1. 微生物の酒精醗酵に際し副成するAcetaldehydeの成因に就て考察するに其大部分は酒精の二次的酸化に由来し假りに糖類より酒精に至る中間體の殘存するものありとするも之は極めて小部分に過ぎざる事を證したり
2. 各種微生物のAcetaldehyde生産能を比較するにWillia, Moniliaは多産の部類にして眞正酵母之に次ぎTorula, Pichia, Chalara, Oidium黴類は微量の生産(?)あるに過ぎず
3. 微生物のAcetaldehyde生産好適條件を温ぬるに糖液の酒精醗酵に於ける場合影響する主要なる因子は糖液の濃度,培養温度,培養期間の三者にして15-20% 25-30°C-30°C 20-40日目にAldehydeの最高量に達すると雖も既に此の際は全く酒精の酸化の場合の好適條件に一致する事前記糖分濃度に於ける酒精生産量後者の最適條件たる酒精の5-8%に達するにより明なり換言せば酒精醗酵終了直後のAldehyde量は常に僅少なるものに過ぎず
酒精酸化の場合に於て亞硫酸鹽を添加する時は然らざる場合と異り好適濃度は1-5%の間にあり添加する酵母量の影響大なるはTrillat氏の研究にて明なり
4. Aldehyde生産に對する送氣の影響大なるはLaborde氏等の研究結果に一致す然れども酒精溶液は酵母の存在に於ては全く静置せる場合と雖も眞空又は酸素瓦斯を脱除し置かざる限りAldehydeの増量を認めらる
5. 清酒後熟の場合に於けるAldehyde増量は其の火入前迄は一般酒精醗酵副産物としての考察により説明し得らるべく火入後のものに於ては之を内的原因に求むられば火入を逃れたる微生物並に夫等の有するAlkoholdehydrase作用に歸する事を得べし
終りに本實驗に關し種々有益なる御助言を賜はりし黒野博士の御厚意を深謝す
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