(1) 脱脂大豆への加熱処理が酵素分解においてアミノ酸の遊離におよぼす影響を,麹菌プロテアーゼおよび放線菌プロテアーゼを用いて検討した.
(2) 麹菌プ戸テアーゼ分解においては試料の加熱により全アミノ酸総量に対する遊離アミノ酸総量の総遊離度に著しい増加は認められず50%程度の総遊離度を示すが,加熱条件としては1.4kg/cm
2(126°) 0.5時間加熱試料の総遊離度がもっとも高く,グルタミン酸,リジン,アルギニン,チロシン,プロリンおよびメチオニンが増加し,アラニン,アスパラギン酸,ヒスチジンおよびシスチンなどは減少を示した.一方,放線菌プロテアーゼ分解においては試料の加熱により総遊離度は著しく増加し, 0.35kg/cm
2 (108°) 1, 2時間, 0.7kg/cm
2 (115°) 0.5, 1時間, 1.4kg/cm
2 (126°) 0.5時問などの,加熱試料における総遊離度は高く40~43%を示した.また,プロリンを除くすべてのアミノ酸に増加が認められたが,グルタミン酸,アルギニン,フェニルアラニン,メチオニンおよびシスチンが著しい増加を示した.なお,プロリンは無加熱と同程度の遊離度を示した.
(3) 0.7kg/cm
2 (115°)および1.4kg/cm
2 (126°) 4時間加熱試料は両酵素分解とも総遊離度の低下を示すが,特に1.4kg/cm
2加熱試料は,麹菌プロテアーゼ分解においてアスパラギン酸,リジン,ヒスチジン,チロシンおよびシスチンなどのアミノ酸において遊離度の減少を示し,一方,放線菌プロテアーゼ分解においてはグリシン,グルタミン酸,リジン,トリプトファン,メチオニンおよびシスチンなどのアミノ酸の遊離度に著しい減少を示した.
(4) 各加熱試料のアミノ酸遊離度は,麹菌プロテアーゼ分解においてはチロシン,プロリン,トリプトブァンおよびメチオニンなどが高く,放線菌プロテアーゼ分解ではグルタミン酸,チロシン,トリプトファン,メチオニンおよびスレオニンが高い.一方,シスチンおよびアスパラギン酸は,両酵素分解とも低い遊離度を示した.
(5) これら両酵素分解の遊離アミノ酸百分率は,それぞれ異なったパターンを示し,麹菌プロテアーゼ分解試料の遊離アミノ酸パターンは,豆みそ製造初期の遊離アミノ酸パターンに類似することを認めた.
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