高圧滅菌の過程で, TRが培地中のアンモニウム塩と反応してアミノ酸を生成し,徴生物の生育を増進させる可能性を検討した.培地に通常使用される7種のアンモニウム塩を用い,それぞれの0.1MとTRの0.1M溶液の1:1容量混合物を高圧滅菌(1.2kg/cm
2, 122±2°C, 15分間)で処理し,その反応液をPPCで展開した結果, TRのアンモニウム塩のほかにグリシン,GRの
Rf値付近にニンヒドリン陽性物質を生じた.これは,グリシンとGRが生成されていることを示唆しているので,これをさらに明らかにする目的で,イオン交換樹脂によるアミノ酸区分を
Leuconostoc mesenteroides P-60菌を用いてbioassayを行なったところ,グリシン欠乏培地で異常な生育を示した.これによってグリシン様物質の存在の可能性を認めたので,さらに確実にするために液体クロマトグラフィーで分析した結果,グリシンとGRのほかに微量のニンヒドリン陽性物質が確認された.グリシンの生成条件はpH3.3~7.0の範囲では酸性側ほどよく,また加熱条件は, 60~133±2°Cの範囲では,高温高圧ほどよいことが判明した.これらの結果,培地中にTRが存在すると培地中のアンモニウム塩と反応し,グリシンまたは二次的副産物としてGRが生成し,微生物の生育促進物質となる可能性が認められた.しかし,グリシンの生成機構は明らかでない.
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