日本農芸化学会誌
Online ISSN : 1883-6844
Print ISSN : 0002-1407
ISSN-L : 0002-1407
33 巻, 10 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
  • へミセルロースB1を構成する糖としてのフコースの検出
    川村 信一郎, 楢崎 丁市
    1959 年 33 巻 10 号 p. 817-821
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
  • 分泌物の分離同定法の検討
    樋口 昌孝, 植村 定治郎
    1959 年 33 巻 10 号 p. 821-826
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    ビール酵母をクエン酸緩衝液中でincubationする際分泌されるヌクレオチッドの分離同定法を検討した.緩衝液中よりのヌクレオチッドの分離にはイソオクタノール処理活性炭に吸着させ, 0.3%アンモニア-50%エタノールで溶離する方法が極めて適当である事を確めた.ヌクレオチッドの分劃法としてはイオン交換樹脂,Dowex l (HCOO-型), Dowex 2 (Cl-型)を用いての連続溶離クロマトグラフィーを行なった.その結果Dowexlではモノ-ヌクレオチッドの分劃は良好であったが回収率が極めて低かった. Dowex 2では各ヌクレオチッドの分劃はDowex 1に比して良くなかったが,回収率は97.5%に達し,モノ-,オリゴ-ヌクレオチッドが混在している上記分泌物の場合には後者(Dowex 2)を用いる方が有効である事を認めた.
  • イオン交換樹脂クロマトグラフィーによる分泌ヌクレオチッドの分劃
    樋口 昌孝, 植村 定治郎
    1959 年 33 巻 10 号 p. 826-831
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    活性炭吸着溶離及びDowex 2 (Cl-型)イオン交換樹脂クロマトグラフィーにより, P32ラベルビール酵母から分泌されたヌクレオチッドの分劃を行ない,次のような結果を得た.
    (1)分泌ヌクレオチッドにはポリ-,オリゴ-,モノ-ヌクレオチッドが夫々含まれ,量的にはオリゴ(37.2%0), ポリ(30.6%),モノ(24.2%)の順に多い.
    (2)モノヌクレオチッドにはAMP, GMP, CMP, UMPのいずれもが見出されるがプリン対ピリミジンの比は2.5でプリンヌクレオチッドの方が多い.又その大部分は2'-又は3'-ヌクレオチッドであると推定される.
    (3)放射能の分布は大体に於いて紫外部吸収物質の分布と平行する.
    (4)ヌクレオチッド以外の核酸系物質やアミノ酸等の分泌は量的には非常に少ない.
    以上の諸結果に基づき分泌ヌクレオチッドの由来につき若干の考察を試みた.
  • Lactobacillus sakéの生育因子とそのラセミアーゼ形成
    大林 晃, 北原 覚雄
    1959 年 33 巻 10 号 p. 832-835
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) Lactobacillus sakéは生育にペプチドを要求するが,そのものは単一物質に限定されない.
    (2)カゼインのトリプシン分解物中の生育因子はロイシン(又はイソロイシン),フェニルアラニン,バリン,プロリン,アラニン,スレオニン,グリシン,リジンの8つのアミノ酸より成るphenylalanyl-ペプチドである.
    (3) L. sakéはリボフラビン,パントテン酸,アデニン,ニコチン酸を必須ビタミン類とする.
    (4)濃縮生育因子添加半合成培地でL. sakéは充分なラセミアーゼを合成する.
    ストレポゲニン等のペプチドを分譲頂いた大阪大学理学部赤堀研究室の方々に感謝致します.
  • Lactobacillus sakéのアポラセミアーゼ形成
    大林 晃, 北原 覚雄
    1959 年 33 巻 10 号 p. 835-839
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)Lactobacillus sakéのラセミアーゼ形成について実験を行い,本菌のラセミアーセは一種の適応酵素であることを認めた.
    (2)本酵素の誘起にはこの菌が本来生成すべきL (+)-乳酸のみが有効であるが,一旦形成されたラセミアーゼはD-, L-両乳酸に殆んど同じ活度で作用する.
    (3) D(-)-乳酸は強くラセミアーゼ形成を妨げるし, DL-乳酸も阻止力をもつ.従って代謝産物たるL-乳酸の害作用から免れるためにラセミアーゼは形成されると解した.
