日本農芸化学会誌
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43 巻, 5 号
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  • E. coli (K-12) 無細胞液によるホスファチジン酸の生合成
    亀山 春, 東尾 侃二, 後藤 章
    1969 年 43 巻 5 号 p. 273-277
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    E. coliの無細胞液20,000×g上清分画に,14C-グリセロールあるいは32P-正リン酸を加えたとき,14P-正リン酸の脂質への取り込みと,この取り込みに及ぼすグリセロリン酸とジグリセライドの添加の影響,および14C-を有する放射活盤物質の検索を行なった.
    その結果,14C-グリセロールでは14C-グリセロリン酸が検出されるにもかかわらず,脂質への取り込みは認められなかった.しかし,32P-正リン酸を加xると,32P-正リン酸はボスファチジン酸にのみ取り込まれた.この32P-正リン酸のホスファチジン酸への取り込みは,グリセロリン酸を加えても無添加の場合と変わりなく,グリセロリン酸の影響は認められなかったが,ジグリセライドを加えると,25倍に増加した.
    以上,本分画における32P-正リン酸のホスファチジン酸の取り込みの結果から,ホスファチジン酸はグリセロリン酸を通ることなく,ジグリセライドキナーゼによって生成されているものと考察した.
  • 蛋白分解酵素とSH化合物による大麦zymogen β-Amylaseの活性化機構について
    新家 龍, 麦林 楢太郎
    1969 年 43 巻 5 号 p. 278-285
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    大麦zymogenβ-amylaseの活性化において,蛋白分解酵素とSH化合物とによる活性化機構の差異について検討した.
    (1) 大麦粉末をパパインと2-MEにて反覆抽出するとき,抽出されるKjeldahl Nとβ-amylase活性の消長には類似性が認められたが,パパインによって抽出される大麦蛋白N量とβ-amylase活性とは必ずしも一致しなかった.
    (2) Zymogen β-amylaseの可溶化および活性化には,パパイン,ブロメJン,フィシンのごときSH酵素ばかりでなく,トリプシン,ペプシンも効果が認められたが,煮沸処理によってそれらの効果は消失した.またSH酵素のウレァーゼには全く活性化効果が認められなかった.
    (3) 大麦の塩類抽鐵液中に含まれる不活性型酵素の2-MEおよびパパイン,プロメリン,トリプシンによる活性化時間を測定した結果,2-MEは他の場合比較して約半分の時間で活性化が終り,またその効果もかなり大きかった.また蛋白分解酵素による活性化の場合,その反応液中のSH含量には変化が認められなかった.
    (4) 大麦粉末の水抽出およびパパイン抽出によって得られる蛋白質画分のgel filtrationを行ない,パパインおよび2-MEによる活性化処理がzymogenβ-amy-laseのgel filtrationに与える影響を比較検討した結果,両者の処理による低分子量化の傾向が認められた.
    これらの実験結果から,大麦zymogen β-amylaseの活性化には蛋白分解酵素によるpeptide結合切断と,SH化合物によるS-S結合開裂とによる2つの活性化機構が存在することを指摘した.
  • 膵臓アセトン抽出分画と乳酸菌菌体内抽出粗酵素液の苦味消去作用
    佐藤 泰, 関口 義彰, 千葉 善根, 猪飼 勝弘
    1969 年 43 巻 5 号 p. 286-291
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    蛋白質分解酵素によりカゼインから生じた苦味の消去に有効な酵素の性質を明らかにするのが本研究の目的である.本報では次の4点を明らかにした.
    (1) 試験した8種1市販プロテアーゼのうち,カゼインからできた苦味物質の苦味を弱めたり,消すのは,パンクレアチンとプロナーゼPであった.
    (2) 豚膵臓アセトン粉末より抽出した粗酵素および乳酸菌の菌体内酵素には苦味を弱めたり消去したりする作用がある.
    (3) 苦味消去作用のある区分は膵臓粗酵素液の硫安0.3~0.5飽和で沈澱する部分に存在することを明らかにし,この部分をさらにDEAEセルロースカラムによって濃縮し得た.
    (4) カルボキシペプチダーゼには苦味消去の作用はなく,ロイシンアミノペプチダーゼと膵臓中の有効成分は,ロイシルグリシンの分解力ならびに苦味消去の作用をもつことから,少なくともロイシンアミノペプチダーゼが苦味消去に関与していることを推定した.
  • テングサ寒天の電離性
    布施 恒明
    1969 年 43 巻 5 号 p. 292-295
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    静岡県産テングサより寒天を抽出し,得られた試料をジメチルスルポキシドにより2成分の多糖類,アガロース(AG),アガロペクチン(AP)を分解し,それぞれの電離性および粘性について検討を加えた.
