日本農芸化学会誌
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42 巻, 9 号
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  • 菌株の選定と培地成会の効果
    木下 一幹, 西山 徹, 釣 治夫, 小西 真八, 城 照雄, 岡田 弘
    1968 年 42 巻 9 号 p. 523-528
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    One of the non-exacting purineless mutants derived from Bacillus megaterium IAM-1245 by X-ray irradiation accumulated 5-amino-4-imidazole carboxamide riboside (AICA-riboside). On the stock culture of this strain, especially on the polypeptone agar slant, back mutants were found so many that they degrade the yield of AICA-riboside. The effects of many medium constituents on the growth and productivity of AICA-riboside of this strain were studied for establishing optimum commercial medium. Among cations, potassium-, ferrous-, manganese-, magnesium-, copper-salt increased the accumulation of AICA-riboside at each suitable concentration respectively. L-Histidine promoted the growth remarkably and made the yield lower. L-Isoleucine, L-valine and especially L-threonine elevated the yield. When they were mixed together highest yield was obtained. So it will be convenient to use Aji-Eki (soybean acidhydrolysate, containing several amino acids) for commercial medium. As for purine source, adenine, inosine and RNA were preferable becauce if purines used had any substituents on their 2nd carbon atom of guanine or xanthine the accumulation of AICA-riboside was markedly decreased.
  • 復帰変異株の出現とその抑制方法
    木下 一幹, 青木 幹男, 山野井 昭雄, 城 照雄
    1968 年 42 巻 9 号 p. 529-535
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) B. megaterium MA-336 (AICA-R生産菌)はプリン系核酸塩基を要求する変異株であるが,プリン系核酸塩基を全く含有しない培地でも良好な生育が認められた.このとき生育した菌は,函学的諸性質においてMA-336と区別できず,かつRICA-Rを生成しないことから,MA-336の復帰変異株と判定した,また通常のプリン系核酸塩基を含むAICA-R醗酵の培養液からも復帰変異株が検出された.
    (2) 復帰変異株数の総生菌数に対する比は,保存スラソト・シード培養中は低い(10-6~10-7).しかしAICA-R生産の主醗酵培養液中では,培養条件により復帰変異株の比率が大幅に変化し,とくに炭素源として澱粉酸加水分解液を用いる場合は,一般にその比率は高い(10-5以上).また復帰変異株が多いほどRICA-R収量が低下する傾向が,はっきり認められた.
    (3) 復帰変異株が多発する条件でRICA-R生産菌を培養し,復帰変異株が増加しはじめる頃(培養開始後20時間目頃)にエリスロマイシンを添加して,復帰変異株のみの増殖を抑制するようにし,AICA-R収量の低下をある程度回復させることができた.
    (4) 復帰変異株の多発しない条件下でも,培養途中で人為的に復帰変異株を添加すればAICA-R収量は低下する.この場合,復帰変異株の添加と同時にエジスロマイシソを添加することによって,復帰変異株の増殖を抑制し,復帰変異株の添加によるAICA-R収量の低下をある程度回復させることができた.
    (5) 同様の実験をストレプトマイシンについても行なったが,復帰変異株の増殖を抑制する添加濃度ではAICA-Rの生成を阻害し,それ以下の濃度では復帰変異株の増殖を抑制せず,ユリスロマイシンのような効果は認められなかった.
  • 諸味より分離されたPediococcus halophilusの抗原分析について
    中村 清, 中村 従子, 扇元 敬司, 須藤 恒二, 梅田 勇雄
    1968 年 42 巻 9 号 p. 536-543
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 醤油諸味から分離した16株のPc. halophilusについて抗原分析を実施し,全部で13の抗原を認め得た.すべての菌は2種以上の抗原を有し,同一の抗原構造の菌は3株のみであった.
    (2) 菌によっては,注射するとそれに対応する抗原を持ちながら,その抗体とは反応しないものもあった.この種の抗原を考慮に入れるとPc.halophilusは共通抗原を有し,表在性の抗原のために株特異性が高いといえる.
    (3) 抗原分析の結果にもとづき計画した抗血清と吸収抗原の組み合せにより,予期した因子血清の作製に成功した.
