日本農芸化学会誌
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30 巻, 11 号
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  • (第1報)澱粉糊の粘弾性の測定
    高橋 静枝, 木原 芳次郎
    1956 年 30 巻 11 号 p. 665-670
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    馬鈴薯澱粉は組成中に多価電解質の分子を有し,高弾性の糊を形成する特性をもつので,市販馬鈴薯澱粉を用いて, E. HATSCHEK, H. J. POOLE等の方法と同様の原理のレオメーターにより,糊の糊化条件,放置時間,界面活性剤の添加等の粘弾性率への影響,糊の弾性率の温度による変化,及びアミロース,アミロペクチンのアルカリ糊化糊の粘弾性率の測定を行つた.
    1) 水中加熱の糊は,攪拌,加熱の温度及び時間等の糊化条件が粘弾性率,老化速度に著しく影響する.
    2) 攪拌,濾過による澱粉粒の機械的破壊などによつて,糊の粘弾性率は減少し,且つ,老化の速度も遅延する.
    3) オートクレーブで処理した糊とアルカリによつて糊化した糊との粘弾性率は近似しており,澱粉の分散状態の類似していることが推測される.
    4) 糊化条件の異る澱粉-水糊にpolyoxyethylene sorbitan monostearateを澱粉重量の1%添加した結果, (a)糊化不十分の糊に添加した場合は,対照に比較して粘弾性率がやや増大し,且つ,著しく老化を抑制する効果を認めた. (b)糊化の比較的十分な糊に添加した場合には,粘弾性率は共に減少して,剪断応力に対して流動しやすい糊になつた.しかし,老化の抑制に対する顕著な効果は認められなかつた.
    5) 澱粉-水の常圧及び加圧糊化した糊について,弾性率の温度による変化について測定した. (a) 16.4~55°の範囲においては20~30°附近で弾性率がやや上昇するが,大体において,温度の昇降に伴つて弾性率は可逆的に低下,上昇する.また, 60°において弾性率の上昇がみられ,これは糊中の未糊化の部分の糊化が僅かに進んだためであろう. (b) 16.4~80°に亘る広範囲の温度の実験において,同様に60~70°においての弾性率の上昇がみられ, (a)及び(b)より60°附近に糊化開始温度があるであろうと推考した. (c)オートクレーブで処理した糊においては, 60~70°における弾性率の増加はなく,却つて著しく減少し, 80°において再び増大する傾向が観察された.このことについては今後実験を重ねたい.
    6) アミロース,アミロペクチンのアルカリ糊化糊の粘弾性率の測定実験を行い, (a)アミロースは騨性のみでその値は高く,且つ,放置時間と共にほぼ直線的に増加する.これは急速に部分的ミセル形成が行われ,網目構造が発達するためであろうと考えられる. (b)アミロペクチンは粘弾性的で,その値はアミロースに比較して非常に低い.また老化速度もアミロースより遙かに緩徐であり,これは分子の分枝していることや静電気的粘性効果のためであろう. (c)アミロース20%,アミロペクチン80%の割合に混合した糊液では,糊は粘弾性的であるが,その弾性率は(b)より更に低く,且つ,短時日で老化した.
  • (第2報)産地を異にする馬鈴薯澱粉の性状の比較
    高橋 静枝, 木原 芳次郎
    1956 年 30 巻 11 号 p. 670-675
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    北海道産及び長崎県産の馬鈴薯,農林1号から,再蒸溜水を用いて製造,精製した澱粉及び実験室において再精製した市販馬鈴薯澱粉についてE. HATSCHEK, H. J. POOLE等と同様の原理のレオメーター及びBrabender amylographを用いて,澱粉-水糊,澱粉-KOH糊の粘弾性率の測定,各澱粉試料の糊の光線透過率及び離液速度の測定を行つた.
    また,馬鈴薯澱粉糊の流動学的性状に影響する因子のうち,電気的粘性効果を示すアミロペクチン部分の燐酸の定量,燐酸の水素イオンと置換している可能性のある金属イオンのうち, K, Na, Caの定量及び澱粉のヨウ素による青色値の比色測定を行つた.その結果は次のごとくである.
    1) 各試料の5%澱粉-水糊のBrabender amylogramは相当の差異を示し, (a)北海道産の澱粉は長崎県産の澱粉に比較して膨潤が速く最高粘度が高い.
