日本農芸化学会誌
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44 巻, 8 号
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  • 多糖の生成とその性質
    菊本 昭一, 宮島 徹, 吉積 智司, 藤本 紫郎, 木村 恵太郎
    1970 年 44 巻 8 号 p. 337-342
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    スエヒロタケ(Schizophyllum commune)が液内培養時に生産する特有な代謝産物である粘質多糖(シゾフィラン)について検討した.本菌はグルコースのほか,ガラクトース,フラクトース,キシロース,シュクロースなどを炭素源とした比較的単純な培地にもよく生育して,菌糸体の生育と同時に培養液中に多量の粘質多糖体(シゾフィラン)を生成した.菌糸体を除去した培養液にメタノール,エタノールなど水に任意の割合で溶解する有機溶剤を35~40%の濃度で加え,生じた白色繊維状の沈澱を無水の溶剤で脱水後乾燥して対糖収率10~27%で粘質多糖シゾフィランを得た.シゾフィランは白色,無味,無臭で,冷水にも比較的易溶できわめて粘稠な溶液となる.極限粘度は12~13,比旋光度は+2.0,塩酸による完全加水分解によりグルコースのみを生ずること,部分加水分解によりグルコ二糖類としてラミナリビオース(3-O-β-D-グルコピラノシール D-グルコース)およびゲンチオビオース(6-O-β-D-グルコピラノシール D-グルコース)の2種のみが得られること,加酢分解によりβ-1, 3-グルコシッド結合を有する一連のオリゴ糖を生ずること,さらに比旋光度, IRの測定結果などから,β-1, 3-グルコシッド結合およびβ-1, 6-グルコシッド結合から成る単純グルカンであり,またβ-1, 3-グルコシッド結合による直鎖部分を有するものと推定した.
    終りに臨み本研究に関して種々御指導,御助言を賜った東北大学農学部玉利勤治郎教授,松田和雄助教授,昭和大学薬学部小松信彦教授,菌株の分与をいただいた東京医科歯科大学寺川博典教授に厚く御礼申し上げます.
    さらに本実験に協力された金内忠司氏,高橋 弘氏また終始激励いただいた当社田中賤夫技術顧問,中柴義雄常務取締役,霜 三雄前研究所長,滋賀達二元主任研究員に深謝いたします.
  • 湛水前後に嫌気的に分離した細菌種の変化
    武田 潔, 古坂 澄石
    1970 年 44 巻 8 号 p. 343-348
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    湛水による水田土壌の偏性嫌気性菌相および通性嫌気性菌相の変化について研究を行なった.
    湛水前,湛水期間および落水後にわたる4時期に土壌を採取し,希釈後平板培養を行なった.平板上で生育したコロニーのうち約300菌株を釣菌して,嫌気度を調べて通性嫌気性菌と偏性嫌気性菌に2大別した.さらに,それぞれの性質を詳しく調べて類別化を行ない(類別化については別に報告する),類別化された菌群の湛水前後における変化について検討した.その結果,
    (1) 全嫌気性菌数は湛水前は約2×105/g乾土であった.湛水直後,細菌数は増加して, 1×106/g乾土になり,湛水経過日数とともに減少し,湛水約1か月後には約3×105/g乾土であった.
    (2) 全期間をつうじて,通性嫌気性菌が偏性嫌気性菌よりも多い菌数を示した.全嫌気性菌数に対する偏性嫌気性菌数の比率は30%前後であった.
    (3) 湛水によって著しく影響を受ける細菌群はE. freundiiA. hydrophilaなどであり,余り影響を受けない細菌群はBacillusClostridiumであった.
    (4) B. lichenifovmisはいずれの時期にも分離され,湛水後にはそれ以外にB. pumilus, B. cereus, B. circulansが分離された.
    (5) 偏性嫌気性菌のほとんどはClostridiumであり,蛋白質分解性の強いCl. putrefaciens, Cl. lentoputrescensCl. cadaverisが全期間をつうじて分離された.湛水期間にはこれら以外にCl. indologenes, Cl. tertium, Cl. bifermentans, Cl. capitovaleが分離された.
  • 通性嫌気性菌と偏性嫌気性菌の類別化
    武田 潔, 古坂 澄石
    1970 年 44 巻 8 号 p. 349-355
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    水田土壌から分離した通性嫌気性菌と偏性嫌気性菌をBergey's manualに従がって類別化を行なった.通性嫌気性菌は未同定の菌株を含めて16菌群に,偏性嫌気性菌は8菌群に分かれた.通性嫌気性菌はE. freundii, A. aerogenes, Erwinia sp., A. hydrophila, Streptococcus sp., Staphylococcus sp., B. licheniformis, B. pumilus, B. cereus, B. circulans, B. polymyxaである.その他に紫色の色素を生成する菌群とグラム陽性桿菌の未同定の菌群がある.偏性嫌気性菌はCl. putrefaciens, Cl. lentoputrescens, Cl. cadaveris, Cl. indologenes, Cl. capitovale, Cl. tertium, Cl. bifermentansである.その他にグラム陽性桿菌の未同定の菌群がある.
    通性嫌気性菌は糖発酵性であり,硝酸塩の還元を行なう菌株が多いが,偏性嫌気性菌は糖発酵性でなく,蛋白質分解性のClostridium属が多かった.
    偏性嫌気性菌は酢酸や酪酸とともに,イソ酪酸やイソ吉草酸を生成した.
  • 遠藤 敬子, 森 義治, 柿木 和雄, 見里 朝正
    1970 年 44 巻 8 号 p. 356-363
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    有機リン殺菌剤イネジン(O-ethyl, phenyl-S-benzylthiophosphonate)の水稲体内における吸収,移行代謝分解の実験を行ない,次の結果が得られた.
