日本農芸化学会誌
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42 巻, 4 号
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  • 陽イオンが異性化率に与える影響
    貝沼 圭二, 田所 克子, 鈴木 繁男
    1968 年 42 巻 4 号 p. 173-177
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    アルカリ異性化反応の場合に,異性化率を支配する最大の因子は反応pHであることをすでに述べたが,今回は陽イオン相互に差があるか否かを調べる目的で,各種陽イオンを同一pH1条件でグルコースに反応させた.
    (1) アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物7種を用い,同一規定濃度のアルカリ溶液中でグルコースを異牲化させたところ,水酸化リチウム,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化バリウムが高い異性化率を示し,他のアルカリ土類金属はかなり低かった.
    (2) アルカリ金属3種の問の相互の差を明らかにする目的で,リン酸ナトリウム緩衝液を用いてpH 6.50, 6.80, 7.50の三水準で反応pHを一定にして一定量の陽イオンを添加して反応を行ない,これらの間に何らの差のないことを確認した.また同じ目的で他の陽イオンが混在しない系を作るため,リン酸カリウム緩衝液,リン酸ナトリウム緩衝液を調製し,ナトリウムイオン,カリウムイオンの異性化作用を比較した.これらの実験においてナトリウム,カリウム,リチウムの3種のアルカリイオンの間には何ら差のないことを明らかにした.
    この実験において,陽イオンはアルカリ性溶液においてはもちろん,微酸性溶液(pH 6.50, 6.80)においても弱い触媒作用をもつことを確認した.
  • 生産物の確認
    二宮 英治, 木崎 忠重, 花田 香一
    1968 年 42 巻 4 号 p. 178-184
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    グルコース含有培地中で,高額性の水溶性多糖類を生産する一有胞子細菌No. 271菌株を土壌から分離し,振湯培養したときの醗酵経過および生産された多糖類について次の諸点を明らかにした.
    (1) 多糖類の生成は培養92時間目に最高に達し,グルコースを炭素源に用いた場合の収量は1.6g/dl,培養液の粘度は19,000cpであった.また,シュクPースを炭素源に用いた場合はそれぞれ1.7g/dl, 4800 cpであった.
    (2)グルコースを基質として生産された多糖類は,グルコース,マンノース,ガラクトース,グルクロン酸を講成糖とする酸性多糖類であり,シュクロースを基質として生産された多糖類は上記の酸性多糖類とグルコース,マンノース,ガラクトース,フラクトースを構成糖とする中性多糖類の混合物である.
    (3) グルコースを基質として生産された多糖類をメタノール沈殿法により精製した試料は,白色,無味,無臭であり,灰分11%,蛋白質1%を含有する.これを水に溶かすと中性の高粘性溶液となり,粘度は天然多糖類のグアガムに匹敵し,さらに有機酸類,塩類,糖類を添加することによりその粘度は増強される.熱に対しては中性では安定であるが,酸性側では不安定である.
  • 合成辛子油のガスクロマトグラフィー
    小島 操, 赤堀 幸男, 市川 勇
    1968 年 42 巻 4 号 p. 185-189
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    合成辛子油19種をn-アルキル系,iso-アルキル系,sec-アルキル系,アルケニル系,芳香族系およびその他の6系に分ち,これらのGC分析を行なった,カラムには10%SE-30(無極性)/C-22と2.5%DEGs(極性)/C-22の2種を用いた.
    SE-30カラムの場合,log Rt vs. n(BNCS中の炭素数)はn-系, iso系およびsec-系辛子油はいずれも直線にプロットされ,各系の直線には平行関係があった.アルケユル系および芳香族系辛子油にも直線性があり,しかも前と平行関係があるようである.
    DEGSカラムの場合も芳香族系辛子油を除き,他の4系は前者と同様,直線性および平行関係があった.また同一炭素数の辛子油では,RtはSE-30の場合,芳香族系,n-系,アルケニル系,iso-系,sec-系の順に早くなり,沸点順になったが,DEGSの場合,n-系とアルケニル系辛子油は逆転し,Rtはアルケニル系よりn-系の方が早くなった.
