1. 一定の飼料を一定時刻に給与し,飼料給与後一定の時刻に測定した第一胃内液のpHも,日によってかなり大幅の変動を示した.又,1日1回午後1時に飼料を給与した場合は,午前11時測定の平均値に比べて,午後3時の平均値は低く,その差は有意であった.即ち,飼料摂取後第一胃内のpHは低くなる.
2. 第一胃内液のpHと第一胃ガス中のCO
2の関係を検討した結果, pH 7附近の場合,CO
2のパーセンテージが最も低くなり,これより酸性側に傾くに従い,又,アルカリ側に傾くに従って,いずれも第一胃ガス中のCO
2最は増加した.
3. 第一胃内液中のV. F. A.濃度は採食後急激に増大する.又,第一胃内液のpHが7附近のとき,V. F. A.濃度は最も低く,これより酸性側に傾くに従い,又,アルカリ側に傾くに従って,V. F. A.濃度は増大した.
4. 第一胃ガス中のCO
2は,第一胃内の醗酵によって生成するものと,唾液中の炭酸塩に由来するものと2通りあるのと同じに,第一胃内のV. F. A.も,醗酵の結果生成したものと,飼料自体に由来するV. F. A.と2通りの起源を考えて検討すべきものであることが分った.
5. 第一胃ガス中のCO
2量は,採食後2時間と,採食後22時間とでは著しい相異を示すが,第一胃内液中の糖濃度は,採食後2時間の直接還元糖濃度を100とすると,22時間後の値は63であった.第一胃ガス中のCO
2の変化,第一胃内液中のV. F. A.濃度の変化等に比較すると,糖濃度の変化は割合小さかった.
6. 第一胃内の水溶性全窒素の濃度は,採食後2時間の値よりも,採食後22時間の値の方が高かった.第一胃内の醗酵の結果,飼料中の窒素化合物が分解し,水溶性の全窒素量が増大するものと考えられる.
7. Infusoria数の測定値は,採食前2時間と,採食後2時間の平均値は殆ど同じであった.即ち,第一胃ガスの生成とInfusoria数の消長との間には直接の関係は認め難かった.
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