  • 還元剤,酸化剤および変性剤の影響について
    青木 宏, 桜井 正子
    1968 年 42 巻 9 号 p. 544-552
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    比較的高濃度(20%前後)における大豆蛋白質ペーストのゲル形成におよぼす,還元剤,酸化剤および蛋白質変性剤の影響を検討した結果,次のことが明らかとなった.
    (1)還元剤のうち,S-S結合を切断するとされている亜硫酸塩などをペーストに加えた場合,ゲル形成は極端に阻害される.
    (2) 酸化剤は一般にゲル形成を阻害するが,その程度は還元剤ほど著しくはない.
    (3) 尿素およびグアニジン塩酸塩も一般にゲル形成を阻害する.
    (4) 還元剤,グァニジン塩酸塩などは,比較的低濃度領域において逆にゲル形成を促進する方向に作用し,この現象は比較的脆弱なゲルを形成するようなペーストにおいてより顕著に認められる.
    (5) 上記の還元剤,酸化剤および蛋白質変性剤が存在する場合,ペーストおよびゲルの保水力とゲルの強さとの間に認められていた従来の相関関係は失われる.
    以上のことから,大豆蛋白質のゲル形成における蛋白質のnetwork構造の生成について考察した.
  • アサリ外套膜外液のホスファターゼについて
    石原 忠, 保田 正人
    1968 年 42 巻 9 号 p. 553-557
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    これまで酵素学的考察の行なわれていない貝類の外套膜外液に数種の酵素が存在することを確認した.そのうちアサリのボスファターゼについて内臓部に存在するものとの比較において次の結果をえ,内臓部とは異なる性質をもったものであることを知った.
    (1) アサリの各部位から抽出した粗酵素液中にはpH 4.1およびpH 9.7に至適pHを持つ,酸性およびアルカリ性ホスファターゼが存在するが,外套膜外液中には酸性ホスファターゼは全く見られず,pH 7.7に至適PHを持つ中性に近いアルカリ性ホスファターゼのみが存在した.
    (2) 外套膜外液のホスファターゼは内臓部のアルカリ性ホスファターゼと同様,基質特異性としてPh-Pをよく分解するが,その程度は外套膜外液の方がはるかに強かった.
    (3) 外套膜外液のホスファターゼと内臓部のアルカリ性ホスファターゼは10-3MのEDTAにより阻害され,Mg2+,Ca2+,Ba2+でわずかに活性化される点は一致するが,Zn2+,Mn2+,Co2+によっては,前者では活性化され,後者は逆に阻害された.このうちCo-6による外套膜外液酵素の活性化は著しい.
    (4) グリシン,アラニンは内臓のアルカリ性ボスファターゼを阻害するが,外套膜外液のホスファターゼには影響をあたえない.
    (5) 外套膜外液のボスファターゼは凍結乾燥により著しく活性が低下するが,処理前後のCo2+の添加は保護および活性化に効果を示した.また加熱による失活に対してもCo2+の添加は有効であった.
    (6)pHとCo2+添加濃度との関係は,濃度により至適pHが変化する,活性化はpH 7.7では10-4Mが最も強いが,pH 8.7では10-3MとpHによってその傾向は変わる.
  • アガロス,アガロペクチンのゲル化現象と水素結合の存在
    布施 恒明, 徳間 洋二, 勝浦 嘉久次
    1968 年 42 巻 9 号 p. 558-562
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    寒天の主要2成分AG,APのゲル化現象を比較し,寒天のゲル化現象におよぼす影響を考察した,分子量のほぼ等しいAG, AP(約5×104)を比較した結果によると,ゲル化点Tg,融解点Tmが急激に変化する試料濃度はいずれの場合もAPの方が高い.また,Tmと濃度Cとの間にはlog C=ΔH/RTm+Kなる関係が成立し,それより求めたΔHはAGの方が大きく,AGはAPより強固なゲルを形成することを示している.AG,APを混合するとAPの割合が増すにしたがってゼリーのTg,Tmよび保水能力はいずれも減少する.またAGにっいて粘度測定より水素結合の存在を,また,ゼリ-形成能の変化より分子間水素結合の存在をみとめ,さらに固体フィルム法によるIR測定により,固体状態のAG, APに水素結合が存在することを明らかにした.
  • 醗酵過程における2, 3の特徴
    岡部 節三, 渋川 満, 大沢 岳義
    1968 年 42 巻 9 号 p. 563-566
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    酢酸-糖混合系からのL-GA発酵はそれぞれ単独の場合とはかなり異なった様相を呈することが示された.すなわち,
    (1)酢酸の消費ピークは糖のそれとはずれている.