    (4)醋酸もラセミアーゼ形成を妨害する. L. sakéはアラビノーズからどうしてもラセミ乳酸を造り得ないという久しい疑問は, L-乳酸と同時に同モルの醋酸が生ずるためであることが明らかになった
    (5)生育に必須な栄養源を培地に制限添加し,菌の生育度とラセミアーゼ形成度との関係を調べ,概して生育の良い時酵素形成も大きいことを認めた.
    (6)ラセミアーゼをもたぬ菌体の二次的ラセミアーゼ形成についても検討し,ラセミアーゼの形成はいろいろの段階を経て行われることを知った.
  • 大林 晃, 北原 覚雄
    1959 年 33 巻 10 号 p. 839-843
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    生〓系酒母でLactobacillus saké, Leuconostoc mesenteroidesの二種が卓越的に増殖する理由に就いて実験を行った.
    (1) L. sakéは生育に或種のペプタイドを必要とし,これが麹汁より清酒中に多量存在するので,生育因子の酒母中での消長を検討し,これがAsp. oryzaeの酸性プロテアーゼ作用に由来することを知った.
    (2)純粋に作つた米麹に殺菌水を加え, L. saké, Leuc. mesenteroidesの培養をなし, L. sakéLeuc. mesenteroidesに従属して生育するのでなく,単独でも充分生育することが判った.
    (3)これらの両種は他の乳酸菌に比べ低温(4°)でも生育可能であることを知ったが,生〓配系酒母に於てこれら両種が優越する理由は酒母育成が低温度で行われるために外ならぬとの結論に達した.
    (4) L. batatas, Pediococcus, Streptococcusに属する菌株が時々酒母中に検出されるのも,これらの菌がL. saké, Leuc. mesenteroidesには劣るが,比較的低温でも生育できるためであろう.
  • 菌の分離及び同定について
    青木 良平, 近藤 安弘, 角田 俊直, 小川 鉄雄
    1959 年 33 巻 10 号 p. 843-845
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)フマール酸よりL-グルタミン酸を生成する菌株を自然界より分離し,優良菌株32株を得,その中の最高菌株はF6-1 139菌でフマール酸4g/dl,糖3g/dlの培地よりL-グルタミン酸2.94g/dl,即ち対フマール酸74%の収率を得た.
    (2)F6-1 139菌の同定を行い,B. pumitusである事を認めた.
    (3)東大及び腐敗研保存のType culture 72株につき, M3培地におけるL-グルタミン酸生産能を検討,B. pumilusに次ぎB. subtilisが高い生産能を示す事を知った.その他のGenus, Speciesにも可成り広範囲にL-グルタミン酸生産株は存在するが,その生成能は前2者に比し著しく劣る.
  • 解離-会合 (2)
    小田 純子
    1959 年 33 巻 10 号 p. 845-849
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)蚕体液中の蛋白質はpHの変化により解離-会合する.これは分別中の操作に起因するものでない.
    (2)金属イオンは解離-会合に顕著な影響はおよぼさない.
    (3)濃厚尿素溶液中において中性乃至酸性のpHでは粒子量の増大を来し,アルカリ性pHでは粒子量の減少が見られるが,その程度は極めて小さい.
    (4)グリセリンおよびグルロースは粒子量に変化を与えない.
    (5)サリチル酸ナトリウムの存在下で殆んど全蛋白質がゲル状になる.
  • 家蚕体液蛋白質の塩析曲線
    小田 純子
    1959 年 33 巻 10 号 p. 850-853
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    家蚕体液蛋白質の塩析法による分別について厳密な検討を加えるために,沈殿剤として硫安,硫酸ナトリウム,リン酸カリ,硫酸マグネシウムならびに食塩の濃厚溶液を用い, 1.5~8のPH範囲にわたって塩析を試みた.
    その結果,塩析法は各蛋白成分の単離には勿論,予備的な分別に対しても甚だ不適当であることがわかった.この原因は既報の実験結果と併せ考えれば,家蚕体液蛋白質の解離-会合性ならびに各蛋白質間の相互作用に基く共沈現象によるものと推察される.
  • 家蚕体液蛋白質に及ぼす加熱の効果
    小田 純子
    1959 年 33 巻 10 号 p. 853-856
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)家蚕体液の蛋白質の熱凝固現象を加熱温度,加熱時間, pH,イオン強度ならびに蛋白質濃度の関数として追究した. pHにより熱凝固速度が異なり, pH 9では全く凝固しない.初蛋白濃度が増すと溶液中に残存する蛋白質の初蛋白量に対する比は減少する.加熱時間を長くしても同様である.
