日本農芸化学会誌
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43 巻, 10 号
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  • 小麦グルテン臭について (1)
    岡田 憲三
    1969 年 43 巻 10 号 p. 675-681
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 常圧水蒸気蒸留法により,小麦グルテン臭を採取した.
    (2) 蒸留液は食塩飽和後,エーテル抽出し,エーテルを留去した後,小麦グルテン臭の強烈な黄褐色油状物を得た.
    (3) この香気濃縮物を常法により,塩基性部,酸性部,中性部(カルボニル部,非カルボニル部),フェノール部,加水分解酸部に分画し,官能試験した.
    (4) 官能試験の結果,小麦グルテン臭は主として,中性部(カルボニル部,非カルボニル部)により構成されていることが確認できた.
    (5) ガスクロマトグラフィーの分取による第二次,第三次スクリーニングにより,中性非カルボニル部ではとくに3成分が小麦グルテン臭に関与していることが確認できた.
    (6) カルボニル化合物はさらに,通気法により2,4-ジニトロフェニルヒドラゾンとして捕集し,薄層クロマトグラフィー,ペーパークロマトグラフィー,IR分析,熱分解法によるガスクロマトグラフィー等を用いて同定した結果,カプロンアルデヒドが主成分であった.
  • 清水 徹, 荒木 真喜子
    1969 年 43 巻 10 号 p. 682-687
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Na-CMCおよびMCの濃厚(0.8~2.4%)水溶液の粘性流動を同心二重円筒回転粘度計で検討し,微分法により補正して内筒壁におけるずり速度およびずり応力から流動曲線を求め,次のような知見を得た.
    (1) 水溶液は,べき函数型の粘度式によく適合する異常粘性流動を示した.
    (2) Na-CMCはMCより異常粘性の度合が著しかった.同様な事実はNa-CMAPとAPの間でも認められた.高分子中の解離基の存在が異常粘性に大きな影響を与えるものと考えられる.
    (3) Na-CMC,MCとも異常粘性の度合は20~60°範囲でほとんど一定であった.また温度変化の実験より算出した見かけの流動活性化エネルギーはMCの方がNa-CMCより大きかった.
  • 蚕糞および桑葉のポリイソプレノール
    豊田 仁, 府川 秀明, 清水 徹
    1969 年 43 巻 10 号 p. 688-693
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 蚕糞不けん化物はシスートランス結合をもつポリイソプレノイドアルコール(ポリイソプレノール)35%,ソラネソール1.4%を含む.
    (2) ドデカイソプレノール(C60H970H,mp 15.0~16.0°C),ウンデカイソプレノール(C55H60OH,mp 8.8~10.0°C)は,ともに3個の内部トランス結合と水酸基末端のイソプレン残基にシス結合をもつ.
    (3) ガスクロマトグラフィーなどの結果,ドデカイソプレノール,ウンデカイソプレノールと同族の化合物と推定されるデカイソプレノール(C50H810H),ノナイソプレノール(C45H73OH)を認めた.
    (4) ドデカイソプレノール,ウンデカイソプレノール,デカイソプレノ~ル,ノナイソプレノール,ソラネソールの割合はそれぞれ30.8%, 53.9%, 9.2%, 2.1%, 4.0%であった.
    (5) 桑葉不けん化物に含まれるポリイソプレノールは成分およびそれらの比率が蚕糞不けん化物に含まれるポリイソプレノールに同じであることよリ,蚕糞のポリイソプレノールは桑葉に由来すると推定された.
    (6) 蚕糞のドデカイソプレノール,ウンデカイソプレノールは次式の構造をもつと推定された.またデカイソプレノール,ノナイソプレノールも次式の構造をもつと考えられた.
    〓n=8,7,6,5
    本報告を終了するにあたり,貴重な御助言をいただきました東京大学農学部高橋信孝先生に深謝いたします.またNMR,分子量の測定,ガスクロマトグラフィーなどの分析を担当していただぎました当研究所の朝比奈雅子.吉野雄二郎の両氏に感謝いたします.
