食品防腐剤として研究開発されているDEPCの殺菌メカエズムを解明する目的で,パン酵母を1%DEPC水溶液で処理し,酵母細胞に起る変化をしらべた.
(1) 室温で1時間処理した酵母細胞は,顕微鏡的には(MB染色においても)対照と差異が認められなかった.
(2) 処理後調製した圧搾酵母は, 外観など対照と差異がなかったが,これを30°Cに貯蔵すると一般に2~3日で軟化した.このようにDEPC処理は,圧搾酵母の軟化を促進したが,溶出アミノ態窒素量からすると,自己消化の速度には大した影響を及ぼさないものと考えられる.
(3) DEPC処理1時間で醗酵力は全く消失した.
(4) DEPC処理酵母を通風乾燥すると,水分含量40%から10%への脱水で急激にMB染色性が増加し, 10%の乾燥酵母では全細胞がMBにより染色された. DEPC処理は,酵母細胞の耐乾燥性を著しく損傷するものと考えられる.
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