γ線照射によるグルテン中の総-SHおよび-SS-基の変化,グルテンの0.02N酢酸抽出液を遠沈分別し,各フラクション中の蛋白量および特種官能基の変化を測定し,それらの結果よリグルテンのγ線照射変性機構を考察した.
(1) グルテン中の総-SS-基は300×10
4rep以下の線量では変化は認められなかったが, 600×10
4rep以上では明らかに減少した. -SH基は600×10
4rep以下では対照とほぼ等しく,照射による変化は認め難かったが,1000×10
4repでは増加した.
(2) グルテンの0.02N酢酸抽出濾液中の蛋白質量は照射量の増加につれて増加するにもかかわらず,濾液中の-SS-および-SH基は全試料共ほぼ等しい値を示した.
(3) 300×10
4rep以上の線量では,グルテンの0.02N酢酸に対して不溶性な蛋白は照射によって種々の大きさの蛋白分子に細断されることが,酢酸抽出濾液,残渣-上澄懸濁液および超遠心の結果から明確に認められた.
それは酢酸不溶性蛋白の-SS-の一部が照射によって解裂したことによって生起したものであると推定されるが,確証することはできなかった.
グルテンの照射変性に関するこれまでの結果および本報の結果を総合して考察すれば, 100×10
4rep以下の線量ではグルテン蛋白の2次および3次構造に関与する水素結合の変化にもとづく高次構造の変化にとどまるが,300×10
4rep以上では,それに加え-SS-結合の破壊が起り,さらに激しい立体構造の秩序の変化が生ずるに至ると結論される.
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