  • 寒天濃厚溶液の粘度挙動
    布施 恒明, 後藤 富士雄
    1969 年 43 巻 10 号 p. 694-698
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    主として寒天の比較的濃厚な溶液について粘度と速度勾配,温度および粘度と濃度の関係を回転粘度計を用いて検討した.その結果,速度勾配が小さいほど粘度は増加した.また温度の上昇とともに粘度は減少し,粘性の活性化エネルギーは濃度の増加とともに大きくなるが,ある濃度以上ではほとん変化しなかった.一定速度勾配下における粘度と濃度とは直線性を示し,その勾配は速度勾配が大きいほど小さい.粘度と濃度の対数プロットよりえられる2本の直線の交点から溶質分子のからみ合い開始濃度を求めたが,これは温度によって変化し,この濃度付近の構造粘性指数は極小を示すことをみとめた.
  • 林 金雄, 平光 武, 中村 武司
    1969 年 43 巻 10 号 p. 699-704
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 輸入原藻オゴノリとして,アフリカ,ポルトガル,チリー,アルゼンチン,インドおよび台湾産のものについてその化学成分を明らかにした,またこれらのうち,アフリカ,チリーおよびアルゼンチン産オゴノリから寒天を調製し,それらの化学分析を行なった.
    (2) 得られた寒天から,アセチル化法,DMSO法およびNaI法によって,AGとAPの分離を行ない,これらの分離結果について考察した.なお寒天およびAG・APについて,化学成分とゲル化点,ゲル化能力,融点およびAG中のGaとAnGaの定量などについて実験して考察を加えた.
  • 塩基性アミノ酸および蛋白質の阻害効果
    那部 浩一, 岡田 茂孝, 福本 寿一郎
    1969 年 43 巻 10 号 p. 705-711
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Bacillus circulans strain 1-3,0MT 6301細胞による酵素蛋白質の取込みは,
    (1) 塩基性アミノ酸,とくにアルギニンによって顕著に阻害された.この阻害は拮抗的であり,グアニジル基を有す他の物質(アミノ酸以外の物質)では認められなかった.
    (2) 蛋白質によっても本現象は阻害されたが,これは塩基性蛋白質で顕著に認められ,またペプタイド結合の重合度にも大きく影響された.この阻害もまた拮抗的であった.
    (3) 供試酵素蛋白質の等電点の差によって,これら塩基性アミノ酸および塩基性蛋白質の阻害程度は異なった.
  • 藤野 安彦, 山吹 佐和子, 伊藤 精亮, 根岸 孝
    1969 年 43 巻 10 号 p. 712-719
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) 牛乳から純粋なスフィンゴミエリンを単離し,その脂肪酸と長鎖塩基の組成を調べた.
    (2) 牛乳スフィンゴミエリンの構成脂肪酸として,C12からC24までの19種が検出された.その大部分は長鎖の飽和脂肪酸で,そのうちで主なものは多い方から順に,C23:0,C22:0,C24:0,C16:0であった.
    (3) 牛乳スフィンゴミエリンを構成する長鎖塩基として,多い方から順に,C18-スフィンゴシン,C16-スフィンゴシン,16-メチル-C17-スフィンゴシン,C16-ジヒドロスフィンゴシン,C17-スフィンゴシン,C18-ジヒドロスフィンゴシン,および多分17-メチル-C18-スフィンゴシンの7種が検出された.そのうち,C18-スフィンゴシンとC16-スフィンゴシンが全塩基の過半を占めていた.
  • 春日井 愛子
    1969 年 43 巻 10 号 p. 720-724
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) マルトース分解力の強いキャベッの葉を酵素試料とし,硫安塩析により部分精製したのち,Sephadex G-200によりゲル濾過し,さらにEDTA,ρCMBで処理してα-およびβ-アミラーゼ作用のないマルトース分解力を示す酵素区分を分離することができた.
