日本農芸化学会誌
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45 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 褐変機構について
    駒井 功一郎, 佐藤 庄太郎
    1971 年 45 巻 11 号 p. 483-488
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) ジャガイモ塊茎にハロゲン化炭化水素系殺線虫剤を接触して生ずる褐変機構について検討した.その結果,本褐変は塊茎組織に殺線虫剤が浸透し,細胞を破壊し,ポリフェノール類がポリフェノールオキシダーゼと接触して酸化され褐変化する,いわゆる酵素的褐変であると結論した.
    (2) DBCPは他の2剤に比して褐変が著しいが,これは細胞破壊,浸透性などの性状を強く有するためと考えた.
    (3) ポリフェノールオキシダーゼ活性はD-D, EDBおよびDBCPの各薬剤の接触によって生じた褐変組織中でもかなり安定で,薬剤と接触しても急激に失活しないことが,褐変の要因であると思考した.
  • 小幡 斉, 佐藤 英二, 徳山 泰
    1971 年 45 巻 11 号 p. 489-493
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    レダクトン類であるエンジオール形レダクトン(TR, RA, ASA)およびエナミノール形レダクトン(GA, AR, VR, MB)を合成し,植物油(大豆油,綿実油)に対する抗酸化性と化学構造との関係を検討するとともに,レダクトン類添加による植物油の酸化速度の変化を検討し,次のような結果を得た.
    (1) TRは植物油に対して,あまり抗酸化性を示さないが,その誘導体であるエナミノール形レダクトンは,通常の抗酸化剤BHAより強い抗酸化性を示した.
    (2) レダクトン類の抗酸化性の序列は,GR>AR>LR>MR>VR>ASA>RA>TAであるが,レダクトン類を添加した場合には,エナミノール形レダクトンではPOVが80付近,エンジオール形レダクトンでは100付近で赤味を帯びた.
    (3) レダクトン類(TR, GR, VR)のBHA, NDGA, ASAに対する相乗効果を調べた結果, TRとNDGAにはわずかに相乗効果があり,他の組合せでは相乗効果が認められなかった.
    (4) Maloneyらの油脂の自動酸化反応速度式を用い,レダクトン類添加時の植物油の安定性を調べた結果,反応後期で,2分子反応の酸化速度式を用いて直線関係が得られ,酸化速度定数が求められた.
  • 橋永 文男, 永吉 正義, 筬島 豊, 古谷 貞治
    1971 年 45 巻 11 号 p. 494-499
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    双分極性白金電極を使用してキレート滴定を行ない,カルシウム,マグネシウム,カドミウムを定量した.金属イオンの定量を1Mトリエタノールアミン1ml含有の0.1Mアンモニア-塩化アンモニウム緩衝液(pH 11)中で0.8Vの定電圧をかけて行なった.添加したトリエタノールアミンが滴定曲線を高感度にし,また安定化することを見い出した.カルシウム,マグネシウム,カドミウムは0.01M EDTA(エチレンジアミン四酢酸)によって,それぞれ0.5%, 0.2%, 1.0%以内の相対誤差で滴定可能であった.
    カルシウム,マグネシウムの滴定に対する銀,アルミニウム,ヒ素,カドミウム,コバルト,銅,鉄,水銀,インジウム,ニッケル,鉛,亜鉛のような金属イオンの妨害は,いんぺい剤として2, 3-ジメルカプトプロパノール(BAL)を使用することにより除去された.またpH11.0およびpH12.5でBALをカドミウムのいんぺい剤として用いることにより,カルシウム・マグネシウム・カドミウム混液の各金属イオンの選択滴定を行なった.
    さらに双白金電極を利用して,メタスズ酸カリウムで除燐することにより食品中のカルシウム,マグネシウムを測定した.
  • 穀類の微生物に関する研究第13報
    渡辺 宏, 伊藤 均, 柴部 禎巳, 飯塚 廣
    1971 年 45 巻 11 号 p. 500-506
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) トウモロコシとマイロにおいて,貯蔵中に生育してくる糸状菌は主にA. restrictus groupとA. glaucus groupであり,貯蔵前のミクロフローラとあまり変化はなかったが,高水分含量(19.2%)の両試料からは,これら糸状菌の他に.酵母様微生物が検出され,主要なミクロフローラを形成した.