  • ゲラニオールの転換
    林 哲吾, 高芝 宏樹, 小倉 セイ, 上田 博夫, 辰巳 忠次
    1968 年 42 巻 4 号 p. 190-196
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    ゲラニオールを転換して,ゲラニウム酸を生成するPseudomonas aeruginosの1株を土壌より分離して,その性質および類縁物質に対する作用を検討した.
    本薗の酸化酵素系は立体的な異性体には相当幅広い適応を示した.
    本報の前半は第3報として昭和41年11月,関西支部大会(岡由)で,後半は第4報として昭和42年10月,日本劣学会香料テルペン,精油化学に関する討論会(松山)で発表した.
  • ツノロウムシのトリグリセリド組成
    橋本 皓, 山田 和彦, 向井 克憲
    1968 年 42 巻 4 号 p. 197-206
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    ツノロウムシのトリグリセリドは飽和ダィプが圧倒的で,86.7モル%の高率を占めた.それはカプリン酸やラウリン酸からなるグリセリドで,トリカプリン,ラウロジカプリン,カプロジラウリンなどが主であった.不飽和タイプはモノ不飽和グリセリドが比較的多く7.9モル%を占めたが,ジ,トリ,テトラ不飽和トリグリセリドも少量存在した.これらを構成するオレイン酸,リノール酸は,グリセリドの2-位置よりも1,3-位置に多く分布した.
    本研究に際し,有益なご助言と御校閲を賜った京都府立大学教授野田万次郎先生に深く感謝いたします.
  • 條崎 侑一, 石井 貞次
    1968 年 42 巻 4 号 p. 207-210
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) Crambe abyssinica子実のリン脂質はphosphatidyl ethanolamine, phosphatidyl cholineよびphosphatidyl inositolが主要成分であり,これらを合わせて全リン脂質の86%を占めている.
    (2) 上記phosphatidyl ethanolamineとphosphatidyl cholineの脂肪酸組成は類似したものであったが,phosphatidyl inositolは前二者に比し特異なものであった.またC22酸の量はトリグリセリドに比し著しく少量であり,特にphosphatidyl inositolの組成酸においてはまったく含まれていなかった.
  • 油脂と澱粉の液化性
    前沢 辰雄, 早川 幸男, 大久保 増太郎, 新堀 二千男
    1968 年 42 巻 4 号 p. 211-215
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    澱粉の液化性は脱脂操作によって影響を受ける.脱脂の影響は澱粉の種類によって相違し,元来fat-by-hydro lysisの少ないバレイショ粉では脱脂の効果が少なく,脱脂操作が一種の熱処理であることから,かえって熱の影響を受けて難溶性澱粉の発生量が増大し液化性が悪く.なる,一方,トウモロコシ澱粉はこれと反対であって,抽脂成分が多く,熱処理に対する感受性が少ないので,脱脂によって難溶性澱粉の発生量が減少した.甘ショ澱粉は両者の中間に位するが,むしろバレイショ澱粉に近く,脱脂によって液化性の向上をあまり期待でぎない.
    糊化した脱脂甘ショ澱粉にラク酸からステアリン酸までの1価飽和偶数直鎖脂肪酸を混入して,液化性の変化を調査したところ,低級脂肪酸の影響は少ないがラウリン酸以上の高級脂肪酸では,難溶性澱粉の発生量を大幅に増加させ,同時に液化率を低下させることを認めた.
  • グルタミン酸生産菌のアシラーゼ活性について
    峯浦 和幸, 田中 正生
    1968 年 42 巻 4 号 p. 216-221
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    グルタミン酸生産類縁菌株について,アミノ酸アシラーゼ活性を検索し,その一つについて若干の性質を試験した.
    (1) 供試菌株のほとんどがアセチルーメチオニンに対し活性を示した.しかし,アセチルーフェニルアラニンに対して活性を有する菌株は少なく,かつ弱かった.