    (2)リン酸塩(pH 7, μ=0.15)中で70°ならびに80°に加熱した溶液を,超遠心ならびに電気泳動により分析した結果, 2.55S (Comp-1)および15S蛋白(Comp-3)のみから成り, 7S蛋白(Comp-2)は全く存在しなかった.即ち7S蛋白が熱に対して最も不安定である.
    (3)熱凝固しない蛋白を分離し,超遠心的に均一であることを確かめた.このものの沈降恒数の値は,概略0.95×10-13であった.
  • 電気泳動及び吸着剤による検討
    鈴木 明治, 布川 弥太郎, 伊藤 雄太郎
    1959 年 33 巻 10 号 p. 857-861
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)米麹のプロテアーゼ組成を検討する為,実験室的にフラスコ内で純粋培養した米麹から得た精製濃縮酵素液について,吸着法及び電気泳動法によって各組成の成分に分離した.
    (2)酵素原液を直接泳動にかけると酸性プロテアーゼが極端に強い為,その区分に邪魔されて他の成分の確認は困難であった.
    (3)阻害剤及び吸着剤を用いて種々検討した結果,アルミゲルにより酸性プロテアーゼが完全に吸着される事を知った.
    (4)アルミゲル吸着を行った後の非吸着酵素液を泳動にかけたところ, 3つの区分にはっきり分離され,夫夫異ったプロテアーゼである事が解った.
    結局米麹には少くとも酸性プロテアーゼ及びアルカリ性プロテアーゼの他に中性附近で広いpH範囲で働き得るプロテアーゼが2種存在し,合計4種類のプロテアーゼの存在する事が確認された.
  • 醤油分析への応用とケルダール分解方式(日本醤油協会法)について
    久米 譲, 井村 洋一, 山下 貞利, 島津 利武
    1959 年 33 巻 10 号 p. 862-866
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)微量拡散分析法の醤油分析への応用は,検体90~17γNの微量で,分析の正確度が高く,精度は〓=0.00292, c=0.240%, 99%の信頼度で±0.72%であった.
    (2)微量拡散分析法とケルダール法(協会法)とを比較して,後者の分析値が低く且誤差の大きい事を知った.其の主因は加熱分解操作の重要部分即ち加熱温度,加熱時間等の規定に分析者の自由裁量に委された所が多い為であった.
    (3)醤油と言う限定試料に対して適切と思われる分解方式はAOAC法の著者改変法である.操作を作業標準化した場合,繰返し分析の〓=0.00057,回帰分析の〓=0.00058で理論値に近い結果を得た.
  • 澱粉の消化について
    粂野 文雄, 神立 誠
    1959 年 33 巻 10 号 p. 867-871
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    反鍋芻内に於て澱粉の消化される速さ及びその形態変化を知るため次の実験を行った.第1胃にフィステルを設着した緬羊に澱粉200gを含む実験飼料を与え,以後1定時間に内容物を採取して遠心法により微生物区分,可溶性区分,未消化区分に分別し全糖と全窒素を定量し次の結果を得た.
    (1)未消化区分の全糖は時間と共に減少するが,微生物区分,可溶性区分の全糖は逆に増加の傾向を示した.可溶性区分には食後8時間でデキストリンが僅かに検出された.
    (2)食後1時間, 8時間に反芻胃内に残っている澱粉量を測定するため,内容物全量をとり出し澱粉量を定量した結果,食後1, 8時間の回収率は夫々58, 77%, 5, 18%であって,澱粉は食後速かにそのまま第3胃以下に移動することを認めた.
    (3)澱粉摂取によりプロトゾアの約半数はヨード染色性物質を体内に蓄積した.
  • 卵白蛋白質の分別分析及びその組成変化について
    佐藤 泰, 中村 良
    1959 年 33 巻 10 号 p. 872-875
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    鶏卵卵白を蛋白質区分と非蛋白質区分とに分別する目的を以て,種々な等白沈澱剤について検討した結果,卵白をovomucin, ovomucoid,この両者以外の蛋白質, peptone並びに低分子peptide及びamino acid 区分に分別する方法を考案した.次いでこの方法を貯蔵卵に適用し,濃厚卵白及び水様卵白の経時的変化を究明した.その結果両卵白ともに構成蛋白質の分解は認められず, ovomucin及びovomucoidの減少,並びにこの両者以外の蛋白質区分の増加が認められた.よって以上の実験結果を基にして,さきに報告した貯蔵卵卵白の電気泳動分析の結果について考察した.