    (2) Isocitrate lyase活性はL-GA蓄積と関係があるとは必ずしもいえない.
    (3) 菌体構成脂肪酸中C1=18は酢酸混合の場合,とくに酢酸高率混合の場合顕著な増加を示し,その結果,飽和/不飽和脂肪酸モル比は1を下回る現象が培養後半に認められ,このことがL-GA蓄積不良の一要因と考えられる.
  • 緑葉の糖類と多糖類の季節的変化
    水野 卓, 秀島 征矢夫, 佐藤 紘光, 袴田 勝弘
    1968 年 42 巻 9 号 p. 567-573
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    柑橘類(早生温州,温州,夏蜜柑,八朔,三宝柑,代々)緑葉中の遊離糖類と多糖類について質的ならびに量的な変化を,生育全期間にわたって研究し,次の結果を得た.
    (1) 緑葉の遊離糖類としてグルコース,フルクトース,サッカロースは四季を通じて常時存在し,この他にラフィノースとスタキオースが冬期に出現する(Fig. 2).
    (2) 緑葉の遊離糖含量は開花期に極大値を示し,以後,果実の肥大成熟につれて漸減もしくは横ばい状態となるが,果実を収穫し,冬期に入ると急激な増加が見られ,年間最大値を示し,以後漸減する.柑橘類の種類による遊離糖の質的,量的な相異は認められない.また季節的変化の傾向も類似している(Table I).(3) 緑葉から各種多糖類を分別し(Fig. 1),それらの構成糖組成を明らかにした(Table III).柑橘類の種類や採取時期の違いによる緑葉多糖類-構成糖の質的な根違は認められないが,構成比にはかなりの変異が認められる.
    (4) 緑葉の各種多糖類含量は,澱粉の場合(1)を除いて,柑橘の種類による相違や季節的変化は認められない(Table IV).
  • 米ヌカ脂質の酵素加水分解
    野田 万次郎, 小林 克
    1968 年 42 巻 9 号 p. 574-580
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 米ヌカ貯蔵中の脂質の酵素加水分解について,湿度および温度の影響を調査した.同一条件下では常に古米ヌカの方が新米ヌカよりも含有脂質の加水分解がはなはだしい.
    (2) 米ヌカからリパーゼを抽出,精製し,活性の強い画分を得,その作用最適条件を調べた.最適pHはpH 6.6~7.0と5.6に存在し,最適温度は25~40°C,40°C以下で安定であり,カルシウムイオンによって活性化される.このもののリパーゼ活性は卵アルブミンの添加によって増大し,フィチンの添加によって減退した.
    (3) 米ヌカトリグリセリドは本酵素によってエステル結合の位置に対し非特異的に加水分解されるが,酵素分解途中において,酸根移動およびグリセリドの再合成反応も同時に起こっていることが認められた.
  • 横塚 保, 菊池 忠昭, 佐々木 正興, 大下 克典
    1968 年 42 巻 9 号 p. 581-585
    発行日: 1968年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) Aspergillus M 4-1の培養濾液約400lより,クロロホルム抽出,η-ヘキサン沈殿,カラムクロマト,薄層クロマトグラフィーを行なって,Af-G1,G2類似の緑色螢光物質G1,G2,G3を分離し,G3については白色針状結晶6.2mgを得た.
    (2) 培養条件を検討した結果,有機窒素を含む培地あるいは振盪培養では,この緑色螢光物質の生産はほとんどみられず,Af検索用Zn2+含有ツァペックドックス氏培地を用いて静置培養を行なうのが最適であった.さらに培養が長期にわたると,この物質は消失することを認め,培養日数は11日前後とした.
    (3) G3の物理化学的性質をしらべ,強い螢光活性を有するが,Af-G群とは異なる螢光物質であることを確認した.
    (4) 薄層クロマトグラフィー,ペーパークロマトグラフィーの溶剤系を変えて,Af-G1とG1,G3のRfをもとめ,それぞれ異なった挙動を示すことを確認し,単一の溶剤系ではAf-G群と同一の挙動を示す螢光物質の存在を示した.
    (5) 邦産種麹菌72株のうち,Af-G群を生産するものはないことを証明した.
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