に就て池田
(10)は酵素的な研究を行い, glucose酸化酵素よりもgluconate酸化酵素の方が強力である為に中間にgluconateの集積が見られぬ事を示した.然るに同じ2-ketohexonic acidの生成に於て2-ketogalactonic acid生成の場合にはむしろgluconate酸化酵素がglucoseが完全にgluconateに酸化された後に始めて活性化されると考えられている5-ketogluconate生成のtypeに属する事は興味深い.
(4) Galactoseを基質にした場合にCaCO
3の量をやや過剰に加えるとgalactonateの生成後2-ketoga-lactonateへの酸化が極めて遅く, CaCO
3がやや不足で完全に溶解し, pHが若干酸性側にある時に好結果を与える事実が認められたので,
Ps. fluor. liq.に就て試験した結果galactose→galactonic acidの酸化はpH 3.5~8.0に於て著しい差は無いが, galactonic acid→2-ketogalactonic acidの酸化はpH 4.4~5.2に於て速かに行われるが, pH 6.0~7.0に於ては遅く, pH 8.0に於ては殆んど行われない事を見出した.
(6) 試験した範囲内に於てはglucoseより2-ketogluconateを生成する
Pseudomonasの菌株は何れもgalactoseより還元性物質の生成を認め, glucoseよりgluconateを生成する菌株に於ては還元性物質の生成は認められなかつた.これら還元性物質生成の状況は何れも
Ps. fluer. lig.の場合と同様であり, 2-ketoga-lactonateであると思われる.
(7)
Ps. fluor. liq.のcell suspensionによつてCa-
d-gluconate, Ca-
d-galactonate, K-
d-xylonateより還元性物質の生成が認められたが, Ca-
d-arabonateよりの選元性物質の生成は僅かであり, Ca-
d-man-nonateの場合には還元力の増加は認められなかつた.
(8) 糖の化学構造と酸化の関係に就てみるに
Ps. fluore. liq.はglucoseよりgluconateを経て2-keto-gluconic acidを, galactoseよりgalactonateを経て2-ketogalactonic acidを生成する事実が確認されなた.又GRAY
(5)によつて
Ps. mildenbergiiが
l-idonic acidより2-ketogulonic acidを生成する事実が知られている.これらの化含物はFig. 4に見る如く何れもC
2,C
3のOHが
trans型である.然るに
cis型の
d-mannonateに於てはC
2の酸化が行われなかつれた.
最後に元素分析は東大農化の元素分析室にお願いした.ここに記して感謝の意を表する.尚本研究費の一部は文部省科学研究費に仰いだ.
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