  • 米胚芽エステラーゼの活性化
    小原 哲二郎, 小笠原 八十吉
    1959 年 33 巻 10 号 p. 876-880
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    p-NP法を米胚芽エステラーゼの研究に応用するに当り,活性化に対する種々の検討を行ない,紫外線吸収測定結果から次のことを明らかにした.
    (1) p-NP法による米胚芽エステラーゼ作用の至適pHは7.38附近であった.
    (2)米胚芽エステラーゼの賦活剤としては周期律表上第2族aとMn++が考えられ, Ca++>Sr++>Mn++>Ba++>Mg++の順であった. Be++による活性化は認められず, Co++並にNi++は極く微弱であった.
    (3)加熱失活粗汁液や透析外液による活性化から判断すると,米胚芽粗汁液中には賦活性物質が存在しているものと考えられた.
    (4)エステラーゼによらざるエステラーゼ様作用を有する或種の物質が米胚芽抽出液中に存在している.
  • 植物に於ける分布並びに起源を異にするミロシナーゼのミロスルファターゼ,チオグルコシダーゼ両活性比
    長島 善次, 内山 正昭
    1959 年 33 巻 10 号 p. 881-885
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)辛子油配糖体シニグリンに酵素ミロシナーゼが作用して生ずるallylisothiocyanateをallylthioureaに誘導し,後者がもつ紫外部吸収の吸光度にてミロシナーゼ活性を示す方法を設定した.
    (2) 39科110種の植物につきミロシナーゼ活性の有無をしらべた.この中なたね科植物は試みた種類(21種)のすべてに,且その葉,茎,根,花弁等すべての部分にミロシナーゼ活性を認めた.又きんれんかにも同活性を認めたが,之等以外の植物にはミロシナーゼ活性を有するものを見出さなかった.
    (3)ミロシナーゼ活性を認めたものにつきそのミロスルファターゼ活性,チオグルコシダーゼ活性を測ったが,両活性の比はその起源の如何を問わず常に殆んど同一であった.この事はミロシナーゼについて従来行われて来たNeubergの考え方と相容れぬものである.
  • 果汁添加醗酵酸乳飲料の安定剤の研究(その1) Propylene Glycol Alginateのエステル化度の影響
    大木 豊三
    1959 年 33 巻 10 号 p. 885-889
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
  • 石井 誠, 原田 篤也, 二国 二郎
    1959 年 33 巻 10 号 p. 889-893
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)石油化学工業の副産物・プロピレンから簡単に製造されるプロピレングリコールを微生物で利用する目的で実験を行なった.まずブロピレングリコールを唯一の有機炭素源とする無機塩類の合成培地を用いて,プロピレングリコールを炭素源として利用出来る数種の微生物を土壌から分離した.
    (2)これらの微生物のなかの1酵母菌(Y1)を用いて,飼料用の酵母を製造する目的で培養条件を検討した.その結果プロピレングリコール1%の培地50ccに5~10mgの菌体を接種して30°で48時間振盪培養すると, 90%以上のプロピレングリコールが消費されてその約30%の収率で酵母菌体る得る事が出来た.
    (3)酸化生産物を目標にして,培養生産物の検索をペーパークロマトグラフィーを用いて行なった.その結果乳酸のスポットを確かめた.
  • 青刈大豆葉蛋白質の消化に及ぼす各種乾燥方法の影響について(其の3) 低温通風乾燥の影響
    神立 誠, 保井 忠彦
    1959 年 33 巻 10 号 p. 893-898
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    青刈大豆葉蛋白質の栄養価値が乾燥すると低下する原因を明らかにするために,その生葉消化試験に用いたのと同一の生葉を45°通風乾燥し,これについて家兎を用いて消化試験を行い,生葉の場合と比較考察して次の様な結果を得た.
