(1) ヌクレオチド-アルドース溶液の褐変に際して燐酸残基が重要な役割を果すことを明らかにした.その際,燐酸は遊離あるいはエステル結合を保持したままでも着色に関与できる.
(2) 高温下においてヌクレオチド類は糖類との共存により不安定化するが,これにはオソン類(3-D-Oを含む)等の反応性の強い糖分解生成物が関与していると推察される.
(3) ヌクレオチドーアルドース系の褐変の機構としては,アルドースが1, 2-および2, 3-エノール化を経て, 3-D-Oやその他の褐変活性のある中間体に分解し,それらが種々の縮・重合反応を行ない,高分子の褐色色素を形成すると考えられる.
(4) ヌクレオチドとしてIMPとGMPとを比較すると,両者ともにヌクレオチド→ヌクレオシド→塩基という経路が主要分解経路であるが, GMPの方が分解率が高く,着色度および3-D-Gの定量値は低い.また,ヌクレオシド,塩基類の分析結果からも,両者の間で分解機構上若干の差異が認められたが,これらはGMPのプリン核上のアミノ基の関与によるものと思われる.
(5) ヌクレオチド-アルドース系の褐変とそのモデル系ともいえる燐酸-アルドース系の褐変とを比較してみると,褐変度のIMPおよび燐酸濃度に対する依存性等の異なる点もあるが,アルドースの分解生成物の類似性その他から考えて,両者の褐変機構は基本的には類似したものと推定される.一方,前記両系は糖・アミノ反応の一つであるGly-Glc系とは褐変機構上明らかな相違点を持っている.なお,燐酸-Rib系から生成するα-ジカルボニル化合物としては, 3-D-P,ピルビンアルデヒド,グリオキザールのほかに,炭素数が13程度のαジカルボニル化合物が認められた.
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