スエヒロタケ(
Schizophyllum commune)が液内培養時に生産する特有な代謝産物である粘質多糖(シゾフィラン)について検討した.本菌はグルコースのほか,ガラクトース,フラクトース,キシロース,シュクロースなどを炭素源とした比較的単純な培地にもよく生育して,菌糸体の生育と同時に培養液中に多量の粘質多糖体(シゾフィラン)を生成した.菌糸体を除去した培養液にメタノール,エタノールなど水に任意の割合で溶解する有機溶剤を35~40%の濃度で加え,生じた白色繊維状の沈澱を無水の溶剤で脱水後乾燥して対糖収率10~27%で粘質多糖シゾフィランを得た.シゾフィランは白色,無味,無臭で,冷水にも比較的易溶できわめて粘稠な溶液となる.極限粘度は12~13,比旋光度は+2.0,塩酸による完全加水分解によりグルコースのみを生ずること,部分加水分解によりグルコ二糖類としてラミナリビオース(3-O-β-D-グルコピラノシール D-グルコース)およびゲンチオビオース(6-O-β-D-グルコピラノシール D-グルコース)の2種のみが得られること,加酢分解によりβ-1, 3-グルコシッド結合を有する一連のオリゴ糖を生ずること,さらに比旋光度, IRの測定結果などから,β-1, 3-グルコシッド結合およびβ-1, 6-グルコシッド結合から成る単純グルカンであり,またβ-1, 3-グルコシッド結合による直鎖部分を有するものと推定した.
終りに臨み本研究に関して種々御指導,御助言を賜った東北大学農学部玉利勤治郎教授,松田和雄助教授,昭和大学薬学部小松信彦教授,菌株の分与をいただいた東京医科歯科大学寺川博典教授に厚く御礼申し上げます.
さらに本実験に協力された金内忠司氏,高橋 弘氏また終始激励いただいた当社田中賤夫技術顧問,中柴義雄常務取締役,霜 三雄前研究所長,滋賀達二元主任研究員に深謝いたします.
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