日本農芸化学会誌
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46 巻, 11 号
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  • 宮沢 久七
    1972 年 46 巻 11 号 p. 541-548
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    イオン交換樹脂脱塩チーズホエー粉,電気透析脱塩チーズホエー粉,塩析ホエー蛋白質等の水溶液,および塩析ホエー蛋白質の脱脂乳透析水溶液と脱脂乳を混合した系(ホエー増強乳)の熱安定性を, 132°C 1分の加熱条件で検討した.
    ホエー増強乳は,カゼインに対するホエー蛋白質の比率の増加とともに熱に不安定になり,その比率が4/6以上では,pH 6.5~7.0で凝固する.くえん酸ナトリウム,メタりん酸ナトリウム等のカルシウムキレート剤の添加,およびホエー増強乳の予熱は,熱安定化効果を示さないが, 80~95°C 10分予熱処理した脱脂乳を用いたホエー増強乳は,あるpH範囲で熱安定化される.
    熱安定化されたホエー増強乳は, pH-熱安定曲線の形およびカルシウム塩とりん酸塩に対する挙動の点で,牛乳によく似ていることが示された.
  • 宮沢 久七
    1972 年 46 巻 11 号 p. 549-554
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    脱脂乳にホエー蛋白溶液を加えたホエー増強乳は,脱脂乳を予熱(80~95°C,10 min)した場合は,熱安定化される
    (1).ホエー増強乳を熱安定化する予熱脱脂乳中の因子について検討した.
    予熱脱脂乳(85°C, 10 min)を未予熱の脱脂乳に透析しても,熱安定化効果に変化は認められないから,脱脂乳予熱による塩類平衡の変化は,ホエー増強乳の熱安定化に寄与していないものと推定された.
    脱脂乳から超遠心で分離したカゼインミセルを,脱脂乳透析水に分散して予熱した後に,ホエー蛋白質を加えた復元脱脂乳,および超遠心で得られたホエーを予熱後カゼインミセルを加えた復元脱脂乳は,ホエー増強乳を熱安定化しなかった.これに対して,カゼインミセルと超遠心ホエーから調製した復元脱脂乳およびカゼインミセル,脱脂乳透析水,ホエー蛋白質またはβ-ラクトグロブリンから調製した復元脱脂乳は,予熱した場合はいずれもホエー増強乳を熱安定化した.以上の実験から,ホエー増強乳を熱安定化する因子は,脱脂乳の予熱によってもたらされる脱脂乳中のカゼインと,ホエー蛋白質またはβ-ラクトグロブリンの相互作用であることが示された.また,β-ラクトグロブリンの代りにシアノエチル-β-ラクトグロブリンを用いた復元脱脂乳は,予熱しても熱安定化効果を示さないから,熱安定化効果をもたらす相互作用には,β-ラクトグロブリンのSH基またはS-S結合が関与しているものと推定された.
  • 菊野 恵一郎, 神立 誠
    1972 年 46 巻 11 号 p. 555-559
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    The α-amino isobutyric acid (AIB) content in various proteins of animal and plant origin, some purified enzymes and animal tissues was determined by colorimetric method reported in the previous paper [Agr. Biol. Chem., 25, 234 (1961)]
    AIB is contained at very small amount in animal proteins, but scarecely in the enzymes and plant proteins tested.
    The intestinal wall of rabbit in which AIB was found at the most (0.19%) among the proteins tested, was fractionated into several fractions, and the fraction resistant to acid, alkali and pepsin contained much more AIB than the others. The protein mentioned above is to belong to elastin, and elastin prepared from goat's arteries showed 0.58% of AIB.
  • 土田 広信, 河本 正彦
    1972 年 46 巻 11 号 p. 561-568
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    アンモニアカラメルの一製造条件に従って,グルコースとアンモニアから調製した非透析性メラノイジンおよび,それをさらにDEAE-セルロースカラムによって分画したメラノイジン(F2, F3, F4, F5およびF6)中に存在する糖類について,各種検討を行なった.
    1)該メラノイジンの酸加水分解物をAmberlite IR-120 (H+型)処理,ついで活性炭処理してえた画分Aについて, PPCおよびGLCによって検討を行なった.その結果,この画分の大部分は糖類であり,グルコース,フラクトース,アラビノースのほかに,痕跡量の4種の未知物質の存在が認められた.
