(1)
B. megaterium MA-336 (AICA-R生産菌)はプリン系核酸塩基を要求する変異株であるが,プリン系核酸塩基を全く含有しない培地でも良好な生育が認められた.このとき生育した菌は,函学的諸性質においてMA-336と区別できず,かつRICA-Rを生成しないことから,MA-336の復帰変異株と判定した,また通常のプリン系核酸塩基を含むAICA-R醗酵の培養液からも復帰変異株が検出された.
(2) 復帰変異株数の総生菌数に対する比は,保存スラソト・シード培養中は低い(10
-6~10
-7).しかしAICA-R生産の主醗酵培養液中では,培養条件により復帰変異株の比率が大幅に変化し,とくに炭素源として澱粉酸加水分解液を用いる場合は,一般にその比率は高い(10
-5以上).また復帰変異株が多いほどRICA-R収量が低下する傾向が,はっきり認められた.
(3) 復帰変異株が多発する条件でRICA-R生産菌を培養し,復帰変異株が増加しはじめる頃(培養開始後20時間目頃)にエリスロマイシンを添加して,復帰変異株のみの増殖を抑制するようにし,AICA-R収量の低下をある程度回復させることができた.
(4) 復帰変異株の多発しない条件下でも,培養途中で人為的に復帰変異株を添加すればAICA-R収量は低下する.この場合,復帰変異株の添加と同時にエジスロマイシソを添加することによって,復帰変異株の増殖を抑制し,復帰変異株の添加によるAICA-R収量の低下をある程度回復させることができた.
(5) 同様の実験をストレプトマイシンについても行なったが,復帰変異株の増殖を抑制する添加濃度ではAICA-Rの生成を阻害し,それ以下の濃度では復帰変異株の増殖を抑制せず,ユリスロマイシンのような効果は認められなかった.
抄録全体を表示