大麦zymogenβ-amylaseの活性化において,蛋白分解酵素とSH化合物とによる活性化機構の差異について検討した.
(1) 大麦粉末をパパインと2-MEにて反覆抽出するとき,抽出されるKjeldahl Nとβ-amylase活性の消長には類似性が認められたが,パパインによって抽出される大麦蛋白N量とβ-amylase活性とは必ずしも一致しなかった.
(2) Zymogen β-amylaseの可溶化および活性化には,パパイン,ブロメJン,フィシンのごときSH酵素ばかりでなく,トリプシン,ペプシンも効果が認められたが,煮沸処理によってそれらの効果は消失した.またSH酵素のウレァーゼには全く活性化効果が認められなかった.
(3) 大麦の塩類抽鐵液中に含まれる不活性型酵素の2-MEおよびパパイン,プロメリン,トリプシンによる活性化時間を測定した結果,2-MEは他の場合比較して約半分の時間で活性化が終り,またその効果もかなり大きかった.また蛋白分解酵素による活性化の場合,その反応液中のSH含量には変化が認められなかった.
(4) 大麦粉末の水抽出およびパパイン抽出によって得られる蛋白質画分のgel filtrationを行ない,パパインおよび2-MEによる活性化処理がzymogenβ-amy-laseのgel filtrationに与える影響を比較検討した結果,両者の処理による低分子量化の傾向が認められた.
これらの実験結果から,大麦zymogen β-amylaseの活性化には蛋白分解酵素によるpeptide結合切断と,SH化合物によるS-S結合開裂とによる2つの活性化機構が存在することを指摘した.
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