    (1) ラジオオートグラフィー法の定性的な検討によると,局所塗布法による32Pイネジンまたはその代謝産物の移行性は小さく,薬剤は同一節内部でのみ移行し,上方へ移行する傾向が見られた.ただし,節間での移行は認められず,塗布部位の違いによる差,経時的な差も認められなかった.
    (2) 経根的に吸収させたイネジンは植物全体に移行する.
    (3) 稲体からの抽出物の大部分の放射活性はn-ヘキサン層に認められ,ヘキサン可溶物質は代謝されずに残ったイネジンとして同定された.
    (4) 70%メタノール抽出物は3~8日の間増加し,代謝産物としてエトキシフェニルチオリン酸,脱エチルイネジン,フェニルチオリン酸,エトキシチオリン酸を同定し,そのほかに未確認物質を1つ得た.
    X線フィルムによるラジオオートグラムと代謝物を定量した結果より,イネジンの主な分解過程はエトキシフェニルチオリン酸ができ,それがフェニルチオリン酸に代謝されていく経路である.次にイネジンが脱エチルイネジンに代謝され,それがフェニルチオリン酸に分解される過程も多いと考えられる.
  • 千葉 英雄, 巽 清, 佐々木 隆造, 杉本 悦郎
    1970 年 44 巻 8 号 p. 364-370
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    ミセル形成機構解明の一環として,αs-カゼインならびにκ-カゼインの高次構造を反映する2, 3の物理化学的性質のCa2+による変化を超遠心分析,紫外吸収差スペクトル,旋光分散および化学修飾によって検討し,さらにαS-カゼインのCa2+による凝固沈澱形成におよぼす環境因子の影響をも検討した.
    αS-カゼインはCa2+の添加により旋光分散は変化せず,リジン残基の反応性が増加しfoldingの傾向は認められなかった.しかし会合をおこし,その会合にともなって紫外吸収スペクトルにred shiftがみられ,会合に際して芳香族アミノ酸残基が埋まり込んだことを示唆した.この会合はK+による会合とは異なった特異な機構であって,さらに高濃度のCa2+により生ずる凝固沈澱の機構の前段階であると考えられる.Ca2+による凝固沈澱性は低蛋白濃度,低温, K+濃度の上昇, pHの上昇により低下し,とくにpHの影響や紫外吸収差スペクトルの結果から会合凝固にチロシン残基が関与していることが示唆された.
    κ-カゼインはCa2+により沈降定数の低下と紫外吸収スペクトルのblue shiftをおこした.すなわち解離とunfoldingの方向への変化がおこっていることを意味する.そしてこの変化によリミセル安定化能は低下した.
  • 千葉 英雄, 巽 清, 佐々木 隆造, 杉本 悦郎
    1970 年 44 巻 8 号 p. 371-379
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    αS-カゼインおよびκ-カゼインの特定の官能基がCa2+との作用や両蛋白間の相互作用およびミセル形成において特別な役割を果しているかどうかを究明するために,チロシン残基のニトロ化を中心に,リジン残基のTNP化,アルギニン残基をグリオキザールで修飾することにより検討した.
    αS-カゼインのCa2+による凝固沈澱にはその前段階として会合が必須の過程であることを知った.ニトロ化によるチロシン残基のpKの変化と凝固沈澱能との関係ならびに440mμ付近におけるニトロチロシン残基の吸収スペクトルの検討から次のことが示唆された.すなわち, Ca2+がαS-カぜインに結合することによって誘導されるチロシン残基のαS-カゼイン分子間水素結合が凝固沈澱に重要な役割を果している.凝固沈澱能の低下するような条件においてニトロαS-カゼインはミセル形成にも寄与しにくくなるので, Ca2+による凝固はミセル形成に必須の反応といえる.
    Ca2+の存在しない場でのαS-カゼインとκ-カゼインとのcomplex形成にはαS-カゼインのチロシン残基は関与せず,κ-カゼインのチロシン残基が関与していることを認めた.αS-カゼインとcomplexを形成しえないニトロκ-カゼインはミセル安定化能も失った.したがってαS-カゼインとκ-カゼインのcomplex形成もミセル形成に必要な過程と考えられる.
    アルギニンを修飾した場合にはαS-カゼインのCa2+による凝固性,κ-カゼインのαS-カゼインとのcomplex形成能およびミセル安定化能の低下が認められた.
  • 酸分解による脂肪定量法の検討
    執行 文昭, 大塚 茂夫, 池内 昌三, 三田 雅彦
    1970 年 44 巻 8 号 p. 380-384
    発行日: 1970年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    The nutritive value of yeast grown on hydrocarbon substrates has been investigated. It seems that the estimation of the nutritive value of yeast differs according to the methods of chemical analysis. The analysis of fat in yeast is particularly questionable. An attempt was made to examine acid hydrolysis and ether extraction statistically, and to fractionate the fats. With this method and other methods, the amount of ether extract in yeasts was determined. The results were as follows:
    1. It was found that the condition with A1 B2 C2 D2 E2 F2 made the amount of ether extract maximum (listed in Table 1 and 2). And its expected value was 14.75%.
    2. The amount of ether extract by both modified AOAC method and (1) method was from four to six times as high as that by the official method. It seems, therefore, that acid hydrolysis or another treatments should be made before extracting fat. The ether extract by (1) method which showed the highest value was fractionated into non-fat substances 15_??_25% and true-fat 75_??_85%. Thus it was found that a considerable amount of impurity was contained in the ether extract.
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