(1)
Lactobacillus fermentiのグルタミン酸ラセマーゼが,その反応に対する阻害剤の影響や本菌によるこの酵素の生産と培養条件との関係よりフラビン酵素であると考えられるので,精製酵素資料を用いてその確認を行なった.
(2) グルタミン酸ラセマーゼによるD-グルタミン酸よりL-グルタミン酸の生成はフラビン化合物によって阻害をうける.リボフラビン,テトラサイクリン,アクリフラビン等によってこの酵素反応は阻害され,リボフラビンによる阻害は比較的多量のFADを添加することにより回復する.この効果はFMNでは認められず,むしろやや阻害が認められる.
(3)
L. fermentiを種々の濃度のりボフラビンを含む合成培地にて培養した場合,菌の生育はりボフラビン濃度の増加とともに良くなるが,さらにこの菌体のグルタミン酸ラセマーゼの活性もリボフラビンに比例的に増加する.
(4) 以上の結果よりグルタミン酸ラセマーゼがブラビン酵素である可能性が強いと考えられたので,精製酵素資料を用いてその吸収を測定した.その吸収曲線は273mμ, 360mμ, 450mμに極大を示し,既知のフラビン酵素のものに近い曲線を示した.
(5) 精製資料の熱処理抽出液は, FADによってのみ活性化されるD-アミノ酸酸化酵素のアポ酵素を活性化し,グルタミン酸ラセマーゼ中にはFADの含まれていることが示された.
(6) 熱処理抽出液の濾紙電気泳動及びペーパークロマトグラフィーによる検討結果はFADに相当する螢光物質のみを認めることができた.
(7) 以上の結果から,グルタミン酸ラセマーゼの配合群は,フラビン化合物,多分FADであろうと考えられる.
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