    酸型APは酸型AGに比ベ,加熱による主鎖の分裂は大きかった.中和系列における粘度変化はAG, APともにキリンサイ,酸化繊維素硫酸エステル(OCS)と大差がなかった.APの変動指数はOCSとほとんど差がないがAGは0となり,高分子電解質としての特微を消失し,このことはAGがAPその他の高分子電解質のゲルに比べ保水能力が大きいという特性に関係があると考えた.塩を含む4種の溶媒によりAG,APは30°Cにおいてもゲル化せず,固有粘度を求めることができた.
  • アガロース誘導体のゼリー形成能
    布施 恒明
    1969 年 43 巻 5 号 p. 296-299
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    テングサ寒天を塩化セチルピリジニウムによりアガロース,アガロペクチンに分離し,ついでアガロースをけん化,CM化,リン酸化し,それらの処理によるゼリー形成能の変化を検討した.
    反応浴組成,温度,時間を種々変化させて実験を行なった結果,けん化,CM化,リン酸化各試料ともに[η]の大きいものほど保水能力は大きかった.保水能力はけん化反応では(SO3/COOH)(SO3+COOH)の値が小さいほど大きく,CM化反応では(SO3+COOH)の値が小さいほど大きかった.リン酸化反応ではリン酸基が多くなるとともに保水能力は減少した.また適当な条件下でけん化,CM化を行なうと原試料より保水能力は増加した.
  • 水酸化カルシウムによる縮合
    中井 正, 辻々堂 紀子, 佐藤 志信
    1969 年 43 巻 5 号 p. 300-305
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    本研究はフォルムアルデヒドのアルドール型縮合による発酵糖生産の可能性を検討するために着手された.
    水酸化カルシウムの作用による縮合生成物につき次の結果を得た.
    (1) 必要にして充分な量の水酸化カルシウムの存在で,フォルムアルデヒドの濃度が4.05%(w/v)以下では濃度が増加するにつれて反応所要時間が短縮する.
    (2) フォルムアルデヒド1g当りの全糖収量はフォルムアルデヒド濃度0.81~4.05%(w/v)ではほぼ一定である.この濃度範囲外では減少の傾向が認められる.
    (3) 反応混液に微量の単糖の添加は反応所要時間を短縮するのみならず全糖収量を増大する.調べた7種の単糖のうち,ケトースであるソルボース,フルクトースはアルドースよりもこれらの作用が著しい.
    (4) いずれの場合も発酵糖の生成はほとんど認められない.
    文献記載の酸化カルシウムを用いた既往の実験を追試したが,発酵糖の有意義な生成量を見出し得なかった.
  • カゼイン溶液の加熱によるゲル濾過溶出曲線とシアル酸含量の変化
    中西 武雄, 伊藤 敞敏
    1969 年 43 巻 5 号 p. 306-310
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    カゼイン溶液を加熱した場合のSephadex G-200によるゲル濾過溶出曲線の変化ならびにシアル酸含量の変化について調べた.カぜインは未加熱の場合,Sephadex G-200を用いたゲル濾過によって2つのピークとして溶出されるのに対して,100°C,30分の加熱では,2つのピーク間の分離が悪くなり,120°C,140°Cと加熱温度が上昇するにつれて,遅く溶出される区分の割合が減少し,最初に溶出される区分の割合が多くなってゆく.このことは,カゼイン複合体が加熱によって凝集することを示している.加熱時に5%のラクトースが存在すると,これらの変化は一層顕著となる.
    カゼイン溶液中の全シアル酸含量は,120°Cでは60分の加熱でもわずかに減少する程度であるが,その約30%は遊離の形となる.140°Cでは30分で全シアル酸の約25%,60分では約65%が分解するが,その場合60分後では,残存しているシアル酸のほとんどがカゼインから遊離した形として存在している.
  • 村田 晃, 添田 栄一, 猿野 琳次郎
    1969 年 43 巻 5 号 p. 311-316
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    L.acidophilusのファージ(主としてJ1)について,重層法によるプラーク・カウント法について検討を加え,プラーク生成に影響する因子を明らかにし,ファージ定量の標準条件を設定した.
    EOPに影響したのは,培地のPHやカルシウム濃度,指示菌のエイジ,プレートの培養温度などであったが,いずれも著しくはなかった.一方,還元物質も影響を与えたが,なかでもアスコルビン酸塩,システインの影響は著しかった.