    (b)市販澱粉(29年)は膨潤しにくく糊化が不十分である.
    2) Brabender amylographによつて糊化した5%の各試料の糊の光線透過率については, (a)北海道産の澱粉は長崎県産の澱粉よりも光線透過率が大であつた. (b)市販澱粉(29年)はやや小であつた.
    3) 各試料の糊の離液の速度は,長崎県産のものは北海道産のものに比して著しく速かつた.
    4) Brabender amylographによつて糊化した5%の各試料の澱粉-水糊をレオメーターを用いて測定した粘弾性率は, (a)北海道産春(30年)は長崎県産春(30年)より弾性率,粘性率共に高い. (b)長崎県産(29年),及び市販澱粉(29年)は弾性のみで粘性流動はみられなかつた.
    5) アルカリ糊化による各試料の長時日に亘る粘弾性率の測定から, (a)市販澱粉(29年)は29時間後に弾性率,粘性率が最高に達し,放置により急速に減少してゆくので,この澱粉が糊化に際して分散しにくく変質している. (b)長崎県産の澱粉は北海道産の澱粉より分散状態が悪い.これは,最高の弾性率は両者とも近似しているが,粘性率は長崎県産の澱粉の方が当初から高く最高値も高いので,北海道産のものの方が分散しやすいことが明かである. (c)長崎県産(29年)は材料が不適当で,澱粉が変質している可能性があるなどのことが推考された.
    6) 馬鈴薯澱粉糊の流動学的性状に影響する因子のうち,電気的粘性効果に関係のあるP, K, Na, Caの定量を行つた結果(a) P, K, Naの含有量は北海道産の澱粉中に多く,長崎県産の澱粉中には少かつた. (b) Caの含有量は市販澱粉中にやや多かつたが,産地間の差は認められなかつた.
    7) 各澱粉試料及びアミロース,アミロペクチンのヨウ素による青色値の測定を行つた結果,各澱粉試料間には大差がなかつた.
  • 木原 芳次郎, 多田 節子
    1956 年 30 巻 11 号 p. 675-677
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
  • (第3報)白菜片培養菌のペクチン物質代謝と菌の不均質性について
    藤井 義紹
    1956 年 30 巻 11 号 p. 678-682
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
  • (第1報)脂肪食の栄養に及ぼすフラビン,コリン及び蛋白の影響
    小柳 達男, 勝又 悌三
    1956 年 30 巻 11 号 p. 683-686
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
  • (第2報)ラッテの肝臓,腎臓のコリン含量,コハク酸酸化酵素及びコリン酸化酵素に及ぼす飼料中脂肪の影響
    小柳 達男, 中館 興一, 渡辺 順子
    1956 年 30 巻 11 号 p. 686-690
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
  • 近藤 弘
    1956 年 30 巻 11 号 p. 690-696
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    ミクロフルオロメーターによる八木のルミフラビン螢光測定法を植物試料に適用するに当り, 2, 3の考察を行つた.
    I. フラビン総量の測定に際しては
    (1) 温水浸出後, TCA処理による測定阻害物の除去法が良好である.その条件を決定した.なお温水浸出に当り稀釈率は40倍以上が望しい.
    (2) フィルターの組合せは植物試料についてもUV-2及びAKA-B2が良好である.
    (3) 植物組織中フラビン含量は一般に葉に多く茎に少い.葉のフラビン含量は新鮮物1g中1.5~7.0γ位で3.0~5.0γのものが多い.組織中特殊な例として,そらまめのへそ中40.0~50.0γ/g,根瘤中8.0γ/gの高濃度が見出された.この有する意義については目下検索中である.
    II. 遊離型-フラビン,エステル型-フラビンの分別定量に際しては
    (1) BzOH処理後,ミルフラビン螢光測定法を適用する測定方式を定め,計算式を提案した.
    (2) 植物組織内エステル型-フラビン/フラビン総量の値は組織により異るが,ほぼ40~70%で動物に比して低い.
    (3) 植物葉中エステル型-フラビン/フラビン総量の値は光の影響,バイラス感染のような諸生理現象に対し,相当動的に行動するように思われる.