    2)該メラノイジンの酸加水分解の最適条件を検索した.その結果, 0.1N塩酸中, 1000°C, 7時間加熱した条件が比較的好ましい水解条件であることがわかった.また,水解最適条件の検索中,水中で該メラノイジンを煮沸しただけでも,全糖量の約1/2量の還元性糖類が遊離してくることがわかった.このことから全糖の約1/2の糖類は,該メラノイジン中でゆるい結合をなしているものと予想される.
    3)各々のメラノイジン中の全糖量,および各種糖類の定量を行なった.全糖量はPark-Johnson法で,各種糖類についてはTMS誘導体として, GLC(内部標準法)で定量した.その結果,全糖の含量はいずれのメラノイジン中にも2~3%存在し,各々のメラノイジンのO/C値と糖量との間に,なんら相関性はみとめられなかった.また,各種糖類の定量の結果,いずれのメラノイジン中にもグルコースが圧倒的に多く含まれていたが,グルコース含量の最も多いのは, F2であった.また, F3およびF4はフラクトースが, F5ではアラビノースが比較的多く含まれていた.これらの結果から,各々のメラノイジンの生成順位(F2, F3, F4, F5の順で生成)が予想される.
  • 村松 茂登彦, 小尾 幸照, 福澄 哲夫, 慶伊 富長
    1972 年 46 巻 11 号 p. 569-575
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    添加物により,たばこ煙中の健康上好ましくない成分の減少と香喫味の改善をはかるには,燃焼過程の基礎的な知見を知っておく必要があると考え,燃焼時の連続吸煙速度V (0~30m1/sec)が燃焼速度γ (cm/sec),燃焼温度および温度分布におよぼす影響について実験的に検討した.その結果,次のことが明らかになった.
    (1) V≧1.5ml/secでの燃焼は定常であったが, V≧2.0ml/secでは,非定常であった.
    (2) Vとたばこ中心部のΔT=80°C点の移動速度から求めた燃焼速度γとの間には,
    r=V/a+b V(a, b:正の定数)
    の関係が成立した.
    (3)燃焼最高温度は,自然燃焼のとき最も低く811°Cで, V=1.5m1/secのとき最高の882°Cであった.V≧2.0ml/secでは, Vの増加とともに低下し, V≧5.0ml/secでは, 850~860°Cでほぼ一定であった.
    (4)灰層中心部における定常燃焼時の温度分布は,燃焼最高温度部(その温度をTmax)からの距離xcmにおける温度をTとすると,実験式:
    T=(Tmax-25) exp (-αx)+25
    (α:正の定数, 25:室温)
    が成立した.
    (5)半径方向の温度分布を考慮した.定常燃焼時の2次元温度分布を求めた結果,Vの増加に伴って,燃焼部が広くなることが判明した.
  • 藤本 滋生, 永浜 伴紀, 蟹江 松雄
    1972 年 46 巻 11 号 p. 577-583
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    (1)時期別に掘取った甘藷塊根の澱粉を,さらに粒子の大きさによって分級した試料を用い,澱粉粒子の成長に伴ってアルカリ溶解に対する挙動がいかに変化するかを,ヨード呈色値により測定した.その結果から,初期の若い粒子は,アルカリに対する抵抗性がきわめて弱く,粒子が成長するにつれて,この抵抗性は高まることがわかった.
    (2)ジメチルスルホキシドによる澱粉の溶解方法を設定し,これによりヨード呈色値および電流滴定値を測定した.また,セファロース2Bによるゲル濾過クロマトグラフィーを行なって,アミロースの鎖長分布を測った.これらの結果から,甘藷澱粉粒子の成長に伴うアミロース成分の変化について考察し,甘藷澱粉の場合は,他の多くの植物澱粉について報告されている結果と異なり,その成長の初期ほどアミロース含有率が高く,また平均鎖長も長いことを結論した.
  • 入来 義彦, 森田 克巳
    1972 年 46 巻 11 号 p. 585-590
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    紅藻ウミゾウメン目Nemalialesに属するカモガシラノリNemalion pulvinatumのβ-セルロース区分の多糖類について調べ,つぎのような結果を得た.