    他方,プラークの大きさに影響したのは,培地のpH,上層の寒天濃度や量,指示菌の添加数,プレートの培養温度などであった。還元物質の影響は,アスコルビン酸塩,ギ酸塩では小さくなり,逆に,システイン,硫化ナトリウム,チオグリコール酸塩では大きくなった.なお,システイン,硫化ナトリウムはプラークの形状にも変化を与え,プラークの周辺が明確となった.
  • Rhizopus niveusのマンナナーゼの精製とそのコーヒーマンナンに対する作用
    橋本 揚之助, 福本 寿一郎
    1969 年 43 巻 5 号 p. 317-322
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Rhizopus niveusの生産するマンナナーゼの精製をおこない,その性質ならびにコーヒーマンナンに対する作用を検討して次の結果を得た.
    (1) 本酵素の作用最適pHは5.5,作用最適温度は40°Cであり,pH3.5~9.0のpH域で安定であった.
    (2) コーヒー豆から調製したマンナンに作用させた場合,主にマンノビオース,マンノトライオース,マンノテトラオースを生成し,マンノースはほとんど認められなかった.また,マンノース6分子に対し1分子の割合でガラクトースを含んだオリゴ糖が得られた.このオリゴ糖の平均重合度は7であった.
    (3) 本酵素はマンノテトラオース以下のオリゴ糖には全く作用しなかった.
  • “リパーゼ”存在下におけるグルタミン酸生産菌protoplast-like bodyによるグルタミン酸蓄積
    渋川 満, 栗間 理夫, 大内 俊二
    1969 年 43 巻 5 号 p. 323-327
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) L-グルタミン酸(L-GA)生産菌Mierobacterium ammoniaphilumをいわゆる“biotin rich”条件で培養しL-GA非蓄積型の菌を得た後,これを卵白リゾチムで処理してprotoplast-like body (PLB)を調製した.
    (2) このPLBの安定性を保つに必要なNaNO3高張液に“リパーゼ”存在下で糖および窒素源を与え,32°C, 5hr反応させたところ,“リパーゼ”濃度10u/dl以上でL-GAの蓄積が認められ,“リパーゼ”を添加しないものではL-GAの蓄積は認められなかった.
    (3) “リパーゼ”30u/dl存在下でL-GAを蓄積したPLBと,“リパーゼ”無添加のPLBからそれぞれ脂質を抽出して,シリカゲルカラムによる分画を行なった後,各脂質画分中のリン量を定量した.この結果,“リパーゼ”存在下のPLB中のリン脂質量が“リパーゼ”無添加のPLBに比し著しく低下していることを認めた.
    (4) 使用した“リパーゼ”は工業用粗酵素で,詳細な基質特異性については未だ十分なデータを得ていないが,リン脂質の減少は“リパーゼ”以外のものによってもたらされたとは考えられない.したがって,“リパーゼ”によって細胞膜中のリン脂質が減少し,そのことによってL-GAの菌体外への透過蓄積が促進されたものと考えられる.
  • 大根葉および青刈大豆葉より蛋白質の単離について
    保井 忠彦, 神立 誠
    1969 年 43 巻 5 号 p. 328-338
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    大根葉および青刈大豆葉の生葉,通風乾燥葉および天日乾燥葉より蛋白質を純粋分離する目的で,Luggらの方法を多少改良して実験を行ない,次の結果を得た.
    (1) 水,0.3% NaOH溶液またはpH 9.2硼砂緩衝液および0.3%NaOH性60%熱アルコール溶液で抽出し,単離精製した蛋白質は窒素含量10.4~14.9%(無水・無灰物中)で,その多くは着色し,所期の目的のものは得られなかった.
    (2) いずれの場合にも,細胞質蛋白質には随伴物質として糖含量が高かった.したがって本溶剤による蛋白質の抽出には問題がある.またその直接圧搾抽出法は成功しなかった.
    (3) 葉緑体蛋白質の単離法を2通り比較したが,収量が悪く,蛋白質の窒素含量も14.9%にすぎなかった.
  • 橋本 皓, 向井 克憲
    1969 年 43 巻 5 号 p. 339-344
    発行日: 1969年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) モミジワタカイガラムシの卵のうは約60%の脂質を含み,その脂質は長鎖直鎖状のワックスエステルである.
    (2) ワックスエステルの脂肪酸とアルコール構成は単純である.その主体は,べヘン酸,リグノセリン酸リグノセリルァルコール,セリルアルコールなどである.
    (3) ワックスエステルの分離分析法,ならびに卵のうにおけるワックスエステルの役割について考察した.
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