  • (第8報)蔗糖から生成される新寡糖No. 2 (Fungitetraose) について
    倉沢 文夫, 山本 幸正, 伊賀上 郁夫, 中村 寧
    1956 年 30 巻 11 号 p. 696-700
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Asp. oryzaeの蔗糖含有培養液並びに菌体抽出液の作用で蔗糖から生成される非還元性寡糖のうちisokestose(生成される寡糖のうちRF値の一番高い三糖類)の次に生成される糖No. 2について炭素柱の応用とペーパークロマトグラフィの切取抽出法で単離精製し,構成糖(果糖3:葡萄糖1),融点110~115°(無水物),旋光度[α]D=+17.9°,分子量628±20の四糖類,分子式C24H42O21・H2O,更にメチル化により2, 3, 4, 6-tetra-O-methyl-D-glucose, 3, 4, 6-tri-O-methyl-D-fructose及び1, 3, 4, 6-tetra-O-methyl-D-fructoseの存在が推定されたので,その構造はO-α-D-glucopyranosyl (1→2) O-β-D-fructofuranosyl (1→2) O-β-D-fructofuranosyl (1→2) O-β-D-fructofuranosideであると推定しこれをfungitetraoseと命名した.
    終りに当り種種御指導を賜った三宅 捷先生,中村幸彦先生,小幡弥太郎先生,阿武喜美子先生並びに元素分析を担当して下さった東京大学農学部分析室の方方に感謝致します.
  • (第3報)乳酸菌の一株No. 353の栄養について(その3)
    児玉 礼次郎
    1956 年 30 巻 11 号 p. 701-705
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    乳酸菌の一株No. 353の栄養要求性を検討して次の結果を得た.
    (1) B1,リボフラビン,パントテン酸およびニコチン酸アミドは本菌株の生育に必須的に, B6群,葉酸およびビオチンは促進的に要求される.
    (2) B1要求性はチアゾール成分によつて代替されるが,その活性は劣弱でB1の1/500程度に過ぎない.しかしコカルボキシラーゼはB1と分子量的にほぼ等量の活性を示し, B1 monophosphateは約30%低い.
    (3) Tween 80はビオチンの存在下においてもなお生育を促進する.
    (4) プリンは必須的に要求されるが,その要求性は化合物に特異的でない.またピリミジンは必須的には要求されないが,ウラシルは生育を促進する.
    (5) アミノ酸にたいする要求性を決定した.
  • (第4報)乳酸菌の一新種Lactobacillus fructosus nov. sp. について
    児玉 礼次郎
    1956 年 30 巻 11 号 p. 705-708
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    必須生長素としてニコチン酸アミドを要求するだけでなく,迅速,かつ豊富に生育するためにはさらにフラクトースを必須的に要求する乳酸菌の1株No. 353について形態学的ならびに生理学的諸性質を検討した結果,本菌が乳酸菌の一新種であることを認め得,これをL. fructosus KODAMAと命名した.
  • (第8報)尿素-ラクトース系の褐色化機構(その2)緩和条件におけるUrea-lactosideの生成条件とその理化学的性質
    足立 達
    1956 年 30 巻 11 号 p. 709-713
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    緩和条件下の尿素-ラクトース系中に形成されるurea-lactoside生成の2, 3の条件を検討して次の結果を得た.
    (1) pH 3.6以下の酸性溶液中では速かにurea-lactosideが形成されるが,グルコース,ガラクトースでも同様である.
    (2) 酸の存在はurea-lactosideの生成を促進するが,この程度は燐酸,クエン酸が最も大で,塩酸,乳酸,酢酸の順に小となり, urea-glucosideの場合も同様である.
    更に,この形成されたurea-lactosideの構造及び理化学的諸性質の検討を行った.即ち, β-グルコシダーゼによる被分解能,赤外線吸収スペクトル等の結果から,本物質はN-urea-α-lactosideの構造を有し,又, ο-ジニトロベンゼン, cysteine-carbazol, SELIWANOFF反応陰性等の成績から,本物質はAMADORI転位生成物とは認められないことを推定した.
    最後に,本物質の尿素-ラクトース系のアミノ カルボニル反応における褐色化に対する意義について考察を加えた.
  • (第9報)尿素-ラクトース系及び加熱牛乳からのOxymethylene Glycolaldehydeの分離証明
    足立 達
    1956 年 30 巻 11 号 p. 713-717
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) Oxymethylene glycolaldehydeを合成し,その2, 3の性質を検討して,紫外吸収特性を明かにし,又,著しく褐色化しやすい物質であることを示した.