    (2) この酵母様微生物のγ線抵抗性は大きく,D10値は0.18Mradであったが,貯蔵温度を10°Cに保つか,水分含量を16%以下に保つことにより,その生育を抑えることができた.
    (3) 細菌は貯蔵中に著しい増加を示すことはなく,貯蔵前とあまり変化しないか,または貯蔵中に減少した.
    (4) 水分含量と照射試料の貯蔵効果について検討し,水分含量13.0%のトウモロコシではポリエチレン包装, 30°C貯蔵で0.6Mrad照射することにより2カ月間,また水分含量14.0%のマイロでは,同じ条件で3カ月間は糸状菌の生育を抑えることができ,また水分含量19.2%の場合でも1.0Mradの照射により,30°C, 1カ月間は全く糸状菌の生育もなく,貯蔵が可能であることが明らかとなった.
  • 甘草中のたばこ香喫味関与成分の分画について
    西 ハツ子, 森下 功
    1971 年 45 巻 11 号 p. 507-512
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    甘草根中の香喫味関与成分を検討した結果, glucose, sucroseなどの糖, proline, aspartic acid, threonine, serine, glycine, alanine, valine, isoleucine, γ-ami-nobutyric acidなどのアミノ酸と,あらたに1-deoxy-1-L-prolino-D-fructose, 1-deoxy-1-L-alanino-D-fruc-tose, 1-deoxy-1-(L-aspartic acid)-D-fructose, 1-deoxy-1-L-asparagino-D-fructoseなどのアミノ酸-糖化合物が存在することを認めた.このアミノ酸-糖化合物は,たばこの悪癖異臭味を抑制し,香喫味を良化することが認められたので,甘草エキスの香喫味関与成分の一因子と考えられる.
  • アルカリ金属イオンならびにメチレン青の結合量と発芽との関係
    村上 八郎
    1971 年 45 巻 11 号 p. 513-519
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    The mechanism of stimulation of alkaline metals on the germination of the spore of B. subtilis PCI 219 induced by L-alanine was studied.
    It was suggested that there were more than one binding site available to methylene blue (MB) on the spore and one of them (site I) was competed for binding with K+ or Na+. Association constants for K+, Na+ and MB to the site I were calculated as follows: kK=160, kNa=300 and kMB=5.4×105. Total number of the site I on a spore were found to be 2.6×107.
    In the absence of MB, the germination velocity was closely related to the amount of metal ions bound to the site I, but in the presence of MB the germination rate was affected by the amount of both cations and MB bound to the site I; the former stimulated the germination and the latter inhibited.
    Results obtained showed that what was effective on the germination, was not intrinsic cations of the spore but bound cations from the external solution and suggested that the site I was negative group of the spore.
  • 梶 明, 大崎 武久
    1971 年 45 巻 11 号 p. 520-528
    発行日: 1971年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1) C. rolfsiiの8 strainが,培養液中に低pH活性のendo-polygalacturonaseを生産することが確認された.酵素活性の測定には,主として酸可溶性ペクチン酸が基質として使用された.
    (2) C. rolfsii IFO 6146 (C. centrifugum(Lév.) Bresadola)およびC. rolfsii K 2のendo-polygalac-turonaseは低pH活性の傾向が著しく, pH 2.5において活性が最高を示し, pH1.5においてもかなりの活性を示し, pH 1.1においてすら明らかに活性を示した.
    (3) 8 strainの生産するendo-polygalacturonaseはいずれも耐酸性を有し,しかもアルカリ側においても安定であった.
    (4) C. rolfsiiの酵素に関する既報の研究成果も参考にして,酸性プロテイナーゼ,動物のペプシン以外にも耐酸性,低pH (pH 1.5~3.0)活性を有する酸性グリコシダーゼ,またはグリカナーゼと称すべき酵素群が存在することを指摘した.
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