    (2) 供試菌株中 Corynebacterium glutamicum 9632がアセチルーメチオニンに対し最も強い活性を示し,その酵素的性質について調べた結果, a) pH5~8で安定で,至適反応pHは7.0付近である.b) 40°C程度までは安定であり,至適反応温度は40~45°Cである,c) Co2+その他の金属イオンにより賦活されない.d) 脂肪族中性アミノ酸のアシル化物に作用し,芳香族および塩基性,酸性アミノ酸のアシル化物にはほとんど作用しない.また,アシル基としては,クロロアセチルー>アセチルー>ベンゾイルーの順に作用力を有する.e) アシルーL-アミノ酸に特異的に作用する.以上のことが明らかとなった.
    (3) アミノ酸,とくに脂肪族アミノ酸の光学分割に比較的大量の菌体を容易に得ることのでぎるグルタミン酸生産菌が利用し得ることはアミノ酸の分割にとって,きわめて有利であると考える.
  • ピルビン酸酸化の生理的意義
    上原 悌次郎, 山岡 邦雄, 福井 三郎
    1968 年 42 巻 4 号 p. 222-227
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    PropAを含むリポ酸定量用培地におけるS. faecalis10C1の増殖に及ぼす各種脂肪酸および大豆レシチンの効果を調べたところ,酔酸のほかにパルミチン酸,オレイン酸およびベヘン酸ならびに大豆レシチンがリポ酸代替作用を示した.また,一定量のリポ酸による増殖がビオチンおよび重炭酸の添加により著明に増大した.2-14C-酢酸で増殖せしめた場合,酢酸に基づくCO2の発生はほとんど認められず,菌体にとりこまれた放射能の大部分は脂質画分に存在した.静止菌体による2-14C-PyrAの酸化的脱炭酸を調べたところ,CO2発生量に比し14C02の発生はきわめて微量で,放射能のほとんどすべては反応液中に残存していた.以上の事実より,本実験条件下での S. faecalis 10C1のPyrA酸化の生理的意義は脂質合成につながるものであると推定した.
  • 各種の乳酸菌によるビタミンB2グルコシドの生成
    鈴木 幸雄, 内田 絅
    1968 年 42 巻 4 号 p. 228-232
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    16菌種37菌株の乳酸菌についてショ糖とB2からのB2グルコシドの生成を検討し,Leuc. mesenteroidesのほかLeuc. dextranicum, L. fermentiおよびSc. bovisがB2グルコシド生成活性を有することを明らかにした.またこれらのB2グルプシド生成活性を有する菌株は,ショ糖からの多糖類デキストラン生成活性をも有することを知った.
  • 内田 絅, 鈴木 幸雄
    1968 年 42 巻 4 号 p. 233-237
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) ビタミンB2産生菌であるAshbya gossypiiおよびEremothecium aslabyiiをマルトース培地に振盪培養すると,B2の産生とともに相当顕著なB2グルコシドの産生が培養液中に認められた.
    (2) 糖源としてグルコースを用いると,B2の産生は起こったが,B2グルコシドの生成は認められなかった.
    (3) Gandida guilliermondiiはグルコース,マルトース,ショ糖のいずれを糖源とした場合にもB2のみを産生した.
  • L-チロシンからL-フェニルアラニンの合成
    貴志 光雄, 加藤 洋, 田中 正生
    1968 年 42 巻 4 号 p. 238-241
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) チロシンのO-トシルエステルをラネーニッケルを触媒として接触還元することによってチロシンのフェノール性水酸基が還元開裂し,フェニルアラニンとなることを確認した.
    (2) この反応においてアミノ酸の立体配置に変化はなく,L-チロシンよりL-フェニルアラニンが得られる.
    (3) 同様にジトシルチロシンの接触還元によって,N-トシルフェニルアラニンが生成する.
    (4)チロシンのO-トシル化法を改良し,銅塩法によって収率よく純度の高いO-トシルチロシンを得ることができた.
    (5) O-トシルチロシンの還元反応液から強酸性陽イオン交換樹脂を用いてアンモニア水による溶出,分別結晶によって,収率よくフェニルアラニンを結晶として単離できる.
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