    (1)β-セルロース区分の多糖類は,約15%のD-グルコースを含むキシランである.
    (2)該キシランの諸性質は,つぎのとおりである.
    (a)塩化亜鉛・ヨード試薬により淡青色に呈色する.
    (b)フェーリング液により沈殿する.
    (c)比旋光度[α]〓は-48.9° (c=1.26, 10%水酸化ナトリウム)である.
    (d)グリコシド結合様式は, β-1, 3結合およびβ-1, 4結合などが混在していると推定される.
    (3)得られた結果を基準として,ウミゾウメン目の分類について考察した.
  • 藪内 精三, 土井 悦四郎, 秦 忠夫
    1972 年 46 巻 11 号 p. 591-596
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    麦芽抽出液から, Z-Phe-Alaに対して活性のある2つの区分をDEAEセファデックスクロマトグラフィーで分画し,早く溶出されるCPAase Iと遅く溶出されるCPAase IIのそれぞれを,約570倍, 160倍に精製後,その酵素的性質を比較した.
    (1) CPAase Iの性質:Z-Phe-Alaに対する最適pHは, 4.9であった, 20°C, 20時間放置した場合, pH 8以上で著しく失活した. DFPで完全に阻害を受け,モノヨード酢酸のようなSH試薬によっても,かなり阻害された.各種合成基質のうち, Z-Phe-Alaに対してきわめて活性が強かった. pH 5.2でZ-Phe-Alaに対するKm値は, 10mMであった.
    (2) CPAase IIの性質:Z-Phe-Alaに対する最適pHは, 4~5.5と幅広く,またpH安定性もpH 4~8の間で差が認められなかった.阻害剤に対する挙動は, CPAase Iと同じ傾向にあった. Z-Phe-Pheに対しては, CPAase Iよりも活性が強かった.pH 5.2でZ-Phe-Alaに対するKm値は, 0.75mMであった.等電点分画法により求めた等電点は, pH 5.4であった.
    CPAase Iは, Visuriら(9)によって報告されているカルボキシペプチダーゼに相当すると考えられたが, CPAase IIは未だ確認されていない酵素であった.諸性質から判断して, IIも別種のカルボキシペプチダーゼであると推定している.
    種々の合成基質に対する分解比率を粗抽出液との比較において検討した結果,IIの方が粗抽出液の場合の比率によく似ていたので,麦芽のタンパク質分解に対し,より重要な役割を有しているものと考えられた.
  • 保井 忠彦, 岩松 君子
    1972 年 46 巻 11 号 p. 597-602
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    This work was undertaken to exploit procedures for the preparation of proteins from leafy vegetables of which nitrogen content is high enough as comparable to pure proteins and of which yield is also enough to be able to propose that it could represent the whole leaf protein concerned.
    Results obtained were as follows: The materials for the isolation of proteins were prepared from several green leaves by succesive treatment with several organic solvents and hot water or 5% hot NaCl solution. And then about 90% of leaf protein in materials was extractable by hot 0.3% alkaline 60% alcohol and the proteins have been isolated, showing nitrogen contents ranging from 15.5% to 16.4% on ash- and carbohydrate free basis.
    Accordingly, this method is suitable for purpose of the experiment.
  • 佐藤 惺, 西尾 康三, 北村 晃子
    1972 年 46 巻 11 号 p. 603-605
    発行日: 1972年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    Alcohol-benzene and hot water soluble matters, lignin and methoxyl contents were determined about the pod-shell, stem, root and leaves of peanut (Arachis hypogaea L.). Molar ratios of syringaldehyde to vanillin (S/V value), which were obtained by alkaline nitrobenzene oxidation and determined by gas-liquid chromatography, were 0.00, 0.31, 0.32 and 0.39 for pod-shell, stem, leaves and root, in order. These lower values from peanut which is classified as Dicotyledonae are very interesting on the viewpoint of chemotaxonomy. The S/V value of peanuts lignin was similar to that from Gynanospermae. The value, 0.03, was also obtained from the stem of Chloranthus glaber Makino.
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