    (1)青刈大豆葉を45°通風乾燥した場合全窒素含量に僅かの減少が認められたが,一般成分の変化はなかった.しかしその消化率は生葉に比して粗繊維が平均28.4%で少し良く,純蛋白質が平均75.6%で少し低かった.その他の成分については可溶無窒素物で11.5%,他では概して3~5%の低下が認められ,これ等は従来の成績によく似ている.この場含にペントザンの消化は変化なく,粗脂肪もまた生葉と全く同じでその消化率は負であった.
    (2)粗蛋白質には通風乾燥により少しく減少が認められるが,同時に水溶性, 10% NaGl溶性及び0.3% NaOH溶性粗蛋白質の減少が著しく,不溶性蛋白質が顕著な増加を示した.この様な変化を伴った粗蛋白質の消化率は平均75.9%で,生葉に比し3%の低下が認められたが,これを各種形態別蛋白質の消化率の変化から見ると含量の減少の著しい前記三種の溶性粗蛋白質の消化率の低下が同時に著しかった.不溶性蛋白質の消化率は良くなって居り,全体の約40%を占める0.3%アルカリ性60%熱アルコール溶髄粗蛋白質の消化率は平均89.5%で極めて良く,生葉のそれと比して若干良かった.これらの理由としては青刈大豆通風乾燥葉の摂取は腸管内壁への刺激を強め,消化液の分泌増加等による所謂metabolic fecal nitrogenの排泄増加を来たしたため,その見掛けの消化率の低下を来すのではないかと推論した.
    (3)純蛋白質には通風乾燥による分解減少は認められないが,各溶性区分純蛋白質の変化及びそれ等の消化率の低下は,粗蛋白質のそれと同一の傾向にあった.各溶性区分純蛋白質の消化率低下の原因も亦,粗蛋白質について考えられたと同じと推定される.
    (4)通風乾燥葉の各種形態別蛋白質の消化率を求める場合にも,糞中の窒素形態は毎日測定する必要がある.
  • 青刈大豆葉蛋白質の消化に及ぼす各種乾燥方法の影響について(其の4)
    神立 誠, 保井 忠彦
    1959 年 33 巻 10 号 p. 899-903
    発行日: 1959年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    青刈大豆天日乾燥葉を用いてその一般成分,蛋白質の形態変化と之等諸成分の家兎による消化率を生葉のそれと比較し,次の様な結果を得た.
    (1)青刈大豆葉を天日乾燥した場合に一般成分中粗蛋白質純蛋白質及びペントザン含有量の変化は少いが,可溶無窒素物含量に著しい減少が認められた.其の消化率は粗繊維は可成り良くなっているが,他の成分については生葉に比して可成りの低下があり,殊に可溶無窒素物の消化率の低下は著しく全体として生葉に比して著しく栄養価値を減じている.
    (2)粗蛋白質含有量は著しい減少は認められないが,水溶性, 10% NaCl溶性及び不溶性蛋白質の減少が著しく, 0.3% NaOH溶性等白質の増加が著しい.このような変化を伴った粗蛋白質の消化率は平均72.5%で,生葉及び通風乾燥葉のそれより夫々6.4%0, 3.4%低下した.殊に0.3% NaOH溶性蛋白質の消化率が25.1%で,生葉,通風乾燥葉より著しく低くなった.又水, 10% NaCl溶性及び不溶性蛋白質の消化率も著しく低くなったが, 0.3%アルカリ性60%熱アルコール溶性蛋白質の消化率は全く差がなかった.これ等の点から天日乾燥に於いてもその粗蛋白質の消化率低下の原因は可溶無窒素物と蛋白質相互の化学的作用によって,消化酵素の作用を受け難い形に変化し,同時にmetabolic fecal nitrogenの増加を来すような細胞自身の変化が関与していることが考えられる.
    (3)純蛋白質も亦,乾燥中直接定量した結果では減少が認められないが,分別定量した総量は85%で可成りの分解が認められた.各種蛋白質中0.3%アルカリ性60%熱アルコール溶性蛋白質の消化率には変化が認められなかったが,水溶性及び0.3% NaOH溶性蛋白質の消化率は生葉に比して著しく低かった.通風乾燥葉と比較すれば前者は反って若干良く,後者は負の消化率を示した.水溶性蛋白質の消化が通風乾燥葉より良かったのは,粗繊維の消化の良くなっている点から腸内細菌群によるその分解が良く行われた為であり,又0,3% NaOH溶性蛋白質の消化率が負である事は主としてmetabolic fecal nitrogenの著しい増加によるものと推定される.
feedback
Top