    (2) この酵素をデンプンに作用させると直接グルコースを生ずることが認められた.この酵素のみではデンプンの分解は容易に進行しないが,α-およびβ-アミラーゼと併用すればデンプンをグルコースとして80%糖化する.
    (3) マルトースの低濃度の場合はこれをほとんど完全にグルコースに分解するが,高濃度になるとグルコースの生成とともに種々の重合度のオリゴ糖を生成することが認められた.
    以上の実験結果からキャベツ中にはデンプンより直接グルコースを生じ,かつ転移作用を有するtransglu-cosyl-amylaseともいうべきアミラーゼの存在することを見出した.
  • 牛乳の冷凍によって生じた不溶化カゼインの性質と不溶化の機構について
    中西 武雄, 伊藤 敞敏
    1969 年 43 巻 10 号 p. 725-731
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    牛乳の冷凍によって生じた不溶化カゼインのSepha-dex G-200に:よるゲル濾過溶出蘭線は,不溶化の進行にともなって,はじめに溶出される区分の割合が増加してゆき,遅く溶出されるC分の割合が減少してゆくが,不溶化カゼインをアルカリで溶解し,酸で再沈殿させることによって酸力ゼインの溶出曲線に近づくことが認められた.
    k-ゼイン溶を単独であるいはCa以外の数種の添加物を加えて冷凍しても,Ca存在下でのαs-カゼインに対する安定化作用は失われないが,Caを加えたκ-カゼインは冷凍前においてもαsに対する安定化力が低く,また冷凍中に凝固した.一方,αsとk-カゼインの混合溶液にCaを添加した場合の安定性と,温度の関係あるいは冷凍の影響などについて調べ,これらの結果と牛乳の冷凍中におけるカゼインの不溶化との関係について考察した.また,αs-とk-カゼイン混合溶液の冷凍中における安定性に対する添加物の影響を調べた結果では,ヘキサメタリン酸,クエン酸ナトリウムおよびラクトースが安定性の低下防止に効果があつた.
  • 混合触媒によるフマール酸の製造
    下瀬 林太
    1969 年 43 巻 10 号 p. 732-734
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    フルフラールを塩素酸ソーダで液化する際,従来は触媒としてN. A. Milasは五二酸化バナジウムを,著者はモリブデン酸アンモンを各単独に用いることにより今日まで77.8%のフマール酸収量が保持されてきたが,今回著者は初めて五二酸化バナジウムとモリブデン酸との混合触媒を使用して上記と同様なる酸化を行ない,前記フマール酸生成量を凌駕し,初めて82.18%という最高の結果を得た、ちなみにこの際,混合触媒に用いたモリブデン酸は無水モリブデン酸であった.
  • 倉沢 文夫, 早川 利郎, 岡本 郁夫, 今井 正一
    1969 年 43 巻 10 号 p. 735-738
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Changes of inositol phosphate and inositol in rice seeds during the ripening were studied. Total phosphorous, acid soluble phosphorus and phytin phosphorus showed a markedly rapid increase during the ripening, while inorganic phosphorus decreased. Also total inositol showed increase during ripening while free inositol decreased. Inositol phosphate were analyzed by the ion exchange chromatography (Dowex 1×2, Cl-type, 200_??_400 mesh). The main components of inositol phosphate in immature and ripe rice seeds were also inositol hexaphosphate.
    From 1kg of immature rice bran 533 mg of crystal was isolated by using 80% ethyl alcohol. The Rf value of crystal was 0.14 in an ascending solvent system of butanol: pyridine: H2O=6:4:3. The melting point of this crystal was at 221_??_223°C. The infrared spectrum was same with inositol standard. From these results this crystal was identified as inositol. In rice plant, it seems that inositol is synthesized at first and then inositol phosphate is produced from inositol.
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