    (2) 高温加熱によって褐色化した尿素-ラクトース系溶液と脱脂乳とからoxymethylene glycolaldehydeと推定される物質をペーパークロマトグラフによって検出し,更にこれを分離して紫外吸収特性を測定し,ジフェニルヒドラゾンに導いて確認した.
    (3) Oxymethylene glycolaldehydeの生成機構について考察を加え,更に基本的なreductoneとして,加熱牛乳のアミノ・カルボニル反応性変化,例えばCO2の発生,風味の変化,還元能の増加等に関与する可能性を示唆した.
  • (第6報)タブ心材の抽出成分
    近藤 民雄, 伊藤 博之, 須田 元茂
    1956 年 30 巻 11 号 p. 717-720
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
  • (第2報)エタノリシス及び関係モデル化合物について
    石原 達夫, 近藤 民雄
    1956 年 30 巻 11 号 p. 720-723
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
  • (第2報)洗滌菌体振盪法及び本法の影響因子について
    塩田 日出夫
    1956 年 30 巻 11 号 p. 724-726
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    1. 使用菌株の洗滌菌体を蒸溜水で振盪することにより振盪培養の最高以上の酵素活性度を有する酵素液が得られる.
    2. 本法によつて酵素を生産させるには好気的状態と完全な細胞が必要である.
    3. 糖,有機窒素源等の栄養源を添加すると酵素の生産は阻害されるが無機窒素源は促進する.
    4. Oxydative phosphorylationのuncoupler,防腐剤等は酵素の生産を阻害し, thioglycolateは促進する.
  • (第2報)胞子の成熟度によるHeat Shock効果のずれ
    本江 元吉, 川島 宏
    1956 年 30 巻 11 号 p. 726-729
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
  • (第3報)育成(その1)
    本江 元吉
    1956 年 30 巻 11 号 p. 729-733
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
  • (第5報)プロピオン酸の酸化(その1)
    市川 吉夫
    1956 年 30 巻 11 号 p. 734-738
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    好気的条件において培養したP. arabinosumの菌体はプロピオン酸及び酢酸を酸化し得る.この酸化反応にはT. C. A.系の酵素群が関与しているものと推論される.プロピオン酸酸化の中間体としてピルビン酸を検出し得た.即ちプロピオン酸はピルビン酸に酸化されたのちT. C. A.系に入るものと考えられ,炭酸固定によつてコハク酸となる過程は主な酸化経路とは考え難い.プロピオン酸適応菌体を用いるとプロピオン酸を炭素源として利用して菌体が増殖する事実を認めた.
  • 第2報
    堀津 圭佑
    1956 年 30 巻 11 号 p. 738-742
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
  • Aerobacter aerogense型Y-11菌によるアルギン酸分解とアルギナーゼの適応的生成
    井上 勝弘, 安藤 芳明
    1956 年 30 巻 11 号 p. 742-746
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    著者等は人糞便よりアルギン酸を適応的に分解する細菌を分離し,その性状及び該細菌によるアルギン酸の分解様式を検討し,次の如き知見を得た.
    (1) 分離細菌は総てAerobacter aerogenes型の異型菌に属し,多くの健康人の糞便中に見出される.該菌の最大出現稀釈度は10-2~10-3,糞便にして最少100~10mgに出現する.
    (II) 分離細菌Y-11菌はアルギン酸を分解して,小分子のウロナイドを経て単一のウロン酸を生じ,更にウロン酸をも代謝消費する.
    (III) 分離細菌Y-11菌のアルギン酸分解酵素(細胞外に分泌され粘度を著しく低下させる作用のあるもの)は適応酵素であり,該酵素の形成は,炭素源としてアルギン酸及びその分解生成物を必要とする.
    (IV) 分離菌Y-11菌が培養濾液に分泌するアルギン酸分解酵素は100°, 120分の熱処理によつて初めて酵素活性が失われる耐熱性酵素である.
  • 松居 宗俊
    1956 年 30 巻 11 号 p. A117-A123
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
  • 篠田 晃
    1956 年 30 巻 11 号 p. A124-A129
    発行日: 1956年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
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